JP4480297B2 - フィルムコンデンサの端面電極用素材 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、巻回または積層方式によって製造されるフィルムコンデンサの端面電極用素材、特に高温高湿環境下においても耐久性に優れた端面電極用素材に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
フィルムコンデンサは、一般的に、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック誘電体フィルムに電気良導体金属(Al等)を蒸着したフィルムを巻回または積層し、あるいはプラスチック誘電体フィルムと金属箔とを重ねたものを巻回または積層し、その両端部に溶射によって端面電極を形成し、各端面電極にそれぞれリード線を接合することにより構成されている。
【0003】
従来、フィルムコンデンサの端面電極は、ZnやSn−Zn−Pb、Sn−Zn−Pb−Cu、Sn−Zn等の多様な合金系を溶射することにより形成されていた。
【0004】
しかし、ISO14000認証取得活動の活発化に象徴されるように、最近は環境問題への関心が高まっており、環境有害物質とされるPbを含む合金系の使用は望ましくない。そのため、現在使用されている端面電極用素材はほとんど無鉛材料である。
【0005】
なかでも、主にコスト面から、Znが大量に使用されている。Znは従来の端面電極用素材と同じ様にフィルムコンデンサの端面に溶射されて、メタリコン皮膜を形成する。しかし、Zn電極の場合、リード線接合工程における不良率が高いという問題がある。これは、Zn電極が高硬度であると共に比較的薄い皮膜であるため、リード線を接合する際に、皮膜にクラックが生じ易いからである。
【0006】
この問題を防ぐために、Zn電極の外側にSn−Zn等のSnを主成分とする比較的柔らかい合金を溶射して、Zn電極(内層)およびSn基合金電極(外層)からなる2層構造の電極を形成し、柔らかい外層にリード線を接合する方法が行われている。
【0007】
しかしながら、このような2層構造の電極では、製造工程が増えて製造コストが増大するばかりでなく、2層の接合面にクラックが生じる等のために耐久性が低いといった新たな問題が発生している。
【0008】
一方、近年、自動車電装業界および照明業界等を中心に、より過酷な条件下、特に高温高湿環境下における長期間使用を目的として、フィルムコンデンサの耐久性向上に対する要求が益々高まってきている。ところが、上記の従来の端面電極用素材はいずれも酸化速度が大きいため、特に高温高湿などの過酷な条件下では、素材自体の劣化に起因するコンデンサの性能低下は避けられない。従って、コンデンサの耐久性改善には、新規な高性能合金開発が必須である。
【0009】
以上の問題を解決するために、Sn−Zn−Cu−Sb系合金をフィルムコンデンサの電極用素材として用いる技術が提案されている(特開2000−58370号)。上記合金により形成された電極は、湿潤環境下での耐食性が高く、高信頼性のフィルムコンデンサの提供に大きく寄与するものである。しかも、上記合金は無鉛であり、またSnを多く含有するために、電極を2層構造とする必要はない。
【0010】
しかしながら、さらなる長期信頼性向上の観点から、一層高性能な端面電極用素材、特に高温高湿下においても耐久性の高い端面電極用素材が強く要望されている。
【0011】
本発明は、このような事情に着目してなされたものであって、その目的は、フィルムコンデンサの端面に一層構造の電極形成が可能であり、かつ無鉛材料でありながら、耐久性および電気特性に優れたフィルムコンデンサの端面電極用素材を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るフィルムコンデンサの端面電極用素材は、Zn:1〜25%(質量%を意味する、以下同じ)、Cu:1〜3%、Sb:0.5〜2.5%、Ti:0.01〜0.2%及び残部がSn及び不可避不純物からなることを特徴とする。
【0013】
前記端面電極用素材は、更にNi:1.0%以下(0%を含まない)及び/またはAg:1.0%(0%を含まない)を含有してもよい。
【0014】
本発明に係るフィルムコンデンサは、前記端面電極用素材によって電極が形成されたものであることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明のフィルムコンデンサの端面電極用素材は、PbフリーのSn基合金に対して、高融点金属であるTiが0.01〜0.2%添加されていることを特徴としている。
【0016】
従来は、低融点のSn基合金にTiを含有させることは困難とされていた。しかし、本発明者らは、Tiの酸化速度抑制効果に着目し、Tiの添加によって合金の高性能化を図るという思想の下に試行錯誤を重ねた結果、独自の方法によってTi添加に成功し、本発明を見出すに至った。
【0017】
まず、各合金元素の含有量について説明する。
【0018】
本発明の端面電極用素材は、Snをベースとしている。前述したように、Sn基合金は比較的柔らかいため、フィルムコンデンサ端面との密着性が高い。また、Sn基合金による電極では、リード線との接合時にクラック等の不良が生じにくいため、Znを用いた場合のように電極を2層構造にする必要はない。
【0019】
本発明のSn基合金は、必須元素として、Ti、Zn、CuおよびSbを含有する。
【0020】
Tiの好ましい含有量は、0.01〜0.2%である。Ti含有量が0.01%未満では、Tiの添加による効果が十分に発揮されない可能性がある。より好ましい下限量は0.013%、更に好ましくは0.015%以上である。一方、Tiを0.2%より多く添加すると、その添加効果が飽和してしまうばかりでなく、合金製造が困難となる。より好ましい上限量は0.15%、更に好ましくは0.10%以下である。
【0021】
Znの好ましい含有量は、1〜25%であり、Zn含有量が1%未満では、所望のTi量を添加することが困難となる。より好ましい下限量は2%、更に好ましくは3%以上である。一方、Znが25%より多い場合、Znの選択的酸化損耗が顕著となり、耐久性が低下する。より好ましい上限量は23%、更に好ましくは20%以下である。
【0022】
Cuの好ましい含有量は、1〜3%であり、Cu含有量が1%未満では、添加効果(耐久性向上効果)が十分に発揮されない。より好ましい下限量は1.3%、更に好ましくは1.5%以上である。一方、Cuが3%より多い場合、却って素材の耐久性を低下させる。より好ましい上限量は2.8%、更に好ましくは2.5%以下である。
【0023】
Sbの好ましい含有量は、0.5〜2.5%であり、Sb含有量が0.5%未満では、添加効果(耐久性向上効果)が十分に発揮されない。より好ましい下限量は0.8%、更に好ましくは1%以上である。一方、Sbが2.5%より多い場合、却って素材の耐久性を低下させる。より好ましい上限量は2%、更に好ましくは1.5%以下である。
【0024】
本発明の端面電極用素材には、上記必須元素に加えて、必要に応じて1.0%以下のNi及び/または1.0%以下のAgを含有してもよい。
【0025】
更に、本発明の端面電極用素材は、その特性を阻害しない程度のN,O等の不可避不純物を含有してもよい。
【0026】
次に、上記端面電極用素材による電極の形成方法を説明する。
【0027】
上記端面電極用素材は、まず、メタリコン用線材に形成される。更にこの線材を用いて、フィルムコンデンサの両端に溶射により端面電極(メタリコン皮膜)を形成する。電極形成後、各電極に溶接によりリード線を接合する。
【0028】
本発明が適用されるフィルムコンデンサの本体部分については、その構成や素材が特に限定されるものではないが、代表的なものとしては電気良導体金属(Al等)を蒸着したポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック誘電体フィルムを巻回または積層した構成のもの、プラスチック誘電体フィルムと金属箔とを重ねたものを巻回または積層した構成のもの等が非限定的に挙げられる。
【0029】
【実施例】
【0030】
【表1】
Figure 0004480297
【0031】
実施例1〜3
各実施例について、表1に示す組成からなる合金を作製した。次いで、これらの合金を電極素材とするサンプルコンデンサを作製し、耐候性試験を行った。以下にその方法を説明する。
【0032】
〔溶射用線材の作製〕
実施例1〜3の合金を用いて、それぞれ1.5mmφの細線を形成した。
【0033】
〔サンプルコンデンサの作製〕
実施例1〜3の合金をそれぞれ端面電極素材とするサンプルコンデンサ(各実施例につきn=3個)を、以下のように作製した。
【0034】
誘電体フィルムとして、Alが蒸着されたポリプロピレンフィルム(誘電体厚み:5μm)を用い、巻回法により誘電体フィルム積層体(静電容量:0.3μF)を作製した。その両端面に、上記により作製された線材を用いて、端面電極(皮膜)を溶射形成した。このとき、端面電極の厚さは0.5mmとした。各端面電極には外部電極引き出し用のリード線を溶接した。なお、端面電極の耐候性を加速評価するために、サンプルコンデンサは無外装とした。
【0035】
〔耐候性試験〕
得られたサンプルコンデンサを恒温恒湿槽に入れ、85℃、湿度85%の高温高湿雰囲気下に放置して、サンプルコンデンサの誘電損失率(tanδ)の時間的変化を調べた。なお、誘電損失率は、周波数100kHz時の値を測定した。
【0036】
100kHz時の誘電損失率によって、端面電極用素材の劣化の程度を評価することができると考えられる理由は以下の通りである。
【0037】
誘電損失率(tanδ)は、主に▲1▼誘電体の固有損失、▲2▼蒸着電極(Al)と端面電極間の接触損失および▲3▼端面電極とリード線間の接触損失の和である。上記のような高温高湿条件下で、端面電極の素材自体が酸化腐食等の劣化を生じると、端面電極−蒸着電極間および端面電極−リード線間の各接触状態が変化して、上記▲2▼および▲3▼の損失が増大し、その結果、誘電損失率が増大すると考えられる。
【0038】
また、誘電体が本実施例のようにポリプロピレンの場合、上記▲1▼の固有損失はほとんど周波数に依存しない。一方、上記▲2▼および▲3▼の端面電極素材の劣化に起因する接触損失は、周波数が高くなると増加する。そこで、▲2▼および▲3▼の接触損失の微小な変化を容易に感知するために、100kHz程度の高周波において誘電損失率測定を行ったものである。
【0039】
耐候性試験結果を表2に示す。表2における誘電損失率の値は、サンプルコンデンサ(n=3個)の平均値である。また、表2の記号は、“◎(極めて優れているもの)”、“○”、“□”、“△”および“×(極めて劣る)”の順に、各実施例の合金(端面電極用素材)の耐候性を5段階評価したものである。
【0040】
なお、100kHz誘電損失率の値が0.8%以上となれば、そのコンデンサは通常「内部回路異常」と判定され、実用レベルを満たさないとされる。
【0041】
比較例1〜3
上記実施例における結果と比較するために、表1に示す組成からなる比較例1〜3(Zn、Sn−50%Zn、Sn−2.93%Zn−1.96%Cu−1.00%Sb)の金属または合金についても、実施例と同様の方法で溶射用線材の形成、サンプルコンデンサの作成および耐候性試験を行った。耐候性試験結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
Figure 0004480297
【0043】
表2に示される結果より、従来材料であるZnを電極とするサンプルコンデンサは、耐候試験開始48時間後には誘電損失率が0.8を大幅に上回ることがわかった(比較例1)。同様に、従来材料であるSn−50%Znを電極とした場合にも、耐候試験開始96時間後には誘電損失率が0.8を大幅に上回った(比較例2)。よって、これらの従来材料は、高温高湿環境に対する耐久性に劣ると考えられる。
【0044】
比較例3の合金は、前述の公知文献によって開示された従来材料である。Cu,Sb添加によって、耐候性は多少改善されているものの、耐候試験開始96時間後には誘電損失率が0.8を超え、「内部回路異常」と判定された。
【0045】
一方、本発明の端面電極素材である実施例1〜3の合金を端面電極として用いたサンプルコンデンサは、250時間の耐候試験によっても、実用上支障となるような劣化がほとんど見られなかった。よって、これらの合金は、高温高湿環境下での長時間使用においても、優れた耐候性を維持し得ることが確認できた。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、環境汚染等の要因となるPbを含まない合金でありながら、高温高湿環境下においても耐久性および電気特性に優れたフィルムコンデンサの端面電極用素材を提供することができる。

Claims (3)

  1. Zn:1〜25%(質量%を意味する、以下同じ)、Cu:1〜3%、Sb:0.5〜2.5%、Ti:0.01〜0.2%及び残部がSn及び不可避不純物からなるフィルムコンデンサの端面電極用素材。
  2. 更にNi:1.0%以下(0%を含まない)及び/またはAg:1.0%(0%を含まない)を含む請求項1に記載の端面電極用素材。
  3. 請求項1または2に記載の端面電極用素材によって電極が形成されたものであるフィルムコンデンサ。
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