以下、本発明について、詳細に説明する。
以下、本発明の有機感光体の構成について説明する。
本発明の画像形成方法は帯電手段により均一な帯電を付与した有機感光体上に像露光を行ない静電潜像を形成し、該静電潜像をトナーを含有する現像剤を用いて、トナー画像に顕像化させる画像形成方法において、前記有機感光体の表面層が前記一般式(1)で表される化合物及び数平均一次粒径(Dp)が5〜100nmの無機粒子を含有し、前記トナーは脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする。
前記一般式(1)において、R1、R2は各々炭素数1〜5のアルキル基であるが、特にt−ブチル基が好ましい。
又、本発明の画像形成方法は帯電手段により均一な帯電を付与した有機感光体上に像露光を行ない静電潜像を形成し、該静電潜像をトナーを含有する現像剤を用いて、トナー画像に顕像化させる画像形成方法において、前記有機感光体の表面層が前記一般式(2)で表される化合物及び数平均一次粒径(Dp)が5〜100nmの無機粒子を含有し、前記トナーは脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする。
前記一般式(2)において、R1、R2は各々炭素数1〜5のアルキル基であるが、特にt−ブチル基が好ましい。
本発明の画像形成方法は上記構成を有することにより、無機粒子を表面層に含有する有機感光体で発生しやすい画像濃度の低下や画像ボケ、ダッシュマーク或いは転写メモリーの発生を防止することができ、長期に亘り安定して、良質な電子写真画像を提供することができる。
本発明に係わる前記一般式(1)の化合物としては、下記のような化合物が挙げられる。
上記化合物の中でも、AO−1のトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が、表面層中の無機粒子に吸着されやすい活性ガスを効果的に消尽することができ、特に好ましく用いられる。
又、本発明に係わる前記一般式(2)の化合物としては、下記のような化合物が挙げられる。
上記化合物の中でも、AO−11の3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカンが、表面層中の無機粒子に吸着されやすい活性ガスを効果的に消尽することができ、特に好ましく用いられる。
本発明の無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の金属酸化物(遷移金属酸化物も含む)が好ましい。中でもシリカ、酸化チタン、アルミナが好ましく用いられる。
これらの金属酸化物粒子は、表面に存在する水酸基を封鎖して有機感光体の表面層に用いることが知られているが、本発明では、この水酸基の平均的な封鎖レベルをより完全なレベルにするために、無機粒子の表面処理を改良したものである。
金属酸化物粒子は、焼成強化したものが好ましい。例えば、焼成強化していないシリカでは疎水化処理が困難であるため、本発明の複数回表面処理を施すシリカとしては、焼成強化シリカが好ましい。焼成強化シリカでは、充分な強度を持たせるために、通常500℃以上、好ましくは1000℃以上の温度で焼成したものを用いる。焼成時間は、好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上である。上述の温度条件でシリカを焼成することによって、シリカ粒子の表面に存在している水酸基、シラノール基等の官能基が分解され、ケイ素酸化物となる。また、この結果シリカ粒子の比表面積が小さくなり、シラン化合物等により疎水化処理した場合に、効果的に表面処理することができる。このようなシリカとしては具体的に、4塩化ケイ素の酸素焔中で高温加水分解により生成されたものが挙げられる。
無機粒子の数平均一次粒径(Dp)が5.0〜100nmの範囲の微粒子を用いる。特に、10nm〜90nmが好ましい。数平均一次粒径(Dp)とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。数平均一次粒径(Dp)が5.0nm未満の無機粒子は表面層中での均一な分散ができにくく、凝集粒子を形成しやすく、該凝集粒子が電荷トラップとなって残留電位が増大し、画像濃度の低下や画像ボケ或いは転写メモリーが発生しやすく、画像劣化を発生しやすい。一方、数平均一次粒径(Dp)が100nmより大きい無機粒子は表面層の表面に大きな凹凸を作りやすく、これらの大きな凹凸に活性ガス(オゾンやNOx)が付着しやすく、画像ボケやダッシュマークが発生しやすい。又、数平均一次粒径(Dp)が100nmより大きい無機粒子は分散液中で沈澱しやすく、凝集物が発生しやすい。
本発明において、無機粒子の表面処理とは、無機粒子表面を金属酸化物、有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等によって被覆することを示す。無機粒子表面が金属化合物、有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等によって被覆されていることは、光電子分光法(ESCA)、オージェ電子分光法(Auger)、2次イオン質量分析法(SIMS)や拡散反射FI−IR等の表面分析手法を複合的に用いることにより高精度に確認される。
無機粒子の表面処理は、湿式法で行うことができる。例えば、無機粒子を水中に分散させて水性スラリーとし、この水性スラリーと、水溶性ケイ酸塩、水溶性のアルミニウム化合物等を混合して行う。前記水溶性のケイ酸塩として、ケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸で中和することができる。一方、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いたときは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで中和することができる。反応性有機ケイ素化合物による表面処理では、有機溶剤や水に対して反応性有機ケイ素化合物を溶解または懸濁させた液と無機粒子を混合し、この液を数分から1時間程度撹拌する。そして場合によっては該液に加熱処理を施した後に、濾過等の工程を経た後乾燥し、表面を有機ケイ素化合物で被覆した無機粒子を得ることができる。フッ素化合物による表面処理は、有機溶剤や水に対してフッ素原子を有する有機ケイ素化合物等を溶解または懸濁させ、該懸濁液と無機粒子を混合し、該混合溶液を数分から1時間程度撹拌混合し、場合によっては加熱処理を施した後に、濾過などの工程を経て乾燥し、フッ素化合物で被覆する。本発明の複数回表面処理シリカは、ある層では分散性を向上するための表面処理を施して該粒子を含有する塗布液の安定性を改善し、ある層では、例えば滑り性、表面性向上の為のシリコーンオイル、或いはシリコーン樹脂で処理することにより、滑り性、表面性の向上を行っている。
本発明に係わる複数回の表面処理の好ましい例としては、一次処理をハロゲン化シラン類による表面処理を行ない、最終処理をシラザン化合物類の表面処理の表面処理を行なった酸化物粒子が好ましい。
又、一次処理をシリコーンオイル類による表面処理を行ない、最終処理をシラザン化合物類の表面処理の表面処理を行なった酸化物粒子も好ましい。例えば、ハロゲン化シラン類或いはシリコーンオイル系処理剤によって一次表面処理し、この一次処理粉末を解砕し、さらに解砕粉末をアルキルシラザン系処理剤によって二次表面処理することにより、疎水化度および疎水化度分布を改善した酸化物粒子を得ることができる。
ハロゲン化シラン類或いはシリコーンオイル系処理剤による一次表面処理、解砕処理後のアルキルシラザン系処理剤による二次表面処理は乾式処理または湿式処理の何れでも良い。ただし、上記一次表面処理と二次表面処理の順序が異なったり、あるいは最終処理の処理剤のや種類使用量や処理方法などが適切でない場合には、疎水度や疎水化度分布が改善されず、本発明の目的を達成し得ない。特に、最終処理がシラザン化合物類以外の場合は、表面処理が時間の経過と共に、離脱しやすく、疎水化度分布が大きくなりやすい。
このような複数回の表面処理を行なうことにより、酸化物粒子の疎水化度及び疎水化度分布を改善することができ、画像濃度の低下や画像ボケ或いは転写メモリーの発生を効果的に防止することができる。
又、本発明に係わる表面層の無機粒子は、疎水化度を76%(vol.%)以上にすることが好ましい。該無機粒子の疎水化度が76%未満では、無機粒子の表面に存在する水酸基が多く、電位特性(帯電電位や残留電位等)の湿度依存性が大きく、又、NOx等の活性ガスを表面に吸着しやすく、画像ボケやダッシュマークが発生しやすい。無機粒子の疎水化度は80%以上がより好ましい。
又、本発明に係わる表面層の無機粒子は、疎水化度分布値が10%(vol.%)以下が好ましい。疎水化度分布値が10%より大きいと、表面に水酸基が多く残存する無機粒子が含まれ、画像ボケの発生が発生しやすい。
尚、本発明の疎水化度(メタノールウェッタビリティ)とはメタノールに対する濡れ性の尺度で示される。即ち、以下のように定義される。
疎水化度(メタノールウェッタビリティ)=(a/(a+50))×100
疎水化度の測定方法を以下に記す。
内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の無機粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸せきされているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で無機粒子の全体が濡れるまで(全部が沈降するまで)ゆっくり滴下する。この無機粒子全体を濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、上記式により疎水化度が算出される。
疎水化度分布値の測定方法
1)測定対象の無機粒子を0.2g秤量し、遠沈管に入れる。
(プロットしたい点数分+1本(全沈用)を用意する)
2)駒込ピペットにて濃度の異なるメタノール溶液を各7ml遠沈管に入れ、しっかりしめる(全沈用は上記疎水化度で決定されたメタノール濃度を用いる)。
3)ターブラーミキサー90rpmで30秒間分散する。
4)遠心分離器にかける(3500rpm、10分間)
5)沈降容積を読みとり、全沈降容積(全部が沈降した容積)を100%としたときの各沈降容積%を求める。
6)上記、各測定値を基に、横軸メタノール濃度(Vol.%)、縦軸沈降容積(Vol.%)のグラフを作製する。
上記測定より、疎水化度分布を測定し、疎水化度分布値は次のように定義される。
{(沈降容積が100%のメタノールVol.%)
−(沈降容積が10%のメタノールVol.%)}≦25
疎水化度分布曲線を図1に示す。図1の分布曲線では、a点のメタノール濃度が疎水化度を表し、a点のメタノール濃度とb点のメタノール濃度の差;Δ(a−b)が本発明の疎水化度分布値を表す。
次に、本発明の一次表面処理或いは二次表面処理に用いる表面処理剤について、記載する。
本発明の一次処理に好ましく用いられるシリコーンオイル系処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルを用いることができる。また目的に応じて2種以上を混合しても良い。
ハロゲン化シラン類としては、ジメチルジクロロシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等が有る。
最終処理の表面処理剤に用いられるシラザン類としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等が使用できる。
上記、シリコーンオイル系処理剤及びハロゲン化シラン類以外に下記に示すアルコキシシラン類、シロキサン類、金属アルコキシド、脂肪酸及びその金属塩等をシラザン類の最後の表面処理の前に、表面処理剤として用いてもよい。
アルコキシシラン類としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等がある。
シロキサン類としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサンなどがある。
金属アルコキシドとしては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−i−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−s−ブトキシアルミニウム、トリ−t−ブトキシアルミニウム、モノ−s−ブトキシジ−i−プロピルアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−s−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、ジメトキシ錫、ジエトキシ錫、ジ−n−ブトキシ錫、テトラエトキシ錫、テトラ−i−プロポキシ錫、テトラ−n−ブトキシ錫、ジエトキシ亜鉛、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド等が挙げられる。
脂肪酸及びその金属塩としては、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸が挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウム等の金属との塩が挙げられる。
これらの処理剤はヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、アセトン等、場合によっては、水などで希釈して用いると良い。
表面処理の具体的な手順;例えば、シリコーンオイルを溶かした溶剤(好ましくは有機酸等でpH4に調整)の中にシリカ粉末を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。その後、シラザン化合物を溶かした溶剤の中に、解砕した処理粉を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。また、次のような方法でも良い。例えば、シリカ粉末を反応槽に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながらアルコール水を添加し、オルガノポリシロキサン等のシリコーンオイル系処理液を反応槽に導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去する。その後、解砕処理を行った後に、窒素雰囲気下、撹拌しながら、アルキルシラザン系処理液を導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去した後に冷却する。処理条件はシリカ粉末が上記疎水率、疎水化度および上記分布頻度を有するように調整する。
又、これらの処理剤はヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、アセトン等、場合によっては、水などで希釈して用いることもできる。
前記表面層中には無機粒子の分散性を助けるバインダー樹脂を含有する。該バインダー樹脂としては、ポリカーボネートやポリアリレートが好ましい。これらポリカーボネートやポリアリレートの分子量は10,000〜100,000が好ましい。
又、表面層中の無機子の比率は質量比でバインダー樹脂100質量部に対し、少なくとも5質量部以上50質量部以下の量で用いることが好ましい。5質量量部未満では表面層の摩耗が大きく、擦り傷等が発生してハーフトーン画像が荒れやすい。50質量部より多いと表面層が脆弱な膜となり、クラック等が発生しやすい。
又、本発明に係わる表面層は電荷輸送物質を含有することが好ましい。
電荷輸送物質(CTM)としては公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を用いることが好ましい。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
表面層中のバインダー樹脂と電荷輸送物質の質量比はバインダー100質量部に対し、電荷輸送物質30〜200質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましい。
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
本発明の有機感光体の構成は、前記した表面層を有する限り特に制限されるものではなく、例えば、以下に示すような構成が挙げられる;
1)導電性支持体上に感光層として電荷発生層および電荷輸送層を順次積層した構成
2)導電性支持体上に感光層として電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層を順次積層した構成;
3)導電性支持体上に感光層として電荷輸送材料と電荷発生材料とを含む単層を形成した構成;
4)導電性支持体上に感光層として電荷輸送層および電荷発生層を順次積層した構成;
5)上記1)〜5)の感光体の感光層上にさらに表面保護層を形成した構成。
感光体が上記いずれの構成を有する場合であってもよい。感光体の表面層とは、感光体が空気界面と接触する層であり、導電性支持体上に単層式の感光層のみが形成されている場合は当該感光層が表面層であり、導電性支持体上に単層式または積層式感光層と表面保護層とが積層されている場合は表面保護層が最表面層である。本発明では上記2)の構成が最も好ましく用いられる。尚、本発明の感光体はいずれの構成を有する場合であっても、導電性支持体上、感光層の形成に先だって、下引層(中間層)が形成されていてもよい。
電荷輸送層とは、光露光により電荷発生層で発生した電荷キャリアを有機感光体の表面に輸送する機能を有する層を意味し、該電荷輸送機能の具体的な検出は、電荷発生層と電荷輸送層を導電性支持体上に積層し、光導伝性を検知することにより確認することができる。
次に、有機感光体の層構成を上記2)の構成を中心にして記載する。
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。本発明の導電性支持体としては、アルミニウム支持体が最も好ましい。該アルミニウム支持体は、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウム等の成分が混合したものも用いられる。
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、中間層を設けることが好ましい。
本発明に用いられる中間層にはN型半導性粒子を含有することが好ましい。該N型半導性粒子とは、主たる電荷キャリアが電子である粒子を意味する。すなわち、主たる電荷キャリアが電子であることから、該N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させた中間層は、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性が少ない性質を有する。
N型半導性粒子としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)が好ましく、特に酸化チタンが特に好ましく用いられる。
N型半導性粒子は数平均一次粒径が3.0〜200nmの範囲の微粒子を用いる。特に、5nm〜100nmが好ましい。数平均一次粒径とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。数平均一次粒径が3.0nm未満のN型半導性粒子は中間層バインダー中での均一な分散ができにくく、凝集粒子を形成しやすく、該凝集粒子が電荷トラップとなって残電上昇が発生しやすい。一方、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は中間層の表面に大きな凹凸を作りやすく、これらの大きな凹凸を通してドット画像が劣化しやすい。又、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は分散液中で沈澱しやすく、凝集物が発生しやすく、その結果、ドット画像が劣化しやすい。
前記酸化チタン粒子は、結晶形としては、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形及びアモルファス形等があるが、中でもルチル形酸化チタン顔料又はアナターゼ形酸化チタン顔料は、中間層を通過する電荷の整流性を高め、即ち、電子の移動性を高め、帯電電位を安定させ、残留電位の増大を防止すると共に、ドット画像の劣化を防止することができ、本発明のN型半導性粒子として最も好ましい。
N型半導性粒子はメチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体で表面処理されたものが好ましい。該メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体の分子量は1000〜20000のものが表面処理効果が高く、その結果、N型半導性粒子の整流性を高め、このN型半導性粒子を含有する中間層を用いることにより、黒ポチ発生が防止され、又、良好なドット画像の再現性に効果がある。
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体とは−(HSi(CH3)O)−の構造単位とこれ以外の構造単位(他のシロキサン単位のこと)の共重合体が好ましい。他のシロキサン単位としては、ジメチルシロキサン単位、メチルエチルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位及びジエチルシロキサン単位等が好ましく、特にジメチルシロキサンが好ましい。共重合体中のメチルハイドロジェンシロキサン単位の割合は10〜99モル%、好ましくは20〜90モル%である。
メチルハイドロジェンシロキサン共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよいがランダム共重合体及びブロック共重合体が好ましい。又、共重合成分としてはメチルハイドロジェンシロキサン以外に、一成分でも二成分以上でもよい。
本発明に用いられる中間層を形成するために作製する中間層塗布液は前記表面処理酸化チタン等のN型半導性粒子の他にバインダー樹脂、分散溶媒等から構成される。
N型半導性粒子の中間層中での比率は、中間層のバインダー樹脂との体積比(バインダー樹脂の体積を1とすると)で1.0〜2.0倍が好ましい。中間層中でこのような高密度で本発明のN型半導性粒子を用いることにより、中間層の整流性が高まり、膜厚を厚くしても残留電位の上昇やドット画像の劣化を効果的に防止でき、良好な有機感光体を形成することができる。又、このような中間層はバインダー樹脂100体積部に対し、N型半導性粒子を100〜200体積部を用いることが好ましい。
一方、これらの粒子を分散し、中間層の層構造を形成するバインダー樹脂としては、粒子の良好な分散性を得る為にポリアミド樹脂が好ましいが、特に以下に示すポリアミド樹脂が好ましい。
中間層のバインダー樹脂としてはアルコール可溶性ポリアミド樹脂が好ましい。有機感光体の中間層のバインダー樹脂としては、中間層を均一な膜厚で形成するために、溶媒溶解性の優れた樹脂が必要とされている。このようなアルコール可溶性のポリアミド樹脂としては、前記した6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂が知られているが、これらの樹脂は吸水率が高く、このようなポリアミドを用いた中間層は温湿度依存性が高くなる傾向にあり、その結果、たとえば高温高湿や低温低湿下の帯電特性や感度等が変化しやすく、転写メモリーの発生等を起しやすい。
アルコール可溶性ポリアミド樹脂には、上記のような欠点を改良し、融解熱0〜40J/gで、且つ吸水率5質量%以下の特性を与えることにより、従来のアルコール可溶性ポリアミド樹脂の欠点を改良し、外部環境が変化しても、又有機感光体の長時間連続使用を行っても、良好な電子写真画像を得ることができる。
以下、融解熱0〜40J/gで、且つ吸水率5質量%以下の特性を有するアルコール可溶性ポリアミド樹脂について説明する。
前記アルコール可溶性ポリアミド樹脂としては、アミド結合間の炭素数が7〜30の繰り返し単位構造を全繰り返し単位構造の40〜100モル%含有するポリアミド樹脂が好ましい。
ここで、アミド結合間の炭素数が7〜30の繰り返し単位構造について説明する。前記繰り返し単位構造とはポリアミド樹脂を形成するアミド結合単位を意味する。このことを、繰り返し単位構造がアミノ基とカルボン酸基の両方を持つ化合物の縮合により形成されるポリアミド樹脂(タイプA)と、ジアミノ化合物とジカルボン酸化合物の縮合で形成されるポリアミド樹脂(タイプB)の両方の例で説明する。
即ち、タイプAの繰り返し単位構造は一般式(3)で表され、Xに含まれる炭素数が繰り返し単位構造におけるアミド結合単位の炭素数である。一方タイプBの繰り返し単位構造は一般式(4)で表され、Yに含まれる炭素数もZに含まれる炭素数も、各々繰り返し単位構造におけるアミド結合単位の炭素数である。
一般式(3)中、R1は水素原子、置換又は無置換のアルキル基、Xは置換又は無置換の、アルキレン基、2価のシクロアルカンを含む基、2価の芳香族基及びこれらの混合構造を示し、lは自然数を示す。
一般式(4)中、R2、R3は各水素原子、置換又は無置換のアルキル基、Y、Zは各置換又は無置換の、アルキレン基、2価のシクロアルカンを含む基、2価の芳香族基及びこれらの混合構造を示し、m、nは自然数を示す。
前記のごとく、炭素数が7〜30の繰り返し単位構造は置換又は無置換の、アルキレン基、2価のシクロアルカンを含む基、2価の芳香族基及びこれらの混合構造を有する化学構造等が挙げられるが、これらの中で2価のシクロアルカンを含む基を有する化学構造が好ましい。
上記ポリアミド樹脂は繰り返し単位構造のアミド結合間の炭素数が7〜30であるが、好ましくは9〜25、更には11〜20が良い。またアミド結合間の炭素数が7〜30の繰り返し単位構造が全繰り返し単位構造中に占める比率は40〜100モル%、好ましくは60〜100モル%、更には80〜100モル%が良い。
前記炭素数が7より小だと、ポリアミド樹脂の吸湿性が大きく、電子写真特性、特に繰り返し使用時の電位の湿度依存性が大きく、更に黒ポチ等の画像欠陥が発生しやすく、ドット画像が劣化しやすい。30より大であるとポリアミド樹脂の塗布溶媒への溶解が悪くなり、中間層の塗布膜形成に適さない。
又、アミド結合間の炭素数が7〜30の繰り返し単位構造が全繰り返し単位構造中に占める比率が40モル%より小さいと、上記効果が小さくなる。
本発明の好ましいポリアミド樹脂としては下記一般式(5)で示される繰り返し単位構造を有するポリアミドが挙げられる。
一般式(5)中、Y1は2価のアルキル置換されたシクロアルカンを含む基、Z1はメチレン基、mは1〜3、nは3〜20を示す。
上記一般式(5)中、Y1の2価のアルキル置換されたシクロアルカンを含む基は下記化学構造が好ましい。即ち、Y1が下記化学構造を有する本発明のポリアミド樹脂は、黒ポチやドット画像の劣化に対する防止効果が著しい。
上記化学構造において、Aは単結合、炭素数1〜4のアルキレン基を示し、R4は置換基で、アルキル基を示し、pは1〜5の自然数を示す。但し、複数のR4は同一でも、異なっていても良い。
上記ポリアミド樹脂の具体例としては下記のような例が挙げられる。
上記具体例中の()内の%は繰り返し単位構造のアミド結合間の炭素数が7以上の繰り返し単位構造の比率(モル%)を示す。
上記具体例の中でも、一般式(5)の繰り返し単位構造を有するN−1〜N−4のポリアミド樹脂が特に好ましい。
又、上記ポリアミド樹脂の分子量は数平均分子量で5,000〜80,000が好ましく、10,000〜60,000がより好ましい。数平均分子量が5,000以下だと中間層の膜厚の均一性が劣化し、本発明の効果が十分に発揮されにくい。一方、80,000より大きいと、樹脂の溶媒溶解性が低下しやすく、中間層中に凝集樹脂が発生しやすく、黒ポチの発生やドット画像の劣化を起こしやすい。
上記ポリアミド樹脂はその一部が既に市販されており、例えばダイセル・デグサ(株)社製のベスタメルトX1010、X4685等の商品名で販売されて、一般的なポリアミドの合成法で作製することができるが、以下に合成例の一例を挙げる。
上記ポリアミド樹脂を溶解し、塗布液を作製する溶媒としては、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が好ましく、ポリアミドの溶解性と作製された塗布液の塗布性の点で優れている。これらの溶媒は全溶媒中に30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、更には50〜100質量%が好ましい。前記溶媒と併用し、好ましい効果を得られる助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
本発明の中間層の膜厚は0.3〜10μmが好ましい。中間層の膜厚が0.5μm未満では、黒ポチラが発生しやすく、ドット画像の劣化を起こしやすい。10μmを超えると、残留電位の上昇が発生しやすく、ドット画像が劣化しやすい。中間層の膜厚は0.5〜5μmがより好ましい。
又、上記中間層は実質的に絶縁層であることが好ましい。ここで絶縁層とは、体積抵抗が1×108以上である。本発明の中間層及び保護層の体積抵抗は1×108〜1015Ω・cmが好ましく、1×109〜1014Ω・cmがより好ましく、更に好ましくは、2×109〜1×1013Ω・cmである。体積抵抗は下記のようにして測定できる。
測定条件;JIS:C2318−1975に準ずる。
測定器:三菱油化社製Hiresta IP
測定条件:測定プローブ HRS
印加電圧:500V
測定環境:30±2℃、80±5RH%
体積抵抗が1×108未満では中間層の電荷ブロッキング性が低下し、黒ポチの発生が増大し、有機感光体の電位保持性も劣化し、良好な画質が得られない。一方1015Ω・cmより大きいと繰り返し画像形成で残留電位が増大しやすく、良好な画質が得られない。
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
本発明の有機感光体には、電荷発生物質(CGM)として公知の電荷発生物質を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で、本発明の効果が顕著に現れ、繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできるCGMとしては、例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するオキシチタニルフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.3μm〜2μmが好ましい。
電荷輸送層
前記したように、本発明では電荷輸送層を複数の電荷輸送層から構成し、且つ最上層の電荷輸送層に本発明の無機粒子を含有させた構成が好ましい。
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により前記した無機粒子の他に酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
電荷輸送物質(CTM)としては公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を用いることが好ましい。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
電荷輸送層の合計膜厚は、10〜40μmが好ましい。該合計膜厚が10μm未満では、画像ムラが発生しやすく、40μmを超えると残電上昇が起こりやすく、鮮鋭性も劣化しやすい。また、表面層となる電荷輸送層の膜厚は0.5〜10μmが好ましい。
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等の地球環境に優しい溶媒が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
又、本発明に係わる有機感光体は、感光体を構成する層構成全層の残留溶媒を5000ppm以下に乾燥することが好ましい。更に、3000ppm以下がより好ましい。残留溶媒が多すぎるとNOx等の活性ガスを感光層中に進入させやすく、画像ボケ等を発生させやすい。
残留溶媒量は下記のようにして測定する。
感光体の支持体から層構成全層を剥離して、熱分解ガスクロマトグラフィー(GC15A:島津製作所製)及びキューリーポイントパイローライザー(JHP−3S:日本分析工業社製)を用いて感光層中(中間層を含む全層)の残留溶媒量を測定する。
又、これらの各層の塗布溶液は塗布工程に入る前に、塗布溶液中の異物や凝集物を除去するために、金属フィルター、メンブランフィルター等で濾過することが好ましい。例えば、日本ポール社製のプリーツタイプ(HDC)、デプスタイプ(プロファイル)、セミデプスタイプ(プロファイルスター)等を塗布液の特性に応じて選択し、濾過をすることが好ましい。
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、ライドホッパー型塗布装置の他に、浸漬塗布、スプレー塗布等の塗布加工法が用いられる。本発明の表面層の形成には円形スライドホッパー型塗布装置を用いるのが最も好ましい。
上記塗布液供給型の塗布装置の中でもスライドホッパー型塗布装置を用いた塗布加方法は、前記した低沸点溶媒を用いた分散液を塗布液として用いる場合に最も適しており、円筒状の感光体の場合は特開昭58−189061号公報等に詳細に記載されている円形スライドホッパー型塗布装置等を用いて塗布することが好ましい。
円形スライドホッパー型塗布装置を用いる塗布方法では、スライド面終端と基材は、ある間隙(約2μm〜2mm)を持って配置されているため基材を傷つける事なく、また性質の異なる層を多層形成させる場合においても、既に塗布された層を損傷することなく塗布できる。更に性質が異なり同一溶媒に溶解する層を多層形成させる際にも、浸漬塗布方法と比べて溶媒中に存在する時間がはるかに短いので、下層成分が上層側へ殆ど溶出せず、塗布槽にも溶出することなく塗布できるので、本発明の無機粒子の分散性を劣化させずに塗布することができる。
本発明は表面層が前記一般式(1)又は前記一般式(2)で表される化合物及び5〜100nmの無機粒子を含有した有機感光体を用い、脂肪酸金属塩を含有したトナーと併用することにより、有機感光体の表面に脂肪酸金属塩の膜を形成し、無機粒子の表面に吸着しやすい活性ガスの進入を防止すると共に、表面層に存在させる前記一般式(1)又は前記一般式(2)の化合物による活性ガスのクェンチ(沈静化)効果を高め、無機粒子を表面層に含有する有機感光体で発生しやすい画像濃度の低下や画像ボケ、ダッシュマーク或いは転写メモリーを防止することができ、長期に亘り安定して、良質な電子写真画像を提供することができる。
本発明に係わる脂肪酸金属塩は一般に炭素数10以上の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩が好ましい。たとえばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸インジウム、ステアリン酸ガリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルチミン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム等が挙げられ、より好ましくはステアリン酸金属塩である。
本発明では脂肪酸金属塩の中でも特にフローテスターの流出速度が高い脂肪酸金属塩は劈開性が高く、本発明の前記感光体表面でより効果的に脂肪酸金属塩の層を形成することができる。流出速度の範囲としては1×10-7以上1×10-1以下が好ましく、5×10-4以上1×10-2以下であると最も好ましい。フローテスターの流出速度の測定は島津フローテスター「CFT−500」(島津製作所(株)製)を用いて測定した。
次に脂肪酸金属塩の各供給手段について記載する。
現像剤中に脂肪酸金属塩を含有させる場合は、トナーの後処理工程でトナー中に脂肪酸金属塩を混合攪拌して分散させるのが好ましい。添加量はトナーの粒径等にも依存するが、一般的なトナーの粒径2〜15μm(体積平均粒径)では0.01〜1質量%が好ましい。脂肪酸金属塩が0.01質量%未満だとトナー表面から感光体表面への移行が不十分となり感光体表面に薄膜を形成することが難しい。また1質量%より多いと感光体表面に形成された脂肪酸金属塩薄膜への紙粉の付着が増大し、画像ボケが発生しやすくなる。
又、トナーへの流動性付与の観点から、無機微粒子、有機微粒子をトナーに添加し混合攪拌処理を繰り返すことが好ましい。この場合、特に無機微粒子の使用が好ましく、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物粒子の使用が好ましく、更に、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等によって疎水化処理されていることが好ましい。
トナーは結着樹脂、着色剤及びその他の添加剤を含有する着色粒子に無機微粒子を混合したものが好ましい。トナーの体積平均粒径は3〜20μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。着色粒子の製造法は特に限定されず、粉砕法或いは重合法で作製されたものを用いることが出来るが、本発明では粒度分布が均一な特性が得られる重合法で作製された重合トナーがより好ましい。ここで、重合トナーとは、トナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。重合トナーは原料モノマーを水系で均一に分散した後に重合させトナーを製造することから、トナーの粒度分布、及び形状が均一なトナーが得られる。
トナーに用いられる結着樹脂としては、特に限定されず従来公知の種々の樹脂が用いられる。具体的にはスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂及びポリエステル系樹脂等が挙げられる。着色剤も特に限定されず従来公知の材料が用いられる。具体的にはカーボンブラック、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコインブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオクサレート及びローズベンガル等が挙げられる。その他の添加剤としては、サリチル酸誘導体及びアゾ系金属錯体等の荷電制御剤、低分子量ポリオレフィン及びカルナウバワックス等の定着性改良剤等が挙げられる。
又、磁性トナーは、着色剤として磁性体微粒子を用いることにより得ることが出来る。磁性体微粒子としては、平均一次粒子径が0.1〜2.0μmのフェライト、マグネタイト等の粒子が用いられる。磁性体微粒子の添加量はトナー中の20〜70質量%が好ましい。
又、流動性付与の観点から、無機微粒子を着色粒子に混合することが好ましい。無機微粒子としては、シリカ、チタニア及びアルミナ等の無機酸化物粒子が好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤、或いはチタンカップリング剤等によって疎水化処理されていることがより好ましい。
〈現像剤〉
本発明に係わるトナーは、現像剤として用いる場合は、一成分現像剤(磁性、非磁性を含む)及び二成分現像剤のどちらも使用することができる。
二成分現像剤として用いる場合は、トナー及びキャリアを混合して作製することが出来る。トナーのキャリアに対する混合量は、2〜10質量%が好ましい。
キャリアは、体積平均粒径が10〜60μm、飽和磁化値が20〜80emu/gであるフェライトキャリアが好ましい。このようにキャリアの粒径が小さく、飽和磁化値も低いキャリアを用いることにより、現像スリーブ上の磁気ブラシが柔らかくなり、鮮鋭性が良好な電子写真画像を形成することができる。
混合する装置としては特に限定されず、ナウターミキサー、Wコーン及びV型混合機等を用いることが出来る。
体積平均粒径は、湿式分散器を備えたレーザー回折式粒度分析装置「HELOS」(シンパテック株式会社製)により測定される体積基準の平均粒径である。
飽和磁化は、「直流磁化特性自動記録装置3257−35」(横河電気株式会社製)により測定される。
又、キャリアは磁性体粒子を芯材(コア)とし、その表面を樹脂で被覆することが好ましい。上記キャリア芯材の被覆に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、各種の樹脂を用いることが可能である。正帯電性トナーに対しては、例えばフッ素系樹脂、フッ素−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂等を用いることができ、好ましくは縮合型のシリコーン系樹脂が良い。また、逆に、負帯電性トナーに対しては、例えばアクリル−スチレン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂及びその硬化樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が挙げられ、好ましくはアクリル−スチレン系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂及びその硬化樹脂、並びに縮合型のシリコーン系樹脂である。また必要に応じ、荷電制御剤、密着性向上剤、プライマー処理剤あるいは抵抗制御剤等を添加しても良い。
次に、本発明の有機感光体を用いた画像形成方法及び画像形成装置の説明をする。
図2は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
図2に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
感光体への一様帯電の後、像露光手段としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
ここで反転現像プロセスとは帯電器52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
その静電潜像は次いで現像手段としての現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
現像剤は、例えば前述のフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、前述のスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図2のように現像位置上部に設けて行う。
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写手段:転写器)58が作動し、給紙された記録紙Pにトナーと反対極性の帯電を与えてトナーを転写する。
次いで記録紙Pは分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後、一次作動を中止し、次なるトナー像の形成に備える。図2では転写電極58にコロトロンの転写帯電極を用いている。転写電極の設定条件としては、感光体のプロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、転写電流としては+100〜+400μA、転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。尚、下記文中「部」とは「質量部」を表す。
実施例2及ぶ評価1
感光体1の作製
下記の様に感光体1を作製した。
中間層
洗浄済み円筒状アルミニウム基体(切削加工により十点表面粗さRz:0.81μmに加工した)上に、下記中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃30分で乾燥し、乾燥膜厚5μmの中間層を形成した。
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5ミクロン、圧力;50kPa)し、中間層塗布液を作製した。
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:(例示ポリアミドN−1) 1部
ルチル形酸化チタン(一次粒径35nm;末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサンで表面処理を行ない、疎水化度を33に調製した酸化チタン顔料) 5.6部
エタノール/n−プロピルアルコール/THF(=45/20/30質量比)10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
電荷発生層:CGL
電荷発生物質(CGM):オキシチタニルフタロシアニン(Cu−Kα特性X線によるX線回折のスペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシン顔料) 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン=4/1(v/v) 300部
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
電荷輸送層1(CTL1)
電荷輸送物質(4,4′−ジメチル−4″−(α−フェニルスチリル)
トリフェニルアミン) 225部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6部
ジクロロメタン 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液1を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚18.0μmの電荷輸送層1を形成した。
電荷輸送層2(CTL2)
無機粒子:シリカ粒子(一次処理:ジメチルジクロロシラン、二次処理:ヘキサメチルジシラザンで表面処理された平均一次粒径8nmのシリカ:疎水化度76、疎水化度分布値10) 60部
電荷輸送物質(4,4′−ジメチル−4″−(α−フェニルスチリル)
トリフェニルアミン) 150部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
例示化合物AO−1 12部
THF:テトラヒドロフラン 2800部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 4部
を混合し、分散・溶解して電荷輸送層塗布液2を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層1の上に円形スライドホッパ型塗布機で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚2.0μmの電荷輸送層2を形成し、感光体1を作製した。感光体1の全層の残留溶媒は3600ppmであった。
感光体2〜13の作製
感光体1の作製において、中間層のポリアミド樹脂、電荷輸送層2(CTL2)の例示化合物AO−1及び無機粒子の種類を表1のように変化させた以外は感光体1と同様にして感光体2〜13を作製した。但し、一般式(1)の化合物欄のAOR−1、AOR−2、AOR−3は下記の化合物を表す。
表1中、無機粒子1はシリカ、無機粒子2はアルミナ、無機粒子3は酸化チタンを表す。又、無機粒子の表面処理剤については下記の表面処理剤を用いた表面処理を示す。
シラザン;ヘキサメチルジシラザン
シリコーンオイル;メチルハイドロジェンシリコーンオイル
尚、感光体1〜13に用いた無機粒子の疎水化度及び疎水化度分布値は、無機粒子の表面処理後20℃60%RH環境下で3日間保存後(NN3日後)に前記した測定法により測定した値である。
(2)現像剤の作製
下記トナーA〜Eとキャリアよりなる現像剤A〜Eを調製した。
n−ドデシル硫酸ナトリウム=0.90kgと純水10.0Lを入れ撹拌溶解する。この液に、撹拌下、リーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)1.20kgを徐々に加え、ついで、サンドグラインダー(媒体型分散機)を用いて、20時間連続分散した。分散後、大塚電子社製・電気泳動光散乱光度計ELS−800を用いて、上記分散液の粒径を測定した結果、重量平均粒径で122nmであった。また、静置乾燥による質量法で測定した上記分散液の固形分濃度は16.6質量%であった。この分散液を「着色剤分散液1」とする。
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgをイオン交換水4.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、アニオン界面活性剤溶液Aとする。
ノニルフェニルアルキルエーテル0.014kgをイオン交換水4.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、ノニオン界面活性剤溶液Aとする。
過硫酸カリウム=223.8gをイオン交換水12.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、開始剤溶液Aと呼ぶ。
温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた100Lの反応釜に、数平均分子量(Mn)が3500のポリプロピレンエマルジョン3.41kgとアニオン界面活性剤溶液Aとノニオン界面活性剤溶液Aとを入れ、撹拌を開始する。次いで、イオン交換水44.0Lを加える。
加熱を開始し、液温度が75℃になったところで、開始剤溶液Aを全量添加する。その後、液温度を75℃±1℃に制御しながら、スチレン14.3kgとアクリル酸n−ブチル2.88kgとメタクリル酸0.8kgとt−ドデシルメルカプタン548gとを投入する。
さらに、液温度を80℃±1℃に上げて、6時間加熱撹拌を行った。液温度を40℃以下に冷却し撹拌を停止する。ポールフィルターで濾過し、これをラテックスA1とした。
なお、ラテックスA1中の樹脂粒子のガラス転移温度は59℃、軟化点は116℃、分子量分布は、重量平均分子量=1.34万、重量平均粒径は125nmであった。
過硫酸カリウム=200.7gをイオン交換水12.0Lに混合し、室温下撹拌溶解する。これを、開始剤溶液Bとする。
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、櫛形バッフルを付けた100Lの反応釜に、ノニオン界面活性剤溶液Aを入れ、撹拌を開始する。次いで、イオン交換水44.0Lを投入する。
加熱を開始し、液温度が70℃になったところで、開始剤溶液Bを添加する。この時、スチレン11.0kgとアクリル酸n−ブチル4.00kgとメタクリル酸1.04kgとt−ドデシルメルカプタン9.02gとをあらかじめ混合した溶液を投入する。
その後、液温度を72℃±2℃に制御して、6時間加熱撹拌を行った。さらに、液温度を80℃±2℃に上げて、12時間加熱撹拌を行った。
液温度を40℃以下に冷却し撹拌を停止する。ポールフィルターで濾過し、この濾液をラテックスB1とした。
なお、ラテックスB1中の樹脂粒子のガラス転移温度は58℃、軟化点は132℃、分子量分布は、重量平均分子量=24.5万、重量平均粒径は110nmであった。
塩析剤としての塩化ナトリウム=5.36kgとイオン交換水20.0Lを入れ、撹拌溶解する。これを、塩化ナトリウム溶液Aとする。
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、櫛形バッフルを付けた100LのSUS反応釜(撹拌翼はアンカー翼)に、上記で作製したラテックスA1=20.0kgとラテックスB1=5.2kgと着色剤分散液1=0.4kgとイオン交換水20.0kgとを入れ撹拌する。ついで、35℃に加温し、塩化ナトリウム溶液Aを添加する。その後、5分間放置した後に、昇温を開始し、液温度85℃まで5分で昇温する(昇温速度=10℃/分)。液温度85℃±2℃にて、6時間加熱撹拌し、塩析/融着させる。その後、30℃以下に冷却し撹拌を停止する。目開き45μmの篩いで濾過し、この濾液を会合液とする。ついで、遠心分離機を使用し、会合液よりウェットケーキ状の非球形状粒子を濾取した。その後、イオン交換水により洗浄した。
上記で洗浄を完了したウェットケーキ状の着色粒子を、40℃の温風で乾燥し、着色粒子を得た。更に風力分級機により念入りな分級をして50%体積粒径(Dv50)が4.2μmの着色粒子を得た。さらに、この着色粒子に疎水性シリカ(疎水化度=70、数平均一次粒径=12nm)を1.0質量%と表2記載の脂肪酸金属塩0.5質量%を添加して混合しトナーA〜E(但し、Eは脂肪酸金属塩を含有していないトナーである)を得た。
〈キャリア〉
体積平均粒径50μmのシリコーン樹脂被覆フェライトキャリアを用いた。
〈現像剤〉
上記トナーA〜Eとキャリアをトナー濃度が5質量%となるように混合し前記トナーA〜Eに対応した現像剤A〜Eを得た。
評価1
以上のようにして得た感光体1〜13及び現像剤A〜Eの組み合わせNo.1〜17をコニカ(株)製の反転現像方式デジタル複写機「Konica7085」改造機(スコロトロン帯電器、半導体レーザ像露光器(波長680nm)、反転現像手段を有するA4紙85枚/分機)に搭載し、下記評価項目について評価した。評価は、基本的に画素率が7%の文字画像、ハーフトーン画像、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4で1枚間欠モードにて複写を行い評価した。評価結果を表3に示す。
評価条件
ラインスピード;420mm/秒
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器(負帯電)
帯電電位;−700V〜−750V
露光条件
べた黒画像部電位を−100Vにする露光量に設定。
露光ビーム;レーザは680nmの半導体レーザを使用、露光スポット面積:7.5×10-10m2、800dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数)
転写条件
転写極;コロナ帯電方式(正帯電)
分離条件
分離爪ユニットの分離手段を用いた
クリーニング条件
クリーニング部に硬度70°、反発弾性65%、厚さ2(mm)、自由長9mmのクリーニングブレードをカウンター方向に線圧18(g/cm)となるように重り荷重方式で当接した。
画像濃度(20℃50%の環境条件で評価)
マクベス社製RD−918を使用して測定。紙の反射濃度を「0」とした相対反射濃度で測定した。多数枚のコピーで残留電位が増加すると、画像濃度が低下する。20万枚コピー後のべた黒画像部で測定した。
◎:黒ベタ画像が1.2より高い(良好)
○:黒ベタ画像が1.0以上、1.2以下(実用上問題なし)
×:黒ベタ画像が1.0未満(実用上問題あり)
カブリ(20℃50%の環境条件で評価)
カブリ濃度はべた白画像をマクベス社製RD−918を使用し反射濃度で測定した。該反射濃度は相対濃度(印刷していないA4紙の濃度を0.000とする)で評価した。20万枚コピー後のべた白画像部で測定した。
◎;濃度が0.010未満(良好)
○;濃度が0.010以上、0.020以下(実用上問題ないレベル)
×;濃度が0.020より高い(実用上問題となるレベル)
(画像ボケ:耐活性ガス性)
上記デジタル複写機Konica「Sitios」7085を低温低湿(10℃、10%RH)の環境下に設置し、1000枚の連続複写後、20分間停止、その後、ハーフトーン画像を複写し、帯電極直下に発生する画像ボケの発生を観察し、下記の評価基準で評価した。
◎:ハーフトーン画像に画像ボケの発生は全く見られない(良好)
○:ハーフトーン画像に濃度差が0.05未満の画像ムラが発生しているが、ハーフトーン画像中で、該濃度差があまり目立たない。(実用上問題ないレベル)
×:ハーフトーン画像に濃度差が0.05以上の画像ボケが発生しており、ハーフトーン画像中で、該濃度差がはっきりしている。(実用上問題あり)
(ダッシュマーク)
ハーフトーン画像上のダッシュマーク(彗星状の小さな筋画像)の発生状況を下記の基準で判定した。
◎;感光体上にダッシュマークの発生核がみられず、ハーフトーン画像にもダッシュマークの発生なし(良好)
○;感光体上にダッシュマークの発生核がみられるが、ハーフトーン画像にはダッシュマークの発生なし(実用上問題なし)
×;感光体上にダッシュマークの発生核がみられ、ハーフトーン画像にもダッシュマークが発生している(実用上問題有り)
転写メモリー等の評価
前記デジタル複写機「Konica7085」改造機を高温高湿環境下(HH:30℃、80%RH)に24hr放置後、低温低湿環境下(LL:10℃、20RH%)に置き、30分後、コピーした。文字画像とハーフトーン画像のオリジナル画像をコピーし、発生した履歴残像の濃度差(ΔHD=履歴残像とその周辺の濃度差)で判定
◎:履歴残像の濃度差ΔHDが0.02未満(良好)
○:履歴残像の濃度差ΔHDが0.02〜0.04(実用上問題なし)
△:履歴残像の濃度差ΔHDが0.05〜0.06(実用性再検討要のレベル)
×:履歴残像の濃度差ΔHDが0.07以上(実用上問題あり)
鮮鋭性(30℃80%の環境条件で評価)
画像の鮮鋭性は、文字潰れで評価した。文字サイズ(ポイント)が異なる文字画像を形成し、下記の判断基準で評価した。
◎:4ポイント以下の文字が明瞭であり、容易に判読可能(良好)
○:6ポイント以下の文字が明瞭であり、容易に判読可能(実用上問題なし)
△:8ポイント以下の文字が明瞭であり、容易に判読可能(再評価が必要)
×:8ポイントの文字の一部又は全部が判読不能(実用上問題あり)
表3の結果より、表面層が前記一般式(1)で表される化合物及び数平均一次粒径(Dp)が5〜100nmの無機粒子を含有する感光体と脂肪酸金属塩を含有するトナーとの組み合わせ組み合わせ(No.1〜5、7、9、10、14〜16)はいずれの感光体も画像ボケ、ダッシュマーク及び転写メモリーの発生防止効果が良好であり、画像濃度、カブリも実用性の範囲以上の評価を達成し、鮮鋭性が良好な電子写真画像を獲得している。
一方、数平均一次粒径(Dp)が110nmのシリカを表面層に含有させた感光体の組み合わせNo.6は表面層の凹凸が大きく、活性ガスが付着しやすく、画像ボケ、ダッシュマークが発生し、鮮鋭性が劣化している。又、数平均一次粒径(Dp)が3nmのシリカを表面層に含有させた感光体の組み合わせNo.8はシリカの分散性が劣化し、表面層にシリカの凝集体が分散しているため、活性ガスが付着しやすく、又電荷ラップも増大し、画像濃度が低下し、画像ボケ、転写メモリーが発生し、鮮鋭性が劣化している。又、一般式(1)以外の酸化防止剤を含有させた感光体の組み合わせNo.11〜13は、画像ボケが発生し、鮮鋭性が劣化している。又、脂肪酸金属塩を含有していないトナーを用いた組み合わせNo.17もダッシュマークが発生し、鮮鋭性が劣化している。
実施例2及び評価2
感光体21〜33の作製
感光体1〜13の作製において、電荷輸送層2(CTL2)の一般式(1)の化合物の種類AO−1、AO−2、AO−3を表4のように一般式(2)の化合物AO−11、AO−12、AO−13に変化させた以外は感光体1〜13と同様にして感光体21〜33を作製した。
表4中、無機粒子1はシリカ、無機粒子2はアルミナ、無機粒子3は酸化チタンを表す。又、無機粒子の表面処理剤については下記の表面処理剤を用いた表面処理を示す。
シラザン;ヘキサメチルジシラザン
シリコーンオイル;メチルハイドロジェンシリコーンオイル
又、一般式(2)の化合物欄のAOR−1、AOR−2、AOR−3は前記の化合物を表す。
尚、感光体21〜33に用いた無機粒子の疎水化度及び疎水化度分布値は、無機粒子の表面処理後20℃60%RH環境下で3日間保存後(NN3日後)及び30℃80%RH環境下で1ヶ月間保存後(HH1ヶ月後)に前記した測定法により測定した値である。
評価2
以上のようにして得た感光体21〜33及び現像剤A〜Eの組み合わせNo.21〜37をコニカ(株)製の反転現像方式デジタル複写機「Konica7085」改造機(スコロトロン帯電器、半導体レーザ像露光器(波長680nm)、反転現像手段を有するA4紙85枚/分機)に搭載し、評価1と同じ評価方法、評価項目で評価した。
。評価結果を表5に示す。
表5の結果より、表面層が前記一般式(2)で表される化合物及び数平均一次粒径(Dp)が5〜100nmの無機粒子を含有する感光体と脂肪酸金属塩を含有するトナーとの組み合わせ組み合わせ(No.21〜25、27、29、30、34〜36)はいずれの感光体も画像ボケ、ダッシュマーク及び転写メモリーの発生防止効果が良好であり、画像濃度、カブリも実用性の範囲以上の評価を達成し、鮮鋭性が良好な電子写真画像を獲得している。
一方、数平均一次粒径(Dp)が110nmのシリカを表面層に含有させた感光体の組み合わせNo.26は表面層の凹凸が大きく、活性ガスが付着しやすく、画像ボケ、ダッシュマークが発生し、鮮鋭性が劣化している。又、数平均一次粒径(Dp)が3nmのシリカを表面層に含有させた感光体の組み合わせNo.28はシリカの分散性が劣化し、表面層にシリカの凝集体が分散しているため、活性ガスが付着しやすく、又電荷ラップも増大し、画像濃度が低下し、画像ボケ、転写メモリーが発生し、鮮鋭性が劣化している。又、一般式(2)以外の酸化防止剤を含有させた感光体の組み合わせNo.31〜33は、画像ボケが発生し、鮮鋭性が劣化している。又、脂肪酸金属塩を含有していないトナーを用いた組み合わせNo.37もダッシュマークが発生し、鮮鋭性が劣化している。