JP4484313B2 - 金属部材の接合材及び金属部材の接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属部材、特にアルミニウム合金板を接合してなる金属部材の接合材に関し、詳しくは、金属部材の突き合わせ部分に沿って回転工具を回転しながら移動させることより、その金属部材を摩擦撹拌接合してなる金属部材の接合材、及び、その金属部材の接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境保護或いは省エネルギの観点から、自動車の排出する窒素酸化物や二酸化炭素の抑制、燃費の向上が切望されている。これらを達成するための最も有効な方法の一つとして、自動車の軽量化、すなわち軽量材料の使用が考えられる。そこで、自動車のボディや部品を構成する材料を、鋼鉄からアルミニウム合金へ転換することが検討されている。アルミニウム合金は、軽量であることは勿論のこと、断面形状の最適化により剛性を高めることができる。
【0003】
他方、鋼板等の分野では、成形時に屑が発生するのを抑制して素材をできるだけ節約したりプレス成形を良好に実施したりするために、厚さの異なる板を適材適所に配設して接合しプレス成形に供するテーラードブランクの考え方がある。鋼板等の分野では、このようなテーラードブランク材を製造する場合、板同士をレーザ溶接やマッシュシーム溶接によって接合するのが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、アルミニウム合金にレーザ溶接を適用した場合、レーザ光の反射率が高いため合金の表面状態によるバラツキが大きくなったり、ポロシティ(空洞)が発生易い等の問題があって安定して良好な接合強度が得られない。マッシュシーム溶接を適用した場合も、アルミニウム合金の場合は熱が逃げ易く局部的な溶融しかできないため、プレス成形に耐える滑らかな表面を有する接合部を形成するのは困難である。
【0005】
一方、入熱が少なく軟化や歪みの程度が軽い接合方法として、近年、摩擦撹拌接合が考えられている(例えば、特許2712838号)。この方法は、アルミニウム合金板等の軟質素材(被接合材)を鋼鉄等の硬質の裏当てに乗せて突き合わせ、その突き合わせ部分に沿って硬質の回転工具を高速回転させながら移動させる方法である。この方法は、接合部が溶融しないのが特徴で、撹拌部外側の熱影響部の温度もそれ程上昇しない。そこで、この摩擦撹拌接合によってテーラードブランク材を製造することも考えられる。
【0006】
板厚の異なるアルミニウム合金板同士を摩擦撹拌接合する方法としては、例えば特開平10−249553号公報に記載のように、回転工具を薄板側に回転工具の移動方向に対して直角方向に傾けて接合を行うことが考えられている。また、裏当てを回転工具に対して同様に傾けても同様の接合が行える。しかしながら、このようにして摩擦撹拌接合を行うと、接合部の板厚が薄板側との界面近傍で薄板側の板厚より薄くなるか、薄板側にかなり近い厚みになる可能性がある。この場合、充分な接合強度が確保できずその薄くなった部分から、或いは薄板側にかなり近い厚みになった接合部から破断が生じることがある。しかも、これらの接合方法では、アルミニウム合金板同士の突き合わせ面に対して回転工具の小径の柱がその移動方向に対して直角方向に傾いて挿入されるので、回転工具の挿入時に工具の軸がずれて接合状態が不安定になることが考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、肉厚の異なる金属部材を摩擦撹拌接合してなる金属部材の接合材、及び、その金属部材の接合方法において、接合強度を安定してかつ良好に確保することを目的としてなされた。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
本発明は、板厚(肉厚に相当)の異なる板材同士の接合、肉厚の異なる押出材同士の接合等に用いることができる。また、アルミニウム材同士,マグネシウム材同士,或いは異種材同士の接合等にも用いることができる。以下の説明は、アルミニウム板材同士の接合の場合を例として行う。
【0009】
上記目的を達するためになされた請求項1記載の発明は、肉厚の異なる金属部材の端面を突き合わせ、該突き合わせ部分に沿って回転工具を回転しながら移動させることより、上記金属部材を摩擦撹拌接合してなる金属部材の接合材であって、上記金属部材の厚肉材側の肉厚t2 が薄肉材側の肉厚t1 の110%〜300%であり、上記摩擦撹拌接合による接合部の肉厚t3 が、その接合部の幅の80%以上に渡って下記の範囲にあることを特徴としている。
【0010】
t1 +0.1(t2 −t1 )≦t3 ≦t1 +0.7(t2 −t1 )……▲1▼
厚肉材側の肉厚t2 が薄肉材側の肉厚t1 の110%未満であると、肉厚の差が少な過ぎるため本発明を適用する意味がない。一方、肉厚t2 が肉厚t1 の300%を超えると、接合時における厚肉材側から薄肉材側へのメタル(金属)の流れ込みが充分でなく、充分な接合強度を有する接合部を得る前に多量のバリが発生して好ましくない。すなわち、t2 がt1 の300%を超えるものについては、接合部の肉厚をt1 +0.5(t2 −t1 )以下にする、或いは、回転工具の後方への傾斜角度(詳しくは後述)を増すことにより接合可能であるが、この場合バリが多量に発生するため、バリを切削除去する等の作業が必要となって実用的でない。
【0011】
また、接合部の肉厚t3 がt1 +0.1(t2 −t1 )未満であったりt1 +0.7(t2 −t1 )よりも大きかったりする箇所(すなわち上記式▲1▼が満たされない箇所)は、その接合部において厚肉材側から薄肉材側へのメタルの流れ込みが充分に起こっていない可能性のある箇所である。
【0012】
本発明では、肉厚t2 が肉厚t1 の110%〜300%であるので、多量のバリを発生することなく良好な接合部が得られる。しかも、その接合部の幅の80%以上に渡って肉厚t3 が式▲1▼を満たしているので、良好な接合強度が安定して得られる。なお、本発明において肉厚t3 が式▲1▼を満たす範囲を接合部の幅の80%以上としたのは、いかに良好に接合を行った場合にも接合部が厚肉材側との界面近傍にスロープを形成する可能性があることを考慮したものである。
【0013】
すなわち、肉厚t3 が式▲1▼を満たす範囲は100%に近いほど良好な接合強度が得られるが、接合部表面の滑らかさや製造コストを考えると、より好ましい範囲は85%〜95%である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成に加え、上記接合部の最も薄い部分の肉厚がt1 以上であることを特徴としている。
【0014】
接合部において肉厚が薄肉材側の肉厚t1 よりも薄くなる部分があると、成形加工時にその部分から破断し易くなる。本発明では、接合部の最も薄い部分の肉厚がt1 以上であるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、成形加工にも対応できる一層良好な接合強度を確保することができるといった効果が生じる。
【0015】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成に加え、上記回転工具が、大径の肩部とその肩部の下端から突出して上記突き合わせ部分に挿入される小径の柱とを備え、上記回転工具の小径の柱の上記突き合わせ部分への挿入方向を、上記肩部の後部が上記接合部に前部よりも相対的に深く入るように上記回転工具の移動方向に対して0°を超え7°以下の範囲で後方に傾斜させ、かつ、上記回転工具の回転方向を上から見て時計回りとしたときに上記厚肉材側の金属部材を上記移動方向に対して右側に配設し、または、反時計回りとしたときに上記厚肉材側の金属部材を上記移動方向に対して左側に配設して上記摩擦撹拌接合がなされたことを特徴としている。
【0016】
本発明では、大径の肩部とその肩部の下端から突出して上記突き合わせ部分に挿入される小径の柱とを備えた回転工具(一般的な回転工具)を使用し、その挿入方向を上記肩部の後部が接合部に前部よりも相対的に深く入るように回転工具の移動方向に対して後方に傾斜させている。しかも、上記回転工具の回転方向を上から見て時計回り(または反時計回り)としたときに上記厚肉材側の金属部材を上記移動方向に対して右側(または左側)に配設しているので、上記肩部の回転によって厚肉材側から薄肉材側へのメタルの流れ込みが促進される。
【0017】
このとき、回転工具の傾斜が7°を超えると、接合部の中央が薄くなって肉厚t3 が式▲1▼を満たす割合が接合部の幅の80%未満となり接合強度が低下する。また、傾斜が0°であると厚肉材側から薄肉材側へのメタルの流れ込みが充分に起こらず、接合部に欠陥が発生し易くなる。本発明では、回転工具の傾斜方向,回転方向,及び厚肉材側と薄肉材側との配置関係を前述のように規定し、しかも、回転工具を0°を超え7°以下の範囲で後方に傾斜させている。このため、厚肉材側から薄肉材側に流れ込んだメタルを上記肩部の後部で押しつけながら滑らかな接合部を形成することができ、その接合部の肉厚は請求項1または2に規定した関係を良好に満足する。しかも、本発明の金属部材の接合材を製造する際は、金属部材同士の突き合わせ面に対して回転工具をその移動方向に対して直角方向に傾けて挿入する必要がないので、工具の軸がずれて接合状態が不安定になることもない。
【0018】
従って、本発明では、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、良好な接合強度を一層安定して確保することができるといった効果が生じる。また、本発明はこのように安定して製造可能であるので、歩留まりが向上して製造コストも低減される。なお、回転工具の挿入方向は少しでも後方に傾斜していれば一応の上記効果が生じ、一層好ましい傾斜角の範囲は2°〜5°である。また、接合部の最も薄い部分の肉厚は回転工具の肩部後部の上記接合部への挿入量によってほぼ規定される。従って、上記挿入量は金属部材の下面から計ってt1 +0.1(t2 −t1 )以上でかつt1 +0.7(t2 −t1 )以下とするのが望ましく、上記挿入量をt1 +0.7(t2 −t1 )とできるのは上記傾斜角がほぼ0°である場合となる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、プレス成形に供されるアルミニウム合金製の自動車用テーラードブランク材であることを特徴としている。
請求項1〜3に記載の金属部材の接合材は、前述のようにいずれも良好な接合強度を有しており、プレス成形における成形性等も優れている。このため、これをアルミニウム合金製の自動車用テーラードブランク材として使用すれば、自動車のボディや部品を充分な剛性を確保しつつ良好に軽量化することができ、しかも、前述のように成形時に屑が発生するのも良好に抑制することができる。
【0020】
従って、本発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、自動車を軽量化して省エネルギ及び地球環境保護を推進すると共に、成形時にアルミニウム合金の屑が発生するのを抑制して省エネルギ及び地球環境保護を一層推進し、かつ、製造コストを低減することができるといった効果が生じる。
【0021】
請求項5記載の発明は、肉厚の異なる金属部材の端面を突き合わせ、該突き合わせ部分に沿って回転工具を回転しながら移動させることより、上記金属部材を摩擦撹拌接合する金属部材の接合方法であって、上記回転工具として、大径の肩部とその肩部の下端から突出して上記突き合わせ部分に挿入される小径の柱とを備えたものを使用し、上記回転工具の上記突き合わせ部分への挿入方向を、上記肩部の後部が上記接合部に前部よりも相対的に深く入るように上記回転工具の移動方向に対して0°を超え7°以下の範囲で後方に傾斜させ、かつ、上記回転工具の回転方向を上から見て時計回りとしたときに上記厚肉材側の金属部材を上記移動方向に対して右側に配設し、または、反時計回りとしたときに上記厚肉材側の金属部材を上記移動方向に対して左側に配設して段差のある側から上記回転工具を押し当てて上記摩擦撹拌接合を行うことを特徴としている。
【0022】
本発明では、大径の肩部とその肩部の下端から突出して上記突き合わせ部分に挿入される小径の柱とを備えた回転工具を使用し、その挿入方向を上記肩部の後部が接合部に前部よりも相対的に深く入るように回転工具の移動方向に対して後方に傾斜させている。しかも、上記回転工具の回転方向を上から見て時計回り(または反時計回り)としたときに上記厚肉材側の金属部材を上記移動方向に対して右側(または左側)に配設して段差のある側から上記回転工具を押し当てているので、上記肩部の回転によって厚肉材側から薄肉材側へのメタルの流れ込みが促進される。
【0023】
このとき、回転工具の傾斜が7°を超えると、接合部の中央が薄くなって接合強度が低下する。また、傾斜が0°であると厚肉材側から薄肉材側へのメタルの流れ込みが充分に起こらず、接合部に欠陥が発生し易くなる。本発明では、回転工具の傾斜方向,回転方向,及び厚肉材側と薄肉材側との配置関係を前述のように規定し、しかも、回転工具を0°を超え7°以下の範囲で後方に傾斜させている。このため、厚肉材側から薄肉材側に流れ込んだメタルを上記肩部の後部で押しつけながら滑らかな接合部を形成することができ、その接合部の肉厚は請求項1または2に規定した関係を良好に満足する。しかも、本発明では、金属部材同士の突き合わせ面に対して回転工具をその移動方向に対して直角方向に傾けて挿入する必要がないので、工具の軸がずれて接合状態が不安定になることもない。
【0024】
従って、本発明の接合方法では、請求項1または2記載の金属部材の接合材を良好にかつ安定して製造することができる。また、本発明ではこのように請求項1または2記載の金属部材の接合材を安定して製造することができるので、その歩留まりを向上させて製造コストを低減することができる。なお、回転工具の挿入方向は少しでも後方に傾斜していれば一応の上記効果が生じ、一層好ましい傾斜角の範囲は2°〜5°である。また、接合部の最も薄い部分の肉厚は回転工具の肩部後部の上記接合部への挿入量によってほぼ規定される。従って、上記挿入量は金属部材の下面から計ってt1 +0.1(t2 −t1 )以上でかつt1 +0.7(t2 −t1 )以下とするのが望ましく、上記挿入量をt1 +0.7(t2 −t1 )とできるのは上記傾斜角がほぼ0°である場合となる。
【0025】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の構成に加え、上記回転工具の上記突き合わせ部分への挿入量として、その回転工具の肩部後部が、上記金属部材の下面から計ってt1 +0.1(t2 −t1 )以上でかつt1 +0.7(t2 −t1 )以下となるようにすることを特徴としている。
【0026】
すなわち、本発明では、回転工具の挿入量を前述の望ましい範囲に設定している。このため、本発明では、上記接合部の肉厚を請求項1及び請求項2に規定された条件に極めて良好に適合させることができる。従って、本発明では、請求項5記載の発明の効果に加えて、請求項1及び2記載の金属部材の接合材を一層良好にかつ安定して製造することができるといった効果が生じる。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。以下の実施の形態では、大径の肩部1aと、その肩部1aの下端から突出した小径の柱1bとを備えた回転工具1を用いて、薄いアルミニウム合金板10と厚いアルミニウム合金板20とを摩擦撹拌接合する場合を例にとって説明する。
【0028】
図1(B)は、その摩擦撹拌接合を実行する接合装置を回転工具1の移動方向の背後から見た説明図であり、図1(A)はその左側面図である。図1(B)に示すように、この接合装置は回転工具1との対向位置に鋼鉄製の裏当て99を備え、その裏当て99の上には、アルミニウム合金板10,20が乗せて突き合わされ、両側から図示しないジグによって固定される。
【0029】
図1(A)に示すように、本接合装置では、回転工具1が矢印A方向に移動する。但し、回転工具1が固定されている場合は、裏当て99が矢印Aとは逆の方向に移動することによって、相対的に回転工具1を矢印A方向に移動させる。また、回転工具1の回転軸cは、アルミニウム合金板10,20に立てた法線hに対して、上記移動方向に対する後方側にθ°傾斜している。そして、本接合装置では、図示しない駆動系から駆動力を伝達することにより、回転工具1を上から見て時計回りに回転させながらその回転軸cに沿って柱1b及び肩部1aの後部をアルミニウム合金板10,20に挿入し、回転工具1を段差のある側から押し当てつつ矢印A方向に移動させることによって摩擦撹拌接合を行う。
【0030】
ここで、本接合装置では回転工具1の回転軸cを前述のように傾斜させたので、図1(B)に示すように厚板側のアルミニウム合金板20を回転工具1の移動方向に対して右側に配設すると次のような効果が生じる。この場合、肩部1aの回転によってアルミニウム合金板20からアルミニウム合金板10へメタル(アルミニウム合金)の流れ込みが生じ、図2に示すように両者の表面を滑らかに結ぶスロープを有する良好な接合部30が形成される。なお、接合部30の両端には若干のバリ30aが形成される。また、図2には、接合前のアルミニウム合金板10,20の形状を二点鎖線で示した。
【0031】
【実施例】
次に、上記傾斜角θや、アルミニウム合金板10の板厚t1 、アルミニウム合金板20の板厚t2 を種々に変更して上記摩擦撹拌接合を実際に行い、その接合状態を評価した。なお、以下の実施例では回転工具1として、肩部1aの直径20mm,柱1bの直径8mm,柱1bの長さt1 mmのものを使用し、その回転数を2000rpm、回転工具1の移動速度を500mm/分とすると共に、アルミニウム合金板10,20としては6111合金のT4材を使用した。
【0032】
摩擦撹拌接合の条件、得られた接合部30の形状を表すパラメータ、及びその接合部30に対する評価を表1に示す。なお、表1に示すt3 は接合部30の板厚(すなわち、撹拌された深さに関わらず接合部30の表面から裏当て99との当接面までの距離)を表し、表中には接合部30の断面写真から前述の式▲1▼を満たす割合を測定して示した。更に、表中には板厚t3 の最小値(mint3)も付記した。また、このmint3の値は、肩部1aの後部のアルミニウム合金板10,20への挿入量を裏当て99から計った値にほぼ一致する。例えば、表1の各実施例では、回転工具1の上記突き合わせ部分への挿入量として、肩部1aの後部が、アルミニウム合金板10,20の下面(すなわち裏当て99との接触面)から計ってt1 +0.1(t2 −t1 )以上でかつt1 +0.7(t2 −t1 )以下となるようにした。
【0033】
評価としては、JIS5号試験片の平行部に、接合部30を引張方向に直角となるように含むように試験片を採取し、引張試験を行って破断位置が接合部30かアルミニウム合金10またはアルミニウム合金20の母材かで評価した。破断位置が接合部30であるものは接合強度が不足しているものであり、不良として評価した。
【0034】
【表1】
【0035】
表1に示すように、t2 をt1 の110%〜300%の範囲に収め、かつθを0°<θ≦7°の範囲に収めて摩擦撹拌接合を行ったNo. 1〜4の試験材(実施例)では、接合部30の板厚t3 の最小値がt1 以上であり、しかも、その接合部30の幅の80%以上に渡って板厚t3 が下記の範囲にあった。
【0036】
t1 +0.1(t2 −t1 )≦t3 ≦t1 +0.7(t2 −t1 )……▲1▼
そして、このような条件を満たす接合部30は、表2に示すように極めて良好な接合強度を示し、プレス成形に供される自動車用テーラードブランク材としても充分に使用可能であることが分かった。なお、t2 がt1 の110%未満であると、板厚の差が少な過ぎるため上記摩擦撹拌接合を適用する意味がなく、通常通りの摩擦撹拌接合で充分である。また、t2 がt1 の300%を超えているNo. 7の試験材では多量のバリが発生したり、接合部30に欠陥が発生したために接合部30で破断してしまい充分な接合強度が得られかったりした。これは、厚板側から薄板側へのメタルの流れ込みが充分でなく、充分な接合強度を有する欠陥のない良好な接合部30を得る前に多量のバリが発生するためと思われる。
【0037】
θが7°を超えているNo. 6の試験材では、接合部30の中央が薄くなって、板厚t3 が式▲1▼を満たす割合が接合部30の幅の80%未満となって接合強度が低下した。また、θを0°としたNo. 5の試験材では、厚板側から薄板側へのメタルの流れ込みが充分に起こらず、接合部30に欠陥が発生したために接合部30で破断してしまい充分な接合強度が得られなかった。また、No. 8の試験材は、回転工具1をその移動方向に対して直角方向に3°傾けたものであるが、t3 の最小値がt1 を下回っているので成形加工時にこの部分から破断が発生する可能性が高い。これに対して、0°<θ≦7°としたNo. 1〜4の試験材では、厚板側から薄板側に流れ込んだメタルを肩部1aの後部で押しつけながら滑らかな接合部30を形成することができ、その接合部30の大部分で板厚t3 が式▲1▼を満足した。
【0038】
次に、上記各試験材の内でも良好な評価が得られたt1 =1mm,t2 =2mmの組み合わせ(No. 1)に対して、実際にテーラードブランク材を製造し、プレス成形を施してみた。すなわち、板厚2mmのアルミニウム合金板20と板厚1mmのアルミニウム合金板10とを図3に示すように組み合わせて突き合わせ、前述のジグによって裏当て99上に拘束した。各突き合わせ部(FSW)に回転工具1を上記角度で2箇所同時に挿入し、前述の速度で摩擦撹拌接合を行った。接合して得られたテーラードブランク材を金型にセットし、プレス成形を施した。接合部30は破断することなく成形が可能であった。
【0039】
これを自動車用テーラードブランク材として使用すれば、自動車のボディや部品を充分な剛性を確保しつつ良好に軽量化することができ、しかも、成形時に屑が発生するのも良好に抑制することができる。従って、この場合、自動車を軽量化して省エネルギ及び地球環境保護を推進すると共に、成形時にアルミニウム合金の屑が発生するのを抑制して省エネルギ及び地球環境保護を一層推進し、かつ、製造コストを低減することができる。
【0040】
しかも、本実施例では、一般的な回転工具1を用いてそれを後方に傾斜させるだけで、前述のように優れた接合強度を有する接合部30を容易にかつ安定して形成することができる。また、アルミニウム合金板10,20の突き合わせ面に対して回転工具1をその移動方向に対して直角方向に傾けて挿入する必要がないので、回転工具1の軸がずれて接合状態が不安定になることもない。
【0041】
なお、本発明は上記実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、回転工具1を上から見て反時計回りに回転させ、アルミニウム合金板20を図1(B)の左側に配設してもよい。また、回転工具1の構成(例えば肩部1aの構成)を変更することにより上記θの適切な範囲は変化する可能性があり、このようにして摩擦撹拌接合された接合部がその幅の80%以上に渡って式▲1▼を満たしている場合にも、その接合材は本発明の1実施形態となる(但し1.1t1≦t2≦3t1 )。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施する接合装置の構成を表す説明図である。
【図2】 その接合装置によって形成された接合部の構成を表す説明図である。
【図3】 実施例のテーラードブランク材の製造方法を表す説明図である。
【符号の説明】
1…回転工具 1a…肩部 1b…柱 10,20…アルミニウム合金板30…接合部 30a…バリ 99…裏当て
Claims (6)
- 肉厚の異なる金属部材の端面を突き合わせ、該突き合わせ部分に沿って回転工具を回転しながら移動させることより、上記金属部材を摩擦撹拌接合してなる金属部材の接合材であって、
上記金属部材の厚肉材側の肉厚t2 が薄肉材側の肉厚t1 の110%〜300%であり、
上記摩擦撹拌接合による接合部の肉厚t3 が、その接合部の幅の80%以上に渡って下記の範囲にあることを特徴とする金属部材の接合材。
t1 +0.1(t2 −t1 )≦t3 ≦t1 +0.7(t2 −t1 ) - 上記接合部の最も薄い部分の肉厚がt1 以上であることを特徴とする請求項1記載の金属部材の接合材。
- 上記回転工具が、大径の肩部とその肩部の下端から突出して上記突き合わせ部分に挿入される小径の柱とを備え、
上記回転工具の小径の柱の上記突き合わせ部分への挿入方向を、上記肩部の後部が上記接合部に前部よりも相対的に深く入るように上記回転工具の移動方向に対して0°を超え7°以下の範囲で後方に傾斜させ、かつ、上記回転工具の回転方向を上から見て時計回りとしたときに上記厚肉材側の金属部材を上記移動方向に対して右側に配設し、または、反時計回りとしたときに上記厚肉材側の金属部材を上記移動方向に対して左側に配設して上記摩擦撹拌接合がなされたことを特徴とする請求項1または2記載の金属部材の接合材。 - プレス成形に供されるアルミニウム合金製の自動車用テーラードブランク材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属部材の接合材。
- 肉厚の異なる金属部材の端面を突き合わせ、該突き合わせ部分に沿って回転工具を回転しながら移動させることより、上記金属部材を摩擦撹拌接合する金属部材の接合方法であって、
上記回転工具として、大径の肩部とその肩部の下端から突出して上記突き合わせ部分に挿入される小径の柱とを備えたものを使用し、
上記回転工具の上記突き合わせ部分への挿入方向を、上記肩部の後部が上記接合部に前部よりも相対的に深く入るように上記回転工具の移動方向に対して0°を超え7°以下の範囲で後方に傾斜させ、かつ、上記回転工具の回転方向を上から見て時計回りとしたときに上記厚肉材側の金属部材を上記移動方向に対して右側に配設し、または、反時計回りとしたときに上記厚肉材側の金属部材を上記移動方向に対して左側に配設して段差のある側から上記回転工具を押し当てて上記摩擦撹拌接合を行うことを特徴とする金属部材の接合方法。 - 上記回転工具の上記突き合わせ部分への挿入量として、その回転工具の肩部後部が、上記金属部材の下面から計ってt1 +0.1(t2 −t1 )以上でかつt1 +0.7(t2 −t1 )以下となるようにすることを特徴とする請求項5記載の金属部材の接合方法。
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