JP4480186B2 - 転写シート - Google Patents
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Description
この様な構成とすることで、使用する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂は、例えば、分子中にイソシアネート基(又はアミノ基)を有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂に、アミノ基(又はイソシアネート基)とメトキシ基等の加水分解性シリル基とを有するシリル化合物(例えばシランカップリング剤)を反応させた樹脂として容易に得られる。
(2)また、上記熱可塑性アクリルウレタン系樹脂の加水分解性シリル基が尿素結合を介して樹脂骨格に結合している構造の樹脂ならば、該樹脂は、例えば樹脂中にイソシアネート基を有する熱可塑性アクリル系ウレタン系樹脂と、アミノ基と加水分解性シリル基とを有するシリル化合物としてシランカップリング剤とを反応させれば容易に得られる。
(4)更に、基材上の装飾層の下側にもケイ素系有機無機複合高分子の下地樹脂層を設ければ、耐候性、耐擦傷性及び耐汚染性等の表面物性が優れるとともに、表面保護層等の基材上の各層の密着性をより優れたものとできる。また、密着性の耐水性もより良い。
(6)更に、転写圧として固体粒子衝突圧を利用すれば、弾性体ローラを転写圧に用いる等の従来の転写法では不可能な様な凹凸面でも、前記の如き表面物性及び密着性に優れた化粧材を容易に製造できるので、高意匠の化粧材が得られる。
(7)或いは、転写圧として弾性体ローラによる加圧を利用すれば、基材の被転写面が平坦乃至は比較的平坦な場合に、前記の如き表面物性及び密着性に優れた化粧材を平易に製造できる。
先ず、図1は本発明の転写シートSの一形態を例示する断面図である。図1に示す如く、本発明の転写シートSは、支持体シート1上に、装飾層2が転写層3として積層され、この装飾層2のうち少なくとも支持体シート1に接する層を、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層とした転写シートである。そして、図1に例示する形態では、転写層3となる装飾層2は、支持体シート1に接する側がプライマー層4、他方の側が装飾主体層5の2層構成からなる。装飾主体層5は、装飾層の装飾目的に対してそれ無くしては装飾層が装飾層となり得ない最低限必要な必須の層であり、例えば絵柄による装飾目的に対して絵柄を印刷形成した絵柄層等である。そして、本発明の転写シートSでは、図1の場合では、少なくともこのプライマー層4に上記特定材料からなる樹脂を用いる。なお、このプライマー層4は、支持体シート1に接する層であるので、剥離層とも呼べる。しかし、この剥離層は転写後の転写層上に表面保護層を形成する場合に、表面保護層と装飾層との密着性を向上する目的で形成されるので、プライマー層とここでは呼ぶことにする。なお、図示はしないが、装飾層2は装飾主体層5のみの構成の形態もあり得る。また、図1の形態の場合、装飾主体層5は支持体シート1に接しないので、装飾主体層5もプライマー層4同様に特定材料からなる樹脂の層としても良いが、他の樹脂等のその他材料を用いた層(例えば金属薄膜層等)としても良い。
支持体シート1としては、転写層と剥離性が有り、また基材の被転写面が凹凸である場合には更に、凹凸への追従性を有するもので有れば、従来公知のもので良く特に制限は無い。従って、被転写面が平面或いは二次元的凹凸表面の場合には、延伸性が無い紙等でも良いが、三次元的凹凸表面の場合には、少なくとも転写時には延伸性の有る支持体シートを用いる。延伸性のある支持体シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂フィルム(シート)を用いる。また、これら樹脂フィルムは、低延伸又は無延伸のものが延伸性の点で好ましい。また、支持体シートはこれらの単層又は異種材料からなる複層構成としても良い。例えば、被転写面が平面的な場合には、上質紙にポリプロピレンを積層した構成の支持体シートは転写性に優れ且つ安価である点で好ましい支持体シートの一つである。また、被転写面が凹凸面の場合にも適用できるものとして、厚み50〜120μmのポリプロピレン系シートは好ましい支持体シートの一つである。なお、支持体シートの厚みは、通常は20〜200μm程度である。
転写シートに於いて転写層3として形成される装飾層2は、装飾層のうち少なくとも支持体シートに接する層(すなわち、転写後は最表面となって表面保護層と接する層)が、分子中に加水分解性シリル基を有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層とする。
また、該特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を、装飾層の支持体シートに接する層、すなわち、転写後の最表面層、に使用することで、転写後の転写層上に形成する表面保護層として、ケイ素系有機無機複合高分子を使用した場合に、表面保護層を密着良く形成できる事になる。それは、前記熱可塑性アクリルウレタン系樹脂が有する加水分解性シリル基を、表面保護層のケイ素系有機無機複合高分子の水酸基との脱水反応によって結合させることができるからである(なお、もちろんだが、加水分解性シリル基が例えばメトキシ基ならば、それは脱アルコール反応である)。したがって、転写後の装飾層上に表面保護層を密着良く積層できる。
次に、装飾層の構成層について説明する。先ず、装飾主体層5は、装飾層2として必須の層である。装飾主体層5が支持体シートに接する層となる場合には、もちろん、上記特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層とする。しかし、支持体シート1と装飾主体層5との間にプライマー層4(図1参照)等が介在する構成の装飾層2の構成に於いては、装飾主体層は支持体シートに接触せず、装飾主体層の内容としては本発明では特別の制約は無く、転写シートに於ける従来公知の絵柄層等からなる装飾主体層を用途に応じて採用すれば良い。
装飾主体層5の代表的なものは、前述の如く、絵柄の意匠表現の為に印刷形成した絵柄層である。この絵柄層を印刷形成する場合には、バインダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える各種添加剤からなるインキが使用される。そして、装飾主体層(絵柄層)を支持体シートに接する層として形成する場合には、このバインダーとして用いる樹脂に、前述特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いる。その為、アルコキシシランの加水分解縮合物やシリル基含有ビニル系樹脂等の従来使用されていたケイ素系有機無機複合高分子に比べて撥液性も少なく、通常の印刷(乃至は塗工)法で欠点の無い印刷(乃至は塗工)が可能である。
また、上記着色剤としては、チタン白、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドン、イソインドリノン、フタロシアニンブルー等の有機顔料、アルミニウム箔粉、二酸化チタン被覆雲母の箔粉等の光輝性顔料、或いはその他染料等の公知の着色剤を用いることができる。
一方、(バインダーの樹脂を使用する場合に於いて)装飾主体層を支持体シートに接しない層として形成する場合では、バインダーの樹脂には、該特定の樹脂を使用しなくても良い。従来公知の樹脂から適宜選択すれば良い。例えば、シランカップリング剤を添加しないで用いる熱可塑性アクリルウレタン樹脂、或いは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂等を用いる。
次に、装飾主体層以外の装飾層の例として、プライマー層と接着剤層を説明する。
そして、このプライマー層4は、常に支持体シートに接する装飾層として形成されるので、このプライマー層4には前述特定の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いる。
この接着剤層には、熱可塑性アクリルウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の公知の樹脂を使用すれば良い。なお、接着剤層は、ロールコート等の塗工法、スクリーン印刷等の印刷法等の従来公知の形成方法で形成すれば良い。
先ず、図2に本発明の化粧材の基本的な形態例を示す。
図2(A)の断面図で例示する化粧材Dは、基材B上に装飾層2と該装飾層2の表面に(すなわち装飾層に接する様に)表面保護層6が積層され、且つ装飾層2は少なくとも表面側が加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層として、表面保護層6はアルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子からなる層とした構成の化粧材である。
一方、図2(B)の断面図で例示する化粧材Dは、基材B上に下地樹脂層7と、該下地樹脂層7の表面に装飾層2Aと、該装飾層の表面に表面保護層6が積層され、且つ下地樹脂層7及び表面保護層6はアルコキシシランの加水分解縮合物又はシリル基含有ビニル系樹脂からなるケイ素系有機無機複合高分子からなる層として、装飾層2Aは少なくとも表面側及び裏面側が加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層とした構成の化粧材である。
表面保護層6は、ケイ(珪)素系有機無機複合高分子から構成する。ケイ素系有機無機複合高分子としては、例えば、アルコキシシランの加水分解縮合物、シリル基含有ビニル系樹脂等のケイ素樹脂を使用できる。表面保護層に、該高分子を使用することで、耐候性、耐擦傷性、耐汚染性等を優れたものにできる上、装飾層2或いは2Aとの密着性も良好にできる。装飾層2或いは2Aは、少なくとも表面側が加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた層となっており、該加水分解性シリル基がこれら両層の分子的結合の橋渡しの役目を担い、その結果、表面保護層6と装飾層2或いは2Aとの密着が良くなるからである。
なお、ビニル系樹脂は、ビニル系モノマーの重合物であり、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等である。
なお、該塗液中には、用途、要求物性に応じて、ベンゾトリアゾール、超微粒子酸化セリウム等の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、シリカ、球状α−アルミナ、鱗片状α−アルミナ等の粒子からなる減摩剤、着色顔料、体質顔料、滑剤、防黴剤、抗菌剤等を添加しても良い。
下地樹脂層7は、ケイ素系有機無機複合高分子から構成する。該ケイ素系有機無機複合高分子としては、上記した表面保護層で述べた如き高分子を使用できる。したがって、ここでは該高分子に関する更なる説明は省略する。そして、下地樹脂層に該高分子を使用することで、その上に転写等によって形成する装飾層2Aとして、その裏面側(下地樹脂層に面する側)を加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を用いた装飾層とする場合に、該加水分解性シリル基がこれら両層の分子的結合の橋渡しの役目を担い、その結果、これら両層を密着良く積層できる。
そして、下地樹脂層は、上記特定高分子を含む塗液を塗工すれば形成できる。塗工はスプレー塗装、カーテンコート、軟質ゴムローラやスポンジローラを使用したロールコート等の公知の塗工法で行えば良い。下地樹脂層の厚さは、通常5〜100μm程度である。
化粧材に於ける装飾層2或いは2Aは、塗工等の転写以外の方法で形成しても良いが、好適には前述した本発明の転写シートによって形成する。化粧材に於いて少なくとも表面側(基材から遠い側)を加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン樹脂を用いた層としたのが装飾層2であり、裏面側(基材に近い側)にも該樹脂を用いた層としたのが装飾層2Aである。なお、化粧材に於ける装飾層の表面側は転写シートに於ける装飾層の支持体シートに接する側であり、化粧材に於ける装飾層の裏面側は転写シートに於ける装飾層の支持体シートに遠い側である。このことを踏まえて、前述の本発明の転写シートを使用して、装飾層2或いは2Aを転写形成すれば良い。
なお、基材Bとしては特に限定は無い。例えば、材質としては、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等の基材を使用できる。具体的には、ケイ酸カルシウム、中空押し出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(硝子繊維強化コンクリート)、パルプセメント、石綿セメント、木片セメント、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、杉、檜、樫、ラワン、チーク等の各種樹種からなる木材単板や木材合板、パーティクルボード、集成材、木質中密度繊維板(MDF)等の木質材料、また、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス等の無機質材料、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料等である。
なお、基材の化粧面には、必要に応じて適宜、下塗り層(べースコート層)を設けておいても良い。下塗り層は、基材(セメント等のアルカリ性基材)からのアルカリ成分溶出の防止(所謂シーラー)したり、或いは、基材(無機系基材等)の表面の凹凸を埋めて表面を平滑にし、転写性等を向上させて転写層の転写に適した表面性を付与したりする(所謂目止め)、等の目的で設ける。また、下塗り層を着色不透明とする事により隠蔽性を持たせて、基材自体の色や模様が絵柄層等の装飾層の模様に悪影響するのを防ぐ(所謂下地塗装)目的でも使用できる。なお、これらの場合、下塗り層の機能は、接着剤層に兼用させて接着剤層のみで足らす事もできる。下塗り層は用途により1層又は多層で用いる。
下塗り層は、基材の材質や表面状態及びその目的に応じて、樹脂等からなる従来公知の塗液を塗工し形成すれば良い。例えば、該樹脂としては、2液硬化型ウレタン樹脂、1液湿気硬化型ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が用いられる。特に、基材が、セメント等のアルカリ性基材の場合は、耐アルカリ性に優れた樹脂が好ましい。耐アルカリ性に優れた樹脂としては、例えば、アクリルウレタン系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が好ましい。
なお、下地樹脂層7を設けない図2(A)の形態に於いて、装飾層2と基材Bとの所望の接着性が期待できない場合では、図3(B)で例示する化粧材Dの如く、基材Bと装飾層2との間に接着剤層Aを設けても良い。特に被転写面が凹凸面で転写抜けが起きやすい様な場合には、この接着剤層Aは、図3(A)で示す如く、予め基材B側に形成しておくと接着の点で効果的である。これに於ける接着剤層Aに使用する接着剤としては、特に制限は無く用途に応じて、公知の接着剤の中から適宜選択すれば良い。例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂による従来公知の感熱溶融型接着剤、2液硬化型ウレタン樹脂接着剤やウレタン系湿気硬化型接着剤等の硬化化接着剤、或いはゴム系接着剤等である。また、接着剤は有機溶剤系、水系、ホットメルト系等、いずれでも良い。また、耐水性を考慮すると、硬化型接着剤等が好ましい。
なお、基材上に接着剤を施して接着剤層Aを基材上に形成するには、スプレーコート、フローコート等の塗工法、スクリーン印刷等の印刷法等の従来公知の形成方法の中から、基材の表面凹凸形状等によって適宜選択すれば良い。
本発明の化粧材の製造方法では、前述した本発明の転写シートを用いて被転写体となる基材に装飾層を転写層として転写移行させて、化粧材を製造する。そして、本発明の化粧材の製造方法の一つ形態では、図3(A)の断面図にその一例を示す如く、先ず、支持体シート1に前述特定の装飾層2を転写層3として積層した転写シートSを基材B(同図の場合は予め接着剤層Aが被転写面に施してある)に圧接後、その支持体シート1を剥離して、装飾層2を転写層3として基材Bに転写する。このままで化粧材としても良いが、好ましくはその後更に、転写後の転写層3である装飾層2の表面に、ケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層6を設けて表面保護層付きの化粧材Dを得る〔図3(B)〕。なお、基材B上に予め設けた接着剤層Aは、装飾層2や基材B自体に接着性があれば省略できる。
本発明の化粧材の製造方法で採用する転写方法としては、基本的には特に制限は無い。用途に応じ、例えば次の様な従来公知の転写方法を採用すれば良い。その場合、必要に応じて、熱、圧、或いは熱圧(熱と圧の併用)の作用も利用する。特に、基材の被転写面が三次元凹凸形状の場合には、圧力、より好ましくは熱圧の利用が好ましい。
そして、以下に例示する各種転写方法のなかでも、本発明の化粧材の製造方法に於ける転写圧の押圧方法として、特に採用するのは、(1)の弾性体ローラによる転写方法と、(5)の固体粒子衝突圧を利用する転写方法である。(1)は所謂ローラ転写方法であり平易に転写でき、また弾性体ローラを軟質とすることで、基材に多少の表面凹凸が有っても転写できる方法として好ましい。一方、(5)は平面はもちろん、弾性体ローラ等によっては、従来は不可能であった大きな表面凹凸にも転写できる方法として好ましい。
図4は、弾性体ローラによる転写圧を加圧をして転写する様子を概念的に説明する概念図である。なお、同図は転写圧押圧方法自体の概念図であり、基材Bの上に適宜形成する下地樹脂層や接着剤層は図示していない。使用する弾性体ローラRとしては、通常、鉄等の剛体の回転軸芯R1の表面周囲を軟質の弾性体R2で被覆したローラを用いる。弾性体R2としては、シリコーンゴム、ネオプレンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム等のゴムを用いる。特に、耐熱性、耐久性、弾性等の点からシリコーンゴムが好ましい。また特に、基材の被転写面が凹凸形状(三次元形状)をなす場合は、弾性体として、JIS規格のゴム硬度が60°以下のものを使用することが、転写シートを凹凸面に追従成形させる為に好ましい。弾性体ローラの直径は、通常5〜20cm程度である。また、通常、弾性体ローラは加熱ローラとしても用いる。弾性体ローラの加熱は、ローラ内部の電熱ヒータや、ローラ外部の赤外線輻射ヒータ等の加熱源によって加熱する。
固体粒子は噴出器から転写シートに向かって噴出させ、転写シートに衝突したその衝突圧が転写圧となる。噴出器には、代表的には羽根車や吹出ノズルを用いる。羽根車はその回転により固体粒子を加速し、吹出ノズルは高速の流体流で固体粒子を加速する。羽根車や吹出ノズルには、サンドブラスト或いはショットブラスト、ショットピーニング等とブラスト分野にて使用されているものを流用できる。例えば羽根車には遠心式ブラスト装置、吹出ノズルには加圧式や吸引式ブラスト装置、ウェットブラスト装置等である。遠心式ブラスト装置は羽根車の回転力で固体粒子を加速し噴出する。加圧式ブラスト装置は、圧縮空気に混合しておいて固体粒子を、空気と共に噴出する。吸引式ブラスト装置は、圧縮空気の高速流で生ずる負圧部に固体粒子を吸い込み、空気と共に噴出する。ウェットブラスト装置は、固体粒子を液体と混合して噴出する。
そして、散布器818の内部に固体粒子Pがホッパ等から輸送管を通って供給される。通常、固体粒子は、羽根車の上方(直上又は斜上方)から供給する。散布器内に供給された固体粒子は散布器の羽根車で外側に飛び散る。飛び散った固体粒子は、方向制御器816の開口部817によって許された方向にのみ放出され、外側の羽根車812の羽根813と羽根813との間に供給される。そして、羽根813に衝突し、羽根車812の回転力で加速され、羽根車から噴出する。
羽根車812の寸法は、通常直径5〜60cm程度、羽根の幅は5〜20cm程度、羽根の長さは、ほぼ羽根車の直径程度、羽根車の回転速度は500〜5000〔rpm〕程度である。固体粒子の噴出速度は10〜50〔m/s〕程度、投射密度(基材単位面積当たりに衝突させる固体粒子の総質量)は10〜150〔kg/m2 〕程度である。
流体圧は吹付圧力で通常0.01〜1MPa程度である。流体流の流速は、液流では通常1〜20m/秒程度、気流では通常5〜80m/秒程度である。
なお、熱融着する層を活性化して熱融着させる場合に加熱するタイミングは、衝突圧印加前、衝突圧印加中、或いは衝突圧印加前及び印加中などのいずれでも良い。一方、転写シートが基材が凹凸表面の場合はその表面形状に追従し、成形され、転写層が基材に十分に接触すれば、冷風等の冷却手段で熱融着した層の冷却を促進しても良い。冷風は、例えば、転写シート側や基材側から吹き付ける。
本発明の転写シートを用いて得られる化粧材等の転写製品、或いは本発明の化粧材、或いは本発明の化粧材の製造方法で得られる化粧材等の物品の用途は、特に制限は無い。例えば、化粧材として、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の外装、壁面、天井、床等の建築物の内装、窓枠、扉、手摺、敷居、鴨居等の建具類の表面化粧、箪笥等の家具やテレビ受像機等の弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車、航空機、船舶等の乗物内装材等の各種分野で用いられ得る。なお、化粧材や転写製品等の物品の形状は、平板以外にも、曲面板、棒状体、立体物等でも良い。平板や曲面板では化粧材は化粧板として用いられる。なかでも、本発明では、耐候性、耐擦傷性、耐汚染性等の表面物性、及び密着性が要求される用途は好適であり、また耐水性も良い事から、例えば、キッチン、浴室等の水廻り用途は好適である。
図9(A)の斜視図で示す如き、被転写面が凹凸面の基材Bを用いて、図11(A)の断面図で示す如き化粧材Dを次の様にして製作した。基材Bは、(底面の)幅8mm、深さ3mmの縦目地11と、(底面の)幅6mm、深さ3mmの横目地12とを有し、これら縦目地11と横目地12とで区画された天面部(凸部)上に高さが0.1〜2mmに分布する山状の突起を多数有する凹凸面を有する、厚さ18mmの押出セメント板である。なお、天面部は煉瓦積み模様で配置されている。また、縦目地11及び横目地12の側面は図9(B)の断面図で示す如く、約30°で底面に行くにしたがって幅が狭くなる斜面となっている。転写領域は天面部とし、非転写領域を縦目地及び横目地とした。
図11(B)の断面図で示す如き、下地樹脂層7付きの化粧材Dを次の様にして製作した。基材は、実施例1と同じ物を使用した。そして、実施例1同様に下塗り層8を形成した。そして、該下塗り層の上に、実施例1で表面保護層形成に用いた塗液を45g/m2 スプレー塗工して、下地樹脂層7を形成した。そして、転写シートは、実施例1で使用した転写シートに於いて、装飾層のうち、化粧材に於いて裏面側となる全ベタ層5Bについても、プライマー層に用いたものと同じ樹脂を使用し(て装飾層2Aとし)た他は、実施例1と同様にして作製した。
そして、この転写シートを、実施例1と同様にして、上記の下地用樹脂層形成済みの基材に転写後、表面保護層6を形成して、化粧材を作製した。
表1に示す如く、実施例1に於いて、装飾層のうちのプライマー層の樹脂を、装飾主体層と同じ樹脂(飽和の熱可塑性アクリルウレタン系樹脂で加水分解性シリル基、水酸基、及びイソシアネート基が分子中に無い樹脂)に変更した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
表1に示す如く、実施例1に於いて、装飾層のうちのプライマー層に用いた樹脂を、分子中に加水分解性シリル基は持たないがイソシアネート基は有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂に代えて、この樹脂100部に対してシランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン5部を配合した樹脂組成物に変更した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
表1に示す如く、実施例1に於いて、装飾層のうちのプライマー層に用いた樹脂として、分子中に加水分解性シリル基は持たないがイソシアネート基は有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂を合成後の樹脂溶液に、更に引き続き、前記樹脂100部に対してシランカップリング剤としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部を添加した樹脂組成物を使用した他は、実施例1と同様にして化粧材を作製した。
性能評価結果は表2に纏めて示す。各性能の評価は次の様にして行った。
また、シランカップリング剤を塗液使用時に添加した比較例2では、初期密着性は良好となったものの、二次密着性は不良であった。これは、比較例2では、添加したシランカップリング剤は装飾層の樹脂及び表面保護層の樹脂と反応して分子的結合に関与したとは考えられるが、単なる添加では、その分子的結合の関与度合いが少ない為に、加水分解性シリル基による層間の分子的結合の形成が十分に満足した形にまで至らずに、密着性向上が効果が十分に得られなかった思われる。
2 装飾層(少なくとも支持体シート側が特定材料)
2A 装飾層(表面側及び裏面側が特定材料)
3 転写層
4 プライマー層
5 装飾主体層
5A 柄パターン層
5B 着色ベタ層
6 表面保護層
7 下地樹脂層
8 下塗り層
11 縦目地
12 横目地
812 羽根車
813 羽根
814 側面板
815 中空部
816 方向制御器
817 開口部
818 散布器
819 回転軸
820 軸受
840 吹出ノズルを用いた噴出器
841 誘導室
842 内部ノズル
843 ノズル開口部
844 ノズル
A 接着剤層
B 基材
D 化粧材
F 流体
P 固体粒子
R 弾性体ローラ
R1 回転軸芯
R2 弾性体
S 転写シート
Claims (2)
- 基材上に転写シートを用いて装飾層を転写により形成した後、ケイ素系有機無機複合高分子からなる表面保護層を前記装飾層上に設ける化粧材を製造するために用いられる転写シートであって、前記転写シートが支持体シート上に、前記装飾層が転写層として積層され、前記装飾層のうち少なくとも前記支持体シートに接する層が、加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリルウレタン系樹脂からなる転写シート。
- 上記熱可塑性アクリルウレタン系樹脂の加水分解性シリル基が尿素結合を介して樹脂骨格に結合している、請求項1記載の転写シート。
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