JP2001205992A - 転写方法 - Google Patents

転写方法

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JP2001205992A
JP2001205992A JP2000019633A JP2000019633A JP2001205992A JP 2001205992 A JP2001205992 A JP 2001205992A JP 2000019633 A JP2000019633 A JP 2000019633A JP 2000019633 A JP2000019633 A JP 2000019633A JP 2001205992 A JP2001205992 A JP 2001205992A
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JP2000019633A
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English (en)
Inventor
Yuji Kuwabara
祐司 桑原
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Dai Nippon Printing Co Ltd
Original Assignee
Dai Nippon Printing Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 固体粒子衝突圧を転写圧に利用して凹凸面へ
転写するときに、転写層と支持体シートとの剥離性を維
持した上で、箔切れ性が良くて箔バリが無く、また粉状
転写や、転写層の浮きも防げる様にする。 【解決手段】 使用する転写シートSとして、支持体シ
ート1上に積層する転写層4が剥離層2と装飾層3を有
し、且つ剥離層を塗布量1g/m2 以下の熱可塑性樹脂
からなる層とした転写シートを用いる。熱可塑性樹脂に
は熱可塑性ウレタン樹脂が好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、住宅の外装及び内
装材等の各種用途に用いる化粧材等の転写物を得る為の
転写方法に関する。特に凹凸の被転写面に適した転写方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、転写法により各種化粧材等の
転写物が製造されている。その場合、転写シートの転写
層としては、支持体シートとの剥離力を適切なものとし
たり、転写後の最表面層として表面を保護したりする等
の為に、通常は、支持体シートに接する層として剥離層
を設ける事が多い。また、表面保護機能が不要で、剥離
層無しでも転写層と支持体シートとの剥離力も適切なも
のと出来るならば、転写層は剥離層無しで支持体シート
に直接に装飾層を印刷形成する等して形成した構成の転
写シートも使われている。
【0003】一方、被転写基材の被転写面が凹凸面の場
合に適合する転写方法として、固体粒子衝突圧を転写圧
に利用する方法が、特許第2844524号公報等で提
案されている。そして、この様な転写方法の場合、それ
に用いる転写シートには、凹凸面に追従する凹凸追従性
が要求される。したがって、支持体シートや転写層に
は、転写時に延びて成形される凹凸追従性を有する材料
として熱可塑性樹脂が通常使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、凹凸面
への転写に於いて、図5の断面図で概念的に示す如く、
転写領域6と非転写領域7とを有する被転写基材Bの場
合、転写シートSの支持体シート1を剥離する時に、本
来は転写層が転写領域と非転写領域との境界Eの所で切
断され、非転写領域の直上部の転写層は支持体シート上
に残留すべきところが、実際には、境界Eから非転写領
域に向かって余剰の転写層が延長残留して、いわゆる
「箔バリ」8が発生し、「箔切れ性」が悪くなる現象が
起きる事がある。また、特に、固体粒子衝突圧を用いる
転写方法に固有の課題として、図6の如く、転写領域の
部分でも、その被転写面の凹凸次第では、転写時に被転
写基材の微凹部と転写シート間に挟み込まれた空気が抜
けきれずに、被転写基材Bと転写層4間の気泡Gとなっ
て、被転写基材から転写層が気泡部分で浮いてしまう
「浮き」9が発生する事もある。なお、同図では被転写
基材B上に接着剤層Aを施した後に転写する場合で描い
てある。そして更に、浮いた転写層が脱落すれば、そこ
は絵柄が欠落した転写抜けとなる。
【0005】一方、剥離層が無い転写シートの場合で
は、箔バリと浮きは改善される代わりに、新たな課題が
生じる。すなわち、通常、転写層の装飾層として印刷で
形成する絵柄層には濃淡がある。したがって、絵柄層で
表現する絵柄によって、インキの付着量が部分的に低付
着量部分と高付着量部分とが併存する。この為、特に転
写圧に固体粒子衝突圧を利用した転写方法の場合、凹凸
面にも転写できる反面、転写層が脆いと衝突衝撃によっ
て、転写層が粉々になって転写されると言う転写不良
(粉状転写)が起きる事があった。これは、印刷形成す
る絵柄層(柄パターン層や全ベタ層)は、着色剤等の顔
料の含有量が多い為に、剛性が高く、脆くなっているか
らである。これに対して、剥離層は添加剤が添加される
場合でも、その上に形成する絵柄層等の印刷安定性の為
に、硫酸バリウム等の体質顔料が少量添加されているだ
けであり、剥離層の剛性はその樹脂自体とあまり変わら
ず、凹凸に追従できる柔軟性を保持している。したがっ
て、剥離層がある場合には、絵柄層等の装飾層は剥離層
につられて凹凸に追従させることができる。しかし、剥
離層無しでは、絵柄層等の装飾層が凹凸に追従できずに
破砕されて粉状転写となるのである。
【0006】そこで、本発明の課題は、特に凹凸の被転
写面に対して好適な固体粒子衝突圧を用いる転写方法に
於いて、箔バリ、浮き、粉状転写等の転写不良が起きな
い様にする事である。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すべく、
本発明の転写方法では、支持体シート上に転写層が積層
された転写シートを用い、該転写シートの支持体シート
側からの固体粒子衝突圧を転写圧に利用して、転写層を
被転写基材に転写する転写方法において、転写層として
剥離層と装飾層を有し、且つ剥離層を塗布量1g/m2
以下の熱可塑性樹脂からなる層とした転写シートを用い
る様にした。
【0008】この様に転写シートの転写層に剥離層を設
けるが、その厚さを塗布量で1g/m2 以下とした熱可
塑性樹脂からなる層とする事によって、被転写面が凹凸
面の場合でも、転写層と支持体シートとの十分な剥離性
を確保した上で、箔バリ、浮き、及び粉状転写等の転写
不良を起こさずに、化粧材等の転写物が得られる転写方
法となる。なお、箔バリの防止効果は、被転写基材面が
凹凸面で転写領域と非転写領域とを有する転写の場合に
特に効果的である。
【0009】また、本発明の転写方法は、上記方法に於
いて、剥離層の熱可塑性樹脂に熱可塑性ウレタン樹脂を
用いる様にした。
【0010】この様に、剥離層の熱可塑性樹脂を特定樹
脂とすれば、剥離性確保の上、箔バリ、浮き、粉状転写
等の転写不良を確実に防止できる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明
の転写方法について、実施の形態を説明する。
【0012】転写シート:本発明の転写方法では、図1
(A)の断面図で一例として示す転写シートSの如く、
支持体シート1上に、少なくとも、熱可塑性樹脂からな
り塗布量(固形分基準の値)が1g/m2 以下の剥離層
2と、装飾層3とを、この順に積層してなる転写層4を
有する転写シートを用いる。装飾層3は、代表的には印
刷等で形成して絵柄を表現する絵柄層である。そして、
剥離層2の熱可塑性樹脂としては、好ましくは熱可塑性
ウレタン樹脂を用いる。なお、転写層4は、上記剥離層
2と装飾層3とを少なくとも有するが、更に適宜、剥離
層2と装飾層3間の接着性を向上させる為の接着強化層
(プライマー層等とも呼ばれる)等が有っても良い。但
し、後で詳述するが、転写層を被転写基材に接着させ転
写させる為に接着剤を使用する場合は、接着剤層は、基
本的には転写層の構成要素としては設けず、被転写基材
側に設けるのが、浮き防止及び箔バリ防止の点で好まし
い。
【0013】〔剥離層〕先ず、剥離層2は、熱可塑性樹
脂からなる層であり、転写時には被転写基材側に転写層
の一部として移行する層である。移行は剥離層の全厚み
の事もあるが、剥離層の凝集破壊によって、剥離層の厚
みの一部が被転写基材側に移行し、厚みの一部が支持体
シートと共に一体となって剥離する事もある。
【0014】この剥離層に使用する熱可塑性樹脂として
は、例えば、熱可塑性ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩
化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂を使用
すれば良い。これら熱可塑性樹脂は単体、又は2種以上
の混合物として用いる。これら樹脂のなかでも、特に熱
可塑性ウレタン樹脂は、剥離性を確保しつつ、箔切れ性
を良くして箔バリ発生を防ぎ、且つ浮き及び粉状転写の
発生を防げる点でより良好な結果が得られる。
【0015】ここで、上記熱可塑性ウレタン樹脂につい
て更に説明しておけば、該熱可塑性ウレタン樹脂は、例
えば、ジイソシアネートと高分子ジオール、更に必要に
応じ低分子ジオール等の活性水素含有基を有する活性水
素化合物を反応させて得られる公知の樹脂が使用でき
る。なお、熱可塑性ウレタン樹脂は、架橋構造を持たな
いウレタン樹脂であり、通常その骨格構造は直線状であ
るが、枝分かれした構造でも良い。
【0016】上記ジイソシアネートとしては、芳香族
ジイソシアネート〔例えば、4,4′−ジフェニルメタ
ンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイ
ソシアネート、1,5−ナフタリンジイソシアネート、
n−イソシアネートフェニルスルホニルイソシアネー
ト、m−或いはp−イソシアネートフェニルスルホニル
イソシアネート等〕、脂肪族ジイソシアネート〔例え
ば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等〕、
脂環式ジイソシアネート〔例えば、イソホロンジイソシ
アネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素
添加ジフェニルメタンジイソシアネート等〕が、単独使
用又は2種以上使用される。なお、転写物に耐候性が望
まれる場合には、脂肪族乃至は脂環式ジイソシアネート
が好ましい。例えば、水素添加ジフェニルメタンジイソ
シアネート(水添MDI)、イソホロンジイソシアネト
ー(IPDI)等である。これらは、単独使用の他、例
えば水添MDIとIPDIとの併用の様に2種以上使用
するのも良い。
【0017】また、上記高分子ジオール(ここでの高分
子とは低分子ジオールに対する対語で分子量1万未満も
含む)としては、ポリエステル系ジオール、ポリエーテ
ル系ジオール、アクリル系ジオール等が、単独使用又は
2種以上使用される。
【0018】そして、この様な熱可塑性ウレタン樹脂の
具体例としては、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエ
ーテル系ウレタン樹脂、アクリル系ウレタン樹脂等があ
り、これら樹脂は単独使用又は混合使用する。なお、耐
候性が要求される場合には、アクリル系ウレタン樹脂等
が好ましい。
【0019】また、アクリル系ウレタン樹脂としては、
例えば、ポリカーボネートジオールとイソホロンジイソ
シアネートからなるウレタン部分と、側鎖と末端に水酸
基を有するアクリル部分とのブロック共重合体等を使用
できる。この様なアクリルとポリウレタンのブロック共
重合体、つまりポリウレタン−アクリルブロック共重合
体は、例えば、ポリカーボネートジオール、及び(ジ)
イソシアネートに更に、アゾジオールを付加反応させて
得られるポリウレタンアゾ高分子を、ラジカル重合開始
剤として使用して、メチル(メタ)アクリレート、エチ
ル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート
等〔但し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又
はメタクリレートの意味〕等のアクリルモノマーをラジ
カル重合させれば得られる。
【0020】また、剥離層に使用する熱可塑性ウレタン
樹脂としては、水分等で硬化せず経時的安定性が良好な
点では、イソシアネート基を持たない「飽和」熱可塑性
ウレタン樹脂が好ましい。
【0021】また、該熱可塑性ウレタン樹脂としては、
分子中に(イソシアネート基の他に)水酸基も無い樹脂
を用いれば、転写物の耐温水性等の耐水性が向上する点
で好ましい。なお、この様な樹脂は、ポリエステル系ウ
レタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、アクリル系
ウレタン樹脂等で水酸基が有るタイプのウレタン樹脂に
ついて、その(残留)水酸基をアルキル基等の他の基で
置換する事によって無くす事によって得られる。
【0022】また、熱可塑性ウレタン樹脂としては、分
子中に加水分解性シリル基を有する樹脂も好ましい。該
樹脂を使用することで、特に転写後の転写層上に更に、
ケイ素樹脂からなる表面層を設ける場合に、表面層と転
写層との密着性を良くすることができるからである。
【0023】なお、加水分解性シリル基とは、加水分解
性のシリル基の事であり、例えば、一般式(R1 3-m
−Si(R2 m − で表される基である。但し、式
中、R 1 は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、
置換アルコキシ基、アシロキシ基、置換アシロキシ基、
フェノキシ基、イミノオキシ基、アルケニルオキシ基等
の加水分解性の基であり、R2 は、アルキル基、アリー
ル基、アラルキル基等の一価の有機基である。mは0〜
2の整数である。この様な加水分解性シリル基の具体例
としては、例えば、アルコキシシリル基、ハロシリル
基、ヒドロシリル基、アシロキシシリル基、フェノキシ
シリル基、イミノオキシシリル基、アルケニルオキシシ
リル基等が挙げられる。
【0024】なお、加水分解性シリル基を、熱可塑性ウ
レタン樹脂の分子に持たせるには、例えば、イソシアネ
ート基含有の熱可塑性ウレタン樹脂の該イソシアネート
基に対して、アミノ基と加水分解性シリル基とを有する
シリル化合物(例えばシランカップリング剤がある)の
該アミノ基を反応させて、加水分解性シリル基を樹脂骨
格に導入する等すれば良い。またこの方法に於いては、
逆に、樹脂側はアミノ基として、シリル化合物側をイソ
シアネート基としても良い。また、シリル化合物側はイ
ソシアネート基だが、樹脂側は水酸基として、イソシア
ネート基と水酸基とを反応させてウレタン結合を介し
て、加水分解性シリル基を樹脂骨格に導入する方法もあ
る。また、熱可塑性ウレタン樹脂がアクリル系ウレタン
樹脂の場合には、アクリル系ウレタン樹脂自体の合成時
に、アクリル系モノマー等と共に加水分解性シリル基を
有するアクリレート等のビニル系モノマー(例えば、γ
−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等)を共
重合させて加水分解性シリル基を有するアクリルポリオ
ールとして、これをポリイソシアネートと反応させて、
加水分解性シリル基を分子中に有する熱可塑性アクリル
ウレタン系樹脂とする方法等もある。
【0025】なお、加水分解性シリル基を熱可塑性ウレ
タン樹脂分子自体に持たせる以外に、加水分解性シリル
基を有する化合物を、剥離層に添加しても相応の効果は
得られ、この様な剥離層としても良い。加水分解性シリ
ル基を有する化合物としては、公知のシランカップリン
グ剤がある。シランカップリング剤としては、例えば、
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシド
キシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロ
ピルトリメトキシシランなどがある。
【0026】なお、剥離層中には、必要に応じて適宜、
体質顔料等の充填剤を添加しても良い。体質顔料添加に
より、転写後の転写層上に透明保護層等の表面層を設け
る場合に投錨効果によって表面層と転写層との密着性を
強化したり、剥離層上への装飾層の印刷適性を向上させ
たりできる。体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸
バリウム、シリカ、アルミナ、硫酸カルシウム、炭酸マ
グネシウム等の無機質体質顔料の粉末を使用すれば良
い。
【0027】そして、以上の様な熱可塑性樹脂からなる
剥離層を、乾燥時塗布量で1g/m 2 以下と薄い層にす
る事によって、剥離性を確保しつつ、箔バリ、浮き、及
び粉状転写の防止の点で良好な結果が得られる。塗布量
が1g/m2 を超えると、箔バリ、及び浮きの防止性能
が低下する。一方、塗布量の下限は0.1g/m2 であ
る。塗布量が0.1g/m2 未満であると、安定して連
続膜に剥離層を成膜しにくく、剥離性が低下し、また転
写時に加わる衝撃的な転写圧に耐久して、装飾層を繋ぎ
留めることが出来なくなる為、粉状転写も生じ易くなっ
てくる。なお、剥離層は通常全面に形成する。
【0028】上述の様に、剥離層を特定樹脂の塗布量1
g/m2 以下の薄い層とする事によって、箔バリが改善
するのは、転写層は目地部等の非転写部と天面部等の転
写部との境界にて転写圧(固体粒子衝突圧)による剪断
力によって切れ易くなり、箔切れ性が向上する為と思わ
れる。一方、浮きが改善するのは、剥離層を薄くしてあ
るので、被転写基材の微凹部と転写層間の空気が転写層
を貫通して抜け易くなるためと思われる。そして、粉状
転写が改善するのは、たとえ薄くても熱可塑性樹脂で成
形性の良い剥離層が存在するので、この剥離層によっ
て、転写圧によって凹凸面へ転写シートが追従する時
に、剥離層に接する装飾層が引っ張られて成形される傾
向にあり、しかも、固体粒子の衝突衝撃により亀裂の入
った装飾層が、粉々となって互いに離別するのを剥離層
によって繋ぎ留めることによって防げる傾向にあるから
と思われる。
【0029】なお、残留空気で発生する浮き防止の点に
関して、剥離層の上に装飾層として、柄パターン層と全
ベタ層とからなる絵柄層が印刷形成されている場合、全
ベタ層は通常剥離層よりも塗布量大(厚い)であるが、
着色剤等の顔料の含有率大であるが故に、塗布量大でも
エア抜けし易い傾向にある。一方、柄パターン層は、網
点等による印刷形成によつて、不連続層又は不連続層が
重なりあった層(多色刷りの場合)である為に、エア抜
けし易い。
【0030】なお、剥離層の形成方法は、従来公知の方
法によれば良い。例えば、ロールコート等の塗工法、或
いは、オフセット印刷等の印刷法等の形成方法によれば
良い。
【0031】〔支持体シート〕次に支持体シート1とし
ては、剥離層等の転写層と剥離性が有り、また被転写基
材の凹凸の被転写面への追従性を有するもので有れば、
従来公知のもので良く特に制限は無い。従って、支持体
シートとしては、少なくとも転写時には延伸性の有るも
のが好ましい。延伸性のある支持体シートとしては、例
えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレ
フタレート、エチレン・テレフタレート・イソフタレー
ト共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の
熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン、ポリエ
チレン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共
重合体、エチレン−プロピレン−ブテン3元共重合体、
オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン
系樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂フィ
ルム(シート)を用いる。また、これら樹脂フィルム
は、低延伸又は無延伸のものが延伸性の点で好ましい。
また、支持体シートはこれらの単層又は異種材料からな
る複層構成としても良い。例えば、厚み50〜120μ
mのポリプロピレン系シートは好ましい支持体シートの
一つである。なお、支持体シートの厚みは、通常は20
〜200μm程度である。
【0032】なお、支持体シートには必要に応じ、転写
層側に転写層との剥離性を向上させる為、支持体シート
の構成要素として離型層を設けても良い。この離型層は
支持体シートを剥離時に、支持体シートの一部として転
写層から剥離除去される。離型層としては、例えば、シ
リコーン樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタ
ン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ワックス等の単体又はこ
れらを含む混合物が用いられる。例えばポリエチレンテ
レフタレートのシートにケイ素系樹脂を離型層として積
層した支持体シートである。
【0033】また、本発明の転写シートでは、支持体シ
ートと転写層との剥離性(剥離力)を剥離層のみで最適
化しても良いが、支持体シートの転写層側面の濡れ指数
等で調整するのも好ましい。濡れ性が低いと剥離力が小
さくなり、濡れ性が高いと箔バリは起きにくくなる。こ
の事によって、支持体シート上に剥離層を塗工(或いは
印刷)形成するときの塗工(或いは印刷)適性等を調整
できる。例えば、濡れ指数を35以下とするのが良い。
【0034】〔装飾層〕装飾層3はグラビア印刷、シル
クスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセッ
ト印刷、インキジェットプリント等の従来公知の方法、
材料で絵柄等を印刷した絵柄層が代表的である。絵柄と
しては、基材の表面凹凸に合わせて、木目模様、石目模
様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、
文字、幾何学模様、全面ベタ等を用いる。柄パターンを
有する層が柄パターン層、全ベタ柄を全ベタ層と言うこ
ともある。
【0035】なお、絵柄層用インキは、一般的に、バイ
ンダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、こ
れに適宜加える各種添加剤からなる。バインダーの樹脂
には、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合
体、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹
脂、等の単体又はこれらを含む混合物を用いる。なかで
も、凹凸追従性と密着性を両立できる点では、ウレタン
樹脂は好ましい樹脂の一つである。また、着色剤として
は、チタン白、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、群青等
の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドン、イソイ
ンドリノン、フタロシアニンブルー等の有機顔料、アル
ミニウム箔粉、二酸化チタン被覆雲母の箔粉等の光輝性
顔料等の顔料を用いる。絵柄層はその着色剤に顔料を使
用することで、絵柄層が通常は点状に形成される柄パタ
ーン層に対して全面に形成する全ベタ層であっても、全
ベタ層を顔料高含有の構成として、エアが抜け易くなり
浮き防止の妨げになりにくくすることができる。
【0036】なお、絵柄層用インキに於ける上記ウレタ
ン樹脂としては、基本的には、剥離層のところで述べた
様な各種熱可塑性ウレタン樹脂の他、ポリオールとイソ
シアネートとの2液硬化型等で熱硬化性等の硬化性樹脂
等も使用できる。但し、硬化性樹脂は、凹凸の被転写面
への転写では、転写シートが被転写基材に圧接する前で
既に硬化が完了する等、熱可塑性が失われた状態である
と、特に全面ベタ柄等では絵柄層の凹凸追従性が低下す
るので好ましく無い。従って、絵柄層に於いてウレタン
樹脂を硬化性樹脂として使用する場合には、硬化が進行
していても、転写シートを被転写基材に圧接時点では、
所望の凹凸追従性が確保できる程度の半硬化、或いは未
硬化状態で使用して、圧接後に完全硬化させるのが好ま
しい。
【0037】なお、装飾層は、上記絵柄層以外にも、機
能性層として、抗菌層、防黴層、導電層等の各種機能性
を有する層でも良い。例えば、抗菌層には銀イオン担持
ゼオライト粉末等の公知の抗菌剤を、防黴層としては、
10,10−オキシビスフェノキシアルシン等の公知の
防黴剤を、導電層には黒鉛や銀等の粉末又は箔粉からな
る公知の導電剤を、バインダー樹脂中に含有させたりす
れば良い。また、導電層の一種として金属薄膜層等も使
用できる。これら装飾層は、意匠表現用の装飾層と兼用
させる場合もある。なお、金属薄膜層は、アルミニウ
ム、クロム、金、銀等の金属を公知の蒸着法等で部分的
或いは全面に形成する。なお、全面の金属薄膜層でも転
写層成形時に部分的に微小な亀裂を生じさせることでエ
ア抜きはできる。
【0038】被転写基材:被転写基材Bとしては特に限
定は無い。例えば、材質としては、無機非金属系、金属
系、木質系、プラスチック系等の基材を使用できる。具
体的には、ケイ酸カルシウム、中空押し出しセメント、
スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、G
RC(硝子繊維強化コンクリート)、パルプセメント、
石綿セメント、木片セメント、石膏、石膏スラグ等の非
陶磁器窯業系材料、杉、檜、樫、ラワン、チーク等の各
種樹種からなる木材単板や木材合板、パーティクルボー
ド、集成材、木質中密度繊維板(MDF)等の木質材
料、また、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料、土器、
陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス等の
無機質材料、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール
樹脂等の樹脂材料等である。
【0039】また、被転写基材の形状は、その被転写面
に転写層を転写できれば、平板や屈曲した板、柱状物、
成形品等の立体物等と任意である。例えば、被転写基材
は全体として(包絡面形状が)平板状の板材の他、断面
が円弧状に凸又は凹に1方向に湾曲した二次元的凹凸を
有する基材等でも良い。被転写面は、平面以外にも、凹
凸表面でも良い。特に固体粒子衝突圧を転写圧に用いる
転写方法であるので、なおさらである。表面凹凸形状は
任意だが、例えば、転写物として化粧材を得る場合等で
は、複数のタイルや煉瓦を平面に配置した場合の目地、
花崗岩の劈開面、砂目等の石材表面の凹凸、木材羽目
板、浮造木目等の木材板表面凹凸、簓の無い下見張板の
表面凹凸、リシン調、スタッコ調等の吹付塗装面の凹凸
等である。なお、これら表面凹凸形状のうち、特に本発
明の転写方法が、十分その本来の効果を発揮し得るもの
は、吹付塗装面の凹凸、花崗岩の劈開面の如く、表面に
多数の凹(陥)部を有するもの、或いは、目地を有する
もの(通常その目地部は非転写領域とし、目地部以外
(天面部)を転写領域とすることが多い)である。
【0040】〔下塗り層〕なお、被転写基材の被転写面
には、必要に応じて適宜、下塗り層(べースコート層)
を設けておいても良い。下塗り層は、被転写基材(セメ
ント等のアルカリ性基材)からのアルカリ成分溶出を防
止(所謂シーラー)したり、或いは、被転写基材(無機
系基材等)の表面の凹凸を埋めて表面を平滑にし、転写
性等を向上させて転写層の転写に適した表面性を付与し
たりする(所謂目止め)、等の目的で設ける。また、下
塗り層を着色不透明とする事により隠蔽性を持たせて、
被転写基材自体の色や模様が絵柄層等の装飾層の模様に
悪影響するのを防ぐ(所謂下地塗装)目的でも使用でき
る。なお、これらの場合、下塗り層の機能は、接着剤層
に兼用させて接着剤層のみで足らす事もできる。下塗り
層は用途により1層又は多層で用いる。下塗り層は、被
転写基材の材質や表面状態及びその目的に応じて、樹脂
等からなる従来公知の塗液を塗工し形成すれば良い。例
えば、該樹脂としては、2液硬化型ウレタン樹脂、1液
湿気硬化型ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹
脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等が用いられる。
特に、基材が、セメント等のアルカリ性基材の場合は、
耐アルカリ性に優れた樹脂が好ましい。耐アルカリ性に
優れた樹脂としては、例えば、アクリルウレタン樹脂、
アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が好ましい。なお、下塗
り層の形成方法は、スプレーコート、フローコート等の
塗工法、スクリーン印刷等の印刷法等の従来公知の形成
方法の中から、被転写基材の表面凹凸形状等により適宜
選択する。
【0041】接着剤:本発明では、残留空気による転写
層の浮き、及び箔バリ防止が課題である点で、転写層の
エア抜き性能を維持する為には、接着剤を使用する場合
には、接着剤は転写シート側にでは無く、被転写基材側
に施すのが効果的である。それは、絵柄層等と異なり、
形成される接着剤層は樹脂分が多い上、厚さも絵柄層、
剥離層よりも厚くなり、エアが接着剤層中を貫通し難
く、また転写領域と非転写領域との境界Eでの破断も難
しいからである。また、被転写基材側にのみ接着剤層を
形成しておけば、被転写基材に図5の様に、転写領域6
と非転写領域7とを意識的に設ける場合に、その転写領
域のみに接着剤層を選択的に形成することで、非転写領
域にまで転写層が密着してしまう事を防げる利点もあ
る。接着剤層の選択形成は、非転写領域が例えば溝状凹
部の場合では、ローラ等を利用した公知の塗工法によっ
て、該凹部を除いた凸部にのみ接着剤層を容易に形成で
きる。なお、もちろんの事だが、転写層のうち被転写基
材に接する層、例えば絵柄層等の装飾層、或いは剥離層
等が、被転写基材と接着性を有する場合には、接着剤の
使用は省略できる。
【0042】接着剤を使用する場合にその接着剤として
は、特に制限は無く用途に応じて、公知の接着剤の中か
ら適宜選択すれば良い。例えば、酢酸ビニル樹脂、アク
リル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタ
ン樹脂等の熱可塑性樹脂による従来公知の感熱溶融型接
着剤、2液硬化型ウレタン樹脂、エポキシ樹脂やウレタ
ン系湿気硬化型樹脂等の硬化型接着剤、或いはゴム系接
着剤等である。また、接着剤は有機溶剤系、水系、ホッ
トメルト系等、いずれでも良い。被転写基材上に接着剤
を施して接着剤層を被転写基材上に形成するには、スプ
レーコート、フローコート等の塗工法、スクリーン印刷
等の印刷法等の従来公知の形成方法の中から、被転写基
材の表面凹凸形状等によって適宜選択すれば良い。
【0043】固体粒子衝突圧を利用する転写方法:固体
粒子衝突圧を転写圧に利用する転写方法は、特許第28
44524号公報、特開平10−193893号公報等
に開示された様に、転写圧の押圧手段自体が新規な新規
な転写方法である。この転写方法は、ローラ転写方法等
の従来の他の転写方法では不可能な様な三次元凹凸形状
にでも転写できる極めて優れた方法である。
【0044】固体粒子衝突圧利用のこの転写方法は、図
1(B)の概念図で示す如く、被転写基材Bの被転写面
側に、支持体シート1と転写層4とからなる転写シート
Sの転写層側を対向させ、該転写シートの支持体シート
1側に多数の固体粒子Pを衝突させ、その衝突圧を転写
圧として利用して、被転写基材の被転写面に転写シート
を圧接し、その後、転写層が被転写基材に接着後、支持
体シートを剥離して転写を完了させる、という方法であ
る。なお、固体粒子Pに付記した矢印は、固体粒子の速
度ベクトルを表す。
【0045】〔固体粒子衝突圧〕固体粒子衝突圧は、図
1(B)の概念図で説明した様に、多数の固体粒子を転
写シートに衝突させる事で得られる。固体粒子は噴出器
等から噴出させて転写シートに衝突させる。
【0046】固体粒子Pとしては、セラミックビーズ、
ガラスビーズ等の非金属無機粒子、亜鉛、鉄等の金属粒
子、或いはナイロンビーズや架橋ゴムビーズ等の樹脂ビ
ーズ等の有機粒子等を使用する。粒子形状は球形状が好
ましいが、その他の形状でも用い得る。粒径は通常10
〜1000μm程度である。固体粒子は噴出器から転写
シートに向かって噴出させ、転写シートに衝突したその
衝突圧が転写圧となる。噴出器には、代表的には羽根車
や吹出ノズルを用いる。羽根車はその回転により固体粒
子を加速し、吹出ノズルは高速の流体流で固体粒子を加
速する。羽根車や吹出ノズルには、サンドブラスト或い
はショットブラスト、ショットピーニング等とブラスト
分野にて使用されているものを流用できる。例えば羽根
車には遠心式ブラスト装置、吹出ノズルには加圧式や吸
引式ブラスト装置、ウェットブラスト装置等である。遠
心式ブラスト装置は羽根車の回転力で固体粒子を加速し
噴出する。加圧式ブラスト装置は、圧縮空気に混合して
おいて固体粒子を、空気と共に噴出する。吸引式ブラス
ト装置は、圧縮空気の高速流で生ずる負圧部に固体粒子
を吸い込み、空気と共に噴出する。ウェットブラスト装
置は、固体粒子を液体と混合して噴出する。
【0047】図2及び図3は、羽根車による噴出器の一
例を示す概念図である。羽根車812は、複数の羽根8
13がその両側を2枚の側面板814で固定され、且つ
回転中心部は羽根813が無い中空部815となってい
る。更に、この中空部815内に方向制御器816を内
在する(図3参照)。方向制御器816は、外周の一部
が円周方向に開口した開口部817を有し中空筒状で羽
根車812の回転軸芯と同一回転軸芯で、羽根車とは独
立して回動自在となっている。羽根車使用時は、方向制
御器の開口部を適宜の方向に向くように固定して、固体
粒子の噴出方向を調整する。更に、この方向制御器の内
部に、内部中空で羽根車812の回転軸芯と同一回転軸
芯のもう一つの羽根車が散布器818として内在する
(図3参照)。散布器818は外側の羽根車812と共
に回転する。そして、前記側面板814の回転中心には
回転軸819が固定され、回転軸819は、軸受820
で回転自在に軸支され電動機等の回転動力源(図示略)
によって駆動回転され、羽根車812が回転する。また
回転軸819は、羽根813を間に有する2枚の側面板
814間には貫通しておらず、軸無しの空間を形成して
いる。そして、散布器818の内部に固体粒子Pがホッ
パ等から輸送管を通って供給される。通常、固体粒子
は、羽根車の上方(直上又は斜上方)から供給する。散
布器内に供給された固体粒子は散布器の羽根車で外側に
飛び散る。飛び散った固体粒子は、方向制御器816の
開口部817によって許された方向にのみ放出され、外
側の羽根車812の羽根813と羽根813との間に供
給される。そして、羽根813に衝突し、羽根車812
の回転力で加速され、羽根車から噴出する。羽根車81
2の寸法は、通常直径5〜60cm程度、羽根の幅は5
〜20cm程度、羽根の長さは、ほぼ羽根車の直径程
度、羽根車の回転速度は500〜5000〔rpm〕程
度である。固体粒子の噴出速度は10〜50〔m/s〕
程度、投射密度(基材単位面積当たりに衝突させる固体
粒子の総質量)は10〜150〔kg/m2 〕程度であ
る。
【0048】次に、図4は吹出ノズルを用いた噴出器の
一例を示す概念図である。同図の噴出器840は固体粒
子加速流体として空気等の気体を用い、固体粒子噴出時
に該気体と固体粒子を混合して噴出する形態の噴出器の
一例である。噴出器840は、固体粒子Pと流体Fを混
合する誘導室841と、誘導室内に流体を噴出する内部
ノズル842と、ノズル開口部843から固体粒子及び
流体を噴出する吹出ノズル部844からなる。圧縮機等
からの加圧状態の流体Fを、内部ノズル842から噴出
し誘導室841を経てノズル844のノズル開口部84
3から噴出する際に、噴出器内の誘導室841にて、高
速で流れる流体流の作用で負圧を作り、この負圧により
固体粒子を流体流に導き混合し、流体流で固体粒子を加
速、搬送して、ノズル844のノズル開口部843から
流体流と共に噴出するものである。なお、固体粒子加速
流体に液体を用いる吹出ノズル等もある。流体圧は吹付
圧力で通常0.01〜1MPa程度である。流体流の流
速は、液流では通常1〜20m/秒程度、気流では通常
5〜80m/秒程度である。
【0049】噴出器は、1個のみでは加圧領域を所望の
形状、大きさに出来ない場合は、複数用いる。また、実
際に固体粒子を用いて転写する際は、固体粒子は周囲の
雰囲気中に飛散させずに且つ循環再利用するのが好まし
く、転写する空間を周囲空間と隔離するチャンバ内で、
固体粒子を転写シートに衝突させると良い。支持体シー
トの剥離は、チャンバ外でも良い。
【0050】また、好ましくは、予め熱可塑性樹脂の支
持体シートからなる転写シートは、赤外線輻射ヒータ等
で加熱軟化させて延伸性を付与し、被転写基材が熱容量
の大きい場合は予め予熱し、初期接着を熱融着させる場
合の層(接着剤層や絵柄層等)は、加熱活性化させた状
態で固体粒子を転写シートに衝突させる様にする。な
お、熱融着する層を活性化して熱融着させる場合に加熱
するタイミングは、衝突圧印加前、衝突圧印加中、或い
は衝突圧印加前及び印加中などのいずれでも良い。一
方、転写シートが被転写基材の凹凸表面の表面形状に追
従し、成形され、転写層が被転写基材に十分に接触すれ
ば、冷風等の冷却手段で熱融着した層の冷却を促進して
も良い。冷風は、例えば、転写シート側や被転写基材側
から吹き付ける。
【0051】後加工:なお、本発明の転写方法では、転
写層の転写後に、必要に応じて適宜、転写後の転写層表
面に耐久性、意匠感等を付与する為に更に透明保護層等
を設けて、転写物最表面の表面層とするなどしても良
い。ちなみに、図8の断面図で例示する化粧材等とする
転写物Dは、被転写基材B上に接着剤層Aを介して、転
写層4として被転写基材側から装飾層3、剥離層2が転
写され、されらこの転写層4の上に透明保護層等の表面
層13が形成された構成の例である。
【0052】〔表面層〕表面層13には、用途、要求物
性に応じたものを形成すれば良い。例えば、表面層の樹
脂には、ポリフッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等
のフッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹
脂、ケイ素樹脂、ウレタン樹脂の1種又は2種以上等を
使用すれば良い。
【0053】なお、表面層の樹脂としては、剥離層中
に、その樹脂自体或いは添加物によって、加水分解性シ
リル基を有する様にした場合には、ケイ素樹脂を使用す
ると、表面層の密着性が良くなる。この様なケイ素樹脂
としては、例えば、アルコキシシランの加水分解縮合
物、シリル基含有ビニル系樹脂等を使用できる。表面層
に、この様なケイ素樹脂を使用することで、耐候性、耐
擦傷性、耐汚染性等を優れたものにできる上、転写層と
の密着性も良好にできる。転写層中の加水分解性シリル
基が表面層との分子的結合の橋渡しの役目を担い、その
結果、表面層と転写層との密着が良くなるからである。
【0054】なお、前記加水分解縮合物の基になるアル
コキシシランは、一般式:Rn Si(OR′)4-n で表
される化合物であり、nは0〜2の整数である。このう
ち、nが0又は1であるアルコキシシランを主成分とす
るものが、耐擦傷性、耐候性に優れ好ましい。また、R
は炭素数1〜8、好ましくは1〜3の有機基であり、
R′は炭素数1〜5、好ましくは1〜4の有機基であ
る。そして、これらアルコキシシランの加水分解縮合物
は、例えば、アルコール等の溶液中で必要量の水及び酸
触媒を用いてアルコキシシランを反応させれば得られ
る。
【0055】また、前記シリル基含有ビニル系樹脂は、
一般式:Xn −Si(R1 3-n −CHR2 −で表され
るシリル基を少なくとも1つ有するビニル系樹脂であ
る。Xは、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、ケト
キシメート、アミノ、酸アミド、アミドオキシ、メルカ
プト、アルケニルオキシ、フェノキシ等の加水分解性基
である。また、R1 、及びR2 はそれぞれ、水素、炭素
数1〜10の、アルキル基、アリール基、アラルキル基
等の1価の炭化水素基である。nは1〜3の整数であ
る。また、このシリル基は、加水分解性基Xを1以上有
するので、加水分解性シリル基でもある。なお、ビニル
系樹脂は、ビニル系モノマーの重合物であり、例えば、
アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等である。
【0056】なお、表面層は、上述の様な樹脂を含む塗
液を塗工すれば形成できる。塗工はスプレー塗装、カー
テンコート、軟質ゴムローラやスポンジローラを使用し
たロールコート等の公知の塗工法で行えば良い。表面層
の厚さは通常1〜100μm程度である。なお、前記塗
液中には、用途、要求物性に応じて、ベンゾトリアゾー
ル、超微粒子酸化セリウム等の紫外線吸収剤、ヒンダー
ドアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、シリカ、球状
α−アルミナ、鱗片状α−アルミナ等の粒子からなる減
摩剤、着色顔料、体質顔料、滑剤、防黴剤、抗菌剤等を
添加しても良い。
【0057】転写物の用途 本発明の転写方法によって得られる転写物の用途は、特
に制限は無い。例えば、転写物は化粧材として、サイデ
ィング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の外装、壁
面、天井、床等の建築物の内装、窓枠、扉、手摺、敷
居、鴨居等の建具類の表面化粧、箪笥等の家具やテレビ
受像機等の弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、
自動車、電車、航空機、船舶等の乗物内装材等の各種分
野で用いられ得る。なお、化粧材等の転写物の形状は、
平板以外にも、曲面板、棒状体、立体物等でも良い。平
板や曲面板では化粧材は化粧板として用いられる。なか
でも、本発明では、箔バリ、浮き、粉状転写が防止でき
るので、被転写面が凹凸面の用途は好適である。
【0058】
【実施例】次に実施例及び比較例により本発明を更に説
明する。
【0059】〔実施例1〕図7(A)の斜視図で示す如
き、被転写面が凹凸面の被転写基材Bを用いて化粧材を
次の様にして製作した。被転写基材Bは、(底面の)幅
8mm、深さ3mmの縦目地11と、(底面の)幅6m
m、深さ3mmの横目地12との溝状の目地部を有し、
これら縦目地11と横目地12とで区画された天面部
(凸部)上に高さが0.1〜2mmに分布する山状の突
起を多数有する凹凸面を有する、厚さ18mmの押出セ
メント板である。なお、天面部は煉瓦積み模様で配置さ
れている。また、縦目地11、及び横目地12の側面は
図7(B)の断面図で示す如く、法線に対して約30°
で底面に行くにしたがって幅が狭くなる斜面となってい
る。転写領域を天面部として、非転写領域を縦目地及び
横目地とした。
【0060】そして、この被転写基材の被転写面に予
め、下塗り層として、目止めの為のシーラー層(アクリ
ル系水性エマルションからなるシーラー剤をスプレー塗
装)と、下地色調整の為のべースコート層(チタン白で
着色されたアクリル系水性エマルション塗料をスプレー
塗装)とを形成した。
【0061】そして転写層を接着させる為に、上記被転
写基材上に、アクリルウレタン系ポリオールの主剤と
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート系硬化剤とか
なる2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を、スプレー塗装
で塗布量が固形分5g/m2 となる様に塗布した後、1
50℃の熱風乾燥炉(ノズルジェット乾燥機)で60秒
間加熱して揮発成分を乾燥して、(イソシアネートは未
硬化の)(被転写基材に施す)接着剤層を被転写基材上
に形成した。
【0062】一方、転写シートとしては、図1(A)の
断面図で示す如き転写シートSとして、厚さ80μmの
表面未処理エチレン−プロピレン共重合体系フィルム
(エチレン比率3質量%、濡れ指数32以下)からなる
支持体シート1の片面に、剥離層2として、熱可塑性ウ
レタン樹脂からなる剥離層用塗液をグラビア塗工して、
塗布量(固形分。以下同様)が0.9g/m2 となる剥
離層を全面に形成した。グラビア塗工に用いた版は機械
彫刻版で、線数は90線/cmのものを使用した。
【0063】次に、上記剥離層2の上に更に装飾層3と
なる絵柄層として、バインダー樹脂が熱可塑性ウレタン
樹脂で、着色剤にキナクリドン、イソインドノリン、フ
タロシアニンブルー、及びカーボンブラックの無機顔料
からなる着色剤を用い、希釈溶剤にメチルエチルケトン
とトルエンとイソプロピルアルコールの5:3:2質量
比の混合溶剤を用いた着色インキを用いてグラビア印刷
の多色刷で、大理石調の石目柄の柄パターン層と、バイ
ンダー樹脂が熱可塑性ウレタン樹脂で着色剤にチタン白
を用いた着色インキで白ベタの全ベタ層とを形成して、
図1(A)の如き、剥離層2と装飾層3とからなる転写
層4を支持体シート1上に有する転写シートSを用意し
た。
【0064】そして、接着剤層が形成された前記被転写
基材を、熱風乾燥炉で被転写基材(接着剤層)を100
℃に予熱した後、上記転写シートを転写層側が被転写基
材側を向くようにして置き、基材速度15m/分で転写
シート及び被転写基材を搬送しつつ、転写シートの支持
体シート側に、多数の固体粒子を衝突させて、転写を行
った。なお、被転写基材を搬送して転写する方向は、図
7の矢印「転写方向」で示す向きで、縦目地11に平行
な方向とした。また、固体粒子としては、50℃に加熱
され、且つ0.4mm〜0.6mmの範囲の粒径分布を
持つ球状形状の亜鉛球を、図2及び図3の如き羽根車で
40m/秒の速度に加速して、転写シートに衝突させ
た。噴出器は2台を被転写基材搬送方向に直列に並べて
用い、投射量は、700kg/分とした。そして、25
℃の冷風で冷却して、転写層が被転写基材に密着後、支
持体シートを剥離した。
【0065】更に、表面層となる透明保護層として、転
写後の転写層上に、アクリル系水性エマルションからな
る上塗り塗料(トップコート剤)を30g/m2 (固形
分基準)スプレー塗布後、150℃の熱風乾燥炉で45
秒間加熱乾燥して固化させて透明な表面層を形成し、被
転写基材に施した接着剤層は完全硬化させて、転写物と
なる化粧材として、外装サイディング用の透明保護層付
きの化粧板を得た。
【0066】〔実施例2〕実施例1に於いて、剥離層形
成に用いた版の線数を80線/cmに変更し、剥離層の
塗布量を1.0g/m2 とした転写シートを用いた他
は、実施例1と同様にし転写して、転写物を作製した。
【0067】〔実施例3〕実施例1に於いて、剥離層用
塗液の希釈溶剤の添加量を増やし、該塗液の固形分を実
施例1の1/9とすることによって、剥離層の塗布量を
0.1g/m2 とした。その他は、実施例1と同条件
で、転写シート及び転写物を作製した。
【0068】〔比較例1〕実施例1に於いて、剥離層形
成に用いた版の線数を70線/cmに変更し、剥離層の
塗布量を1.1g/m2 とした転写シートを用いた他
は、実施例1と同様にし転写して、転写物を作製した。
【0069】〔比較例2〕実施例1に於いて、剥離層形
成に用いた版の線数を48線/cmに変更し、剥離層の
塗布量を1.5g/m2 とした転写シートを用いた他
は、実施例1と同様にし転写して、転写物を作製した。
【0070】〔比較例3〕実施例1に於いて、剥離層を
省略した転写シートを用いた他は、実施例1と同様にし
転写して、転写物を作製した。
【0071】〔性能比較〕表1に、各実施例及び各比較
例の試験条件を、そして表2に、転写加工性として、箔
バリ、粉状転写、及び浮きの転写不良についてその防止
状況を纏めて示す。また、図9の平面図で、転写不良の
発生状況を概念的に示す。なお、箔バリ、粉状転写、及
び浮きは、転写後で表面層形成前の段階で、転写面を目
視で観察して評価した。
【0072】また、表2中、箔バリの評価は、「○」は
箔バリ発生せず良好、「△」は箔バリが転写領域(天面
部)の外周部の一部に発生でやや良好、「×」は転写領
域の外周のほぼ全周に発生し不良を表す。また、粉状転
写の評価は、「○」は粉状転写発生せず良好、「×」は
表面が粉状転写でクラック状となり不良を表す。また、
浮きの評価では、「浮き」の無い部分は転写層が接着剤
で濡れて濡れ色となるのに対して、「浮き」の有る部分
は転写層は濡れ色になら無い為、両部分に色彩の差を生
じることを利用して、目視にて判定した。そして、
「○」は浮き発生せず良好、「△」は浮き若干発生しや
や良好、「×」は浮き多数発生し不良を表す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】表2及び図9(B)で示す如く、剥離層の
塗布量が1.0g/m2 以下且つ0.1g/m2 以上で
ある実施例1、2及び3は、特に問題無く、箔バリは発
生せず箔切れ性は良好で、また残留空気による転写層の
浮きも認められず転写抜けも防げた。また、衝突衝撃に
よる粉状転写も起きなかった。
【0076】一方、剥離層が塗布量で1.1g/m2
び1.5g/m2 と、実施例よりも厚い比較例1及び2
では、縦横の目地部に於いて、箔バリが発生した。比較
例1の箔バリ8は、図9(C)の如く転写領域(天面
部)6の周囲の一部であったが、塗布量がより多い比較
例2では、図9(D)の如く転写領域6のほぼ全周囲と
なり不良であった。また、これら比較例1及び2では、
転写領域内部での山状突起間の微小な凹部内に転写層が
接着せず、微小な浮き9が発生した。またこの浮き9は
塗布量が多い比較例2の方が比較例1よりも多く不良と
なった。但し、粉状転写は比較例1と比較例2ともに生
じず良好であった。
【0077】また、剥離層を省略した比較例3では、箔
バリ、及び浮きは生じずこれらに関しては良好であっ
た。しかし、図9(A)の如く、転写された転写層(絵
柄層)は、転写層が細かく破砕される粉状転写による亀
裂が発生し不良となった。
【0078】
【発明の効果】本発明の転写方法によれば、被転写面
が凹凸面の場合でも、転写層と支持体シートとの十分な
剥離性を確保した上で、箔バリ、浮き、及び粉状転写の
転写不良を起きさずに、化粧材等の転写物が得られる。
特に、箔バリに対しては、被転写基材面が凹凸面で転写
領域と非転写領域とを有する転写の場合に特に効果的で
ある。 また、剥離層の熱可塑性樹脂に特に熱可塑性ウレタン
樹脂を用いれば、これらの転写不良の防止効果がより効
果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転写方法の説明図で、(A)は用い得
る転写シートの断面図、(B)は固体粒子衝突圧利用の
転写方法を概念的に説明する断面図。
【図2】固体粒子噴出の為の、羽根車を用いた噴出器の
一例を概念的に説明する斜視図。
【図3】図2の羽根車内部を説明する概念図。
【図4】吹出ノズルによる噴出器の一例を概念的に説明
する断面図。
【図5】箔バリを概念的に説明する断面図。
【図6】転写浮きを概念的に説明する断面図。
【図7】被転写基材の被転写面形状を説明する斜視図
(A)と断面図(B)。
【図8】本発明で得られる転写物の一例を示す断面図。
【図9】転写不良の発生状況を概念的に示す平面図。
【符号の説明】
1 支持体シート 2 剥離層 3 装飾層 4 転写層 5 交差部 6 転写領域 7 非転写領域 8 箔バリ 9 浮き 11 縦目地 12 横目地 13 表面層 812 羽根車 813 羽根 814 側面板 815 中空部 816 方向制御器 817 開口部 818 散布器 819 回転軸 820 軸受 840 吹出ノズルを用いた噴出器 841 誘導室 842 内部ノズル 843 ノズル開口部 844 ノズル A 接着剤層 B 被転写基材 E 境界 F 流体 G 気泡 P 固体粒子 S 転写シート

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 支持体シート上に転写層が積層された転
    写シートを用い、該転写シートの支持体シート側からの
    固体粒子衝突圧を転写圧に利用して、転写層を被転写基
    材に転写する転写方法において、 転写層として剥離層と装飾層を有し、且つ剥離層を塗布
    量1g/m2 以下の熱可塑性樹脂からなる層とした転写
    シートを用いる転写方法。
  2. 【請求項2】 剥離層の樹脂に熱可塑性ウレタン樹脂を
    用いる、請求項1記載の転写方法。
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