JP4473769B2 - 炭化珪素単結晶の焼鈍方法 - Google Patents

炭化珪素単結晶の焼鈍方法 Download PDF

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本発明は、炭化珪素単結晶インゴットの加工時、あるいは、炭化珪素単結晶ウェハのデバイスプロセス時における炭化珪素単結晶の割れやクラック発生を防ぐ方法に関するものである。本発明の炭化珪素単結晶は、各種半導体電子デバイスを構成する基板材料として用いられる。
炭化珪素(SiC)は、優れた熱伝導特性及び機械的強度等から、特に高い熱放散性を実現できるセラミックス材料として、各種産業用装置を構成する構造材料に供用されている。これらの特性に加え、SiCは、半導体材料としても、シリコンをはじめとする従来材料を大きく凌駕する電子物性特性を有しており、電力用パワーデバイスを含む各種半導体デバイスの基板材料としても大きな注目を集めている。単結晶SiCウェハを用いたGaN系青色発光ダイオードは既に大きな市場を形成するに至っており、また、ショットキーバリアダイオード等の低損失パワーデバイスも実用化段階に到達した。また、高い熱放散性を利用した高速通信用高周波デバイスの開発も、その技術的進捗が著しい。
SiC単結晶インゴットは、目下のところ、改良レーリー法と称される昇華再結晶法によって、製造されることが一般的になっている(非特許文献1)。近年、結晶品質において大幅な技術改善が進捗し、SiC単結晶中の各種結晶欠陥密度の低減化、及び、口径4インチ(100mm)に及ぶ結晶の大口径化が確実に実現しつつある(非特許文献2)。
SiCを半導体デバイス製造用SiCウェハとして用いるためには、前記の昇華再結晶法等によって製造されたSiC単結晶インゴットを、切断や研磨等の加工工程を経て、ウェハ状に加工する必要がある。即ち、ワイヤーソー等の方法により、所望の結晶面が露出するように切断された薄板状のSiC単結晶ウェハは、シリコン等々の他の半導体材料一般について行われている方法と、ほぼ同様な研磨プロセスにより鏡面研磨加工され、このようにして製造されるSiC単結晶ウェハを用いて、各種電子デバイスが作製される。これらの各製造プロセスにおいて、加工前の単結晶インゴット中に、結晶製造時の導入された熱応力歪が残留すると、加工プロセス時に割れやクラックが発生し、高結晶品質なSiCウェハを製造する上で著しい障害となる。また、このような結晶割れやクラックを回避できたとしても、熱応力歪や、ウェハ化加工中に導入された加工歪を内部に残留した状態のウェハを用いてデバイスを製造する場合、デバイス化プロセス時に不慮にクラックの発生が頻発し、デバイス製造コストを押し上げる要因の一つになってしまう。これらの問題を回避するため、製造されたSiC単結晶インゴットあるいはSiC単結晶ウェハを不活性ガス中で加熱焼鈍処理を実施し、結晶中の残留歪を除去することを本発明者らは提案した(特許文献1)。
特開2004−131328号公報 Yu.M.Tairov and V.F.Tsvetkov、「Journal of Crystal Growth」、1981年、第52巻、p.146 C.H.Carter他、「FEDジャーナル」、2000年、第11巻、p.7 野瀬他、「MRS Int’l. Mtg. on Adv. Mats.」、1987年、第7巻、p.293 前田他、「Philosophical Magazine A」、1988年、第57巻、p.573
SiC単結晶インゴットの製造方法としては、前述の昇華再結晶法(PVT法)、あるいは、近年注目を集めている高温化学気相堆積法(HTCVD法)が知られている。これらの製造方法においては、黒鉛坩堝容器内に温度勾配が存在する高温環境下でSiC結晶成長が行われる点で、共通の技術基盤を有する。図1に、PVT法の概略図を示す。準密閉された黒鉛坩堝3内にSiC原料粉末2及び種結晶1を配置し、外部の高周波加熱コイル7によって、原料部分が高温に、また、種結晶部分が原料部分と比較して僅かに低温となるように、黒鉛坩堝3内に温度勾配を付与する。このような状況下で、原料部分を2000℃以上の高温に加熱すると、まず、原料部よりSiCの昇華分解ガスが発生する。昇華分解ガスは坩堝内を移動し、比較的低温な種結晶上で再結晶化し、その結果、SiC単結晶成長が誘導される。HTCVD法では、Si及びCを含む高純度ガス(例えば、シラン及びプロパン等)を原料として使用し、成長中に外部より連続供給される点が異なるが、他の結晶製造原理については、基本的に上記のPVT法と同じと考えてよい。なお、黒鉛坩堝3は断熱材5によって覆われており、二重石英管4内に配置されて温度調節される。さらに、二重石英管4内部は真空排気装置6によって内部圧力を調節されることができる。
上記の方法でSiC単結晶を製造する場合、製造後のSiC単結晶インゴット中には、結晶成長時の温度分布を反映した熱応力が残留する。発明者らが、数値シミュレーションを駆使した詳しい解析を実施した結果、特に単結晶の動径方向の温度差、即ち、結晶中心と周辺部の温度差が大きくなるような条件下で成長した単結晶インゴットは、常温においてインゴット周辺部の引張応力が大きくなる傾向が強くなることが判明した。この結果は、上記のような状況下で形成される残留熱応力歪が著しく過大になると、単結晶インゴットを加工してウェハ化する際、あるいは、それらのウェハを用いてデバイスを作製する際に、単結晶インゴットあるいは単結晶ウェハの割れやクラックが発生する頻度が高くなることを示唆しており、前述した実際のクラック発生現象と良く符合する。また、この問題は、特にSiC単結晶の口径が大型化した場合、単結晶の動径方向の温度勾配は小さくても、結晶口径が大きくなることで、結果的に、動径方向の温度差が容易に増加し易くなる。このため、残留熱応力歪が過大となって、結晶割れやクラック発生問題が口径の大型化と共に顕著になることが避けられず、近年のSiCウェハ口径の大型化の中で、大きな問題となっている。
一般に、結晶中に残留する熱応力歪や加工歪の除去は、不活性ガス等の非腐食性雰囲気中で、均一な温度分布が実現されている熱処理炉中で高温アニール処理することで可能であり、特に、本処理は焼鈍処理とも呼ばれる。したがって、ウェハ化加工前のSiC単結晶インゴット、あるいは、デバイスプロセス前のSiC単結晶ウェハに、上記の焼鈍処理を実施することにより、残留熱応力や加工歪を除去し、その結果、ウェハ割れを回避することが可能である(特許文献1)。
焼鈍処理のメカニズムは、結晶格子歪の場合は格子歪を緩和させ、また、転位等々の各種欠陥の場合には、転位の速やかな移動を引き起こして単結晶の外部へ逃がすか、あるいは、材料力学的により安定な状態が実現できるように欠陥群を再配列させることにある。結晶にこのような力学的処置を効果的に行うためには、焼鈍処理温度を、結晶の溶融温度を超えない範囲内で、できるだけ溶融温度に近い温度に選択することが好ましい。ところで、SiC単結晶の場合、SiC自体が高い熱安定性を有するため、焼鈍温度については十分な留意が必要である。野瀬らによれば、立方晶系のSiC結晶(3Cポリタイプ結晶)からなる多結晶焼結体の場合、約1400℃以上の温度域において、高温加圧下でクリープ的挙動を示すことが報告されており、少なくとも1400℃以上であれば、熱応力歪を構成する転位群の比較的速やかな移動が起こることが示された(非特許文献3)。この結果は、焼鈍温度として少なくとも1400℃以上が必要であることを示すと考えられる。また、他方、4Hあるいは6Hポリタイプ結晶のような六方晶系結晶の場合、主すべり面である(0001)面上では、1300℃以上の温度域で同様な転位の移動が起こることを示唆する報告がある(非特許文献4)。ただし、他の高次すべり面については、一般的に転位移動は起こり難いと考えられ、より高温での焼鈍処理が必要であると推測されている。これらに示された温度以上の高温域で焼鈍処理を実施することにより、熱応力歪の緩和が促進され、焼鈍効果が得られる可能性が高いといえる。工業的により短時間で効果的な焼鈍効果を得るためには、SiCが2000℃を超える高温で結晶成長する事実を鑑みると、基本的には、結晶成長開始温度あるいはそれ以上の超高温域で焼鈍処理を実施することが好ましい。
しかしながら、SiCは、気相プロセスを通して昇華及び再結晶化現象が誘導されるため、2000℃超の高温域で通常の焼鈍処理を行うと、単結晶インゴットや単結晶ウェハの表面から昇華によるSiC分解反応が誘発し、その結果、結晶表面の炭化を主体とした表面劣化が発生してしまう(特許文献1)。SiC単結晶において、激しい表面炭化が発生すると、再加工や再研磨等、加工コストの増大を引き起こすため、実用上大きな問題となる。
この問題を解決するためには、顕著な昇華分解を避けるために、2000℃以下の低温域での焼鈍処理を実施することを余儀なくされるが、工業的により短時間で焼鈍処理を完遂できる方法の確立が希求されていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、SiC単結晶インゴットの加工時、あるいは、SiC単結晶ウェハのデバイスプロセス時に、割れやクラックが発生しない良好なSiC単結晶インゴットあるいはSiC単結晶の焼鈍方法提供するものである。
本発明は、SiC単結晶中に残留する熱応力歪や加工歪等々を緩和除去する焼鈍処理方法、及び、その焼鈍処理によって作製されるSiC単結晶ウェハに関するものであって、
(1) 炭化珪素単結晶のインゴット又はウェハを、2000℃超2800℃以下の温度で焼鈍熱処理する炭化珪素単結晶の焼鈍方法であって、前記焼鈍熱処理の雰囲気が、炭素及び水素を含む非腐食性ガス、又は、アルゴンおよびヘリウムのうち少なくとも1種と該非腐食性ガスとの混合ガスからなる雰囲気であることを特徴とする炭化珪素単結晶の焼鈍方法、
(2) 前記非腐食性ガスが、雰囲気全体に対し、体積比で0.5%以上含有される(1)に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法、
(3) 前記非腐食性ガスが、雰囲気全体に対し、体積比で1%以上含有される(1)に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法、
(4) 前記非腐食性ガスが、雰囲気全体に対し、体積比で5%以上含有される(1)に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法、
(5) 前記非腐食性ガスが、炭素及び水素からなる炭化水素系ガスである(1)〜(4)の何れか一つに記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法、
(6) 前記炭化水素系ガスが、メタン、エタン、プロパン、およびエチレンからなる群から選択される少なくとも1種である(5)に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法、
(7) 前記雰囲気中に、さらに窒素を含有する(1)に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法、
(8) 前記焼鈍熱処理の温度が、2000℃超2600℃以下である(1)に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法、
(9) 前記焼鈍熱処理の温度が、2000℃超2500℃以下である(1)に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法、
(10) 前記雰囲気の圧力が、2.0×10Pa以上である(1)に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法、
(11) 前記炭化珪素単結晶が、昇華再結晶法又は化学気相堆積法により作製される炭化珪素単結晶である(1)に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法
ある。
本発明の焼鈍処理をSiC単結晶インゴットあるいはSiC単結晶ウェハに施すことにより、SiC単結晶インゴットの加工時、あるいは、SiC単結晶ウェハのデバイスプロセス時に、結晶体の割れやクラック発生を大幅に抑制できる。このような炭化珪素単結晶ウェハを用いれば、光学的特性の優れた青色発光素子、電気的特性の優れた高耐圧・耐環境性電子デバイスを歩留まり良く製造することが可能になる。
発明者らは、望ましくは2000℃を超える高温で、SiC単結晶インゴットあるいは単結晶ウェハに熱分解による致命的な表面結晶ダメージを与えない焼鈍処理について、鋭意検討した。その結果、プロパンやエチレンのような炭素及び水素からなる非腐食性ガス雰囲気中で焼鈍処理を実施したところ、2000℃超の高温域で処理した後でも、インゴットあるいはウェハ表面は目視レベルで全く変化せず、SiC自身の熱分解による表面炭化が全く生じない事実を見出した。
上記新知見の現象メカニズムについては、上記ガスを構成する元素の中で、特に炭素が、昇華及び再結晶化の反応速度を規定する系全体の自由エネルギーに影響を与え、炭素の増加により、昇華分解速度を低下させている可能性が高いと推察している。しかしながら、水素をはじめとする雰囲気ガス中の他の元素の影響まで勘案したメカニズムの詳細については依然不明な点が残されており、これ以上のメカニズムの詳細については現時点では言及できない。
発明者らは、上記事実を焼鈍処理に応用することにより、従来の焼鈍処理で問題になっていた高温処理時の表面炭化による結晶品質劣化問題を回避できることを着想し、鋭意検討した結果、SiC単結晶インゴットあるいはSiC単結晶ウェハに、以下に詳述する焼鈍処理を施すことを提案するに至った。
まず、本発明の焼鈍処理は、SiC単結晶に腐食やエッチング等々の影響を及ぼさない非腐食性ガスであって、炭素及び水素を含むガス、望ましくは、炭素及び水素からなる炭化水素系ガス、さらに望ましくは、メタン、エタン、プロパン、およびエチレンからなる群から選択される少なくとも1種からなるガスを雰囲気ガスとして用いる必要がある。アルゴン、ヘリウム、あるいは、それらの混合ガスで希釈された雰囲気ガスでも良い。また、特に電気抵抗率等のSiC単結晶の電気的特性を問題としない場合には、雰囲気ガスに窒素が混合されていても良い。これらの不活性ガスあるいはその混合ガスで希釈された、炭素及び水素を含む非腐食性ガスを用いる場合には、非腐食性ガスが体積比で0.5%、望ましくは1%、さらに望ましくは5%以上存在していることが必要である。0.5%未満の場合では、焼鈍処理時の表面炭化抑制効果が得られ難い。非腐食性ガス濃度の上限については、高温での焼鈍処理時の防爆等々に対する配慮を行う以外、特に制限を与える要因は無い。
上記に詳述した雰囲気ガスを使用することを前提に、具体的な焼鈍処理パターンの一例を、以下に説明する。まず、昇温過程であるが、過度に急激な昇温によるSiC単結晶インゴットあるいはSiC単結晶ウェハの熱衝撃割れが発生しないように留意する以外、特に昇温速度に制約は無い。次に、2000℃超、2800℃以下の温度域で、望ましくは2000℃超、2600℃以下、さらに望ましくは2000℃超、2500℃以下の温度で焼鈍熱処理を行う。2000℃以下の温度域では、結晶中の転位群の十分に早い移動が従来技術と比較して得られ難く、本発明の意図する効果の一つである処理時間の短時間化による工業的効果が十分でない。また、2800℃を超えると、構造上特殊な超高温熱処理炉が必要となり、発熱体等のコストが嵩むため、工業的に実用化することは困難になることに留意する必要がある。
この温度域に留まる焼鈍熱処理であれば、どのような熱処理パターンでも構わない。例えば、上記範囲内の温度で一定時間保持してもよく、簡潔な熱処理パターンで効果的な焼鈍効果が得られるメリットがある。この場合の保持時間は、一般的に温度にも拠るが、上記の温度範囲で、0.1〜20時間とすることで十分な効果が得られる。あるいは、一定温度に保持せずに、2000℃超、2800℃以下の温度域を0.1〜20時間で、徐加熱あるいは徐冷してもよい。加熱時間について言及する理由であるが、0.1時間未満では十分な焼鈍効果を安定して得ることが困難になり、また、20時間を超えるとプロセスが長時間化するためにコスト増加が大きく、実用的でない。焼鈍処理終了後は、速やかに温度を常温へ降下させるが、急激な温度降温は、ウェハ内部に温度不均一を生じ、これが原因となって熱衝撃割れが起こる場合があるため、留意する必要がある。温度が1300℃に下がるまでは極力徐冷し、1300℃以下の温度域を、急激な降温による熱衝撃割れが起こらない範囲の降温速度にて冷却することがより好ましい。
図2に、以上の点を鑑みて提案される本発明の焼鈍処理パターンの一例を示す。まず、2050℃の温度まで5.0℃/minで加熱し、2050℃で2時間保定する。引き続いて、1300℃の温度までを2.5℃/minの冷速で徐冷する。1300℃に到達後は、炉冷によって常温まで4時間かけて速やかに冷却する。これらの焼鈍処理は全て、例えば、1%プロパンガスを混合したアルゴンガス中のような、非腐食性ガス雰囲気中で行なわれなければならない。
なお、焼鈍処理時の雰囲気圧力については、大気圧下で焼鈍処理を行うことがプロセスの簡略化の観点から最も望ましいが、2×10Pa以上、1.3×10Pa以下、より望ましくは1.3×10Pa以上、1.3×10Pa以下の範囲で実施しても、ほぼ同様の効果を得ることができる。2×10Pa未満では、本発明の雰囲気ガスが著しく希釈になるために、十分な効果が得られず、昇華による熱分解反応が起こる結果、結晶の表面炭化が発生してしまう恐れがある。また、1.3×10Paを超える圧力では、高耐圧性を備えた特殊な熱処理炉が必要となる場合があることに留意する必要がある。
本発明のSiC単結晶の焼鈍処理方法は、本単結晶インゴットの製造方法として一般的に知られている昇華再結晶法あるいは高温化学的気相堆積法のどちらの方法で得られる単結晶インゴットにも適用可能である。特に、インゴット口径あるいはウェハ口径が75mm以上の大型単結晶インゴットあるいはウェハにおいて、ウェハ割れやクラックの発生頻度を著しく低減できる点で、顕著な効果が得られる。本発明の焼鈍処理方法は、均一な焼鈍処理炉の容積以外に、特に結晶口径の上限について制限を与える要因はない。単結晶シリコンにおけるウェハ製造プロセスの現状を考慮しても、口径300mmまでは十分にSiCにおいても対応できる技術であることは明白である。
以下に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
公知の昇華再結晶法によって口径76mm、高さ約20mmのほぼ円筒形状のSiC単結晶インゴットを作製した。結晶のポリタイプは4Hである。この単結晶インゴットに2050℃にて5時間保定後、1400℃まで2.5℃/minの速度で徐冷する焼鈍処理を、大気圧力下で実施した。雰囲気ガスとして、1.0%エチレンを混合したアルゴンを使用している。比較例1として、純度99.99%のアルゴンガス中で、ほぼ同様な焼鈍処理を実施した単結晶インゴットを並行して作製し、焼鈍処理後の両インゴットの表面性状を観察した。表1に、その評価結果を示す。本発明の焼鈍処理を実施したインゴットは、成長端面の良好な鏡面状表面がほぼ維持されており、目視では焼鈍処理による表面性状の変化が確認できない。一方、従来法である純アルゴン雰囲気中での焼鈍処理を行ったインゴットは、表面の激しい炭化が認められた。
表1中の、本発明の焼鈍処理を施した試料に、さらにGC230番のメタルボンド砥石を用いて、一回当りの研削量が1.0μmである円筒研削を100回実施し、円筒状結晶の側部を一様に約0.1mm研削除去した。砥石の直径は約150mm、回転速度は2500rpmである。研削後、インゴットの表面を詳しく観察し、割れやクラックの発生有無を調査したが、それらの発生は認められなかった。比較例2として、ほぼ同じ形状のSiC単結晶インゴットを別途作製し、焼鈍処理を行わずに直接、同様の円筒研削を実施したところ、インゴット側部よりインゴット中心に向かって、ほぼインゴット中心に到達する大きなクラックが一箇所発生した。この実験事実を受け、本発明の焼鈍処理の効果を統計的に評価するために、同一の結晶成長条件により、ほぼ同形状の単結晶インゴットをそれぞれ10個、計20個作製し、同様な円筒研削を実施して、クラック発生確率を求めた。表2にその結果を示す。本発明の焼鈍処理インゴットでは、全数について円筒研削によるクラック発生は確認されず、焼鈍処理によってインゴット中の残留熱効力が効果的に除去されていることが示されている。一方、焼鈍処理を実施しないインゴットでは、90%に相当する試料にクラックが発生した。
以上、本発明の焼鈍処理が、SiC単結晶インゴットの円筒研削によるクラック発生確率を著しく低減できると同時に、その焼鈍効果がインゴット表面の炭化による結晶性劣化を引き起こさずに実現できる画期的な方法であることが分かる。
(実施例2)
公知の昇華再結晶法によって、窒素をドープしたn型4HポリタイプのSiC単結晶インゴットを作製した。引き続いて、実施例1と同様の条件でインゴットに焼鈍処理を行い、このインゴットより厚さ約350μmのSiC単結晶ウェハを作製した。ウェハ表面は表裏共に鏡面研磨加工しており、口径は76mmである。このウェハを、10%窒素を混合したアルゴンガスに、さらに、混合ガスに対して1.0%のプロパンを混合したガスを雰囲気ガスとして使用し、実施例1と同様な加熱条件で焼鈍処理を実施した。また、比較例として、ほぼ同様なn型4HポリタイプのSiC単結晶ウェハを別途作製し、プロパンを混合しない10%窒素混合アルゴンガス中で同一の焼鈍処理を実施した。
本発明の焼鈍処理を実施したウェハは、目視でウェハ表面状態に変化は認められず、鏡面研磨状態が良好に保たれている。しかしながら、比較例では、激しい表面炭化が発生し、鏡面状態がほぼ全面に亘って失われていることが確認された。
(実施例3)
実施例2と同様に、公知の昇華再結晶法によって、口径75mmの窒素ドープn型4H−SiC単結晶ウェハを作製した。このSiCウェハに、実施例1と同様な加熱条件で焼鈍処理を実施した。ただし、焼鈍処理温度は2200℃とし、雰囲気ガスとして1%のプロパンガスを混合したアルゴンガスを使用した。ここで、焼鈍処理時の雰囲気圧力を0.5×10〜1.3×10Paの範囲で変化させた。表3に、焼鈍処理後のウェハ表面状態(目視)を示す。また、比較例として、100%アルゴンガスで構成される雰囲気ガス中で、同様の焼鈍処理を実施し、表4に、その結果を纏めた。
100%アルゴンガスからなる雰囲気中で焼鈍処理を実施した場合、いずれの圧力下でも、ウェハのほぼ全表面がカーボンで被覆される激しい表面炭化が発生していることが確認された。一方、1%のプロパンガスを混合したアルゴンガスを雰囲気ガスとして使用した場合、圧力が0.5×10Paの場合に、ウェハの表面の一部(面積比で約20%に相当)に緩やかな表面炭化が発生したものの、2×10Pa以上の場合では、全く表面炭化は認められなかった。このように、100%アルゴンガス雰囲気中の場合と比較して、1%プロパンガス混合アルゴンガス雰囲気中で焼鈍処理を実施することにより、表面炭化抑制効果の発現が確認され、特に圧力が2.0×10Pa以上の場合に、ウェハの表面炭化をほぼ抑制できる効果が得られている。ウェハの焼鈍処理を実施する場合には、実用的には、雰囲気圧力を2.0×10Paとすることが好ましい。
昇華再結晶法による結晶成長装置の一例を示す図である。 本発明の焼鈍熱処理パターンの一例を示す図である。
符号の説明
1 種結晶(SiC単結晶)、
2 SiC粉末原料、
3 グラファイト坩堝、
4 二重石英管(水冷式)、
5 断熱材、
6 真空排気装置、
7 高周波加熱コイル。

Claims (11)

  1. 炭化珪素単結晶のインゴット又はウェハを、2000℃超2800℃以下の温度で焼鈍熱処理する炭化珪素単結晶の焼鈍方法であって、前記焼鈍熱処理の雰囲気が、炭素及び水素を含む非腐食性ガス、又は、アルゴンおよびヘリウムのうち少なくとも1種と該非腐食性ガスとの混合ガスからなる雰囲気であることを特徴とする炭化珪素単結晶の焼鈍方法。
  2. 前記非腐食性ガスが、雰囲気全体に対し、体積比で0.5%以上含有される請求項1に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法。
  3. 前記非腐食性ガスが、雰囲気全体に対し、体積比で1%以上含有される請求項1に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法。
  4. 前記非腐食性ガスが、雰囲気全体に対し、体積比で5%以上含有される請求項1に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法。
  5. 前記非腐食性ガスが、炭素及び水素からなる炭化水素系ガスである請求項1〜4の何れか一項に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法。
  6. 前記炭化水素系ガスが、メタン、エタン、プロパン、およびエチレンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項5に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法。
  7. 前記雰囲気中に、さらに窒素を含有する請求項1に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法。
  8. 前記焼鈍熱処理の温度が、2000℃超2600℃以下である請求項1に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法。
  9. 前記焼鈍熱処理の温度が、2000℃超2500℃以下である請求項1に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法。
  10. 前記雰囲気の圧力が、2.0×10Pa以上である請求項1に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法。
  11. 前記炭化珪素単結晶が、昇華再結晶法又は化学気相堆積法により作製される炭化珪素単結晶である請求項1に記載の炭化珪素単結晶の焼鈍方法。
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