JP4471191B2 - 脱臭触媒の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物からなる脱臭触媒の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルデヒド類、アミン類、メルカプタン類その他の悪臭物質を分解除去するための脱臭触媒が、トイレ用、空調機器や空気清浄機用、冷蔵庫用、または排ガス処理用の目的で種々開発されて用いられている。特には、近年、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、亜鉛等の遷移金属系の金属酸化物からなるものが種々開発されて用いられている。
【0003】
従前主流であった貴金属系触媒は酸化分解のために350℃以上といった高温に加熱する必要があり、エネルギー的に不利であるだけでなく、周囲の部品に悪影響を与える場合もあった。これに対して、遷移金属系の金属酸化物からなる脱臭触媒であると、比較的低温で酸化分解を行うことができる。
【0004】
遷移金属系の金属酸化物からなる脱臭触媒を製造する方法には、以下のものが知られている。
【0005】
(1)固相法:金属炭酸塩等の微細な粉末を調製し、物理的に混合した後、約500℃またはそれ以上の温度で焼結する。
【0006】
この方法であると、一般に低コストで製造を行えるものの、金属酸化物の粒子が大きいために比表面積(触媒1gあたりの表面積m)を高くすることが困難である。また、複数のものを組み合わして用いる金属種の組成比等に不均一が生じやすい。
【0007】
(2)ゾル−ゲル法:アルコキシド化合物やアセチルアセトネート金属化合物をはじめとする有機金属化合物を原料とし、水及びアルコール等を加えて溶液とした後、加水分解により均一なゲルを得る。そして、加熱処理により水及びアルコール等を除去する。
【0008】
この方法であると、均一性が高く比表面積の大きい触媒を得ることができる。しかし、原料のコストが非常に大きいことに加えて、工程が煩雑であり、長時間を要する。そのため、汎用製品のためには製造コストが過大となる。
【0009】
(3)アルカリ中和沈殿法:硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩等の金属塩を、水またはアルコール等に溶解した後、強塩基化合物を添加して沈殿させる。強塩基化合物には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水などが用いられる(例えば特許2994065,特開2000−157868)。
【0010】
沈殿を回収してから乾燥した後、約500℃またはそれ以上にまで加熱して焼成を行うことにより、金属酸化物の粉末を得る。アンモニア水以外の強塩基化合物を用いる場合には、アルカリ金属イオンを除去するための洗浄工程を必要とする。
【0011】
【特許文献1】
特許2994065
【0012】
【特許文献2】
特開2000−157868
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
アルカリ中和沈殿法であると、固相法に比べて、組成が均一で、粒径の小さな金属酸化物を得ることができる。しかし、生成する金属酸化物粒子の粒径を必ずしも充分に小さくできず、また、全体にわたって組成を均等にすることも比較的難しい。また、強塩基化合物を用いることから作業上、かなりの危険を伴う。洗浄工程を実施する場合には、その分だけ製造工程が煩雑なものとなる。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、金属酸化物からなる脱臭触媒を製造する方法において、容易に比表面積を大きくすることができ、かつ、粒径及び組成を均一にすることができるものを提供しようとする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の脱臭剤の製造方法は、金属塩の水溶液に中和剤を添加して沈殿を生成する工程を含む脱臭触媒の製造方法において、前記沈殿を生成する工程において、前記中和剤として尿素を添加し、均一に溶解後に加熱することを特徴とする
上記構成により、容易に比表面積を大きくすることができ、かつ、粒径及び組成を均一にすることができる。
【0016】
好ましくは、前記沈殿を分散させた分散液を、基材にコーティングまたは含浸するか、または、成形して、この後、150〜400℃の温度で、乾燥及び焼成する。これにより、比表面積(BET法)が50m/g以上の金属酸化物多孔体を、容易に得ることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる酸性金属塩の金属種は、遷移金属及びランタノイド元素の全体からなる群より選択される少なくとも1種である。好ましい金属種の例を挙げるならば、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)及び銅(Cu)よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0018】
より好ましくは2種以上の組み合わせであり、複合酸化物触媒を生成する組み合わせである。この複合酸化物触媒は、好ましくは、室温またはその近傍の温度にて、紫外線等を要することなく悪臭物質を酸化分解可能なものであり、より好ましくは、悪臭物質に対する光分解性または吸着性といった付加的な機能をも有するものである。
【0019】
生成する複合酸化物触媒の好ましいものとしては、(1)鉄、ニッケル、コバルト、銅から選ばれる少なくとも1種の金属と、マンガンとの組み合わせ、(2)銅、銀及び金の少なくとも1種の金属と、マンガン、コバルト及びニッケルの少なくとも1種の金属との組み合わせ、(3)これらのいずれかの組み合わせに、さらに、亜鉛またはチタン(Ti)をさらに含む組み合わせなどを挙げることができる。
【0020】
特に、好ましい例として、マンガン、コバルト、及び、亜鉛または銅を金属種として含む金属酸化物を挙げることができる。
【0021】
本発明において用いられる金属塩は、均一に水に溶解するものであればいずれでも使用可能であり、酢酸塩、シュウ酸塩、ギ酸塩などのカルボン酸塩の他に、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホスフィン酸塩、チオシアン酸塩等を使用することができる。しかし、焼成により分解除去されるカルボン酸を用いるのが、より好ましい。
【0022】
本発明の製造方法においては、このような酸性金属塩の水溶液に、尿素を添加する。尿素の添加は、フレーク状等の粉末のまま行うこともできるが、水溶液の状態で行うのが、一般には好ましい。例えば、金属塩の水溶液を攪拌しつつ尿素の水溶液を滴下することで、迅速に均一な溶解を達成することができる。
【0023】
尿素の添加完了後に金属塩水溶液を加熱するのが好ましいが、場合によっては、添加が完了する前に昇温を開始することもできる。
【0024】
本発明の製造方法においては、尿素を溶解した金属塩水溶液を、50℃以上、好ましくは70℃以上に加熱する。このような加熱により、均一に水酸化アンモニウムが生成する結果、金属水酸化物等からなる沈殿の形成を、均一に行うことができる。沈殿形成時のpHが、典型的には7〜8である。
【0025】
沈殿の形成後、または形成前に、好ましくは、バインダー成分及び/または吸着剤成分が添加される。バインダー成分としては、一般的なものであればいずれも使用可能である。例えば、アルミナゾル、シリカゾル、水ガラス等の無機バインダを挙げることができる。場合によっては、ポリビニルアルコール、でんぷんまたはその誘導体といった有機バインダを使用することもできる。
【0026】
一方、吸着剤成分としては、ゼオライト、活性アルミナ、リン酸ジルコニウム、シリカゲル、または活性炭粒子を挙げることができる。これらのうちでも、ゼオライト及び活性アルミナが、吸着性能及び安定性等の観点から好ましい。
【0027】
上記の沈殿形成により得られたスラリーに、必要に応じてバインダー成分や吸着剤成分を添加して添着液とする。または、沈殿を濾過または遠心分離により回収後にバインダー成分等を添加することもできる。
【0028】
このようにして得られた添着液を、ウォッシュコート方式やディッピング方式等により基材に塗布する。基材(保持担体)の形状は、特に制限されないが、通常はハニカム形状とするのが好ましい。しかし、ファイバー状、フォーム(連通発泡体)状とすることもできる。
【0029】
基材の材料としては、一般にコーディエライト、アルミナ、ムライトまたはフェライト等のセラミック材料からなるものが用いられる。例えば、不織布状のセラミックペーパーやセラミックハニカム等である。しかし、ステンレス鋼等の金属材料からなる基材を用いることもできる。
【0030】
また、基材を用いず、金属酸化物の分散させたペースト状のものを成形して、ハニカム状等とすることもできる。
【0031】
金属酸化物を分散させた添着液を基材に塗布した後、または分散ペーストを成形した後、乾燥し、150〜500℃といった低温で加熱して焼成する。焼成は、空気中または空気流通下で行うことができる。また、好ましい焼成の温度は、金属酸化物触媒の種類や組成により多少異なるが、一般には、200〜400℃である。例えば、マンガン、コバルト及び亜鉛を金属種として含む金属酸化物触媒を得る場合に、300〜400℃で焼成するのが最も好ましい。
【0032】
このような方法により、金属酸化物触媒の比表面積(BET法)を、50m/g以上、より好ましくは約60m/gまたはそれ以上とすることができる。
【0033】
【実施例】
<実施例1>
酢酸マンガン4.0gと、酢酸コバルト4.0gと、酢酸亜鉛6.0gとを純水に溶解した。均一に溶解した後、得られた混合金属塩水溶液を攪拌しつつ、尿素を10%水溶液にて所定量加えた。次いで、加熱により室温から70℃にまで徐々に加熱した後、この温度でしばらく保持した。70℃に昇温した際の水溶液を採取してpHを調べたところ、7〜8であった。
【0034】
この後、加熱を止めて放置し、室温まで液温が下がってから、バインダーとしてのシリカゾル(スノーテックスC)1.0gと、疎水性ゼオライト(スメルライト)の微粉3.0gとを添加して均一に混合した。
【0035】
このようにして得られた添着液を、コーディエライト製のセラミックペーパーからなるコルゲートハニカム(60mmX40mmX10μm,50セル/inch(1平方インチ当たりのセル数))に、ウォッシュコート方式にて塗布した。すなわち、所定量の付着量が確認されるまでウォッシュコート方式による塗布を行った。このとき、コルゲートハニカム(基材)上の固形分担持量は、0.12g/mlであった。
【0036】
この後、150℃で乾燥を行ってから、350℃数時間の加熱により焼成を行った。
【0037】
このように得られた脱臭触媒をガラス管の中間に設置して、アセトアルデヒド除去率を調べた。このとき、ガラス管の温度を250℃に保ち、アルデヒド濃度50ppmの空気を空間速度20000/hrで流した。ここで、空間速度20000/hrとは、1時間あたり、触媒の体積の2万倍に相当する空気を流すということである。その結果、約96%のアセトアルデヒド除去率が得られた。
【0038】
一方、バインダーやゼオライトを添加せず、金属塩水溶液からの沈殿のみについて、遠心分離後に、上記と同様の条件で乾燥してから焼成を行ってみた。その結果、粒径が1μm以下であって、BET法による比表面積が65m/gである触媒粉末が得られた。すなわち、上記の基材上に担持された脱臭触媒が、粒径1μm以下の微粒子をなし、比表面積が65m/gになっていると考えられた。
【0039】
他方、上記の触媒担持コルゲートハニカムを用いて、メチルメルカプタンの除去率を求めた。パーミエーターを用いて、メチルメルカプタン濃度が5ppmの空気を調製し、空間速度100,000/hrにて、ガラス管中の触媒担持コルゲートハニカムを通過させた。このようにして2分間流通させた後、ガス検知管(kitagawa式)を用いて1回目の残留メチルメルカプタン濃度の測定を行った。
【0040】
この後、5分間、ガスの流通を停止して他の経路にバイパスさせた後、同様に検知管により2回目の残留メチルメルカプタン濃度の測定を行った。測定は、全て室温で行った。その結果、1回目で97%、2回目で84%のメチルメルカプタン除去率が得られた。
【0041】
<実施例2〜3、比較例1〜3>
上記実施例と同様の条件で、下記表1中に示すようにして、実施例2〜3及び比較例1〜2の触媒を作製して試験を行った。固形分担持量は、いずれも実施例1と同一の0.12g/mlとした。
【0042】
比較例1〜2は、中和剤として、尿素に代えて、アンモニア水を用いたものであり、金属塩水溶液を攪拌しつつ、アンモニア水を滴下した。比較例1が実施例に対応し、比較例2が実施例3に対応する。
【0043】
比較例3は、白金触媒の例であり、酸化マグネシウム10g、5wt%ジニトロジアンミン白金硝酸溶液6g、及び水20gを混合してスラリーとした後、水を除去してから550℃で焼成し、実施例の場合と同一のコルゲートハニカムに担持したものである。
【0044】
得られた結果を、上記実施例1とともに、表2〜3及び図1に示す。
【0045】
【表1】
各種触媒試料の作製
Figure 0004471191
【表2】
アセトアルデヒド除去性能
Figure 0004471191
【表3】
メチルメルカプタン除去性能
Figure 0004471191
図1のグラフには、表2の結果の一部を示す。図1に示されるように、焼成温度を350℃とした実施例1と、焼成温度を400℃とした実施例2とでは、300℃未満の領域での触媒活性に差が見られた。300℃未満のいずれの温度においても、実施例1の方が、触媒活性が大きかった。これは、350℃の方が焼成が徐々に進んだ結果、細かい粒子径が維持されたためと推測される。
【0046】
一方、表2中に示すように、実施例2(Mn/Co/Zn)と実施例3(Mn/Co/Cu)との間には、触媒活性に大差がなかった。すなわち、マンガン−コバルトとともに触媒を構成する第3金属種を亜鉛から銅に置き換えても大きな違いは見られなかった。
【0047】
図1中に、アンモニア滴下法により実施例1と同様に作製した比較例1の結果についても示す。この曲線から知られるように、実施例1〜2に比べて、300℃以下の領域における触媒活性が著しく低かった。また、表2から知られるように、比較例1では、実施例1に比べて、アセトアルデヒド除去率もかなり低かった。表2中に示す比較例2についても、比較例1の場合と同様であった。すなわち、アンモニア滴下法では、いずれも、300℃以下の領域での触媒活性が不充分であった。
【0048】
また、典型的な白金触媒を用いた比較例3では、350℃以上の触媒温度で、はじめて充分な触媒活性を発揮した。
【0049】
上記実施例のような脱臭触媒の製造方法によると、中和剤として強アルカリを用いないため、作業中の危険が少ない。
【0050】
また、緩やかに中和及び沈殿形成が行われるため、均一かつ微細な粒子が形成される。そのため、中和剤として強アルカリを短時間で加える場合に比べて、焼成温度を低くすることができ、また、比表面積の大きい触媒粒子を形成することができる。
【0051】
このように脱臭触媒製品の品質を高めることができるが、ゾル−ゲル法のように高価な原料を使用する必要がなく、製造コストを低く保つことができる。
【0052】
また、中和の工程について複雑な操作や厳密な工程管理を要せず、作業時間を短縮することができる。また、洗浄工程を要することなく、金属水酸化物等の沈殿を含むスラリーに、そのまま、バインダー等を加えて基材に塗布すれば良いので、中和工程より後について、工数及びコストを低減することができる。
【0053】
【発明の効果】
容易に比表面積を大きくすることができ、かつ、粒径及び組成を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例及び比較例の脱臭触媒によるアルデヒド除去率と、触媒温度との関係について示すグラフである。

Claims (3)

  1. 金属塩の水溶液に中和剤を添加して沈殿を生成する工程を含む脱臭触媒の製造方法において、
    前記脱臭触媒が、マンガン、コバルト、及び、亜鉛を金属種として含む金属酸化物(Mn/Co/Zn)、または、マンガン、コバルト、及び、銅を金属種として含む金属酸化物(Mn/Co/Cu)からなり、
    前記沈殿を生成する工程において、前記中和剤として尿素を添加し、均一に溶解後に加熱することを特徴とする脱臭触媒の製造方法。
  2. 前記沈殿を分散させた分散液を、基材にコーティングまたは含浸するか、または、成形して、この後、150〜500℃の温度で、乾燥及び焼成し、これにより、比表面積が50m2/g以上の金属酸化物多孔体を得ることを特徴とする請求項1記載の脱臭触媒の製造方法。
  3. 前記沈殿を分散させた分散液に、ゼオライトまたは活性アルミナからなる多孔性吸着体が分散されたことを特徴とする請求項1または2に記載の脱臭触媒の製造方法。
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