JP4460175B2 - 硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は反応性を有するイミド化合物を含有する硬化性組成物に関する。更に詳しくは、硬化時に低沸点化合物の発生を伴わず、比較的低温で速やかに硬化し、硬化後にポリイミド樹脂の特徴である優れた耐熱性、耐薬品性、機械的特性を有する硬化物を与える、成形性に優れた硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、硬化性組成物として多くの組成物が開発されている。その中には、比較的低温で進行するヒドロシリル化反応を利用した硬化性組成物も開示されている(特開平1−138230号公報)。該組成物を使用すると、硬化時に低沸点化合物の発生がほとんどなく、外観の良好な化合物が得られる。しかし、炭素−炭素二重結合含有成分およびヒドロシリル基含有成分の主鎖が共にポリエーテルからなることから、得られる硬化物は耐熱性、耐薬品性などが充分でなく、100℃といった温度でも短時間で機械的特性が大きく低下する、耐酸性、耐溶剤性が悪いなどの欠点を有している。したがって、耐熱性や耐薬品性の要求される用途、たとえば半導体封止用樹脂、耐熱性接着剤などの用途には適さない。
【0003】
炭素−炭素二重結合含有成分にイミド化合物を用いることにより耐熱性および耐薬品性に優れた硬化物を与える組成物(特開平4−261467)が知られているが、炭素−炭素二重結合含有成分とヒドロシリル基含有成分の相溶性が悪いため、組成物の作成に大量の溶剤を必要とする、熱硬化時に両成分が相分離しやすいなどの問題がある。
【0004】
相溶性に優れた組成物としては、炭素−炭素二重結合含有成分およびヒドロシリル基含有成分の両方に高分子量のイミド化合物を用いた組成物(特開平6−080783)があるが、熱軟化点が高いため硬化温度以下で成形することが困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、硬化時に低沸点化合物の発生や成分の相分離を伴わず、比較的低温で速やかに硬化し、硬化後に優れた耐熱性、耐薬品性、機械的特性を有する硬化物を与える、成形性に優れた硬化性組成物を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、(A)分子内に少なくとも2個のヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を含有するイミド化合物、(B)分子内に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するイミド化合物、及び(C)ヒドロシリル化触媒を含有してなる硬化性組成物であって、上記(A)成分が、一般式(I):
【0007】
【化6】
Figure 0004460175
【0008】
[式中、Rは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の4価の有機基を表す。Rは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の2価の有機基、又は、一般式(II):
【0009】
【化7】
Figure 0004460175
【0010】
(式中、Rは、炭素数1〜20個の2価の有機基を表す。Rは炭素数1〜20個の1価の有機基を表す。複数のR及びRは同一であってもよく、また異なっていてもよい。mは1〜20の正の整数を表す)で表される2価の有機基を表す。Rは、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜20個の1価の有機基を表し、2つのRは同一であってもよく、また異なっていてもよい。nは1〜100の整数を表す。]で表されるイミド化合物、及び、一般式(III):
【0011】
【化8】
Figure 0004460175
【0012】
(式中、R、R及びnは前記と同じである。Rは、少なくとも1つのヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜20個の2価の有機基を表す。2つのRは同一であってもよく、また異なっていてもよい)で表されるイミド化合物からなる群より選択する少なくとも1種のイミド化合物を含有する硬化性組成物である。
本発明においては、上記(B)成分として、一般式(IV):
【0013】
【化9】
Figure 0004460175
【0014】
(式中、Rは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の4価の有機基を表す。Rは、炭素数1〜20個の2価の有機基を表す。Yは、少なくとも1つのヒドロシリル基を含む1価の基を表す。2つのRおよびYはそれぞれ同一であってもよく、また異なっていてもよい)で表されるイミド化合物、及び、一般式(V):
【0015】
【化10】
Figure 0004460175
【0016】
(式中、Rは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の2価の有機基、又は、上記一般式(II)で表される2価の有機基を表す。R10は、少なくとも1つのヒドロシリル基を含む炭素数1〜20個の2価の有機基を表し、2つのR10は同一であってもよく、また異なっていてもよい)で表されるイミド化合物からなる群より選択する少なくとも1種のイミド化合物を用いることが好ましい。
また、本発明は、上記硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物でもある。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の組成物は、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合、例えばビニル基やアルケニル基を有する化合物(A)が、ヒドロシリル基含有化合物(B)と触媒(C)の存在下で反応して硬化物を生成することを利用したものである。ヒドロシリル基含有イミド化合物(B)が分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有するため、(A)成分である分子内に少なくとも2個のヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を有するイミド化合物との反応により、直鎖状または網目状重合体となる。(A)成分中のヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合が1分子内当たり1個以下の場合もしくは(B)成分中のヒドロシリル基が1分子内当たり1個以下の場合は、反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とはならないため、良好な硬化性が得られにくい。
【0018】
従来用いられている代表的なヒドロシリル基含有化合物としては、例えば、ポリメチルハイドロジェンシロキサンなどのポリシロキサン化合物が挙げられる。しかし、一般にイミド化合物とポリシロキサン化合物は相溶性が低く、均一な組成物を得るのが困難であったり、硬化時に相分離して硬化不良となりやすい。本発明の組成物は(A)成分中および(B)成分中の両方にイミド基があるので、両成分の相溶性が高く、また硬化時の相分離が抑制される。
【0019】
なお、本明細書において相溶性とは、2種類以上の成分が相溶して均一な混合物となる性質を意味する。本明細書において「相溶する」とは、混合する複数の成分の全てが液体状である場合には、これらを混合した時に相分離・エマルジョン化・沈殿物析出などのない均一な液状混合物が得られることを意味し、混合する複数の成分のうち少なくとも1つ以上が固体である場合には、組成物を加熱して固体成分を液化させた時に均一な液状混合物となること、もしくは、これらを適切な溶媒に溶解すると均一な溶液が得られることを意味する。これらの条件のいずれにも当てはまらない混合物、例えばエマルジョン化した懸濁液は非相溶である。
【0020】
本発明における(A)成分について説明する。
(A)成分は、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有し、上記一般式(I)又は(III)で表されるイミド化合物を含有する限り特に限定はない。ここで、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合とは、従来公知の一般的な条件下でSiH基とヒドロシリル化が可能な炭素−炭素二重結合のことをいう。
【0021】
(A)成分の分子量は、例えば、500〜20000程度、さらには500〜10000程度のものが、溶解性や溶融性が良いため成形性に優れ、かつ、得られる硬化物の耐熱性が優れるなどの点から好ましい。分子量が低すぎると、得られる硬化物の耐熱性が低くなる傾向がある。分子量が高すぎると、組成物の弾性率が高くなり成型性が損なわれる場合がある。
【0022】
上記一般式(I)及び(III)において、Rは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の4価の有機基を表す。本明細書中、「有機基」とは、無置換の炭化水素基、又は、スルホニル基、水酸基、カルボニル基、エーテル基、ハロゲン基などの置換基を有する炭化水素基をいう。Rとしては、硬化後に耐熱性に優れた硬化物を与えるという点から、炭素数6〜30個の4価の芳香族基、及び、2価の基を介して結合した芳香族環からなる炭素数6〜30個の4価の有機基が好ましい。
【0023】
特に好ましい具体例としては、ピロメリット酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、
【0024】
【化11】
Figure 0004460175
【0025】
(式中、R11は、炭素数1〜16個の2価の有機基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、ベンジレン基、フェネチレン基、
【0026】
【化12】
Figure 0004460175
【0027】
で表される基などを表す)で表されるテトラカルボン酸などからカルボン酸基を除いた残基などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記一般式(I)及び(III)において、Rは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の2価の有機基、又は、下記一般式(II)で表される2価の有機基を表す。
【0028】
【化13】
Figure 0004460175
【0029】
式中、Rは、炭素数1〜20個の2価の有機基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、ベンジレン基、フェネチレン基などを表す。Rは、水素または炭素数1〜20個の1価の有機基、例えばメチル基、フェニル基、γ−グリシドキシプロピル基などを表す。Rが水素である場合は、これも反応性を有するヒドロシリル基として硬化反応に寄与しうる。このようなRのうち、炭素原子と水素原子のみで構成される炭素数1〜20個の1価の有機基、たとえばメチル基、フェニル基などが特に好ましい。複数のR及びRは同一であってもよく、また異なっていてもよい。mは1〜20の正の整数を表す。
【0030】
上記一般式(I)および(III)において、Rは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の2価の有機基、又は、上記一般式(II)で表される基を表す。このような基の具体例としては、種々のジアミン化合物からアミノ基を除いた残基があげられる。例えば、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノベンゾフェノン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(2−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、ビス(3−メチル−4−アミノフェニル)メタン、ビス(3−クロロ−4−アミノフェニル)メタン、4,4′−ジアミノビフェニル、4,4′−ジアミノオクタフルオロビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2′,5,5′−テトラクロロ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジカルボキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノトルエン、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、2,2′−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2′−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9′−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、9,9′−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、オルトトリジンスルホンなどのジアミン化合物からアミノ基を除いた残基;及び、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,5−ビス(3−アミノプロピル)ヘキサメチルトリシロキサン、
【0031】
【化14】
Figure 0004460175
【0032】
(式中、R及びmは上記と同じ)で表されるアミノ末端ポリシロキサンなどのシロキサンジアミンからアミノ基を除いた残基などが挙げられる。このようなRのうち、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の2価の有機基が、硬化物の耐熱性をより向上しうるという点で好ましい
【0033】
上記一般式(I)において、Rは、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜20個の1価の有機基を表すが、このような基の具体例としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、イソプロぺニル基、2−メチル−2−プロピル基、2−ビニルフェニル基、3−ビニルフェニル基、4−ビニルフェニル基、3,5−ジビニルフェニル基、4−アリロキシフェニル基、4−アリロキシシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0034】
上記一般式(III)において、Rは、少なくとも1つのヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜20個の2価の有機基を表す。なかでも、環状オレフィンを含有する炭素数2〜20個の2価の有機基が好ましい。具体例としては、
【0035】
【化15】
Figure 0004460175
【0036】
などが挙げられる。
上記一般式(I)及び(III)において、nは1〜100の正の整数を表す。なかでも、溶媒溶解性や(B)成分との相溶性が良いため成形性に優れ、かつ、得られる硬化物の耐熱性が優れるなどの点から、1〜50が好ましく、1〜20がより好ましい。
(A)成分は1種類のみを用いてもよいし、2種以上のものを混合して用いることも可能である。
本発明において(A)成分は上記で説明した化合物の1種又は2種以上のみであってもよいし、他の炭素−炭素二重結合含有化合物をさらに含有してもよい。このような炭素−炭素二重結合含有化合物としては、例えば、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,2′,4,4′−テトラアリルビスフェノールA、トリアリルイソシアヌレートなどが挙げられる。
【0037】
次に、本発明に使用する(A)成分の1種である一般式(I)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物の製法について説明する。
一般式(I)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物の製法には特に制限はなく、任意の方法により製造しうる。
具体的には、例えば、まず芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒中で反応させ、続いて炭素−炭素二重結合含有一級アミン化合物を反応させてポリアミド酸の溶液を得、次いで(i)上記ポリアミド酸の溶液を加熱することによりイミド化する方法、(ii)上記ポリアミド酸の溶液に無水酢酸などの脱水剤を作用させてイミド化する方法、又は、(iii)上記ポリアミド酸の溶液を、アミド酸に対する貧溶媒(例えば、水や炭化水素)と接触させてポリアミド酸を沈殿として析出させ、これを加熱する方法などが挙げられる。
【0038】
これらのいずれの方法によっても、一般式(I)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物を製造することができ、特に制約を受けるものではないが、製造装置や製造工程がより簡便又は容易であることや、使用する原料の入手が容易であることから、(i)の方法、すなわち芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒中で反応させ、続いて炭素−炭素二重結合含有一級アミン化合物を反応させてポリアミド酸の溶液を得、次いで当該溶液を加熱することによりイミド化合物を得る方法が好ましい。
【0039】
反応は、芳香族テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び炭素−炭素二重結合含有一級アミン化合物を有機溶媒中で80℃以下の温度で反応させてポリアミド酸の溶液を得、次いでこれを100〜250℃に加熱することにより行うのが好ましい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用量は、所望のnの値に応じて変化させる。例えば、nが9の式(I)で表される化合物を得たい場合には、モル比で、10:9である。
【0040】
炭素−炭素二重結合含有一級アミン化合物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応により新たに生成した酸無水物に対して、通常2〜5倍量(モル比、以下同様)、好ましくは2〜3倍量、より好ましくは2〜2.5倍量用いて反応させる。炭素−炭素二重結合含有一級アミン化合物の量が2倍量より少ないと、当然、未反応の酸無水物が残存し、目的のイミド化合物の収率は低下するので好ましくない。また、5倍量を超えて用いると、残存する未反応の酸無水物の量は減少するが、過剰に用いた炭素−炭素二重結合含有一級アミン化合物の除去が困難になるので好ましくない。
【0041】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、上記Rの具体例として挙げた基のもとになった芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。
ジアミンとしては、上記Rの具体例として挙げた基のもとになったジアミンが好ましい。
炭素−炭素二重結合含有一級アミン化合物としては、アリルアミン、ブテニルアミン、o−アミノスチレン、m−アミノスチレン、p−アミノスチレン、o−アリロキシアニリン、m−アリロキシアニリン、p−アリロキシアニリンなどが挙げられる。
【0042】
上記有機溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−アセチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、ピリジン、ヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトン、これら2種以上の混合物などが挙げられる。
【0043】
上記のような製法で得られた炭素−炭素二重結合含有イミド化合物は、精製せずそのまま用いても良いし、精製して用いても良い。一般にアミン化合物、イミド化合物はヒドロシリル化を阻害することがあるので、得られる組成物の反応性が良くなるという点で、生成物を精製して用いるのが好ましい。精製の方法としては、例えば、洗浄、再結晶、カラム精製、抽出(例えばソックスレー抽出)、イオン交換樹脂処理、ケイ酸アルミなどの吸着剤による処理などの方法が挙げられる。
【0044】
次に、一般式(III)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物の製法について説明する。
一般式(III)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物の製法には特に制限はなく、一般式(I)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物の場合と同様にして製造しうる。なお、一般式(III)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物の製法においては、一般式(I)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物の製造に用いた炭素−炭素二重結合含有一級アミン化合物の代わりに、オレフィン含有酸無水物が使用される。
【0045】
芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用量は、所望のnの値に応じて変化させる。例えば、nが9の式(III)で表される化合物を得たい場合には、モル比で、9:10である。
ヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を有する酸無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応により新たに生成したジアミンに対して、一般式(I)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物の場合と同様、2〜5倍量(モル比、以下同様)、好ましくは2〜3倍量、より好ましくは2〜2.5倍量用いて反応させるのが好ましい。また、好ましいテトラカルボン酸二無水物及びジアミンも一般式(I)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物の場合と同様である。
一方、好ましい環状オレフィン含有酸無水物としては、
【0046】
【化16】
Figure 0004460175
【0047】
などが挙げられる。
次に(B)成分について説明する。
本発明においては、(B)成分として、一般式(IV):
【0048】
【化17】
Figure 0004460175
【0049】
(式中、Rは芳香族基を含有する炭素数6〜30個の4価の有機基、Rは炭素数1〜20個の2価の有機基、Yは少なくとも1つのヒドロシリル基を含む1価の基を表し、2つのRおよびYはそれぞれ同一であってもよく、また異なっていてもよい)で表されるイミド化合物、および一般式(V):
【0050】
【化18】
Figure 0004460175
【0051】
(式中、Rは芳香族基を含有する炭素数6〜30個の2価の有機基または一般式(II)で表される2価の有機基、R10は少なくとも1つのヒドロシリル基を含む炭素数1〜20個の2価の有機基を表し、2つのR10は同一であってもよく、また異なっていてもよい)で表されるイミド化合物から選ばれた少なくとも1種のイミド化合物が使用される。
【0052】
本発明に使用できるヒドロシリル基含有イミド化合物については、ヒドロシリル化活性を持つヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2個含有し、上記一般式(IV)又は(V)で表されるイミド化合物である限りとくに限定はないが、例えば分子量300〜5000程度、さらには400〜2000程度のものであるのが、得られる組成物が相溶性に優れ、かつ、得られる硬化物の耐熱性が優れるなどの点から好ましい。分子量が高すぎると、得られる組成物の弾性率が高くなり成形性が損なわれるので好ましくない。
(B)成分の性状は、液体の物も固体の物もとくに限定なく用いることができる。
【0053】
なお、本明細書における1個のヒドロシリル基とはSi−H結合を1個含有する基のことであり、Si(H)を含有する基は2個のヒドロシリル基を含有する基になる。前記ヒドロシリル基含有化合物(B)において、同一分子中にヒドロシリル基含有基が2個以上存在する場合には、それらの基は同一でもよく、異なっていてもよい。
【0054】
前記ヒドロシリル基含有化合物(B)のヒドロシリル基の数は、分子中に少なくとも2個あればよいが、2〜50個が好ましく、3〜15個が特に好ましい。1分子中に含まれるヒドロシリル基の数が2個より少ないと硬化不良を起こす場合が多い。また、該ヒドロシリル基の数が50より多くなると、組成物の貯蔵安定性が悪くなり、そのうえ硬化後も多量の未反応ヒドロシリル基が硬化物中に残存して耐薬品性低下、機械的特性低下の原因になる。
【0055】
前記一般式(IV)において、Rは芳香族基を含有する炭素数6〜30個の4価の有機基であるが、イミド基を含むものではない。とりわけ炭素数6〜30個の4価の芳香族基または2価の基を介して結合した芳香族環からなる4価の基が硬化後に耐熱性に優れた硬化物を与えるという点から好ましい。このような基の具体例としては、前記一般式(I)におけるRの具体例としてあげたものと同様の基があげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
前記一般式(IV)において、Rは炭素数1〜20個の2価の有機基であるが、イミド基を含むものではない。このような基の具体例としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、フェニレン基、ナフチレン基、ベンジレン基、フェネチレン基などがあげられる。
【0057】
前記一般式(IV)において、Yは少なくとも1つのヒドロシリル基を含有する基である。このような基の具体例としては、
−Si(H)(CH3−n、−Si(H)(C3−n、−Si(H)(C3−n(n=1〜3)、−SiH(C13
などのケイ素原子を1個有するヒドロシリル基、
−Si(CHSi(CHH、−Si(CHCHCHSi(CHH、−Si(CHSi(CH)H、−Si(CH−C−Si(CHH、−Si(CHNHSi(CHH、−Si(CHN[Si(CHH]、−Si(CHOC(CH)=NSi(CHH、−Si(CHN=C(CH)OSi(CH
などのケイ素原子を2個有する基、
【0058】
【化19】
Figure 0004460175
【0059】
(式中、R12は炭素数が1〜10の1価の有機基を表し各々のR12は同じであっても異なっていてもよい、pは正の整数、qは0または正の整数を表し、かつ、1<p+q<50を満たす、r、sは0または正の整数を表し、かつ、0≦r+s<50を満たす、R12の具体例としては、例えばメチル基、フェニル基、トリメチルシロキシ基、γ−グリシドキシプロピル基などがあげられる)等で表される鎖状、枝分かれ状、環状の各種の多価ハイドロジェンシロキサンより誘導された基などがあげられる。これらの基のうち、
【0060】
【化20】
Figure 0004460175
【0061】
で表される基が特に好ましい。
【0062】
前記一般式(V)において、Rは芳香族基を含有する炭素数6〜30個の2価の有機基、または前記一般式(II)で表される2価の有機基であるが、イミド基を含むものではない。このようなRの具体例としては、前記一般式(III)におけるRの具体例としてあげたものと同様の基があげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記一般式(V)において、R10は少なくとも1つのヒドロシリル基を有する炭素数1〜20個の2価の有機基であるが、イミド基を含むものではない。このうち、ヒドロシリル基含有基と結合したシクロアルカン構造を持つ基が好ましい。具体例としては
【0064】
【化21】
Figure 0004460175
【0065】
(式中、Wは少なくとも1つのヒドロシリル基を含有する基を表す)
などがあげられる。Wの具体例としては前記Yの具体例としてあげた基と同じものがあげられる。
上記したような各種(B)成分は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
【0066】
(B)成分の製造方法には特に制限はなく、任意の方法を用いればよい。例えば(i)分子内にSi−Cl基を持つ有機化合物をLiAlH、NaBHなどの還元剤で処理して該化合物中のSi−Cl基をSi−H基に還元する方法、(ii)分子内にある官能基Xを持つ有機化合物と、分子内に前記官能基Xと反応する官能基Yおよびヒドロシリル基を同時に持つ化合物とを反応させる方法、(iii)炭素−炭素二重結合含有化合物に対して少なくとも2個のヒドロシリル基を持つポリヒドロシラン化合物を選択ヒドロシリル化することにより、反応後もヒドロシリル基を該化合物分子中に残存させる方法などが考えられる。これらのうち、反応の簡便さ、収率のよさ等の点から(iii)の方法が好ましい。
【0067】
前記(iii)の方法による場合、ヒドロシリル化触媒の存在下で炭素−炭素二重結合含有化合物に対してポリヒドロシラン化合物を好ましくは1〜20倍量、より好ましくは2〜5倍量(モル比)用いて反応させる。反応温度は0〜150℃の温度範囲で行うのが好ましい。必要に応じて、適当な有機溶媒を用いてもよい。用いることのできる有機溶媒の具体例としては、例えばヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、メタノール、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、安息香酸メチルなどのエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒などがあげられる。
【0068】
前記(iii)の方法による場合、反応成分であるポリヒドロシラン化合物の具体例としては、例えばジエチルシラン、フェニルシラン、ジフェニルシランなどのシラン類、1,1,1,3,5,7,7,7−オクタメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,7,9,9,9−ノナメチルペンタシロキサンなどの鎖状ハイドロジェンポリシロキサン、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどの環状ハイドロジェンポリシロキサンなどがあげられる。反応成分である炭素−炭素二重結合含有化合物の合成方法は、(A)成分の炭素−炭素二重結合含有イミド化合物と同様の方法で合成してもよいし、また別の方法で合成してもよい。
【0069】
上記したような(A)成分/(B)成分の組み合わせとしては、(A)成分の具体例として挙げたものおよびそれらの各種混合物/(B)成分の具体例として挙げたものおよびそれらの各種混合物、の各種組み合わせを挙げることができる。得られる組成物の相溶性が優れるという点からは、(A)成分の具体例として挙げたもの/(B)成分の具体例として挙げたもののうち一般式(IV)で表されるものを用いた組み合わせで、かつR=Rである組み合わせ、もしくは(A)成分の具体例として挙げたもの/(B)成分の具体例として挙げたもののうち一般式(V)で表されるものを用いた組み合わせで、かつR=Rである組み合わせが好ましい。
【0070】
前記硬化性組成物における(A)成分と(B)成分の混合比率は、硬化物の物性を著しく損なわない限りは特に限定されないが、前記(A)成分中のヒドロシリル基が、前記(B)成分中のヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合に対して、モル比で0.5〜10倍量、より好ましくは0.5〜5倍量となるように配合することが好ましい。0.5倍量より少ない、あるいは10倍量より多い場合は、十分な硬化性が得られにくく、充分な強度が得られない場合があり、耐熱性も低くなりうる。
【0071】
次に(C)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
本発明においては前記イミド化合物(A)とヒドロシリル基含有化合物(B)とを反応させるための触媒として、(C)成分であるヒドロシリル化触媒が使用される。ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどとの錯体、白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH=CH(PPh、Pt(CH=CHCl)、白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt[(MeViSiO))、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh、Pt(PBu)、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)、Pt[P(OBu))(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、n、mは、整数を示す。)、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト(Karstedt)触媒、また、アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号および3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体、ならびにラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
【0072】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)、RhCl、RhAl、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl、などが挙げられる。
これらの中では、触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体などが好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0073】
ヒドロシリル化触媒(C)の使用量は特に限定されないが、(A)成分のヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合1モルに対して10−1〜10−8モルの範囲が好ましく、より好ましくは、10−3〜10−6モルの範囲である。あるいは、(B)成分のヒドロシリル基1モルに対して、10−1〜10−8モルの範囲が好ましく、より好ましくは、10−2〜10−6モルの範囲である。触媒の使用量が10−8モルより少ないと硬化が十分に進行しにくくなる。またヒドロシリル化触媒は一般に高価で腐食性である。また、水素ガスが大量に発生して硬化物が発泡してしまう場合があるので、10−1モルを超えて用いない方が好ましい。
【0074】
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィンなどのリン系化合物、ジメチルマレートなどの1,2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチンなどのアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄などの硫黄系化合物、トリエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、触媒1モルに対して、10−2〜10モルの範囲が好ましく、より好ましくは10−1〜10モルの範囲である。
【0075】
上記したような(A)成分/(B)成分/(C)成分の組み合わせとしては、(A)成分の具体例として挙げたものおよびそれらの各種混合物/(B)成分の具体例として挙げたものおよびそれらの各種混合物/(C)成分の具体例として挙げたものおよびそれらの各種混合物、の各種組み合わせを挙げることができる。本発明に用いられる(A)成分、(B)成分、(C)成分のうち少なくとも1つ以上が固体である場合には、これらを適切な方法、例えば溶解、混練、含浸、担持、溶融などの方法により均一に混合したものを組成物として用いてもよいし、または適当な溶媒に溶解した溶液を組成物として使用してもよい。溶媒の使用量は作業に支障を与えない範囲であれば特に制限はされない。
【0076】
本発明の組成物の保存安定性を改良する目的、あるいは製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などが挙げられ、これらを併用してもかまわない。脂肪族不飽和結合を含有する化合物として、プロパギルアルコ−ル類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類などが例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類などが例示される。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイドなどが例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、テトラメチルエチレンジアミンなどの1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジンなどが例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズなどが例示される。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチルなどが例示される。
【0077】
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾ−ル、ジメチルマレ−ト、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチンが好ましい。高温での遅延活性が良好であるという観点からはテトラメチルエチレンジアミン等のアルキルアミン類が好ましい。
【0078】
これらの硬化遅延剤は単独で用いることもできるし、いくつかのものを併用することもできる。
硬化遅延剤の添加量は、使用するヒドロシリル化触媒1モルに対し、10−1〜10モルの範囲が好ましく、より好ましくは1〜50モルの範囲である。
【0079】
本発明の組成物には、その他、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、充填剤、界面活性剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤、発泡剤、相溶化剤などを本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。添加剤の総量は硬化物の諸物性を著しく低下させない範囲ならばとくに制限はないが、好ましくは前記イミド化合物(A)100重量部に対して1〜300重量部である。
【0080】
本発明の組成物を作成する方法は、均一な混合物が得られる方法であれば特に制限が無く、任意の方法で行うことができる。(A)成分、(B)成分、(C)成分および溶媒、助触媒、各種添加物などを混合する順序および混合に用いる器具・装置も、任意に設定できる。例えば有機溶媒に(A)成分、硬化遅延剤、(B)成分、接着性改良剤、(C)成分の順序で加え遠心攪拌して溶解させることにより組成物を作成してもよいし、(A)成分、(C)成分、難燃剤、充填剤をロール混練した物に(B)成分を少量ずつ数回に分けて添加して組成物を作成してもよい。
【0081】
混合作業時の温度・圧力も任意に設定できる。混合中に硬化反応が進むのを防ぐという点からは、組成物の温度を100℃以下、さらに好ましくは50℃以下に保って作業するのが好ましい。
【0082】
本発明の組成物は成形性に優れているため、適切な成形方法により任意の形状に成形できる。成形方法には特に制限が無く任意の方法で行うことができ、例えば押出し、注型、キャスト、ロール、プレス等の方法を用いることができる。成形した組成物および硬化物の形状は特に制限が無く、例えば棒、球体、板、フィルム、歯車、筐体など任意の形状に成形することができる。組成物を成形した後に、もしくは成形すると同時に、加熱し硬化させることにより、任意の形状の硬化物が得られる。
【0083】
本発明の組成物を硬化させるには、(A)成分または(B)成分の分解温度以下の温度範囲で加熱処理するだけで良い。反応温度としては種々設定できるが、例えば30〜300℃の温度が適用でき、50〜250℃がより好ましい。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと硬化時に局部的な発熱や発泡が生じるなどして成形加工が困難となり良好な硬化物が得られにくくなるので好ましくない。
【0084】
硬化反応は1段階で硬化させてもよく、また、途中で反応の進行を止めて数回に分けて硬化反応を行ってもよい。(A)成分中のヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合の一部および(B)成分中のヒドロシリル基の一部を反応させた後、硬化反応が完了する前に進行を止めることにより、いわゆるBステージ化を行うことができる。組成物の弾性率および相溶性を調整して成形性をより向上するという観点からは、Bステージ化を行うことが好ましい。
【0085】
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。反応時間も種々設定できる。反応時の圧力も必要に応じ種々設定でき、常圧、高圧、あるいは減圧状態で反応させることもできる。
【0086】
硬化前、硬化中または硬化後の任意の段階において、組成物の反応性を著しく損なわず、硬化物の物性を著しく損なわない範囲で、加熱以外の処理、例えば乾燥、予備硬化、遠心脱泡処理、減圧脱泡処理、冷却固化、超音波処理、光照射などを加えることもできる。硬化物中に発泡が生じにくくなり、良好な成形性が得られるという観点からは、乾燥および/または脱泡処理を行うことが好ましい。
【0087】
また、組成物が有機溶媒溶液の場合には、この組成物の硬化前、硬化中または硬化後の任意の段階で有機溶媒を留去または揮発し、前記の硬化条件にいたらしめることにより、硬化物を得ることができる。
【0088】
本発明の組成物は成形性に優れ、硬化後に優れた耐熱性、耐薬品性、機械的特性の硬化物を与えるという性質を有するため、本発明の組成物は種々の用途に用いることができる。具体例としては、例えば耐熱接着剤、電線被覆剤、半導体素子の封止剤、粉体塗料、シーリング、樹脂改質剤、コーティング剤、腐食防止処理剤、包装、などに用いることができる。
【0089】
本発明の組成物を硬化させて得られる硬化物は優れた耐熱性、耐薬品性、機械的特性を有するため、本発明の組成物から得られる硬化物は種々の成形体の材料に用いることができる。具体例としては、ポリイミド樹脂が通常用いられる用途をはじめ、プラスチック成形材料、繊維強化プラスチック、耐熱樹脂フィルム、発泡体材料、プラスチックセル、光学部品、プリント基板、電気絶縁材料などに用いることができる。
【0090】
【実施例】
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
(合成例1)
窒素気流下、冷却管と滴下漏斗をつけた1L三首フラスコ中に、化学式(VI)
【0091】
【化22】
Figure 0004460175
【0092】
で表されるテトラカルボン酸二無水物70.8gを入れ、ジメチルホルムアミド250gを加えて攪拌、溶解させた。室温(25℃)にてビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン47.8gのジメチルホルムアミド147g溶液を滴下漏斗から滴下した。アリルアミン2.8gのジメチルホルムアミド40g溶液を滴下漏斗から滴下した。β−ピコリン35.0gを滴下漏斗から滴下した後、無水酢酸60.0gを滴下漏斗から滴下した。オイルバス中で加熱し内温100℃で90分攪拌した。放冷後、得られたオレンジ色の溶液を激しく攪拌した2000mlのメタノール中に徐々に注ぎ込んで再沈した。ろ紙で固体をろ別し、メタノールでリスラリー洗浄した。得られた個体を、100℃に加熱した真空乾燥器中で2時間減圧乾燥した。化学式(VII)
【0093】
【化23】
Figure 0004460175
【0094】
で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物を得た。
【0095】
(合成例2)
コンデンサー、滴下漏斗をつけた500ml四首フラスコ中を窒素置換し、前記化学式(VI)で表されるテトラカルボン酸二無水物50.03gを入れ、ジメチルホルムアミド220gを加えて攪拌、溶解させた。室温(30℃)にて、アリルアミン10.40gを滴下漏斗から約15分かけて滴下した。室温雰囲気下にて1時間攪拌後、無水酢酸36.0g、次いでβ−ピコリン21.0gを滴下漏斗からそれぞれ約3分かけて滴下した。100℃のオイルバス中で1時間加熱した。得られたオレンジ色の溶液を放冷後、激しく攪拌した900mlのメタノール中に徐々に注ぎ込んで再沈した。化学式(VIII)
【0096】
【化24】
Figure 0004460175
【0097】
で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物を得た。
【0098】
冷却管をつけた二口フラスコ中にこのイミド化合物1.0g(3.0mmol)と1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン1.83g(30mmol)を入れてトルエン10gに溶解し、白金ビニル触媒(Degussa社製、PTVTS−3.0X)2.30μl(0.000304mmol)を加えて、窒素気流下、70℃2時間加熱した。これにベンゾチアゾール0.689mg(0.00510mmol)を加えた後、トルエンと未反応1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンを減圧留去した。化学式(IX)
【0099】
【化25】
Figure 0004460175
【0100】
で表されるヒドロシリル基含有イミド化合物を主成分とし、白金ビニル触媒8.2×10−7mol/gを含有する生成物が得られた。この生成物のSi−H価は0.0053mol/gであった。
【0101】
(実施例1)
合成例2で合成したヒドロシリル基含有イミド化合物と白金ビニル触媒を含有する生成物1.7gに合成例1で合成した炭素−炭素二重結合含有イミド化合物84.7g(9.0mmol)を加えてテトラヒドロフラン200gに溶解し、均一な硬化性組成物溶液を得た。この組成物を溶液流涎法により銅箔上にキャストし、溶媒を蒸発させてフィルム状に成形した。これをオーブン中で200℃に加熱して硬化させ、フィルム状の硬化物を得た。
【0102】
(実施例2)
合成例2で合成したヒドロシリル基含有イミド化合物と白金ビニル触媒を含有する生成物1.2gと化学式(X)
【0103】
【化26】
Figure 0004460175
【0104】
で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物10.0gとベンゾチアゾール32mgを1、3−ジオキソラン7.1gに溶解し、均一な硬化性組成物溶液を得た。この溶液をバーコーターを用いてポリイミドフィルム上に塗付した後、150℃に加熱して溶媒を蒸発させ、透明均一な厚み100μmの樹脂層を成形した。この樹脂層付きポリイミドフィルムと銅箔を200℃でプレスして樹脂層を熱硬化させ、ポリイミドフィルムと銅箔を接着した。
【0105】
(比較例1)
前記化学式(X)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物12.3gとポリメチルハイドロジェンシロキサン(信越化学工業(株)社製、KF99)0.85gと白金ビニル触媒0.20μlをTHF60gに溶解した。これをポリイミドフィルムに塗付して溶媒を自然蒸発させた。これをプレスで200℃に加熱すると、イミド化合物の周囲にポリメチルハイドロジェンシロキサンが染み出し、良好な硬化物が得られなかった。
【0106】
(比較例2)
合成例2で合成した化学式(VIII)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物33.0gと化学式(IX)で表されるヒドロシリル基含有イミド化合物19.0gをジオキソラン50.0gに溶解した。これを銅箔に塗付して溶媒を自然蒸発させると、黄白色のイミド化合物粉末が部分的に析出し、均一な厚みの樹脂層に成形できなかった。
【0107】
(比較例3)
合成例1で合成した化学式(VII)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物50g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン6.4gを1,3−ジオキソラン250gに溶解し、白金ビニル触媒0.2mlを加えて、窒素気流下、70℃1時間反応させた。これにベンゾチアゾール60mgを加えた後、揮発分を減圧留去してSiH価0.000815mol/gの生成物を得た。
この生成物16.5gと化学式(X)で表される炭素−炭素二重結合含有イミド化合物8.0gとベンゾチアゾール25mgを1,3−ジオキソラン150gに溶解し、均一な硬化性組成物溶液を得た。この溶液をバーコーターを用いてポリイミドフィルム上にキャストした。溶媒が蒸発するにつれて反りやひび割れが生じ、均一な厚みの樹脂層にするのが困難であった。この樹脂層付きポリイミドフィルムと銅箔を150℃および200℃でプレスしたが、組成物の流動性が低く、ポリイミドと銅箔を接着させることができなかった。
【0108】
【発明の効果】
本発明の硬化性組成物は、上述の構成よりなるので、成形性に優れており、硬化時に低沸点化合物の発生や成分の相分離を伴わず、比較的低温で速やかに硬化し、硬化後に優れた耐熱性、耐薬品性、機械的特性を有する硬化物を与える。

Claims (2)

  1. (A)分子内に少なくとも2個のヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を含有するイミド化合物、(B)分子内に少なくとも2個のヒドロシリル基を有するイミド化合物、及び(C)ヒドロシリル化触媒を含有してなる硬化性組成物であって、
    上記(A)成分が、一般式(I):
    Figure 0004460175
    [式中、Rは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の4価の炭化水素基、もしくは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の、スルホニル基、水酸基、カルボニル基、エーテル基又はハロゲン基を含む4価の炭化水素基を表す。Rは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の2価の炭化水素基、もしくは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の、スルホニル基、水酸基、カルボニル基、エーテル基又はハロゲン基を含む2価の炭化水素基、又は、一般式(II):
    Figure 0004460175
    (式中、Rは、炭素数1〜20個の2価の炭化水素基、もしくは、炭素数1〜20個の、スルホニル基、水酸基、カルボニル基、エーテル基又はハロゲン基を含む2価の炭化水素基を表す。Rは炭素数1〜20個の1価の炭化水素基、もしくは、炭素数1〜20個の、スルホニル基、水酸基、カルボニル基、エーテル基又はハロゲン基を含む1価の炭化水素基を表す。複数のR及びRは同一であってもよく、また異なっていてもよい。mは1〜20の正の整数を表す)で表される2価の有機基を表す。Rは、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜20個の1価の炭化水素基、もしくは、ヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜20個の、スルホニル基、水酸基、カルボニル基、エーテル基又はハロゲン基を含む1価の炭化水素基を表し、2つのRは同一であってもよく、また異なっていてもよい。nは1〜100の整数を表す。]で表されるイミド化合物、及び、一般式(III):
    Figure 0004460175
    (式中、R、R及びnは前記と同じである。Rは、少なくとも1つのヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜20個の2価の炭化水素基、もしくは、少なくとも1つのヒドロシリル化可能な炭素−炭素二重結合を有する炭素数2〜20個の、スルホニル基、水酸基、カルボニル基、エーテル基又はハロゲン基を含む2価の炭化水素基を表す。2つのRは同一であってもよく、また異なっていてもよい)で表されるイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種のイミド化合物であり、
    上記(B)成分が、一般式(IV):
    Figure 0004460175
    (式中、R は、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の4価の炭化水素基、もしくは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の、スルホニル基、水酸基、カルボニル基、エーテル基又はハロゲン基を含む4価の炭化水素基を表す。R は、炭素数1〜20個の2価の炭化水素基、もしくは、炭素数1〜20個の、スルホニル基、水酸基、カルボニル基、エーテル基又はハロゲン基を含む2価の炭化水素基を表す。Yは、少なくとも1つのヒドロシリル基を含む1価の基を表す。2つのR およびYはそれぞれ同一であってもよく、また異なっていてもよい)で表されるイミド化合物、及び、一般式(V):
    Figure 0004460175
    (式中、R は、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の2価の炭化水素基、もしくは、芳香族基を含有する炭素数6〜30個の、スルホニル基、水酸基、カルボニル基、エーテル基又はハロゲン基を含む2価の炭化水素基、又は、一般式(II)で表される2価の有機基を表す。R 10 は、少なくとも1つのヒドロシリル基を含む炭素数1〜20個の2価の炭化水素基、もしくは、少なくとも1つのヒドロシリル基を含む炭素数1〜20個の、スルホニル基、水酸基、カルボニル基、エーテル基又はハロゲン基を含む2価の炭化水素基を表し、2つのR 10 は同一であってもよく、また異なっていてもよい)で表されるイミド化合物からなる群より選択される少なくとも1種のイミド化合物であることを特徴とする硬化性組成物。
  2. 請求項1に記載の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物。
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