JP2001351505A - 陰極部材およびその製造方法 - Google Patents
陰極部材およびその製造方法Info
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Abstract
た陰極ペレットへのニッケルクロム合金の接合を容易に
した陰極部材、およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 円筒状金属スリーブ2の一端にニッケル
粉末とエミッタ材と希土類酸化物粉末からなる陰極ペレ
ット1を装着してなる陰極部材であって、前記陰極ペレ
ット1が、その電子放射面の裏面側にスパッタなどの成
膜法により成膜されたニッケルクロム合金膜3を有する
事を特徴とする陰極部材、およびその製造方法。
Description
ストロンなどの電子管や、CRT等に使用する陰極部材
およびその製造方法に関する。
陰極から放出される電子ビームと高周波回路との相互作
用により入力したマイクロ波を増幅したり、発振したり
する電子管であり、図5に示すように電子を放出する電
子銃51、電子ビームと相互作用する高周波回路52、
電子ビームを捕集するコレクタ53、電子ビームを収束
する電子ビーム収束装置54とから構成されている。近
年、これら電子管の高出力、高効率化、あるいはCRT
の大型化、高精度化にともない、高電流密度対応の陰極
が強く要求されており、従来の酸化物陰極では寿命が著
しく低下するため、含浸型陰極等が使用されている。し
かし、含浸型陰極は、従来の酸化物陰極の動作温度が7
00〜900℃であるのに比べ100〜150℃も動作
温度が高いため、陰極周囲の構造体の耐熱設計や、エミ
ッタ材の周囲への付着による耐圧劣化などにおいて留意
しなければならなかった。
平11−40046号公報では、熱間等方加圧処理(以
下HIP処理と称す)による低温動作陰極の製造方法が
記載されている。前記公報における前記低温動作陰極の
製造方法とその効果を以下に簡単に示す。まず、HIP
処理工程は、ニッケル粉末、希土類金属酸化物と、バリ
ウム・ストロンチウム・カルシウムの共沈三元炭酸塩粉
末を混合・処理した試料を、金属またはガラス製のカプ
セルに封入し、900〜1200℃、500kg/cm
2以上の高温高圧により加圧する。この処理の際には、
出発原料であるエミッタ材の (Ba・Sr・Ca)CO3→(Ba・Sr・Ca)O
+CO2 なる反応が生じず、酸化物陰極と同様、炭酸塩のままエ
ミッタ材が保持されるため保管、組み立て工程中で劣化
しない。次に、陰極の熱活性工程によりエミッタ材の炭
酸塩が酸化物となり、さらに陰極ペレットに溶接固定さ
れたニッケルクロム合金のキャップ、あるいはスリーブ
中のクロムが内部へ拡散し、エミッション特性に寄与す
る遊離バリウムを容易に生成させることができる。以下
に反応式を示す。 (熱活性時) BaCO3 → BaO + CO2↑ (Cr拡散) 8BaO2 + 2Cr → Ba(C
rO4)2+ 5Ba このとき、陰極の熱活性と同時に起こるクロム拡散によ
る遊離バリウムの生成促進により、陰極の熱活性工程が
短時間で完了する。
開平11−40046号公報記載の方法では、図4に示
すように、円柱状の陰極ペレット41の支持構体に帽状
のニッケルクロム合金キャップ44、あるいは円筒状の
ニッケルクロム合金スリーブ43を使用する必要があ
り、さらに、前記陰極ペレット41に溶接により隙間な
く接合することが必要である。陰極ペレット41を支持
するスリーブ形状あるいは、厚さ数ミクロンのニッケル
クロム合金キャップ44を、前記陰極ペレット41の周
囲に抵抗溶接により接合保持するにあたり次のような問
題点がある。 1.肉厚の薄いニッケルクロム合金キャップ44を抵抗
溶接により隙間なく接合保持することは容易ではない。
すなわち、溶接条件が難しく、変形し易いため、溶接時
に陰極ペレット41とニッケルクロム合金キャップ44
との間に隙間が生じやすい。 2.接合の程度により、陰極ペレット41内へのクロム
の拡散が不均一になり、遊離バリウムの生成反応が一定
しないためエミッション特性にばらつきが生じる。 3.ニッケルクロム合金キャップ44が陰極ペレット4
1に完全に密着していない部分における陰極ペレット4
1内へのクロム拡散が欠乏し、その結果、部分的に遊離
バリウムの生成が不均一になる。このため、陰極ペレッ
ト41内部へのクロム拡散は十分とは言えない。
されたものであって、陰極ペレットに、容易にニッケル
クロム合金を均一に隙間無く接合し、陰極ペレット内へ
のクロムの拡散を均一化、高速化し、エミッション能力
を安定化する手段を提供することを目的とする。
よれば、ニッケル粉末とエミッタ材と希土類金属酸化物
粉末からなる陰極ペレットを金属スリーブの一端に装着
してなる陰極部材であって、前記陰極ペレットが、その
電子放射面の裏面側に成膜されたニッケルクロム合金膜
を有することを特徴とする陰極部材、あるいは、ニッケ
ル粉末とエミッタ材と希土類金属酸化物粉末を混合後、
熱加圧処理を行い、エミッタ材を含有した焼結材を作製
したのち、該焼結材を陰極形状に加工して陰極ペレット
を作製し、該陰極ペレットの電子放射面の裏面側にニッ
ケルクロム合金膜を成膜する事を特徴とする陰極部材の
製造方法によって解決される。
金膜が成膜されるため、前記陰極ペレットとニッケルク
ロム合金膜の隙間がなくなる。従って、陰極ペレット内
へのクロム拡散が均一になる。さらに、ニッケルクロム
合金膜の成膜にスパッタを用いるならば、ニッケルクロ
ム合金膜の膜厚が安定するため、エミッション能力のば
らつきを抑え、再現性よく安定的に製造することができ
る。
レットの電子放射面の裏面側のみでなく、前記裏面側に
加え、前記陰極ペレットの側面側にも成膜する事ができ
る。この場合、成膜されたニッケルクロム合金膜の面積
が、より大きくなるため、前記陰極ペレット内へのクロ
ムの拡散をより速くする事ができる。
は、凹凸のある形状にすることもできる。本発明におい
ては、スパッタによる成膜を採用するならば、凹凸のあ
る形状でも均一な成膜が可能であり、前記陰極ペレット
に凹凸を形成することによりスパッタ面の面積を広げる
ことができるため、クロムの前記陰極ペレット内への拡
散がさらに速くなる。
ム合金の膜厚は、5000オングストローム以上100
000オングストローム以下が望ましい。膜厚が500
0オングストロームより薄いと、スパッタ面の被覆率が
悪くなってしまい、100000オングストロームより
厚いと、スパッタ膜の密着性に問題が出る可能性がある
ためである。
を参照して説明するが、本発明は以下の形態に限定され
るものではない。図1に、本発明の第1の実施形態とし
ての陰極部材の模式断面図を示す。陰極ペレット1の電
子放射面の裏面側にニッケルクロム合金膜3がスパッタ
により成膜されており、陰極ペレット1は円筒状金属ス
リーブ2に装着されている。尚、図1に断面図で示され
る陰極ペレット1の形状は、実際は円柱状である。
る。まず、ニッケル基体粉末とエミッタ材としてのバリ
ウム・ストロンチウム・カルシウムの共沈三元炭酸塩粉
末、および希土類金属酸化物として酸化スカンジウム粉
末の混合粉末を混合・プレス成形する。この成形体を真
空中でカプセル封入した後、900〜1200℃、50
0kg/cm2以上の高温高圧下でHIP処理を行い、
エミッタ材を含有した焼結体を作製する。この焼結体を
プレスあるいは切削により加工し、円柱状の陰極ペレッ
ト1の形状を得る。さらに陰極ペレット1の電子放射面
の裏面にNi−Cr(80%−20%)の合金をスパッ
タにより5000〜100000オングストローム成膜
する。これを、モリブデン、タンタル、モリブデン・レ
ニウム合金、ステンレスなどの円筒状金属スリーブ2に
固定して陰極部材を得る。
ためには陰極分解工程と陰極活性化工程が必要である。
まず陰極分解工程では、前記陰極ペレットを所定の温度
と時間で加熱する。これは炭酸塩のエミッタ材を酸化物
エミッタ材に熱分解させ、さらに酸化物エミッタ材を前
記陰極ペレット表面に熱拡散するためである。まず、陰
極分解工程は、陰極温度600℃から最高到達温度であ
る1000〜1030℃までを90〜120秒に加熱
し、さらに1020〜1030℃で90〜240秒保持
させる。これにより、前記陰極ペレットの電子放射面へ
のエミッタ材の形成および炭酸塩から酸化物への変換が
完了する。
ットを1080℃で15〜20分加熱する。これによ
り、前記陰極ペレットの電子放射面にエミッタ層が形成
される。さらに、本発明の陰極部材の場合、前記陰極ペ
レットの電子放射面の裏面にスパッタされたニッケル・
クロム合金膜中のクロムが前記陰極ペレット内に拡散さ
れ、その還元作用により前記陰極ペレットの電子放射面
に形成された前記エミッタ層の酸化バリウム(BaO)
を還元し、遊離バリウム(Ba)を生成させる。以下に
その反応を示す。 (熱活性時) BaCO3 → BaO + CO2↑ (Cr拡散) 8BaO2 + 2Cr → Ba(C
rO4)2 + 5Ba 以上により、本発明に係る陰極部材においては、通常動
作温度780℃にて安定なエミッションが得られる。
電子放射面の裏面側にニッケルクロム合金膜をスパッタ
により成膜することとしたが、前記陰極ペレットの裏面
側、側面側両方にニッケルクロム合金膜をスパッタある
いはその他の成膜法により成膜する事についても適応す
ることができる。その構成を本発明の第2の実施形態と
し、図2に示す。図2は、陰極ペレット21の裏面側、
および側面側にもニッケルクロム合金膜23を成膜し、
円筒状金属スリーブ22に装着した陰極部材の模式断面
図である。尚、図2に断面図で示される陰極ペレット2
1の形状は、実際は円柱状である。陰極ペレット21の
裏面側のみでなく、側面側にもニッケルクロム合金膜を
形成することにより、この第2の実施形態では、陰極ペ
レット21内へのクロムの拡散が、電子放射面の裏面側
だけでなく、前記陰極ペレットの側面側からも可能とな
り、陰極活性化の時間が短く、かつ、前記陰極ペレット
全体に均一に拡散するため、エミッション能力を安定化
させる遊離バリウムの形成が更に速くなるという効果が
得られる。
ト裏面側を凹凸のある形状で構成することができる。そ
の構成を第3の実施形態として図3に示す。図3は、陰
極ペレット31の電子放射面の裏面31aに凹凸部を形
成した陰極ペレット31の電子放射面の裏面側および側
面側にニッケルクロム合金33をスパッタにより成膜
し、円筒状金属スリーブ32に装着した陰極部材の模式
断面図である。尚、陰極ペレット31の形状は実際は円
柱状である。本実施形態においては、この凹凸のある形
状により、前記陰極ペレット裏面31aの表面積が拡大
し、前記陰極ペレット31の裏面側、あるいは裏面側と
側面側両方にスパッタにより成膜されたニッケルクロム
合金膜の陰極ペレット31内部へのクロムの拡散速度は
さらに速くなり、エミッション能力はより安定化すると
いう、本発明の目的が達成される。
例として酸化スカンジウムを用いたが、酸化スカンジウ
ムにかえて、酸化イットリウムを用いることもできる。
よれば、陰極ペレットの電子放射面の裏面側、あるいは
裏面側、側面側両方にスパッタなどの成膜法によりニッ
ケルクロム合金膜が形成されていることにより、前記陰
極ペレット内へのクロムの拡散が速く、均一になるた
め、エミッション能力が安定化した陰極部材を提供する
事ができ、特に前記陰極ペレットの電子放射面の裏面側
が凹凸のある形状で構成される場合において、顕著な効
果が得られる。
金属酸化物粉末を熱加圧処理後、加工してなる陰極ペレ
ットの電子放射面の裏面側、あるいは裏面側と側面側
に、スパッタ法などの成膜法によりニッケル・クロム合
金膜を容易に、しかも再現性良く形成することができる
ため、前記陰極ペレットとニッケルクロム合金を隙間無
く、安定的に、再現性良く接合することができる。
金膜の形成法として、スパッタ法を用いるならば、前記
陰極ペレットに均一に成膜することが可能であるため、
前記陰極ペレット内部へのクロムの拡散が速く、均一に
なり、安定なエミッションが得られる。また、その効果
は前記陰極ペレット裏面側と側面側の両方にニッケルク
ロム合金をスパッタする、あるいは前記陰極ペレットの
裏面側を凹凸のある形状で構成する場合に顕著である。
態を示す模式断面図である。
態を示す模式断面図である。
態を示す模式断面図である。
金キャップを使用した、既知の陰極構体の一例を示す模
式断面図であり、図4(b)は支持構体に、ニッケルク
ロム合金スリーブを使用した、既知の陰極構体の一例を
示す模式断面図である。
る。
Claims (8)
- 【請求項1】 金属スリーブの一端にニッケル粉末とエ
ミッタ材と希土類金属酸化物粉末からなる陰極ペレット
を装着してなる陰極部材であって、前記陰極ペレット
が、その電子放射面の裏面側に成膜されたニッケルクロ
ム合金膜を有する事を特徴とする陰極部材。 - 【請求項2】 前記陰極ペレットが、その電子放射面の
裏面側に加え、側面側にも成膜されたニッケルクロム合
金膜を有する事を特徴とする前記請求項1記載の陰極部
材。 - 【請求項3】 前記陰極ペレットの電子放射面の裏面側
が、凹凸を有する構造である事を特徴とする、前記請求
項1または2記載の陰極部材。 - 【請求項4】 前記陰極ペレットに成膜されたニッケル
クロム合金膜の膜厚が、5000オングストローム以上
100000オングストローム以下である事を特徴とす
る前記請求項1〜3のいずれかに記載の陰極部材。 - 【請求項5】 ニッケル粉末とエミッタ材と希土類金属
酸化物粉末を混合後、熱加圧処理を行い、エミッタ材を
含有した焼結体を作製したのち、該焼結体を陰極形状に
加工して陰極ペレットを形成し、この陰極ペレットの電
子放出面の裏面側にニッケルクロム合金膜を成膜する事
を特徴とする陰極部材の製造方法。 - 【請求項6】 前記陰極ペレットの電子放出面の裏面側
に加え、側面側にもニッケルクロム合金膜を成膜する事
を特徴とする前記請求項5記載の陰極部材の製造方法。 - 【請求項7】 前記陰極ペレットの電子放出面の裏面側
を凹凸のある形状で構成する事を特徴とする前記請求項
5または6記載の陰極部材の製造方法。 - 【請求項8】 前記陰極ペレットに成膜するニッケルク
ロム合金膜の膜厚が5000オングストローム以上10
0000オングストローム以下である事を特徴とする前
記請求項4〜6のいずれかに記載の陰極部材の製造方
法。
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-
2000
- 2000-06-06 JP JP2000169566A patent/JP3803533B2/ja not_active Expired - Lifetime
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