JP4466136B2 - 頭部保護エアバッグ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて窓の車内側を覆うように展開膨張する構成の頭部保護エアバッグを備えた頭部保護エアバッグ装置に関する。
従来、頭部保護エアバッグ装置に使用されるエアバッグは、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した袋織りから形成されて、膨張完了時の内圧を保持するために、外周面に、略全面にわたって、シリコン等からなるガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布されている構成であった(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−233156公報
しかし、従来のエアバッグでは、外周面の略全面にわたって、シリコン等のコーティング剤を塗布させて気密性を高めていることから、膨張を完了させたエアバッグが乗員の頭部と干渉した際の内圧の上昇を抑え難かった。そのため、乗員保護時の内圧上昇を抑え、かつ、エネルギー吸収量を大きくして、乗員の頭部を保護する点に、改善の余地があった。
本発明は、上述の課題を解決するものであり、乗員の頭部が干渉した際の内圧の上昇を抑え、かつ、エネルギー吸収量を大きくして、乗員の頭部を保護可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて前記窓の車内側を覆うように展開膨張する構成の頭部保護エアバッグを備えた頭部保護エアバッグ装置において、
エアバッグが、膨張完了時に乗員の頭部を保護可能に、車内側壁部と車外側壁部とを相互に離隔するように膨張する保護膨張部を備える構成とされ、
保護膨張部の車内側壁部と車外側壁部とが、共に織布から構成されるとともに、一方を、織布にガス漏れ防止用のコーティング層を設けたコート布とし、他方を、コーティング層を有しないノンコート布として、構成され、
ノンコート布が、JIS L 1096の8.27.1におけるフラジール形法(A法)により測定した通気度Hを、5.0cm/cm・s≦H≦25.0cm/cm・sの範囲内に設定された織布、により構成され
インフレーターが、エアバッグの容量に対する出力比(インフレーター出力/エアバッグ容積)X(KPa/L)を、8≦X≦18の範囲内に設定されていることを特徴とする。
本発明の頭部保護エアバッグ装置では、保護膨張部を構成する車内側壁部または車外側壁部のどちらか一方の壁部を、コーティング層を有しないノンコート布から、構成している。そのため、膨張完了時のエアバッグの保護膨張部に乗員の頭部が干渉すると、ノンコート布から構成された車内側壁部または車外側壁部側から、膨張用ガスが漏れて、保護膨張部の内圧上昇を抑えることができる。その結果、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、従来のごとく、外周面に、略全面にわたって、シリコン等からなるコーティング剤を塗布させた構成の頭部保護エアバッグと比較して、乗員の頭部干渉時における内圧の上昇を抑えることができる。また、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、ノンコート布とした車内側壁部または車外側壁部の略全域から、均一に膨張用ガスが漏れることから、膨張を完了させたエアバッグの内圧が局部的に上昇することを抑えることができて、乗員の頭部が干渉した際に生ずるエネルギーを、均一に、吸収することができる。
従って、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、乗員の頭部が干渉した際の内圧の上昇を抑え、かつ、エネルギー吸収量を大きくして、乗員の頭部を保護することができる。
また、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、保護膨張部を構成する車内側壁部あるいは車外側壁部のどちらか一方の壁部が、織布にガス漏れ防止用のシリコン等からなるコーティング層を設けたコート布から、構成されている。車内側壁部を、その外表面側にコーティング層を設けたコート布から、構成する場合、車内側壁部をノンコート布から構成する場合と比較して、コーティング層によって、車内側壁部表面の摩擦係数を上げることができ、乗員頭部の干渉時に、乗員頭部が車内側壁部に対して滑り難く、乗員頭部の拘束性能を高めることができる。逆に、車外側壁部を、その外表面側にコーティング層を設けたコート布から、構成する場合、仮に、車外側壁部の車外側に配設される窓ガラス等が割れても、コーティング層に保護されて、車外側壁部が損傷を受け難く、また、車内側壁部がノンコート布から構成されることから、外表面側にコーティング層を設けた場合に比べて、車内側壁部表面の摩擦係数を低下させることができ、乗員頭部と窓との間の隙間が狭くとも、エアバッグの展開膨張時に、この隙間に円滑に展開させることができて、乗員頭部と窓との間の隙間を大きく確保し難い小型車に、好適となる。
具体的には、エアバッグの膨張完了時における保護膨張部の厚さ寸法tを、100mm≦t≦280mmの範囲内に、設定させる構成とすることが好ましい。
さらに、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、コート布を構成する織布の糸密度を、ノンコート布を構成する織布の糸密度より、小さく設定させる構成とすることが好ましい。
頭部保護エアバッグ装置を上記構成とすれば、車外側壁部を構成する織布と、車内側壁部を構成する織布と、を同じ糸密度に設定したエアバッグと比較して、コート布を構成する織布の糸密度を小さくした分、エアバッグを軽量化することができる。また、上記構成の頭部保護エアバッグ装置では、コート布からなる壁部の厚さ寸法を、ノンコート布からなる壁部の厚さ寸法と比較して、小さく設定できることから、車外側壁部を構成する織布と、車内側壁部を構成する織布と、を同じ糸密度に設定したエアバッグと比較して、折り畳み形状をコンパクトにすることができる。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の頭部保護エアバッグは、図1に示す車両Vに搭載される頭部保護エアバッグ装置Mに、使用されるものであり、車内側のドアや窓W1・W2及びリヤピラー部RPの上縁側におけるフロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRに、折り畳まれて収納されている。なお、この車両Vは、フロントピラー部FPとリヤピラー部RPとの間に、略上下方向に沿うセンターピラー部CPを配設させて、構成されている。
頭部保護エアバッグ装置Mは、図1に示すように、インフレーター8、取付ブラケット9・13、取付ボルト10・14、及び、エアバッグ18、を備えて構成され、車両Vへの搭載時に、車内側をエアバッグカバー16に覆われて収納されている。エアバッグカバー16は、実施形態の場合、フロントピラー部FPの車内側を覆うフロントピラーガーニッシュ3の下縁側部位と、ルーフサイドレール部RRの車内側を覆うルーフヘッドライニング4の下縁側部位と、から、構成されている。
フロントピラーガーニッシュ3やルーフヘッドライニング4は、合成樹脂製として、図示しない取付手段によって、フロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRにおけるボディ1側の部材であるインナパネル2の車内側に、取り付けられている。そして、これらの下縁側部位は、展開膨張時のエアバッグ18を突出可能とするように、下端側を車内側に開き可能に、構成されている。
インフレーター8は、略円柱状とされて、先端(前端)側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている構成である。そして、このインフレーター8は、ガス吐出口付近を含めた先端付近をエアバッグ18のガス流入口部22に挿入させ、ガス流入口部22の後端付近に外装されるクランプ11を利用して、エアバッグ18に対して、連結されている。また、インフレーター8は、インフレーター8を保持する取付ブラケット9と、取付ブラケット9をボディ1側のインナパネル2に固定するための取付ボルト10と、を利用して、インナパネル2に取り付けられている。
また、実施形態の場合、インフレーター8として、エアバッグ18の容量に対する出力比(インフレーター出力/エアバッグ容量)X(KPa/L)が、8≦X≦18(望ましくは10≦X≦15)の範囲内に設定されるものを使用することが、望ましい。インフレーター出力比Xが8KPa/L未満では、膨張完了時のエアバッグの所定の内圧が確保し難く、逆に、インフレーター出力比Xが18KPa/Lを超えると、膨張完了時のエアバッグの内圧が高すぎて、共に、乗員の頭部を的確に保護する点に問題が生ずることとなるためである。実施形態においては、インフレーター8として、出力比Xが10.4KPa/Lに設定されているものを使用している(インフレーター出力:260KPa(28.3Lタンク)、エアバッグ18の後述するガス流入部19の容量:25L)。
なお、このインフレーター8の車両Vへの搭載は、インフレーター8とエアバッグ18とを組み付けた状態のエアバッグ組付体として、行なわれる。
エアバッグ18は、折り畳まれた状態で、斜め上方に延びるように配設されたフロントピラー部FPから、センターピラー部CPの上方を超えて、リヤピラー部RPの上方となる位置までのルーフサイドレール部RRに、収納されている。そして、エアバッグ18は、膨張完了時、図1の二点鎖線に示すように、窓W1・W2やセンターピラー部CP・リヤピラー部RPのそれぞれの車内側を覆うように、構成されている。
エアバッグ18は、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等を使用した袋織りとされている。また、エアバッグ18は、車内側壁部19aと車外側壁部19bとを相互に離隔させるようにして膨張用ガスGを内部に流入可能なガス流入部19と、膨張用ガスGを流入させない非流入部29と、から構成されている。そして、実施形態のエアバッグ18では、図3に示すように、車外側壁部19bの外周面に、全面にわたって、コーティング層37を、配設させている構成である。すなわち、実施形態のエアバッグ18は、車外側壁部19b側をコーティング層37を設けたコート布とし、車内側壁部19a側をコーティング層を有しないノンコート布として、構成されている。
ガス流入部19は、実施形態の場合、ガス供給路部21、ガス流入口部22、及び、保護膨張部23、から構成されている。通常、頭部保護エアバッグでは、ガス流入部19の容量は、10〜40L程度に設定されており、実施形態のエアバッグ18では、ガス流入部19の容量は、25Lに設定されている。
ガス供給路部21は、エアバッグ18の上縁18a側で、車両Vの前後方向に沿って、配設されている。そして、実施形態の場合、ガス供給路部21は、後述する前側保護部24に配設される縦膨張部27Bの上端側と、後述する後側膨張部25に配設される縦膨張部27Eの上端側と、を連結するように、配設されている。また、ガス供給路部21は、インフレーター8から吐出される膨張用ガスGを、ガス供給路部21の下方側に配設される保護膨張部23に案内する構成である。そして、ガス供給路部21の前後方向における中間部位(実施形態の場合、前側保護部24における縦膨張部27Cの上部側となる部位)には、インフレーター8と接続されるガス流入口部22が、ガス供給路部21と連通されて、エアバッグ18から上方に突出するように、配設されている。実施形態の場合、ガス流入口部22は、後端側を、開口させて構成されている。
保護膨張部23は、エアバッグ18の展開膨張時に、窓W1・W2の車内側を覆うように配設されて、乗員の頭部を保護する部位である。保護膨張部23は、膨張完了時に前席側方において窓W1の車内側を覆うように配設される前側保護部24と、後席側方において窓W2の車内側を覆うように配設される後側保護部25と、を備えて構成されている。
各前側・後側保護部24・25は、その領域内に、後述する区画結合部32により区画されて、それぞれ、上下方向に沿って配設される複数の縦膨張部27を、前後に並設させて構成されている。実施形態の場合、前側保護部24は、3つの縦膨張部27A・27B・27Cから構成され、後側保護部25は、2つの縦膨張部27D・27Eから構成されている。各縦膨張部27B・27Eは、上端側を、それぞれ、ガス供給路部21に連通されている。残りの縦膨張部27A・27C・27Dは、上端側を閉塞されている構成である。そして、縦膨張部27A・27Cは、下端側を、縦膨張部27Bの下端側と連通され、縦膨張部27Dは、下端側を、縦膨張部27Eの下端側と連通されている。すなわち、縦膨張部27A・27C・27Dは、縦膨張部27B・27Eを介して、膨張用ガスGを流入させる構成である。
そして、実施形態のエアバッグ18では、各縦膨張部27は、膨張完了時の厚さ寸法tを、100mm≦t≦280mm(望ましくは120mm≦t≦250mm、さらに望ましくは140mm≦t≦200mm)の範囲内に設定されている。膨張完了時の厚さ寸法が100mm未満では、薄すぎて、乗員の頭部が干渉した際に乗員の頭部を的確に保護できず、逆に、280mm以上では、厚すぎて、エアバッグ18の展開膨張時において、乗員の頭部と窓との間の隙間が狭い場合、その隙間に円滑に侵入しがたくなって、迅速に展開できないためである。実施形態の場合、図3に示すように、縦膨張部27A・27B・27Eが、膨張完了時の厚さ寸法t1・t2・t5を、それぞれ、150mmに、設定されている。そして、縦膨張部27Cは、膨張完了時の厚さ寸法t3を、100mmに設定されており、縦膨張部27Dは、膨張完了時の厚さ寸法t4を、130mmに設定されている。
実施形態のエアバッグ18では、縦膨張部27Cが、膨張完了時の厚さ寸法t3を、他の縦膨張部27A・27B・27D・27Eの厚さ寸法t1・t2・t4・t5より小さくするように、設定されている。縦膨張部27Cの部位は、エアバッグ18の展開膨張時に、センターピラー部CPの車内側を覆うように配設される部位であって、センターピラーガーニッシュ5と、ピラーガーニッシュ5の車内側に位置する座席と、の間の狭い隙間に展開させる必要があることから、エアバッグ18の展開膨張時に、膨張用ガスをあまり流入させない薄い状態で展開させることが好ましい。また、センターピラーガーニッシュ5は、周囲の窓W1・W2よりも車内側に突出するように配設されることから、エアバッグ18の膨張完了時に、センターピラーガーニッシュ5の車内側を覆うように配設される縦膨張部27Cの部位は、膨張完了時の厚さ寸法を、周囲の縦膨張部27よりも小さく設定されることが、好ましい。そのため、実施形態のエアバッグ18では、縦膨張部27Cは、後述する区画結合部32Aに配設される延設部32aにより、前後方向の略中央部位における上端付近の部位を区画されて、他の縦膨張部27A・27B・27D・27Eよりも、膨張完了時の厚さ寸法t3を小さくするように、設定されている。
非流入部29は、車内側壁部19aと車外側壁部19bとを結合させた構成とされており、実施形態の場合、取付部30、周縁結合部31、区画結合部32、及び、板状部33、から構成されている。周縁結合部31は、エアバッグ18の外周縁の部位に配設されて、ガス流入部19の周囲を囲むように、配設されている。また、周縁結合部31の前端には、連結布35が、連結されている。
取付部30は、エアバッグ18の上縁18a側における周縁結合部31の上縁側の部位や、連結布35の上縁側から、上方へ突出するように、複数(実施形態では6個)配設されている。各取付部30には、エアバッグ18をインナパネル2に取り付けるための取付ブラケット13が固着されることとなる(図4参照)。そして、各取付部30は、取付ボルト14を使用して、取付ブラケット13ごと、ボディ1側のインナパネル2に固定されている。
実施形態のエアバッグ18の場合、連結布35の前端付近に配設される取付部30Aが、フロントピラー部FPの下部側の部位において、ボディ1側に取り付けられることから、エアバッグ18の膨張完了時において、取付部30Aと、エアバッグ18の後端付近に配設される取付部30Bとの間に、前後方向に沿ったテンションを発生させることができる。特に、実施形態のエアバッグ18では、複数の縦膨張部27を、前後方向に沿って並設させていることから、エアバッグ18の展開膨張時に、各縦膨張部27が前後方向の幅寸法を縮めるように膨張し、膨張を完了させたエアバッグ18に、前後方向に沿って、大きなテンションが発生することとなる。そのため、エアバッグ18の膨張完了時に、仮に、乗員の頭部が、連結布35の部位に位置していても、乗員の頭部が、連結布35をすり抜けて車外側に移動することを、防止することができる。
板状部33は、長方形板状として、前側保護部24と後側保護部25との間におけるガス供給路部21の下方に、配設されている。この板状部33は、エアバッグ18の全体形状を確保するとともに、ガス流入部19の容積を小さくして、膨張完了までの時間を短くするために、配設されている。
区画結合部32は、各前側・後側保護部24・25の領域内において、周縁結合部31や板状部33の上縁側から延びるように配設されている。これらの区画結合部32は、前側・後側保護部24・25を複数の縦膨張部27に区画して、膨張完了時のエアバッグ18の厚さを規制するために、配設されている。そして、縦膨張部27Cの部位に配設される区画結合部32Aは、縦膨張部27Cの上端付近の前後方向の中間部位付近となる位置に、下方に伸びる延設部32aを備えている構成である。この延設部32aは、縦膨張部27Cにおいて、前後方向の略中間部位における上端付近の部位を区画して、センターピラー部CPの車内側に配設される縦膨張部27Cの膨張完了時の厚さ寸法を規制するために、配設されている。
車外側壁部19bの外周面に配設されるコーティング層37は、実施形態の場合、シリコン等からなるガス漏れ防止用のコーティング剤を塗布させて形成されている。このコーティング層37は、エアバッグ18を袋織りにより織成した後に、エアバッグ18の車外側Oを略全面にわたって覆うように、車外側壁部19bの外周面側に形成されている(図3参照)。
車内側壁部19aは、コーティング層を配設させないノンコート布とされて、実施形態の場合、通気度Hを、5.0cm/cm・s≦H≦25.0cm/cm・sの範囲内(望ましくは、8.0cm/cm・s≦H≦20.0cm/cm・sの範囲内)に設定されている。通気度Hが5.0cm/cm・s未満では、車内側壁部19aを構成する織布の気密性が高すぎて、ノンコート布にした意義が失われてしまい、膨張を完了させたエアバッグ18が乗員の頭部と干渉した際の内圧の上昇を抑え難くなるためである。また、通気度が25.0cm/cm・sを超えると、逆に、膨張を完了させたエアバッグ18からのガス漏れが多量となり、乗員頭部の車外側へ移動する運動エネルギーが高い場合、その乗員の頭部を、クッション作用を奏して、拘束しがたくなるためである。なお、実施形態の場合、通気度Hは、JIS L 1096の8.27.1におけるフラジール形法(A法)により、測定されている。
そして、実施形態のエアバッグ18では、車内側壁部19aの通気度Hは、16.67cm/cm・sに設定されている(表1参照)。また、実施形態のエアバッグ18では、車内側壁部19a・車外側壁部19bを、6,6−ナイロン糸を使用して形成しており、コーティング層37を形成するコーティング剤として、シリコンを使用している。
次に、実施形態のエアバッグ18の車両Vへの搭載について説明する。エアバッグ18は、連結布35を除いた部位を袋織りにより製造した後、車外側壁部19bの車外側Oに全面にわたってコーティング剤を塗布してコーティング層37を形成し、連結布35を縫合させて、製造しておく。その後、エアバッグ18を折り畳む。具体的には、平らに展開したエアバッグ18を、図2の二点鎖線に示すように、順次、前後方向に沿うような山折りと谷折りとの折目Cを入れて、エアバッグ18の下縁18b側を上縁18a側に接近させるように、蛇腹折りする。
そして、折り畳んだ後には、折り崩れ防止用の図示しないラッピング材により、エアバッグ18の所定箇所をくるむとともに、各取付部30に、取付ブラケット13を取り付けておく。また、クランプ11を利用しつつ、ガス流入口部22にインフレーター8を連結し、次いで、その周囲に取付ブラケット9を取り付け、インフレーター8をエアバッグ18に組み付けて、エアバッグ組付体を形成しておく。
その後、各取付ブラケット9・13をインナパネル2の所定位置に配置させてボルト9・14止めし、エアバッグ組付体をボディ1に取り付ける。次いで、インフレーター8に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、フロントピラーガーニッシュ3やルーフヘッドライニング4をボディ1に取付固定し、さらに、リヤピラーガーニッシュ6やセンターピラーガーニッシュ5をボディ1に取り付ければ、エアバッグ18が、エアバッグ装置Mとともに、車両Vに搭載されることとなる。
エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、インフレーター8が作動されれば、インフレーター8からの膨張用ガスGが、図2の二点鎖線に示すように、ガス流入口部22からガス供給路部21内を流れる。さらに、膨張用ガスGが、ガス供給路部21から保護膨張部23内に流入し、保護膨張部23が、折りを解消させつつ、膨張し始める。そして、エアバッグ18が、図示しないラッピング材を破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ3とルーフヘッドライニング4との下縁で構成されるエアバッグカバー16を押し開いて下方へ突出しつつ、図1の二点鎖線に示すごとく、窓W1・W2、センターピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側を覆うように、大きく膨張することとなる。
そして、実施形態のエアバッグ18では、保護膨張部23を構成する車内側壁部19aを、コーティング層を有しないノンコート布から、構成している。そのため、膨張完了時のエアバッグ18の保護膨張部23(前側・後側保護部24・25)に乗員の頭部が干渉すると、ノンコート布から構成された車内側壁部19a側から、膨張用ガスGが漏れて、保護膨張部23の内圧上昇を抑えることができる。その結果、実施形態のエアバッグ18では、従来のごとく、外周面に、略全面にわたって、シリコン等からなるコーティング剤を塗布させた構成の頭部保護エアバッグと比較して、乗員の頭部干渉時における内圧の上昇を抑えることができる。また、実施形態のエアバッグ18では、ノンコート布とした車内側壁部19aの略全域から、均一に膨張用ガスが漏れることから、膨張を完了させたエアバッグ18の内圧が局部的に上昇することを抑えることができて、乗員の頭部が干渉した際に生ずるエネルギーを、均一に、吸収することができる。
従って、実施形態の頭部保護エアバッグ18では、乗員の頭部が干渉した際の内圧の上昇を抑え、かつ、エネルギー吸収量を大きくして、乗員の頭部を保護することができる。
また、実施形態のエアバッグ18では、保護膨張部23を構成する車外側壁部19bが、外表面側に、織布にガス漏れ防止用のシリコン等からなるコーティング層37を設けたコート布から、構成されている。そのため、エアバッグ18の膨張完了時において、仮に、車外側壁部19bの車外側に配設される窓ガラス等が割れても、コーティング層37に保護されて、車外側壁部19bが損傷を受け難く、また、車内側壁部19aがノンコート布から構成されることから、車内側壁部表面にコーティング層を配設させた場合と比較して、車内側壁部19a表面の摩擦係数を低下させることができ、乗員頭部と窓との間の隙間が狭くとも、エアバッグ18の展開膨張時に、この隙間に円滑に展開させることができて、乗員頭部と窓の間の隙間を大きく確保し難い小型車に、好適となる。
また、実施形態のエアバッグ18では、車内側壁部19aを構成するノンコート布が、通気度Hを、5.0cm/cm・s≦H≦25.0cm/cm・sの範囲内に設定された織布、により構成されており、エアバッグ18の膨張完了時における保護膨張部23の厚さ寸法tが、100mm≦t≦280mmの範囲内に、設定されている構成である。そのため、膨張を完了させたエアバッグ18の保護膨張部23により、乗員の頭部を的確に保護することができる。
本発明の要件を満たす複数のエアバッグについて、インパクター試験を行なった結果のグラフを図5に示す。試験例1・2のエアバッグが、本発明の要件を満たすエアバッグである。試験例1のエアバッグは、前述した実施形態のエアバッグ18である。試験例2のエアバッグは、膨張完了時における厚さ寸法tを180mmに設定されている以外は、試験例1のエアバッグと同様の構成である。
また、同時に、比較例1・2のエアバッグについても、試験例1・2のエアバッグと同様に、インパクター試験を行なった。比較例1のエアバッグは、形状を試験例1のエアバッグと同一として、保護膨張部を構成する車内側壁部と車外側壁部とを、6,6−ナイロン糸を使用して、表1に示すように、外周面の略全面にわたって、シリコンからなるコーティング剤を塗布して、車内側壁部と車外側壁部との両方の壁部の外周側に、コーティング層を配設させている。比較例2のエアバッグは、形状を試験例1のエアバッグと同一として、コーティング層を配設させない構成とされている。
試験例1のエアバッグと比較例1のエアバッグとは、表1に示すように、糸密度等も略同一であり、引張強度や引裂強度等の物性も略同一の値を示している。すなわち、試験例1のエアバッグと比較例1のエアバッグとの違いは、コーティング層の有無であり、試験例1のエアバッグが、車外側壁部の外周面のみにコーティング層を配設させているのに対し、比較例1のエアバッグは車外側壁部と車内側壁部との両壁部の外周面にコーティング層を配設させている点にある。また、比較例2のエアバッグと試験例1のエアバッグとの違いは、コーティング層の有無であり、比較例2のエアバッグは車内側壁部にも車外側壁部にもコーティング層を配設させない構成である。なお、コーティング層を配設させた試験例1・2の車外側壁部、及び、比較例1における車内側・車外側壁部は、コーティング層を配設させていることから、通気度Hは限りなく0に近くなり、実際には、これらの壁部における通気度Hは、計測不能であった。
Figure 0004466136
インパクター試験は、実施形態の場合、重量が6.8kgのハンマーヘッドを、進行方向を保護膨張部と略直交させるように略水平方向として、膨張を完了させたエアバッグにおける保護膨張部に向かって、7.6m/sの速度で移動させ、保護膨張部と干渉した際のハンマーヘッドの減速度と移動量とを測定したものである。なお、図5のグラフにおいて、ハンマーヘッドの減速度と移動量との変化により描かれる軌跡で囲まれた部位の面積が、エアバッグの保護膨張部によるハンマーヘッドのエネルギー吸収量に相当することとなる。
このインパクター試験において、車内側壁部と車外側壁部との両壁部の外周面にコーティング層を設けた比較例1のエアバッグでは、気密性が高いことから、膨張用ガスが、保護膨張部を構成する車内側壁部及び車外側壁部から漏れ難い。そのため、ハンマーヘッドが干渉すると、保護膨張部は、ハンマーヘッドを、急激に減速させるようにして、拘束することとなる。そして、ハンマーヘッドの保護膨張部側への移動が完全に収まると、ハンマーヘッドの干渉により内圧が上昇して生じる反力により、保護膨張部が、ハンマーヘッドを、干渉前の位置に向かって、急激に押し戻すこととなる。
これに対し、試験例1・2のエアバッグでは、ハンマーヘッドが保護膨張部に干渉すると、保護膨張部が、車内側壁部側から膨張用ガスを漏出しつつ、ハンマーヘッドを拘束することとなる。そのため、比較例1のエアバッグよりも、ハンマーヘッドの保護膨張部側への移動量が大きいものの、緩やかに減速させるようにして、ハンマーヘッドを拘束することとなる。そして、車内側壁部側からの膨張用ガスの漏出により、保護膨張部の内圧の上昇が抑えられることから、ハンマーヘッドの保護膨張部側への移動が完全に収まると、ハンマーヘッドは、干渉前の位置に向かって、緩やかに押し戻されることとなる。このとき、ハンマーヘッドの減速度(押し戻される加速度)は、ハンマーヘッドの保護膨張部側への移動時における減速度よりも、一層、小さくなる。そして、図5に示すように、実施形態のエアバッグを使用した試験結果が描く軌跡は、比較例1のエアバッグを使用した試験結果が描く軌跡よりも、面積を大きくすることとなる。すなわち、試験例1・2のエアバッグは、比較例1のエアバッグよりも、エネルギー吸収量が大きくなる。
また、比較例2のエアバッグでは、ハンマーヘッドが保護膨張部に干渉すると、保護膨張部が、車外側壁部と車内側壁部との両側の壁部側から膨張用ガスを漏出することとなる。そのため、保護膨張部から多量の膨張用ガスが漏出して、干渉したハンマーヘッドが底着きし、ハンマーヘッドを、保護膨張部により拘束できなかった。
上記試験の結果から、保護膨張部23を構成する車内側壁部19aを、コーティング層を有しないノンコート布から構成し、車外側壁部19bを、その外表面にコーティング層37を配設させたコート布から構成したエアバッグ18を使用すれば、図5に示すように、乗員の頭部が保護膨張部23に干渉した際に、保護膨張部23の乗員保護時の内圧上昇を抑え、かつ、エネルギー吸収量を大きくして、乗員の頭部を的確に保護することができる。
また、表1には、比較例3として、ノンコート布である車内側壁部を、通気度Hが33.33cm/cm・sに設置された織布から構成した袋織りバッグとされて、膨張完了時における厚さ寸法tを180mmに設定されたエアバッグのインパクター試験結果が、開示されている。この比較例3のエアバッグでは、車内側壁部を構成する織布の通気度Hが高すぎることから、ハンマーヘッドが保護膨張部に干渉すると、車内側壁部側から多量の膨張用ガスが漏出して、ハンマーヘッドを、保護膨張部により拘束できなかった。上述したインパクター試験よりも、ハンマーヘッドによる荷重(ハンマーヘッドの質量若しくはハンマーヘッドの速度)を小さく設定した場合には、比較例3のエアバッグでも、ハンマーヘッドを的確に拘束することが可能となる。しかしながら、ノンコート布である車内側壁部19aを、通気度Hが5.0cm/cm・s≦H≦25.0cm/cm・sの範囲内に設定された織布から構成すれば、乗員頭部が、運動エネルギーを増大させた状態で、保護膨張部23に干渉しても、乗員の頭部を的確に保護することができるため、好ましい。
なお、実施形態のエアバッグ18では、コーティング層37を車外側壁部19b側に配設させているが、勿論、図6に示すごとく、エアバッグ18Aとして、車内側Iに配設される車内側壁部19aを、その外表面にコーティング層37を配設させたコート布から、構成し、車外側Oに配設される車外側壁部19bをコーティング層を有しないノンコート布から構成したものを、使用してもよい。このように、車内側壁部19aをコート布から構成する場合、車内側壁部をノンコート布から構成する場合と比較して、車内側壁部19a表面の摩擦係数を上げることができ、乗員頭部の干渉時に、乗員頭部が車内側壁部に対して滑り難く、乗員頭部の拘束性能を高めることができる。
また、エアバッグ18Bとして、図7に示すように、コーティング層37を配設させている車外側壁部19dを構成する織布の糸密度を、コーティング層を配設させていない車内側壁部19cを構成する織布の糸密度より、小さく設定するように、例えば、車内側壁部19cの糸密度をタテ67.5本/24.5mmヨコ60.5本/24.5mmとし、車外側壁部19dの糸密度をタテ45.0本/24.5mmヨコ45.0本/24.5mmに、設定してもよい。このエアバッグ18Bにおいても、コーティング層を構成するコーティング剤のコート量は、前述の実施形態のエアバッグ18と同様に、57.2g/mに設定されている。このような構成のエアバッグ18Bでは、車内側壁部19aと車外側壁部19bとの糸密度を同一に設定している前述のエアバッグ18と比較して、車外側壁部19dの糸密度を小さくした分、エアバッグを軽量化することができる。また、エアバッグ18Bでは、車外側壁部19dの厚さ寸法を、車内側壁部19cの厚さ寸法と比較して、小さく設定できることから、前述のエアバッグ18と比較して、折り畳み形状をコンパクトにすることができる。なお、コーティング層を配設させる側の壁部を構成する織布の糸密度は、コーティング層を構成するコーティング剤のコート量が不必要に増大することから、タテ・ヨコを、それぞれ、45.0本/24.5mm以上に、設定することが、望ましい。
なお、実施形態では、頭部保護エアバッグ18・18Aとして、袋織りから形成されたものを例に採り説明しているが、本発明のエアバッグは、袋織りのものに限られるものではなく、所定形状の織布を縫合して形成した縫合バッグに、本発明を適用してもよい。この場合、コーティング層は、エアバッグの内周面側に配設させる構成としてもよい。
本発明の一実施形態であるエアバッグを使用した頭部保護エアバッグ装置を車内側から見た概略正面図である。 実施形態のエアバッグを平らに展開した状態を示す正面図である。 図2のIII−III部位の拡大断面図である。 図1のIV−IV部位の概略拡大断面図である。 同実施形態のエアバッグを使用したインパクター試験の試験結果を示すグラフ図である。 本発明の他の実施形態のエアバッグの概略断面図である。 本発明のさらに他の実施形態のエアバッグの概略断面図である。
8…インフレーター、
18・18A・18B…エアバッグ、
19…ガス流入部、
19a・19c…車内側壁部(ノンコート布)、
19b・19d…車外側壁部(コート布)、
23…保護膨張部、
37…コーティング層、
G…膨張用ガス、
V…車両、
W1・W2…窓、
M…頭部保護エアバッグ装置。

Claims (4)

  1. 車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて前記窓の車内側を覆うように展開膨張する構成の頭部保護エアバッグを備えた頭部保護エアバッグ装置において、
    該エアバッグが、膨張完了時に乗員の頭部を保護可能に、車内側壁部と車外側壁部とを相互に離隔するように膨張する保護膨張部を備える構成とされ、
    該保護膨張部の車内側壁部と車外側壁部とが、共に織布から構成されるとともに、一方を、前記織布にガス漏れ防止用のコーティング層を設けたコート布とし、他方を、前記コーティング層を有しないノンコート布として、構成され、
    該ノンコート布が、JIS L 1096の8.27.1におけるフラジール形法(A法)により測定した通気度Hを、5.0cm/cm・s≦H≦25.0cm/cm・sの範囲内に設定された織布、により構成され
    前記インフレーターが、前記エアバッグの容量に対する出力比(インフレーター出力/エアバッグ容積)X(KPa/L)を、8≦X≦18の範囲内に設定されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置
  2. 前記インフレーターが、前記出力比Xを、10≦X≦15の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
  3. 前記保護膨張部が、前記エアバッグの膨張完了時における厚さ寸法tを、100mm≦t≦280mmの範囲内に、設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部保護エアバッグ装置
  4. 前記コート布を構成する織布の糸密度が、前記ノンコート布を構成する織布の糸密度より、小さく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置
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