JP4457796B2 - 防水シート接合用治具 - Google Patents

Description

本発明は、例えばコンクリート、ＡＬＣ、モルタルなどの建物躯体や折板屋根、瓦棒葺き屋根などの金属下地屋根などの被防水施工面に固定されたシート接合板と防水シートとを高周波誘導加熱により接合させるに当り、防水シート上に載置して用いる防水シート接合用治具に関する。

従来、コンクリート、ＡＬＣ、モルタルなどの建物躯体や折板屋根、瓦棒葺き屋根などの金属下地屋根などの被防水施工面をシート防水施工する場合には、例えば中央に孔があけられた円盤状の鋼板に熱融着性樹脂が被覆されたシート接合板を熱融着性樹脂面を上にして被防水施工面の所要箇所に点在状に配置し、中央の孔にカールプラグなどの固定具を被防水施工面に打ち込んで固定した後、その上から防水シートを覆い被せ、シート接合板と防水シートとを接合することによってなされている。その接合方法としては、防水シートの上方から高周波誘導加熱器を用いて高周波を発生させ、シート接合板における鋼板を加熱することによって被覆されている熱融着性樹脂を溶融させた後に、防水シートの上から当接面を押圧して接合させるといったいわゆる誘導加熱による方法が採用されている。

当接面を押圧する方法としては、施工作業者がシート接合板溶融後に、手袋や布切れなどを介して、上方の防水シート面から直接手で押さえつけるといった方法が一般的であるが、施工作業者によっては力の掛け方が異なるため、押圧力にばらつきが生じ、十分に接合されない箇所が生じるなどの問題がある。

そこで高周波により鋼板に被覆されている熱融着性樹脂を溶融させた後、図５に示すように底面が平坦な高周波誘導加熱器における加熱ヘッド（２１）を重しとして、コンクリートなどの躯体上で固定具（９）によって固定されたシート接合板（８）の上方に敷設された防水シート（Ｓ）上に載置し、場合により施工作業者がさらに力を加え、シート接合板（８）と防水シート（Ｓ）との当接面を接合させるといった方法がなされている。このとき加熱ヘッド（２１）の押圧部には弾性体であるシリコンゴムシート（１７）が貼り付けられてあり、その弾力により防水シート（Ｓ）とシート接合板（７）の密着性を向上させる工夫がなされている。（特許文献１）
特開平１０−１４０７７４

しかしながら、上記のように高周波誘導加熱器における加熱ヘッドを用いて、防水シート上からシート接合板とを接合させるといった方法においては、シート接合板と躯体との境界部がシート接合板の厚さ分だけ段差になっているため、載置した際に加熱ヘッドが傾いた状態となりやすく、シート接合板の片側部などにおいて接合不良を起こすという問題があった。

加熱ヘッドの押圧面にシリコンゴムシートのような弾性材料が設けられたとしても、弾性材料は力が加わった部分のみで変形するため、傾いて押圧された際に、シート接合板の片側部において密着力の偏りが生じることに変わりなく、接合不良が生じるといった問題は解決されるものではなかった。

そこで、この発明の目的は、高周波誘導加熱により、防水シートとシート接合板を接合するに当り、シート接合板と防水シートとの当接面に対応する位置で防水シート上に載置し、シート接合板の片側部などでの力の偏りを生じさせることを防止し、防水シートとシート接合板とを密着状に接合させるに好適な防水シート接合用治具を提供することにある。

発明者は、鋭意研究を行った結果、誘導加熱器の加熱ヘッドによりシート接合板に被覆されている接着性樹脂を溶融させた後に、シート接合板の上方の防水シート面に載置して用いる、永久磁石が配設された重し部材の下方に押圧部を有する中空体形状に形成された押圧部材を設け、押圧部は少なくとも弾性材料からなり、中空体内部には前記押圧部に圧力を加える流体が封入されている防水シート接合用治具が、防水シートを押圧した際に防水シートとシート接合板との力の偏りを防止し、密着性を向上させるに好適なものとなり得ることを見出した。

すなわち、第１の発明（請求項１）は、誘導加熱器の加熱ヘッドによりシート接合板に被覆されている接着性樹脂を溶融させた後に、シート接合板の上方の防水シート面に載置して用いる、永久磁石が配設された重し部材と、その下方に押圧部を有する中空体形状に形成された押圧部材と、が備えられた防水シート接合用治具であって、
前記押圧部は少なくとも弾性材料からなり、前記中空体内部には前記押圧部に圧力を加える流体が封入されていることを特徴とする防水シート接合用治具を要旨とする。

また、発明者は弾性材料からなる押圧部材を下方に備えた重し部材において、重し部材に磁石を配設することによって得られた防水シート接合用治具がシート接合板と防水シートとの力の偏りを防止し、それらの密着性を向上させるに好適なものとなり得ることを見出した。

また本発明にかかる第２の発明（請求項２）は、請求項１における押圧部材の外側に、重し部材を支えるガイド部材が設けられたことを特徴とする防水シート接合用治具を要旨とする。

この第１の発明にかかる防水シート接合用治具は、重し部材の下方に押圧部材が設けられ、押圧部材における押圧部は少なくとも弾性材料からなり、押圧部材は中空体形状に形成されて内部には押圧部に圧力を加える流体が封入されている構造を特徴としていることから、重し部材によって発生した押圧力が、押圧部材内部の流体を通じて、弾性材料からなる押圧部に均等な圧力として伝わって防水シートを押圧し、その載置箇所がシート接合板の片側部方向にわずかずれた場合でも、圧力を受けた防水シートがシート接合板に密着状に沿うこととなり、偏りを防ぎ、両者を密着状に接合することができるといった効果がある。

また第２の発明にかかる防水シート接合用治具は、重し部材に磁石が配設され、その下方に弾性材料からなる押圧部材が設けられているため、載置後、磁石が防水シートを介した状態でシート接合板を磁力により面方向に対し均等に引き付け合い、また弾性材料が緩衝材としての作用をすることによって、防水シートとシート接合板は密着状に接触し、偏りを生じさせることなく接合することができるという効果がある。

また、防水シートの敷設構造の一例としては、屋根や躯体などの被防水施工面に発泡ポリスチレン板などの断熱材が載置され、シート接合板が固定具によって断熱材を介した態様で被防水施工面に固定された構造があるが、このような構造においては、誘導加熱によってシート接合板と防水シートとが熱融着される際に、シート接合板の周辺における断熱材の一部がその熱を受けて軟化し、重しなどからの押圧力を受けて変形する場合がある。このような場合に対し、本発明における防水シート接合用治具は、磁石がシート接合板を引き付けることで、押圧力を保ったままで、その治具自体の重量を減らすことができ、断熱材の変形を防止または軽減することができるといった効果がある。

第３の発明にかかる防水シート接合用治具は、重し部材に磁石が配設されるとともに、重し部材の下方に少なくとも押圧部が弾性材料からなる中空体形状が形成され、この中空体内部には押圧部に圧力を加える流体が封入された押圧部材が設けられた構成のため、シート接合板が磁石によって防水シート側に面方向に均一な力で引き付けられるとともに、重し部材からの重量を受け押圧部材が防水シートとシート接合板とを密着状に押圧することで、防水シートとシート接合板とをさらに力が偏ることなく密着状に接合することができるという効果がある。

第４の発明にかかる防水シート接合用治具は、押圧部材の外側にガイド部材が設けられた構成であるため、シート接合板によってその境界で防水シート敷設施工面に段差が生じている場合でも、ガイド部材が防水シート接合用治具の傾きを軽減する作用をすることができ、シート接合板と防水シートを力が偏ることなく接合することができる。

この発明にかかる防水シート接合用治具の第１の形態としては、図１における斜視図、及び図２における断面図に示すように、防水シート接合用治具（１）は、重し部材（２）、押圧部材（３）、ガイド部材（５）および把持部材（６）とから構成されている。

重し部材（２）は、円筒状からなる磁石（２ａ）、同じく円筒状からなる硬質塩化ビニル樹脂部材からなる外皮材（２ｂ）、および円柱状の鉄芯からなる芯材（２ｃ）とが互いに嵌合されてなっている。なお、図１においてはこれら嵌合された構成の記載は省略している。

押圧部材（３）は、基部（３ａ）をなすポリ塩化ビニル樹脂被覆鋼板と、押圧部（３ｂ）をなす軟質ポリ塩化ビニルシートとが、内部に空間を確保できるような態様で、側縁どうしで熱融着により互いに接合された中空体構造となっており、その中空体内部には空気を媒体とした流体（４）が封入された構成となっている。なお、図２においては、基部（３ａ）をなすポリ塩化ビニル樹脂被覆鋼板の断面構成は省略しているが、樹脂被覆面が押圧部材（３）と対向する構成となっている。これは、図４についても同様である。

ガイド部材（５）は、押圧部材（３）が押圧時に圧縮されたときの厚さよりもやや薄くなるような厚さのシリコンスポンジを、押圧部材（３）が中心に収まるようなリング状にくり抜いた形状となっており、重し部材（２）の底面に貼着され、それを支えている。

把持部材（６）は、軟質塩化ビニル樹脂製のシート部材よりなっており、外皮材（２ｂ）と接着され、持ち運びが自在になるようになっている。

重し部材（２）は、図４に示すように、防水シート（Ｓ）とシート接合板（８）の当接面の上方に配置され、それらの接合に際し押圧力を与える部材で、その底面はシート接合板（８）より大きいことが好ましい。重し部材（２）の形状、材質はとくに問わないが、取り扱いやすさの点からは、形状としては底面が平坦状の円柱形や角柱形、材質としては金属や、金属と合成樹脂との組み合わせ材がよい。高周波誘導加熱器における加熱ヘッドをそのまま重し部材として用いることも可能である。

また重し部材（２）に磁石（２ａ）を配設することによって、下方の被防水施工面に固定されたシート接合板（８）と互いに引き合う力が働き、シート接合板（８）に対する押圧力をさらに高められることができるものとなり好ましい。さらに接合すべきシート接合板（８）とほぼ同等あるいはそれよりよりやや大きい外径の磁石（２ａ）を採用すれば、その磁力による誘導効果により、防水シート接合用治具（１）の位置づれを修正することも可能となりさらに好ましい。なお、重し部材（２）については、磁石（２ａ）が一部に配設されることの他に、重し部材（２）そのものを磁石として使用することも可能である。

押圧部材（３）は、重し部材（２）の底面に設けられ、防水シート（Ｓ）を押圧するための部材である。押圧部材（３）の下方に構成される押圧部（３ｂ）を形成する材料は、弾性材料からなる必要があり、また、基部（３ａ）を形成する材料と接合され得る材料である必要がある。ここで押圧部とは、直接防水シートを押圧する部分のことである。

この押圧部（３ｂ）を形成する弾性材料は、流体（４）から圧力を受けた際に、流体（４）を漏洩させない素材で、かつ弾性変形するものである必要があり、例えば、軟質ポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィンなどの軟質タイプの合成樹脂、シリコーンなどのゴム、またはＥＰＤＭ（エチレンプロピレンジエンゴム）などのエラストマー材料などで、中実体、発泡体、スポンジなどに加工されたものが好適な材料として上げられる。また、これらの弾性材料はフィルム状、またはシート状であるのが好ましく、とくに０．１〜２．０ｍｍ厚さ、さらに好ましくは０．３〜１．０ｍｍ厚さで設定されるのが望ましい。０．１ｍｍ未満であれば、強度が不足し押圧時に破断する恐れが高くなり、２．０ｍｍを超せば、弾性変化が少なくなり、圧力を効率よく分散させることができない場合があるからである。また、押圧部（３ｂ）を形成する弾性材料として、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、アクリル、ポリエステルなどの硬質タイプの合成樹脂も上げられる。これらの弾性材料はフィルム状であるのが好ましく、とくに０．１ｍｍ〜０．５ｍｍ厚さで設定されるのが好ましい。０．１ｍｍ未満であれば、強度が不足し押圧時に破断する恐れが高くなり、０．５ｍｍを超せば、弾性変化が少なくなり、圧力を効率よく分散させることができない場合があるからである。

基部（３ａ）は、重し部材（２）の底面に貼着または接着される部分をいい、それを構成する材料としては、押圧部（３ｂ）を形成する弾性材料と接合が可能で、また重し部材（２）と貼着または接着が可能な材料であればその選定に制限はない。もちろん押圧部（３ｂ）における弾性材料と同一であってもよい。同一の場合は、押圧部材（３）そのものを例えばブロー成形、インジェクション成形、圧縮成形などにより一体成形させることができる。

基部（３ａ）を構成する材料を合成樹脂などが被覆された鋼板とすれば、鋼板は板状体であり剛性も優れ、磁石（２ａ）と引き付け合う性質を有しており、また合成樹脂は押圧部（３ｂ）で構成される弾性材料と接着性に優れることから、とくに重し部材（２）の底面との貼着または接着が容易となり、重し部材（２）に磁石（２ａ）が設けられた場合には、その磁力により取り付けおよび取外しが自在となり、交換作業の容易性からさらに好ましいものとなる。

流体（４）としては、空気をはじめとする気体の他、水、オイルなどの液体、高粘度のゲル状体、顆粒状で流動性のよい砂やビーズなどの粒体などが適用される。とくに気体、液体、ゲル状体などの流体（４）は、内部に封入されたとき、パスカルの原理が有効に働き、中空体を形成する内面により均一の押圧力を与えることができるので好ましい。

また、押圧部材（３）の外側には、ガイド部材（５）が設けられるのが好ましい。このガイド部材（５）を取り付けることによって、防水シート接合用治具（１）はシート接合板（８）の上方で安定状態に載置される。

ガイド部材（５）は、防水シート接合用治具（１）の重さに対して、それを支える強度がある必要がある。その材質、形状に制限はないが、とくに安定性を確保するために、上記の弾性材料と同様に、軟質ポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィンなどの合成樹脂、シリコンなどのゴム、ＥＰＤＭ（エチレンプロピレンジエンゴム）などのエラストマー材料、またこれらの発泡体やスポンジで形成された弾性材料が好適である。その厚さについては、載置時、安定して立設するように、防水シート（Ｓ）と重し部材（２）との間に発生する隙間よりやや薄くすることが好ましい。

この発明にかかる防水シート接合用治具の別の形態としては、図３における断面図に示すように、円筒状からなる磁石（２ａ）、硬質塩化ビニル樹脂部材からなる外皮材（２ｂ）、および円柱状の鉄芯からなる芯材（２ｃ）とが互いに嵌合されてなる重し部材（２）とその底面に設けられたシリコンゴムシートからなる押圧部材（７）から構成されている。

ここでの押圧部材（７）としては弾性材料からなる必要があり、弾性材料としては、とくに軟質ポリ塩化ビニル樹脂やポリオレフィンなどの軟質タイプの合成樹脂、シリコーンなどのゴム、またはＥＰＤＭ（エチレンプロピレンジエンゴム）などのエラストマー材料などで、中実体、発泡体、スポンジなどに加工されたシート状のものが好適な材料として上げられる。

つぎに、この防水シート接合用治具（１）を用いた施工時における実施形態を、図４に基いて説明する。

まず、コンクリート躯体に、円盤状の塩化ビニル樹脂鋼板からなるシート接合板（８）を固定具（９）により固定し、その上から塩化ビニル樹脂製の防水シート（Ｓ）を覆うように敷設する。そして、シート接合板（８）の上方における防水シート（Ｓ）面に誘導加熱器の加熱ヘッドを当接し、そこから発生される高周波によって、シート接合板（８）における鋼板を加熱し、被覆されている接着性樹脂を溶融させる。

接着性樹脂が溶融した直後に、この加熱ヘッドを一旦外すとともに接着性樹脂が固化しない間に、本発明にかかる防水シート接合治具（１）を図４に示すようにシート接合板（８）の上方の防水シート（Ｓ）面に載置する。このとき、シート接合板（８）とそれに当接する防水シート（Ｓ）とは防水シート接合治具（１）によって密着状に押さえつけられ、押圧力が偏ることなく、均等に押圧された状態となる。

その後、溶融した接着性樹脂が十分に冷却する時間を待って、防水シート接合治具（１）を取り去り、作業は完了する。この防水シート接合治具（１）は、つぎの作業工程でも繰り返し使用される。この防水シート接合治具（１）を複数用意しておくと、作業効率がさらに良好なものとなる。

本発明にかかる防水シート接合用治具を示す斜視図である。 本発明にかかる防水シート接合用治具を示す断面図である。 本発明にかかる別の防水シート接合用治具を示す断面図である 本発明にかかる防水シート接合用部材を用いた施工状態を示す断面図である。 背景技術における高周波誘導加熱器の加熱ヘッドを用いた施工状態を示す断面図である。

符号の説明

１ 防水シート接合用治具
２ 重し部材
２ａ 磁石
２ｂ 外皮材
２ｃ 芯材
３、７ 押圧部材
３ａ 基部
３ｂ 押圧部
４ 流体
５ ガイド部材
６ 把持部
８ シート接合板
９ 固定具
Ｓ 防水シート

Claims (2)

1. 誘導加熱器の加熱ヘッドによりシート接合板に被覆されている接着性樹脂を溶融させた後に、シート接合板の上方の防水シート面に載置して用いる、永久磁石が配設された重し部材と、その下方に押圧部を有する中空体形状に形成された押圧部材と、が備えられた防水シート接合用治具であって、
   前記押圧部は少なくとも弾性材料からなり、前記中空体内部には前記押圧部に圧力を加える流体が封入されていることを特徴とする防水シート接合用治具。
2. 前記押圧部材の外側に、前記重し部材を支えるガイド部材が設けられた請求項１に記載の防水シート接合用治具。

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