JP4301765B2 - 画像形成方法及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機やプリンターの分野において用いられる画像形成方法、画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体は有機光導電物質を含有する有機感光体が最も広く用いられている。有機感光体(以下、単に感光体ともいう)は可視光から赤外光まで各種露光光源に対応した材料を開発しやすいこと、環境汚染のない材料を選択できること、製造コストが安いことなどが他の感光体に対して有利な点であるが、同じ有機物から構成されているトナーとの付着力が高く、トナーのクリーニング性が低下しやすく、又多数枚の複写やプリント時に感光体表面の劣化や傷が発生しやすい。
【0003】
また、有機感光体を用いた近年の画像形成方法では、パソコンのプリンターとしての用途や、また通常の複写機においても画像処理の容易さや複合機への展開の容易さからデジタル方式の画像形成方式が急激に主流となりつつある。デジタル方式の画像形成では、コピーのみならず、オリジナル画像を作成する使用法が多くなり、デジタル方式の電子写真画像形成はより高画質が要求される傾向にある。
【0004】
上記高画質化技術の1つが微粒子トナーを画像形成方法であるが、10μm未満の微粒子トナーは有機感光体への付着力が大きくなり、トナーの感光体から記録紙への転写性の低下や、クリーニング性が低下するという問題が発生しやすい。トナーの転写性やクリーニング性が低下すると単に画像濃度が低下するだけでなく、文字画像等が識別不能の画像ボケや鮮鋭性の低下が発生しやすい。
【0005】
上記のような課題に対して、有機感光体上の残留トナーのクリーニング性及び有機感光体の耐摩耗性を改良する方法として、特開昭56−117245号、同63−91666号及び特開平1−205171号の各公報には感光体の最表面層に疎水性シリカを含有せしめ、感光体表面の機械的強度を大とし、耐久性を向上せしめることができることが記載されている。更に又特開昭57−176057号、同61−117558号又は特開平3−155558号等の各公報には前記疎水性シリカをシランカップリング剤等で処理して成る疎水性シリカ粒子を感光体の最表面層に含有せしめ、感光体の機械的強度を大ならしめると共に潤滑性を付与してより高耐久性の感光体が得られることが記載されている。
【0006】
又、上記の疎水化シリカ粒子の疎水化の不十分さを改良する方法として、焼結シリカを感光体表面層に適用する技術が特願平7−9957号に記載されている。即ち、30℃80%RHの環境下で調湿した場合の示差走査熱量分析において40℃以上200℃以下の範囲の吸熱エネルギー変化量ΔHが0〜20ジュール/gであり、且つ体積平均粒径0.05μm以上2μm以下である疎水性シリカを含有する感光体が記載されており、該感光体に用いる疎水性シリカ粒子として焼結性シリカが用いられている。
【0007】
しかしながら、近年のデジタル化の中で要求される高解像化に対しては、上記疎水化シリカを用いた感光体では、従来問題にならなかった微小な感光体の電位変動やバラツキを忠実に画像に再現することになり、新たな画像不良として認識されることとなった。即ち、有機感光体の表面層に前記のような疎水性シリカを含有させると、感光体の摩耗性や、クリーニング不良は改善されるが、高温高湿条件下で画像ボケが発生しやすいとか、急激な湿度の変化が起こり、高湿から低湿に環境が変化した場合には、反転現像で黒帯状の画像欠陥を発生させるメモリー現象(以後、環境メモリという)を引き起こすし易い。本発明者等はこの現象を検討した結果、現像剤中のトナーが感光体や周辺部材に比べての環境への順応が遅いため、感光体の現像部やクリーニング部などトナーが滞留する部位と他の部位との間に湿度差が生じ、この湿度差が原因となって、画像ボケや環境メモリを発生させていることを見いだした。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するために成されたものである。即ち、本発明の目的は、有機感光体を用いた画像形成方法において、トナーの転写性、クリーニング性を改善し、更に画像ボケや環境メモリの発生を防止した画像形成方法を提供することである。又、本発明の目的は、有機感光体を用いた画像形成装置において、トナーの転写性、クリーニング性を改善し、更に画像ボケや環境メモリの発生を防止した画像形成装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討した結果、本発明の目的は、下記構成の何れかを採ることにより達成されることがわかった。
【0010】
1.有機感光体上に形成された静電潜像を、現像工程で顕像化したトナー像を記録紙に転写し、該有機感光体上に残留したトナーを除去する画像形成方法において、前記有機感光体が30℃80%RH環境下で調湿し、40〜200℃の範囲で測定した示差走査熱量分析の吸熱エネルギー変化量ΔHが0.1〜10J/gで、且つ表面層に数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満の疎水化度が50%以上である疎水性シリカ粒子を含有した有機感光体であり、該有機感光体が吸水率5%以下のポリアミド樹脂をバインダーとする中間層を有し、該疎水性シリカ粒子が、該表面層のバインダーに対して1〜20質量%含有されており、前記現像工程で用いるトナーの30℃80%RH環境下における飽和水分量が0.1〜2.0質量%であることを特徴とする画像形成方法。
【0011】
2.前記有機感光体が電荷発生物質として、X線回折スペクトルのブラッグ角2θ(±0.2°)で、27.2°に主ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする前記1に記載の画像形成方法。
【0012】
3.有機感光体上に形成された静電潜像を、現像手段で顕像化したトナー像を記録紙に転写した後、該有機感光体上に残留したトナーを除去するクリーニング手段を有する画像形成装置において、前記有機感光体が30℃80%RH環境下で調湿し、40〜200℃の範囲で測定した示差走査熱量分析の吸熱エネルギー変化量ΔHが0.1〜10J/gで、且つ表面層に数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満の疎水化度が50%以上である疎水性シリカ粒子を含有した有機感光体であり、該有機感光体が吸水率5%以下のポリアミド樹脂をバインダーとする中間層を有し、該疎水性シリカ粒子が、該表面層のバインダーに対して1〜20質量%含有されており、前記現像手段で用いるトナーの30℃80%RH環境における飽和水分量が0.1〜2.0質量%であることを特徴とする画像形成装置。
【0013】
4.前記有機感光体が電荷発生物質として、X線回折スペクトルのブラッグ角2θ(±0.2°)で、27.2°に主ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする前記3に記載の画像形成装置。
【0014】
5.前記クリーニング手段がクリーニングブレードを有することを特徴とする前記3又は4に記載の画像形成装置。
【0017】
本発明の画像形成方法及び画像形成装置は、上記構成を有することにより、トナーの転写性、クリーニング性を改善し、更に画像ボケや環境メモリの発生を防止した良好な電子写真画像を提供することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明の有機感光体は30℃80%RH環境下で調湿し、40〜200℃の範囲で測定した示差走査熱量分析の吸熱エネルギー変化量ΔHが0.1〜20J/gで、且つ表面層に数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満の無機粒子を含有した有機感光体である。そして、30℃80%RH環境における飽和水分量が0.1〜2.0質量%であるトナーを用いて該有機感光体上にトナー像を形成することにより、優れたトナーの転写性を示し、画像ボケや、環境メモリ等の画像欠陥を生じない電子写真画像を得ることができる。
【0020】
《本発明に使用される有機感光体》
本発明有機感光体の表面層に含有される無機粒子の数平均一次粒子径は1nm以上、100nm未満であるが、好ましくは10nm以上、90nm以下、最も好ましくは10nm以上、50nm未満である。表面層に含有される無機粒子の数平均一次粒子径が1nm未満では感光体表面に微細な凹凸が形成されず、上記トナーの転写性、クリーニング性の改善効果が小さく、100nm以上の無機粒子では、40〜200℃の範囲で測定した示差走査熱量分析の吸熱エネルギー変化量ΔHが、10J/gより大きくなりやすい。このことは水分子等のキャリアトラップの原因となる物質が多くなり、その結果、環境メモリを発生しやすくなる。又ブレードの摩耗も増大し、クリーニング不良も発生しやすくなる。本発明の吸熱エネルギー変化量ΔHは0〜10J/gであるが、より好ましくは0〜8.0J/gである。
【0021】
本発明に用いられる1nm以上、100nm未満の無機粒子として、コスト、粒径の調整や表面処理の容易さ等から表面を疎水化した疎水性シリカが用いられる。
【0022】
本発明の無機粒子の数平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに300個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によりフェレ径の数平均径として測定値を算出する。
【0023】
上記疎水性シリカの疎水化度は、メタノールに対する濡れ性の尺度(メタノールウェッタビリティ)で示される疎水化度で50%以上のものが好ましい。疎水化度が50%未満であると前記吸熱エネルギー変化量ΔHが、10J/gより大きくなりやすく、その結果、環境メモリを発生しやすい。より好ましい疎水化度は65%以上、最も好ましい疎水化度は70%以上である。
【0024】
疎水化度を表すメタノールウェッタビリティとは、メタノールに対するシリカ微粉末の濡れ性を評価するものである。濡れ性の測定は以下の方法で行う。内容量250mLのビーカーに入れた蒸留水50mLに、測定対象のシリカ微粉末を0.2g添加して撹拌する。次にメタノールを先端が液体中に浸漬されているビュレットからゆっくり撹拌した状態でシリカ微粉末の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。このシリカ微粉末を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(mL)とした時、下記式(1)により疎水化度を算出する。
【0025】
式(1) 疎水化度=a/(a+50)×100
上記疎水性シリカは、公知の湿式法もしくは乾式法で生成されたシリカ粉末をを疎水化することにより得られる。特に乾式法(ケイ素化ハロゲン化合物の蒸気相酸化)により生成されたいわゆるヒュームドシリカと称されるものを疎水化剤で処理したものが、水分吸着サイトが少なく好ましい。これは従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次のようなものである。
【0026】
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
又、この製造工程において例えば、塩化アルミニウム又は、塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能である。
【0027】
シリカ粉末の疎水化処理は、シリカ微粉末を撹拌等によりクラウド状に分散させたものに、アルコール等で溶解した疎水化処理剤溶液を噴霧するか或いは気化した疎水化処理剤を接触させて付着させる乾式処理、又は、シリカ粉末を溶液中に分散させ、その中に疎水化処理剤を滴下して付着させる湿式処理等の従来公知の方法で行うことが出来る。
【0028】
疎水化処理剤としては、公知の化合物を用いることが出来、具体例を下記に挙げる。又、これらの化合物は組み合わせて使用しても良い。
【0029】
チタンカップリング剤としてはテトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート及びビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0030】
シランカップリング剤としてはγ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−ビニルベンジルアミノエチル−N−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン及びp−メチルフェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0031】
シリコーンオイルとしてはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル及びアミノ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0032】
これらの疎水化処理剤は、シリカ粉末に対して1〜40質量%添加して被覆することが好ましく、3〜30質量%がより好ましい。
【0033】
又、上記表面疎水化剤としてハイドロジェンポリシロキサン化合物を用いてもよい。該ハイドロジェンポリシロキサン化合物の分子量は1000〜20000のものが一般に入手しやすく、又、黒ポチ発生防止機能も良好である。特にメチルハイドロジェンポリシロキサンを最後の表面処理に用いると良好な効果が得られる。
【0034】
本発明では上記疎水化処理された疎水性シリカを有機感光体の表面層にバインダーと共に含有させるが表面層の疎水性シリカの割合はバインダーに対して1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%であり、最も好ましくは2〜10質量%で使用されるのがよい。20質量%を超えると、感光体の吸熱エネルギー変化量ΔHを10J/g以下にするのが難しくなり、環境メモリやトナーの転写性を低下させ、クリーニング不良も起こしやすい。一方、1質量%未満だと感光体の耐摩耗性の低下を起こしやすい。
【0035】
本発明の感光体の吸熱エネルギー変化量ΔHを10J/g以下にするには、感光体表面層に含有される疎水性シリカに数平均一次粒径が1nm以上、100nm未満の粒子を用いると共に、感光体を構成する各層に用いられているバインダー樹脂の吸水性を小さくすることが必要である。特に表面層、中間層の吸水率を小さくするようなバインダー樹脂の選択が必要である。即ち、高温高湿下では水分子は表面や導電性支持体を伝って、感光層中に進入しやすいく、これを防ぐためには表面層と中間層の吸水性を小さくすることが重要であり、又、感光層の中で最も占有容積が大きい電荷輸送層のバインダー樹脂の吸水性を小さくすることも重要である。
【0036】
本発明は表面層の無機微粒子を疎水化すると同時に、これら表面層のバインダー樹脂の吸水率を小さくすることにより、感光体の吸熱エネルギー変化量ΔHを10J/g以下にすることが可能となる。
【0037】
即ち、表面層に用いられるバインダー樹脂を吸水率を0.5%以下、好ましくは0.3%以下の実質的に吸湿性を持たないバインダー樹脂から選択することが好ましい。このようなバインダー樹脂としてはポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート等の樹脂が好ましく、特に良好な電子写真特性を有するポリカーボネートが好ましい。
【0038】
表面層のバインダー樹脂の吸水率とは、表面層に含まれている膜形成可能な全てのバインダー樹脂の吸水率の質量平均を意味し、該膜形成の可能なバインダー樹脂が2種類以上含有されている場合の吸水率は、各バインダー樹脂の吸水率の質量平均が1.0%以下、好ましくは0.5%以下になるように樹脂を選択することが好ましい。例えば表面層のバインダー樹脂に吸水率1.5%の樹脂Aを5g、吸水率0.5%の樹脂Bを10gの割合の混合樹脂を用いた場合は、表面層のバインダー樹脂の吸水率は(1.5×5+0.5×10)/(5+10)=0.83%の吸水率とする。
【0039】
中間層のバインダー樹脂の吸水率の定義も上記表面層のバインダー樹脂で定義したものと同じである。
【0040】
吸水率の測定条件
予め十分に乾燥した測定試料の質量を精密に秤量する。次に、20℃に維持したイオン交換水に試料を投入し、一定時間経過後に引き上げ試料表面の水を清潔な布で拭き取り、質量を測定する。以上の操作を質量増が飽和するまで繰り返し、その結果得られた試料の増加質量(増加分)を初期の質量で除した値を吸水率とした。
【0041】
一方、中間層のバインダー樹脂としては導電性支持体との接着性や電荷発生層との接着性、或いは導電性支持体からのフリーキャリアのブロッキング特性等を満たす特性を求められることから、体積抵抗が109〜1013Ωcmの極性基を有する樹脂が好ましい。このような抵抗特性を有し、溶解溶媒性を改良した樹脂として、ポリアミド樹脂が用いられる。吸水率は5%以下であり、好ましくは3.0%以下が好ましく、中間層のバインダーの吸水率が5%より大きいと中間層を通して感光層中の吸湿性が上昇し、環境メモリ等を増大させる。このような特性を満たすポリアミド樹脂としては以下のような化学構造を有する樹脂が挙げられる。
【0042】
【化1】
【0043】
【化2】
【0044】
次に本発明の有機感光体の層構成について説明する。
本発明において、有機感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機電子写真感光体を全て含有する。
【0045】
上記有機感光体の層構成は、特に限定はないが、基本的には電荷発生層、電荷輸送層、或いは電荷発生・電荷輸送層(電荷発生と電荷輸送の機能を同一層に有する層)等の感光層から構成されるが、その上に表面層を塗設した構成でもよい。又、表面層は保護層の機能と電荷輸送の機能を有していることが好ましい。
【0046】
以下に本発明に用いられる具体的な感光体の構成について記載する。
導電性支持体
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状或いは円筒状の導電性支持体が用いられる。
【0047】
本発明の円筒状の導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0048】
導電性支持体の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0049】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/l、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0050】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた前記した中間層を設ける。
【0051】
本発明の中間層には前記した吸水率が小さいバインダー樹脂中に酸化チタンを含有させることが好ましい。該酸化チタン粒子の平均粒径は、数平均一次粒径で10nm以上400nm以下の範囲が良く、15nm〜200nmが好ましい。10nm未満では中間層によるモアレ発生の防止効果が小さい。一方、400nmより大きいと、中間層塗布液の酸化チタン粒子の沈降が発生しやすく、その結果中間層中の酸化チタン粒子の均一分散性が悪く、又黒ポチも増加しやすい。数平均一次粒径が前記範囲の酸化チタン粒子を用いた中間層塗布液は分散安定性が良好で、且つこのような塗布液から形成された中間層は黒ポチ発生防止機能の他、環境特性が良好で、且つ耐クラッキング性を有する。
【0052】
本発明に用いられる酸化チタン粒子の形状は、樹枝状、針状および粒状等の形状があり、このような形状の酸化チタン粒子は、例えば酸化チタン粒子では、結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型及びアモルファス型等があるが、いずれの結晶型のものを用いてもよく、また2種以上の結晶型を混合して用いてもよい。その中でもルチル型で且つ粒状のものが最も良い。
【0053】
本発明の酸化チタン粒子は表面処理されていることが好ましく、表面処理の1つは、複数回の表面処理を行い、かつ該複数回の表面処理の中で、最後の表面処理が反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うものである。また、該複数回の表面処理の中で、少なくとも1回の表面処理がアルミナ、シリカ、及びジルコニアから選ばれる少なくとも1種類以上の表面処理を行い、最後に反応性有機ケイ素化合物を用いた表面処理を行うことが好ましい。
【0054】
尚、アルミナ処理、シリカ処理、ジルコニア処理とは酸化チタン粒子表面にアルミナ、シリカ、或いはジルコニアを析出させる処理を云い、これらの表面に析出したアルミナ、シリカ、ジルコニアにはアルミナ、シリカ、ジルコニアの水和物も含まれる。又、反応性有機ケイ素化合物の表面処理とは、処理液に反応性有機ケイ素化合物を用いることを意味する。
【0055】
この様に、酸化チタン粒子の様な酸化チタン粒子の表面処理を少なくとも2回以上行うことにより、酸化チタン粒子表面が均一に表面被覆(処理)され、該表面処理された酸化チタン粒子を中間層に用いると、中間層内における酸化チタン粒子等の酸化チタン粒子の分散性が良好で、かつ黒ポチ等の画像欠陥を発生させない良好な感光体を得ることができるのである。
【0056】
上記反応性有機ケイ素化合物としては下記一般式(1)で表される化合物が挙げられるが、酸化チタン表面の水酸基等の反応性基と縮合反応をする化合物であれば、下記化合物に限定されない。
【0057】
一般式(1)
(R)n−Si−(X)4-n
(式中、Siはケイ素原子、Rは該ケイ素原子に炭素が直接結合した形の有機基を表し、Xは加水分解性基を表し、nは0〜3の整数を表す。)
一般式(1)で表される有機ケイ素化合物において、Rで示されるケイ素に炭素が直接結合した形の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ドデシル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−グリシドキシプロピル、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル等の含エポキシ基、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタアクリロキシプロピルの含(メタ)アクリロイル基、γ−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピルオキシプロピル等の含水酸基、ビニル、プロペニル等の含ビニル基、γ−メルカプトプロピル等の含メルカプト基、γ−アミノプロピル、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル等の含アミノ基、γ−クロロプロピル、1,1,1−トリフロオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含ハロゲン基、その他ニトロ、シアノ置換アルキル基を挙げられる。また、Xの加水分解性基としてはメトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン基、アシルオキシ基が挙げられる。
【0058】
また、一般式(1)で表される有機ケイ素化合物は、単独でも良いし、2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0059】
また、一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の具体的化合物で、nが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていても良い。同様に、nが2以下の場合、複数のXは同一でも異なっていても良い。又、一般式(1)で表される有機ケイ素化合物を2種以上を用いるとき、R及びXはそれぞれの化合物間で同一でも良く、異なっていても良い。
【0060】
又、表面処理に用いる好ましい反応性有機ケイ素化合物としてはポリシロキサン化合物が挙げられる。該ポリシロキサン化合物の分子量は1000〜20000のものが一般に入手しやすく、又、黒ポチ発生防止機能も良好である。
【0061】
特にメチルハイドロジェンポリシロキサンを最後の表面処理に用いると良好な効果が得られる。
【0062】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0063】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0064】
本発明の有機感光体には、電荷発生物質として、例えば、他のフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを単独で或いは併用して用いることができる。
【0065】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.1μm〜2μmが好ましい。
【0066】
電荷輸送層
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0067】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.30(eV)以下である。
【0068】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0069】
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0070】
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0071】
表面層
本発明の表面層としては、前記した無機粒子を含有した表面層を用いる。又、該表面層には電荷輸送物質を含有させ、電荷輸送性を付与することが好ましい。即ち、電荷輸送層を複数層としその最上層を本発明の表面層とする構成が最も好ましい。
【0072】
以上、本発明の最も好ましい感光体の層構成を例示したが、本発明では上記以外の感光体層構成でも良い。
【0073】
感光層、保護層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0074】
次に有機感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0075】
《本発明に使用されるトナー》
本発明に用いられるトナーは30℃80RH%環境における飽和水分量が0.1以上2.0質量%以下である。本発明に用いられる有機感光体の表面層は無機粒子を含有しており、摩耗しにくい特徴を有する反面、表面が比較的親水性になるため、トナーが吸湿性の特性を有していると感光体表面の残留トナーのクリーニング性が低下し、トナーフィルミングが発生し、画像ボケや画像欠陥の原因となる。即ち、本発明に用いられるトナーは30℃80RH%環境における飽和水分量が0.1以上2.0質量%以下の範囲を外れると、特に2.0質量%を越えると感光体と残留トナーの付着力が増大し、クリーニング性が低下し、トナーフィルミングの発生が多くなり、前記した画像ボケの発生や、環境メモリ等の画像欠陥を発生させやすく、電子写真画像の画像品質を保てなくなる。一方飽和水分量が0.1未満にするためにはトナーに用いるすべての素材に吸湿性を抑止する材料を必要とし、トナー自体のコストが高くなり過ぎ製品価格を実現しえなくなる。
【0076】
本発明において、トナーの30℃80%RH環境における飽和水分量が0.1〜2.0質量%に抑える必要があるが、具体的な水分量調整方法としては、例えば次のようなものがある。
【0077】
第一にはトナー特にそのバインダー樹脂の疎水成分を増量する。バインダー樹脂の構成成分中、疎水性の強いスチレン成分を全モノマー中50質量%以上占めるようにする。特に好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上がよい。
【0078】
或いはトナーの外添剤の含水率を下げる。それには後記するように外添剤の疎水化度を高くするのが効果的である。外添剤の疎水化度が60以上のものを使用するのが望ましい。
【0079】
又、表面に存在する非極性の離型剤量を多くするのも有効な方法である。それには特にポリオレフィン系ワックスを使用すると好適であり、表面に存在するポリオレフィンの量を増加させるためには、機械式粉砕機を使用し、破砕時に摩擦熱を付与しトナー表面にブリードアウトさせる方法がある。
【0080】
本発明に使用されるトナーの製造方法は、最も一般的に用いられている粉砕法、即ちバインダー樹脂と着色剤、その他必要により添加される種種の添加剤を混練粉砕後分級して作製しても良いし、離型剤、着色剤を含有したトナー樹脂粒子を媒体中で合成作製して製造してもよい。
【0081】
前記トナー樹脂粒子を媒体中で合成作製に関しては水系媒体中で融着させる方法として、例えば特開昭63−186253号公報、同63−282749号公報、特開平7−146583号公報等に記載されている方法や、樹脂粒子を塩析/融着させて形成する方法等をあげることができる。ここで用いられる樹脂粒子は重量平均粒径50〜2000nmが好ましく、これらの樹脂粒子は乳化重合、懸濁重合、シード重合等のいずれの造粒重合法によっても良いが、好ましく用いられるのは乳化重合法である。
【0082】
以下、樹脂の製造に用いられる単量体について記述する。前記混練粉砕後分級によるトナーの製造方法においても、トナー樹脂粒子を媒体中で合成作製する方法においても、いずれの場合も従来公知の重合性単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。バインダー樹脂としては特に限定されるものではなく、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂等、一般的に知られているバインダー樹脂を使用することができる。
【0083】
スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂を構成する単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル等のアクリル酸エステル誘導体等が挙げられ、これらは単独あるいは組み合わせて使用することができる。
【0084】
その他のビニル系重合体に用いられる単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、弗化ビニル、弗化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独あるいは組み合わせて使用することができる。
【0085】
さらに、スチレン−アクリル系樹脂(ビニル系樹脂)で含カルボン酸重合体を得るための単量体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、ケイ皮酸無水物、アルケニルコハク酸メチルハーフエステル等が挙げられる。
【0086】
さらに、ジビニルベンゼン、エチレングルコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等の架橋剤を添加してもよい。
【0087】
また、ポリエステル樹脂としては、2価以上のカルボン酸と2価以上のアルコール成分を縮合重合させて得られる樹脂である。2価のカルボン酸の例としてはマレイン酸、フマール酸、シトラコ酸、イタコン酸、グルタコ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸等が挙げられ、これらの酸無水物も使用することができる。
【0088】
また、ポリエステル樹脂を構成する2価のアルコール成分の例としては、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のエーテル化ビスフェノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4,ブテンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタングリコール、1,6−ヘキサングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールZ、水素添加ビスフェノールA等をあげることができる。
【0089】
また、ポリエステル樹脂として架橋構造を有するものとしては、下記3価のカルボン酸、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等があげられ、これらの酸無水物、あるいは多価アルコール成分、具体的にはソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等を添加することで架橋ポリエステル樹脂とすることもできる。
【0090】
着色剤としては無機顔料、有機顔料を挙げることができる。
無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0091】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0092】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0093】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0094】
有機顔料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料を以下に例示する。
【0095】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0096】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0097】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0098】
これらの有機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0099】
着色剤は表面改質して使用することもできる。その表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が好ましく用いることができる。
【0100】
本発明で得られたトナーには、流動性の改良やクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものでは無く、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
【0101】
無機微粒子としては、従来公知のものを使用することができる。具体的には、シリカ、チタン、アルミナ微粒子等が好ましく用いることができる。これら無機微粒子としては疎水性のものが好ましい。具体的には、シリカ微粒子として、例えば日本アエロジル社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト社製のHVK−2150、H−200、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0102】
チタン微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品T−805、T−604、テイカ社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0103】
アルミナ微粒子としては、例えば、日本アエロジル社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業社製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0104】
また、有機微粒子としては数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の有機微粒子を使用することができる。このものとしては、スチレンやメチルメタクリレートなどの単独重合体やこれらの共重合体を使用することができる。
【0105】
滑剤には、例えばステアリン酸の亜鉛、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、オレイン酸の亜鉛、マンガン、鉄、銅、マグネシウム等の塩、パルミチン酸の亜鉛、銅、マグネシウム、カルシウム等の塩、リノール酸の亜鉛、カルシウム等の塩、リシノール酸の亜鉛、カルシウムなどの塩等の高級脂肪酸の金属塩が挙げられる。
【0106】
これら外添剤の添加量は、トナーに対して0.1〜5質量%程度が好ましい。
トナー化工程は上記で得られたトナー粒子を、例えば流動性、帯電性、クリーニング性の改良を行うことを目的として、前述の外添剤を添加してもよい。外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用することができる。
【0107】
トナーは、バインダー樹脂、着色剤以外にトナー用添加剤として種々の機能を付与することのできる材料を加えてもよい。具体的には離型剤、荷電制御剤等が挙げられる。
【0108】
尚、離型剤としては、種々の公知のもので、具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ワックスや、これらの変性物、カルナウバワックスやライスワックス等の天然ワックス、脂肪酸ビスアミドなどのアミド系ワックスなどをあげることができる。これらは離型剤粒子として加えられ、樹脂や着色剤と共に塩析/融着させることが好ましいことはすでに述べた。
【0109】
荷電制御剤も同様に種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
【0110】
《現像剤》
本発明に用いられるトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよいが、好ましくは二成分現像剤としてである。
【0111】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤として前記トナーをそのまま用いる方法もあるが、通常はトナー粒子中に0.1〜5μm程度の磁気粒子を含有させ磁性一成分現像剤として用いる。その含有方法としては、着色剤と同様にして非球形粒子中に含有させるのが普通である。
【0112】
又、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁気粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いる。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁気粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜60μmのものがよい。
【0113】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0114】
キャリアは、磁気粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁気粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0115】
本発明においては一成分現像剤及び二成分現像剤のいずれを用いても感光体上の静電潜像を現像することができる。
【0116】
一成分現像剤は、少なくとも磁性粉末及びバインダー樹脂よりなる磁性トナーからなり、これらには着色剤を含むこともできる。
【0117】
二成分現像剤はトナー粒子(トナー)とキャリア粒子(キャリア)とで構成される。現像は現像剤搬送体としての現像スリーブと感光体ドラムとの間にトナーと同極性、或いは逆極性の直流電圧と該直流電圧に交流電圧とが重畳された現像バイアスが印加され、接触或いは非接触のにて行われる。
【0118】
現像剤に用いられるトナー粒子(トナー)について説明する。
トナーの平均粒径が大きくなると、画像の荒れが目立つようになる。通常、10本/mm程度のピッチで並んだ細線の解像力がある現像には、平均粒径20μm程度のトナーでも問題ないが、しかし、平均粒径2〜9μmの微粒子化したトナーを用いると、解像力は格段に向上して、濃淡差も忠実に再現した鮮明な高画質画像を与えるようになる。
【0119】
上記の如きトナーは、従来の球形や不定形の非磁性又は磁性のトナーを用いることができる。トナーには、必要に応じて粒子の流動滑りを良くするための流動化剤や感光体面の清浄化に役立つクリーニング助剤等が混合される。流動化剤としては、コロイダルシリカ、シリコーンワニス、金属石鹸あるいは非イオン表面活性剤等を用いることができ、クリーニング助剤としては、脂肪酸金属塩、有機基置換シリコーンあるいはフッ素等表面活性剤等を用いることができる。
【0120】
次に、本発明の有機感光体を用いた画像形成装置について説明する。
図1は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
【0121】
図1に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布し、その上に本発明の樹脂層を塗設した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0122】
感光体への一様帯電の後、像露光手段としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0123】
ここで本発明の反転現像プロセスとは帯電器52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
【0124】
その静電潜像は次いで現像手段としての現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される有機感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
【0125】
現像剤は、例えば前述のフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、前述のスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図1のように現像位置上部に設けて行う。
【0126】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0127】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写手段:転写器)58が作動し、給紙された記録紙(紙、シート等)Pにトナーと反対極性の帯電を与えてトナーを転写する。
【0128】
次いで記録紙Pは分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後、一次作動を中止し、次なるトナー像の形成に備える。図1では転写電極58にコロトロンの転写帯電極を用いている。転写電極の設定条件としては、感光体のプロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、転写電流としては+100〜+400μA、転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
【0129】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0130】
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0131】
本発明の有機感光体は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
【0132】
【実施例】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明の様態はこれに限定されない。なお、文中「部」とは「質量部」を表す。
【0133】
実施例
感光体1の作製
下記の様に感光体1を作製した。
【0134】
直径100mmφ、長さ346mmの円筒形アルミニウム支持体の表面を切削加工し、表面粗さRz=1.5(μm)の導電性支持体を用意した。
【0135】
〈中間層〉
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて2倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュ5μmフィルター)し、中間層塗布液を作製した。
【0136】
ポリアミド樹脂(例示ポリアミドN−1) 1部
酸化チタンSMT500SAS(テイカ社製:数平均一次粒径35nmの酸化チタン粒子にシリカ・アルミナの一次処理及びメチルハイドロジェンポリシロキサンの2次処理を行ったもの) 3部
メタノール 10部
分散機としてサンドミルを用いて、バッチ式で10時間の分散を行った。
【0137】
上記中間層塗布液を用いて前記支持体上に、乾燥膜厚2μmとなるよう塗布した。
【0138】
〈電荷発生層〉
Y型チタニルフタロシアニン(Cu−Kα特性X線回折スペクトル測定で、ブラッグ角2θ(±0.2)の27.2度に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン) 20部
ポリビニルブチラール樹脂(#6000−C:電気化学工業社製) 10部
酢酸t−ブチル 700部
4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン 300部
を混合し、サンドミルを用いて10時間分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0139】
〈電荷輸送層〉
電荷輸送物質(4,4′−ジメチル−4′′−(α−フェニルスチリル)トリフェニルアミン) 225部
ポリカーボネート(下記構造のポリカーボネートZ:分子量3万、吸水率0.23%) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6部
ジクロロメタン 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で乾燥膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0140】
〈表面層〉
電荷輸送物質(4,4′−ジメチル−4′′−(α−フェニルスチリル)トリフェニルアミン) 225部
ポリカーボネート(下記構造のポリカーボネートA:分子量3万、吸水率0.25%) 300部
疎水性シリカ(表1)
酸化防止剤(LS2626:三共社製) 6部
1,3−ジオキソラン 2000部
シリコンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、超音波を照射できる循環分散装置にて循環分散を行い、表面層塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層の上に円型量規制型塗布法により乾燥膜厚5μmになるように塗布し、110℃で70分間の乾燥を行い、感光体1を作製した。
【0141】
【化3】
【0142】
感光体2〜19の作製
感光体1において、表面層の疎水性シリカ及び中間層のバインダーを表1のように変更した以外は感光体1と同様にして感光体2〜19を作製した。
【0143】
【表1】
【0144】
トナー1の作製
スチレン:ブチルアクリレート:ブチルメタクリレート=75:20:5の質量比からなるスチレン−アクリル樹脂100部、カーボンブラック10部、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=3500)4部とを溶融、混練した後、機械式粉砕機を使用し、微粉砕を行い、分級して体積平均粒径が6.3μmの着色粒子を得た。この着色粒子に対して疎水性シリカ(疎水化度75/数平均一次粒子径12nm)を1.2質量%添加し、トナーを得た。このトナーの飽和水分量は0.3質量%であった。
【0145】
トナー2の作製
スチレン:ブチルアクリレート:ブチルメタクリレート:アクリル酸=75:18:5:2の質量比からなるスチレン−アクリル樹脂100部、カーボンブラック10部、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=3500)4部とを溶融、混練した後、機械式粉砕機を使用し微粉砕を行い、分級して体積平均粒径が6.3μmの着色粒子を得た。この着色粒子に対して疎水性シリカ(疎水化度75/数平均粒子径12nm)を1.2質量%添加し、トナーを得た。このトナーの飽和水分量は1.1質量%であった。
【0146】
トナー3の作製
スチレン:ブチルアクリレート:メタクリル酸=70:20:10の質量比からなるスチレン−アクリル樹脂100部、カーボンブラック10部、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=3500)4部とを溶融、混練した後、機械式粉砕機を使用し、微粉砕を行い、分級して体積平均粒径が6.9μmの着色粒子を得た。この着色粒子に対して疎水性シリカ(疎水化度75/数平均一次粒子径12nm)を1.2質量%添加し、トナーを得た。このトナーの飽和水分量は1.8質量%であった。
【0147】
トナー4の作製
酸価45のポリエステル樹脂100部、カーボンブラック10部、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=3500)4部とを溶融、混練した後、機械式粉砕機を使用し、微粉砕を行い、分級して体積平均粒径が6.9μmの着色粒子を得た。この着色粒子に対して疎水性シリカ(疎水化度75/数平均一次粒子径12nm)を1.2質量%添加し、トナーを得た。このトナーの飽和水分量は2.1質量%であった。
【0148】
トナーの30℃80RH%環境における飽和水分量の測定方法
トナーを30℃80RH%環境下に3日間放置し、カールフィッシャー法により測定する。例えば平沼式自動微量水分測定器AQS−724を使用して測定することができる。本発明における測定条件は、気化温度を110℃、気化時間を25秒とした。
【0149】
現像剤の作製
上記の各トナー、即ちトナー1〜トナー4に、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径が45μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度6%の現像剤をそれぞれ作製し、評価に供した。これらの現像剤4種をトナーに対応してそれぞれ現像剤1〜現像剤4とする。
【0150】
評価
1.吸熱エネルギー変化量ΔHの測定
感光体の示差走査熱量分析(DSC)は、熱的に安定な標準物質とともに試料を一定速度で加熱したときの両者の温度差を打ち消すために必要なエネルギーを加える方法で、DSCのピーク面積が吸熱量に比例していることにより次式に従って定量できる。
【0151】
M・ΔH=K・A
ここでMは試料の質量、ΔHは試料の単位質量あたりのエネルギー変化量、Kは装置定数、Aはピーク面積である。
【0152】
測定は、実施例で作製した感光体を30℃80%RHの環境下に24時間放置し、調湿した。その後、DSC測定までの間、密封容器内に保存し、調湿終了後60分以内に下記条件で測定を行った。
【0153】
装置:示差走査熱量計 DSC−20
サーマルコントローラー SSC−580
(セイコー電子工業社製)
測定条件:測定温度 40〜200℃
昇温温度 10℃/分
測定環境 Air静止雰囲気
2.トナーの30℃80%RH環境における飽和水分量の測定方法
トナーを30℃80%RH環境下に3日間放置し、カールフィッシャー法により測定する。例えば平沼式自動微量水分測定器AQS−724を使用して測定することができる。本発明における測定条件は、気化温度を110℃、気化時間を25秒とした。
【0154】
3.画像評価
評価機としてコニカ社製デジタル複写機Konica7075(コロナ帯電、レーザ露光、反転現像、静電転写、爪分離、ブレードクリーニング、クリーニング補助ブラシローラー採用プロセスを有する)を用い、該複写機に感光体及び現像剤を表2のように組み合わせて搭載し、評価した。画像評価は、画素率が7%の文字画像、人物顔写真、ベタ白画像、ベタ黒画像がそれぞれ1/4等分にあるオリジナル画像をA4中性紙に複写して行った。複写条件は最も厳しいと思われる高温高湿環境(30℃、80%RH)にて連続10万枚コピーを行い以下の評価を行った。
【0155】
評価基準
画像濃度(マクベス社製RD−918を使用して測定。紙の反射濃度を「0」とした相対反射濃度で測定した)
◎:1.2以上:良好
○:0.8以上:実用上問題ないレベル
×:0.8未満:実用上問題となるレベル
画像ボケ(10万枚のコピーを全数検査:目視判定)
◎:画像ボケの発生が30枚以下:良好
○:画像ボケの発生が31枚〜100枚:実用上問題ないレベル
△:画像ボケの発生が101枚〜500枚:実用可否の再評価を必要とする
×:画像ボケの発生が501枚以上:実用上問題となるレベル
環境メモリ:上記Konica7075複写機を高温高湿下(HH:30℃80%RH)に24hr放置後、低湿低温下(LL:10℃20%RH)に置き、30分後、コピーした。オリジナル画像で0.3の濃度のハーフトーン画像を0.3の濃度にコピー、コピー画像の濃度差(ΔHD=最大濃度−最小濃度)で判定
◎:ΔHDが0.02未満:良好
○:ΔHDが0.02以上0.04未満:実用上問題ないレベル
△:ΔHDが0.04以上0.06未満:実用可否の再評価を必要とする
×:ΔHDが0.06以上:実用上問題となるレベル
クリーニング性(10万枚のコピーを全数検査)
◎:トナーのすり抜けによる画像欠陥の発生が30枚以下:良好
○:トナーのすり抜けによる画像欠陥の発生が31枚〜100枚:実用上問題ないレベル
△:トナーのすり抜けによる画像欠陥の発生が101枚〜500枚:実用可否の再評価を必要とする
×:トナーのすり抜けによる画像欠陥の発生が501枚以上:実用上問題となるレベル
トナーの転写性(20万枚コピー終了後、感光体上に60mg/cm2の画像を形成し、転写紙に転写された単位面積当たりの付着量(fmg/cm2)を測定し、以下の計算により転写率を算定した)
トナーの転写率=(f/60)×100
◎:トナーの転写率85%以上:良好
○:トナーの転写率65〜84%以上:実用上問題ないレベル
×:トナーの転写率64%以下:実用上問題となるレベル
その他評価条件
尚、上記7075を用いたその他の評価条件は下記の条件に設定した。
【0156】
帯電条件
帯電器;スコロトロン帯電器、初期帯電電位を−750V
露光条件
露光部電位を−50Vにする露光量に設定。
【0157】
現像条件
DCバイアス;−550V
現像剤は、上記の現像剤1〜4を用いた。
【0158】
転写条件
転写極;コロナ帯電方式
クリーニング条件
クリーニング部に硬度70°、反発弾性65%、厚さ2(mm)、自由長9mmのクリーニングブレードをカウンター方向に線圧18(N/m)となるように重り荷重方式で当接した。
【0159】
評価結果は表2に示した。
【0160】
【表2】
【0161】
表2より、明らかなように、本発明の条件(無機粒子の数平均一次粒径、ΔH、トナーの飽和含水量の条件)を満たした組み合わせ1〜3、5〜7、9、14、16〜18は画像ボケ、環境メモリ、クリーニング性を含めた評価項目全体が改善されている。一方、トナーの飽和吸水量が2.1のトナーを用いた組み合わせ4、8では画像ボケや環境メモリを含め全評価項目の評価が劣化している。ΔHが10を超えている組み合わせ10、11、15では画像ボケ、環境メモリを中心とした評価項目が劣化している。一方、無機粒子の数平均一次粒径が100nmより大きい組み合わせ12,13ではクリーニング性が低下しており、このことから画像ボケも発生し、本発明の組み合わせに比し劣っていることが見いだされる。又、表面層が無機粒子を含有していない感光体の組み合わせ19では感光体のΔHは小さいが、クリーニング性、トナーの転写性が劣り、画像濃度も低下している。
【0162】
【発明の効果】
実施例からも明らかなように、本発明の構成を用いることにより、画像ボケ、環境メモリ、クリーニング性、トナーの転写性が改良され、高画質、高耐久の画像形成方法及び画像形成装置を提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図。
【符号の説明】
50 感光体ドラム(又は感光体)
51 帯電前露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
541 現像スリーブ
543,544 現像剤攪拌搬送部材
547 電位センサー
57 給紙ローラー
58 転写電極
59 分離電極(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
70 プロセスカートリッジ
Claims (5)
- 有機感光体上に形成された静電潜像を、現像工程で顕像化したトナー像を記録紙に転写し、該有機感光体上に残留したトナーを除去する画像形成方法において、前記有機感光体が30℃80%RH環境下で調湿し、40〜200℃の範囲で測定した示差走査熱量分析の吸熱エネルギー変化量ΔHが0.1〜10J/gで、且つ表面層に数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満の疎水化度が50%以上である疎水性シリカ粒子を含有した有機感光体であり、該有機感光体が吸水率5%以下のポリアミド樹脂をバインダーとする中間層を有し、該疎水性シリカ粒子が、該表面層のバインダーに対して1〜20質量%含有されており、前記現像工程で用いるトナーの30℃80%RH環境下における飽和水分量が0.1〜2.0質量%であることを特徴とする画像形成方法。
- 前記有機感光体が電荷発生物質として、X線回折スペクトルのブラッグ角2θ(±0.2°)で、27.2°に主ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
- 有機感光体上に形成された静電潜像を、現像手段で顕像化したトナー像を記録紙に転写した後、該有機感光体上に残留したトナーを除去するクリーニング手段を有する画像形成装置において、前記有機感光体が30℃80%RH環境下で調湿し、40〜200℃の範囲で測定した示差走査熱量分析の吸熱エネルギー変化量ΔHが0.1〜10J/gで、且つ表面層に数平均一次粒子径1nm以上、100nm未満の疎水化度が50%以上である疎水性シリカ粒子を含有した有機感光体であり、該有機感光体が吸水率5%以下のポリアミド樹脂をバインダーとする中間層を有し、該疎水性シリカ粒子が、該表面層のバインダーに対して1〜20質量%含有されており、前記現像手段で用いるトナーの30℃80%RH環境における飽和水分量が0.1〜2.0質量%であることを特徴とする画像形成装置。
- 前記有機感光体が電荷発生物質として、X線回折スペクトルのブラッグ角2θ(±0.2°)で、27.2°に主ピークを有するチタニルフタロシアニン顔料を含有することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
- 前記クリーニング手段がクリーニングブレードを有することを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
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