JP4473195B2 - ヤーコン中のフラクトオリゴ糖のアピオスアメリカーナによる安定化方法及び安定化された食品素材。 - Google Patents

ヤーコン中のフラクトオリゴ糖のアピオスアメリカーナによる安定化方法及び安定化された食品素材。 Download PDF

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Description

本発明は、ヤーコン塊根部に含有されるフラクトオリゴ糖(以下、FOSと略記する)のアピオスアメリカーナ(以下、アピオスと略記する)による安定化に関し、詳細にはヤーコン塊根部の処理に伴う黒褐色化やFOSの分解を抑え、商品価値の高い食品素材およびその製造方法に関する。更に具体的には、ヤーコンを主原料としアピオスを副原料とするアイスクリームやソフトクリーム等のシャーベット状、またはプリンやゼリー状、あるいはジュースやドリンク状等の液体飲料に加工する前段階の食品素材及びその製造方法に関する。
ヤーコンは、ペルーやポリビアなどの南米を原産地とするキク科植物で、日本で知られて日が浅いが、昨今健康食品として消費が急増している有用な食用作物である。葉茎も用いられるが主として塊根を食用としている。そして塊根部には、1−ケストース、ニストース、1F−β−フラクトフラノシルニストース等のFOSが多く含まれ、これらの天然多糖がヒトの腸管エコロジー活性に作用する。FOSの化学構造を図4に示す。(非特許文献1参照)。
しかし、このFOSは酸化に極めて弱く、収穫後放置されると、元々ヤーコンに付着している酸化酵素の酸化作用により、FOSが分解して単糖類であるフルクトースに分解してFOS量が減少してしまうという欠点があった。
また、ヤーコン塊根部は、含有するポリフェノールオキシダーゼ等の酵素の影響により加工処理過程で皮を剥ぐと表面が、また破砕してペーストまたはゲル状にすると全体が短時間で黒褐色に変色するという問題点があった
一方アピオス(アピオスアメリカーナ、和名アメリカホドイモ)は、北米を原産地とするマメ科植物で、塊根には、Bグループサポニンを初めカルシウム成分や他のイモ類には見られないビタミンEが含まれ、高エネルギーと相まって格段に栄養価の高い食物である。アピオスに含まれるDDMPサポニンには老化防止、抗腫瘍作用を初め、脂質の過酸化を抑え代謝を促進し、また中性脂肪を減らして動脈硬化を改善する働きがある。更に、最近の研究によると、アピオスには血圧上昇抑制作用、コレストロール低下作用及び血糖値低下作用があることも認められた。
ところで、消化器系はヒトの腸管免疫の主体を成し、生体防御に大きく関与し、健康維持に重要な役割を果たしており、腸内細菌叢に活性をもたらす機能を有する食品に期待されるものにProbioticsとPrebioticsがある。本発明は後者に主眼を置いたものである。Prebioticsは、ヒト腸内細菌叢の構成菌であるビフィズス菌(Bifidobacterium bifidum)に選択的に利用されて増殖を助け、免疫低下や老化などの病的状態の原因菌であるウェルシュ菌(Clostridium perfringens)や大腸菌(Escherichia coli)には利用されない高い選択性を持つ炭素源である(非特許文献2参照)。
Prebioticsの機能が勝れているヤーコンは、キク科の他の植物に比較すると難消化性オリゴ糖に属するFOSを大量に含み腸内細菌叢に活性をもたらすとともに、FOSが、う蝕の原因菌であるミュータンス菌(Streptococcus mutans)の不溶性グルカンの基質にならないことから、抗う蝕性作用も併せ持つ(非特許文献3参照)。
非特許文献4には、収穫時におけるヤーコン塊根部の糖質は殆どFOSで占められているが、生で室温保存すると急速に加水分解が進み、分解して単糖になったフラクトースの量が急速に増加することが、図1及び図2とともに記載されている。
このようにヤーコンは、ヒトにおける健康機能促進能を有する、優れた作物であるが、先に記述したようにFOSが酵素分解して褐色に変色し易いフルクトースのような単糖類に分解し易く、また加工処理過程で短時間で酸化分解酵素の作用により黒褐色に変色して商品価値をなくしてしまうという問題点があった。
そもそも、ヤーコンの栽培において塊根の収穫期は概ね晩秋であり、有効成分を変質させることなく通年で摂取するのは容易ではない。ヤーコン成分の経時変化について、従来の加工事例では、はじめに加熱あるいは化学物質などの添加物を用いて酵素失活させていた。一方、褐色変化あるいは黒褐色変化や渋みと苦味の発生を抑える目的で、特別な洗浄や熱処理がなされていた。
例えば、特許文献1は、ヤーコンと酸性水とを混合することで該ヤーコン付着している酸化酵素の活性を抑制せしめた状態で処理を行い、FOSの減少を防止すると共に、ビタミン等の栄養分を増強した食品の製造方法を開示している。
また、特許文献2は、果物類及び野菜類の1種以上を粉砕する第1の粉砕工程と、第1の粉砕工程で粉砕された原料にヤーコン芋を投入し粉砕物と接触可能な環境下で粉砕撹拌する第2の粉砕工程とによって、ヤーコン芋の搾汁の色調を安定化し、商品化を可能にする加工食品の製造方法を開示している。
更に、特許文献3は、ヤーコン塊根部を破砕し、ホモジナイズして得られる搾汁液をpH6.5〜9.5に調整し、更に乾燥させることにより、黒褐色化を起こさず、FOSの分解を抑制したヤーコン塊根粉末からの食品素材の製造法を開示している。
佐久間慶子,腸内細菌学雑誌 2002,16,11〜19. 辻啓介,森文平編,食物繊維の科学 朝倉書店 1997年9月初版. 浜田茂行,細菌学雑誌 1981,36,557. 平成6年度四国農業試験場研究センター研究成果情報・野菜花き果樹部会13号報告 1995,13,146−147 特開2003−235495号公報 特開2001−252038号公報 特開平10−218782号公報
しかしながら、これらの処理方法は、従来の発想法としては極めて妥当な手段と思われるが、加熱による処理はヤーコンの糖質、食物繊維等に作用して風味を変え、また、特定の化学薬品や添加物の使用はそれらの性質上から被処理物の風味が固定されてしまうことを意味し、風味をより良く変えるためにはさらなる物質の添加とその工程が必要となる。加えて、二次加工の過程には様々な方法が考えられるが、加工条件によってはFOSのフルクトースへの分解を起すことも否めず、FOSの長期間安定の維持に難がある。このことは、原料あるいは原素材段階における食品としての二次加工の選択性を著しく制限する。すなわちFOS分解酵素を失活させるために行う、加熱をはじめとして、化学薬物添加などの処理方法等では、二次加工にあたって、食品製品化の範囲が特定のものに狭められるものと考えられる。
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたもので、二次加工にあたって、食品製品化の範囲が特定のものに狭められる加熱処理や、化学薬品や添加物を使用することなく、黒褐色化を起さず、FOSの分解を抑制するヤーコンの安定化方法、ヤーコン塊根から色調の安定した商品化が可能な食品素材の製造方法及び安定化された食品素材を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意研究を行い、ヤーコン塊根部を冷水中で短期保存することによりヤーコンに付着していた酸化酵素が失活して黒褐色化が抑制され、蒸して可食化したアピオスと混合して破砕することによりFOSの単糖類への分解が抑制され、しかも破砕されたペーストまたはゲル状物は、両者の優れたヒトにおける健康機能促進成分を維持できることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を達成するに至った。
上記の目的を達成するため、本発明は下記の構成からなるものである。
(1) ヤーコン塊根部を温度約1℃〜10℃前後の冷水に短期保存して該ヤーコンに付着している酸化酵素の活性を抑制し、アピオスアメリカーナ塊根部を蒸して可食化した後、両者を混合破砕することにより、得られたペースト状またはゲル状物質中のヤーコンに含有されるフラクトオリゴ糖の分解を抑制することを特徴とするヤーコン中のフラクトオリゴ糖のアピオスアメリカーナによる安定化方法。
(2) 前記ヤーコン塊根部とアピオスアメリカーナ塊根部の混合比率が、重量比で90:10〜50:50の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の安定化方法。
(3) 前記(1)又は(2)記載のペーストまたはゲル状破砕物を温度約マイナス30℃で冷凍保存することを特徴とする二次加工用食品素材の製造方法。
(4) 前記(1)又は(2)記載のペーストまたはゲル状破砕物を温度約75℃〜120℃で30秒以内の間で薄膜急速熱乾燥し、フレーク状または顆粒状または粉末状に形成することを特徴とする食品素材の製造方法。
(5) 冷水処理で酸化酵素の活性が抑制されたヤーコンと、蒸して可食化したアピオスアメリカーナとを混合破砕してペースト状またはゲル状にさせて得られることを特徴とするヤーコン中のフラクトオリゴ糖がアピオスアメリカーナにより安定化された食品素材。(6) 前記酸化酵素の活性が抑制されたヤーコンと可食化したアピオスアメリカーナの混合比率が、重量比で90:10〜50:50の範囲内であることを特徴とする請求項5記載の安定化された食品素材。
(7) 前記(5)又は(6)記載のヤーコンに含有されるフラクトオリゴ糖がアピオスアメリカーナにより安定化されたペースト状またはゲル状の食品素材を、冷凍保存することで得られることを特徴とする二次加工用食品素材。
(8) 前記(5)又は(6)記載のペースト状またはゲル状の粉砕物を薄膜急速乾燥してフレーク状または顆粒状または粉末状の形態で得られることを特徴とする食品素材。
上記した本発明のヤーコン中のフラクトオリゴ糖のアピオスアメリカーナによる安定化方法、及びヤーコン中のフラクトオリゴ糖がアピオスアメリカーナにより安定化された食品素材、更にはこれらに関連する発明においては、ヤーコンに混合されるアピオスアメリカーナの重量比率が、混合物全重量の10〜50重量%であることが好ましい範囲であるが、この好ましい混合比率に限定する理由については、後記の実施例において具体的事実に基づいて説明する。
上記の構成よりなる本発明において、ヤーコンに含有されるFOSが酸化作用により単糖に分解することが、アピオスと混合してこれと接触する環境下で破砕することにより防止されて安定化する作用機構は、次のように推定される。
アピオスにDDMP−共役サポニンが含有されていることは、例えば、Kiyochika Hoshikawa他,Biosci.Biotech.Biochem.,1994,58,2248−2250に記載されている。そして、サポニンがトリテルペン(トリテルペノイド)またはステロイドの配糖体であることも知られている。更に、豆科植物に含有されているトリテルペノイドが、FOSの単糖類への分解を有効に抑制することもよく知られている。
これらの知見より、本発明においても、トリテルペンに単糖体がエーテル結合した配糖体であってもトリテルペンと同様にFOSのフルクトースへの分解を有効に防止したものと考えられる。そしてFOSは0−フェノールオキシダーゼなどの褐変酵素により褐変せず、グルコースやフラクトースなどの単糖類が褐変の原因物質であるから、FOSのアビオスによる安定化により褐色変化も防止される。
本発明は、上記のFOSのアピオスによる安定化による褐変の防止と、温度約1℃〜10℃前後の冷水中での短期保存による黒褐変化の防止との組み合わせにより、色調の良い商品化に適した食品素材の製造に成功したものである
本発明によれば、アピオスに含まれるサポニン中のトリテルペン配糖体によって生ヤーコン中のFOSの減少を抑制し成分の安定化が可能となり、酵素阻害剤等の薬剤を使用せずに、原植物の色調を損うことなく、二次加工製品に至る適応性に優れた食品素材を製造できる。すなわち、アピオスを混合したことによりヤーコンの加熱や添加物混入を不要とし、ヤーコンのFOS分解を抑制したことによって安定化がはかられる。したがって特殊な方法あるいは手間のかかる工程を不要とし、有効成分を逸することなく前加工の処理過程を大幅に軽減できると同時に、保存性に優れた状態を保ち、二次加工食品に利用する場合において広範かつ多岐にわたる簡便で自在な適応が実現できる。
また、ヒトにおける健康機能性に関しては、アピオスとヤーコンが有する食物繊維をはじめ、ヤーコンではポリフェノール、アピオスではトリテルペノイドによる活性酸素除去能について、両者による相乗作用が期待され、また両者に含有される各種ミネラルおよびビタミン類などの可食成分のすべてを包含させることに成功した。
かかる方法において、難消化性糖質であるFOSの摂取による整腸作用の促進と同時に、免疫機能の賦活作用や感染症の予防など、ヒトの健康増進の機能性を向上せしめることができる。特に興味を引くことはFOSに抗体産生活性があるとされることで、動物実験における脾臓リンパ球や腸間膜リンパ節リンパ球において有意に高い抗体産生能が知られ(前記非特許文献2参照)、なかんづくB細胞の抗体産生増強作用が期待される。
さらにFOSがカルシウム、マグネシウム、鉄分などのミネラル吸収を促進する効果を有することが報告されているなど(前記非特許文献1参照)、生活習慣病をはじめ、特に女性の骨粗ショウ症を招く慢性的なカルシウム不足とミネラル摂取のバランスを考慮した場合、他の食物を摂取する際においては、アピオスとヤーコンが有する特異な機能成分がカルシウム吸収の促進要素として働くことが期待される。これのみならず、本発明は天然素材だけで生成していることから、二次加工における利点に富むとともに、商品価値に極めて優れた、良質な健康促進食品製造の原素材として提供できるという利点も有する。
以下に、本発明のヤーコンに含有されるFOSのアピオスによる安定化方法、及びこの安定化物による食品素材の製造方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る安定化方法及び食品素材の製造工程のフローチャートである。
図1において、ヤーコンの収穫・洗浄を示す工程1、アピオスの収穫・洗浄・蒸し処理の工程2、両者の混合比率の計測の工程3、及びその破砕混合処理の工程4、更に非連続生産方式(オフライン方式)でのペーストあるいはゲル状冷凍保存の工程5までを一次工程(原素材加工工程)とする。なお、連続生産方式(オンライン方式)においては、この工程5は必須の工程ではなく省略することができる。
この工程4または工程5の後の破砕物の薄膜急速熱乾燥の工程6、及びフレークまたは顆粒状製品完成の工程7、あるいは工程4または工程5の後の二次加工応用冷凍保存の工程8の3工程を二次工程(製品応用加工工程)とする。
次に各工程について要点を説明する。
工程1においては、ヤーコン塊根部を収穫・洗浄し、一次加工のため温度約5℃の冷水中で短期保存する。尚、一次加工のための温度は1℃〜10℃前後の冷水中で短期保存したものでもよい。
工程2においては、アピオス塊根部を収穫・洗浄し、30分程度蒸したのち、一次加工のために短期保存する。30分程度の蒸し処理とは、生の状態のアピオスが可食状態に至る煮沸水蒸気による過熱時間を指す。この蒸し処理により、特有の非水溶性のガム状物質がアピオスの表皮下にあって洗浄を初め調理も厄介であり、しかも薬理成分は芋(塊根部)全体に分布しているが、特にこの部位に凝縮しているため、除去せずに活用する必要があるという難点も一挙に解決する。尚、30分程度の蒸しは可食状態であれば時間はこれに限定されない。
工程3においては、ヤーコンとアピオスの混合比率を、食品素材としての色調やヒトにおける健康機能促進成分を考慮して適当な比率を選定し、固定する。
工程4においては、ヤーコンとアピオスの適切な比率の混合物を、ヤーコンの破砕物がアピオスの破砕物と接触可能な環境下で破砕することにより、ヤーコンに含有されているFOSがアピオスに含有されているトリテルペン配糖体による酸化酵素の失活によりフルクトース(単糖)に分解されることを抑止すると推定される。なお、破砕機としては、フードプロセッサーが好ましいものとして挙げられるが、これに限定されるものではない。
工程5においては、非連続生産方式(オフライン方式)においてのみ使用されるものであって、工程4で生成した素材または原料としてのペーストを、マイナス30℃前後の低温で一時的に冷凍保存する。こうすることにより、すなわち、可及的迅速な冷凍保存によりFOSの分解の安定的防止と酵素酸化の阻害による褐色変化を防止できる。なお、連続生産方式(オンライン方式)ではこの工程5は不要であって、常温で短時間内に工程4から直接工程6または工程8へ移行することができる。尚、冷凍保存の温度はマイナス30℃に限定されるものではなく、冷凍保存の状態であればこれに限定されない。
工程6においては、オフライン方式においては上記工程5の冷凍保存品を、オンライン方式の作業においては、工程4のペースト状またはゲル状の生成物を直接、75℃前後の温度にて25秒間加熱装置による薄膜急速熱乾燥する。このための乾燥装置としてはダブルドラムドライヤーが好ましいものとして挙げられる。なお、加熱方式としては、洗浄時からペースト処理に至る工程で必然的に生じる汚染対策として、一般的な雑菌を殺菌するために必要な十分な温度が取れる点から薄膜急速熱乾燥が好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではなく、フリーズドライング方式も考慮の対象に入る。尚、薄膜急速熱乾燥の温度及び時間はこれに限定されるものではなく75℃〜120℃前後で30秒以内の加熱でもよい。
工程7においては、上記の工程6における熱乾燥の結果として、ペーストまたはゲル状物からフレーク状または顆状粒または粉末状で食品化または食品素材化が行われる。
また工程8においては、上記工程6と同様に、工程5の冷凍保存品あるいは工程4のペースト状またはゲル状物を、その他種々の食品製品化応用のため、二次加工を目的とした素材もしくは原料として比較的長期間にわたって冷凍保存する。
以下に、本発明を実施例により詳細かつ具体的に説明する。なお、実施例において%は全て重量%を意味する。
実施例1及び比較例1
ヤーコンの破砕処理に伴う黒褐色化の防止、及びFOSの酵素酸化分解のアピオスによる抑制、安定化を実証するために、上記の図1に示した工程フロチャートに従い、工程1から工程7に至る一次工程と二次工程を、非連続式のオフライン作業方式によって、ヤーコンのみの破砕処理(比較例1)と、生ヤーコン67%と蒸したアピオスを33%の混合比にて(実施例1)破砕混合処理の両方について実験を行った。
工程1の洗浄後のヤーコンを1℃〜5℃前後の冷水中で短期保存することにより、ヤーコンに付着している酸化酵素を失活させ、ヤーコンの黒褐変色化を防止できた。しかし、ヤーコンに含有されているFOSが酸化酵素の作用により単糖(フルクトース)に分解し、これが褐色変化の原因の一つであることも知られている。そこで比較例1及び実施例1のそれぞれ工程5で得たペースト状物を室温保管した試料について、保管日数の経過に伴うFOSの加水分解の経過に伴う減少について試験した。尚、冷水中の保存は1℃〜5℃に限定されず1℃〜10℃前後でも可能であるが、10℃を超えるものは加水分解が生ずるので好ましくない。
比較例1のヤーコンを単独破砕処理した試料のFOS減少結果を図2に示す。FOSは、先にも記述したとおり、主として1−ケストース(b)、ニストース(c)及び1F−β−フラクトフラノシルニストース(d)とから構成されており、これが単糖のフルクトース(a)に分解する経過を、横軸を経過時間(日)に採り、縦軸を7日毎のa+b+c+d=100%換算した成分比(%)に採り、図2に示した。図2より、b+c+dの合計であるFOSが最初ヤーコンの糖質の約90%を占めていたのに、日数の経過と共に著しく減少し、4週間(28日)後には約35%に減少し、一方フルクトース(a)が最初の9%から28日後には64%と約7倍に増大することがわかる。変色し易いフルクトースが大幅に増加したため、ペースト状試料は黒褐色に変色した。
実施例1のヤーコン67%とアピオス33%を破砕混合して図1に示した工程5で得られたペースト状試料についても、比較例1と同様にFOSが分解して生成したフルクトースの生成量の経時変化について図3に示す。図3においては、横軸を経過日数とし、縦軸を図2に示した成分比の中のフルクトース生成分比を指標とし、フルクトース生成比(%)として示した。なお、図3においては、アピオスのFOS安定化の効果を明瞭にするために、図2のヤーコン単独破砕(比較例1)のフルクトース生成線をaとし、アピオス混合破砕のヤーコンのフルクトース生成線をa’とし、両者を比較し易いように一緒に示した。比較例1のフルクトース(a)の生成比は、最初の9%から28日後には64%と約7倍に増大していたのに対し、実施例1のフルクトース(a’)の生成比は28比後には32%に約3.5倍に増大したものの、比較例1に比べて増加率は半減し、ペースト状試料の褐色変化も可成り少なかった。なお、この結果は室温保管した試料についての結果であり、マイナス35℃前後で冷凍保存した試料の外観は褐変色が起こらなかった。
更に、上記の工程5で得られた実施例1及び比較例1の各ペースト状試料を1週間冷凍保存した後、ジョンソンボイラ株式会社のダブルドラムドライヤーを使用して、蒸気圧力0.4MPa、ドラム温度140℃、回転数1.5rpm、原料処理量30kg/mHという乾燥条件で乾燥した結果を表1に示す。比較例1のペースト状試料は乾燥時の熱によって褐変反応が生じたが、実施例1の試料では変色反応が生じなかった。
上記の乾燥によって得られた実施例1のフレーク状試料の栄養学的分析結果を表2に示す。分析結果はヒトの腸管エコロジーに有益な結果を示した。
上記した図3において、ヤーコンにアピオスを破砕混合することによりヤーコン中のFOSの分解が抑制され、安定化することをフルクトースの生成増加率の減少から間接的に実証した。
ところで、アピオスの混合比率を変化させることにより、ヤーコン中のFOSの分解率がどのように変化することを知ることは、双方の重量単価を鑑みるにアピオスがヤーコンに比べて現状においてはおよそ6倍と比較的高価格であるという現状からも意義の高いことと考えられる。
一方、FOSを構成する3種類の成分に関して、図2に見られるように、1F−β−フラクトフラノシルニストース(d)の成分比(%)が、3成分中では下方ではあるものの中間にあることが分かる。しかして、成分比(%)の算出は、単に高速液体クロマトグラフィ(HPLC)のピーク面積を測定するだけでなく、あらかじめ標準試料を用いてピーク高さあるいはピーク面積を測定することにより検量線を画き、それと比較することにより各糖の感度比をあらかじめ求めて、ピークを感度比で補正する等の手間と労力を要し、試料の作製、調整等を考慮すると、全成分の分解過程を追跡するには多大な時間を要することが明らかである。この結果、本発明においては、FOSの分解率に対するアピオスの混合比率の影響については、3種類の構成成分のうち、上記したように中間に存在する1F−β−フラクトフラノシルニストース(d)の分解率の追跡により代表させることとした。このことは、図3におけるフルクトース(a)による間接的証明よりも実証的であると考えられる。
ヤーコンに対するアピオスの混合比率を、95:5、90:10、70:30、50:50(いずれも重量比)に変化させて、成分(d)の経過1日目、14日目及び28日目における分解率の経時的変化を表3に示す。
測定値の標準偏差が約±5%有ることを考慮すると、各計測値ともヤーコン中のFOSの一成分1F−β−フルクトフラノシルニストースの経過28日目まで分解がアピオスの混合により、混合比率95:5を除いて効果的に抑制されていることが分かる。混合比率95:5では経過14日目で16.4重量%にまで低下し、可成り分解が進みアピオスの混合による分解抑制効果が小さいと言える。一方、混合比率50:50では混合比率70:30に比べて分解抑制効率が若干低下するが、アピオスがヤーコンに比べて現状においてはおよそ6倍と比較的高価格であることを考慮すると、混合比率70:30前後が最適である。
上記の記述内容から下記のことが言える。ヤーコンもアピオスも収穫期が両者とも秋であり、特にヤーコンは収穫期が概ね11月であり、収穫直後はFOSの含有量が最大であり、ヒトの健康機能促進能に対する薬効が最大であるが、1ヶ月経過するとFOSが低分子の単糖に分解して甘味は増すがFOSが減少して薬効が低下する。1ヶ月半〜2ヶ月経過すると糖度は14〜15度になり、おいしい食べ頃となるが薬能は殆ど消滅する。2月に入ると腐敗が始まり、保存できるのは導入種ではせいぜい3月一杯である。その結果、通年摂取できないという難点があった。
本発明のヤーコンのアピオスによる安定化においては、収穫直後のヤーコンを冷水中で短期保存し、これを蒸して可食状態にしたアピオスと破砕混合して、薄膜急速熱乾燥して製品化するか、二次加工応用冷凍保存するので、ヤーコンとアピオスの両者の有する薬理効果成分をそのまま維持し、かつ両者の相乗的薬能を発揮させて、見た目にも食味にも商品価値の優れた食品素材として、通年容易に摂取可能な加工技術を確立することができた。
本発明に係るアピオスによって安定化されたヤーコンは、フレーク状又は顆粒状の製品として、またはこれを錠剤などに二次加工して良質な健康促進食品としての用途を有する。また、二次加工応用冷凍保存ペーストまたはゲル状物は、アイスクリームやソフトクリームなどのシャーベット状、あるいはプリンやゼリー状、あるいはドリンク状、さらにFOSに加えてポリフェノールも多量に含有しているのでワイン等の発酵酒や発酵飲料の食品加工素材としての広い用途を有する。
本発明の実施の形態の工程フローチャートである。 ヤーコンの酵素加水分解によるFOSの減少と単糖の増加を示すグラフである。 ヤーコン及びアピオスにより安定化されたヤーコンの単糖の生成比(%)の経時的増加の比較を示すグラフである。 FOSの各構成オリゴ糖の化学構造式を示す図である。

Claims (8)

  1. ヤーコン塊根部を温度約1℃〜10℃前後の冷水に短期保存して該ヤーコンに付着している酸化酵素の活性を抑制し、アピオスアメリカーナ塊根部を蒸して可食化した後、両者を混合破砕することにより、得られたペーストまたはゲル状物質中のヤーコンに含有されるフラクトオリゴ糖の分解を抑制することを特徴とするヤーコン中のフラクトオリゴ糖のアピオスアメリカーナによる安定化方法。
  2. 前記ヤーコン塊根部とアピオスアメリカーナ塊根部の混合比率が、重量比で90:10〜50:50の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の安定化方法。
  3. 請求項1または2記載のペーストまたはゲル状破砕物を冷凍保存することを特徴とする二次加工用食品素材の製造方法。
  4. 請求項1又は2記載のペーストまたはゲル状破砕物を温度約75℃〜120℃で30秒以内の間で薄膜急速熱乾燥し、フレーク状または顆粒状または粉末状に形成することを特徴とする食品素材の製造方法。
  5. 冷水処理で酸化酵素の活性が抑制されたヤーコンと、蒸して可食化したアピオスアメリカーナとを混合破砕してペースト状またはゲル状にさせて得られることを特徴とするヤーコン中のフラクトオリゴ糖がアピオスアメリカーナにより安定化された食品素材。
  6. 前記酸化酵素の活性が抑制されたヤーコンと可食化したアピオスアメリカーナの混合比率が、重量比で90:10〜50:50の範囲内であることを特徴とする請求項5記載の安定化された食品素材。
  7. 請求項5又は6記載のヤーコンに含有されるフラクトオリゴ糖がアピオスアメリカーナにより安定化されたペースト状またはゲル状の食品素材を、冷凍保存することで得られることを特徴とする二次加工用食品素材。
  8. 請求項5又は6記載のペースト状またはゲル状の粉砕物を薄膜急速熱乾燥してフレーク状または顆粒状または粉末状の形態で得られることを特徴とする食品素材。
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