JP5177061B2 - 伝熱板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、伝熱板の製造方法に関する。
金属部材同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合とは、回転ツールを回転させつつ金属部材同士の突合部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合部の金属を塑性流動させることで、金属部材同士を固相接合させるものである。
例えば、特許文献1に示す伝熱板は、蓋溝とこの蓋溝の底面に形成された凹溝を備えたベース部材と、前記蓋溝に配置される蓋板とからなり、蓋板とベース部材との突合部に対して回転ツールを移動させて摩擦攪拌接合によって一体成形されている。
特許第3818084号公報
従来の伝熱板の製造方法においては、例えば、回転ツールを右回転させる場合、進行方向左側に接合欠陥が発生する可能性があった。つまり、進行方向左側はシアー側(被接合部に対する回転ツールの外周の相対速さが、回転ツールの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側)であるため、メタルが強く攪拌されて高温軟化し、バリとなって排出され易いと考えられる。このため回転ツールを右回転させる場合、シアー側である進行方向左側に接合欠陥が形成される可能性があった。一方、同様の理由で、回転ツールを左回転させる場合、進行方向右側に接合欠陥が発生する可能性があった。このような接合欠陥は、接合部分の水密性及び気密性を低下させるという問題があった。
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、接合部分の水密性及び気密性の高い伝熱板の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段として、本発明は、金属部材からなるベース部材の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、金属部材からなる蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う接合工程と、を含む伝熱板の製造方法において、前記蓋溝閉塞工程では、前記蓋板の表面が前記ベース部材の表面よりも高い位置になるように配置し、前記接合工程では、前記蓋板が前記接合用回転ツールの進行方向に対して右側に位置する場合、前記接合用回転ツールの回転方向を右回りに設定し、前記蓋板が前記接合用回転ツールの進行方向に対して左側に位置する場合、前記接合用回転ツールの回転方向を左回りに設定することを特徴とする。
また、本発明は、金属部材からなるベース部材の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、金属部材からなる蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う接合工程と、を含む伝熱板の製造方法であって、前記蓋溝閉塞工程では、前記蓋板の表面が前記ベース部材の表面よりも低い位置になるように配置し、前記接合工程では、前記蓋板が前記接合用回転ツールの進行方向に対して右側に位置する場合、前記接合用回転ツールの回転方向を左回りに設定し、前記蓋板が前記接合用回転ツールの進行方向に対して左側に位置する場合、前記接合用回転ツールの回転方向を右回りに設定することを特徴とする。
要するに本発明は、接合工程において、回転ツールを右回転させた場合は進行方向左側、左回転させた場合は進行方向右側が低くなるように、ベース部材及び蓋板の表面高さに差を設けた状態で摩擦攪拌接合を行う。つまり、フロー側(被接合部に対する回転ツールの外周の相対速さが、回転ツールの外周における接線速度の大きさから移動速度の大きさを減算した値となる側)に係る表面よりもシアー側(被接合部に対する回転ツールの外周の相対速さが、回転ツールの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側)に係る表面を低く設定して摩擦攪拌接合を行うと、シアー側に係る部材と接合用回転ツールの接触面積が小さくなる。これにより、シアー側に係る部材のメタルの温度が上がらず流動性が低くなるため、シアー側とフロー側との流動性の均衡を図ることができ、接合欠陥の発生を防ぐことができる。
また、前記接合工程では、前記接合用回転ツールの押込み量を、前記蓋板の表面と前記ベース部材の表面との高低差よりも大きく設定することが好ましい。押込み量とは、ベース部材の表面及び蓋板の表面のいずれか高い方から接合用回転ツールのショルダ部の下端面までの距離をいう。つまり、接合用回転ツールの下端面をベース部材の表面及び蓋板の表面のいずれか低い方よりも下方に押し込むことにより、より確実に摩擦攪拌接合を行うことができる。
また、前記接合工程では、前記接合用回転ツールの軌跡の始端と終端とをオーバーラップさせ、摩擦攪拌によって形成される塑性化領域の一部を重複させることが好ましい。かかる製造方法によれば、凹溝の周囲を確実に密閉することができる。
また、前記接合工程では、前記接合用回転ツールで前記蓋板の周囲を一周させて塑性化領域を形成した後、前記接合用回転ツールを前記突合部から前記ベース部材側に偏移させながら離間させ、前記蓋板の側面から離れた位置で前記接合用回転ツールの攪拌ピンを離脱させることが好ましい。
攪拌ピンの抜け穴が、突合部よりも蓋板側に形成されると水密性及び気密性が低下する可能性があるが、かかる製造方法によれば、接合用回転ツールの離脱位置を比較的肉厚のベース部材に設けることにより、水密性及び気密性の低下を防ぐことができる。
また、前記接合工程では、前記接合用回転ツールの攪拌ピンの長さを、前記蓋溝の側壁の高さの60%〜100%の範囲に設定することが好ましい。かかる製造方法によれば、突合部において深い位置まで摩擦攪拌接合を行うことができる。
また、前記接合工程では、前記接合用回転ツールよりも小型の回転ツールを用いて前記突合部に対して仮接合を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、蓋板をベース部材に仮付けした後、突合部を本格的に摩擦攪拌接合することができるため、蓋板の位置決め精度を高めることができる。
また、矯正用回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程をさらに含むことが好ましい。また、前記矯正工程では、矯正工程によって形成される塑性化領域の体積量を、前記接合工程によって形成された塑性化領域の体積量よりも少なく設定することが好ましい。かかる製造方法によれば、接合工程による熱収縮によって伝熱板が反ってしまったとしても、矯正工程で伝熱板を平坦にすることができる。
また、前記接合工程によって形成された前記ベース部材の裏面側に凸となる反りを、前記ベース部材の表面側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させて矯正する矯正工程をさらに含むことが好ましい。矯正工程としては、プレス矯正、前記ベース部材を衝打具で衝打する衝打工程、ロール矯正のいずれかを行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、接合工程による熱収縮によって伝熱板が反ってしまったとしても、矯正工程で伝熱板を平坦にすることができる。
本発明によれば、接合部分の水密性及び気密性の高い伝熱板の製造方法を提供することができる。
第一実施形態に係る伝熱板を示した図であって、(a)は、分解斜視図、(b)は、一部の凹溝を示した断面図である。 第一実施形態に係るベース部材に蓋板を配置した状態を示した断面図である。 (a)は、小型回転ツールを示した側面図、(b)は、接合用回転ツールを示した側面図である。 第一実施形態に係る接合工程を示した図であって、(a)は、平面図、(b)は、(a)のI−I線断面図である。 第一実施形態に係る接合工程を示した平面図である。 第一実施形態に係る変形例を示した斜視図である。 第二実施形態に係るベース部材に蓋板を配置した状態を示した断面図である。 第二実施形態に係る接合工程を示した斜視図である。 第二実施形態に係る変形例を示した斜視図である。 接合工程後の伝熱板を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、(a)のII−II線断面図である。 第三実施形態に係るプレス矯正を示した斜視図である。 第三実施形態に係るプレス矯正を示した側面図であって、(a)は、プレス前、(b)は、プレス中を示す。 第三実施形態に係るプレス矯正を示した平面図である。 第三実施形態に係るロール矯正を段階的に示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、矯正前、(c)は、矯正中を示す。 第三実施形態に係る摩擦攪拌矯正を示した平面図である。 第三実施形態に係る摩擦攪拌矯正の変形例を示した平面図である。 実施例に係るベース部材を示した図であって、(a)は、表面側から見た斜視図、(b)は、裏面側から見た平面図である。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る伝熱板及び伝熱板の製造方法について図面を適宜参照して詳細に説明する。まず、本発明に係る伝熱板の製造方法によって形成される伝熱板1について説明する。
伝熱板1は、図1の(a)及び(b)に示すように、ベース部材2と、蓋板3とを有し、ベース部材2と蓋板3とが摩擦攪拌接合により一体形成される。伝熱板1は、例えば、スパッタリング装置において、ターゲット材を冷却するために使用される。
ベース部材2は、この内部に流れる熱輸送流体の熱を外部に伝達させる役割、あるいは、外部の熱を熱輸送流体に伝達させる役割を果たすものである。ベース部材2は、蓋溝11と、蓋溝11の底面11aに形成された凹溝12と、凹溝12とベース部材2の外部とを連通する貫通孔4とを有する。ベース部材2の材質に特に制限はないが、本実施形態では無酸素銅で形成されている。ベース部材2は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等で形成してもよい。ベース部材2の形状は、本実施形態では外観視略直方体としたが、多角柱体、円柱体等であってもよい。
蓋溝11は、平面視略蛇行状を呈し、ベース部材2の表面2aに凹設されている。蓋溝11は、蓋板3が配置される部位である。蓋溝11は、図1の(b)に示すように、底面11aと、底面11aに立設する側壁11b,11bとを有する。側壁11bの高さは、本実施形態では蓋板3の厚みよりも小さくなっている。
凹溝12は、平面視略蛇行状を呈し、蓋溝11の底面11aの中央に凹設されている。凹溝12は、熱を外部に輸送する熱輸送流体(本実施形態では冷却水)が流れる部位である。凹溝12は、図1の(b)に示すように、底面12aと、底面12aに立設する壁面12b,12bとを有する。凹溝12の深さは、伝熱板1の用途に応じて適宜設定すればよいが、本実施形態ではベース部材2の厚みの2/3程度に形成されている。
貫通孔4は、図1に示すように、ベース部材2の外部と凹溝12とを連通し、熱輸送流体を循環させる。貫通孔4は、ベース部材2の左側の側面2cと凹溝12を連通するとともに、ベース部材2の右側の側面2cと凹溝12とを連通する。これにより、ベース部材2の一方の側面2cから流入した冷却水は、ベース部材2内をジグザグに流れて他方の側面2cから流出する。貫通孔4の形状、数及び設置位置は、冷却水の種類や流量に応じて適宜変更可能である。貫通孔4は、公知の穴あけ加工によって形成すればよい。
蓋板3は、図1に示すように、ベース部材2と同等の材料からなる板状形材である。蓋板3は、裏面3aと、表面3bと、側面3c,3dとを備え、蓋溝11の平面形状と同等に形成されている。蓋板3は、蓋溝11に配置された後に、摩擦攪拌接合によって凹溝12の開口部を封止する。
図2は、第一実施形態に係るベース部材に蓋板を配置した断面図である。図2に示すように、蓋板3の板厚は、蓋溝11の側壁11bの深さよりも大きく形成されている。したがって、ベース部材2の蓋溝11に蓋板3を配置すると、蓋板3の表面3bがベース部材2の表面2aより突出する。ベース部材2の表面2aから蓋板3の表面3bまでの高低差E1は、適宜設定すればよいが、例えば0.3mm〜1.0mmに設定する。蓋溝11の側壁11bと、蓋板3の側面3cとが対向する部分には突合部V1が形成される。また、蓋溝11の側壁11bと、蓋板3の側面3dとが対向する部分には突合部V1が形成される。
次に、後記する摩擦攪拌接合に用いる小型の回転ツール(以下、「小型回転ツールF」という。)及び小型回転ツールFよりも大型の回転ツール(以下、「接合用回転ツールG」という。)について図3を用いて説明する。
図3の(a)に示す小型回転ツールFは、主に後記する仮接合工程や矯正工程で使用する。小型回転ツールFは、工具鋼などベース部材2よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部F1と、このショルダ部F1の下端面F11に突設された攪拌ピン(プローブ)F2とを備えて構成されている。小型回転ツールFの寸法・形状は、ベース部材2の材質や厚さ等に応じて設定すればよいが、少なくとも、接合用回転ツールG(図3の(b)参照)よりも小型にする。このようにすると、接合用回転ツールGを用いる場合よりも小さな負荷で摩擦攪拌接合を行うことが可能となるので、摩擦攪拌装置に掛かる負荷を低減することが可能となり、さらには、小型回転ツールFの移動速度(送り速度)を接合用回転ツールGの移動速度よりも高速にすることも可能になるので、摩擦攪拌接合に要する作業時間やコストを低減することが可能となる。
ショルダ部F1の下端面F11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部F1の外径Xの大きさに特に制限はないが、本実施形態では、接合用回転ツールGのショルダ部G1の外径Yよりも小さくなっている。
攪拌ピンF2は、ショルダ部F1の下端面F11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。攪拌ピンF2の外径の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、最大外径(上端径)Xが接合用回転ツールGの攪拌ピンG2の最大外径(上端径)Yよりも小さく、かつ、最小外径(下端径)Xが攪拌ピンG2の最小外径(下端径)Yよりも小さくなっている。攪拌ピンF2の長さLは、蓋溝11の側壁11bの高さよりも小さく形成されている。
図3の(b)に示す接合用回転ツールGは、主に後記する接合工程で使用する。接合用回転ツールGは、工具鋼などベース部材2よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部G1と、このショルダ部G1の下端面G11に突設された攪拌ピン(プローブ)G2とを備えて構成されている。ショルダ部G1の下端面G11は、小型回転ツールFと同様に、凹面状に成形されている。攪拌ピンG2は、ショルダ部G1の下端面G11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。攪拌ピンG2の長さLは、蓋溝11の側壁11bの高さの60%〜100%の長さで形成されている。
次に、伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、(1)蓋溝形成工程、(2)凹溝形成工程、(3)蓋溝閉塞工程、(4)接合工程を実行する。
(1)蓋溝形成工程、(2)凹溝形成工程
蓋溝形成工程では、具体的な図示はしないが、無酸素銅製の平板の表面に、公知のエンドミル等を用いて蓋溝11を凹設する。凹溝形成工程では、蓋溝11の底面11aの中央に凹溝12を凹設する。なお、凹溝12を凹設した後に、蓋溝11を凹設してもよい。
(3)蓋溝閉塞工程
蓋溝閉塞工程では、図2に示すように、ベース部材2の表面2a側に開口する蓋溝11に蓋板3を配置する。蓋板3を配置すると、蓋溝11の側壁11b,11bと、蓋板3の側面3c,3dとで突合部V1が形成される。
(4)接合工程
接合工程では、突合部V1に対して摩擦攪拌接合を行う。接合工程では、図4に示すように、接合用回転ツールGを右回転させつつベース部材2の表面2aに設定した開始位置SM1に挿入した後、接合用回転ツールGの軸芯と突合部V1とを重ね合わせながら移動させる。接合用回転ツールGを移動させることにより、塑性化領域W1が形成される。
図4の(b)に示すように、本実施形態では、接合用回転ツールGを右回転させつつ、進行方向右側に蓋板3が位置するように設定する。接合用回転ツールGの押込み量H1(接合用回転ツールGのショルダ部G1の下端面G11から蓋板3の表面3bまでの距離)は、高低差E1よりも大きく設定している。塑性化領域W1の最深部は、蓋溝11の底面11bよりも深い位置に達するように設定している。
本実施形態に係る接合工程では、ベース部材2の表面2a及び蓋板3の表面3bのうち、高さ位置の低いベース部材2の表面2a側がシアー側となるように設定している。
図5に示すように、接合用回転ツールGの軸芯と、突合部V1とが重なるように接合用回転ツールGを移動させ、蓋板3の回りを一周させたら、既存の塑性化領域W1上に再度ルートを設定して移動させた後、接合用回転ツールGを突合部V1よりも外側(ベース部材2側)に偏移させ、ベース部材2の表面2a上に設定した終了位置EM1で接合用回転ツールGを離脱させる。このように、摩擦攪拌接合によって形成される塑性化領域W1の一部を重複させることで、突合部V1の全体に対して確実に摩擦攪拌接合を行うことができる。
なお、接合工程の開始位置SM1及び終了位置EM1は、本実施形態では前記したように設定したが、他の位置であっても構わない。また、蓋板3が比較的大きい部材である場合は、接合用回転ツールGよりも小さい小型回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行って蓋板3をベース部材2に仮付けした後に、接合用回転ツールGを用いて摩擦攪拌接合を行ってもよい。これにより、蓋板3の位置決め精度を高めることができる。
以上説明した伝熱板の製造方法では、蓋板3の表面3bの高さ位置よりもベース部材2の表面2aを低く設定するとともに、高さ位置の低いベース部材2の表面2a側がシアー側となるように、接合用回転ツールGの回転方向及び進行方向を設定した。これにより、シアー側の接合用回転ツールGとベース部材2との接触面積が小さくなるため、ベース部材2側のメタルの温度は、蓋板3側のメタルの温度(以下、接合温度ともいう)よりも低くなるとともに、ベース部材2側のメタルの流動性も、蓋板3側のメタルの流動性よりも低くなる。
言い換えると、シアー側であるベース部材2の表面2aから接合用回転ツールGの先端までの距離は、フロー側である蓋板3の表面3bから接合用回転ツールGの先端までの距離よりも短くなるため、蓋板3側に比べてベース部材2側の方が攪拌される領域が小さい。これにより、ベース部材2側のメタルの接合温度は、蓋板3側のメタルの接合温度よりも低くなるとともに、ベース部材2側のメタルの流動性も、蓋板3側のメタルの流動性よりも低くなる。
つまり、ベース部材2及び蓋板3の表面同士を面一にして摩擦攪拌接合を行った場合には、シアー側に係るメタルの接合温度及び流動性が高くなり、メタルが高温軟化してバリとなって排出されやすいため接合欠陥の原因となっていたが、本実施形態によれば、シアー側とフロー側のメタルの接合温度及び流動性の不均衡を是正することができるため、接合欠陥の発生を防ぐことができる。
また、本実施形態では、高低差E1(表面2aから表面3bまでの距離)よりも接合用回転ツールGの押込み量H1を大きく設定し、接合用回転ツールGの下端面G11をベース部材2の表面2aよりも下方に押し込むため、突合部V1を確実に摩擦攪拌接合することができる。
また、本実施形態では、接合用回転ツールGを蓋板3の周囲で一周させ、突合部V1から外側(ベース部材2側)に偏移させた後、蓋板3の側面3cから離れた位置で接合用回転ツールGを離脱させた。これにより、接合用回転ツールGの離脱位置を比較的肉厚のベース部材2に設けることができるため、水密性及び気密性の低下を防止することができる。
ここで、図6は、第一実施形態の変形例を示した斜視図である。第一実施形態と同様に、ベース部材2の表面2aよりも、蓋板3の表面3bの高さ位置を高くした場合、接合用回転ツールGを左回転にしつつ、蓋板3が進行方向左側に位置するように設定してもよい。このような形態であっても、表面の高さ位置の低いベース部材2側が、シアー側となる。これにより、第一実施形態と同様に、シアー側とフロー側のメタルの接合温度及び流動性の不均衡を是正することができるため、接合欠陥の発生を防ぐことができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態は、蓋板3の表面3bの高さ位置が、ベース部材2の表面2aの高さ位置よりも低い点で第一実施形態と相違する。第二実施形態では、第一実施形態と共通する部分については同一の符号を付して詳細な説明は省略する
本実施形態に係る伝熱板1Aは、ベース部材2の蓋溝11に蓋板3を配置すると、蓋板3の表面3bが、ベース部材2の表面2aよりも高低差E2分低く設定されている。
本実施形態に係る接合工程では、図8に示すように、突合部V1と接合用回転ツールGの軸芯とを重ね合わせた状態で、突合部V1に沿って移動させ摩擦攪拌接合を行う。本実施形態では、接合用回転ツールGを左回転させるとともに、進行方向右側に蓋板3が位置するように設定する。つまり、接合用回転ツールGの回転方向と進行方向を、ベース部材2及び蓋板3のうち高さ位置の低い蓋板3側がシアー側となるように設定する。
本実施形態に係る接合工程によれば、ベース部材2の表面2aの高さ位置よりも蓋板3の表面3bの高さ位置を低く設定するとともに、高さ位置の低い蓋板3の表面3b側がシアー側となるように、接合用回転ツールGの回転方向及び進行方向を設定した。これにより、接合用回転ツールGと蓋板3との接触面積が小さくなるため、蓋板3側メタルの接合温度及び流動性はともに低くなる。
言い換えると、シアー側である蓋板3の表面3bから接合用回転ツールGの先端までの距離は、フロー側であるベース部材2の表面2aから接合用回転ツールGの先端までの距離よりも短くなるため、ベース部材2側に比べて蓋板3側の方が攪拌される領域が小さい。これにより、蓋板3側のメタルの接合温度は、ベース部材2側のメタルの接合温度よりも低くなるとともに、蓋板3側のメタルの流動性も、ベース部材2側のメタルの流動性よりも低くなる。
つまり、ベース部材2及び蓋板3の表面同士を面一にして摩擦攪拌接合を行った場合には、シアー側に係るメタルの接合温度及び流動性が高くなり、メタルが高温軟化してバリとなって排出されやすいため接合欠陥の原因となっていたが、本実施形態によれば、シアー側とフロー側のメタルの流動性及び接合温度の不均衡を是正することができるため、接合欠陥の発生を防ぐことができる。
ここで図9は、第二実施形態の変形例を示した斜視図である。第二実施形態と同様に、ベース部材2の表面2aよりも蓋板3の表面3bの高さ位置を低くした場合、接合用回転ツールGを右回転させつつ、蓋板3が進行方向左側に位置するように設定してもよい。このような形態であっても、高さ位置の低い蓋板3側にシアー側が設定される。これにより、第二実施形態と同様に、シアー側とフロー側のメタルの流動性及び接合温度の不均衡を是正することができるため、接合欠陥の発生を防ぐことができる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態では、第一実施形態と同様に、蓋溝形成工程、凹溝形成工程、蓋溝閉塞工程、接合工程を含むとともに、伝熱板の熱収縮による反りを矯正する矯正工程をさらに含む点で第一実施形態と相違する。なお、第三実施形態に係る伝熱板の製造方法は、矯正工程を含む点を除いては、第一実施形態と同等であるため、重複する部分については詳細な説明を省略する。
矯正工程は、接合工程で発生した伝熱板の反りを矯正し、伝熱板を平坦に形成することを目的とする。前記した接合工程では、図10に示すように、摩擦攪拌接合によって伝熱板1の表面側に塑性化領域W1が形成されるが、当該塑性化領域W1が熱収縮によって縮むため、伝熱板1の表面側が凹状(裏面側が凸状)となるように反ってしまうという問題があった。特に、伝熱板1の表面Zaに示す地点a〜地点jのうち、伝熱板1の四隅に係る地点a,c,f,hにおいては、その反りの影響が顕著に現れる傾向がある。したがって、矯正工程を行って反りを矯正し伝熱板1を平坦にする。
なお、図10のうち、地点jは、伝熱板1の中心地点を示し、地点b,d,e,gは、ベース部材2の各辺の中間地点を示す。また、伝熱板1の表面Zaに示す地点a〜地点jに対応する裏面Zbの各点を地点a’〜j’とする。また、伝熱板1の地点aから地点f方向を縦方向、地点aから地点c方向を横方向とする。
本実施形態に係る矯正工程では、伝熱板1の裏面Zbから、伝熱板1の表面Za側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させて反りを矯正する方法と、伝熱板1の裏面Zbに摩擦攪拌を行って裏面Zbにも熱収縮を発生させて反りを矯正する方法と、主に二種類の方法を備えている。さらに、曲げモーメントを作用させる方法では、プレス矯正、衝打矯正及びロール矯正と3つの矯正方法を備えている。矯正工程では、以下に示す各工程から伝熱板1の反り具合にしたがって一以上の工程を行えばよい。
(プレス矯正)
第一実施形態で示した接合工程が終了したら、摩擦攪拌で発生したバリを除去するとともに、図11に示すように、伝熱板1の裏面Zbが上方を向くように裏返し、裏面Zbの中心地点j’(図10の(b)参照)に板状の第一補助部材T1を配置する。さらに、伝熱板1の表面Za側の四隅に、板状の第二補助部材T2,T2及び第三補助部材T3,T3を配置する。即ち、第二補助部材T2、第三補助部材T3は、第一補助部材T1を挟んで両側に配置される。第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、プレス矯正を行う際の当て材又は台座となる部材であるとともに、伝熱板1が傷つかないようにするための部材である。第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、伝熱板1よりも軟質の材料であればよく、例えば、アルミニウム合金、硬質ゴム、プラスチック、木材を用いることができる。なお、第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、伝熱板1の力学特性や反りの曲率に応じて、反りとは反対側に撓ませて反りを矯正するのに十分な厚みで設定すればよい。
各補助部材を配置したら、図12の(a)及び(b)に示すように、公知のプレス装置Pを用いて、伝熱板1の裏面Zbから押圧する。即ち、第一補助部材T1にプレス装置PのポンチPaを押し当て、所定の押圧力で押圧する。プレス装置Pによって伝熱板1に圧力が加えられると、図12の(a)及び(b)に示すように、第一補助部材T1が伝熱板1を下側に押し、第二補助部材T2及び第三補助部材T3が伝熱板1の両端側を上側に押すため、伝熱板1には曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントは伝熱板1の表面Za側に引張応力を発生させるため、伝熱板1が強制的に下側に凸に撓ませられる。
プレス装置の押圧力は、伝熱板1の厚みや材料によって適宜設定すればよいが、図12の(b)に示すように、伝熱板1の表面Za側が下に凸となって、表面Zaに引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させることが好ましい。
また、本実施形態では、図13に示すように、中心地点j’だけでなく伝熱板1の裏面Zbの地点b’、地点d’、地点e’及び地点g’付近に対しても押圧を行う。即ち、伝熱板1の裏面Zbにかかる各辺の中間地点である地点b’、地点d’、地点e’及び地点g’を含んだ位置H2〜H5に第一補助部材T1を配置して、プレス装置Pによって押圧を行う。これにより、伝熱板1をバランスよく矯正でき、平坦性をより高めることができる。
なお、プレスする位置は、本実施形態では5箇所に設定したが、これに限定されるものではなく、接合工程によって生じる伝熱板1の反りに応じて適宜設定すればよい。
(衝打矯正)
次に、衝打矯正について説明する。衝打矯正については、プレス矯正と近似するため、
具体的な図示は省略する。衝打矯正とは、例えばハンマーなどの衝打具を用いて伝熱板に発生した反りを矯正することをいう。衝打矯正は、プレス装置Pに替えてハンマー等の衝打具で伝熱板1を衝打する点を除いては、プレス矯正と略同等である。
衝打矯正では、プレス矯正と同様に補助部材を配置した後、図12及び図13を参照するように、伝熱板1の裏面Zbから例えばプラスチックハンマー等の衝打具で伝熱板1を衝打する。伝熱板1を衝打すると、伝熱板1の表面Za側に引張応力を発生させるため、伝熱板1が強制的に下側に凸に撓ませられる(図12の(b)参照)。これにより、伝熱板1の反りを矯正して平坦にすることができる。また、プレス矯正と同様に、必要に応じて伝熱板1の裏面Zbの位置H2〜H5を衝打することで、伝熱板1をバランスよく矯正することができる。
衝打矯正は、プレス矯正と比べると、プレス装置等を準備する手間が省けるため、作業を容易に行うことができる。また、衝打矯正は、作業が容易であるため伝熱板1が小さい場合や薄い場合に有効である。なお、衝打矯正を終了した後は、衝打により発生したバリを除去することが好ましい。
(ロール矯正)
次に、ロール矯正について説明する。図14の(a)に示すように、前記した接合工程が終了したら、摩擦攪拌で発生したバリを除去するとともに、伝熱板1の裏面Zbが上方を向くように裏返し、裏面Zbの中心地点j’を含んで縦方向と平行になるように長板形状の第一補助部材T1を配置する。さらに、伝熱板1の表面Za側の縁部において縦方向と平行になるように、長板形状の第二補助部材T2及び第三補助部材T3を配置する。即ち、第二補助部材T2、第三補助部材T3は、第一補助部材T1を挟んで両側に配置される。
そして、第一補助部材T1の上側に、第一補助部材T1と直交するようにロールR1を配置し、第二補助部材T2,T3の下側に第二補助部材T2及び第三補助部材T3と直交するようにロールR2を配置する。つまり、伝熱板1は、図14の(b)に示すように、上側に凸の状態でロールR1,R2の間に配置され、第一補助部材T1乃至第三補助部材T3を介してロールR1,R2に狭持される。
第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、ロール矯正を行う際の当て材であるとともに、伝熱板1が傷つかないようにするための部材である。第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、伝熱板1よりも軟質の材料であればよく、例えば、アルミニウム合金、硬質ゴム、プラスチック、木材を用いることができる。
ここで、ロールR1,R2が互いに近づいて伝熱板1に圧力を加えると、図14の(b)及び(c)に示すように、第一補助部材T1が伝熱板1を下側に押し、第二補助部材T2及び第三補助部材T3が伝熱板1の両端側を上側に押すため、伝熱板1には曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントは伝熱板1の表面Za側に引張応力を発生させるため、伝熱板1が強制的に下側に凸に撓ませられる。
また、図14の(a)に示すように、ロールR1が矢印α方向に回転するとともに、ロールR2が矢印β方向に回転すると、ロールR1,R2は伝熱板1に対して矢印γ方向(ロール送り方向)に相対的に移動する。また、ロールR1が矢印β方向に回転するとともにロールR2が矢印α方向に回転すると、ロールR1,R2は伝熱板1に対して矢印δ方向(ロール送り方向)に相対的に移動する。
したがって、伝熱板1に作用する曲げモーメントの位置が、その相対的な移動に伴って遷移していくため、伝熱板1の全体が強制的に下側に凸に撓まされる。そのため、この相対的な移動を繰り返して往復動させることによって、反りを矯正していくことが可能になる。なお、第一補助部材T1乃至第三補助部材T3は、伝熱板1の力学特性や反りの曲率に応じて、反りとは反対側に撓ませて反りを矯正するのに十分な厚みで設定すればよい。
また、伝熱板1の縦方向にロールR1,R2を回転させて矯正工程を行なった後、横方向にロールR1,R2を回転させてもよい。即ち、第一補助部材T1乃至第三補助部材T3を横方向と平行になるように配置するとともに、第一補助部材T1乃至第三補助部材T3に対して直交するようにロールR1,R2を配置する。そして、ロールR1,R2を横方向に往復動させる。これにより、伝熱板1をバランスよく矯正することができる。
また、ここでは、伝熱板1の裏面Zbを上にして、矯正工程を行うものとして説明したが、裏返さずに表面Zaを上にして矯正工程を行うようにしてもよい。この場合、前記した各構成部品は、表裏対称に表れるため、説明を省略する。
(摩擦攪拌矯正)
次に、摩擦攪拌矯正について説明する。摩擦攪拌矯正では、回転ツール用いて伝熱板1(ベース部材2)の裏面Zbから摩擦攪拌を行う。本実施形態に係る摩擦攪拌矯正では、図15に示すように、小型回転ツールF(矯正用回転ツール)を用いて、伝熱板1の裏面Zbに対して摩擦攪拌を行う。当該摩擦攪拌によって、裏面Zbには、塑性化領域W2が形成される。摩擦攪拌矯正のルートは、伝熱板1の表面Zaに形成された塑性化領域W1と同等の形状となるように設定する。つまり、表面Zaに形成された塑性化領域W1と裏面Zbに形成される塑性化領域W2との長さは等しい。本実施形態では、表面Za側では接合用回転ツールGを用いており、裏面Zb側では小型回転ツールFを用いているため、矯正工程における加工度が、接合工程の加工度よりも小さくなる。これにより、伝熱板1の平坦性を高めることができる。この理由については実施例で説明する。ここで、加工度とは、摩擦攪拌によって形成された塑性化領域の体積量を示す。
例えば、摩擦攪拌矯正では、裏面Zb側でも接合用回転ツールGを用いるとともに、摩擦攪拌矯正のルートを短くすることで、表面Za側及び裏面Zb側の加工度を変えてもよい。また、摩擦攪拌矯正の回転ツールの移動軌跡は、前記した形態に限定されるものではない。摩擦攪拌矯正の回転ツールの移動軌跡は、伝熱板1の反り具合に応じて適宜設定すればよい。
図16は、第三実施形態に係る摩擦攪拌矯正の変形例を示した図である。なお、当該変形例では、説明の便宜上略正方形のベース部材2を用いた場合を例にする。図16の(a)及び(b)に示す第一変形例及び第二変形例の回転ツールの軌跡(裏面側の塑性化領域W2)は、いずれもベース部材2の中心地点j’を囲むように形成されていることを特徴とする。また、第一変形例は、ベース部材2の外形形状に対して相似になるように形成されている。また、図16の(b)に示す第二変形例のように、格子状に形成してもよい。
図16の(c)及び(d)に示す第三変形例及び第四変形例の回転ツールの軌跡(裏面側の塑性化領域W2)は、いずれもベース部材2の中心地点j’を通過して放射状となるように形成されていることを特徴とする。図16の(c)に示す第三変形例は、中心地点j’を始点・終点とするループを複数含み、中心地点j’に対して点対称となるように形成されている。また、第三変形例は、一筆書きの要領で形成することができるため、作業効率を高めることができる。図16の(d)に示す第四変形例は、中心地点j’を通過するとともに、ベース部材2の対角線に対して平行となるように形成されている。
図16の(e)及び(f)に示す第五変形例及び第六変形例の回転ツールの軌跡(裏面側の塑性化領域W2)は、中心地点j’を通る直線で四分割した領域に、同形状の4つの軌跡がそれぞれ独立して形成されるとともに、中心地点j’を挟んで斜めに対向する軌跡が点対称となるように形成されている。4つの軌跡の形状は、同形状であれば、どのような形状であっても構わない。
以上説明したように、摩擦攪拌矯正では、ベース部材2に行われる接合工程の摩擦攪拌の軌跡に応じて適宜摩擦攪拌のルートを設定して行えばよい。また、伝熱板1の裏面Zbに対して面削加工を行って、裏面Zbに形成された塑性化領域W2を削除してもよい。面削加工を行うことで、裏面Zb側の金属の性質を均一にすることができる。
次に、本発明の実施例について説明する。本発明に係る実施例は、図17の(a)及び(b)に示すように平面視正方形のベース部材2の表面Za及び裏面Zbにそれぞれ3つの円を描くように摩擦攪拌を行い、表面Za側で発生した反りの変形量と、裏面Zb側で発生した反りの変形量を測定した。即ち、表面Za側で発生した反りの変形量の値と、裏面Zb側で発生した反りの変形量の値とが近いほど、ベース部材2の平坦性が高いことを示す。
ベース部材2は、平面視500mm×500mmの直方体であって、厚みが30mm、60mmの二種類ものを用いてそれぞれ測定を行った。ベース部材2の素材は、JIS規格の5052アルミニウム合金である。
摩擦攪拌の軌跡である3つの円は、ベース部材2の中心に設定した地点j又は地点j’を中心とし、表面Za及び裏面Zbともに半径r1=100mm(以下、小円ともいう)、r2=150mm(以下、中円ともいう)、r3=200mm(以下、大円ともいう)に設定した。摩擦攪拌の順序は、小円、中円、大円の順番で行った。
回転ツールは、表面Za側及び裏面Zb側ともに同じ大きさの回転ツールを用いた。回転ツールのサイズは、ショルダ部の外径が20mm、攪拌ピンの長さが10mm、攪拌ピンの根元の大きさ(最大径)が9mm、攪拌ピンの先端の大きさ(最小径)が6mmのものを用いた。回転ツールの回転数は、600rpm、送り速度は、300mm/minに設定した。また、表面Za側及び裏面Zb側ともに回転ツールの押込み量は一定に設定した。図17に示すように、表面Za側において形成された塑性化領域を小円から大円に向けてそれぞれ塑性化領域W21乃至塑性化領域W23とする。また、裏面Zb側において形成された塑性化領域を小円から大円に向けて塑性化領域W31乃至W33とする。当該実施例における各測定結果を以下の表1〜表4に示す。
表1は、ベース部材2の板厚が30mmであって、表面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。「FSW前」は、摩擦攪拌を行う前において、中心地点j(基準j)と各地点(地点a〜地点h)との高低差を示している。「FSW後」は、基準jをゼロとして、3つの円の摩擦攪拌を行った後において、基準jと各地点との高低差を示している。「表面側変形量」は、各地点における(FSW後−FSW前)の値を示している。「表面側変形量」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。「FSW前」及び「FSW後」のマイナス値は、基準jよりも下方に位置していることを意味する。
Figure 0005177061
表2は、ベース部材2の板厚が30mmであって、裏面側から摩擦攪拌を行った場合(矯正工程)の測定値を示した表である。「FSW前」は、摩擦攪拌を行う前において、中心地点j’(基準j’)と各地点(a’〜h’)との高低差を示している。
「FSW1」は、図17を参照するように、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量1」は、各地点における(FSW1−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量1」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW2」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)に加えてさらに、中円(半径r2)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量2」は、各地点における(FSW2−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量2」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW3」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)、中円(半径r2)に加えてさらに、大円(半径r3)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量3」は、各地点における(FSW3−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量3」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
Figure 0005177061
表3は、ベース部材2の板厚が60mmであって、表面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。表3の各項目は、表1の各項目と略同等の意味を示す。
Figure 0005177061
表4は、ベース部材の板厚が60mmであって、裏面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。表4の各項目は、表2の各項目と略同等の意味を示す。
Figure 0005177061
表1の「表面側変形量」の平均値(1.61)と、表2の「裏面側変形量1」の平均値(2.04)とを比較すると、「裏面側変形量1」の値の方が大きい。同様に、「裏面側変形量2」の平均値(2.95)及び「裏面側変形量3」の平均値(3.53)も、「表面側変形量」の平均値(1.61)よりも大きな値となっている。つまり、ベース部材の板厚が30mmの場合は、裏面側から小円の摩擦攪拌のみを行っただけでも、ベース部材の反りが戻りすぎてしまう。したがって、ベース部材30mmの場合は、表面側よりも低い加工度でベース部材2の平坦性を高めることができる。
表3の「表面側変形量」の平均値(0.98)と、表4の「裏面側変形量2」の平均値(0.91)とを比較すると、両者の変形量が近似している。したがって、ベース部材2の板厚が60mmの場合は、裏面側から小円及び中円の摩擦攪拌を行ったときに、ベース部材2の平坦性が高いことが確認できた。つまり、板厚が60mmの場合は、表面側に比べて裏面側の加工度を低く設定すればベース部材2の平坦性を高めることができる。
1 伝熱板
2 ベース部材
3 蓋板
4 貫通孔
11 蓋溝
12 凹溝
F 小型回転ツール
F1 ショルダ部
F2 攪拌ピン
G 接合用回転ツール
G1 ショルダ部
G2 攪拌ピン
SM1 開始位置
EM1 終了位置
W1,W2 塑性化領域

Claims (13)

  1. 金属部材からなるベース部材の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、金属部材からなる蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、
    前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う接合工程と、を含む伝熱板の製造方法において、
    前記蓋溝閉塞工程では、前記蓋板の表面が前記ベース部材の表面よりも高い位置になるように配置し、
    前記接合工程では、前記蓋板が前記接合用回転ツールの進行方向に対して右側に位置する場合、前記接合用回転ツールの回転方向を右回りに設定し、
    前記蓋板が前記接合用回転ツールの進行方向に対して左側に位置する場合、前記接合用回転ツールの回転方向を左回りに設定することを特徴とする伝熱板の製造方法。
  2. 金属部材からなるベース部材の表面側に開口する凹溝の周囲に形成された蓋溝に、金属部材からなる蓋板を配置する蓋溝閉塞工程と、
    前記蓋溝の側壁と前記蓋板の側面との突合部に沿って接合用回転ツールを相対移動させて摩擦攪拌を行う接合工程と、を含む伝熱板の製造方法であって、
    前記蓋溝閉塞工程では、前記蓋板の表面が前記ベース部材の表面よりも低い位置になるように配置し、
    前記接合工程では、前記蓋板が前記接合用回転ツールの進行方向に対して右側に位置する場合、前記接合用回転ツールの回転方向を左回りに設定し、
    前記蓋板が前記接合用回転ツールの進行方向に対して左側に位置する場合、前記接合用回転ツールの回転方向を右回りに設定することを特徴とする伝熱板の製造方法。
  3. 前記接合工程では、前記接合用回転ツールの押込み量を、前記蓋板の表面と前記ベース部材の表面との高低差よりも大きく設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
  4. 前記接合工程では、前記接合用回転ツールの軌跡の始端と終端とをオーバーラップさせ、摩擦攪拌によって形成される塑性化領域の一部を重複させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
  5. 前記接合工程では、前記接合用回転ツールで前記蓋板の周囲を一周させて塑性化領域を形成した後、前記接合用回転ツールを前記突合部から前記ベース部材側に偏移させながら離間させ、前記蓋板の側面から離れた位置で前記接合用回転ツールの攪拌ピンを離脱させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
  6. 前記接合工程では、前記接合用回転ツールの攪拌ピンの長さを、前記蓋溝の側壁の高さの60%〜100%の範囲に設定することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
  7. 前記接合工程では、前記接合用回転ツールよりも小型の回転ツールを用いて前記突合部に対して仮接合を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
  8. 回転ツールを用いて前記ベース部材の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
  9. 前記矯正工程では、矯正工程によって形成される塑性化領域の体積量を、前記接合工程によって形成された塑性化領域の体積量よりも少なく設定することを特徴とする請求項8に記載の伝熱板の製造方法。
  10. 前記接合工程によって形成された前記ベース部材の裏面側に凸となる反りを、前記ベース部材の表面側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させて矯正する矯正工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
  11. 前記矯正工程では、前記ベース部材をプレス矯正することにより前記反りを矯正することを特徴とする請求項10に記載の伝熱板の製造方法。
  12. 前記矯正工程では、前記ベース部材を衝打具で衝打することにより前記反りを矯正することを特徴とする請求項10に記載の伝熱板の製造方法。
  13. 前記矯正工程では、前記ベース部材をロール矯正することにより前記反りを矯正することを特徴とする請求項10に記載の伝熱板の製造方法。


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