JP4467199B2 - 溶液製膜方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶液製膜方法並びにこの方法により製膜したフイルムを用いた偏光板等に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
セルロースエステル、特に59.0〜62.5%の平均酢化度を有するセルロースアセテート(一般にセルローストリアセテートに分類されるもの)は、その強靭性と難燃性から、フイルムの形状にして写真感光材料の支持体として利用されている。セルローストリアセテートフイルムは、光学的等方性に優れていることから、近年市場の拡大している液晶表示装置の偏光板の保護フイルムおよびカラーフィルターの用途に適している。
【0003】
一般に、セルロースアセテートフイルムの製造方法は、溶液製膜法により行なわれている。溶液製膜法は、メルトキャスト法などの他の製造方法と比較して、光学的性質や物性が優れたフイルムを製造することができる。溶液製膜法は、セルロースアセテートを溶媒中に溶解した溶液(以下、ドープと称する)をドラムやスチールバンドなどの支持体上に流延した後、溶媒を蒸発させて、フイルムを形成する方法である。特に、セルローストリアセテートを原料に使用した場合、そのドープの調製には、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素などが溶媒として用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年、塩化メチレンなどハロゲン化炭化水素は、その揮発性有機物として環境上大きな問題となっており、それら溶媒は、使用の減少が求められている。このため、環状エーテルなどの代替溶剤で製膜することも提案されているが、これら環状エーテルなどの代替溶剤の場合にはその引火性や分解性のために、実用プロセスとしては問題が多い。
【0005】
そこで、酢酸メチル、アセトンなどのハロゲンを含まない溶媒を用いて、極低温でセルローストリアセテートのドープを調製して、フイルムを製造する冷却溶解法が提案されている。しかし、冷却溶解法は、プロセスの初期投資が多額になる点が問題になる。このように、従来のセルローストリアセテートフイルムの製造は、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素を溶剤として用いずに、そのドープの調製を行うことが困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、ハロゲンを含まない溶媒を用いて、セルローストリアセテートを効率よく溶解させるようにした溶液製膜方法並びこの方法により製膜したフイルムを用いた偏光板保護膜、偏光板、光機能性膜、液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明では、溶剤にセルローストリアセテートを接触させて分散または溶解させたのち、温度を130℃以上で処理する。高温処理することにより、常温で溶解しがたい溶媒、例えば酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキソランのうち1つ以上を含む溶媒にセルローストリアセテートを溶解できる。この場合において、溶媒の温度は130℃以上、望ましくは160℃以上、最も望ましくは180℃以上で行う。しかしながら、250℃を超えるとセルローストリアセテートの分解が生じ、生成されるフイルムの品質を損なう。
【0008】
溶液の加熱は、オートクレープ方式、多管式熱交換器、スクリュー押し出し機、スタチックミキサーなどの方法を用いることができる。この溶液の加熱時において、伝熱効率を高めフイルムの品質を良好に保つために加熱中に蒸気圧による発泡を防止することが好ましい。通常は、溶液内の最高温度における飽和蒸気圧より高い圧力に保つことで発泡を抑制できる。
【0009】
また、前記セルローストリアセテート分散物またはその溶液を130℃以上に保つ時間は、20秒以上且つ4時間以下であることが好ましい。また、前記加熱処理の前又は後に−100℃から−10℃の温度範囲で冷却処理することも好ましく、この場合には溶解性を高めることができる。
【0010】
本発明は、ハロゲンが非含有の溶媒にセルローストリアセテートを溶解した溶液を用いて溶液製膜する溶液製膜方法において、セルローストリアセテートが前記溶媒中で膨潤している膨潤液を、130℃以上の温度に加熱する加熱工程と、前記加熱工程を経た前記膨潤液をフラッシュさせることにより−100〜−10℃の温度に冷却する冷却工程とを有することを特徴とする。この加熱工程では膨潤液を加圧し、冷却工程では、加熱工程で加圧された膨潤液をフラッシュさせることにより温度低下させることが好ましい。これらの冷却方法は、単独または組み合せて使用しても良く、さらには、前述した溶液製膜の加熱処理において、その前段または後段に前記冷却方法を実施しても良い。
【0011】
前記セルローストリアセテートを分散または溶解させる溶媒が、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキソランのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。また、前記セルローストリアセテートの酢化度が59〜62.5%であることが好ましい。さらに、前記セルローストリアセテートの6位のアセチル基置換度Xが残余の置換度Yとの関係において、X≧0.7、X+Y≧2.71の関係を満たすことが好ましい。
【0012】
前記ドープの粘度が、例えば落球式粘度550秒を超えたり、流延時の剪断速度1000(1/秒)での剪断粘度が1000P(ポアズ)を超えると、このドープによる流延ビードを安定に維持することが困難となり、高速流延適性に欠け問題となる。そこで、流延時のドープを、剪断速度500(1/秒)での剪断粘度を500P以下にすることが好ましい。このようなドープの粘度とすることにより、流延ビードを安定に維持することができ、効率よく製膜することができる。
【0013】
前記セルローストリアセテート分散物またはその溶液には、添加剤を付与することが好ましく、この場合には、製膜されるフイルムの光学的特性または物性を向上させることができる。添加剤としては、可塑剤を付与することができる。好ましい添加量は、1〜20重量%である。さらに、剥離促進剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤などの添加剤も付与できる。これらの添加剤の好ましい添加量は、0.001〜5重量%の範囲である。
【0014】
前記セルローストリアセテート分散物またはその溶液は、少なくとも一種の微粒子粉体をセルローストリアセテートに対して0.001〜5重量%含有させることが好ましい。また、前記セルローストリアセテート分散物またはその溶液は、少なくとも一種の離型剤をセルローストリアセテートに対して0.001〜2重量%含有させることが好ましい。さらに、前記セルローストリアセテート分散物またはその溶液は、少なくとも一種のフッ素系界面活性剤をセルローストリアセテートに対して0.002〜2重量%含有させることが好ましい。
【0015】
また、本発明の溶液製膜法には、流延工程で少なくとも1種類のセルローストリアセテートを含む2種類以上のセルローストリアセテート分散物またはその溶液を共流延する方法も含まれる。
【0016】
本発明の溶液製膜方法により製膜したフイルムを、偏光板保護膜、偏光板、光学機能性膜、液晶表示装置として用いることが好ましく、この場合には、耐久性に優れたものが得られる。
【0017】
【発明の実施の形態】
[セルローストリアセテート]
本発明に用いるセルローストリアセテートは、平均酢化度が59.0〜62.5%である。この場合において、酢化度とは、セルロース単位重量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。本発明では、セルローストリアセテート粒子を使用し、使用する粒子の90重量%以上が0.1〜4mmの粒子径、好ましくは1〜4mmを有する。また、好ましくは95重量%以上、より好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上の粒子が0.1〜4mmの粒子径を有する。さらに、使用する粒子の50重量%以上が2〜3mmの粒子径を有することが好ましい。より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上の粒子が2〜3mmの粒子径を有する。セルローストリアセテートの粒子形状は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
【0018】
セルロースのモノマー単位においては、3箇所の水酸基が酢酸とエステル化されて、アセテートを形成する。しかしながら、セルロースアセテートは、エステル化された位置によってドープ調整用の溶媒への溶解性が異なる。セルロースの6員環に結合している2,3位の水酸基がエステル化される場合より、6位(−CH2 OH)の水酸基がエステル化された方が溶媒への溶解性が向上する。本発明において6位の水酸基の置換度をX、2,3位の水酸基の置換度の合計をYとした場合、X≧0.7,X+Y≧2.71が好ましい。より好ましくは、X≧0.8,X+Y≧2.73である。
【0019】
[溶媒]
本発明に用いることができる溶媒は、ハロゲンを含有しないものであれば良い。代表的には、酢酸メチルである。その酢酸メチルは、市販品の純度であれば、特に制限される要因はない。溶媒は、酢酸メチルのみ(100重量%)であっても良いし、他の溶媒を混合して使用するものでもよい。他の溶媒と酢酸メチルとを併用することで、調製するドープの性質(例えば、粘度)を調節することができる。酢酸メチルと併用できる溶媒の例には、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン)、酢酸メチル以外のエステル類(例えば、メチルホルメート、エチルアセテート、アミルアセテート、ブチルアセテート)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン(以下、THFと略する)、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル)、炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン)およびアルコール類(例えば、メタノール、エタノール)が含まれる。この場合において、炭化水素およびアルコール類が特に好ましい。また、二種類以上の溶媒を、酢酸メチルと併用してもよい。さらに、本発明において、溶媒に酢酸メチルを使用せず、前記溶媒のうち少なくとも一つを含むものであっても良い。
【0020】
[添加剤]
本発明で用いることのできる添加剤としては特に限定はない。例えば、可塑剤として、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート)およびその他の可塑剤を用いることができる。これら添加剤は単独使用または併用してよい。望ましくは、疎水性可塑剤を、1〜20重量%をフイルム中に含むように調製することが望ましい。さらに、特開平11−80381号公報、同11−124445号公報、同11−248940号公報に記載されている可塑剤も添加することができる。
【0021】
また、ドープには、紫外線吸収剤を添加することもできる。特に、好ましくは一種または二種以上の紫外線吸収剤を含有することである。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物,ベンゾトリアゾール系化合物,サリチル酸エステル系化合物,ベンゾフェノン系化合物,シアノアクリレート系化合物,ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。さらには、特開平8−29619号公報に記載されているベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、あるいは同8−239509号公報に記載されている紫外線吸収剤も添加することができる。その他、公知の紫外線吸収剤を添加しても良い。これら紫外線吸収剤は、フイルム中に0.001〜5重量%を含むようにドープ中に混合することが望ましい。
【0022】
好ましい紫外線防止剤として、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール,ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ―tert―ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N´−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ―tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5―ジ―tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ―tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。特に、2,6―ジ―tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5―ジ―tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が最も好ましい。また例えば、N,N´−ビス[3−(3,5−ジ―tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジンなどのヒドラジン系化合物の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ―tert−ブチルフェニル)フォスファイトなどのリン系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルローストリアセテートに対して重量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
【0023】
さらに、剥離時の荷重を小さくするための剥離促進剤も、ドープに添加してもよい。それらは、界面活性剤が有効であり、リン酸系,スルフォン酸系,カルボン酸系,ノニオン系,カチオン系などがあるが、これらに特に限定されない。これらの剥離促進剤は、例えば特開昭61−243837号などに記載されている。特開昭57−500833号にはポリエトキシル化リン酸エステルが剥離促進剤として開示されている。特開昭61−69845号には非エステル化ヒドロキシ基が遊離酸の形であるモノまたはジリン酸アルキルエステルをセルロースエステルに添加することにより迅速に剥離できることが開示されている。また、特開平1−299847号には非エステル化ヒドロキシル基およびプロピレンオキシド鎖を含むリン酸エステル化合物と無機物粒子を添加することにより剥離荷重が低減できることが開示されている。
【0024】
また、ドープには、離型操作を容易にするための離型剤を添加することもできる。離型剤には、高融点のワックス類、高級脂肪酸およびその塩やエステル類、シリコーン油、ポリビニルアルコール、低分子量ポリエチレン、植物性タンパク質誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。離型剤の添加量は、フイルムの表面の光沢や平滑性に影響を及ぼすため、セルローストリアセテートに対して0.001〜2重量%含有していることが好ましい。
【0025】
ドープには、フッ素系界面活性剤を添加することもできる。フッ素系界面活性剤は、フルオロカーボン鎖を疎水基とする界面活性剤であり、表面張力を著しく低下させるため有機溶媒中での塗布剤や、帯電防止剤として用いられる。フッ素系界面活性剤としては、C8 F17CH2 CH2 O― (CH2 CH2 O)10 −OSO3 Na、C8 F17SO2 N(C3 H7 )(CH2 CH2 O)16−H、C8 F17SO2 N(C3 H7 )CH2 COOK、C7 F15COONH4 、C8 F17SO2 N(C3 H7 )(CH2 CH2 O)4 −(CH2 )4 −SO3 Na、C8 F17SO2 N(C3 H7 )−(CH2 )3 −N+ (CH3 )3 ・I- 、C8 F17SO2 N(C3 H7 )CH2 CH2 CH2 N+ (CH3 )2 −CH2 COO- 、C8 F17CH2 CH2 O(CH2 CH2 O)16−H、C8 F17CH2 CH2 O(CH2 )3 −N+ (CH3 )3 ・I- 、H(CF2 )8 −CH2 CH2 OCOCH2 CH(SO3 )COOCH2 CH2 CH2 CH2 −(CF2 )8 −H、H(CF2 )6 CH2 CH2 O(CH2 CH2 O)16−H、H(CF2 )8 CH2 CH2 O(CH2 )3 −N+ (CH3 )3 ・I- 、H(CF2 )8 CH2 CH2 OCOCH2 CH(SO3 )COOCH2 CH2 CH2 CH2 C8 F17、C9 F17−C6 H4 −SO2 N(C3 H7 )(CH2 CH2 O)16−H、C9 F17−C6 H4 −CSO2 N(C3 H7 )−(CH2 )3 −N+ (CH3 )3 ・I- などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。フッ素系界面活性剤の添加量は、セルローストリアセテートに対して0.002〜2重量%含有していることが好ましい。
【0026】
さらに、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤, 過酸化物分解剤, ラジカル禁止剤,金属不活性化剤,酸捕獲剤,アミンなど)や紫外線防止剤をドープに添加してもよい。これらの劣化防止剤や紫外線防止剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。これらの添加量は、調整する溶液(ドープ)の0.01〜1重量%であることが好ましく、0.01〜0.2重量%であることがさらに好ましい。添加量が0.01重量%未満であると、劣化防止剤の効果がほとんど認められない。添加量が1重量%を超えると、フイルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)が認められる場合がある。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。
【0027】
また、光学異方性をコントロールするためのレターデーション上昇剤も、ドープに添加してもよい。それらは、セルローストリアセテートフイルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルローストリアセテート100重量部に対して、0.01乃至20重量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルローストリアセテート100重量部に対して、0.05乃至15重量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10重量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
【0028】
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
【0029】
ドープには、フイルムの易滑性や高湿度下での耐接着性の改良のために微粒子粉体であるマット剤を使用することができる。マット剤の表面の突起物の平均高さが0.005〜10μmが好ましく、より好ましくは0.01〜5μmである。また、その突起物は表面に多数ある程良いが、必要以上に多いとへイズとなり問題である。使用されるマット剤としては、無機化合物、有機化合物ともに使用可能である。無機化合物としては、硫酸バリウム、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウムなどの無機物の微粉末があるが、さらに例えば湿式法やケイ酸のゲル化より得られる合成シリカ等の二酸化ケイ素やチタンスラッグと硫酸により生成する二酸化チタン(ルチル型やアナタース型)等が挙げられる。また、粒径の比較的大きい、例えば20μm以上の無機物から粉砕した後、分級(振動ろ過、風力分級など)することによっても得られる。有機化合物としては、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリプピルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレンカーボネート、アクリルスチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系粉末、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、或いはポリ弗化エチレン系樹脂、澱粉等の有機高分子化合物の粉砕分級物もあげられる。あるいは又懸濁重合法で合成した高分子化合物、スプレードライ法あるいは分散法等により球型にした高分子化合物、または無機化合物を用いることができる。また、微粒子粉体は、あまり多量に添加するとフイルムの柔軟性が損なわれるなどの弊害も生じるため、セルローストリアセテートに対して0.001〜5重量%含有していることが好ましい。
【0030】
また、ドープには、必要に応じて更に種々の添加剤を溶液の調整前から調整後のいずれかの段階で添加してもよい。カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩などの熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、油剤などである。
【0031】
[膨潤工程]
始めに、前記セルローストリアセテート粒子と溶媒とを混合し、セルローストリアセテート粒子を溶媒により膨潤させる膨潤工程をおこなう。膨潤工程の温度は、−10〜55℃であることが好ましい。通常は室温で実施する。セルローストリアセテートと溶媒との比率は、最終的に得られる溶液の濃度に応じて決定する。一般に、混合物中のセルローストリアセテートの量は、5〜30重量%であることが好ましく、8〜20重量%であることがさらに好ましく、10〜15重量%であることが最も好ましい。溶媒とセルローストリアセテートとの混合物は、セルローストリアセテートが充分に膨潤するまで攪拌することが好ましい。また、膨潤工程において、溶媒とセルローストリアセテート以外の成分、例えば、可塑剤、劣化防止剤、染料や紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0032】
[加熱工程]
次に、上記ドープを130℃以上に加熱する加熱工程を行う。加熱は、図1に示したドープ調製ラインにより行なわれる。タンク10には、セルローストリアセテートが溶媒中で膨潤したドープが注入されている。このドープをスクリュー押出機12により加熱用熱交換器13に送液する。スクリュー押出機12には、ジャケット11が設けられており、このジャケット11中には冷媒が送られ、ドープが冷却される。次に、静止型混合器24を有する加熱用熱交換器13にドープが送られる。加熱用熱交換器13は、ジャケット13aを備えており、このジャケット13a中には熱媒が循環され、ドープは高温高圧状態にされる。この熱交換器13での加熱温度は、130℃以上、望ましくは160℃以上、最も望ましくは180℃以上である。しかしながら、250℃を超えると、ドープ中のセルローストリアセテートの分解が生じるため、フイルムの品質が損なわれ、好ましくはない。この場合において、加熱速度は、1℃/分以上であることが好ましく、2℃/分以上であることがより好ましく、4℃/分以上であることがさらに好ましく、8℃/分以上であることが最も好ましい。加熱速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加熱速度とは、加熱を開始する時の温度と最終的な加熱温度との差を、加熱開始時から最終的な加熱温度に達するまでの時間で割った値である。加熱は、図示した熱交換器13以外のオートクレーブ方式、多管式熱交換器、スクリュー押し出し機、スタチックミキサーなどを用いたいずれの方法であっても良い。
【0033】
また、加熱時間は、20秒以上4時間以下が好ましい。加熱時間が20秒に満たない場合、加熱溶解したドープに不溶解物が残存して高品質なフイルムを作製することができない。また、この不溶解物を濾過により取り除く場合でも、濾過寿命が極端に短くなることにより不利である。加熱時間の始期は、目的温度に達したときから測定するものとし、終期は、目的温度から冷却を開始したときとする。なお、装置の冷却は、自然冷却であっても良いし、強制的な冷却であっても良い。
【0034】
[加圧工程]
上記加熱工程において、溶液が沸騰しないように調整された圧力下で、溶媒の大気圧における沸点以上の温度までドープを加熱することが好ましい。例えば、図1に示した熱交換器13に具備されている静止型混合器(図示しない)によって、ドープを高温高圧状態にする。加圧することによって、ドープの発泡を防止して、均一なドープを得ることができる。この時、加圧する圧力は、加熱温度と溶媒の沸点との関係で決定する。
【0035】
[冷却工程]
上記ドープを、加熱工程の前に、−100〜−10℃に冷却する冷却工程を行うことも、光学的性質が良好なフイルムを得るために有効である。常温で容易に溶解し得ない系と、不溶解物の多くなる系では、冷却または加熱あるいは両者を組み合わせて用いると、良好なドープを調製できる。冷却することにより、セルローストリアセテート中に溶媒を急速かつ有効に浸透せしめることができ溶解が促進される。有効な温度条件は−100〜−10℃である。冷却工程においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。また、冷却時に減圧すると、冷却時間を短縮することができる。減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが望ましい。また、この冷却工程は、上記加熱工程の後に実施することも本発明において有効である。なお、溶解が不充分である場合は、冷却工程から加熱工程までを繰り返して実施してもよい。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察して判断できる。
【0036】
前記冷却工程において具体的な冷却手段としては、様々な方法または装置が採用できる。図1に示したドープ調製ラインでは、熱交換器13から送り出されたドープをスクリュー押出機14により冷却しつつ、熱交換器15に送液する。スクリュー押出機14は、ジャケット16とフライト17とスクリュー18とを有しており、ジャケット16内にはドープを冷却するために冷媒を流通させている。熱交換器15ではドープがさらに冷却されて、このドープ19はストックタンク20に溜まる。
【0037】
なお、図1に示したドープ調製ラインでは、冷却工程の前に加熱工程が行なわれていたが、本発明はその実施形態に限定されない。図2には、他の実施形態のドープ調製ラインを示した、なお、図1と同じ部材には同一の符号を付してある。図2に示したドープ調製ラインでは、スクリュー押し出し器14により冷却したドープ19を静止型混合器24を設置した加熱用熱交換器21に導いて高圧化で高温加熱を行なう。加熱されたドープ19は、フラッシュバルブ22を通して大気圧に近い圧力のフラッシュタンク23内にフラッシュされることで、ドープ19の蒸発潜熱によりドープ19自身の温度が下がり、フラッシュタンク23内にドープ19を溜めることができる。また、ドープを冷却する際にフライト17とスクリュー18との距離は、8mm以下であることが好ましい。また、冷却用熱交換器15内には固体状態になったドープをかきとるためのかきとり機25を設けることが好ましい。かきとり機25は、1軸スクリュー、2軸混練機などを用いることができる。また、スクリュー押出機12,14の効率を上げるために、スクリュー軸内にも冷媒を流通させても良い。また、スクリュー押出機14や熱交換器15では、冷媒によりドープを冷却するが、ドープと冷媒との温度差が100℃以下であることが好ましく、100℃を超える温度差がある場合には、ドープが急激に冷却されて流動性がなくなり、液面からの伝熱速度が著しく低下する。
【0038】
[溶液製造後の処理]
前記加熱工程によって調製されたドープは、必要に応じて濃度の調整(濃縮または希釈)、濾過、温度調整、成分添加などの処理を実施することができる。添加する成分は、製造されるセルローストリアセテートフイルムの用途に応じて決定する。代表的な添加剤は、可塑剤、剥離促進剤、劣化防止剤(例、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤)、染料および紫外線吸収剤である。
【0039】
[セルローストリアセテートフイルムの製造]
前記ドープから、溶液製膜法によって所望のセルローストリアセテートフイルムを製造する。ドープを支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%となるように濃度を調製することが好ましい。支持体表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。支持体としては、ドラムまたはバンドが用いられる。ドープは、バンド支持体上に乾燥後の厚さが80μmになるように流延する。この時、剪断速度500(1/秒)の剪断粘度が500ポアズ以下になるようにドープが調製されていることが、流延ビードを安定に維持することができる観点から好ましい。また、表面温度が10℃以下の支持体上に流延することが好ましい。
【0040】
最後に、支持体上のドープを乾燥するとフイルムが得られる。この場合において、乾燥は、2秒以上風に当てることが好ましい。得られたフイルムを支持体から剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させる。この場合において、得られたフイルムは、エタノールと塩化メチレンの混合溶液(混合比は、エタノール:塩化メチレンが10:90の重量比)に、フイルムが6重量%となるように(以下、6%溶液と称する)調製した。この6%溶液の粘度を、25℃の条件下で、オストワルド粘度計によって測定した。この6%溶液の粘度は、通常、落下式などの低剪断速度で測定されるために、濾過工程などの流動性の評価指標として用いられている。粘度が高いと濾過初期圧が高くなり結果的に濾過寿命が短くなることを意味する。一方、高剪断粘度はダイなどの内部流動の評価指標となる。
【0041】
得られたフイルムは、偏光板保護膜として用いることができる。この偏光板保護膜をポリビニルアルコールなどから形成された偏光膜の両面に貼付することで偏光板を形成することができる。さらに、フイルム上に光学補償シートを貼付した光学補償フイルム、防眩層をフイルム上に積層させた反射防止膜などの光機能性膜として用いることもできる。これら製品からは、液晶表示装置の一部を構成することも可能である。
【0042】
また、本発明の溶液製膜方法は、2種類以上のドープを調製して同時重層塗布による溶液製膜法にも適用可能である。例えば、同時3層塗布においてフイルムを形成する場合、内層用のドープにはセルローストリアセテートを多めに含有させ、内層の表面と裏面に形成される外層用のドープには、比較的セルローストリアセテートを少なめに含有させる。これらドープを同時に3層を共流延法により塗布して形成されたフイルムは平面性、透明性または成型加工性が良好になる。しかしながら本発明の溶液製膜法における共流延法は、この態様に限定される訳ではない。
【0043】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。また、各実施例および比較例において、フイルム中の不溶解物の有無、ドープの透明度、6%溶液の粘度及び剪断粘度についてを確認し、実施例の後に表1にまとめて示した。
【0044】
[実施例1]酢酸メチル90重量%、エタノール10重量%の混合溶液を作成した。この溶液に、セルローストリアセテート粒子(酢化度61%、80重量%以上の粒子が0.5〜4mmの粒子径)18.5重量部(以下、溶液に対する重量百分率を重量部と称する)を、トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)1.5重量部と共に、攪拌混合機に投入し、5分間攪拌した。その後、20℃にて15分間静置したところ、粒子の全てが膨潤した。この溶液を、窒素雰囲気に置換されたオートクレープ内に導入した。140℃、0.98MPaで10分間加熱した後、セルローストリアセテートが溶解したドープを得た。次に、このドープをバンド支持体上に、乾燥後の厚みが80μmになるように流延した。流延は、剪断速度が500(1/秒)になるように行い、この時の剪断粘度を測定した。最後に、ドープを支持体で乾燥した後に、剥ぎ取り、さらに130℃で30分乾燥して、サンプルフイルムを得た。また、得られたフイルムは、エタノールと塩化メチレンの混合溶液(エタノール:塩化メチレンが10:90の重量比)に、フイルムが6重量%となるように(以下、6%溶液)調製した。この溶液の粘度を、25℃の条件下で、オストワルド粘度計によって測定した。
【0045】
[比較例1] 実施例1と同様に、セルローストリアセテートを膨潤させた後、加熱は120℃、0.8MPaで10分間行った。得られたドープは、実施例1と同様の処理を行った。
【0046】
[実施例2]混合溶媒は、酢酸メチル85重量%、エタノール5重量%、シクロヘキサノン10重量%になるように調製した。この混合溶媒に、実施例1と同様にセルローストリアセテートを膨潤させた後、加熱は、170℃、2.0MPaで20分間行った。得られたドープは、実施例1と同様の処理を行った。
【0047】
[比較例2]実施例1と同様に、セルローストリアセテートを膨潤させた後、加熱は180℃、1.5MPaで5時間行った。得られたドープは、実施例1と同様の処理を行った。
【0048】
[実施例3]混合溶媒は、アセトン90重量%、エタノール10重量%になるように調製した。膨潤させる際に、TPPと共に、t−ブチルアミンを0.5重量部を加えた後、実施例1と同様の方法により、セルローストリアセテートを膨潤させた。加熱は、180℃、2.5MPaで40分間行った。得られたドープは、実施例1と同様の処理を行った。
【0049】
[実施例4]混合溶媒は、酢酸メチル90重量%、メチルエチルケトン10重量%となるように調製した。膨潤させる際に、TPPと共に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を0.2重量部を加え、実施例1と同様の方法によりセルローストリアセテートを膨潤させた。次に、加熱は、180℃、2.5MPaで30分間行った。得られたドープは、実施例1と同様の処理を行った。
【0050】
[比較例3]溶媒には、酢酸メチルのみを使用した。セルローストリアセテート24.0重量部を、TPP1.5重量部と共に、実施例1と同様の方法により膨潤させた。加熱は180℃、2.5MPaで50分間行った。得られたドープを、バンド上に流延したが流延ビードが安定に形成できず連続流延はできなかった。
【0051】
[実施例5]本実施例は、コア層の両面に外層を同時に塗布する、多層塗布を行った。混合溶媒は、酢酸メチル80重量%、シクロヘキサノン20重量%となるように調製した。コア層のドープは、実施例1と同様のセルローストリアセテート粒子18.5重量部と、TPP1.5重量部と、t−ブチルアミンを0.5重量部を加え、実施例1と同様の方法により膨潤させた。コア層の両面に形成される外層のドープは、コア層と同様のセルローストリアセテート粒子18.5重量部と、TPP1.5重量部と、t−ブチルアミン0.5重量部に、さらに、平均粒径0.2μmの無機粒子0.5重量部を加え、コア層と同様の方法により膨潤させた。加熱は、それぞれ180℃、2.5MPaで40分間おこなった。流延は、両面外層(乾燥後それぞれ5μm)とコア層(乾燥後70μm相当)を同時に、多層塗布を行った。剪断粘度の測定および6%粘度の測定は、コア層について行った。
【0052】
【表1】
【0053】
表1は、上記フイルムの製造工程における、フイルム中の不溶解物、ドープの透明度、6%溶液の粘度および剪断粘度をまとめて示した。比較例1の加熱温度(120℃)は、実施例1の加熱温度(130℃)より低いため、透明なドープが得られなかった。これは、セルローストリアセテートが、混合溶媒中に均一に溶解または分散する温度に達しなかったからである。また、実施例2は、混合溶媒に、酢酸メチル、エタノールおよびシクロヘキサノンを混合したものを使用した。この場合、実施例1と同様なフイルムが得られたことが表1から分かる。このことは、本発明の適用溶媒は、シクロヘキサノンなどのケトン類を複数混合したものにも適用可能であることがわかる。
【0054】
比較例2は、加熱時間を5時間まで延長して行っている。ドープは、褐色に着色した。これは、ドープの加熱時間が長いために、セルローストリアセテートが、徐々に変性したためである。本発明の加熱時間は、4時間を超えるとセルローストリアセテートが変性するため好ましくない。
【0055】
実施例3は、溶媒に、酢酸メチルを使用せず、溶媒に、アセトンとエタノールを重量比で90:10のものを使用している。また、溶液を加熱する際に、添加剤であるt−ブチルアミンを付与している。この場合においても、透明なドープが得られ、また製膜後のフイルムには不溶解物は認められなかった。すなわち、本発明において、溶媒は、酢酸メチルに限定されず、ケトン類とアルコール類の混合溶媒であっても良い。また、ドープの調製およびフイルムの製膜において、添加剤が付与されていることは、何ら影響しないことが分かる。また、実施例4は、溶媒には、酢酸メチルとメチルエチルケトンを使用し、添加剤は、紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール系を付与した。本例においても、実施例1と同様に、透明なドープが得られ、また、製膜後のフイルムには不溶解物が認められなかった。このように、本発明の溶媒は、エステル類、アルコール類およびケトン類を組み合わせて使用しても良い。また、添加剤も、可塑剤であるTPPに限定されず、t−ブチルアミンおよび紫外線吸収剤であるベンゾトリアゾール類であっても適用できる。
【0056】
比較例3は、セルローストリアセテート粒子の量を変更している。すなわち、他の例においては、セルローストリアセテート粒子18.5重量部からドープを調製したが、本例では、セルローストリアセテート粒子24.0重量部からドープの調製を試みた。しかしながら、本例においては、得られたドープが白濁して、良好なフイルムが得られなかった。
【0057】
実施例5は、本発明を多層塗布法に適用した例である。表1には、コア層の剪断粘度および6%溶液の粘度を示した。本例においても、透明なドープが得られ、また、製膜されたフイルム中には不溶解物は認められなかった。このように、本発明は、従来から行なわれている多層塗布法に、何ら装置を変えることなく適用が可能である。
【0058】
表1において、実施例1〜5は透明なドープが得られ、また、形成されたフイルム中に不溶解物が認められなかった。この時、剪断粘度が210〜265Pの範囲であり、かつ、6%溶液の粘度が423〜512cPの範囲であった。この範囲の粘性を有するドープは、セルローストリアセテートを溶解または分散するため、透明になり、かつ製膜のための流延が安定化できる。このドープから製膜されたフイルムには不溶解物が存在しない。
【0059】
実施例1〜5の方法で製膜したフイルムを、偏光板保護膜とする偏光板を作成し、耐久性を評価した。偏光板サンプルは、ポリビニルアルコールを延伸してヨウ素を吸着させた偏光素子の両面に、ポリビニルアルコール系接着剤により貼合して、作製した。この偏光板サンプルを60℃、湿度90%RHの雰囲気下で500時間暴露した。
【0060】
偏光度の評価方法は、分光光度計により可視領域における偏光透過率Yp、直行透過率Ycを求め、次式に基づき偏光度Pを決定する。
P=√((Yp−Yc)/(Yp+Yc))×100 (%)
いずれの偏光板サンプルも、偏光度は99.6%以上であり、十分な耐久性が認められた。
【0061】
次に、ドープを冷却溶解する際における条件の検討実験を実施例6及び比較例4として行なった。また、実施例7においては共流延による重層流延の実験を行なった。これら各実験からフイルムを作成し、偏光板を作成した。さらに、フイルムから反射防止膜を作製してその評価も行なった。なお、以降の実験においては、特に明記していない点は上述した実施例1と同じ方法で実験した。
【0062】
[ドープの調製]
攪拌羽根を有するステンレス性溶解タンクに、混合溶媒(酢酸メチル58重量部、シクロペンタノン10重量部、アセトン5重量部、メタノール5重量部、エタノール5重量部)によく攪拌しつつ、セルローストリアセテート粉体(平均サイズ2mm、置換度2.83、6位のアセチル化の置換度0.85、2,3位の置換度1.98、粘度平均重合度320、含水率0.4重量%、メチレンクロライド溶液中6重量%の粘度305mPa・s)16重量部を徐々に添加してドープを調製した。この時、適宜添加剤も加えた。添加剤には、可塑剤A(ジペンタエリスリトールヘキサアセテート)3重量部、可塑剤B(トリフェニルフォスフェート)3重量部、微粒子粉体(シリカ(粒径20nm))0.1重量部、紫外線吸収剤a:(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン0.1重量部、紫外線吸収剤b:2(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−tert- ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール0.1重量部、紫外線吸収剤c:2(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール0.1重量部、モノ(ドデシルオキシエチル)リン酸エステルジカリウム塩(C12H25OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2 )0.05重量部を用いた。粉体と添加剤とを添加した後に室温(25℃)にて3時間、25℃で放置しセルローストリアセテートを膨潤させた。なお、溶媒である酢酸メチルとシクロペンタノン、アセトン、メタノール及びエタノールは、すべてその含水率が0.2重量%以下のものを利用した。
【0063】
[実施例6]前述したドープを180℃に加熱した後にスクリュー押し出し機で送液して、−70℃で1.5分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒(3M社製フロリナート)を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液は静止型混合器(ケニックス社製スタティックミキサー)を設置した熱交換器により3MPaの加圧下で180℃まで温度を上昇させ、2分間保持したのち冷媒を流通したジャケットを設置したスクリュー型の冷却装置により均一に冷却した。冷却条件としては、スクリューとフライトとの間隔を0.3mmとし、冷媒温度を100℃した。さらに静止型混合器(ケニックス社製スタティックミキサー)を具備した2重管型の熱交換器に導入し、40℃の冷媒により冷却し50℃としてステンレス製タンクに移送し、50℃で30分攪拌し脱泡を行った。
【0064】
[比較例4]実施例6と同じく180℃に加熱したドープを2重管式の熱交換器に導き、ジャケット部に40℃の冷媒を流通させて冷却を試みたところ、管壁での急激な冷却のために壁面近傍のドープの粘度が増加して流動性が著しく低下した。このためにジャケットからの伝熱は著しく損なわれ配管内の中央部のみ高温のドープが冷却されないままに通過したため、製膜可能なドープは得られなかった。
【0065】
[フイルムの作成]
実施例6で調製したドープを絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過した後に、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。この濾過されたドープを50℃に加熱し、流延ギーサーを通して鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延条件は特に明記しない点以外は実施例1と同じである。支持体温度を25℃とし、流延スピードは4 0m/minで、その塗布幅は100cmとした。乾燥は120℃の乾燥風を送風した。2分後に鏡面ステンレス支持体から剥ぎ取った後に110℃、10分、更に150℃で30分乾燥して、膜厚40μmのセルローストリアセテートフイルムを得た。
【0066】
[実施例7]実施例7においては、共流延による重層流延法によりフイルムを製膜した。始めに、内層用のドープの調製を行なった。内層用ドープは、攪拌羽根を有するステンレス性溶解タンクに、混合溶媒(酢酸メチル53重量部、シクロペンタン10重量部、アセトン5重量部、メタノール5重量部、エタノール5重量部)によく攪拌しつつ、セルローストリアセテート粉体(平均サイズ2mm、置換度2.83、6位の置換度0.90、2,3位の置換度の合計1.93、粘度平均重合度320、含水率0.4重量%、メチレンクロライド溶液中6重量%の粘度305mPa・s)6重量部を徐々に添加して調製した。この時適宜、添加剤(可塑剤A(ジペンタエリスリトールヘキサアセテート)3重量部、可塑剤B(トリフェニルフォスフェート)3重量部、微粒子粉体(シリカ(粒径20nm)0.1重量部、紫外線吸収剤a:(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン0.1重量部、紫外線吸収剤b:2(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール0.1重量部、紫外線吸収剤c:2(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール0.1重量部、モノ(ドデシルオキシエチル)リン酸エステルジカリウム塩(C12H25OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2 )0.05重量部を添加した。添加後、室温(25℃)にて3時間、25℃にて放置しセルローストリアセテートを膨潤させた。なお、溶媒である酢酸メチルとシクロペンタノン、アセトン、メタノール及びエタノールは、すべてその含水率が0.2重量%以下のものを利用した。なお、後述する冷却溶解法で得られたこの溶液の粘度は60Pa・s(45℃)であった。
【0067】
次に、外層用ドープの調製を行なった。前述した内層用ドープの組成比をセルローストリアセテートを13重量部、酢酸メチルを56重量部に変更した以外は内層用ドープと同じ組成比で調製した。
【0068】
さらに、内層用ドープの冷却溶解を行なった。内層用ドープをスクリュー押し出し機で送液して、−70℃で3分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒(3M社製フロリナート)を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液は静止型混合器を設置した熱交換器により3MPaの加圧下で180℃まで温度を上昇させ、2分間保持したのち冷媒を流通したジャケットを設置したスクリュー型の冷却装置により均一に冷却した。冷却条件としては、スクリューとフライトとの間隔が0.3mmとし、冷媒温度を100℃した。このドープを加圧状態から大気圧に急速に開放することでフラッシュさせ、54℃としてステンレス製タンクに移送し、50℃で180分攪拌し脱泡を行った。このように調製したポリマー溶液を絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過した。さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
【0069】
これらのドープを、三層共流延ダイを用いて、内層用ドープが内側に、外層用ドープが両外側になるように配置してハードクロム鍍金を施した金属ドラム支持体上に同時に吐出させて重層流延した後、流延膜を支持体から剥ぎ取り、乾燥して、本発明の三層構造のセルロースアセテートフイルム積層体(内層の厚さ:76μm、各表面層の厚さ:2μm)を製造した。
【0070】
[偏光板の作製]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例6および実施例7で作成したセルローストリアセテートフイルムを、その遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように両側に貼り付けた。この偏光板サンプルを80℃、90%RHの雰囲気下で500時間暴露した。
【0071】
[偏光度の評価方法]
分光光度計により可視領域における並行透過率Yp、直行透過率Ycを求め次式に基づき偏光度Pを決定した。
P=√((Yp−Yc)/(Yp+Yc))×100 (%)
いずれの実施例においても偏光度は99.6%以上であり、十分な耐久性が認められた。
【0072】
[光学補償フイルムの作製]
延伸したポリビニルアルコールフイルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、実施例6のセルローストリアセテートフイルムを、その遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように片側に貼り付けた。さらに実施例6のセルローストリアセテートフイルムにケン化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側に貼り付けた。更に、光学補償シート(富士写真フイルム(株)製WVフィル)を同偏光板のセルロールアセテートフイルム側にその遅相軸が互いに平行となるように粘着剤を介して貼り合わせた。このようにして光学補償膜を貼合した光学補償フイルムを作製した。また、実施例7から作成されたセルローストリアセテートフイルムからも同じ条件で光学補償フイルムを作成した。
【0073】
実施例6のフイルムから作成した光学補償フイルム1組をTFT(薄膜トラジスター)方式の液晶表示装置に実装した結果、良好な視野角およびコントラストを達成することができた。また、実施例7のフイルムから作成した光学補償フイルムについても同じ実験を行なったところ、良好な視野角およびコントラストが達成された。
【0074】
[反射防止膜の作製]
実施例6および実施例7の条件にて製造した各フイルムを使って塗工による反射防止膜を下記の手順により作製した。
【0075】
(防眩層用塗布液Aの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)125g、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド(MPSMA、住友精化(株)製)125gを、439gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=50/50重量%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)5.0gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)3.0gを49gのメチルエチルケトンに溶解した溶液を加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.60であった。さらに、この溶液に平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)10gを添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層の塗布液Aを調製した。
【0076】
(防眩層用塗布液Bの調製)
シクロヘキサノン104.1g、メチルエチルケトン61.3gの混合溶媒に、エアディスパで攪拌しながら酸化ジルコニウム分散物含有ハードコート塗布液(デソライトKZ−7886A、JSR(株)製)217.0gを添加した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。さらに、この溶液に平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)5gを添加して、高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌、分散した後、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層の塗布液Bを調製した。
【0077】
(防眩層用塗布液Cの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)91g、酸化ジルコニウム分散物含有ハードコート塗布液(デソライトKZ−7115、JSR(株)製)199g、および酸化ジルコニウム分散物含有ハードコート塗布液(デソライトKZ−7161、JSR(株)製)19gを、52gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46重量%の混合溶媒に溶解した。得られた溶液に、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)10gを加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。さらに、この溶液に平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子(商品名:SX−200H、綜研化学(株)製)20gを80gのメチルエチルケトン/シクロヘキサノン=54/46重量%の混合溶媒に高速ディスパにて5000rpmで1時間攪拌分散した分散液29gを添加、攪拌した後に孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩層の塗布液Cを調製した。
【0078】
(ハードコート層用塗布液Dの調製)
紫外線硬化性ハードコート組成物(デソライトKZ−7689、72重量%、JSR(株)製)250gを62gのメチルエチルケトンおよび88gのシクロヘキサノンに溶解した溶液を加えた。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.53であった。さらに、この溶液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層の塗布液Dを調製した。
【0079】
(低屈折率層用塗布液の調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(TN−049、JSR(株)製)20093gにMEK−ST(平均粒径10〜20nm、固形分濃度30重量%のSiO2 ゾルのMEK分散物、日産化学(株)製)8g、およびメチルエチルケトン100gを添加、攪拌の後に径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0080】
実施例6で作製した80μmの厚さのセルローストリアセテートフイルム上に前記ハードコート層用塗布液Dをバーコーターを用いて塗布し、120℃で乾燥の後に160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2 、照射量300mJ/cm2 の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ2.5μmのハードコート層を形成した。その上に、前記防眩層用塗布液Aをバーコーターを用いて塗布し、上記ハードコート層と同条件にて乾燥した後に紫外線硬化して、厚さ約1.5μmの防眩層Aを形成した。さらに、その上に前記低屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、80℃で乾燥の後に120℃で10分間熱架橋し、厚さ0.096μmの低屈折率層を形成した。
【0081】
次に実施例6のフイルムを用いて、防眩層用塗布液Aを防眩層用塗布液Bに代え、その他の条件は同じにした反射防止膜を作成した。さらに、防眩層用塗布液Aを防眩層用塗布液Cに代え、その他の条件は同じにした反射防止膜も作成した。
【0082】
実施例7のフイルムからも、防眩層用塗布液A,B,Cを1つずつ用いて前述した反射防止膜の作成条件を同じにしてそれぞれの反射防止膜を作成した。
【0083】
[反射防止膜の評価]
前述した作成方法で、実施例6のフイルム(防眩層A,B,C)及び実施例7のフイルム(防眩層A,B,C)から形成された6種類の反射防止膜について以下の項目の評価を行った。また、実施例1のフイルムからも前述した方法により反射防止膜を作成した。なお、この反射防止膜の防眩層には防眩層用塗布液Aを用いた。以下の評価方法から得られた結果については後に表2にまとめて示す。
【0084】
(1)鏡面反射率及び色味
分光光度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターARV−474を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における出射角−5度の鏡面反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価した。さらに、測定された反射スペクトルから、CIE標準光源D65の5度入射光に対する正反射光の色味を表わすCIE1976L*a*b*色空間のL*値、a*値、b*値を算出し、反射光の色味を評価した。
【0085】
(2)積分反射率
分光光度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターILV−471を装着して、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における積分反射率を測定し、450〜650nmの平均反射率を算出した。
【0086】
(3)ヘイズ
得られたフイルムのヘイズをヘイズメーターMODEL 1001DP(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0087】
(4)鉛筆硬度評価
耐傷性の指標としてJIS K 5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。反射防止膜を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS S 6006に規定する3Hの試験用鉛筆を用いて、1kgの荷重にて、n=5の評価において傷が全く認められない(○)、n=5の評価において傷が1または2つ(△)、n=5の評価において傷が3つ以上(×)の基準で評価をして表2中に示した。
【0088】
(5)接触角測定
表面の耐汚染性の指標として、光学材料を温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、水に対する接触角を測定し、指紋付着性の指標とした。
【0089】
(6)動摩擦係数測定
表面滑り性の指標として動摩擦係数にて評価した。動摩擦係数は試料を25℃、相対湿度60%で2時間調湿した後、HEIDON−14動摩擦測定機により5mmφステンレス鋼球、荷重100g、速度60cm/minにて測定した値を用いた。
【0090】
(7)防眩性評価
作成した防眩性フイルムにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/m2 )を映し、その反射像のボケの程度を、蛍光灯の輪郭が全くわからない(◎)、蛍光灯の輪郭がわずかにわかる(○)、蛍光灯はぼけているが、輪郭は識別できる(△)、蛍光灯がほとんどぼけない(×)の基準で評価して表2中に示した。
【0091】
【表2】
【0092】
実施例6及び実施例7のフイルムから形成された反射防止膜は、いずれも防眩性、反射防止性に優れ、且つ色味が弱く、また、鉛筆硬度、指紋付着性、動摩擦係数のような膜物性を反映する評価の結果も良好であった。また、実施例1のフイルムを用いて形成された反射防止膜を最表層に配置した液晶表示装置を作成したところ、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、防眩性により反射像が目立たず優れた視認性を有し、指紋付も良好であった。
【0093】
【発明の効果】
本発明により、ハロゲンを含まない溶媒を用いて、130℃以上の温度で、膨潤したセルローストリアセテートを処理するので、常温では溶解しがたい、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキソランなどの溶剤にセルローストリアセテートを効率良く溶解することができる。また、得られたドープから形成されるセルロースアセテートフイルムは、優れた光学的性質や物性を有する。
【0094】
さらに、このフイルムから作成される偏光板保護膜、偏光板、光学性機能膜、液晶表示装置は、十分な耐久性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶液製膜方法のドープ調製ラインの概略図である。
【図2】本発明に係る溶液製膜方法のドープ調製ラインの他の実施形態の概略図である。
【符号の説明】
10 タンク
11,13a,16 ジャケット
12,14 スクリュー押出機
13,21 加熱用熱交換器
15 冷却用熱交換器
17 フライト
18 スクリュー
19 ドープ
20 タンク
22 フラッシュバルブ
23 フラッシュタンク
24 静止型混合器
25 かきとり機
Claims (5)
- ハロゲンが非含有の溶媒にセルローストリアセテートを溶解した溶液を用いて溶液製膜する溶液製膜方法において、
セルローストリアセテートが前記溶媒中で膨潤している膨潤液を、130℃以上の温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程を経た前記膨潤液をフラッシュさせることにより−100〜−10℃の温度に冷却する冷却工程とを有することを特徴とする溶液製膜方法。 - 前記加熱工程では前記膨潤液を加圧し、
前記冷却工程では、前記加熱工程で加圧された前記膨潤液をフラッシュさせることにより温度低下させることを特徴とする請求項1記載の溶液製膜方法。 - 前記溶媒が、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジオキソランのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1または2記載の溶液製膜方法。
- 前記セルローストリアセテートの酢化度が59.0〜62.5%であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つ記載の溶液製膜方法。
- セルローストリアセテートの分散物または溶液を用いて溶液製膜する溶液製膜方法において、
前記セルローストリアセテートの6位のアセチル基置換度Xが残余の置換度Yとの関係において下記(1)の関係を満たすことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の溶液製膜方法。
X≧0.7、X+Y≧2.71....(1)
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