JP5177059B2 - 伝熱板の製造方法 - Google Patents
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Description
本発明は、伝熱板の製造方法に関する。
金属部材同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合とは、回転ツールを回転させつつ金属部材同士の突合部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合部の金属を塑性流動させることで、金属部材同士を固相接合させるものである。
例えば、特許文献1に示すように、半導体製造装置において冷却用に使用されるヒートプレート(伝熱板)は、板状を呈する本体と、本体の表面に形成された凹部を封止する蓋部材とを摩擦攪拌接合により一体成形されている。
具体的には、本体は、本体の表面に凹設された第一凹部と、第一凹部の底面に凹設された第二凹部とを有する。蓋部材は、第一凹部に隙間無く配置される形状を呈している。伝熱板は、第一凹部の側壁と蓋部材の側面との突合部に対して摩擦攪拌接合を行うことにより一体成形されている。摩擦攪拌接合によれば、比較的容易にかつ水密性及び気密性の高い製品を製造することができる。
従来の伝熱板の製造方法では、第一凹部の側壁と蓋部材の側面との突合部のみを摩擦攪拌接合するだけであるため、例えば第一凹部の底面と蓋部材の裏面との間には微細な隙間が形成されている。かかる隙間は伝熱板の水密性及び気密性を低下させる要因になっていた。また、本体の表面側から摩擦攪拌を行うため、熱収縮によって塑性化領域が縮むと、伝熱板が反って撓んでしまうという問題があった。
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、伝熱板の水密性及び気密性を高めるとともに、平坦性の高い伝熱板を製造することができる伝熱板の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段として、本発明は、表面に凹設された第一凹部と、この第一凹部の底面に凹設され熱発生体が発生する熱を外部に輸送する熱輸送流体が流れる第二凹部とを有する本体に、前記第二凹部を封止する蓋部材を摩擦攪拌接合によって固定して形成される伝熱板の製造方法であって、前記本体の前記第一凹部の側壁と前記蓋部材の側面との突合部に沿って回転ツールを移動させて少なくとも前記突合部の一部に対して摩擦攪拌接合を行う蓋部材固定工程と、前記第二凹部の開口周縁に沿って回転ツールを移動させて、前記第一凹部の底面と前記蓋部材の裏面との重ね合わせ部に対して摩擦攪拌接合を行う第二凹部密封工程と、前記伝熱板の裏面に対して回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含むことを特徴とする。
かかる製造方法によれば、第一凹部の底面と蓋部材の裏面との重ね合わせ部に対して摩擦攪拌接合を行うことにより、第一凹部の底面と蓋部材の裏面との微細な隙間を塞ぐことができる。これにより、伝熱板の水密性及び気密性を高めることができる。また、矯正工程では、伝熱板の裏面側から摩擦攪拌を行うことにより、蓋部材固定工程及び第二凹部密封工程によって発生した反りを解消し、伝熱板の平坦性を高めることができる。
また、前記伝熱板の裏面側に形成される塑性化領域の体積量を、前記伝熱板の表面側に形成された塑性化領域の体積量よりも小さく設定することが好ましい。かかる製造方法によれば、製造された伝熱板の平坦性をより高めることができる。
また、前記矯正工程では、この矯正工程で形成される塑性化領域の平面形状を、前記伝熱板の中心に対して略点対称となるように設定することが好ましい。また、前記矯正工程では、この矯正工程で形成される塑性化領域の平面形状を、前記伝熱板の外縁の形状と略相似形状となるように設定することが好ましい。また、前記矯正工程では、この矯正工程で形成される塑性化領域の平面形状を、前記伝熱板の表面側に形成された塑性化領域の平面形状と略同等形状となるように設定することが好ましい。また、前記矯正工程では、この矯正工程で形成される塑性化領域の全長を、前記伝熱板の表面側に形成された塑性化領域の全長と略同等となるように設定することが好ましい。
かかる製造方法によれば、伝熱板の表面側と裏面側の反りをバランスよく解消することができ、伝熱板の平坦性を高めることができる。
また、前記矯正工程では、この矯正工程で用いる前記回転ツールの移動軌跡の全長を、前記伝熱板の表面側に形成された塑性化領域の全長よりも短くなるように設定することが好ましい。また、前記矯正工程で用いる回転ツールのショルダ部の外径を、前記第二凹部密封工程で用いる回転ツールのショルダ部の外径よりも小さく設定することが好ましい。また、前記矯正工程で用いる回転ツールの攪拌ピンの長さを、前記第二凹部密封工程で用いる前記回転ツールの攪拌ピンの長さよりも短く設定することが好ましい。
かかる製造方法によれば、矯正工程における塑性化領域の体積量を、伝熱板の表面側に形成された塑性化領域の体積量よりも小さく設定することができるため、製造された伝熱板の平坦性をより高めることができる。
また、前記本体の厚みを、前記第二凹部密封工程で用いる回転ツールのショルダ部の外径の1.5倍以上に設定することが好ましい。また、前記本体の厚みを、前記第二凹部密封工程で用いる回転ツールの攪拌ピンの長さの3倍以上に設定することが好ましい。
かかる製造方法によれば、回転ツールの各部位の大きさに対して本体が十分な厚みを備えているため、伝熱板の平坦性をより高めることができる。
また、前記本体が平面視多角形である場合、前記矯正工程では、前記伝熱板の隅部に対して回転ツールを用いて摩擦攪拌を行う隅部摩擦攪拌工程を含むことが好ましい。かかる製造方法によれば、本体の隅部において発生した反りを解消して伝熱板の平坦性を解消することができる。
また、矯正工程後に、前記伝熱板の裏面側を面削加工する面削工程を含み、前記面削加工の深さは、前記矯正工程で用いる回転ツールの攪拌ピンの長さよりも大きいことが好ましい。かかる製造方法によれば、伝熱板の裏面を平滑に形成することができる。
本発明によれば、水密性及び気密性が高く、かつ、平坦性の高い伝熱板を提供することができる。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る伝熱板の製造方法について図面を適宜参照して詳細に説明する。まず、本発明に係る伝熱板の製造方法によって形成される伝熱板1について説明する。
本発明の第一実施形態に係る伝熱板の製造方法について図面を適宜参照して詳細に説明する。まず、本発明に係る伝熱板の製造方法によって形成される伝熱板1について説明する。
伝熱板1は、図1に示すように、本体10に、蓋部材30を摩擦攪拌接合によって固定して形成される。伝熱板1は、例えば、スパッタリング装置において、ターゲット材を冷却するために使用される。
本体10は、略直方体の外観を呈し、本実施形態ではアルミニウム又はアルミニウム合金から形成されている。本体10は、本体10の表面(上面)10aに凹設された第一凹部12と、第一凹部12の内部に凹設された第二凹部13,13と、第二凹部13に連通する貫通孔16とを有する。本体10は、例えば、ダイキャスト、鋳造、鍛造などによって作製される。
本体10は、本実施形態ではアルミニウム又はアルミニウム合金から形成したが、他の金属部材で形成してもよい。また、本体10は、本実施形態では外観視略直方体としたが、多角柱体、円柱体等であってもよい。
第一凹部12は、蓋部材30が配置される部位である。第一凹部12は、本体10の上面10aよりも一段下がった位置に形成されており、平面視矩形を呈する底面12aと、底面12aから垂直に立設する4つの側壁12bとを有する。側壁12bの高さは、蓋部材30の厚みtと略同等に形成されている。
第二凹部13,13は、熱輸送流体(本実施形態では冷却水)が流通する部分である。第二凹部13,13は、平面視矩形を呈し、それぞれ略同等の形状に形成されている。第二凹部13,13は、上方に開口しており、第一凹部12の内部において所定の間隔をあけて設けられている。第二凹部13,13の周囲には前記した第一凹部12の底面12aが拡がっている。つまり、第二凹部13,13は、第一凹部12に包囲されている。第二凹部13の形状や設置数は伝熱板1の用途に応じて適宜変更可能である。
貫通孔16は、図1に示すように、本体10の外部と第二凹部13とを連通し、熱輸送流体(冷却水)を循環させる部分である。貫通孔16は、第二凹部13,13に連通しつつ、本体10の対向する側面10b,10b間を貫通して形成されている。貫通孔16の形状、数及び形成位置は、冷却水の種類や流量に応じて適宜変更可能である。
蓋部材30は、図1に示すように、本体10と同等の材料からなる板状部材である。蓋部材30の平面形状は、本体10の第一凹部12の平面形状と同等に形成されている。蓋部材30は、第一凹部12に配置された後に、摩擦攪拌接合されることで第二凹部13の開口部を封止する。
次に、後記する摩擦攪拌接合によって用いる小型の回転ツール(以下、「小型回転ツールF」という。)及び小型回転ツールFよりも大型の回転ツール(以下、「大型回転ツールG」という。)について図2を用いて説明する。
図2に示す小型回転ツールFは、工具鋼など本体10よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部F1と、このショルダ部F1の下端面F11に突設された攪拌ピン(プローブ)F2とを備えて構成されている。小型回転ツールFの寸法・形状は、本体10の材質や厚さ等に応じて設定すればよいが、少なくとも、大型回転ツールG(図2の(b)参照)よりも小型にする。このようにすると、大型回転ツールGを用いる場合よりも小さな負荷で摩擦攪拌接合を行うことが可能となるので、摩擦攪拌装置に掛かる負荷を低減することが可能となり、さらには、小型回転ツールFの移動速度(送り速度)を大型回転ツールGの移動速度よりも高速にすることも可能になるので、摩擦攪拌接合に要する作業時間やコストを低減することが可能となる。
ショルダ部F1の下端面F11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部F1の外径X1の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、大型回転ツールGのショルダ部G1の外径Y1よりも小さくなっている。
攪拌ピンF2は、ショルダ部F1の下端面F11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。攪拌ピンF2の外径の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、最大外径(上端径)X2が大型回転ツールGの攪拌ピンG2の最大外径(上端径)Y2よりも小さく、かつ、最小外径(下端径)X3が攪拌ピンG2の最小外径(下端径)Y3よりも小さくなっている。攪拌ピンF2の長さLAは、蓋部材30の厚みt(図1参照)よりも小さく形成されている。
図2の(b)に示す大型回転ツールGは、工具鋼など本体10よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部G1と、このショルダ部G1の下端面G11に突設された攪拌ピン(プローブ)G2とを備えて構成されている。ショルダ部G1の下端面G11は、小型回転ツールFと同様に、凹面状に成形されている。攪拌ピンG2は、ショルダ部G1の下端面G11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。攪拌ピンG2の長さLBは、蓋部材30の厚みt(図1参照)よりも大きく形成されている。
なお、本体10の厚みは、大型回転ツールGのショルダ部G1の外径Y1の1.5倍以上に設定されている。また、本体10の厚みは、大型回転ツールGの攪拌ピンG2の長さLBの3倍以上に設定されている。
次に、伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、蓋部材固定工程と、第二凹部密封工程と、矯正工程を実行する。
まず、図3の(a)に示すように、蓋部材30を、本体10の第一凹部12(図1参照)に配置する。第一凹部12の側壁12bと、蓋部材30の側面30aとが突き合わされ、突合部40が構成される。なお、図3の(b)に示すように、第一凹部12の底面12aと、蓋部材30の裏面30bとが重なり合う部分を、重ね合わせ部18とする。
蓋部材固定工程では、突合部40に摩擦攪拌接合を行って、本体10に蓋部材30を接合する。図3の(a)に示すように、小型回転ツールFを右回転させつつ、本体10の上面10aに設定した開始位置s1に挿入した後、突合部40に沿って移動させる。小型回転ツールFの押込み量、送り速度等は適宜設定すればよい。このとき、本体10の外周面に、本体10を四方向から囲む治具(図示せず)を予め当てておくのが好ましい。これによれば、小型回転ツールF及び大型回転ツールGの押圧力によって本体10が変形しにくくなる。
小型回転ツールFの移動について具体的に説明する。小型回転ツールFを、開始位置s1から突合部40の真上位置(小型回転ツールFの中心が突合部40と重なる位置)まで回転させながら移動させる。そして、小型回転ツールFの中心(軸芯)が突合部40上を移動するように、突合部40に沿って小型回転ツールFを移動させる。このとき、突合部40の周囲の本体10と蓋部材30は、一体的に塑性流動化されて表面側塑性化領域W1が形成される。「塑性化領域」とは、小型回転ツールFの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、小型回転ツールFが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。なお、図3の(a)に示すように、表面側塑性化領域W1のうち、突合部40上に最初に突入した部分を始端W1aとする。
蓋部材固定工程では、図3の(b)に示すように、攪拌ピンF2の長さが蓋部材30の厚みtよりも小さく、表面側塑性化領域W1が第一凹部12の底面12aに接触しない程度に設定されている。摩擦攪拌接合を行うと、蓋部材30のような比較的薄い部材は、熱収縮によって変形する可能性が高い。したがって、攪拌ピンF2の長さ及び小型回転ツールFの押込み量を小さく設定することにより、蓋部材30の変形を防ぐことができる。
なお、蓋部材固定工程では、小型回転ツールFの攪拌ピンF2の長さを大きくしたり、小型回転ツールFを深く押し込んだりして、表面側塑性化領域W1と底面12aとを接触させてもよい。
なお、蓋部材固定工程では、小型回転ツールFの攪拌ピンF2の長さを大きくしたり、小型回転ツールFを深く押し込んだりして、表面側塑性化領域W1と底面12aとを接触させてもよい。
小型回転ツールFの移動方向(図3(a)参照)と同じ方向に小型回転ツールFが回動するシアー側(被接合部に対する小型回転ツールFの外周の相対速さが、小型回転ツールFの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側)が、本体10上に位置するように、小型回転ツールFを回転、移動させる。つまり、突合部40における小型回転ツールFの回転方向(自転方向)が、移動方向(公転方向)と同じ方向となるようにする。具体的には、本実施形態では、小型回転ツールFを第二凹部13に対して右回りに移動させているので、小型回転ツールFも右回転させる。
なお、小型回転ツールFを第二凹部13に対して左回りに移動させるときは、小型回転ツールFを左回転させることとなる。このようにすることによって、小型回転ツールFのシアー側が厚肉の本体10側に位置する。そして、薄肉の蓋部材30側は、小型回転ツールFのフロー側(被接合部に対する小型回転ツールFの外周の相対速さが、小型回転ツールFの外周における接線速度の大きさから移動速度の大きさを減算した値となる側)となる。このため、蓋部材30側は、メタルの流動量が少なくなり、空洞欠陥が発生しにくくなる。そして、摩擦攪拌によって空洞欠陥が発生したとしても、本体10側であって突合部40よりも外側位置の離間した部分に発生することとなり、熱輸送流体が外部に漏れにくくなるので、接合部の密閉性能を低下させることはない。
小型回転ツールFの回転及び移動を継続し、図4に示すように、小型回転ツールFを、突合部40に沿って一周させる。小型回転ツールFが、表面側塑性化領域W1の始端W1a(図3の(a)参照)を通過したら、小型回転ツールFを本体10の上面10a側に移動させて、終了位置e1で小型回転ツールFを離脱させる。なお、表面側塑性化領域W1のうち、突合部40上に最後に形成される部分を終端W1bとする。
このように、表面側塑性化領域W1の始端W1a(図3(a)参照)を小型回転ツールFが通り越すことにより、始端W1aと終端W1bとが互いにオーバーラップするため、表面側塑性化領域W1の一部が重複するように構成される。
終了位置e1は、突合部40から外側に外れた位置となっているので、小型回転ツールFの引抜跡が突合部40に形成されることはなく、本体10と蓋部材30との接合性をさらに高めることができる。なお、引抜跡は補修するようにしてもよい。
第二凹部密封工程では、第一凹部12の底面12aと、蓋部材30の裏面30bとが重なり合う重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行う。第二凹部密封工程では、図5の(a)に示すように、回転させた大型回転ツールGを本体10の上面10aに設定した開始位置SM1に挿入した後、第二凹部13の開口周縁14に沿って移動させ、終了位置EM1まで移動させる。
大型回転ツールGの移動について具体的に説明する。本体10の上面10aに設定した開始位置SM1に、大型回転ツールGを右回転させつつ挿入した後、蓋部材30側へ移動させる。大型回転ツールGが表面側塑性化領域W1を横断したら、重ね合わせ部18上において、第二凹部13の回りに沿って移動させる。大型回転ツールGを移動させることにより、第二凹部13の周囲には、表面側塑性化領域W2が形成される。図5の(b)に示すように、大型回転ツールGの攪拌ピンG2の長さLBが、蓋部材30の厚みtよりも大きくなっているため、重ね合わせ部18を確実に摩擦攪拌接合することができる。
本実施形態では、第二凹部13の開口周縁14から第一凹部12の側壁12bまでの距離D1は、大型回転ツールGのショルダ部G1の外径Y1の2倍以上で形成されているため、重ね合わせ部18の幅を十分に確保することができ確実に摩擦攪拌接合を行うことができる。なお、隣り合う第二凹部13,13の間の距離D2(図3の(a)参照)は、少なくとも大型回転ツールGのショルダ部G1の外径Y1よりも大きくければよいが、本実施形態ではショルダ部G1の外径Y1の約3倍になっている。
また、図5の(b)に示すように、本実施形態では、大型回転ツールGの中心から第二凹部13の開口周縁14までの距離E1は、ショルダ部G1の外径Y1の半径よりも大きくなっている。このようにすれば、摩擦攪拌接合により塑性流動化された塑性流動材が第二凹部13に流入するのを防ぐことができる。
また、本実施形態では、第二凹部13の開口周縁14から大型回転ツールGの外周面までの距離E2は、4mmよりも大きくすることが好ましい。距離E2が4mm以下であると、大型回転ツールGと第二凹部13との距離が近くなり、摩擦攪拌接合の際に第二凹部13の内壁が変形する可能性がある。
大型回転ツールGを第二凹部13の回りに一周させたら、図5の(a)の矢印に示すように、表面側塑性化領域W2及び表面側塑性化領域W1を横断させて、本体10の上面10aに設定した終了位置EM1まで移動させる。大型回転ツールGが終了位置EM1に達したら、本体10から大型回転ツールGを離脱させる。なお、引抜跡は補修するようにしてもよい。
第二凹部密封工程では、大型回転ツールGの移動方向と同じ方向に大型回転ツールGが回動するシアー側(被接合部に対する大型回転ツールGの外周の相対速さが、大型回転ツールGの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側)が、本体10上の第二凹部13から離間した部位に位置するように、大型回転ツールGを回転、移動させる。つまり、大型回転ツールGの回転方向(自転方向)が、移動方向(公転方向)と同じ方向となるようにする。具体的には、本実施形態では、大型回転ツールGを第二凹部13に対して右回りに移動させているので、大型回転ツールGも右回転させる。
なお、大型回転ツールGを第二凹部13に対して左回りに移動させるときは、大型回転ツールGを左回転させる。かかる方法によれば、大型回転ツールGのシアー側が本体10の第二凹部13から離間した部位に位置する。本体10の第二凹部13に近い部位は、大型回転ツールGのフロー側(被接合部に対する大型回転ツールGの外周の相対速さが、大型回転ツールGの外周における接線速度の大きさから移動速度の大きさを減算した値となる側)となる。このため、本体10の第二凹部13に近い部位は、メタルの流動量が少なくなり、空洞欠陥が発生しにくくなる。そして、摩擦攪拌によって空洞欠陥が発生したとしても、第二凹部13から離間した部分に発生することとなり、熱輸送流体が外部に漏れにくくなるので、接合部の密閉性能を低下させることはない。
次に、図6に示すように、他方の第二凹部13の回りに形成された重ね合わせ部18に対して、摩擦攪拌接合を行う。本体10の上面10aに設定した開始位置SM2に大型回転ツールGを挿入した後、蓋部材30側へ移動させる。大型回転ツールGが表面側塑性化領域W1を横断したら、重ね合わせ部18上において、第二凹部13回りに沿って移動させる。大型回転ツールGを移動させることにより、第二凹部13の周囲に表面側塑性化領域W2が形成される。大型回転ツールGを第二凹部13の回りに一周させたら、図6の矢印に示すように、表面側塑性化領域W2及び表面側塑性化領域W1を横断させて、本体10の上面10aに設定された終了位置EM2まで移動させる。大型回転ツールGが終了位置EM2に達したら、本体10から大型回転ツールGを離脱させる。以上の工程により、伝熱板1が形成される。
なお、第二凹部密封工程において、開始位置SM1,SM2及び終了位置EM1,EM2は、突合部40よりも外側であれば、他の位置であっても構わない。
図7に示すように、蓋部材固定工程と、第二凹部密封工程を行った後、伝熱板1には、表面側塑性化領域W1,W2が形成される。表面側塑性化領域W1,W2は、熱収縮によって縮むため、伝熱板1の表面Za側において、本体10の各隅部側から中心側に向かって圧縮応力が作用する。これにより、伝熱板1は表面Za側が凹となるように(裏面Zb側に凸となるように)、撓んでしまう可能性がある。特に、伝熱板1の表面Zaに示す地点a〜地点jのうち、伝熱板1の四隅に係る地点a,c,f,hにおいては、その反りの影響が顕著に現れる傾向がある。なお、地点jは、伝熱板1の中心地点を示し、地点b,d,e,gは、本体10の各辺の中間地点を示す。また、伝熱板1の表面Zaに示す地点a〜地点jに対応する裏面Zbの各点を地点a’〜j’とする。また、伝熱板1の地点aから地点f方向を縦方向、地点aから地点c方向を横方向とする。
矯正工程では、大型回転ツールGを用いて本体10の裏面Zbから摩擦攪拌を行う。矯正工程は、前記した蓋部材固定工程及び第二凹部密封工程で発生した反り(歪み)を解消するために行う工程である。矯正工程は、タブ材を配置するタブ材配置工程と、本体10の裏面Zbに対して摩擦攪拌を行う矯正摩擦攪拌工程と、を含む。
タブ材配置工程では、図8に示すように、後記する矯正摩擦攪拌工程の開始位置及び終了位置を設定するタブ材31を配置する。タブ材31は、本実施形態では直方体を呈し、本体10と同等の組成からなる。タブ材31は、本体10の側面10bの一部を覆い隠すようにして、側面10b当接されている。また、タブ材31は、タブ材31の両側面と本体10の側面10bとを溶接によって仮接合されている。タブ材31の表面は、本体10の裏面Zbと面一に形成することが好ましい。
矯正摩擦攪拌工程では、図8の(a)及び(b)に示すように、大型回転ツールGを用いて、本体10の裏面Zbに対して摩擦攪拌を行う。矯正摩擦攪拌工程では、前記した第二凹部密封工程と略同等の押込み量で摩擦攪拌を行う。矯正摩擦攪拌工程のルートは、本実施形態では、中心地点j’を囲み、かつ、矯正摩擦攪拌工程によって形成される裏面側塑性化領域W3が中心地点j’に対して放射状となるように設定する。
矯正摩擦攪拌工程では、図8の(a)に示すように、タブ材31の表面に開始位置SK1を設定し、大型回転ツールGの攪拌ピンをタブ材31に押し込む(押圧する)。大型回転ツールGのショルダ部の一部がタブ材31に接触したら、本体10に向かって大型回転ツールGを相対移動させる。そして、本体10の裏面Zbにおける地点f’、地点a’、地点c’及び地点h’付近で平面視凸状となるとともに、地点g‘、地点d’、地点b’及び地点e’付近で平面視凹状となるように大型回転ツールGを相対移動させて摩擦攪拌を行う。図8の(b)に示すように、本体10の中心線(一点鎖線)に対して線対称となるように裏面側塑性化領域W3が形成される。本実施形態では、開始位置SK1と終了位置EK1をタブ材31に設け、一筆書きの要領で摩擦攪拌を行う。これにより、摩擦攪拌を効率よく行うことができる。矯正摩擦攪拌工程が終了したら、タブ材31を切除する。
なお、本実施形態では、大型回転ツールGの軌跡、即ち、裏面側塑性化領域W3の形状が、中心地点j’を囲み、かつ、中心地点j’に対して略放射状となるように形成したが、これに限定されるものではない。大型回転ツールGの軌跡のバリエーションについては後記する。
本実施形態では、裏面Zb側の大型回転ツールGの軌跡の長さ(裏面側塑性化領域W3の長さ)は、表面Za側の小型回転ツールF及び大型回転ツールGの軌跡の長さ(表面側塑性化領域W1及び表面側塑性化領域W2長さの和)よりも短くなるように設定している。即ち、矯正工程における加工度が、蓋部材固定工程及び第二凹部密封工程の加工度よりも小さくなるように設定している。これにより、伝熱板1の平坦性を高めることができる。この理由については実施例で説明する。ここで、加工度とは、摩擦攪拌によって形成された塑性化領域の体積量を示す。
また、本実施形態では矯正工程において、タブ材を配置したが、矯正摩擦攪拌工程における摩擦攪拌のルートによってはタブ材を設けずに、裏面Zb上に摩擦攪拌の開始位置及び終了位置を設けてもよい。
また、本実施形態では矯正工程において、タブ材を配置したが、矯正摩擦攪拌工程における摩擦攪拌のルートによってはタブ材を設けずに、裏面Zb上に摩擦攪拌の開始位置及び終了位置を設けてもよい。
以上説明した伝熱板の製造方法によれば、突合部40に対する摩擦攪拌接合に加えて、第二凹部13の周囲において、重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行うことにより、第一凹部12の底面12aと蓋部材30の裏面30bとの微細な隙間を塞ぐことができる。また、第二凹部13の周囲において、本体10と蓋部材30とを密着させることができる。これにより、伝熱板1の水密性及び気密性を高めることができる。
また、蓋部材固定工程及び第二凹部密封工程による熱収縮によって、伝熱板1が歪んでしまったとしても、伝熱板1の裏面Zbにも摩擦攪拌を行うことで、表面Zaに発生した反りを解消して伝熱板1の平坦性を容易に高めることができる。即ち、伝熱板1の裏面Zbに形成された裏面側塑性化領域W3が、熱収縮により縮むため、伝熱板1の裏面Zb側において、本体10の各隅部側から中心側に向かって圧縮応力が作用する。これにより、蓋部材固定工程及び第二凹部密封工程によって形成された反りが解消されて、伝熱板1の平坦性を高めることができる。
また、本実施形態における矯正工程では、この矯正工程で形成される裏面側塑性化領域W3の平面形状を、伝熱板1の中心地点j’に対して略点対称となるように摩擦攪拌を行うため、バランスよく矯正することができる。
また、第一凹部12内に第二凹部13,13を内包するように形成されているため、第二凹部13が複数個形成される場合や第二凹部13の形状が複雑になる場合であっても、容易に伝熱板1を製造することができる。従来は、例えば第二凹部が平面視蛇行状を呈する場合、その形状に合わせて平面視蛇行状に蓋部材の平面形状を成形していた。これにより、蓋部材の成形作業が煩雑になるとともに、本体と蓋部材とを精度よく配置するのが困難になるという問題があった。
しかし、本実施形態によれば、第二凹部13が複数個ある場合であっても、第二凹部13,13を包囲するように平面視矩形の第一凹部12を形成するとともに、第一凹部12の形状に合わせて蓋部材30を矩形に形成することで、蓋部材30の形状を単純化することができる。これにより、蓋部材30を容易に成形できるとともに、第一凹部12に蓋部材30を精度よく配置することができ、伝熱板1を容易に製造することができる。
しかし、本実施形態によれば、第二凹部13が複数個ある場合であっても、第二凹部13,13を包囲するように平面視矩形の第一凹部12を形成するとともに、第一凹部12の形状に合わせて蓋部材30を矩形に形成することで、蓋部材30の形状を単純化することができる。これにより、蓋部材30を容易に成形できるとともに、第一凹部12に蓋部材30を精度よく配置することができ、伝熱板1を容易に製造することができる。
また、本実施形態では、第二凹部密封工程の前に蓋部材固定工程を行うため、蓋部材30を本体10に固定した状態で第二凹部密封工程を行うことができるため、作業性を高めることができる。
また、本実施形態に係る第二凹部密封工程では、第二凹部13の開口周縁14に沿って大型回転ツールGを一周させるとともに、表面側塑性化領域W2をオーバーラップさせて重複させることにより、第二凹部13の周囲の重ね合わせ部18の気密性及び水密性を高めることができる。
また、大型回転ツールGを金属部材に挿入する際には、金属部材に大きな負荷が作用するため、摩擦攪拌の開始位置SM1,SM2を蓋部材30上に設定すると、蓋部材30が変形してしまう可能性がある。しかし、本実施形態に係る第二凹部密封工程では、摩擦攪拌の開始位置SM1,SM2を突合部40の外側に設定したため、大型回転ツールGの挿入時における蓋部材30の変形を防ぐことができる。また、本実施形態では、摩擦攪拌の終了位置EM1,EM2を肉厚の本体10側に設定したため、大型回転ツールGの引抜跡の補修を容易に行うことができる。
また、本体10の厚みは、大型回転ツールGのショルダ部G1の外径Y1の1.5倍以上に設定されており、また、本体10の厚みは、大型回転ツールGの攪拌ピンG2の長さLBの3倍以上に設定されている。つまり、大型回転ツールGに対して本体10が薄いと、熱収縮による変形が大きくなる可能性があるが、本実施形態では、大型回転ツールGの各部位の大きさに対して本体10が十分な厚みを備えているため、伝熱板1の平坦性をより高めることができる。
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、本体10に形成された第二凹部51の形状が、平面視矩形枠状を呈する点で第一実施形態と相違する。なお、第二実施形態の説明においては、第一実施形態と重複する部分については説明を省略する。
次に、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態では、本体10に形成された第二凹部51の形状が、平面視矩形枠状を呈する点で第一実施形態と相違する。なお、第二実施形態の説明においては、第一実施形態と重複する部分については説明を省略する。
第二実施形態に係る伝熱板101は、図9の(a)に示すように、本体10と、本体10に摩擦攪拌接合される蓋部材30とを備えている。
本体10は、本体10の上面10aに凹設された第一凹部12と、第一凹部12の中央に凹設された第二凹部51と、第二凹部51に連通する貫通孔16とを有する。
本体10は、本体10の上面10aに凹設された第一凹部12と、第一凹部12の中央に凹設された第二凹部51と、第二凹部51に連通する貫通孔16とを有する。
第一凹部12は、本体10の上面10aよりも一段下がった位置に形成されており、蓋部材30が配置される部位である。第一凹部12は、平面視矩形を呈する底面12aと、底面12aから垂直に立設した4つの側壁12bとを有する。本実施形態では、第二凹部51を平面視矩形枠状に形成したため、底面12aが第二凹部51の内側と外側の両方に形成されている。
第二凹部51は、熱輸送流体(本実施形態では冷却水)が流通する部分である。第二凹部51は、第一凹部12内において、平面視矩形枠状に形成されており、上方に開口している。第二凹部51の開口部には、開口周縁53a,53bがそれぞれ形成されている。
図9の(b)に示すように、第一凹部12に蓋部材30を配置すると、第一凹部12の側壁12bと蓋部材30の側面30aとで突合部40が形成される。また、第一凹部12の底面12aと蓋部材30の裏面30bとで重ね合わせ部18が形成される。本実施形態では、重ね合わせ部18は、第二凹部51の内側と外側の両方に形成される。
次に、第二実施形態に係る伝熱板の製造方法について図8を用いて説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、蓋部材固定工程と、第二凹部密封工程と、矯正工程と、面削工程を実行する。
蓋部材固定工程では、突合部40に摩擦攪拌接合を行って、本体10に蓋部材30を接合する。蓋部材固定工程では、図10の(a)に示すように、小型回転ツールFを右回転させつつ、突合部40上に設定した開始位置s2に挿入し、突合部40に沿って終了位置e2まで摩擦攪拌接合を行う。第一実施形態では、突合部40の全周に亘って摩擦攪拌接合を行ったが、本実施形態では、突合部40を構成する各辺の中間部分のみに対して摩擦攪拌接合を行う。即ち、突合部40を構成する各辺の一点に開始位置s2及び終了位置e2をそれぞれ設定し摩擦攪拌接合を行う。蓋部材固定工程では、突合部40の一方の対辺の中間部分を摩擦攪拌接合した後に、他方の対辺の中間部分を摩擦攪拌接合することが好ましい。これにより、蓋部材30をバランスよく固定することができ、蓋部材30の本体10に対する位置決め精度が向上する。蓋部材固定工程によって、表面側塑性化領域W1が形成される。
第二凹部密封工程では、図10の(a)に示すように、第一凹部12の底面12aと、蓋部材30の裏面30bとが重なり合う重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行う。第二凹部密封工程では本体10の上面10aに設定した開始位置SM3に、大型回転ツールGを左回転させつつ挿入した後、蓋部材30側へ移動させる。大型回転ツールGが突合部40を横断したら、重ね合わせ部18上において、第二凹部51の開口周縁53aの外周に沿って大型回転ツールGを移動させる。大型回転ツールGを移動させることにより、第二凹部51の周囲には、表面側塑性化領域W2が形成される。
大型回転ツールGを第二凹部51の回りに一周させたら、図10の(b)に示すように、表面側塑性化領域W2を横断させて、本体10の上面10aに設定した終了位置EM3まで移動させる。大型回転ツールGが終了位置EM3に達したら、本体10から大型回転ツールGを離脱させる。
次に、本実施形態に係る第二凹部密封工程では、第二凹部51の内側の重ね合わせ部18(図9の(b)参照)に対しても摩擦攪拌接合を行う。図10の(b)に示すように、蓋部材30の中央に摩擦攪拌の開始位置SM4を設定し、第二凹部51の開口周縁53bの内側に沿って大型回転ツールGを移動して摩擦攪拌接合を行う。第二凹部51の内側には、表面側塑性化領域W2が形成される。大型回転ツールGが第二凹部51の内側を一周したら、既存の表面側塑性化領域W2と重複させて、蓋部材30の中央に設定した終了位置EM4まで大型回転ツールGを移動させる。
図11に示すように、蓋部材固定工程と、第二凹部密封工程を行った後、伝熱板101の表面Zaには、表面側塑性化領域W1,W2が形成される。表面側塑性化領域W1,W2は、熱収縮によって縮むため、伝熱板101の表面Za側において、本体10の各隅部側から中心側に向かって圧縮応力が作用する。これにより、伝熱板101は表面Za側が凹となるように(裏面Zb側に凸となるように)、撓んでしまう可能性がある。特に、伝熱板101の表面Zaに示す地点a〜地点jのうち、伝熱板101の四隅に係る地点a,c,f,hにおいては、その反りの影響が顕著に現れる傾向がある。
矯正工程では、大型回転ツールGを用いて伝熱板101の裏面Zbから摩擦攪拌を行う。矯正工程は、前記した蓋部材固定工程及び第二凹部密封工程で発生した反り(歪み)を解消するために行う工程である。本実施形態に係る矯正工程は、伝熱板101の裏面Zbに対して摩擦攪拌を行う矯正摩擦攪拌工程と、伝熱板101の裏面Zbの隅部に摩擦攪拌を行う隅部摩擦攪拌工程を含む。
矯正摩擦攪拌工程では、図12に示すように、大型回転ツールGを用いて、伝熱板101の裏面Zbに対して摩擦攪拌を行う。矯正摩擦攪拌工程では、前記した第二凹部密封工程と略同等の押込み量で摩擦攪拌を行う。矯正摩擦攪拌工程のルートは、本実施形態では、中心地点j’を囲み、かつ、矯正摩擦攪拌工程によって形成される裏面側塑性化領域W3が伝熱板101の平面形状と相似形状となるように設定する。
具体的には矯正摩擦攪拌工程では、図12に示すように、伝熱板101の裏面Zbの任意の位置に大型回転ツールGの攪拌ピンを押し込む(押圧する)。大型回転ツールGのショルダ部の一部が裏面Zbに接触したら、平面視矩形に大型回転ツールGを相対移動させて摩擦攪拌を行う。本実施形態では、伝熱板101の外縁の平面形状と大型回転ツールGの移動軌跡の平面形状とが相似形状となるように摩擦攪拌を行う。
隅部摩擦攪拌工程では、図12に示すように、本体10の地点a’、地点c’、地点f’及び地点h’に係る各隅部において、重点的に摩擦攪拌を行う。即ち、地点a’に係る隅部を構成する一辺2a側に摩擦攪拌の開始位置SMを設定し、他辺2b側に終了位置EMを設定する。そして、開始位置SMで大型回転ツールGを押し込み、摩擦攪拌を行った後、終了位置EMで大型回転ツールGを離脱させる。同様の工程を、地点c’、地点f’及び地点h’の各隅部にも行う。隅部摩擦攪拌工程によれば、特に反りの大きい伝熱板101の隅部に重点的に摩擦攪拌を行うことができるため、より伝熱板101の平坦性をより高めることができる。
隅部摩擦攪拌工程は、本実施形態では、大型回転ツールGの軌跡が各隅部において、対角線と直交するように形成されているが、これに限定されるものではない。隅部の反りの大きさを考慮して適宜摩擦攪拌のルートを設定すればよい。なお、隅部摩擦攪拌工程で形成される対向する裏面側塑性化領域W4,W4、裏面側塑性化領域W4,W4はそれぞれ中心地点j’に対して対称となるように形成されることが好ましい。これにより、伝熱板101の表面Za側と裏面Zb側の反りをバランスよく解消して伝熱板101の平坦性を高めることができる。
また、本実施形態では、裏面Zb側の大型回転ツールGの軌跡の長さ(裏面側塑性化領域W3及び裏面側塑性化領域W4の長さの和)は、表面Za側の小型回転ツールF及び大型回転ツールGの軌跡の長さ(表面側塑性化領域W1及び表面側塑性化領域W2長さの和)よりも短くなるように設定している。即ち、矯正工程における加工度が、蓋部材固定工程及び第二凹部密封工程の加工度よりも小さくなるように設定している。これにより、伝熱板101の平坦性を高めることができる。この理由については実施例で説明する。加工度とは、摩擦攪拌によって形成された塑性化領域の体積量を示す。
面削工程では、公知のエンドミル等を用いて伝熱板101の裏面Zbを面削する。図13に示すように、伝熱板101の裏面Zbには、各回転ツールの抜き穴(図示省略)や、各回転ツールを押し込むことによって発生する溝(図示省略)、バリ等が発生する。したがって、面削工程を行うことにより、伝熱板101の裏面Zbを平滑に形成することができる。本実施形態では、図13に示すように、面削加工の厚みMaは、裏面塑性化領域W3の厚みWaよりも大きく設定する。これにより、伝熱板101の裏面Zbに形成される裏面側塑性化領域W3,W4が除去されるため、伝熱板101の性質の均一性を図ることができる。また、裏面Zbに裏面側塑性化領域W3,W4等が露出しないため、意匠性等にも好適である。
なお、本実施形態では、面削加工の厚みは、裏面側塑性化領域の厚みよりも大きく設定したが、これに限定されるものではない。面削加工の厚みは、例えば、大型回転ツールGの攪拌ピンG2の長さよりも大きく設定してもよい。
また、本実施形態では、大型回転ツールGを用いて矯正工程を行ったが、攪拌ピンG2を備えない回転ツールを用いて矯正工程を行っても構わない。かかる回転ツールによれば、裏面側塑性化領域の深さを浅くすることができるため、面削する厚みを小さくすることができる。これにより、面削部分が少ないため本体10のロスを小さくすることができ、コストを低減することができる。
また、本実施形態では、大型回転ツールGを用いて矯正工程を行ったが、攪拌ピンG2を備えない回転ツールを用いて矯正工程を行っても構わない。かかる回転ツールによれば、裏面側塑性化領域の深さを浅くすることができるため、面削する厚みを小さくすることができる。これにより、面削部分が少ないため本体10のロスを小さくすることができ、コストを低減することができる。
以上説明した第二実施形態に係る伝熱板の製造方法によれば、突合部40に対する摩擦攪拌接合に加えて、第二凹部51の周囲において、重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行うことにより、第一凹部12の底面12aと蓋部材30の裏面30bとの微細な隙間を塞ぐことができる。これにより、伝熱板101の水密性及び気密性を高めることができる。本実施形態では、第二凹部51を平面視矩形枠状に形成したため、第二凹部51の内側に形成された重ね合わせ部18に対しても摩擦攪拌接合を行った。これにより、伝熱板101の水密性及び気密性をさらに高めることができる。
また、矯正工程を行うことにより、蓋部材固定工程及び第二凹部密封工程による熱収縮によって伝熱板101が歪んでしまったとしても、表面Zaに発生した反りを解消して伝熱板101の平坦性を容易に高めることができる。また、本実施形態における矯正工程では、大型回転ツールGの移動軌跡が、伝熱板101の外縁の平面形状と相似となるように移動させるとともに、表面側塑性化領域W2と略同等の平面形状を呈するように移動させるため、バランスよく摩擦攪拌を行うことができる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態では、本体10に形成された第二凹部61の形状が、平面視円形状を呈する点で第一実施形態と相違する。なお、第三実施形態の説明においては、第一実施形態と重複する部分については説明を省略する。
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態では、本体10に形成された第二凹部61の形状が、平面視円形状を呈する点で第一実施形態と相違する。なお、第三実施形態の説明においては、第一実施形態と重複する部分については説明を省略する。
第三実施形態に係る伝熱板102は、図14に示すように、本体10と、本体10に摩擦攪拌接合される蓋部材30とを備えている。
本体10は、本体10の上面10aに凹設された第一凹部12と、第一凹部12に凹設された第二凹部61と、第二凹部61に連通する貫通孔16とを有する。
本体10は、本体10の上面10aに凹設された第一凹部12と、第一凹部12に凹設された第二凹部61と、第二凹部61に連通する貫通孔16とを有する。
第一凹部12は、本体10の上面10aよりも一段下がった位置に形成されており、蓋部材30が配置される部位である。第一凹部12は、平面視矩形を呈する底面12aと、底面12aから垂直に立設した4つの側壁12bとを有する。
第二凹部61は、熱輸送流体(本実施形態では冷却水)が流通する部分である。第二凹部61は、第一凹部12内において平面視円形状を呈し、上方に開口している。第二凹部61の開口部には開口周縁62が形成されている。
次に、第三実施形態に係る伝熱板の製造方法について図15を用いて説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、蓋部材固定工程と、第二凹部密封工程と、矯正工程を実行する。
蓋部材固定工程では、突合部40に摩擦攪拌接合を行って、本体10に蓋部材30を接合する。蓋部材固定工程では、図15に示すように、突合部40の四隅に断続的に摩擦攪拌接合を行う。即ち、突合部40の各四隅に設定された開始位置s3から終了位置e3まで小型回転ツールFを右回転させて摩擦攪拌接合を行う。蓋部材固定工程では、突合部40の一方の対角同士を先に摩擦攪拌接合した後に、他方の対角同士を摩擦攪拌することが好ましい。これにより、蓋部材30をバランスよく固定することができ、蓋部材30の本体10に対する位置決め精度が向上する。
第二凹部密封工程では、第一凹部12の底面12a(図14参照)と、蓋部材30の裏面30bとが重なり合う重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行う。第二凹部密封工程では、本体10の上面10aに設定した開始位置SM5に、大型回転ツールGを右回転させつつ挿入した後、蓋部材30側へ移動させる。大型回転ツールGが突合部40を横断したら、重ね合わせ部18上において、第二凹部61の外周に沿って大型回転ツールGを移動させる。大型回転ツールGを移動させることにより、表面側塑性化領域W2が形成される。
大型回転ツールGを第二凹部61回りに一周させたら、図15の矢印にしたがって、表面側塑性化領域W2を横断させ、本体10の上面10aに設定した終了位置EM5まで移動させる。大型回転ツールGが終了位置EM5に達したら、本体10から大型回転ツールGを離脱させる。
矯正工程では、図16に示すように、中型回転ツールHを用いて伝熱板102の裏面Zbに対して摩擦攪拌を行う。矯正工程は、前記した蓋部材固定工程及び第二凹部密封工程で発生した反り(歪み)を解消するために行う工程である。本実施形態に係る矯正工程は、伝熱板102の裏面Zbに対して摩擦攪拌を行う矯正摩擦攪拌工程と、伝熱板102の裏面Zbの隅部に摩擦攪拌を行う隅部摩擦攪拌工程を含む。
本実施形態に係る矯正工程では、中型の回転ツール(以下、「中型回転ツールH」という。)を用いる。中型回転ツールHは、具体的な図示はしないが、大型回転ツールGと相似形状を呈し、大型回転ツールGよりも小さく、かつ、小型回転ツールFよりも大きい大きさからなる。つまり、中型回転ツールHの攪拌ピンの長さは、大型回転ツールGの攪拌ピンG2よりも小さく形成されている。また、中型回転ツールHのショルダ部の外径は、大型回転ツールGのショルダ部G1よりも小さく形成されている。
矯正摩擦攪拌工程では、伝熱板102の裏面Zbの地点c’付近に設定された開始位置SK2に、中型回転ツールHを左回転させつつ挿入した後、第二凹部61の外周に沿って右回りに中型回転ツールHを移動させる。中型回転ツールHを移動させることにより、裏面側塑性化領域W3が形成される。伝熱板102の裏面Zbに形成された裏面側塑性化領域W3は、表面Zaに形成された表面側塑性化領域W2と同等の平面形状を呈し、表面側塑性化領域W2と裏面側塑性化領域W3とは同等の長さで形成されている。
隅部摩擦攪拌工程では、図16に示すように、本体10の地点a’、地点c’、地点f’及び地点h’に係る各隅部において、重点的に摩擦攪拌を行う。即ち、地点a’に係る隅部を構成する一辺2a側に摩擦攪拌の開始位置SK3を設定し、他辺2b側に終了位置EK3を設定する。そして、開始位置SK3で小型回転ツールFを押し込み、摩擦攪拌を行った後、終了位置EK3で小型回転ツールFを離脱させる。裏面側塑性化領域W4,W4,W4,W4は、伝熱板102の表面Zaに形成された表面側塑性化領域W1,W1,W1,W1と略同等の形状を呈する。また、各裏面側塑性化領域W4は、各表面側塑性化領域W1の真裏に位置するように形成される。
以上説明した第三実施形態に係る伝熱板の製造方法によれば、突合部40に対する摩擦攪拌接合に加えて第二凹部61の周囲において、重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行うことにより、第一凹部12の底面12aと蓋部材30の裏面30bとの間の隙間を塞ぐことができる。これにより、伝熱板102の水密性及び気密性を高めることができる。
また、矯正工程では、蓋部材固定工程及び第二凹部密封工程による熱収縮によって伝熱板102が歪んでしまったとしても、表面Zaに発生した反りを解消して伝熱板102の平坦性を容易に高めることができる。本実施形態における矯正工程では、伝熱板102の表面Zaに形成される表面側塑性化領域W1,W2と、裏面Zbに形成される塑性化領域W3,W4とが同等の平面形状を呈するように形成した。つまり、表面側塑性化領域W1,W2の長さの和と、裏面側塑性化領域W3,W4の長さの和が略同等の長さとなるように形成したが、伝熱板102の裏面Zbにおいては、大型回転ツールGよりも小さい中型回転ツールHを用いたため、摩擦攪拌の加工度(塑性化領域の体積量)は裏面Zbの方が小さい。これにより、伝熱板102の平坦性をより高めることができる。このように、伝熱板102の表裏で摩擦攪拌を行う回転ツールの大きさを変更することで加工度を変えてもよい。
また、本実施形態では、第二凹部61を平面視円形状に形成しているが、第二凹部61の周囲を包囲するように平面視矩形の第一凹部12を形成し、第一凹部12と同等の平面形状からなる蓋部材30で封止している。つまり、第二凹部61の形状が平面視円形であったとしても蓋部材30の形状は平面視矩形のものを用いることができる。これにより、蓋部材30の形状は平面視矩形の単純な形状のものを用いることができるため、蓋部材30の成形を容易に行うことができるとともに、第一凹部12に蓋部材30を精度よく配置することができる。
また、本実施形態に係る蓋部材固定工程では、突合部40の四隅のみに対して摩擦攪拌接合を行うため、作業手間を省略することができる。
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態では、本体70に形成された第二凹部71の形状が、平面視U字状を呈する点で第一実施形態と相違する。なお、第四実施形態の説明においては、第一実施形態と重複する部分については説明を省略する。
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態では、本体70に形成された第二凹部71の形状が、平面視U字状を呈する点で第一実施形態と相違する。なお、第四実施形態の説明においては、第一実施形態と重複する部分については説明を省略する。
第四実施形態に係る伝熱板103は、図17及び図18に示すように、本体70と、本体70に配置される蓋部材80とを摩擦攪拌接合によって一体成形される。
本体70は、直方体を呈し、平面視直方形を呈する。本体70は、本体70の上面70aに凹設された第一凹部12と、第一凹部12に凹設された第二凹部71と、第二凹部71に連通する貫通孔16とを有する。蓋部材80は、図18に示すように、第一凹部12と略同等の平面形状を呈する板状部材である。
本体70は、直方体を呈し、平面視直方形を呈する。本体70は、本体70の上面70aに凹設された第一凹部12と、第一凹部12に凹設された第二凹部71と、第二凹部71に連通する貫通孔16とを有する。蓋部材80は、図18に示すように、第一凹部12と略同等の平面形状を呈する板状部材である。
第一凹部12は、本体70の上面70aよりも一段下がった位置に形成されており、蓋部材80が配置される部位である。第一凹部12は、平面視矩形を呈する底面12aと底面12aから垂直に立設した4つの側壁12bとを有する。
第二凹部71は、熱輸送流体(本実施形態では冷却水)が流通する部分である。第二凹部71は、平面視U字状を呈し、上方に開口している。第二凹部71の開口部には、開口周縁72が形成されている。
次に、第四実施形態に係る伝熱板の製造方法について、図18を用いて説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、蓋部材固定工程と、第二凹部密封工程と、矯正工程を実行する。
蓋部材固定工程では、突合部40に摩擦攪拌接合を行って、本体70に蓋部材80を接合する。蓋部材固定工程では、図18の(a)に示すように、小型回転ツールFを用いて突合部40の四隅に断続的に摩擦攪拌接合を行うとともに、突合部40を構成する各辺の中間部分に対して摩擦攪拌接合を行う。蓋部材固定工程によって表面側塑性化領域W1が形成される。
第二凹部密封工程では、図18の(a)及び(b)に示すように、第一凹部12の底面12aと、蓋部材80の裏面80bとが重なり合う重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行う。第二凹部密封工程では、本体70の上面70aに設定した開始位置SM6に、大型回転ツールGを右回転させつつ挿入した後、蓋部材80側へ移動させる。大型回転ツールGが突合部40を横断したら、重ね合わせ部18上において、第二凹部71の開口周縁72の外周に沿って大型回転ツールGを移動させる。大型回転ツールGを移動させることにより、表面側塑性化領域W2が形成される。
大型回転ツールGを第二凹部71に沿って一周させたら、図18の(a)の矢印にしたがって、表面側塑性化領域W2を横断させ、本体70の上面70aに設定した終了位置EM6まで移動させる。大型回転ツールGが終了位置EM6に達したら、本体70から大型回転ツールGを離脱させる。
矯正工程では、図19に示すように、大型回転ツールGを用いて、伝熱板103の裏面Zbに対して摩擦攪拌を行う。矯正工程では、平面視長方形を呈するように、大型回転ツールGを移動させる。伝熱板103の裏面Zbには、裏面側塑性化領域W3が形成される。裏面側塑性化領域W3の長さは、表面側塑性化領域W1,W2の和よりも短く形成されている。
以上説明した第四実施形態に係る伝熱板の製造方法によれば、突合部40に対する摩擦攪拌接合に加えて第二凹部71の周囲において、重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行うことにより、第一凹部12の底面12aと蓋部材80の裏面80bとの微細な隙間を塞ぐことができる。これにより、伝熱板103の水密性及び気密性を高めることができる。
また、矯正工程を行うことにより、蓋部材固定工程及び第二凹部密封工程による熱収縮によって伝熱板103が歪んでしまったとしても、表面Zaに発生した反りを解消して伝熱板103の平坦性を容易に高めることができる。
また、本実施形態では、第二凹部71を平面視U字状に形成しているが、第二凹部71の周囲を包囲するように平面視矩形の第一凹部12を形成し、第一凹部12と同等の平面形状からなる蓋部材80で封止している。つまり、第二凹部71の形状が平面視U字状のような複雑な形状であったとしても、蓋部材80は、平面視矩形のものを用いることができる。これにより、蓋部材80の形状は平面視矩形の単純な形状のものを用いることができるため、蓋部材80の成形を容易に行うことができるとともに、第一凹部12に蓋部材80を精度よく配置することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、第四実施形態のように蓋部材80が比較的大きい場合、蓋部材固定工程を行う前に、仮接合工程を行ってもよい。
仮接合工程では、図20の(a)及び(b)に示すように、突合部40の内側であって、かつ、第二凹部71の外側において、蓋部材80の上方から回転した中型回転ツールHを押し込んで、第一凹部12の底面12aと、蓋部材80の裏面80bとが重ね合わされた重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行う。当該摩擦攪拌接合によって裏面側塑性化領域W5が形成される。
仮接合工程により、本体70と蓋部材80とが仮接合される。蓋部材80が大きい場合、蓋部材固定工程を行うと、摩擦攪拌接合の熱収縮により蓋部材が反って蓋部材80の中央部分と本体70とが離間してしまい、第二凹部密封工程の作業が煩雑になる可能性がある。しかし、本実施形態の仮接合工程を行うことで、蓋部材80の反りを抑制することができるため、第二凹部密封工程を好適に行うことができる。
仮接合工程は、重ね合わせ部18において、連続的に摩擦攪拌接合を行ってもよいし、本実施形態のように断続的に行ってもよい。また、仮接合工程では、使用する回転ツールの大きさは、蓋部材30の大きさに応じて適宜設定すればよい。
また、前記した実施形態では、第二凹部密封工程の前に、蓋部材固定工程を行ったが、第二凹部密封工程を行った後に、蓋部材固定工程を行ってもよい。
また、大型回転ツールGを挿入する位置に、挿入時の摩擦抵抗を軽減するために、予め下穴を形成しておいてもよい。
また、本実施形態では、第一凹部及び蓋部材の平面形状は矩形としたが、これに限定されるものではなく、平面視円形、楕円系、又は角形であってもよい。第一凹部及び蓋部材の形状は、成形しやすく、かつ、精度良く配置可能な形状であることが好ましい。
また、矯正工程に係る摩擦攪拌のルートは、前記した形態に限定されるものではなく、以下の形態でもよい。図21は、伝熱板の裏面側の平面図であって(a)は第一変形例、(b)は第二変形例、(c)は第三変形例、(d)は第四変形例、(e)は第五変形例、(f)は第六変形例を示す。
図21の(a)及び(b)に示す第一変形例及び第二変形例の矯正用回転ツールの軌跡(裏面側塑性化領域W3)は、いずれも本体10の中心地点j’を囲むように形成されていることを特徴とする。また、第一変形例は、本体10の外形形状に対して相似になるように形成されている。また、図21の(b)に示す第二変形例のように、格子状に形成してもよい。
図21の(c)及び(d)に示す第三変形例及び第四変形例の矯正用回転ツールの軌跡(裏面側塑性化領域W3)は、いずれも本体10の中心地点j’を通過して放射状となるように形成されていることを特徴とする。図21の(c)に示す第三変形例は、中心地点j’を始点・終点とするループを複数含み、中心地点j’に対して点対称となるように形成されている。また、第三変形例は、一筆書きの要領で形成することができるため、作業効率を高めることができる。図21の(d)に示す第四変形例は、中心地点j’を通過するとともに、本体10の対角線に対して平行となるように形成されている。
図21の(e)及び(f)に示す第五変形例及び第六変形例の矯正用回転ツールの軌跡(裏面側塑性化領域W3)は、中心地点j’を通る直線で四分割した領域に、同形状の4つの軌跡がそれぞれ独立して形成されるとともに、中心地点j’を挟んで斜めに対向する軌跡が点対称となるように形成されている。4つの軌跡の形状は、同形状であれば、どのような形状であっても構わない。
以上説明したように、矯正工程は、本体10に行われる接合工程の摩擦攪拌の軌跡に応じて適宜摩擦攪拌のルートを設定して行えばよい。
次に、本発明の実施例について説明する。本発明に係る実施例は、図22の(a)及び(b)に示すように平面視正方形の本体10の表面Za及び裏面Zbにそれぞれ3つの円を描くように摩擦攪拌を行い、表面Za側で発生した反りの変形量と、裏面Zb側で発生した反りの変形量を測定した。即ち、表面Za側で発生した反りの変形量の値と、裏面Zb側で発生した反りの変形量の値とが近いほど、本体10の平坦性が高いことを示す。
本体10は、平面視500mm×500mmの直方体であって、厚みが30mm、60mmの二種類ものを用いてそれぞれ測定を行った。本体10の素材は、JIS規格の5052アルミニウム合金である。
摩擦攪拌の軌跡である3つの円は、本体10の中心に設定した地点j又は地点j’を中心とし、表面Za及び裏面Zbともに半径r1=100mm(以下、小円ともいう)、r2=150mm(以下、中円ともいう)、r3=200mm(以下、大円ともいう)に設定した。摩擦攪拌の順序は、小円、中円、大円の順番で行った。
回転ツールは、表面Za側及び裏面Zb側ともに同じ大きさの回転ツールを用いた。回転ツールのサイズは、ショルダ部の外径が20mm、攪拌ピンの長さが10mm、攪拌ピンの根元の大きさ(最大径)が9mm、攪拌ピンの先端の大きさ(最小径)が6mmのものを用いた。回転ツールの回転数は、600rpm、送り速度は、300mm/minに設定した。また、表面Za側及び裏面Zb側ともに回転ツールの押込み量は一定に設定した。図22に示すように、表面Za側において形成された塑性化領域を小円から大円に向けてそれぞれ塑性化領域W21乃至塑性化領域W23とする。また、裏面Zb側において形成された塑性化領域を小円から大円に向けて塑性化領域W31乃至W33とする。当該実施例における各測定結果を以下の表1〜表4に示す。
表1は、本体の板厚が30mmであって、表面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。「FSW前」は、摩擦攪拌を行う前において、中心地点j(基準j)と各地点(地点a〜地点h)との高低差を示している。「FSW後」は、基準jをゼロとして、3つの円の摩擦攪拌を行った後において、基準jと各地点との高低差を示している。「表面側変形量」は、各地点における(FSW後−FSW前)の値を示している。「表面側変形量」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。「FSW前」及び「FSW後」のマイナス値は、基準jよりも下方に位置していることを意味する。
表2は、本体の板厚が30mmであって、裏面側から摩擦攪拌を行った場合(矯正工程)の測定値を示した表である。「FSW前」は、摩擦攪拌を行う前において、中心地点j’(基準j’)と各地点(a’〜h’)との高低差を示している。
「FSW1」は、図22を参照するように、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量1」は、各地点における(FSW1−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量1」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW2」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)に加えてさらに、中円(半径r2)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量2」は、各地点における(FSW2−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量2」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW3」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)、中円(半径r2)に加えてさらに、大円(半径r3)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量3」は、各地点における(FSW3−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量3」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW1」は、図22を参照するように、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量1」は、各地点における(FSW1−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量1」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW2」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)に加えてさらに、中円(半径r2)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量2」は、各地点における(FSW2−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量2」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW3」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)、中円(半径r2)に加えてさらに、大円(半径r3)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量3」は、各地点における(FSW3−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量3」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
表3は、本体の板厚が60mmであって、表面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。表3の各項目は、表1の各項目と略同等の意味を示す。
表4は、本体の板厚が60mmであって、裏面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。表4の各項目は、表2の各項目と略同等の意味を示す。
表1の「表面側変形量」の平均値(1.61)と、表2の「裏面側変形量1」の平均値(2.04)とを比較すると、「裏面側変形量1」の値の方が大きい。同様に、「裏面側変形量2」の平均値(2.95)及び「裏面側変形量3」の平均値(3.53)も、「表面側変形量」の平均値(1.61)よりも大きな値となっている。つまり、本体の板厚が30mmの場合は、裏面側から小円の摩擦攪拌のみを行っただけでも、本体の反りが戻りすぎてしまう。したがって、本体30mmの場合は、表面側よりも低い加工度で本体10の平坦性を高めることができる。
表3の「表面側変形量」の平均値(0.98)と、表4の「裏面側変形量2」の平均値(0.91)とを比較すると、両者の変形量が近似している。したがって、本体10の板厚が60mmの場合は、裏面側から小円及び中円の摩擦攪拌を行ったときに、本体10の平坦性が高いことが確認できた。つまり、板厚が60mmの場合は、表面側に比べて裏面側の加工度を低く設定すれば本体10の平坦性を高めることができる。
1 伝熱板
10 本体
10a 上面
12 第一凹部
12a 底面
12b 側壁
13 第二凹部
14 開口周縁
16 貫通孔
18 重ね合わせ部
30 蓋部材
30a 側面
30b 裏面
40 突合部
F 小型回転ツール
F1 ショルダ部
F2 攪拌ピン
G 大型回転ツール
G1 ショルダ部
G2 攪拌ピン
s1 開始位置
e1 終了位置
SM1 開始位置
EM1 終了位置
W1〜W5 塑性化領域
10 本体
10a 上面
12 第一凹部
12a 底面
12b 側壁
13 第二凹部
14 開口周縁
16 貫通孔
18 重ね合わせ部
30 蓋部材
30a 側面
30b 裏面
40 突合部
F 小型回転ツール
F1 ショルダ部
F2 攪拌ピン
G 大型回転ツール
G1 ショルダ部
G2 攪拌ピン
s1 開始位置
e1 終了位置
SM1 開始位置
EM1 終了位置
W1〜W5 塑性化領域
Claims (13)
- 表面に凹設された第一凹部と、この第一凹部の底面に凹設され熱発生体が発生する熱を外部に輸送する熱輸送流体が流れる第二凹部とを有する本体に、前記第二凹部を封止する蓋部材を摩擦攪拌接合によって固定して形成される伝熱板の製造方法であって、
前記本体の前記第一凹部の側壁と前記蓋部材の側面との突合部に沿って回転ツールを移動させて少なくとも前記突合部の一部に対して摩擦攪拌接合を行う蓋部材固定工程と、
前記第二凹部の開口周縁に沿って回転ツールを移動させて、前記第一凹部の底面と前記蓋部材の裏面との重ね合わせ部に対して摩擦攪拌接合を行う第二凹部密封工程と、
前記伝熱板の裏面に対して回転ツールを移動させて摩擦攪拌を行う矯正工程と、を含むことを特徴とする伝熱板の製造方法。 - 前記伝熱板の裏面側に形成される塑性化領域の体積量を、前記伝熱板の表面側に形成された塑性化領域の体積量よりも小さく設定することを特徴とする請求項1に記載の伝熱板の製造方法。
- 前記矯正工程では、この矯正工程で形成される塑性化領域の平面形状を、前記伝熱板の中心に対して略点対称となるように設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
- 前記矯正工程では、この矯正工程で形成される塑性化領域の平面形状を、前記伝熱板の外縁の形状と略相似形状となるように設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
- 前記矯正工程では、この矯正工程で形成される塑性化領域の平面形状を、前記伝熱板の表面側に形成された塑性化領域の平面形状と略同等形状となるように設定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
- 前記矯正工程では、この矯正工程で形成される塑性化領域の全長を、前記伝熱板の表面側に形成された塑性化領域の全長と略同等となるように設定することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
- 前記矯正工程では、この矯正工程で用いる前記回転ツールの移動軌跡の全長を、前記伝熱板の表面側に形成された塑性化領域の全長よりも短くなるように設定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
- 前記矯正工程で用いる回転ツールのショルダ部の外径を、前記第二凹部密封工程で用いる回転ツールのショルダ部の外径よりも小さく設定することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
- 前記矯正工程で用いる回転ツールの攪拌ピンの長さを、前記第二凹部密封工程で用いる前記回転ツールの攪拌ピンの長さよりも短く設定することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
- 前記本体の厚みを、前記第二凹部密封工程で用いる回転ツールのショルダ部の外径の1.5倍以上に設定することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
- 前記本体の厚みを、前記第二凹部密封工程で用いる回転ツールの攪拌ピンの長さの3倍以上に設定することを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
- 前記本体が平面視多角形である場合、前記矯正工程では、前記伝熱板の隅部に対して回転ツールを用いて摩擦攪拌を行う隅部摩擦攪拌工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
- 前記矯正工程後に、前記伝熱板の裏面側を面削加工する面削工程を含み、前記面削加工の深さは、前記矯正工程で用いる回転ツールの攪拌ピンの長さよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
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