JP4472112B2 - スクライブ方法およびこれに基づくスクライブ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なスクライブ方法およびこれに基づくスクライブ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1に従来の一般的な機構のガラススクライバーを示している。テーブル1は、これに挿通されたボールネジ2をモータMyによる軸回転により、2列のレール3,4に沿って紙面に垂直な方向(Y方向)に移動する。そのテーブル1の上面にはガラス板5が真空吸引によって固定されている。そのガラス板5に記したアライメントマークを一対のCCDカメラ6で認識することにより、ガラス板5のセット時の定位置よりのずれが検出される。例えばガラス板5が角度θずれていた場合はモータMθによりテーブル1が−θだけ回転され、ガラス板5がYずれていたときはモータMyによりテーブル1が−Yだけ移動される。
【0003】
テーブル1の上方には、X方向にガイドバー7が延在し、そのガイドバー7に沿って移動体8がカッター軸モータMxによって往復動する。その移動体8上には、昇降用モータ9により上下動自在に、かつエアシリンダ10により、スクライブ荷重を調節自在にスクライブヘッド11が設けられ、そのスクライブヘッド11の下部には首振り自在にチップホルダー12が備えられ、そのチップホルダー12の下端にはカッターホイールチップ13が回転自在に装着されている。
【0004】
チップホルダー12を下降させ、カッターホイールチップ13をガラス板5の表面に所定圧で押圧(この力をスクライブ荷重という)させた状態でスクライブヘッド11を移動させることにより、ガラス板5にX方向のスクライブラインが刻まれ、テーブル1をY方向に移動する毎にこのスクライブ動作を繰り返すことにより、X方向のスクライブラインが次々と刻まれる。次にモータMθによってテーブル1を90°旋回させてから同じようなスクライブ動作を行うことによって今度はガラス板5のY方向にスクライブラインが刻まれる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この図1で示しているように、最初、カッターホイールチップ13のスタート点をガラス板5の外側とし、その同カッターホイールチップ13をX方向に移動させてスクライブする場合を外切りという。この外切りでは、カッターホイールチップ13がガラス板5に乗り上げる前から前述したスクライブ荷重や切り込み量を設定している。
【0006】
図1の下部にカッターホイールチップ13部の拡大図を示す。カッターホイールチップ13がガラス板5へ乗り上げる前では、Hで示したようにカッターホイールチップ13の刃先最下部は、ガラス板5の表面より下方に設定される。実際のスクライブ時における刃先のガラス板5への食い込み量は数ミクロンの小さな値であるが、ガラス板表面の反りやうねりを考慮して十分に刃先の荷重がガラス板に加わるように、Hの値として0.1〜0.3mmが設定される。又、板厚1.1mmのガラス板5に対するスクライブ速度としては500mm/s、スクライブ荷重は1.4kgf程度になっている。
【0007】
そのため、カッターホイールチップ13がガラス板5へ乗り上げるときに、刃先がガラス板5のエッジに衝突することにより、チッピングが生じて品質上に不具合が生じるだけでなく、刃先の寿命も短くなった。又、スクライブ方向への刃先の追従性を重視してチップホルダー12を首振り自在とした機構のものでは、刃先の乗り上げ時に衝突の弾みでチップホルダー12の向きが変わってしまうと、ガラス板5の端面付近でスクライブラインが刻まれなくなり、その場合には次のブレイク工程で所望のブレイク精度を得ることが困難となった。カッターホイールチップ13がガラス板5外に抜け出るときにもチッピングが生じる。
【0008】
本発明は、刃先の乗り上げ時等における衝撃力を小さくすることにより、上述した課題を解消できるスクライブ方法およびこのスクライブ方法に基づくスクライブ装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のスクライブ方法は、請求項1にあるように、
カッターホイールチップ(13)を加工対象のガラス板(5)にセットし、そのセット位置から前記カッターホイールチップ(13)を一方向に移動させ、ガラス板(5)を横切るようにしてスクライブするスクライブ方法において、
前記カッターホイールチップ(13)が実際にガラス板(5)上を移動するときにスクライブデータとして設定されるスクライブ速度、スクライブ荷重および切り込み量の内の少なくとも一つの設定値より低減した設定値を備える別のスクライブデータを、前記カッターホイールチップ(13)がガラス板(5)のエッジから切り抜ける際の切り抜け位置で読み込み設定し、エッジから外側へ移動する時に前記別のスクライブデータが設定されているようにしたことを特徴とする。
本発明のスクライブ装置は、請求項2にあるように、
ガラス板(5)がセットされるテーブル(1)と、
テーブル(1)の上方で一方向に延在するガイドバー(7)と、
下部にカッターホイールチップ(13)を回転自在に保持するチップホルダー(12)を支持しているスクライブヘッド(11)と、
前記ガイドバー(7)に沿って前記スクライブヘッド(11)を往復動させる移動機構(Mx)と、
前記カッターホイールチップ(13)に切り込み量を設定するための昇降手段(9)と、
前記カッターホイールチップ(13)にスクライブ荷重を発生させるための荷重発生手段(10)と、
前記カッターホイールチップ(13)が実際にガラス板(5)をスクライブするときにスクライブデータとして所定のスクライブ速度、スクライブ荷重および切り込み量を設定するための制御手段(51)とを備え、
前記制御手段(51)は、前記スクライブデータの内の少なくとも一つの設定値よりも低減した設定値を備える別のスクライブデータを、前記カッターホイールチップ(13)がガラス板(5)のエッジから切り抜ける際の切り抜け位置で読み込み設定し、エッジから外側へ移動する時に前記別のスクライブデータが設定されているようにする制御手段であることを特徴とする。
【0010】
上記カッターホイールチップ(13)がガラス板(5)のエッジから切り抜ける際にも上記スクライブデータの内の少なくとも一つの設定値よりも低減した設定値を採用することで切り抜け時にも発生しがちなチッピングを回避できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明のスクライブ方法に基づくスクライブ装置の1実施形態を示した制御ブロック図である。尚、本装置の外観的な構成は従来例と変わりがないので図1を援用する。
【0012】
51は、本スクライバーを集中制御するCPUである。52は以下に説明するスクライブ法のプログラムを格納するROMである。53は各種設定データを記憶するRAMである。54は、スクライブデータ等の入力を行うとともに各種動作キーを備える操作及びデータ入力部である。55は、2台のカメラ6で得られた撮像データに基づき上述のアライメントマークの位置を演算する画像処理部である。操作及びデータ入力部54および画像処理部55よりの信号は入力部56を介してCPU51に取り込まれる。
【0013】
61は、モータMx、My、Mθを駆動するドライバーであり、62は、それらの各モータの駆動量を検出してドライバー61にフィードバックさせるエンコーダである。63はスクライブヘッド11を上下動させる昇降用モータ9を駆動するためのコントローラであり、0.01mmの分解能でカッターホイールチップ13の高さを調節できる。
【0014】
64は、上記エアシリンダ10を制御するための電空レギュレータであり、入力される0〜255の制御信号に対し、エアシリンダ10で256種のスクライブ荷重を発生させる。65は、ガラス板5をテーブル1に真空吸引して固定させるために用いられる真空バルブである。これらの各機器は出力部66を通じてCPU51で制御される。
【0015】
本装置におけるスクライブ動作を図3のフローチャートに従って説明する。まず、ステップS1にて、スクライブ条件入力する。スクライブ条件として、ガラス板5の寸法、スクライブピッチ、図4に示すスクライブ開始位置から乗り上げ位置(本スクライブ開始位置)までの乗り上げ区間A、乗り上げ位置から切り抜け位置(本スクライブ終了位置)までのスクライブ区間Bおよび切り抜け位置からスクライブ終了位置までの切り抜け区間Cを入力する。
【0016】
次いでステップS2にてそれらの各区間A、B、Cでのスクライブデータを入力する。一例としてガラス板5のサイズを360ラ460mm、厚さ1.1mmの場合でA=20mm、B=380mm、C=20mmとしたときのスクライブデータを次表に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
上表からわかるように、区間Bに対するスクライブデータ(実際のスクライブに供されるデータ)に対し、乗り上げ区間Aおよび切り抜け領域Cにおける値はスクライブ速度で10%以下、スクライブ荷重で60〜70%、切り込み量で50%程度に低減している。
【0019】
この後、ステップS3にてスクライブを実行すると、ステップS4にて図4に示したスクライブ開始位置へスクライブヘッド11が移動される。そしてステップS5にて乗り上げ用データとして上表の区間Aに対するデータが読み込まれ、スクライブ速度、スクライブ荷重および切り込み量が設定される。
【0020】
この後はステップS6にてスクライブヘッド11が乗り上げ位置(本スクライブ開始位置)へ10mm/sのスクライブ速度で移動される。このとき、カッターホイールチップ13がガラス板5のエッジを乗り上げるが、そのときのスクライブ速度、スクライブ荷重および切り込み量が、前記乗り上げ位置以降の区間Bで設定されるスクライブデータに比べて低減されているため、カッターホイールチップ13のエッジへの衝突力が少ないため、チッピングが生じたり、チップホルダー12の向きが変わってしまうといった不具合は発生しない。
【0021】
ステップS7では、前記乗り上げ位置にて区間Bに対する本来のスクライブデータが読み込まれ、設定される。そしてスクライブヘッド11がスクライブ長(区間B)だけ移動され、切り抜け位置で停止される。この間にガラス板5に対してスクライブが行なわれる。ステップS9では、その切り抜け位置において、区間Cに対するスクライブデータが読み込まれ、設定される。
【0022】
そしてステップS10において、スクライブヘッド11がスクライブ終了位置まで移動される。その際、カッターホイールチップ13がガラス板5のエッジから外側へ移動する時にエッジ部に衝撃力が加わるが、このときのスクライブ速度、スクライブ荷重および切り込み量が、区間Bで設定されていたスクライブデータに比べて低減されているために前記衝撃力は弱く、よって、チッピングが生じたり、チップホルダー12の向きが変わってしまうといった不具合は発生しない。
【0023】
以上の動作をテーブル1をY方向に移動する毎に繰り返すことにより、X方向のスクライブラインが次々と刻まれる。又、テーブル1を90°旋回させてから同じようなスクライブ動作を行うことによって今度はガラス板5のY方向にスクライブラインが刻まれる。
【0024】
上記実施形態では、区間Bでの切り込み量を一般のスクライブ時と同じ0.15mmとした場合であったが、0.08〜0.12mm程度に小さく設定した場合には、この区間Bで設定したデータのままで切り抜けても切り抜け時のチッピングは殆ど発生しないことが確認されている。その場合は図5に示すように、乗り上げ位置からスクライブ終了位置の間を区間Bとして本スクライブ用のデータを設定する。
【0025】
尚、本実施形態では、スクライブデータであるスクライブ速度、スクライブ荷重および切り込み量のいずれに対しても設定値を低減したが、いずれか一つ、あるいはいずれか二つの設定値に対してその設定値を低減するだけでもチッピング等の不具合を解消できる。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、カッターホイールチップがガラス板のエッジから外側へ移動する時のスクライブ速度、スクライブ荷重、切り込み量が低減されているため、この時の衝撃力が弱く、よって、切り抜け時に発生するチッピングや、チップホルダーの向きが変わってしまうといった不具合を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スクライブ装置の正面図
【図2】 本発明のスクライブ装置の1実施形態を示した制御ブロック図
【図3】 図2の制御ブロック図における制御動作を示したフローチャート
【図4】 図3のフローに基づくスクライブヘッドの動きを示した模式図
【図5】 スクライブヘッドの別の動きを示した模式図
【符号の説明】
1 テーブル
5 ガラス板
8 移動体
9 昇降用モータ
10 エアシリンダ
11 スクライブヘッド
12 チップホルダー
13 カッターホィールチップ
54 操作及びデータ入力部
64 電空レギュレータ
Claims (2)
- カッターホイールチップ(13)を加工対象のガラス板(5)にセットし、そのセット位置から前記カッターホイールチップ(13)を一方向に移動させ、ガラス板(5)を横切るようにしてスクライブするスクライブ方法において、
前記カッターホイールチップ(13)が実際にガラス板(5)上を移動するときにスクライブデータとして設定されるスクライブ速度、スクライブ荷重および切り込み量の内の少なくとも一つの設定値より低減した設定値を備える別のスクライブデータを、前記カッターホイールチップ(13)がガラス板(5)のエッジから切り抜ける際の切り抜け位置で読み込み設定し、エッジから外側へ移動する時に前記別のスクライブデータが設定されているようにしたことを特徴とするスクライブ方法。 - ガラス板(5)がセットされるテーブル(1)と、
テーブル(1)の上方で一方向に延在するガイドバー(7)と、
下部にカッターホイールチップ(13)を回転自在に保持するチップホルダー(12)を支持しているスクライブヘッド(11)と、
前記ガイドバー(7)に沿って前記スクライブヘッド(11)を往復動させる移動機構(Mx)と、
前記カッターホイールチップ(13)に切り込み量を設定するための昇降手段(9)と、
前記カッターホイールチップ(13)にスクライブ荷重を発生させるための荷重発生手段(10)と、
前記カッターホイールチップ(13)が実際にガラス板(5)をスクライブするときにスクライブデータとして所定のスクライブ速度、スクライブ荷重および切り込み量を設定するための制御手段(51)とを備え、
前記制御手段(51)は、前記スクライブデータの内の少なくとも一つの設定値よりも低減した設定値を備える別のスクライブデータを、前記カッターホイールチップ(13)がガラス板(5)のエッジから切り抜ける際の切り抜け位置で読み込み設定し、エッジから外側へ移動する時に前記別のスクライブデータが設定されているようにする制御手段であることを特徴とするスクライブ装置。
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