JP4476662B2 - マトリックス材料の製造方法ならびにマトリックス型陰極構体およびその製造方法 - Google Patents

マトリックス材料の製造方法ならびにマトリックス型陰極構体およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、高出力パルスマグネトロン搭載用の陰極に用いるマトリックス材料の製造方法ならびにマトリックス型陰極構体およびその製造方法に関する。
多くのマグネトロン用陰極の中でも、数十キロワットから数百キロワットクラスあるいはそれ以上の比較的高出力が求められるマグネトロン用陰極は、高周波電磁界で加速された電子やイオンの逆衝撃に対して強いことが求められる。このような陰極として、マトリックス型陰極、含浸型陰極、焼結型陰極などが従来から知られている。
マトリックス型陰極は、たとえば図5(a)に示されるように、陰極スリーブ5(陰極構体)の外表面にニッケル、タングステン、モリブデンのいずれかからなる金属粒8(マトリックス材料)を焼結させることにより、多孔質体9(マトリックス)を形成し、その空孔に酸化物陰極材10を充填した構造である。低コストであることや動作温度も酸化物陰極材を用いた陰極の一般的な動作温度である800℃程度であり、とくに高出力パルス動作マグネトロンには好適である。
含浸型陰極は、たとえば図5(b)に示されるように、多孔質タングステン体11にアルミン酸バリウム・カルシウム12を溶融固化して含浸させた構造である。電子やイオンの逆衝撃に対しては最も強いが、陰極構体の多孔質タングステン体11が高価であることやその製造工程も複雑で高コストであること、また、陰極動作温度も1050℃程度と高温度であるなどの問題があり、メガワットクラスの超高出力パルス動作マグネトロンなどの特殊用途に限られている。
焼結型陰極は、図5(c)に示されるように、タングステン粉末やニッケル粉末13に、酸化物陰極材10と鉄、ニッケル、コバルト、ジルコニウムなどの少量の還元材用金属粉末14とを混合したものを陰極スリーブ5の表面にプレス焼成して固着した構造である。構体の材料を選べば安価にもなり得るが、内在する酸化物陰極材のガス放出が悪く、陰極活性化に長時間を要し、また、陰極動作温度も900℃程度と酸化物陰極材を用いた陰極の一般的な動作温度と比較するとやや高いなどの問題がある。従って、他の陰極に比べて際立って優れた特性もないことから、現在に至ってはあまり採用されていない。
以上のことから、通常の高出力マグネトロン用の陰極としては、マトリックス型陰極が最も重要と考えられる。このマトリックス型陰極の特徴としては、つぎの2つの点が挙げられる。
まず第1に、酸化物陰極材を円筒形状の陰極スリーブ表面に塗布あるいは吹き付けた一般的な酸化物陰極と比較すると、マトリックス型陰極構体の中に酸化物陰極材が充填されていることにより、酸化物陰極材とマトリックス材料表面との接触面積が大きくなり、かつ、陰極材の実効的な厚みが薄くなることによって、陰極内部で生じる抵抗分が比較的低いという特徴がある。また、陰極表面の温度分布も均一にできるといった特徴がある。このような特徴により、一般的な酸化物陰極を使用した場合にしばしば問題になる、高電界を印加した際に発生しやすいアーキングや、大電流をとった際に発生しやすいホットスポットの抑制に効果がある。アーキングやホットスポットは、マグネトロン特性に影響を与える。
第2に、含浸型陰極構体の多孔質タングステンと同様に、電子やイオンの逆衝撃に対してマトリックス陰極構体が影をつくり、内在の酸化物陰極材の飛散、蒸発を抑制する特徴がある。この抑制に最も効果のあるマトリックス型陰極構体の気孔率は65〜75%程度で、気孔径は50μm程度と言われている。ここで、この気孔率がたとえば50%程度と65%を著しく下回ると、マグネトロン動作時にマトリックス型陰極構体表面の温度が上がり、マトリックス材料の粒界成長が生じた際、相互に結合し合いマトリックス型陰極構体表面の気孔が消失し、陰極の電子放出特性が低下する。そして、マグネトロンは短寿命になる。逆に、気孔率がたとえば90%程度と75%を著しく上回ると、マトリックス型陰極構体の機械的強度を低下させるばかりではなく、気孔径も著しく大きくなるので、電子やイオンの衝撃に対して影となる効果が損なわれ、内在する酸化物陰極材は、電子やイオンの衝撃を直接受け、飛散、蒸発により消失する。この酸化物陰極材の消失により、電子放出特性が低下して、マグネトロンはやはり短寿命になる。
たとえば円筒形状のマトリックス型陰極構体は、図6にその一例である製造工程のフロー図が示されるような充填焼結法により製造される(たとえば特許文献1参照)。この場合、図7(a)に示されるように、陰極スリーブ5を縦に置く場合と、図7(b)に示されるように、横に置く場合の2通りがあるが、いずれも製造のフローは同じである。すなわち、まず、陰極スリーブ5と凹部16を有する円筒状の焼結治具15とを組み合わせる(S21)。つぎに、陰極スリーブ5と焼結治具15の凹部16とによって形成される空間にマトリックス材料18を全体に振動を与えながら充填する(S22)。ここで、マトリックス材料とは、マトリックス(多孔質体)構体を形成する材料で、たとえば粒径50〜150μm程度の無定形ニッケル粒子である。さらに、これを治具ごと1100℃程度で予備焼結する(S23)。最後に、治具を外し(S24)て、マトリックス材料を充填した注入口周辺の成形処理をし(S25)、さらに1250℃程度で本焼結する(S26)。
このとき、マグネトロン特性にとって重要な最適値を有する気孔率と気孔径を得るためには、マトリックス材料の形状や充填時の振動条件を厳格に調整する必要がある。なお、最適な気孔率と気孔径を得るために、ニッケル粒子に所定量の有機系ポリマー粒子を混合し、この混合粉末をマトリックス材料とする方法もある(たとえば特許文献2参照)。
特開平7−122182号公報(図1) 特許第3020270号公報(図2)
上述のように、充填焼結法で作製したマトリックス型陰極では、マグネトロンに搭載して長時間動作させていると、マトリックス型陰極構体自体の機械的強度が低下し、陰極構体自体が変形したり、あるいはその一部が剥離したりして陰極寸法がずれ、マグネトロン特性に悪影響を与えるという問題がある。これは、陰極構体が長時間に亘って800℃程度の温度で酸化物陰極材(電子放射物質)に曝されることによって、徐々に陰極構体と反応するからである。とくに、この反応はマトリックスを構成しているニッケル粒子間の接合箇所で顕著で、接合強度を劣化させやすい。
さらに、上記のような充填焼結法では、マトリックス材料の形状や充填時の振動数などの充填条件を厳しく管理しないと、前述の最適な気孔率である65〜75%を実現できず、歩留りよく陰極構体を形成することが困難であるという問題がある。とくに、球形あるいは球形に近い無定形ニッケル粒子では、十分な気孔率は得られない。これは、たとえば同一直径の真球を充分に大きな空間に不規則充填させる場合、その充填率は約64%となることが様々な研究(充填問題)から知られている。すなわち、その気孔率は、約36%程度で安定する。
一般的な充填焼結法のマトリックス材料は無定形粒子であるので、上記の例ほど気孔率が低下することはないが、充填時の気孔率がしばしば45〜50%程度になる。この値は、一般的に充填焼結法で用いられている無定形粒による不規則充填の安定値と推測される。つまり、電子衝撃の影になり得る最適値であるマトリックス型陰極構体の気孔率65〜75%を得るには、準安定点を用いることになる。
また、上記問題を改善するため、ニッケル粒子と所定の有機ポリマー粒子との混合粉末をマトリックス材料として、最適気孔率65〜75%を得ようとする方法もあるが、ニッケル粒と有機ポリマー粒子の比重はしばしば著しく異なるため、両者を均質に充填するには、特別な工夫を要し安価には得られないという問題がある。さらに、マトリックス型陰極構体内の気孔率のバラツキも大きいという問題もある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、マトリックス型陰極構体の機械的強度の低下を抑制し、かつ、所定の気孔率を安定的に形成するためのマトリックス材料の製造方法ならびにマトリックス型陰極構体およびその製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する為に、本願請求項1に係る発明は、(a)球形または無定形金属粒からなる1次粒子と、該1次粒子より粒径(無定形の場合には平均的な差渡し。以下、同様。)の小さい前記1次粒子と同一の金属粒とをバインダと共に混合し、(b)前記混合した混合物を乾燥、固化し、(c)前記固化した混合物を粉砕して、2個以上の前記1次粒子と前記1次粒子より粒径の小さい金属粒が接合した粉体を形成し、(d)少なくとも前記1次粒子の粒径より大きい前記粉体をふるい分けることにより、前記1次粒子間の接合部を前記1次粒子より粒径の小さい金属粒が覆う2次粒子を形成することを特徴とする。
本願請求項2に係る発明は、球形または無定形金属粒からなる1次粒子と、該1次粒子より粒径の小さい前記1次粒子と同一の金属粒とをバインダと共に混合し、前記混合した混合物を乾燥、固化し、前記固化した混合物を粉砕して、2個以上の前記1次粒子と前記1次粒子より粒径の小さい金属粒が接合した粉体を形成し、少なくとも前記1次粒子の粒径より大きい前記粉体をふるい分けることにより、前記1次粒子間の接合部を前記1次粒子より粒径の小さい金属粒が覆う2次粒子を形成し、前記2次粒子を陰極基体表面に焼結して固着することを特徴とする。
本願の請求項3に係る発明は、ニッケル、タングステン、モリブデンまたはこれらを主成分とする金属のいずれかからなる前記1次粒子および1次粒子より粒径の小さい前記1次粒子と同一の金属粒を用いて前記2次粒子を形成し、前記2次粒子を陰極基体表面に焼結して固着した後、前記金属の酸化処理を行い、引き続き還元処理を行うことを特徴とする。
本願の請求項4に係る発明は、陰極基体の表面にマトリックスが形成されたマトリックス型陰極構体において、前記マトリックスは、球体または無定形金属粒からなる1次粒子が隣接する1次粒子と接合し、少なくとも前記1次粒子間の接合部に前記1次粒子より粒径の小さい前記1次粒子と同一の金属粒が接合していることを特徴とする。
本発明によれば、球形または無定形状の1次粒子同士の接合部を、1次粒子より粒径の小さい金属粒で覆った2次粒子をマトリックス材料としているので、1次粒子間の接合部に酸化物陰極材が直接接触しなくなる。
その結果、1次粒子間の接合部の大部分が酸化物陰極から保護され、高温で動作させたとしても陰極の機械的強度の劣化を防止することができる。さらに、酸化、還元処理を施
すことにより、1次粒子間の接合が強くなり、機械的強度を向上できる。また、この結合部を粒径の小さい金属粒が覆っているので、粒径の小さい金属粒と1次粒子とが一体化して、さらに機械的強度の向上を図ることができる。さらに、一定の気孔率の空孔に電子放射物質が充填されているため、長時間に亘って非常に安定した電子放射を得ることができ、非常に長寿命で高特性の陰極が得られ、高出力用のマグネトロンの長寿命化に大いに寄与する。同時に、クラスター状の2次粒子をマトリックス材料としているので、1次粒子のみをマトリックス材料として充填したときよりも充填時の粒子の移動度の自由度が小さくなり、振動の条件を厳密に管理しなくても安定に気孔率を上げることができる。
つぎに、図面を参照しながら本発明のマトリックス材料およびマトリックス型陰極構体の製造方法、ならびにマトリックス型陰極について説明をする。本発明によるマトリックス材料および陰極構体の製造方法は、図1にその一実施形態の製造工程フロー図が示されるようなフローで製造される。なお、図2に2次粒子1の断面構造を模式的に示した図が、図3にマトリックス型陰極構体の断面説明図がそれぞれ示されている。
まず、球形または無定形金属粒からなる1次粒子2と、その1次粒子2より粒径の小さい金属粒3とをバインダと共に混合する(S1)。この1次粒子2および粒径の小さい金属粒3としては、陰極の動作時の温度(800〜1000℃程度)に耐えられると共に、酸化物陰極材を還元してエミッタ材を生成し得る材料、たとえばニッケル、タングステン、モリブデンの球体または無定形のものを用いることができる。この1次粒子2の粒径(粒子の大きさ;完全な球体ではなく、無定形の場合には平均的な差渡し)は、たとえば38〜150μm程度のものが用いられる。38μm未満では、気孔径が小さくなり過ぎて、電子やイオンの衝撃を受けたときに気孔が消失しやすくなり、150μmを超えると気孔が大きくなり過ぎて、電子やイオンの衝撃の影としての効果が小さくなるからである。この1次粒子2の粒径は、陰極構体にした際の空孔の割合、すなわち気孔率に影響するので、所望の気孔率に応じた粒径が選定される。
粒径の小さい金属粒3は、1次粒子同士の接合部の接合を補強すると共に、接合部の間隙に酸化物陰極材が充填されて酸化物陰極材との反応により接合強度を低下させないようにするためのもので、金属材料としては1次粒子と同様の材料を用いることができ、たとえば0.5〜5μm程度の微粉末が凝集して構成された、粒径が38〜45μm程度の凝
集体である。粒径の小さい金属粒3は、金属塩を熱分解して形成される。0.5〜5μm
程度の微粉末としたのは、焼結性が良く1次粒子同士の接合をしっかりと補強することができ、かつ、酸化物陰極材のサイズ(約10μm長の扇状または針状)よりも小さい空隙を形成するので、1次粒子間の接合箇所と電子放射物質である酸化物陰極材との接触を防ぐことができるからである。
この粒径の小さい金属粒3を5〜25wt%(1次粒子との混合体に対する割合)の割合で、1次粒子2と混合して混合粉体とし、この混合粉体にバインダー溶液を適量添加して混合する。混合割合を5〜25wt%としたのは、5wt%未満では接合箇所を覆うには量が少なすぎ、25wt%を超えると量が多すぎて塊ができ、希望の2次粒子構造が得られないからである。この粒径の小さい金属粒の粒径、1次粒子の粒径、混合割合などは、所望の気孔率により適宜選定される。たとえば気孔率が65〜75%の陰極構体を製造する具体例としては、たとえば粒径が75μm程度の無定形ニッケル粒に、0.5〜5μ
m程度の微粉末で構成された粒径が38〜45μm程度の無定形のニッケル微粉末を10wt%加えて、混合粉体を準備する。そしてこの混合粉体に、たとえばポリビニルブチラール(PVB)をエタノールに溶かしたバインダー溶液をPVBが3wt%となるように添加して混合する。
つぎに、この混合した混合物を乾燥し、固化する(S2)。具体的には、たとえば窒素雰囲気で、50℃のオーブンで約5時間の熱処理を行うことにより溶剤が蒸発して固形物ができる。
つぎに、前工程で乾燥・固化したものを粉砕することにより、2個以上の1次粒子2が接合し、その周囲全体に粒径の小さい金属粒3が付着した粉体を作製する(S3)。この粉砕は、たとえば回転羽のついたミキサーやミルを用いて行うことができる。
さらに、粉砕された粉体を所望の大きさのふるいにより所定の大きさのみの粉体にすることにより2次粒子を形成し、マトリックス材料とする(S4)。このふるい分けにより、1次粒子2表面に付着した粒径の小さい金属粒3は、ふるいのメッシュに接触することで除去され、1次粒子2同士の接合部に粒径の小さい金属粒3が多く残ることになる。2次粒子1の大きさは、たとえば75〜212μm程度の大きさになるように、この大きさに形成されたメッシュを通すことにより選別される。2次粒子の粒径を75〜212μmとすると、所定の気孔率である65〜75%を安定して作製することができる。一方、75μm未満では、気孔径が小さくなりすぎて、電子やイオンの衝撃を受けたときの気孔が消失しやすくなり、212μmを超えると気孔が大きくなり過ぎて、電子やイオンの衝撃の影としての効果が小さくなるからである。この2次粒子1は、たとえば図2に一例の断面説明図が示されるように、2〜5個の1次粒子2が相互に結着し、かつ、この1次粒子2の接合部に粒径の小さい金属粒3が付着し、1次粒子2の外周には粒径の小さい金属粒3は殆ど付着しないクラスター構造になる。この2次粒子1をマトリックス材料として陰極構体を形成することができる。
つぎに、本発明のマトリックス型陰極構体を製造する方法について説明をする。まず、前述の方法により得られたマトリックス材料を、たとえば図3に示されるように、陰極スリーブ5のような陰極基体の表面に焼結して固着することにより、陰極基体の表面にマトリックス(2次粒子の多孔質焼結体)6を形成する。具体的には、たとえば25kWパルスマグネトロン用で、陰極直径はφ3.31mmのニッケル製マトリックス型陰極構体を
作製するには、従来の製造方法と同様に、図7(a)に示されるように、外直径がφ2.
74mmの陰極スリーブ5と内直径φ3.4mmの凹部16を有する筒状焼結治具15を
組み合せる(S5)。そして、陰極スリーブ5と焼結治具15との間隙部に前述の2次粒子1を充填する(S6)。この2次粒子1の充填は、従来と同様に振動をさせながらしっかりと充填する。その後、この治具ごと水素雰囲気中で、たとえば1100℃、30分程度の予備焼結を行う(S7)。さらに、治具を外して(S8)マトリックス注入口(マトリックス部)の成形を行い(S9)、その後に、水素雰囲気中で1200℃程度、20分程度の本焼結を行う(S10)。その結果、陰極スリーブ5の周囲に所定の寸法でマトリックスを形成することができる。なお、焼成治具16の内直径をφ3.4mmとしたのは
、本例の場合、焼結収縮率が約3%強だからである。
その後に、従来のマトリックス型陰極を製造する方法と同様に、マトリックスの空孔内に電子放射物質(酸化物陰極材)を充填する。具体的には、前述の陰極スリーブ5の表面に2次粒子1が焼結され、マトリックス6が形成された陰極構体7を900℃程度、120分程度の真空加熱処理してガス出しをした後に、たとえば炭酸バリウムと炭酸ストロンチウムと炭酸カルシウムを所定の割合で混合したものを酢酸ブチル、あるいはメタノールと混合してマトリックス表面に吹き付け、マトリックス内に染み込ませ、陰極構体のマトリックス内に電子放射物質を充填する。これらの炭酸塩は、真空管にして温度を上昇させることにより、分解して酸化物となり、さらにマトリックス材料により還元されて、エミッションに寄与する。
本発明のように、金属粒を直接陰極スリーブに焼結しないで、金属粒を2次粒子化して
陰極構体を作製することにより、マトリックスを形成する際の粉体の移動の自由度が下がり、粉末充填の際の振動などの条件が厳格でなくても、65〜75%の気孔率を安定に実現することができる。さらに、粒径の大きい1次粒子の接合部に粒径の小さい金属粒が付着して接合しているため、1次粒子の接合部が補強され、また、1次粒子同士の接合部に酸化物陰極材が直接接触するのを避けることができるため、接合箇所が保護され、陰極の高温使用に対しても強度劣化を防止することができる。前述の具体例で陰極構体を製造した結果、気孔率が71%、陰極の直径がφ3.29mmの陰極構体が得られた。
前述の例では、陰極スリーブ5の表面にマトリックスを形成した後、直接電子放射物質をマトリックスの空孔内に充填したが、マトリックスを形成した後に、酸化処理をしてさらに還元処理をすることが、マトリックス材料であるニッケル粒と陰極スリーブとの間の接合が強化されるため、陰極構体の強度向上という点から好ましい。すなわち、とくにニッケルを主成分とするマトリックス型陰極構体では、その陰極構体に600〜1200℃の酸化処理に続けて、800〜1350℃の還元処理をする一連の酸化還元工程を行うと、マトリックス型陰極構体が一旦酸化ニッケルと本来のニッケルとの混合体となり、両者が固相−固相反応をし合うので、界面が再構築される。ここで、酸化雰囲気600℃未満では、実用的な時間で酸化が進まず、逆に1200℃を超えると短時間で酸化が進んでしまい、酸化膜として片状に陰極構体から剥離してしまう。また、還元雰囲気800℃未満では、酸化ニッケルの還元が難しくなる。また、水素中1350℃を超えるとニッケルの融点に近づき、形状変形が生じる。
具体的には、たとえば1次粒子が75μmの粒径の無定形ニッケル粒で、1次粒子の接合箇所に粒径が0.5〜5μmの微粉末が凝集した粒径38〜45μmのニッケル粒で被
覆して形成した2次粒子を用いて、図3に示されるように陰極スリーブ5の表面に2次粒子を焼結させ、マトリックス6を形成した状態で、空気中の雰囲気で1000℃程度、15分程度の酸化処理を行い、引き続き水素雰囲気中で1250℃程度、20分程度の還元処理を行う。この条件で、酸化還元処理を行った場合と、還元処理のみしかしなかった場合とで寸法変化率を調べた。その結果が図4に示されるように、酸化還元処理をすると、還元処理のみしかしなかった場合と比較して寸法変化率が大きくなっている。これは、本実施例のように、酸化、還元処理を行った方が、焼成反応が進んでいることを示している。焼成反応が進めば、接合部の密着性が向上し、接合強度が増す。また粒径の小さいニッケル粒を接合部に付けておくことにより、接合強度をさらに増すことができる。この酸化還元処理を行った陰極構体では、マトリックス部の断面写真で見ても、ニッケル1次粒子間の焼結反応が進み、粒子間接合が促進されていることを確認することができた。
このような酸化、還元処理を行うと、ニッケルからなる陰極スリーブ5および2次粒子1の外表面に酸化ニッケルが形成され、陰極スリーブと2次粒子間および2次粒子の1次粒子間の界面で両者が固相−固相反応をし合い、ニッケル粒間の接合およびニッケル粒−陰極スリーブ間の接合が促進され、互いに一体化する。その結果、陰極構体の強度が非常に向上する。
前述の例では、陰極直径がφ3.31mmで、円筒状のニッケル製マトリックス型陰極
構体の例であったが、陰極の直径や形状は用途に応じて種々変えて同様に形成することができる。この場合、用途に応じて1次粒子と2次粒子の粒度を選択し、その焼成寸法の変化に応じた焼結治具の大きさを選択すればよい。またタングステン、モリブデンを用いた場合も、同様に、酸化、還元処理が有効である。すなわち、1.3×10-7Pa程度のH2O雰囲気で、1600〜1800℃に加熱すると、粒界成長が促進され、粒子間の接合強度が高くなる。
また、本発明によるマトリックス型陰極構体は、前述の製造方法により得られるもので
、図3に示されるように、陰極基体(陰極スリーブ5)の表面にマトリックス6が形成され、そのマトリックス6は、1次粒子同士が接合し、その接合部に1次粒子より粒径の小さい金属粒が接合した2次粒子により形成されていることを特徴としている。
本発明によるマトリックス材料および陰極構体の製造方法を示すフロー図である。 本発明によるマトリックス材料である2次粒子の一例の断面説明図である。 本発明による陰極構体の一例の断面説明図である。 陰極構体に酸化還元処理をした場合と還元処理のみをした場合とでの収縮率の違いを示す図である。 従来の高出力マグネトロン用の陰極構造例を示す説明図である。 従来のマトリックス型陰極構体の製造フローを示す図である。 従来のマトリックス型陰極構体を製造する一工程の断面説明図である。
符号の説明
1 2次粒子
2 1次粒子
3 粒径の小さい金属粒
5 陰極スリーブ
6 マトリックス
7 陰極構体

Claims (4)

  1. (a)球形または無定形金属粒からなる1次粒子と、該1次粒子より粒径(無定形の場合には平均的な差渡し。以下、同様。)の小さい前記1次粒子と同一の金属粒とをバインダと共に混合し、
    (b)前記混合した混合物を乾燥、固化し、
    (c)前記固化した混合物を粉砕して、2個以上の前記1次粒子と前記1次粒子より粒径の小さい金属粒が接合した粉体を形成し、
    (d)少なくとも前記1次粒子の粒径より大きい前記粉体をふるい分けることにより、前記1次粒子間の接合部を前記1次粒子より粒径の小さい金属粒が覆う2次粒子を形成することを特徴とするマトリックス(焼結金属からなる多孔質体。以下、同様。)材料の製造方法。
  2. 球形または無定形金属粒からなる1次粒子と、該1次粒子より粒径の小さい前記1次粒子と同一の金属粒とをバインダと共に混合し、前記混合した混合物を乾燥、固化し、前記固化した混合物を粉砕して、2個以上の前記1次粒子と前記1次粒子より粒径の小さい金属粒が接合した粉体を形成し、少なくとも前記1次粒子の粒径より大きい前記粉体をふるい分けることにより、前記1次粒子間の接合部を前記1次粒子より粒径の小さい金属粒が覆う2次粒子を形成し、前記2次粒子を陰極基体表面に焼結して固着することを特徴とするマトリックス型陰極構体の製造方法。
  3. ニッケル、タングステン、モリブデンまたはこれらを主成分とする金属のいずれかからなる前記1次粒子および1次粒子より粒径の小さい前記1次粒子と同一の金属粒を用いて前記2次粒子を形成し、前記2次粒子を陰極基体表面に焼結して固着した後、前記金属の酸化処理を行い、引き続き還元処理を行うことを特徴とする請求項2記載のマトリックス型陰極構体の製造方法。
  4. 陰極基体の表面にマトリックスが形成されたマトリックス型陰極構体において、前記マトリックスは、球体または無定形金属粒からなる1次粒子が隣接する1次粒子と接合し、少なくとも前記1次粒子間の接合部に前記1次粒子より粒径の小さい前記1次粒子と同一の金属粒が接合していることを特徴とするマトリックス型陰極構体。
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