JP4472917B2 - アミノオキシ化合物、ヒドロキシアミノ化合物又はヒドロキシケトン化合物の製造方法 - Google Patents

アミノオキシ化合物、ヒドロキシアミノ化合物又はヒドロキシケトン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニトロソ化合物への位置選択的かつエナンチオ選択的求核付加反応によりニトロソ化合物からアミノオキシ化合物又はヒドロキシアミノ化合物を製造する方法や、ニトロソ化合物への位置選択的かつエナンチオ選択的求核付加反応用触媒や、アミノオキシ化合物からヒドロキシケトン化合物を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生理活性物質の多くはその分子内にヘテロ原子、とりわけ窒素原子および酸素原子を含んでおり、医薬、農薬、工業薬品等の技術分野において有用な種々の化合物を合成するため、窒素原子および酸素原子を分子内に導入する新しい有機合成反応の開発が活発に行なわれた結果、ヒドロキシル化反応は発展期を迎え、特に、求核付加反応の求電子剤の中でも、C=O結合を有するカルボニル化合物やC=N結合を有するイミン類については、実用的な新反応が数多く見出されている。N=O結合については、シリルエノールエーテルとニトロソベンゼンとの室温で迅速な反応(例えば、非特許文献1参照。)や、エノラートとα−クロロニトロソ化合物との反応(例えば、非特許文献2参照。)が報告されている。
【0003】
一方、光学活性を有する特定のキラルルイス酸を触媒として、エナンチオ選択的反応により2位が置換されたピラン誘導体を得る方法として、安価な原料から容易に調製することができる不斉触媒を用い、アセトアルデヒドのように嵩が小さく、触媒との電子的相互作用を期待することができない単純なアルデヒドとダニシェフスキー型ジエンとを高エナンチオ選択的不斉ヘテロディールズ=アルダー反応させて2位が置換された光学活性2,3−ジヒドロ−4H−ピラン−4−オンを製造する効率的な製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−77760号公報
【非特許文献1】
Sasaki, T.; Ishibashi, Y.; Ohno著「M. Chem. Lett. 」日本化学会出版、1983年、p.863
【非特許文献2】
Oppolzer, W.; Tamura著「O. Tetrahedron Lett. 」PERGAMON出版、1990年、p.991
【0005】
しかしながら、これらの文献に記載されるN=O結合については特定の極限られた芳香族ケトンエノラートしか得られておらず、N=O結合を有するニトロソ化合物と互変異性体であるケトンエノラートとの反応において、アミノオキシ化合物又はヒドロキシアミノ化合物のいずれか一方を選択的に得る求核付加反応については検討がなされていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、分子内に窒素原子、酸素原子等のヘテロ原子を有する生理活性物質の合成へ導くことができる化合物を選択的に合成することを目的とし、N=O結合を有するニトロソ化合物とエノラートとを出発物質として、ニトロソ化合物へのエノラートの位置選択的かつエナンチオ選択的求核付加反応を過酷な条件を必要とせずに容易に進行させることにより、ヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物のうちいずれか一方の化合物を選択して得ることができるヒドロキシアミノ化合物やアミノオキシ化合物の製造方法や、かかるニトロソ化合物へのエノラートの位置選択的かつエナンチオ選択的求核付加反応を促進させ得るアミノオキシ化合物又はヒドロキシアミノ化合物選択的合成触媒を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ニトロソ化合物の求核付加反応について鋭意研究し、ニトロソ化合物と、シリルエノールエーテル化合物とを特定のルイス酸触媒存在下で反応させることにより、ニトロソ化合物への位置選択的求核付加を生じさせることができるとの知見を得、ヒドロキシアミノ化合物又はアミノオキシ化合物を位置選択的に合成する製造方法について既に発明している(特願2002−120795号)。本発明者らは、更にニトロソ化合物の求核付加反応についての研究を推進し、ニトソロ化合物とエノラートとを所定のキラルルイス酸触媒の存在下で反応させることにより、N=O結合に対し位置選択的にかつエナンチオ選択的にエノラートを求核付加させてアミノオキシ化合物を合成することができ、一方、ニトソロ化合物とエノラートとを特定の溶媒中で触媒を用いずに反応させることにより、ヒロドキシアミノ化合物を選択的に合成することができることを見い出し、更に、選択的に得られたアミノオキシ化合物のN−O結合を開裂することによりヒドロキシケトン化合物を選択的に得ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、一般式(I)
1NO (I)
[式中、R1は未置換若しくは置換基を有するフェニル基又はアルキル基を表す。]で示されるニトロソ化合物と、一般式(II)
【0009】
【化8】
【0010】
[式中、R、R、Rは、水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6の非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基を表し、RとRとは結合してC5〜C7の環を形成してもよく、Mは、スズ原子を表し、LnはMで表される原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表す。]で示されるエノラート化合物とを、銀化合物の(R)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、「R−BINAP」という)錯体、式(VIII)において、(a)で表される化合物(以下、「R−TolBINAP」という)錯体、(b)で表される化合物(以下、「S,S−メチル−DUPHOS」という)錯体、(c)で表される化合物(以下、「R,S−BPPFA」という)錯体及び(d)で表される化合物(以下、「R−MOP」という)錯体から選ばれるキラルルイス酸を含有する触媒の存在下で反応させることを特徴とする一般式(III)
【0011】
【化9】
【0012】
[式中、Rは一般式(I)におけるRと同じものを表し、R、R、Rは一般式(II)におけるR、R、Rと同じものを表す。]で示されるアミノオキシ化合物の製造方法に関し、好ましくは、一般式(I)で表されるニトロソ化合物が、未置換若しくは置換基を有するニトロソベンゼンであることを特徴とする請求項1記載のアミノオキシ化合物の製造方法(請求項2)や、一般式(II)におけるRとRとが結合して形成される環が、5員環又は6員環であることを特徴する請求項1又は2記載のアミノオキシ化合物の製造方法(請求項3)や、一般式(II)におけるMで表されるスズ原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表すLnが、3個の独立したC1〜C6のアルキル基を表すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のアミノオキシ化合物の製造方法(請求項4)や、キラルルイス酸が、銀化合物のR−BINAP錯体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のアミノオキシ化合物の製造方法(請求項5)や、銀化合物のR−BINAP錯体が、銀トリフラート、四フッ化ホウ酸銀又は過塩素酸銀からなる群から選ばれた1種又は2種以上の銀化合物のR−BINAP錯体であることを特徴とする請求項5記載のアミノオキシ化合物の製造方法(請求項6)に関する。
【0013】
また、本発明は、一般式(I)
1NO (I)
[式中、R1は未置換若しくは置換基を有するフェニル基又はアルキル基を表す。]で示されるニトロソ化合物と、一般式(V)
【0014】
【化10】
【0015】
[式中、R2〜R4は、水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6の非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基を表し、R2とR3とは結合してC5〜C7の環を形成してもよく、Mは金属原子を表し、LnはMで表される金属原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表す。]で示されるエノラート化合物とを、極性溶媒中無触媒で反応させることを特徴とする一般式(IV)
【0016】
【化11】
【0017】
[式中、R1は一般式(I)におけるR1と同じものを表し、R2、R3、R4は一般式(V)におけるR2、R3、R4と同じものを表す。]で示されるヒドロキシアミノ化合物の製造方法(請求項7)に関し、好ましくは、一般式(I)で表されるニトロソ化合物が、未置換若しくは置換基を有するニトロソベンゼンであることを特徴とする請求項7記載のヒドロキシアミノ化合物の製造方法(請求項8)や、一般式(V)におけるMで表される金属原子が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム又はスズ原子のいずれかであることを特徴とする請求項7又は8記載のヒドロキシアミノ化合物の製造方法(請求項9)や、一般式(V)におけるR2とR3とが結合して形成される環が、5員環又は6員環であることを特徴する請求項7〜9のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物の製造方法(請求項10)や、極性溶媒がテトラヒドロフランであることを特徴とする請求項7〜10のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物の製造方法(請求項11)に関する。
【0018】
また、本発明は、一般式(III)
【0019】
【化12】
【0020】
[式中、Rは未置換若しくは置換基を有するフェニル基又はアルキル基を表し、R、R、Rは水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6の非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基を表し、RとRとは結合してC5〜C7の環を形成してもよい。]で示されるアミノオキシ化合物を硫酸銅存在下、メタノール溶媒中で反応させることを特徴とするヒドロキシケトン化合物の製造方法(請求項12)に関する。
【0021】
また、本発明は、銀化合物のR−BINAP錯体、R−TolBINAP錯体、S,S−メチル−DUPHOS錯体、R,S−BPPFA錯体及びR−MOP錯体から選ばれるキラルルイス酸を有効成分として含有し、一般式(I)
NO (I)
[式中、Rは未置換若しくは置換基を有するフェニル基又はアルキル基を表す。]で示されるニトロソ化合物と、一般式(II)
【0022】
【化13】
【0023】
[式中、R2、R3、R4は、水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6の非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基を表し、R2とR3とは結合してC5〜C7の環を形成してもよく、M1はスズ原子を表し、LnはM1で表される原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表す。]で示されるエノラート化合物とを反応させて、一般式(III)
【0024】
【化14】
【0025】
[式中、Rは一般式(I)におけるRと同じものを表し、R、R、Rは一般式(II)におけるR、R、Rと同じものを表す。]で示されるアミノオキシ化合物を選択的に合成することを特徴とするアミノオキシ化合物選択的合成用触媒(請求項13)に関し、好ましくは、一般式(I)で表されるニトロソ化合物が、未置換若しくは置換基を有するニトロソベンゼンであることを特徴とする請求項13記載のアミノオキシ化合物選択的合成用触媒(請求項14)や、一般式(II)におけるRとRとが結合して形成される環が、5員環又は6員環であることを特徴する請求項13又は14記載のアミノオキシ化合物選択的合成用触媒(請求項15)や、一般式(II)におけるMで表される原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表すLnが、3個の独立したC1〜C6のアルキル基を表すことを特徴とする請求項13〜15のいずれか記載のアミノオキシ化合物選択的合成用触媒(請求項16)や、キラルルイス酸が、銀化合物のR−BINAP錯体であることを特徴とする請求項13〜16のいずれか記載のアミノオキシ化合物選択的合成用触媒(請求項17)や、銀化合物のR−BINAP錯体が、銀トリフラート、四フッ化ホウ酸銀又は過塩素酸銀からなる群から選ばれた1種又は2種以上の銀化合物のR−BINAP錯体であることを特徴とする請求項17記載のアミノオキシ化合物選択的合成用触媒(請求項18)に関する。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明のアミノオキシ化合物の製造方法は、一般式(I)(式中、R1は未置換若しくは置換基を有するフェニル基又はアルキル基を表す。)で示されるニトロソ化合物と、一般式(II)(式中、R2〜R4は、水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6の非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基を表し、R2とR3とは結合してC5〜C7の環を形成してもよく、M1は、スズ原子を表し、LnはM1で表される原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表す。)で示されるエノラート化合物とを、所定のキラルルイス酸を含有する触媒の存在下で反応させ、一般式(III)(式中、R1は一般式(I)におけるR1と同じものを表し、R2、R3、R4は一般式(II)におけるR2、R3、R4と同じものを表す。)で示されるアミノオキシ化合物を選択的に合成させる方法であれば、特に制限されるものではない。
【0027】
本発明に用いられるニトロソ化合物は、一般式(I)で表され、顕著な求電子性を有し、一般式(II)で表されるスズエノラートに対し求核付加反応を生ぜしめるニトロソ基を有するものであり、一般式(I)中、R1は未置換若しくは置換基を有するフェニル基又はアルキル基を表す。一般式(I)におけるR1がアルキル基であるアルキルニトロソ化合物としては、ニトロソ基が第三級炭素原子に結合しているものが好ましく、具体的には、2−ニトロソイソブタン、2−ニトロソ−2−メチルペンタン等を例示することができる。また、一般式(I)におけるR1がフェニル基である芳香族ニトロソ化合物としては、ニトロソベンゼンを例示することができる。これらのアルキルニトロソ化合物や芳香族ニトロソ化合物の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のアルコキシ基や、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子などを例示することができる。
【0028】
かかる置換基を有する芳香族ニトロソ化合物としては、具体的には、o−ニトロソトルエン、m−ニトロソトルエン、p−ニトロソトルエン、3,5−ジメチルニトロソベンゼン、o−ニトロソエチルベンゼン、o−ニトロソスチレン、o−ニトロソアニソール、m−ニトロソアニソール、p−ニトロソアニソール、o−ニトロソフェネトール、m−ニトロソフェネトール、p−ニトロソフェネトール、p−フルオロニトロソベンゼン、p−クロロニトロソベンゼン、p−ブロモニトロソベンゼン等を例示することができる。
【0029】
本発明に使用されるエノラート化合物は、一般式(II)で表され、式中、R2〜R4は、水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6の非環状化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基を表し、R2とR3とは相互に結合してC5〜C7の環を形成してもよく、M1は、スズ原子を表し、LnはM1で表される原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表すものであり、触媒として使用されるキラルルイス酸との組合せにおいて適宜選択される。かかる一般式(II)で表されるエノラート化合物は、式(VI)で表されるようにケトエノール互変異性体である。
【0030】
【化15】
【0031】
かかる一般式(II)で表されるエノラート化合物における一般式(II)中、R2〜R4としては、水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基が挙げられる。一般式(II)におけるR2〜R4で表わされるC1〜C6非環状炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基を具体的に挙げることができ、C3〜C6の環状炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基や、フェニル基の芳香族炭化水素基を具体的に挙げることができ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等を具体的に挙げることができる。
【0032】
かかる一般式(II)におけるR2〜R4が表すC1〜C6非環状炭化水素や、C3〜C6の環状炭化水素基における置換基としては、特に制限されるものではないが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基などや、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,4−キシル基、2,4,6−メシチル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、ベンジル基、フェネチル基等の芳香族炭化水素基などの環状炭化水素基を挙げることができる。
【0033】
また、一般式(II)におけるR2とR3とが相互に結合してC5〜C7の環を形成する場合の一般式(II)で表されるエノールとしては、1位の炭素に不飽和結合を有するエノール型と1位にオキソ基を有するケト型との互変異性体であれば、特に制限されるものではなく、かかるC5〜C7の環としては、そのエノール型として1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキシニル基、1−シクロヘプチニル基、ビシクロ[2.2.1]−1−ヘプチニル基、ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプチニル基等を挙げることができるが、C5又はC6の環が好ましい。
【0034】
更に、一般式(II)におけるR2とR3とが相互に結合して形成するC5〜C7の環における置換基としては、上記R2、R3が表すC1〜C6の非環状炭化水素基や、C3〜C6の環状炭化水素基における置換基と同様の置換基を挙げることができ、環状の置換基はR2とR3とが相互に結合して形成するC5〜C7の環に縮合したベンゼン環であってもよい。
【0035】
また、一般式(II)で表されるエノラート化合物の一般式(II)におけるLnは、M1で表されるスズ原子に結合し得る3個の独立した原子又は原子団であればいずれのものであってもよいが、相互に異なった又は同一のC1〜C6のアルキル基であることが好ましく、かかるC1〜C6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロル基、n−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができ、n−ブチル基が特に好ましい。
【0036】
このような一般式(II)で表されるエノラート化合物としては、具体的には、そのエノール型として、1−トリメチルスズオキシ−1−(n−ブチル)エチレン、1−トリメチルスズオキシ−1−(n−ブチル)−2−メチルエチレン、1−トリメチルスズオキシ−1−(n−ペンチル)エチレン、1−トリメチルスズオキシ−1−(n−ペンチル)−2−メチルエチレン、1−トリメチルスズ−1−(n−ヘキシル)エチレン、1−トリメチルスズオキシ−1−(n−ヘキシル)−2−メチルエチレン、1−トリメチルスズオキシ−1−シクロペンチルエチレン、1−トリメチルスズオキシ−1−シクロペンチル−2−メチルエチレン、1−トリメチルスズオキシ−1−シクロヘキシルエチレン、1−トリメチルスズオキシ−1−シクロヘキシル−2−メチルエチレン、1−トリメチルスズオキシ−1−フェニルエチレン、1−トリメチルスズオキシ−1−フェニル−2−メチルエチレン、1−トリメチルスズオキシ−1−シクロペンテン、1−トリメチルスズオキシ−2−メチル−1−シクロペンテン、1−トリメチルスズオキシ−1−インデン、1−トリメチルスズオキシ−2−メチル−1−インデン、1−トリメチルスズオキシ−1−シクロヘキセン、1−トリメチルスズオキシ−2−フェニル−1−シクロヘキセン、1−トリメチルスズオキシ−2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン、1−トリメチルスズオキシ−2−フェニル−1−シクロヘプテンを挙げることができる。
【0037】
本発明に使用される触媒として、所定のキラルルイス酸を含有する触媒が好ましい。所定のキラルルイス酸とは、光学活性を有する不斉構造を有し不斉誘導によりエノラート化合物に電子対受容体として作用してエノラート化合物のニトロソ化合物のN=O原子団に対する求核攻撃を促進させ、ケト型スズエノラートのα位とニトロソ化合物の酸素原子への付加を位置選択的かつエナンチオ選択的に促進させる触媒であり、この触媒作用により一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物が選択的に合成される。一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物が選択的に合成されるのは、通常、一般式(I)で表されるニトロソ化合物は単量体と窒素原子が相互に結合した二量体との混合物となっており、所定のキラルルイス酸の存在によりかかる二量体の生成が促進されることにより、式(VII)に示すように、ニトロソ化合物の酸素原子に一般式(II)で表されるエノラート化合物が結合し、一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物が生成すると考えられる。
【0038】
【化16】
【0039】
かかる一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物を合成する所定のキラルルイス酸触媒として、銀化合物のR−BINAP錯体を好適に例示することができる。銀化合物のR−BINAP錯体における銀化合物としては、特に制限されるものではなく、例えば、トリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸)の銀塩(AgOSO2CF3)(AgOTf)や、四フッ化ホウ酸銀(AgBF4)、六フッ化アンチモン酸の銀塩(AgSbF6)、六フッ化リン酸銀(AgPF6)、チオフラートの銀塩(AgNTf2)等の銀フッ化物や、過塩素酸銀や酢酸銀等が挙げられ、このうち特に銀トリフラート、四フッ化ホウ酸銀、過塩素酸銀等が好ましい。また、銀化合物のR−BINAP錯体におけるR−BINAPは2,2′−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1′−ビナフチル類のR構造の光学異性体であって、ビナフトールに、塩基存在下、パーフルオロアルキルスルホニルハライド又はパーフルオロアルカンスルホン酸無水物を反応させて、ジパーフルオロアルキルスルホネートを得、これを塩基及びニッケル触媒の存在下、ジフェニルホスフィンと反応させる等、公知の方法に準じて生成することができる。得られたR−BINAPから銀化合物との錯体を形成するには、R−BINAPをメタノール等の溶液とし、この溶液に銀化合物を添加する等の公知の方法によることができる。また、R−BINAPは市販のものを適用し、銀化合物のR−BINAP錯体を容易に生成することができる。
【0040】
また、銀化合物のR−TolBINAP錯体、S,S−メチル−DUPHOS錯体、R,S−BPPFA錯体、R−MOP錯体も光学活性を有する不斉構造を有し、キラルルイス酸触媒として好ましく、かかる錯体は式(VIII)に示すように、(a)〜(d)に示す構造を有し、市販のものを適用し、銀化合物と共に溶媒に添加して容易に銀塩の錯体として容易に生成することができる。
【0041】
【化17】
【0042】
かかるキラルルイス酸触媒は一般式(II)で表されるスズエノラート化合物との組合せにおいて適宜選択して使用される。一般式(II)で表されるスズエノラート化合物がニトロソ化合物の酸素原子に付加し一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物の選択的合成が緩和される場合は、スズエノラート化合物の使用量を過剰に、例えば、ニトロソ化合物に対して通常1当量使用されるところを2当量程度に増加したり、あるいは、ブチルスズアセテート(Bu2Sn(OAc)2)等のスズ化合物を触媒量添加することにより一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物を選択的に合成することができる。かかるキラルルイス酸触媒の使用量としては、ニトロソ化合物に対して5〜15mol%の範囲が好ましく、10mol%程度がより好ましい。
【0043】
尚、一定のキラルルイス酸触媒としては、後述する一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物を選択的に合成する触媒となり得るものもある。一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物を選択的に合成する触媒としては、銅化合物と式(VIII)(e)に示すS,S−イソプロピル−pybox錯体との化合物等を挙げることができ、銅化合物のS,S−イソプロピル−pybox錯体としての銅化合物は、例えば、トリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸)の銅塩(Cu(OSO2CF32)(Cu(OTf)2)等を挙げることができる。銅化合物のS,S−イソプロピル−pybox錯体は溶媒にS,S−イソプロピル−pybox錯体と銅化合物を添加して調製することができ、S,S−イソプロピル−pyboxは市販のものを適用することにより、銅化合物のS,S−イソプロピル−pybox錯体を調製することができる。
【0044】
本発明の上記一般式(I)で表されるニトロソ化合物と一般式(II)で表されるエノラート化合物との反応に用いられる溶媒としては、特に制限されるものではないが、使用するニトロソ化合物、スズエノラート化合物や、反応生成物のアミノオキシ化合物や、触媒との関係において、適宜選択することができる。溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香環をもつ溶媒、アセトニトリル等のニトリル溶媒等を使用することができ、これらの溶媒の1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらのうちで、特に、テトラヒドロフラン、メタノール等が好ましい。
【0045】
上記溶媒中で上記所定のキラルルイス酸触媒を使用して一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物を選択的に合成するためには、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中、上記のニトロソ化合物の溶媒溶液に、スズエノラート化合物を、ニトロソ化合物1molに対して、1mol程度添加し、この混合溶液に、キラルルイス酸触媒を5〜15mol%、好ましくは10mol%程度を、−78℃〜室温、好ましくは−78〜0℃前後の温度で添加することができる。この条件下で反応させることによりニトロソ化合物の酸素原子にケト型スズエノラート化合物のα位の求核付加が生じ、ヒドロキシアミノ化合物が選択的に合成される。反応後、飽和食塩水を添加して反応を終了させることができ、得られたアミノオキシ化合物の精製は、公知の従来の方法で行うことができる。
【0046】
本発明のニトロソ化合物への位置選択的かつエナンチオ選択的求核付加反応によって生成される一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物としては、具体的には、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロペンタノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロペンタノン、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−インダノン、2−(N−o−トリルアミノオキシ)−1−シクロペンタノン、2−(N−p−トリルアミノオキシ)−1−シクロペンタノン、2−[N−(3,5−キシル)アミノオキシ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−クロロフェニル)アミノオキシ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)アミノオキシ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(o−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロペンタノン、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロヘキサノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロヘキサノン、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−ベンゾ[e]シクロヘキサノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−ベンゾ[e]シクロヘキサノン、2−(N−o−トリルアミノオキシ)−1−シクロヘキサノン、2−(N−p−トリルアミノオキシ)−1−シクロヘキサノン、2−[N−(3,5−キシル)アミノオキシ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−クロロフェニル)アミノオキシ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)アミノオキシ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(o−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロヘキサノン等を例示することができる。
【0047】
更に、一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物としては、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロヘプタノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−シクロヘプタノン、2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−ベンゾ[f]シクロヘプタノン、2−メチル−2−(N−フェニルアミノオキシ)−1−ベンゾ[f]シクロヘプタノン、2−(N−o−トリルアミノオキシ)−1−シクロヘプタノン、2−(N−p−トリルアミノオキシ)−1−シクロヘプタノン、2−[N−(3,5−キシル)アミノオキシ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−クロロフェニル)アミノオキシ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)アミノオキシ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(o−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−アニソール)アミノオキシ]−1−シクロヘプタノン等を例示することができる。
【0048】
更に、一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物としては、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)フェニルアミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−o−トリルアミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−p−トリルアミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−(3,5−キシル)アミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−(p−クロロフェニル)アミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−(o−アニソール)アミン、N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブトキシ)−(p−アニソール)アミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)フェニルアミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−o−トリルアミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−p−トリルアミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−(3,5−キシル)アミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−(p−クロロフェニル)アミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−(o−アニソール)アミン、N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエトキシ)−(p−アニソール)アミン等を例示することができる。
【0049】
また、一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物を選択的に合成する方法として、本発明のヒドロキシアミノ化合物の製造方法は、一般式(I)で示されるニトロソ化合物と一般式(V)で示されるエノラート化合物とを、極性溶媒中無触媒で反応させることを特徴とする。
本発明のヒドロキシアミノ化合物の製造方法における一般式(I)で示されるニトロソ化合物としては、上述のアミノオキシ化合物又はヒドロキシアミノ化合物の製造方法における一般式(I)で表されるニトロソ化合物と同様のものを挙げることができるが、特に芳香族ニトロソ化合物が好ましい。かかる一般式(I)で表されるニトロソ化合物として、具体的に、ニトロソベンゼン、o−メチルニトロソベンゼン、p−ブロモニトロソベンゼン、p−メトキシニトロソベンゼン等を挙げることができ、これらのうち、ハロゲン原子等の求電子置換基を有する芳香族ニトロソ化合物、例えばp−ブロモニトロソベンゼン等がより好ましい。
【0050】
本発明の一般式(V)で示されるエノラート化合物としては、式中、R2〜R4は、水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6の非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基を表し、R2とR3とは結合してC5〜C7の環を形成してもよい。かかる一般式(V)におけるR2〜R4で表されるC1〜C6の非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基は、一般式(II)におけるR2〜R4と同様のものを表し、具体的に一般式(II)におけるR2〜R4と同様のものを例示することができ、これらの置換基としても一般式(II)におけるR2〜R4における場合と同様の置換基を挙げることができる。
【0051】
本発明の一般式(V)におけるMで表される金属原子としてはスズの他、アルカリ金属、アルカリ土類金属等であってもよいが、特に、スズ、リチウム、ナトリウム、マグネシウム等を好適なものとして例示することができる。また、一般式(V)におけるLnは、Mで表される金属原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表す。かかる原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子等を挙げることができ、原子団としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基等のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基などを挙げることができる。具体的には、Mで表される金属原子が四価のスズの場合3個のn−ブチル基等を挙げることができ、Mで表される金属原子が二価のマグネシウムの場合1個のイソプロピル基や臭素原子等を挙げることができ、Mで表される金属原子が一価のリチウム、ナトリウム等ではLnとして表される原子又は原子団は存在しない。
【0052】
本発明の一般式(V)で表されるエノラート化合物は、目的とするエノラート化合物に相当するエノール化合物と、目的とするエノラート化合物を構成する金属を含有する金属アミドとを溶媒中で混合することにより、例えば、エノール化合物1当量に対して金属アミド1.1当量等を混合して調製することができる。リチウムエノラートの場合は、例えば、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)とエノール化合物とを混合し、マグネシウムエノラートの場合は、例えば、ブロモマグネシウム−N,N−ジイソプロピルアミドとエノール化合物とを混合し、ナトリウムエノラートの場合はナトリウムヘキサメチルジシラザン(HMDS)とエノール化合物とを混合することにより調製することができる。
【0053】
このような一般式(V)で表されるエノラート化合物としては、具体的には、そのエノール型として、上記に具体的に例示したスズエノラートの他、1−トリブチルスズオキシ−1−フェニル−2−メチルエチレン、1−トリブチルスズオキシ−1−エチル−2−メチルエチレン、1−トリブチルスズオキシ−1−シクロペンテン、1−トリブチルスズオキシ−2−メチル−1−シクロペンテン、1−トリブチルスズオキシ−1−インデン、1−トリブチルスズオキシ−2−メチル−1−インデン、1−トリブチルスズオキシ−1−シクロヘキセン、1−トリブチルスズオキシ−2−フェニル−1−シクロヘキセン、1−トリブチルスズオキシ−2−メチル−1−シクロヘキセン、1−トリブチルスズオキシ−1−シクロヘプテン、1−トリブチルスズオキシ−2−フェニル−1−シクロヘプテン、1−トリブチルスズオキシ−3,4−ジヒドロナフタリン等を挙げることができる。
【0054】
更に、一般式(V)で表されるエノラート化合物としては、具体的には、そのエノール型として、リチウムオキシ−1−(t−ブチル)−2−メチルエチレン、リチウムオキシ−1−フェニルエチレン、リチウムオキシ−1−フェニル−2−メチルエチレン、リチウムオキシ−1−メトキシ−2−メチルエチレン、リチウムオキシ−1−(n−ペンチル)エチレン、リチウムオキシ−1−(n−ペンチル)−2−メチルエチレン、リチウムオキシ−1−シクロペンチルエチレン、リチウムオキシ−1−シクロヘキシルエチレン、リチウムオキシ−1−シクロペンテン、リチウムオキシ−2−メチル−1−シクロペンテン、リチウムオキシ−1−インデン、リチウムオキシ−2−メチル−1−インデン、リチウムオキシ−1−シクロヘキセン、リチウムオキシ−2−メチル−1−シクロヘキセン、リチウムオキシ−2、6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン、リチウムオキシ−2−フェニル−1−シクロヘキセン、リチウムオキシ−2−フェニル−1−シクロヘプテン、リチウムオキシ−3,4−ジヒドロナフタリン、リチウムオキシ−2−メチル−3,4−ジヒドロナフタリン等を挙げることができ、上記リチウムをナトリウムに変換したエノラート化合物を挙げることができる。
【0055】
更に、一般式(V)で表されるエノラート化合物としては、具体的には、そのエノール型として、1−ブチルマグネシウムオキシ−1−(t−ブチル)−2−メチルエチレン、1−ブチルマグネシウムオキシ−1−フェニルエチレン、1−ブチルマグネシウムオキシ−1−フェニル−2−メチルエチレン、1−ブチルマグネシウムオキシ−1−メトキシ−2−メチルエチレン、1−ブチルマグネシウムオキシ−1−(n−ペンチル)エチレン、1−ブチルマグネシウムオキシ−1−(n−ペンチル)−2−メチルエチレン、1−ブチルマグネシウムオキシー1−シクロペンチルエチレン、1−ブチルマグネシウムオキシ−1−シクロヘキシルエチレン、1−ブチルマグネシウムオキシ−1−シクロペンテン、1−ブチルマグネシウムオキシ−2−メチル−1−シクロペンテン、1−ブチルマグネシウムオキシ−1−インデン、1−ブチルマグネシウムオキシ−2−メチル−1−インデン、1−ブチルマグネシウムオキシ−1−シクロヘキセン、1−ブチルマグネシウムオキシ−2−メチル−1−シクロヘキセン、1−ブチルマグネシウムオキシ−2、6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン、1−ブチルマグネシウムオキシ−2−フェニル−1−シクロヘキセン、1−ブチルマグネシウムオキシ−2−フェニル−1−シクロヘプテン、1−ブチルマグネシウムオキシ−3,4−ジヒドロナフタリン、1−ブチルマグネシウムオキシ−2−メチル−3,4−ジヒドロナフタリン等を挙げることができる。
【0056】
本発明に使用される極性溶媒は、一般式(I)で表されるニトロソ化合物の窒素原子と一般式(V)で表されるエノラート化合物のα位とを選択的に結合させ、一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物の合成を促進させる作用を有する。かかる極性溶媒としては特に制限されるものではないが、THF、ジエチルエーテル等が好ましい。かかる溶媒中においては、一般式(I)で表されるニトロソ化合物が単量体となり、式(IX)に示すように、一般式(I)で表されるニトロソ化合物の窒素原子に一般式(V)で表されるエノラート化合物が結合し、一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物が選択的に合成される。
【0057】
【化18】
【0058】
かかる溶媒を用いて一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物を合成するには、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中、−78℃〜室温、好ましくは−78〜0℃前後の温度で、一般式(I)で表されるニトロソ化合物を添加し、一般式(V)で表されるエノラート化合物を、ニトロソ化合物1molに対して、1mol程度添加することにより行なうことができる。かかる溶媒中において、一般式(I)で表されるニトロソ化合物が単量体で存在し、エノラート化合物のα位とニトロソ化合物の窒素原子との付加反応を位置選択的かつエナンチオ選択的に促進させ、一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物が選択的に合成される。一般式(V)で表されるスズエノラート化合物がニトロソ化合物の酸素原子に付加し一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物の選択的合成が緩和される場合は、エノラート化合物の使用量を過剰に、例えば、ニトロソ化合物に対して1当量のところを2当量程度に増加することにより一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物を選択的に合成することができる。
【0059】
本発明のニトロソ化合物への位置選択的かつエナンチオ選択的求核付加反応によって生成される一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物としては、具体的には、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロペンタノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロペンタノン、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−インダノン、2−(N−o−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロペンタノン、2−(N−p−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロペンタノン、2−[N−(3,5−キシル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−クロロフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(o−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロペンタノン、2−[N−(p−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロペンタノン、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘキサノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘキサノン、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−ベンゾ[e]シクロヘキサノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−ベンゾ[e]シクロヘキサノン、2−(N−o−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘキサノン、2−(N−p−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘキサノン、2−[N−(3,5−キシル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−クロロフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(o−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘキサノン、2−[N−(p−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘキサノン等を例示することができる。
【0060】
更に、一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物としては、具体的には、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘプタノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘプタノン、2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−ベンゾ[f]シクロヘプタノン、2−メチル−2−(N−フェニルヒドロキシアミノ)−1−ベンゾ[f]シクロヘプタノン、2−(N−o−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘプタノン、2−(N−p−トリルヒドロキシアミノ)−1−シクロヘプタノン、2−[N−(3,5−キシル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−クロロフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−ブロモフェニル)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(o−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘプタノン、2−[N−(p−アニソール)ヒドロキシアミノ]−1−シクロヘプタノン等を例示することができる。
【0061】
更に、一般式(IV)で表されるヒドロキシアミノ化合物としては、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)フェニルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−o−トリルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−p−トリルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−(3,5−キシル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−(p−クロロフェニル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−(p−ブロモフェニル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−(o−アニソール)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−1,3,3−トリメチルブチル)−(p−アニソール)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)フェニルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−o−トリルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−p−トリルヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−(3,5−キシル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−(p−クロロフェニル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−(p−ブロモフェニル)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−(o−アニソール)ヒドロキシアミン、N,N−(2−オキソ−2−フェニル−1−メチルエチル)−(p−アニソール)ヒドロキシアミン等を例示することができる。
【0062】
また、本発明のヒドロキシケトン化合物の製造方法は、一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物を硫酸銅存在下、溶媒中でN−O結合を開裂することを特徴とし、かかる溶媒としては、メタノールを使用することが好ましい。一般式(III)で表されるアミノオキシ化合物は、本発明の一般式(I)で表されるニトロソ化合物と、一般式(II)で表されるスズエノール化合物とから合成されたものを使用することにより、α−ヒドロキシケトン化合物を高収率で得ることができる。かかるα−ヒドロキシケトン化合物の合成は、0.3当量の硫酸銅存在下、メタノール溶媒中、0℃前後で、12〜24時間、好ましくは12時間前後で反応させることにより行なうことができる。
【0063】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1[キラルルイス酸触媒の選択]
アルゴン気流下、THF溶媒2mlに、トリフラート銀塩25.6mgとR−BINAP62.3mgを溶かし、遮光して室温で20分間攪拌し、トリフラート銀・R−BINAP錯体THF溶液を調製した。次に、アルゴン気流下、THF溶媒3mlにニトロソベンゼン107.1mg(1mmol)を溶かし、さらに、室温で5分間攪拌した。調製済みのトリフラート銀・R−BINAP錯体THF溶液を−78℃に冷却後、ニトロソベンゼンTHF溶液を加え、続いて1−トリブチルスズオキシ−1−シクロヘキセン(1a)を加えた。−78℃で2時間攪拌後、飽和食塩水を加えて反応を消化した。シリカゲルクロマトグラフィーにより反応生成物を精製し、分離後の収率と、反応生成物における2−(N、N−フェニルヒドロキシアミノ)シクロヘキサノン(1b)と2−(N−フェニルアミノオキシ)シクロヘキサノン(1c)の収率の比及び光学純度(ee)を求めた。結果を表1に示す。
【0064】
同様にして調製したトリフラート銅・S,S−i−Pr−pybox錯体、トリフラート銅・S−t−Bu−Box錯体、過塩素酸鉛・R−BINAP錯体を触媒として、同様に反応を行ない、分離後の収率と、反応生成物における2−(N,N−フェニルヒドロキシアミノ)シクロヘキサノン(1b)と、2−(N−フェニルアミノオキシ)シクロヘキサノン(1c)の収率の比及び光学純度を同様に求めた。結果を表1に示す。また、触媒を使用せずに−20℃で1時間、−78℃で5時間行なった他は同様に反応を行なった。反応生成物の収率と、反応生成物における2−(N,N−フェニルヒドロキシアミノ)シクロヘキサノン(1b)と、2−(N−フェニルアミノオキシ)シクロヘキサノン(1c)の収率の比及び分離後の収率を同様に求めた。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
結果から明らかなように、トリフラート銀・R−BINAP錯体を用いた場合、2−(N−フェニルアミノオキシ)シクロヘキサノン(1c)を選択的に得ることができ、トリフラート銅・S,S−i−Pr−pybox錯体を用いた場合と触媒を使用しない場合、2−(N,N−フェニルヒドロキシアミノ)シクロヘキサノン(1b)が選択的に得られることがわかった。
【0067】
実施例2[アミノオキシ化合物選択的合成のキラルルイス酸触媒の選択]
実施例1と同様にして、表2に示す各銀化合物についてR−BINAP錯体を調製した。得られた各銀化合物のR−BINAP錯体を触媒として、実施例1と同様に反応を行ない反応生成物を得た。得られた反応生成物の分離後の収率と、反応生成物における2−(N,N−フェニルヒドロキシアミノ)シクロヘキサノン(2b)と、2−(N−フェニルアミノオキシ)シクロヘキサノン(2c)の収率の比及び光学純度を同様に求めた。結果を表2に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
結果からも明らかなように、銀塩のR−BINAP錯体はいずれも2−(N−フェニルアミノオキシ)シクロヘキサノンの選択的合成に優れた触媒となり得ることがわかった。
【0070】
実施例3[アミノオキシ化合物選択的合成のスズエノラートの基質適用範囲]
実施例2で調製した過塩素酸銀のR−BINAP錯体、R−TolBINAP錯体、S,S−メチル−DUPHOS錯体、R,S−BPPFA錯体、R−MOP錯体をニトロソベンゼンに対して10mol%用い、表3に示す各スズエノラートについて実施例1と同様にして反応を行ない反応生成物を得た。得られた反応生成物の分離後の収率と、反応生成物におけるN,N−フェニルヒドロキシアミノケトン(3b)と、N−フェニルアミノオキシケトン(3c)の収率の比及び光学純度を同様に求めた。結果を表3に示す。尚、表中、a)はスズエノラートを2当量用いて反応を行なった結果であり、b)はジブチルスズジアセテート(Bu2Sn(OAc)2)10mol%添加して反応を行なった結果である。
【0071】
【表3】
【0072】
結果からもこれらの触媒はアミノオキシ化合物を選択的に得ることができることがわかった。アミノオキシ化合物の選択的合成が緩和された五員環ケトン由来のスズエノラートについては2当量を使用することにより、また、七員環ケトン由来のスズエノラートについては10mol%のジブチルスズアセテートを添加することにより、アミノオキシ化合物が選択的に得られることがわかった。
【0073】
実施例4[ヒドロキシアミノ化合物選択的合成のエノラートを構成する金属の選択]
THF溶媒2mlに、2−メチル−1−インダノン(4a)1.1mmolと、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、ブロロマグネシウム−N,N−ジイソプロピルアミド又はナトリウムヘキサメチルジシラザン(HMDS)1mmolとをそれぞれ添加し、各種金属のエノラートを調製した。その後、アルゴン気流下、THF溶媒5ml又はジエチルエーテル5mlにニトロソベンゼン107.1mg(1mmol)を溶かし、室温で5分間攪拌した後、この溶液を表4に示す最適温度に冷却後、得られた各種金属のエノラート1mmolを加えた。表4に示す時間攪拌後、飽和食塩水を加えて反応を消化した。シリカゲルクロマトグラフィーにより反応生成物を精製し、反応生成物を得た。分離後の収率と、反応生成物におけるN,N−フェニルヒドロキシアミノ−2−メチル−1−インダノン(4b)とN−フェニルアミノオキシ−2−メチル−1−インダノン(4c)の収率の比を求めた。結果を表4に示す。
【0074】
【表4】
【0075】
結果からもリチウム、マグネシウム、ナトリウムのエノラート化合物から無触媒でヒドロキシアミノ化合物を選択的に得られることがわかった。
【0076】
実施例5[ヒドロキシアミノ化合物選択的合成のスズエノラートの基質適用範囲]
アルゴン気流下、THF溶媒5mLにニトロソベンゼン107.1mg(1mmol)を溶かし、室温で5分間攪拌した。この溶液を−20℃に冷却後、スズエノラート(5a)1mmolを加えた。−20℃、2時間攪拌後、飽和食塩水を加えて反応を消化した。シリカゲルクロマトグラフィーにより反応生成物を精製し、反応生成物を得た。分離後の収率と、反応生成物におけるN,N−フェニルヒドロキシアミノケトン(5b)とN−フェニルアミノオキシケトン(5c)の収率の比を求めた。結果を表5に示す。尚、表中、a)はスズエノラートを2当量添加した結果を示す。1当量添加のときのN,N−フェニルヒドロキシアミノケトン(5b)とN−フェニルアミノオキシケトン(5c)の収率比は53/47であった。
【0077】
【表5】
【0078】
結果から明らかなように、表5に示すスズエノラートから無触媒でN,N−フェニルヒドロキシアミノケトン(5b)が選択的に得られることがわかった。
【0079】
実施例6[ヒドロキシアミノ化合物選択的合成のリチウムエノラートの基質適用範囲]
アルゴン気流下、THF溶媒5mlにニトロソベンゼン107.1mg(1mmol)を溶かし、室温で5分間攪拌した。この溶液を表6に示す温度に冷却後、リチウムエノラート1mmolを加えた。表6に示す温度で、5分〜1時間攪拌後、飽和食塩水を加えて反応を消化した。シリカゲルクロマトグラフィーにより反応生成物を精製し、反応生成物を得た。分離後のN,N−フェニルヒドロキシアミノケトンの収率を求めた。結果を表6に示す。尚、表中、エノラートの調製方法の欄に示すAは、THF溶媒中、−78〜0℃で対応ケトンとLDAとの反応により調製されたことを示し、Bは、THF溶媒中、0℃〜室温で対応シリルエノールエーテルとn−ブチルリチウムとの反応により調製されたことを示す。結果を表6に示す。
【0080】
【表6】
【0081】
結果から明らかなように、表6に示すリチウムエノラートから、N−フェニルヒドロキシアミノケトンが選択的に得られることがわかった。
【0082】
実施例7[ヒドロキシアミノ化合物選択的合成のニトロソ化合物の基質適用範囲]
アルゴン気流下、THF溶媒5mLに表7に示すニトロソ化合物(7a)1mmolを溶かし、室温で5分間攪拌した。この溶液を−20℃温度に冷却後、1−トリブチルスズオキシ−1−シクロヘキセン1mmolを加えた。−20℃で、2又は10時間攪拌後、飽和食塩水を加えて反応を消化した。シリカゲルクロマトグラフィーにより反応生成物を精製し、反応生成物を得た。分離後の収率を求めた。結果を表7に示す。
【0083】
【表7】
【0084】
結果から明らかなように、表7に示すニトロソ化合物(7a)からN,N−ヒドロキシアミノケトン(7b)が選択的に得られることがわかった。
【0085】
実施例8[α−ヒドロキシケトン化合物の合成]
アルゴン気流下、メタノール溶媒6mlに実施例7で得られた2−(N−フェニルアミノキシ)シクロヘキサノン1mmolを溶かし、硫酸銅0.3mmolを添加し、0℃で12時間攪拌後、飽和食塩水を加えて反応を消化した。シリカゲルクロマトグラフィーにより反応生成物を精製し、反応生成物を得た。得られた2−ヒドロキシシクロヘキサノンの収率は92%であった。
結果から、本発明で得られたアミノオキシ化合物からN−O結合の開裂が良好に進行することがわかった。
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、キラルルイス酸触媒を用いて、ニトロソ化合物とスズエノール化合物とからアミノオキシ化合物を選択的に収率よく合成することができ、また、所定の極性溶媒中無触媒でニトロソ化合物とエノラート化合物とからヒドロキシアミノ化合物を選択的に得ることができ、更に、得られたアミノオキシ化合物からヒドロキシケトン化合物を選択的に収率よく合成することができ、生理活性物質の合成へ導くことができる有用な化合物を効率よく合成することができる。

Claims (18)

  1. 一般式(I)
    NO (I)
    [式中、Rは未置換若しくは置換基を有するフェニル基又はアルキル基を表す。]で示されるニトロソ化合物と、一般式(II)
    [式中、R、R、Rは、水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6の非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基を表し、RとRとは結合してC5〜C7の環を形成してもよく、Mは、スズ原子を表し、LnはMで表される原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表す。]で示されるエノラート化合物とを、銀化合物の(R)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(以下、「R−BINAP」という)錯体、下記式(VIIIa)において、(a)で表される化合物(以下、「R−TolBINAP」という)錯体、(b)で表される化合物(以下、「S,S−メチル−DUPHOS」という)錯体、(c)で表される化合物(以下、「R,S−BPPFA」という)錯体及び(d)で表される化合物(以下、「R−MOP」という)錯体から選ばれるキラルルイス酸
    を含有する触媒の存在下で反応させることを特徴とする一般式(III)
    [式中、Rは一般式(I)におけるRと同じものを表し、R、R、Rは一般式(II)におけるR、R、Rと同じものを表す。]で示されるアミノオキシ化合物の製造方法。
  2. 一般式(I)で表されるニトロソ化合物が、未置換若しくは置換基を有するニトロソベンゼンであることを特徴とする請求項1記載のアミノオキシ化合物の製造方法。
  3. 一般式(II)におけるRとRとが結合して形成される環が、5員環又は6員環であることを特徴する請求項1又は2記載のアミノオキシ化合物の製造方法。
  4. 一般式(II)におけるMで表されるスズ原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表すLnが、3個の独立したC1〜C6のアルキル基を表すことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のアミノオキシ化合物の製造方法。
  5. ラルルイス酸が、銀化合物のR−BINAP錯体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のアミノオキシ化合物の製造方法。
  6. 銀化合物のR−BINAP錯体が、銀トリフラート、四フッ化ホウ酸銀又は過塩素酸銀からなる群から選ばれた1種又は2種以上の銀化合物のR−BINAP錯体であることを特徴とする請求項5記載のアミノオキシ化合物の製造方法。
  7. 一般式(I)
    NO (I)
    [式中、Rは未置換若しくは置換基を有するフェニル基又はアルキル基を表す。]で示されるニトロソ化合物と、一般式(V)
    [式中、R〜Rは、水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6の非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基を表し、RとRとは結合してC5〜C7の環を形成してもよく、Mは金属原子を表し、LnはMで表される金属原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表す。]で示されるエノラート化合物とを、極性溶媒中無触媒で反応させることを特徴とする一般式(IV)
    [式中、Rは一般式(I)におけるRと同じものを表し、R、R、Rは一般式(V)におけるR、R、Rと同じものを表す。]で示されるヒドロキシアミノ化合物の製造方法。
  8. 一般式(I)で表されるニトロソ化合物が、未置換若しくは置換基を有するニトロソベンゼンであることを特徴とする請求項7記載のヒドロキシアミノ化合物の製造方法。
  9. 一般式(V)におけるMで表される金属原子が、リチウム、ナトリウム、マグネシウム又はスズ原子のいずれかであることを特徴とする請求項7又は8記載のヒドロキシアミノ化合物の製造方法。
  10. 一般式(V)におけるRとRとが結合して形成される環が、5員環又は6員環であることを特徴する請求項7〜9のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物の製造方法。
  11. 極性溶媒がテトラヒドロフランであることを特徴とする請求項7〜10のいずれか記載のヒドロキシアミノ化合物の製造方法。
  12. 一般式(III)
    [式中、Rは未置換若しくは置換基を有するフェニル基又はアルキル基を表し、R、R、Rは水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6の非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基を表し、RとRとは結合してC5〜C7の環を形成してもよい。]で示されるアミノオキシ化合物を硫酸銅存在下、メタノール溶媒中で反応させることを特徴とするヒドロキシケトン化合物の製造方法。
  13. 銀化合物のR−BINAP錯体、R−TolBINAP錯体、S,S−メチル−DUPHOS錯体、R,S−BPPFA錯体及びR−MOP錯体から選ばれるキラルルイス酸を有効成分として含有し、一般式(I)
    NO (I)
    [式中、Rは未置換若しくは置換基を有するフェニル基又はアルキル基を表す。]で示されるニトロソ化合物と、一般式(II)
    [式中、R、R、Rは、水素原子、未置換若しくは置換基を有するC1〜C6の非環状炭化水素基、C3〜C6の環状炭化水素基又はアルコキシ基を表し、RとRとは結合してC5〜C7の環を形成してもよく、Mはスズ原子を表し、LnはMで表される原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表す。]で示されるエノラート化合物とを反応させて、一般式(III)
    [式中、Rは一般式(I)におけるRと同じものを表し、R、R、Rは一般式(II)におけるR、R、Rと同じものを表す。]で示されるアミノオキシ化合物を選択的に合成することを特徴とするアミノオキシ化合物選択的合成用触媒。
  14. 一般式(I)で表されるニトロソ化合物が、未置換若しくは置換基を有するニトロソベンゼンであることを特徴とする請求項13記載のアミノオキシ化合物選択的合成用触媒。
  15. 一般式(II)におけるRとRとが結合して形成される環が、5員環又は6員環であることを特徴する請求項13又は14記載のアミノオキシ化合物選択的合成用触媒。
  16. 一般式(II)におけるMで表される原子に結合し得るn個の独立した原子又は原子団を表すLnが、3個の独立したC1〜C6のアルキル基を表すことを特徴とする請求項13〜15のいずれか記載のアミノオキシ化合物選択的合成用触媒。
  17. ラルルイス酸が、銀化合物のR−BINAP錯体であることを特徴とする請求項13〜16のいずれか記載のアミノオキシ化合物選択的合成用触媒。
  18. 銀化合物のR−BINAP錯体が、銀トリフラート、四フッ化ホウ酸銀又は過塩素酸銀からなる群から選ばれた1種又は2種以上の銀化合物のR−BINAP錯体であることを特徴とする請求項17記載のアミノオキシ化合物選択的合成用触媒。
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