JP2019155414A - 液冷ジャケットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる液冷ジャケットの製造方法を提供する。【解決手段】ジャケット本体2と封止体3とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、ジャケット本体2は第一アルミニウム合金で形成されており、封止体3は第二アルミニウム合金で形成されており、第一アルミニウム合金は第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、回転する攪拌ピンF2のみを封止体3に挿入し、攪拌ピンF2の外周面F10を支柱段差部の段差側面17bに接触させない状態で、第三突合せ部J3に沿って回転ツールFを移動させる際に封止体3の第二アルミニウム合金を隙間に流入させながら摩擦攪拌を行う第二本接合工程を含むことを特徴とする。【選択図】図7
Description
本発明は、液冷ジャケットの製造方法に関する。
例えば、特許文献1には、液冷ジャケットの製造方法が開示されている。図16は、従来の液冷ジャケットの製造方法を示す断面図である。従来の液冷ジャケットの製造方法では、アルミニウム合金製のジャケット本体101の段差部に設けられた段差側面101cと、アルミニウム合金製の封止体102の側面102cとを突き合わせて形成された突合せ部J10に対して摩擦攪拌接合を行うというものである。また、従来の液冷ジャケットの製造方法では、回転ツールFの攪拌ピンF2のみを突合せ部J10に挿入して摩擦攪拌接合を行っている。また、従来の液冷ジャケットの製造方法では、回転ツールFの回転中心軸Cを突合せ部J10に重ねて相対移動させるというものである。
ここで、ジャケット本体101は複雑な形状となりやすく、例えば、4000系アルミニウム合金の鋳造材で形成し、封止体102のように比較的単純な形状のものは、1000系アルミニウム合金の展伸材で形成するというような場合がある。このように、アルミニウム合金の材種の異なる部材同士を接合して、液冷ジャケットを製造する場合がある。このような場合は、ジャケット本体101の方が封止体102よりも硬度が高くなることが一般的であるため、図16のように摩擦攪拌接合を行うと、攪拌ピンが封止体102側から受ける材料抵抗に比べて、ジャケット本体101側から受ける材料抵抗が大きくなる。そのため、回転ツールFの攪拌ピンによって異なる材種をバランスよく攪拌することが困難となり、接合後の塑性化領域に空洞欠陥が発生し接合強度が低下するという問題がある。
このような観点から、本発明は、材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる液冷ジャケットの製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部及び前記底部から立ち上がる支柱を有するジャケット本体と、前記支柱の先端が挿入される孔部を形成するとともに前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、摩擦攪拌で用いる回転ツールの攪拌ピンの外周面は先細りとなるように傾斜しており、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記支柱の先端に段差底面と、当該段差底面から前記支柱の先端が先細りとなるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する支柱段差部を形成し、さらに、前記封止体の板厚を前記支柱段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように設定する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより、前記周壁段差部の段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合せて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成し、前記支柱段差部の段差側面と前記孔部の孔壁とを突き合わせた際に隙間があるように第三突合せ部を形成するとともに、前記支柱段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第四突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記攪拌ピンのみを前記封止体に挿入し、前記攪拌ピンの外周面を前記支柱段差部の段差側面に接触させない状態で、前記第三突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させる際に前記封止体の第二アルミニウム合金を前記隙間に流入させながら摩擦攪拌を行う第二本接合工程と、を含むことを特徴とする。
かかる製造方法によれば、封止体と攪拌ピンとの摩擦熱によって第三突合せ部の主として封止体側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第三突合せ部において支柱段差部の段差側面と孔部の孔壁とを接合することができる。また、攪拌ピンのみを封止体に接触させて摩擦攪拌を行うため、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入は殆どない。これにより、第三突合せ部においては主として封止体側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、封止体の板厚を大きくすることで、第二本接合工程における接合部の金属不足を防ぐことができる。
また、前記第二本接合工程において、さらに前記攪拌ピンを前記支柱段差部の段差底面にわずかに接触させた状態で、前記第三突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、第四突合せ部を強固に接合することができるとともに水密性及び気密性を高めることができる。
また、本発明は、底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部及び前記底部から立ち上がる支柱を有するジャケット本体と、前記支柱の先端が挿入される孔部を形成するとともに前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、摩擦攪拌で用いる回転ツールの攪拌ピンの外周面は先細りとなるように傾斜しており、前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記支柱の先端に段差底面と、当該段差底面から前記支柱の先端が先細りとなるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する支柱段差部を形成し、さらに、前記封止体の板厚を前記支柱段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように設定する準備工程と、前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより、前記周壁段差部の段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合せて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成し、前記支柱段差部の段差側面と前記孔部の孔壁とを突き合わせた際に隙間があるように第三突合せ部を形成するとともに、前記支柱段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第四突合せ部を形成する載置工程と、回転する前記攪拌ピンのみを前記封止体に挿入し、前記攪拌ピンの外周面を前記支柱段差部の段差側面にわずかに接触させた状態で、前記第三突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させる際に前記封止体の第二アルミニウム合金を前記隙間に流入させながら摩擦攪拌を行う第二本接合工程と、を含むことを特徴とする。
かかる製造方法によれば、封止体と攪拌ピンとの摩擦熱によって第三突合せ部の主として封止体側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第三突合せ部において支柱段差部の段差側面と孔部の孔壁とを接合することができる。また、攪拌ピンの外周面を支柱段差部の段差側面にわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体から封止体への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。これにより、第三突合せ部においては主として封止体側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。また、封止体の板厚を大きくすることで、第二本接合工程における接合部の金属不足を防ぐことができる。
また、前記第二本接合工程において、さらに前記攪拌ピンを前記支柱段差部の段差底面にわずかに接触させた状態で、前記第三突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、第四突合せ部を強固に接合することができる。
また、前記第一突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させ前記開口部の周りに一周させて摩擦攪拌を行う第一本接合工程を行うことが好ましい。
かかる製造方法によれば、液冷ジャケットの水密性及び気密性を高めることができる。
また、前記準備工程では、前記ジャケット本体をダイキャストで形成するとともに前記底部が表面側に凸となるように形成し、かつ、前記封止体が表面側に凸となるように形成することが好ましい。
摩擦攪拌接合の入熱によって塑性化領域に熱収縮が発生し、液冷ジャケットの封止体側が凹となるように変形するおそれがあるが、かかる製造方法によれば、ジャケット本体及び封止体を予め凸にしておき、熱収縮を利用することで液冷ジャケットを平坦にすることができる。
また、前記ジャケット本体の変形量を予め計測しておき、前記第一本接合工程及び前記第二本接合工程において、前記回転ツールの攪拌ピンの挿入深さを前記変形量に合わせて調節しながら摩擦攪拌を行うことが好ましい。
かかる製造方法によれば、ジャケット本体及び封止体を凸状に湾曲させて摩擦攪拌接合を行った場合でも、液冷ジャケットに形成される塑性化領域の長さ及び幅を一定にすることができる。
また、前記第一本接合工程及び第二本接合工程に先だって、前記第一突合せ部又は第三突合せ部を仮接合する仮接合工程を含むことが好ましい。
かかる製造方法によれば、仮接合を行うことで第一本接合工程の際の第一突合せ部の目開きを防ぐことができる。
また、前記第一本接合工程では、冷却媒体が流れる冷却板を前記底部の裏面側に設置し、前記冷却板で前記ジャケット本体及び前記封止体を冷却しながら摩擦攪拌を行うことが好ましい。
かかる製造方法によれば、摩擦熱を低く抑えることができるため、熱収縮による液冷ジャケットの変形を小さくすることができる。
また、前記冷却板の表面と前記底部の裏面とを面接触させることが好ましい。かかる製造方法によれば、冷却効率を高めることができる。
また、前記冷却板は、前記冷却媒体が流れる冷却流路を有し、前記冷却流路は、前記第一本接合工程における前記回転ツールの移動軌跡に沿う平面形状を備えることが好ましい。
かかる製造方法によれば、摩擦攪拌される部分を集中的に冷却できるため、冷却効率をより高めることができる。
また、前記冷却媒体が流れる冷却流路は、前記冷却板に埋設された冷却管によって構成されていることが好ましい。かかる製造方法によれば、冷却媒体の管理を容易に行うことができる。
また、前記第一本接合工程及び前記第二本接合工程では、前記ジャケット本体と前記封止体とで構成される中空部に冷却媒体を流し、前記ジャケット本体及び前記封止体を冷却しながら摩擦攪拌を行うことが好ましい。
かかる製造方法によれば、摩擦熱を低く抑えることができるため、熱収縮による液冷ジャケットの変形を小さくすることができる。また、冷却板等を用いずに、ジャケット本体自体を利用して冷却することができる。
本発明に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、材種の異なるアルミニウム合金を好適に接合することができる。
[第一実施形態]
本発明の実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態の液冷ジャケットの製造方法は、ジャケット本体2と、封止体3とを摩擦攪拌接合して液冷ジャケット1を製造するものである。液冷ジャケット1は、封止体3の上に発熱体(図示省略)を設置するとともに、内部に流体を流して発熱体と熱交換を行う部材である。なお、以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面という意味である。
本発明の実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。図1に示すように、本実施形態の液冷ジャケットの製造方法は、ジャケット本体2と、封止体3とを摩擦攪拌接合して液冷ジャケット1を製造するものである。液冷ジャケット1は、封止体3の上に発熱体(図示省略)を設置するとともに、内部に流体を流して発熱体と熱交換を行う部材である。なお、以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面という意味である。
本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。準備工程は、ジャケット本体2と封止体3とを準備する工程である。ジャケット本体2は、底部10と、周壁部11と、複数の支柱15と、で主に構成されている。ジャケット本体2は、第一アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第一アルミニウム合金は、例えば、JISH5302 ADC12(Al-Si-Cu系)等のアルミニウム合金鋳造材を用いている。
図1に示すように、底部10は、平面視矩形を呈する板状部材である。周壁部11は、底部10の周縁部から矩形枠状に立ち上がる壁部である。周壁部11の内周縁には周壁段差部12が形成されている。周壁段差部12は、段差底面12aと、段差底面12aから立ち上がる段差側面12bとで構成されている。図2に示すように、段差側面12bは、段差底面12aから開口部に向かって外側に広がるように傾斜している。段差側面12bの傾斜角度βは適宜設定すればよいが、例えば、鉛直面に対して3°〜30°になっている。底部10及び周壁部11で凹部13が形成されている。
図1に示すように、支柱15は、底部10から垂直に立ちあがっている。支柱15の本数は特に制限がされないが、本実施形態では4本形成されている。また、支柱15の形状は本実施形態では円柱状になっているが、他の形状であってもよい。支柱15の先端には突出部16が形成されている。突出部16の形状は特に制限されないが、本実施形態では円錐台状になっている。突出部16の高さは、封止体3の板厚よりも小さくなっている。支柱15の端面と突出部16とで支柱段差部17が形成されている。支柱段差部17は、段差底面17aと、段差底面17aから立ち上がる段差側面17bとで構成されている。段差底面17aは、周壁段差部12の段差底面12aと同じ高さ位置に形成されている。段差側面17bは、封止体3の板厚よりも小さくなっている。段差側面17bは、先端に向かうにつれて孔壁4aから離間するように傾斜している。
封止体3は、ジャケット本体2の開口部を封止する板状部材である。封止体3は、周壁段差部12に載置される大きさになっている。封止体3の板厚は、段差側面12bの高さよりも大きくなっている。封止体3には、支柱15と対応する位置に孔部4が形成されている。孔部4は突出部16が嵌め合わされるように形成されている。封止体3は、第二アルミニウム合金を主に含んで形成されている。第二アルミニウム合金は、第一アルミニウム合金よりも硬度の低い材料である。第二アルミニウム合金は、例えば、JIS A1050,A1100,A6063等のアルミニウム合金展伸材で形成されている。
載置工程は、図2に示すように、ジャケット本体2に封止体3を載置する工程である。載置工程では、段差底面12aに封止体3の裏面3bを載置する。段差側面12bと封止体3の外周側面3cとが突き合わされて第一突合せ部J1が形成される。第一突合せ部J1は、段差側面12bと封止体3の外周側面3cとが面接触する場合と、本実施形態のように断面略V字状の隙間をあけて突き合わされる場合の両方を含み得る。また、段差底面12aと、封止体3の裏面3bとが突き合わされて第二突合せ部J2が形成される。
また、載置工程によって孔部4の孔壁4aと支柱段差部17の段差側面17bとが突き合わされて第三突合せ部J3が形成される。第三突合せ部J3は、孔壁4aと支柱段差部17の段差側面17bとが面接触する場合と、本実施形態のように断面略V字状の隙間をあけて突き合わされる場合の両方を含み得る。さらに、封止体3の裏面3bと支柱段差部17の段差底面17aとが突き合わされて第四突合せ部J4が形成される。なお、突出部16は、本実施形態では先細りとなるように形成したが、円柱状としてもよい。つまり、支柱段差部17の段差側面17bと孔部4の孔壁4aとを面接触させてもよいし、微小な隙間をあけて対向させてもよい。
第一本接合工程は、図3及び図4に示すように、回転ツールFを用いて第一突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。回転ツールFは、連結部F1と、攪拌ピンF2とで構成されている。回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。連結部F1は、摩擦攪拌装置(図示省略)の回転軸に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈し、ボルトが締結されるネジ孔(図示省略)が形成されている。
攪拌ピンF2は、連結部F1から垂下しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。図4に示すように、攪拌ピンF2の先端には、回転中心軸Cに対して垂直であり、かつ、平坦な平坦面F3が形成されている。つまり、攪拌ピンF2の外面は、先細りとなる外周面F10と、先端に形成された平坦面F3とで構成されている。側面視した場合において、回転中心軸Cと攪拌ピンF2の外周面F10とのなす傾斜角度αは、例えば5°〜30°の範囲で適宜設定すればよいが、本実施形態では、周壁段差部12の段差側面12bの傾斜角度β及び支柱段差部17の段差側面17bの傾斜角度γ(図2参照)と同一となるように設定されている。
攪拌ピンF2の外周面F10には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端から先端に向かうにつれて左回りに形成されている。言い換えると、螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て左回りに形成されている。
なお、回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。言い換えると、この場合の螺旋溝は、螺旋溝を基端から先端に向けてなぞると上から見て右回りに形成されている。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(ジャケット本体2及び封止体3)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。
図3に示すように、回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行う際には、封止体3に右回転した攪拌ピンF2のみを挿入し、封止体3と連結部F1とは離間させつつ移動させる。言い換えると、攪拌ピンF2の基端部は露出させた状態で摩擦攪拌を行う。回転ツールFの移動軌跡には摩擦攪拌された金属が硬化することにより塑性化領域W1が形成される。本実施形態では、封止体3に設定した開始位置Spに攪拌ピンF2を挿入し、封止体3に対して右廻りに回転ツールFを相対移動させる。
図4に示すように、第一本接合工程では、塑性流動化した金属を第一突合せ部J1の隙間に流入させつつ、攪拌ピンF2のみを封止体3のみに接触させて第一突合せ部J1に沿って一周させる。本実施形態では、攪拌ピンF2の平坦面F3もジャケット本体2に接触しないように挿入深さを設定している。「攪拌ピンF2のみを封止体3のみに接触させた状態」とは、摩擦攪拌を行っている際に、攪拌ピンF2の外面がジャケット本体2に接触していない状態を言い、攪拌ピンF2の外周面F10と段差側面12bとの距離がゼロである場合、又は攪拌ピンF2の平坦面F3と段差底面12aとの距離がゼロである場合も含み得る。
段差側面12bから攪拌ピンF2の外周面F10までの距離が遠すぎると第一突合せ部J1の接合強度が低下する。段差側面12bから攪拌ピンF2の外周面F10までの離間距離Lはジャケット本体2及び封止体3の材料によって適宜設定すればよいが、本実施形態のように攪拌ピンF2の外周面F10を段差側面12bに接触させず、かつ、平坦面F3を段差底面12aに接触させない場合は、例えば、0≦L≦0.5mmに設定し、好ましくは0≦L≦0.3mmに設定することが好ましい。
回転ツールFを封止体3の廻りに一周させたら、塑性化領域W1の始端と終端とを重複させる。回転ツールFは、封止体3の表面3aにおいて、徐々に上昇させて引き抜くようにしてもよい。図5は、本実施形態に係る本接合工程後の接合部の断面図である。塑性化領域W1は、第一突合せ部J1を境に封止体3側に形成されている。また、攪拌ピンF2の平坦面F3は段差底面12aに接触させておらず(図4参照)、塑性化領域W1は、第二突合せ部J2を超えてジャケット本体2に達するように形成される。
第二本接合工程は、図6及び図7に示すように、回転ツールFを用いて第三突合せ部J3を摩擦攪拌接合する工程である。第二本接合工程では、図6に示すように、封止体3の表面3aに設定した開始位置Spに右回転した攪拌ピンF2のみを挿入し、封止体3と連結部F1とは離間させつつ移動させる。言い換えると、攪拌ピンF2の基端部は露出させた状態で摩擦攪拌を行う。回転ツールFの起動軌跡には摩擦攪拌された金属が硬化することにより塑性化領域W2が形成される。
第二本接合工程では、図7に示すように、塑性流動化した金属を第三突合せ部J3の隙間に流入させつつ、攪拌ピンF2のみを封止体3のみに接触させて第三突合せ部J3に沿って一周させる。本実施形態では、攪拌ピンF2の外周面F10を支柱段差部17の段差側面17bに接触させず、かつ、攪拌ピンF2の平坦面F3を段差底面17aに接触させていない。段差側面17bと攪拌ピンF2の外周面F10との離間距離は第一本接合工程と同じである。回転ツールFを突出部16の廻りに一周させたら、塑性化領域W2の始端と終端とを重複させる。回転ツールFは、封止体3の表面3aにおいて、徐々に上昇させて引き抜くようにしてもよい。
以上説明した本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、回転ツールFの攪拌ピンF2と周壁段差部12の段差側面12bとは接触させていないが、封止体3と攪拌ピンF2との摩擦熱によって第一突合せ部J1の主として封止体3側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部J1において段差側面12bと封止体3の外周側面3cとを接合することができる。また、第一本接合工程及び第二本接合工程ともに、攪拌ピンF2のみを封止体3のみに接触させて摩擦攪拌を行うため、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入は殆どない。これにより、第一突合せ部J1及び第三突合せ部J3においては主として封止体3側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、第一突合せ部J1及び第三突合せ部J3に断面V字状の隙間が形成されるが、封止体3の板厚を段差側面12b,17bよりも大きくすることで、第一本接合工程及び第二本接合工程における接合部(塑性化領域W1,W2)の金属不足を防ぐことができる。
また、第一本接合工程では、ジャケット本体2の段差側面12bを外側に傾斜させているため、攪拌ピンF2とジャケット本体2との接触を容易に回避することができる。また、本実施形態では、段差側面12bの傾斜角度βと、攪拌ピンF2の傾斜角度αとを同一(段差側面12bと攪拌ピンF2の外周面F10とを平行)にしているため、攪拌ピンF2と段差側面12bとの接触を避けつつ、攪拌ピンF2と段差側面12bとを極力近接させることができる。
また、第二本接合工程では、支柱段差部17の段差側面17bを先端に向かうにつれて孔壁4aから離間する方向に(支柱15の先端が先細りとなるように)傾斜させているため、攪拌ピンF2とジャケット本体2との接触を容易に回避することができる。また、本実施形態では、段差側面17bの傾斜角度γと、攪拌ピンF2の傾斜角度αとを同一(段差側面17bと攪拌ピンF2の外周面F10とを平行)にしているため、攪拌ピンF2と段差側面17bとの接触を避けつつ、攪拌ピンF2と段差側面17bとを極力近接させることができる。
また、第一本接合工程及び第二本接合工程では、攪拌ピンF2のみを封止体3のみに接触させて摩擦攪拌接合を行うため、攪拌ピンF2の回転中心軸Cに対して一方側と他方側で、攪拌ピンF2が受ける材料抵抗の不均衡をなくすことができる。これにより、塑性流動材がバランス良く摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。
また、第一本接合工程では、回転ツールFの回転方向及び進行方向は適宜設定すればよいが、回転ツールFの移動軌跡に形成される塑性化領域W1のうち、ジャケット本体2側がシアー側となり、封止体3側がフロー側となるように回転ツールFの回転方向及び進行方向を設定した。ジャケット本体2側がシアー側となるように設定することで、第一突合せ部J1の周囲における攪拌ピンF2による攪拌作用が高まり、第一突合せ部J1における温度上昇が期待でき、第一突合せ部J1において段差側面12bと封止体3の外周側面3cとをより確実に接合することができる。
また同様に、第二本接合工程では、支柱15(ジャケット本体2)側がシアー側となるように設定することで、第三突合せ部J3の周囲における攪拌ピンF2による攪拌作用が高まり、第三突合せ部J3における温度上昇が期待でき、第三突合せ部J3において段差側面17bと孔部4の孔壁4aとをより確実に接合することができる。
なお、シアー側(Advancing side)とは、被接合部に対する回転ツールの外周の相対速度が、回転ツールの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側を意味する。一方、フロー側(Retreating side)とは、回転ツールの移動方向の反対方向に回転ツールが回動することで、被接合部に対する回転ツールの相対速度が低速になる側を言う。
また、ジャケット本体2の第一アルミニウム合金は、封止体3の第二アルミニウム合金よりも硬度の高い材料になっている。これにより、液冷ジャケット1の耐久性を高めることができる。また、ジャケット本体2の第一アルミニウム合金をアルミニウム合金鋳造材とし、封止体3の第二アルミニウム合金をアルミニウム合金展伸材とすることが好ましい。第一アルミニウム合金を例えば、JISH5302 ADC12等のAl−Si−Cu系アルミニウム合金鋳造材とすることにより、ジャケット本体2の鋳造性、強度、被削性等を高めることができる。また、第二アルミニウム合金を例えば、JIS A1000系又はA6000系とすることにより、加工性、熱伝導性を高めることができる。
また、第二突合せ部J2においては、本実施形態では攪拌ピンF2の平坦面F3を段差底面12aよりも深く挿入しないが、塑性化領域W1が第二突合せ部J2に達するようにすることで接合強度を高めることができる。
なお、第一本接合工程及び第二本接合工程は、どちらを先に行ってもよい。また、第一本接合工程及び第二本接合工程を行う前に、第一突合せ部J1及び第三突合せ部J3の少なくとも一方に摩擦攪拌又は溶接によって仮接合を行ってもよい。仮接合工程を行うことにより、第一本接合工程又は第二本接合工程の際に、第一突合せ部J1及び第三突合せ部J3の目開きを防ぐことができる。
また、図7に示す第二本接合工程において、攪拌ピンF2の外周面F10は段差側面17bには接触させず、攪拌ピンF2の平坦面F3を支柱段差部17の段差底面17aに接触(わずかに接触)させてもよい。このようにすれば、第四突合せ部J4を強固に接合することができる。また、段差側面12bは、傾斜させずに段差底面12aに対して垂直に形成してもよい。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。第二実施形態では、準備工程、載置工程、第二本接合工程は第一実施形態と同等であるため説明を省略する。また、第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
次に、本発明の第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第二実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。第二実施形態では、準備工程、載置工程、第二本接合工程は第一実施形態と同等であるため説明を省略する。また、第二実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第一本接合工程は、図8に示すように、回転ツールFを用いて第一突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。本接合工程では、攪拌ピンF2を第一突合せ部J1に沿って相対移動させる際に、攪拌ピンF2の外周面F10を周壁段差部12の段差側面12bにわずかに接触させ、かつ、平坦面F3を段差底面12aに接触させないようにして摩擦攪拌接合を行う。
ここで、段差側面12bに対する攪拌ピンF2の外周面F10の接触代をオフセット量Nとする。本実施形態のように、攪拌ピンF2の外周面F10を段差側面12bに接触させ、かつ、攪拌ピンF2の平坦面F3を段差底面12aに接触させない場合は、オフセット量Nを、0<N≦0.5mmの間で設定し、好ましくは0<N≦0.25mmの間で設定する。
図16に示す従来の液冷ジャケットの製造方法であると、ジャケット本体101と封止体102とで硬度が異なるため、回転中心軸Cを挟んで一方側と他方側とで攪拌ピンF2が受ける材料抵抗も大きく異なる。そのため、塑性流動材がバランス良く攪拌されず、接合強度が低下する要因になっていた。しかし、本実施形態によれば、攪拌ピンF2の外周面F10とジャケット本体2との接触代を極力小さくしているため、攪拌ピンF2がジャケット本体2から受ける材料抵抗を極力小さくすることができる。また、本実施形態では、周壁段差部12の段差側面12bの傾斜角度βと、攪拌ピンF2の傾斜角度αとを同一(段差側面12bと攪拌ピンF2の外周面F10とを平行)にしているため、攪拌ピンF2と段差側面12bとの接触代を高さ方向に亘って均一にすることができる。これにより、本実施形態では、塑性流動材がバランス良く攪拌されるため、接合部の強度低下を抑制することができる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。第三実施形態では、準備工程、載置工程及び第二本接合工程は第一実施形態と同等であるため説明を省略する。また、第三実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
次に、本発明の第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第三実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。第三実施形態では、準備工程、載置工程及び第二本接合工程は第一実施形態と同等であるため説明を省略する。また、第三実施形態では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第一本接合工程は、図9に示すように、回転ツールFを用いてジャケット本体2と封止体3とを摩擦攪拌接合する工程である。本接合工程では、攪拌ピンF2を第一突合せ部J1に沿って相対移動させる際に、攪拌ピンF2の外周面F10を段差側面12bに接触させず、かつ、平坦面F3を段差底面12aにわずかに接触させた状態で摩擦攪拌接合を行う。
本実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法によれば、攪拌ピンF2と周壁段差部12の段差側面12bは接触させていないが、封止体3と攪拌ピンF2との摩擦熱によって第一突合せ部J1の主として封止体3側の第二アルミニウム合金が攪拌されて塑性流動化され、第一突合せ部J1において段差側面12bと封止体3の外周側面3cとを接合することができる。また、第一突合せ部J1においては攪拌ピンF2の外周面F10のみを封止体3のみに接触させて摩擦攪拌を行うため、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入は殆どない。これにより、第一突合せ部J1においては主として封止体3側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。
また、ジャケット本体2の段差側面12bを外側に傾斜させているため、攪拌ピンF2と段差側面12bとの接触を容易に回避することができる。また、本実施形態では、段差側面12bの傾斜角度βと、攪拌ピンF2の傾斜角度αとを同一(段差側面12bと攪拌ピンF2の外周面F10とを平行)にしているため、攪拌ピンF2と段差側面12bその接触を避けつつ、攪拌ピンF2と段差側面12bとを極力近接させることができる。
また、攪拌ピンF2の外周面F10を段差側面12bから離間させて摩擦攪拌接合を行うため、攪拌ピンF2の回転中心軸Cに対して一方側と他方側で、攪拌ピンF2が受ける材料抵抗の不均衡を小さくすることができる。これにより、塑性流動材がバランス良く摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。本実施形態のように、攪拌ピンF2の外周面F10を段差側面12bに接触させず、かつ、平坦面F3を段差底面12aよりも深く挿入する場合、段差側面12bから攪拌ピンF2の外周面F10までの離間距離Lを、例えば、0≦L≦0.5mmに設定し、好ましくは0≦L≦0.3mmに設定することが好ましい。
また、攪拌ピンF2の平坦面F3を段差底面12aにわずかに接触させるに留めるため、第二突合せ部J2においてもジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。また、攪拌ピンF2の平坦面F3を段差底面12aに挿入することにより、第二突合せ部J2をより確実に摩擦攪拌することができる。これにより、塑性化領域W1に空洞欠陥等が発生するのを防ぎ、接合強度を高めることができる。また、攪拌ピンF2の平坦面F3の全面が、封止体3の外周側面3cよりも封止体3の中央側に位置している。これにより、第二突合せ部J2の接合領域を大きくすることができるため、接合強度を高めることができる。
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。第四実施形態では、準備工程、載置工程及び第二本接合工程は第一実施形態と同等であるため説明を省略する。また、第四実施形態では、第三実施形態と相違する部分を中心に説明する。
次に、本発明の第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第四実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。第四実施形態では、準備工程、載置工程及び第二本接合工程は第一実施形態と同等であるため説明を省略する。また、第四実施形態では、第三実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第一本接合工程は、図10に示すように、回転ツールFを用いて第一突合せ部J1を摩擦攪拌接合する工程である。本接合工程では、攪拌ピンF2を第一突合せ部J1に沿って相対移動させる際に、攪拌ピンF2の外周面F10を周壁段差部12の段差側面12bにわずかに接触させ、かつ、平坦面F3を段差底面12aにわずかに接触させて摩擦攪拌接合を行う。
ここで、段差側面12bに対する攪拌ピンF2の外周面F10の接触代をオフセット量Nとする。本実施形態のように、攪拌ピンF2の平坦面F3を周壁段差部12の段差底面12aよりも深く挿入し、かつ、攪拌ピンF2の外周面F10を段差側面12bに接触させる場合は、オフセット量Nを、0<N≦1.0mmの間で設定し、好ましくは0<N≦0.85mmの間で設定し、より好ましくは0<N≦0.65mmの間で設定する。
図16に示す従来の液冷ジャケットの製造方法であると、ジャケット本体101と封止体102とで硬度が異なるため、回転中心軸Cを挟んで一方側と他方側とで攪拌ピンF2が受ける材料抵抗も大きく異なる。そのため、塑性流動材がバランス良く攪拌されず、接合強度が低下する要因になっていた。しかし、本実施形態によれば、攪拌ピンF2の外周面F10とジャケット本体2との接触代を極力小さくしているため、攪拌ピンF2がジャケット本体2から受ける材料抵抗を小さくすることができる。また、本実施形態では、段差側面12bの傾斜角度βと、攪拌ピンF2の傾斜角度αとを同一(段差側面12bと攪拌ピンF2の外周面F10とを平行)にしているため、攪拌ピンF2と段差側面12bとの接触代を高さ方向に亘って均一にすることができる。これにより、本実施形態では、塑性流動材がバランス良く攪拌されるため、接合部の強度低下を抑制することができる。
また、攪拌ピンF2の平坦面F3を段差底面12aにわずかに接触させるに留めるため、第二突合せ部J2においてもジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。また、攪拌ピンF2の平坦面F3を段差底面12aに挿入することにより、第二突合せ部J2をより確実に摩擦攪拌することができる。これにより、塑性化領域W1に空洞欠陥等が発生するのを防ぎ、接合強度を高めることができる。つまり、本実施形態によれば、第一突合せ部J1及び第二突合せ部J2の両方をより強固に接合することができる。
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第五実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。第五実施形態では、準備工程、載置工程及び第一本接合工程は第一実施形態と同等であるため説明を省略する。
次に、本発明の第五実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。第五実施形態に係る液冷ジャケットの製造方法は、準備工程と、載置工程と、第一本接合工程と、第二本接合工程と、を行う。第五実施形態では、準備工程、載置工程及び第一本接合工程は第一実施形態と同等であるため説明を省略する。
図11に示すように、第五実施形態に係る第二本接合工程では、攪拌ピンF2の外周面F10を支柱段差部17の段差側面17bにわずかに接触させつつ、攪拌ピンF2の平坦面F3を段差底面17aから離間させた状態で摩擦攪拌を行う。攪拌ピンF2の外周面F10と段差側面17bとの接触代は適宜設定すればよいが、第二実施形態の第一本接合工程のオフセット量N(図8参照)と同じように設定することが好ましい。
第五実施形態に係る第二本接合工程によれば、支柱15と封止体3とを接合することにより、強固に接合することができる。また、攪拌ピンF2の外周面F10を支柱段差部17の段差側面17bにわずかに接触させるに留めるため、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくすることができる。これにより、第三突合せ部J3においては主として封止体3側の第二アルミニウム合金が摩擦攪拌されるため、接合強度の低下を抑制することができる。なお、第五実施形態に係る第二本接合工程において、平坦面F3を支柱段差17の段差底面17aにわずかに接触させた状態で摩擦攪拌を行ってもよい。つまり、本実施形態の第二本接合工程では、攪拌ピンF2の外周面F10を段差側面17bにわずかに接触させつつ、平坦面F3を段差底面17aにわずかに接触させてもよい。これにより、ジャケット本体2から封止体3への第一アルミニウム合金の混入を極力少なくしつつ、第四突合せ部J4も強固に接合することができる。
〔第一実施形態の第一変形例〕
次に、第一実施形態の第一変形例に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。図12に示すように、第一変形例では、冷却板を用いて仮接合工程、第一本接合工程及び第二本接合工程を行う点で第一実施形態と相違する。第一実施形態の第一変形例では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
次に、第一実施形態の第一変形例に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。図12に示すように、第一変形例では、冷却板を用いて仮接合工程、第一本接合工程及び第二本接合工程を行う点で第一実施形態と相違する。第一実施形態の第一変形例では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
図12に示すように、第一実施形態の第一形例では、固定工程を行う際に、ジャケット本体2をテーブルKに固定する。テーブルKは、直方体を呈する基板K1と、基板K1の四隅に形成されたクランプK3と、基板K1の内部に配設された冷却管WPによって構成されている。テーブルKは、ジャケット本体2を移動不能に拘束するとともに、特許請求の範囲の「冷却板」として機能する部材である。
冷却管WPは、基板K1の内部に埋設される管状部材である。冷却管WPの内部には、基板K1を冷却する冷却媒体が流通する。冷却管WPの配設位置、つまり、冷却媒体が流れる冷却流路の形状は特に制限されないが、当該第一変形例では第一本接合工程における回転ツールFの移動軌跡に沿う平面形状になっている。即ち、平面視した際に、冷却管WPと第一突合せ部J1とが略重なるように冷却管WPが配設されている。
第一変形例の仮接合工程、第一本接合工程及び第二本接合工程では、ジャケット本体2をテーブルKに固定した後、冷却管WPに冷却媒体を流しながら摩擦攪拌接合を行う。これにより、摩擦攪拌の際の摩擦熱を低く抑えることができるため、熱収縮に起因する液冷ジャケット1の変形を小さくすることができる。また、当該第一変形例では、平面視した場合に、冷却流路と第一突合せ部J1(仮接合用回転ツール及び回転ツールFの移動軌跡)とが重なるようになっているため、摩擦熱が発生する部分を集中的に冷却できる。これにより、冷却効率を高めることができる。また、冷却管WPを配設して冷却媒体を流通させるため、冷却媒体の管理が容易となる。また、テーブルK(冷却板)とジャケット本体2とが面接触するため、冷却効率を高めることができる。
なお、テーブルK(冷却板)を用いてジャケット本体2及び封止体3を冷却するとともに、ジャケット本体2の内部にも冷却媒体を流しつつ摩擦攪拌接合を行ってもよい。
〔第一実施形態の第二変形例〕
次に、第一実施形態の第二変形例に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。図13の(a)及び(b)に示すように、第一実施形態の第二変形例では、ジャケット本体2の表面側及び封止体3の表面3aが凸状となるように湾曲させた状態で第一本接合工程及び第二本接合工程を行う点で第一実施形態と相違する。当該第二変形例では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
次に、第一実施形態の第二変形例に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。図13の(a)及び(b)に示すように、第一実施形態の第二変形例では、ジャケット本体2の表面側及び封止体3の表面3aが凸状となるように湾曲させた状態で第一本接合工程及び第二本接合工程を行う点で第一実施形態と相違する。当該第二変形例では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
図13(a)及び(b)に示すように、当該第二変形例では、テーブルKAを用いる。テーブルKAは、直方体を呈する基板KA1と、基板KA1の中央に形成されたスペーサKA2と、基板KA1の四隅に形成されたクランプKA3とで構成されている。スペーサKA2は、基板KA1と一体でも別体でもよい。
当該第二変形例の固定工程では、仮接合工程を行って一体化したジャケット本体2及び封止体3をクランプKA3によってテーブルKAに固定する。仮接合工程によって、塑性化領域Wが形成されている。図13の(b)に示すように、ジャケット本体2及び封止体3をテーブルKAに固定すると、ジャケット本体2の底部10、周壁端面11a及び封止体3の表面3aが上方に凸状となるように湾曲する。より詳しくは、ジャケット本体2の壁部11Aの第一辺部21、壁部11Bの第二辺部22、壁部11Cの第三辺部23及び壁部11Dの第四辺部24が曲線となるように湾曲する。
当該第二変形例の第一本接合工程及び第二本接合工程では、回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う。第一本接合工程及び第二本接合工程では、ジャケット本体2及び封止体3の少なくともいずれか一方の変形量を計測しておき、攪拌ピンF2の挿入深さを前記変形量に合わせて調節しながら摩擦攪拌接合を行う。つまり、ジャケット本体2の周壁端面11a及び封止体3の表面3aの曲面に沿って回転ツールFの移動軌跡が曲線となるように移動させる。このようにすることで、塑性化領域W1,W2の深さ及び幅を一定にすることができる。
摩擦攪拌接合の入熱によって塑性化領域W1,W2に熱収縮が発生し、液冷ジャケット1の封止体3側が凹状に変形するおそれがあるが、当該第二変形例の第一本接合工程及び第二本接合工程によれば、周壁端面11a及び表面3aに引張応力が作用するようにジャケット本体2及び封止体3を予め凸状に固定しているため、摩擦攪拌接合後の熱収縮を利用することで液冷ジャケット1を平坦にすることができる。また、従来の回転ツールで本接合工程を行う場合、ジャケット本体2及び封止体3が凸状に反っていると回転ツールのショルダ部が、ジャケット本体2及び封止体3に接触し、操作性が悪いという問題がある。しかし、当該第二変形例によれば、回転ツールFには、ショルダ部が存在しないため、ジャケット本体2及び封止体3が凸状に反っている場合でも、回転ツールFの操作性が良好となる。
なお、ジャケット本体2及び封止体3の変形量の計測については、公知の高さ検知装置を用いればよい。また、例えば、テーブルKAからジャケット本体2及び封止体3の少なくともいずれか一方までの高さを検知する検知装置が装備された摩擦攪拌装置を用いて、ジャケット本体2又は封止体3の変形量を検知しながら第一本接合工程及び第二本接合工程を行ってもよい。
また、当該第二変形例では、第一辺部21〜第四辺部24の全てが曲線となるようにジャケット本体2及び封止体3を湾曲させたがこれに限定されるものではない。例えば、第一辺部21及び第二辺部22が直線となり、第三辺部23及び第四辺部24が曲線となるように湾曲させてもよい。また、例えば、第一辺部21及び第二辺部22が曲線となり、第三辺部23及び第四辺部24が直線となるように湾曲させてもよい。
また、当該第二変形例ではジャケット本体2又は封止体3の変形量に応じて攪拌ピンF2の高さ位置を変更したが、テーブルKAに対する攪拌ピンF2の高さを一定にして本接合工程を行ってもよい。
また、スペーサKA2は、ジャケット本体2及び封止体3の表面側が凸状となるように固定することができればどのような形状であってもよい。また、ジャケット本体2及び封止体3の表面側が凸状となるように固定することができればスペーサKA2は省略してもよい。また、回転ツールFは、例えば、先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたロボットアームに取り付けてもよい。かかる構成によれば、回転ツールFの回転中心軸を様々な角度に容易に変更することができる。
[第一実施形態の第三変形例]
次に、第一実施形態の第三変形例に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。図14に示すように、第一実施形態の第三変形例では、準備工程において、ジャケット本体2及び封止体3を予め表面側に凸状に湾曲するように形成する点で第一実施形態と相違する。第一実施形態の第三変形例では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
次に、第一実施形態の第三変形例に係る液冷ジャケットの製造方法について説明する。図14に示すように、第一実施形態の第三変形例では、準備工程において、ジャケット本体2及び封止体3を予め表面側に凸状に湾曲するように形成する点で第一実施形態と相違する。第一実施形態の第三変形例では、第一実施形態と相違する部分を中心に説明する。
第一実施形態の第三変形例に係る準備工程では、ジャケット本体2及び封止体3の表面側が凸状に湾曲するようにダイキャストで形成する。これにより、ジャケット本体2は、底部10、周壁部11がそれぞれ表面側に凸状となるように形成される。また、封止体3の表面3aが凸状となるように形成される。
図14に示すように、第三変形例では、固定工程を行う際に、仮接合されたジャケット本体2及び封止体3をテーブルKBに固定する。図15に示すように、テーブルKBは、直方体を呈する基板KB1と、基板KB1の中央に配設されたスペーサKB2と、基板KB1の四隅に形成されたクランプKB3と、基板KB1の内部に埋設された冷却管WPとで構成されている。テーブルKBは、ジャケット本体2を移動不能に拘束するとともに、特許請求の範囲の「冷却板」として機能する部材である。
スペーサKB2は、上方に凸状となるように湾曲した曲面KB2aと、曲面KB2aの両端に形成され基板KB1から立ち上がる立面KB2b,KB2bとで構成されている。スペーサKB2の第一辺部Ka及び第二辺部Kbは曲線になっており、第三辺部Kc及び第四辺部Kdは直線になっている。
冷却管WPは、基板KB1の内部に埋設される管状部材である。冷却管WPの内部には、基板KB1を冷却する冷却媒体が流通する。冷却管WPの配設位置、つまり、冷却媒体が流れる冷却流路の形状は特に制限されないが、当該第三変形例では第一本接合工程における回転ツールFの移動軌跡に沿う平面形状になっている。即ち、平面視した際に、冷却管WPと第一突合せ部J1とが略重なるように冷却管WPが配設されている。
当該第三変形例の固定工程では、仮接合を行って一体化したジャケット本体2及び封止体3をクランプKB3によってテーブルKBに固定する。より詳しくは、ジャケット本体2の底部10の裏面が曲面KB2aと面接触するようにテーブルKBに固定する。ジャケット本体2をテーブルKBに固定すると、ジャケット本体2の壁部11Aの第一辺部21、壁部11Bの第二辺部22が曲線となり、壁部11Cの第三辺部23及び壁部11Dの第四辺部24が直線となるように湾曲する。
当該第三変形例の第一本接合工程及び第二本接合工程では、回転ツールFを用いて摩擦攪拌接合を行う。第一本接合工程及び第二本接合工程では、ジャケット本体2及び封止体3の少なくともいずれか一方の変形量を計測しておき、攪拌ピンF2の挿入深さを前記変形量に合わせて調節しながら摩擦攪拌接合を行う。つまり、ジャケット本体2の周壁端面11a及び封止体3の表面3aに沿って回転ツールFの移動軌跡が曲線又は直線となるように移動させる。このようにすることで、塑性化領域W1の深さ及び幅を一定にすることができる。
摩擦攪拌接合の入熱によって塑性化領域W1,W2に熱収縮が発生し、液冷ジャケット1の封止体3側が凹状に変形するおそれがあるが、当該第三変形例の第一本接合工程及び第二本接合工程によれば、ジャケット本体2及び封止体3を予め凸状に形成しているため、摩擦攪拌接合後の熱収縮を利用することで液冷ジャケット1を平坦にすることができる。
また、当該第三変形例では、ジャケット本体2の底部10の凹状となっている裏面に、スペーサKB2の曲面KB2aを面接触させている。これにより、ジャケット本体2及び封止体3をより効果的に冷却しながら摩擦攪拌接合を行うことができる。摩擦攪拌接合における摩擦熱を低く抑えることができるため、熱収縮に起因する液冷ジャケットの変形を小さくすることができる。これにより、準備工程において、ジャケット本体2及び封止体3を凸状に形成する際に、ジャケット本体2及び封止体3の曲率を小さくすることができる。
なお、ジャケット本体2及び封止体3の変形量の計測については、公知の高さ検知装置を用いればよい。また、例えば、テーブルKBからジャケット本体2及び封止体3の少なくともいずれか一方までの高さを検知する検知装置が装備された摩擦攪拌装置を用いて、ジャケット本体2又は封止体3の変形量を検知しながら本接合工程を行ってもよい。
また、当該第三変形例では、第一辺部21及び第二辺部22が曲線となるようにジャケット本体2及び封止体3を湾曲させたがこれに限定されるものではない。例えば、球面を具備するスペーサKB2を形成し、当該球面にジャケット本体2の底部10の裏面が面接触するようにしてもよい。この場合は、テーブルKBにジャケット本体2を固定すると、第一辺部21〜第四辺部24のすべてが曲線となる。
また、当該第三変形例ではジャケット本体2又は封止体3の変形量に応じて攪拌ピンF2の高さ位置を変更したが、テーブルKBに対する攪拌ピンF2の高さを一定にして本接合工程を行ってもよい。
1 液冷ジャケット
2 ジャケット本体
3 封止体
3a 表面
3b 裏面
3c 外周側面
10 底部
11 周壁部
11a 周壁端面
12 周壁段差部
12a 段差底面
12b 段差側面
13 凹部
17 支柱段差部
17a 段差底面
17b 段差側面
F 回転ツール
F2 攪拌ピン
J1 第一突合せ部
J2 第二突合せ部
J3 第三突合せ部
J4 第四突合せ部
K テーブル(冷却板)
W1 塑性化領域
W2 塑性化領域
WP 冷却管
2 ジャケット本体
3 封止体
3a 表面
3b 裏面
3c 外周側面
10 底部
11 周壁部
11a 周壁端面
12 周壁段差部
12a 段差底面
12b 段差側面
13 凹部
17 支柱段差部
17a 段差底面
17b 段差側面
F 回転ツール
F2 攪拌ピン
J1 第一突合せ部
J2 第二突合せ部
J3 第三突合せ部
J4 第四突合せ部
K テーブル(冷却板)
W1 塑性化領域
W2 塑性化領域
WP 冷却管
Claims (13)
- 底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部及び前記底部から立ち上がる支柱を有するジャケット本体と、前記支柱の先端が挿入される孔部を形成するとともに前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
摩擦攪拌で用いる回転ツールの攪拌ピンの外周面は先細りとなるように傾斜しており、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記支柱の先端に段差底面と、当該段差底面から前記支柱の先端が先細りとなるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する支柱段差部を形成し、さらに、前記封止体の板厚を前記支柱段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように設定する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより、前記周壁段差部の段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合せて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成し、前記支柱段差部の段差側面と前記孔部の孔壁とを突き合わせた際に隙間があるように第三突合せ部を形成するとともに、前記支柱段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第四突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記攪拌ピンのみを前記封止体に挿入し、前記攪拌ピンの外周面を前記支柱段差部の段差側面に接触させない状態で、前記第三突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させる際に前記封止体の第二アルミニウム合金を前記隙間に流入させながら摩擦攪拌を行う第二本接合工程と、を含むことを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。 - 前記第二本接合工程において、さらに前記攪拌ピンを前記支柱段差部の段差底面にわずかに接触させた状態で、前記第三突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項1に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 底部、前記底部の周縁から立ち上がる周壁部及び前記底部から立ち上がる支柱を有するジャケット本体と、前記支柱の先端が挿入される孔部を形成するとともに前記ジャケット本体の開口部を封止する封止体とで構成され、前記ジャケット本体と前記封止体とを摩擦攪拌で接合する液冷ジャケットの製造方法であって、
前記ジャケット本体は第一アルミニウム合金で形成されており、前記封止体は第二アルミニウム合金で形成されており、前記第一アルミニウム合金は前記第二アルミニウム合金よりも硬度が高い材種であり、
摩擦攪拌で用いる回転ツールの攪拌ピンの外周面は先細りとなるように傾斜しており、
前記周壁部の内周縁に、段差底面と、当該段差底面から前記開口部に向かって立ち上がる段差側面と、を有する周壁段差部を形成するとともに、前記支柱の先端に段差底面と、当該段差底面から前記支柱の先端が先細りとなるように斜めに立ち上がる段差側面と、を有する支柱段差部を形成し、さらに、前記封止体の板厚を前記支柱段差部の前記段差側面の高さ寸法よりも大きくなるように設定する準備工程と、
前記ジャケット本体に前記封止体を載置することにより、前記周壁段差部の段差側面と前記封止体の外周側面とを突き合せて第一突合せ部を形成するとともに、前記周壁段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第二突合せ部を形成し、前記支柱段差部の段差側面と前記孔部の孔壁とを突き合わせた際に隙間があるように第三突合せ部を形成するとともに、前記支柱段差部の段差底面と前記封止体の裏面とを重ね合わせて第四突合せ部を形成する載置工程と、
回転する前記攪拌ピンのみを前記封止体に挿入し、前記攪拌ピンの外周面を前記支柱段差部の段差側面にわずかに接触させた状態で、前記第三突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させる際に前記封止体の第二アルミニウム合金を前記隙間に流入させながら摩擦攪拌を行う第二本接合工程と、を含むことを特徴とする液冷ジャケットの製造方法。 - 前記第二本接合工程において、さらに前記攪拌ピンを前記支柱段差部の段差底面にわずかに接触させた状態で、前記第三突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項3に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記第一突合せ部に沿って前記回転ツールを移動させ前記開口部の周りに一周させて摩擦攪拌を行う第一本接合工程を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記準備工程では、前記ジャケット本体をダイキャストで形成するとともに前記底部が表面側に凸となるように形成し、かつ、前記封止体が表面側に凸となるように形成することを特徴とする請求項5に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記ジャケット本体の変形量を予め計測しておき、前記第一本接合工程及び前記第二本接合工程において、前記回転ツールの攪拌ピンの挿入深さを前記変形量に合わせて調節しながら摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記第一本接合工程及び第二本接合工程に先だって、前記第一突合せ部又は第三突合せ部を仮接合する仮接合工程を含むことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記第一本接合工程では、冷却媒体が流れる冷却板を前記底部の裏面側に設置し、前記冷却板で前記ジャケット本体及び前記封止体を冷却しながら摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記冷却板の表面と前記底部の裏面とを面接触させることを特徴とする請求項9に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記冷却板は、前記冷却媒体が流れる冷却流路を有し、
前記冷却流路は、前記第一本接合工程における前記回転ツールの移動軌跡に沿う平面形状を備えることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の液冷ジャケットの製造方法。 - 前記冷却媒体が流れる冷却流路は、前記冷却板に埋設された冷却管によって構成されていることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
- 前記第一本接合工程では、前記ジャケット本体と前記封止体とで構成される中空部に冷却媒体を流し、前記ジャケット本体及び前記封止体を冷却しながら摩擦攪拌を行うことを特徴とする請求項5乃至請求項12のいずれか一項に記載の液冷ジャケットの製造方法。
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