本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、導電性支持体上に感光層、保護層を積層した電子写真感光体において、前記保護層が無機粒子と前記一般式(1)で表される特定の電荷輸送物質を含有し、該無機粒子の粒度分布ピーク値が5〜100nmである電子写真感光体により、ブレードクリーニングを用いたプロセスにおいてチッピングが改良され、また、無機粒子を含有した保護層塗布液の保存安定性が良好になるため、感光体生産時の品質バラツキも低減し、安定した特性の電子写真感光体(以下、単に感光体ともいう)が得られることを見出し、本発明に至った次第である。
本発明でこのような効果が発現されるのは、無機粒子と前記一般式(1)で表される特定の電荷輸送物質を含む保護層の塗布液の分散性がよく、無機粒子の分布が均質となり、保護層の膜の均一性が改良されるため、ブレードのチッピングを改善でき、解像力が改善されるものと思われる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
〔保護層〕
(一般式(1)で表される電荷輸送物質)
本発明は、保護層が前記一般式(1)で表される電荷輸送物質と後述する無機粒子を含有することを特徴とする。
一般式(1)において、Ar1〜Ar4は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリール基を表し、Ar5及びAr6は、それぞれ独立して置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Ar1とAr2及びAr3とAr4は結合して環を形成してもよい。R1、R2は、それぞれ独立して水素原子または置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキル基またはアリール基を表す。R1とR2は結合して環を形成してもよい。
Ar1〜Ar4で表されるアリール基としては、フェニル基、トリル基等が挙げられる。アリール基の置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基が挙げられる。
Ar5及びAr6で表されるアリーレン基としては、フェニレン基またはトリレン基が好ましく、フェニレン基が特に好ましい。アリーレン基の置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基が挙げられる。
Ar1とAr2及びAr3とAr4が連結して作る環構造としては、5〜6員の複素環が挙げられる。
R1とR2で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、n−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。アラルキル基としてはベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。アリール基としてはフェニル基、トリル基等が挙げられる。アルキル基、アラルキル基、アリール基の置換基としては、炭素数1〜4のアルキル基またはアルコキシ基が挙げられる。
また、R1とR2は、連結して置換基を有していてもよい炭素数4〜8の飽和炭化水素環を形成してもよく、環上にメチル基またはエチル基を有していてもよいシクロヘキサン環を形成するのが好ましい。
上記一般式(1)で表される電荷輸送物質の中でも、Ar5とAr6がそれぞれ置換基を有してもよいフェニル基となる下記一般式(2)で表される電荷輸送物質が好ましい。
(式中、R1とR2は、それぞれ独立して、アルキル基またはアリール基を表し、R1とR2が一体となって環構造を形成してもよい。R3とR4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。なお、Ar1〜Ar4は上記一般式(1)で表される電荷輸送物質のAr1〜Ar4と同義である。なお、式中のm、nは1〜4の整数を表す。)
前記一般式(2)で表される電荷輸送物質の具体例を以下に示す。
一般式(2)で表される電荷輸送物質は、公知の合成方法により得ることができる。以下に、一般式(2)で表される電荷輸送物質の1つであるM−6の合成例を示す。
先ず、4頭コルベンに冷却管、温度計、窒素導入管を装着し、マグネチックスターラーをセットする。この系内を減圧して、完全に窒素置換する。上記コルベン内に、
N,N−ビス(4−メチルフェニル)アニリン 4.00質量部
シクロヘキサノン 2.00質量部
酢酸 14.00質量部
メタンスルホン酸 0.09質量部
を順次投入する。この混合溶液を70℃で8時間反応させる。
その後、精製した固体をアセトンで洗浄し、さらに、テトラヒドロフラン(THF)とアセトンを用いて再結晶化することにより、目的物であるM−6が得られる。上記M−6が得られたことは、質量分析法(MS)や核磁気共鳴法(NMR)等の公知の構造解析方法を用いることにより確認することができる。
他の例示化合物も同様にして合成できる。
(無機粒子)
本発明の感光体の保護層には、前記一般式(1)で表される電荷輸送物質と無機粒子を含有し、該無機粒子の粒度分布ピーク値が5〜100nmである感光体の保護層に無機粒子を含有させることにより、耐摩耗特性を改善でき、かつ前記一般式(1)で表される電荷輸送物質を用いることにより、無機粒子の分散性を劣化させないで保護層に含有させることができるので、短波長レーザに対しても透明性のよい保護層を形成でき、その結果、鮮鋭性の高い電子写真画像を形成することができる。
無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の金属酸化物(遷移金属酸化物も含む)が好ましい。中でもシリカ、アルミナ、酸化チタンが好ましく用いられる。
これらの金属酸化物粒子は、表面に存在する水酸基を封鎖して感光体の保護層に用いることが知られているが、本発明では、この水酸基の平均的な封鎖レベルをより完全なレベルにするために、無機粒子の表面処理を改良したものが好ましい。
金属酸化物粒子は、焼成強化したものが好ましい。例えば、焼成強化していないシリカでは疎水化処理が困難であるため、複数回表面処理を施すシリカとしては、焼成強化シリカが好ましい。焼成強化シリカでは、充分な強度を持たせるために、通常500℃以上、好ましくは1000℃以上の温度で焼成したものを用いる。焼成時間は、好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上である。上述の温度条件でシリカを焼成することによって、シリカ粒子の表面に存在している水酸基、シラノール基等の官能基が分解され、ケイ素酸化物となる。また、この結果シリカ粒子の比表面積が小さくなり、シラン化合物等により疎水化処理した場合に、効果的に表面処理することができる。このようなシリカとしては具体的に、4塩化ケイ素の酸素焔中で高温加水分解により生成されたものが挙げられる。
無機粒子の数平均一次粒径(Dp)は3〜100nmの範囲が好ましい。特に、5〜70nmが好ましい。数平均一次粒径(Dp)とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。数平均一次粒径(Dp)が3.0nm未満の無機粒子は、保護層中での均一な分散ができにくく、凝集粒子を形成しやすく、凝集粒子が電荷トラップとなって残留電位が増大し、画像濃度の低下やドット再現性の劣化を発生しやすい。一方、数平均一次粒径(Dp)が100nmより大きい無機粒子は、保護層の表面に大きな凹凸を作りやすく、これらの大きな凹凸に活性ガス(オゾンやNOx)が付着しやすく、画像ボケやドット再現性の劣化が発生しやすい。また、数平均一次粒径(Dp)が100nmより大きい無機粒子は分散液中で沈澱しやすく、凝集物が発生しやすい。
このような無機粒子を、本発明の一般式(1)で表される電荷輸送物質と組み合わせて用いることで、保護層に分散含有させた時の無機粒子の粒度分布ピーク値が5〜100nmにできる。
無機粒子の粒度分布ピーク値を5〜100nmにすることで、鮮鋭性が優れ高画質な画像を得ることができ、長期使用によるクリーニングブレードの損傷が低減され、欠陥のない良好な出力画像が得られる。
本発明の保護層中の無機粒子の粒度分布は、反射X線小角散乱法で測定される。
X線小角散乱法は、密度不均一領域の電子密度の揺らぎがX線照射時の散乱挙動を変えることによって、100nm以下の粒子のサイズを測定することができるため、特に、分散媒中の一次粒子の分布状態をそのまま把握することができる。従来は、無機粒子の粒度分布測定には、無機粒子を溶剤中へ低濃度に分散させ、これにレーザ光等を照射して、その散乱光から粒径や分布を求めるという光学的手法があったが、例えば無機粒子を含有した保護層の塗布液の場合、溶剤希釈によって分散状態が変化してしまうため、無機粒子が塗布液の中でどのように分散していたかを正確に再現できないという問題があった。また、製膜後の塗膜をSEMやTEM等における観察試料として用いる観察的手法もあり、製膜後の分散状態の大雑把な把握にはそれなりに有用であるが、微小な視野での観察にとどまるために、観察領域の分散状態が塗膜全体の分散状態を再現良く現しているかという点に疑問が残る。
一方、X線小角散乱法では、分散媒が樹脂等の固体の場合であっても、製膜後の分散状態を把握できるというメリットがある。その測定原理を簡単に説明する。通常、有機ポリマーである分散媒と、ナノサイズの無機粒子とでは、元来、密度・電子状態・結合様式が異なるものであり、両者の界面で電子密度の揺らぎが生じる。密度が不均一な混合物中を単色X線が通過すると、入射方向に対して極めて小さい角度領域(2θ=0〜5°)で散漫な回折を生じる。この回折強度パターンを解析することで、密度の不均一領域の大きさや形状が分かり、有機/無機ナノコンポジットのモルフォロジーが明らかになるのである。ここで、粒径(密度不均一領域の大きさ)が均一の場合、ギニエの小角散乱強度式より、散乱強度は次式(3)で表される。
式(3)中のqは、数学的には空間をフーリエ変換したものであり、距離の逆数に比例する値(Å-1)であって、散乱角の関数として次式(4)で表される。
ギニエプロットは、X線散乱強度−q2値のプロットである。散乱角度の増大により散乱強度の急激な減少を示す領域が小角散乱領域であり、中心ピークの幅は密度の不均一領域のサイズ、すなわち一次粒子の慣性半径とほぼ逆比例する。よって、散乱強度の増減挙動をFunkuchenの方法に適用し、ギニエプロットの右端から順に接線を引いて、各接線の勾配から、慣性半径とその散乱強度を算出すれば、それらの強度比から一次粒子の慣性半径の分布の相対比を求めることができる。
保護層に分散含有させた時の無機粒子の粒度分布を調べるために、保護層のみ形成した塗布膜をX線小角散乱分析に供した。X線小角散乱スペクトル測定には理学電気社製X線回折装置「RINT−2400」を用い、多層膜ミラーモノクロメーターを通して入射X線を単色化し、さらに3個のスリットを通してから樹脂硬化板に照射し、真空パスを通してカメラ長250mmに設置したシンチレーションカウンターで散乱X線を検出した。詳細条件は以下の通りである。
使用X線:CuKα
管電圧、管電流:40kV,200mA
操作方法:Fixed time法
測定方法:透過法(2θ単独操作)
走査範囲2θ、ステップ間隔:0.1〜5.0deg、0.01deg
計数時間:30分
この測定により得られた散乱プロファイルからFankuchenの方法によりギニエプロットを作成して慣性半径を算出し粒子の幾何学形状を球と仮定して粒径分布を求め、粒度分布曲線よりピーク値を読み取った。
本発明において、無機粒子の表面処理とは、無機粒子表面を金属酸化物、有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等によって被覆することを示す。無機粒子表面が金属化合物、有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等によって被覆されていることは、光電子分光法(ESCA)、オージェ電子分光法(Auger)、2次イオン質量分析法(SIMS)や拡散反射FT−IR等の表面分析手法を複合的に用いることにより高精度に確認される。
無機粒子の表面処理は、湿式法で行うことができる。例えば、無機粒子を水中に分散させて水性スラリーとし、この水性スラリーと、水溶性ケイ酸塩、水溶性のアルミニウム化合物等を混合して行う。前記水溶性のケイ酸塩として、ケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸で中和することができる。一方、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いたときは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで中和することができる。反応性有機ケイ素化合物による表面処理では、有機溶剤や水に対して反応性有機ケイ素化合物を溶解または懸濁させた液と無機粒子を混合し、この液を数分から1時間程度撹拌する。そして場合によっては該液に加熱処理を施した後に、濾過等の工程を経た後乾燥し、表面を有機ケイ素化合物で被覆した無機粒子を得ることができる。フッ素化合物による表面処理は、有機溶剤や水に対してフッ素原子を有する有機ケイ素化合物等を溶解または懸濁させ、該懸濁液と無機粒子を混合し、該混合溶液を数分から1時間程度撹拌混合し、場合によっては加熱処理を施した後に、濾過等の工程を経て乾燥し、フッ素化合物で被覆する。本発明の複数回表面処理シリカは、ある層では分散性を向上するための表面処理を施して該粒子を含有する塗布液の安定性を改善し、ある層では、例えば滑り性、表面性向上のためのシリコーンオイル、あるいはシリコーン樹脂で処理することにより、滑り性、表面性の向上を行っている。
複数回の表面処理の好ましい例としては、一次処理をハロゲン化シラン類による表面処理を行い、最終処理をシラザン化合物類の表面処理の表面処理を行った酸化物粒子が好ましい。
また、一次処理をシリコーンオイル類による表面処理を行い、最終処理をシラザン化合物類の表面処理の表面処理を行った酸化物粒子も好ましい。例えば、ハロゲン化シラン類あるいはシリコーンオイル系処理剤によって一次表面処理し、この一次処理粉末を解砕し、さらに解砕粉末をアルキルシラザン系処理剤によって二次表面処理することにより、疎水化度及び疎水化度分布を改善した酸化物粒子を得ることができる。
ハロゲン化シラン類あるいはシリコーンオイル系処理剤による一次表面処理、解砕処理後のアルキルシラザン系処理剤による二次表面処理は乾式処理または湿式処理の何れでもよい。ただし、上記一次表面処理と二次表面処理の順序が異なったり、あるいは最終処理の処理剤の種類や使用量や処理方法等が適切でない場合には、疎水化度や疎水化度分布が改善されず、本発明の目的を達成し得ない。特に、最終処理がシラザン化合物類以外の場合は、表面処理が時間の経過と共に、離脱しやすく、疎水化度分布が大きくなりやすい。
このような複数回の表面処理を行うことにより、酸化物粒子の疎水化度及び疎水化度分布を改善することができ、画像濃度の低下や画像ボケあるいはダッシュマークの発生を効果的に防止することができる。
また、本発明に係わる保護層の無機粒子は、疎水化度を66%(vol%)以上にすることが好ましい。該無機粒子の疎水化度が66%(vol%)未満では、無機粒子の表面に存在する水酸基が多く、電位特性(帯電電位や残留電位等)の湿度依存性が大きく、また、画像ボケや転写メモリーの発生による画像むらが発生しやすい。無機粒子の疎水化度は70%以上がより好ましい。
また、本発明に係わる保護層の無機微粒子は、疎水化度分布値が20%(vol%)以下が好ましい。疎水化度分布値が20%(vol%)より大きいと、表面に水酸基が多く残存する無機粒子が含まれ、画像ボケの発生や転写メモリーを発生しやすい。
該無機粒子の疎水化度を66%以上、疎水化度分布を20%以下にすることで、本願発明の電荷輸送層との分散性が顕著に向上し、凝集粒子が少なくなるために、該無機粒子の粒度分布ピーク値が無機粒子の一次粒径により近づくことから、塗膜の透明性が高くなり、380nm〜500nmのレーザ像露光においても、光の散乱による潜像の乱れが少なくなり、シャープで精細な画像を得ることができる。
なお、疎水化度(メタノールウェッタビリティ)とは、メタノールに対する濡れ性の尺度で示される。即ち、以下のように定義される。
疎水化度(メタノールウェッタビリティ)=(a/(a+50))×100
疎水化度の測定方法を以下に記す。
内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の無機粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸漬されているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で無機粒子の全体が濡れるまで(全部が沈降するまで)ゆっくり滴下する。この無機粒子全体を濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、上記式により疎水化度が算出される。
疎水化度分布値の測定方法
1)測定対象の無機粒子を0.2g秤量し、遠沈管に入れる。
(プロットしたい点数分+1本(全沈用)を用意する)
2)駒込ピペットにて濃度の異なるメタノール溶液を各7ml遠沈管に入れ、しっかりしめる(全沈用は上記疎水化度で決定されたメタノール濃度を用いる)。
3)ターブラーミキサー90rpmで30秒間分散する。
4)遠心分離器にかける(3500rpm、10分間)
5)沈降容積を読みとり、全沈降容積(全部が沈降した容積)を100%としたときの各沈降容積%を求める。
6)上記、各測定値を基に、横軸メタノール濃度(vol%)、縦軸沈降容積(vol%)のグラフを作製する。
上記測定より、疎水化度分布を測定し、疎水化度分布値は次のように定義される。
{(沈降容積が100%のメタノールvol%)
−(沈降容積が10%のメタノールvol%)}≦25
次に、一次表面処理あるいは二次表面処理に用いる表面処理剤について、記載する。
一次処理に好ましく用いられるシリコーンオイル系処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルを用いることができる。また目的に応じて2種以上を混合してもよい。
ハロゲン化シラン類としては、ジメチルジクロロシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等がある。
最終処理の表面処理剤に用いられるシラザン類としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等が使用できる。
上記、シリコーンオイル系処理剤及びハロゲン化シラン類以外に下記に示すアルコキシシラン類、シロキサン類、金属アルコキシド、脂肪酸及びその金属塩等をシラザン類の最後の表面処理の前に、表面処理剤として用いてもよい。
アルコキシシラン類としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等がある。
シロキサン類としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等のシロキサン等がある。
金属アルコキシドとしては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−i−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−s−ブトキシアルミニウム、トリ−t−ブトキシアルミニウム、モノ−s−ブトキシジ−i−プロピルアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−s−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、ジメトキシ錫、ジエトキシ錫、ジ−n−ブトキシ錫、テトラエトキシ錫、テトラ−i−プロポキシ錫、テトラ−n−ブトキシ錫、ジエトキシ亜鉛、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド等が挙げられる。
脂肪酸及びその金属塩としては、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸等の長鎖脂肪酸が挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウム等の金属との塩が挙げられる。
これらの処理剤はヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等)、アセトン等、場合によっては、水等で希釈して用いるとよい。
表面処理の具体的な手順;例えば、シリコーンオイルを溶かした溶剤(好ましくは有機酸等でpH4に調整)の中にシリカ粉末を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。その後、シラザン化合物を溶かした溶剤の中に、解砕した処理粉を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。また、次のような方法でもよい。例えば、シリカ粉末を反応槽に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながらアルコール水を添加し、オルガノポリシロキサン等のシリコーンオイル系処理液を反応槽に導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去する。その後、解砕処理を行った後に、窒素雰囲気下、撹拌しながら、アルキルシラザン系処理液を導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去した後に冷却する。処理条件はシリカ粉末が上記疎水率、疎水化度及び上記分布頻度を有するように調整する。
また、これらの処理剤はヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等)、アセトン等、場合によっては、水等で希釈して用いることもできる。
(バインダー樹脂)
保護層中には無機粒子の分散性を助けるバインダー樹脂を含有させる。バインダー樹脂としては、ポリカーボネートやポリアリレートが好ましい。これらポリカーボネートやポリアリレートの分子量は10,000〜100,000が好ましい。
また、保護層中の無機粒子の比率は、質量比でバインダー樹脂100質量部に対し、少なくとも5〜50質量部用いることが好ましい。5質量部未満では保護層の摩耗が大きく、擦り傷等が発生してハーフトーン画像が荒れやすい。50質量部より多いと保護層が脆弱な膜となり、クラック等が発生しやすい。
(添加剤)
また、本発明の感光体の保護層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。保護層は感光体の帯電時の活性ガス、例えばNOxやオゾン等で酸化されやすく、画像ボケが発生しやすいが、酸化防止剤を共存させることにより、画像ボケの発生を防止することができる。該酸化防止剤とは、その代表的なものは感光体中ないしは感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。
酸化防止剤の具体例としては、例えば、以下に示す公知の酸化防止剤が挙げられる。すなわち、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系)、アミン系酸化防止剤(ヒンダードアミン系、ジアリルジアミン系、ジアリルアミン系)、ハイドロキノン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤(チオエーテル類)、燐酸系酸化防止剤(亜燐酸エステル類)等が挙げられる。
前記酸化防止剤の中でも、特にヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系酸化防止剤は、高温高湿時のカブリ発生や画像ボケの防止に効果的である。
また、保護層には、含フッ素樹脂微粒子を含有させた構成が好ましい。保護層に含フッ素樹脂微粒子を含有させることにより、感光体表面に形成されたトナー画像の記録紙等への転写性が向上し、ドット画像の再現性を向上させる。
(塗布液の調製)
保護層の塗布液調製時の溶媒としては、後述する中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒または分散媒と同様な溶媒が用いられ、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。また、これらの溶媒は単独あるいは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
保護層の塗布液の調製では、無機粒子及び溶媒からなる第1の混合液を溶液タンク中に含有させ、第1の混合液を溶液タンクと超音波分散機の間で、循環させながら、機械的撹拌及び超音波分散により予め分散することが好ましい。その後、第1の混合液で用いた溶媒量に比し、同量以下の溶媒中に少なくとも前記一般式(1)で表される電荷輸送物質及びバインダー樹脂を溶解した溶液を前記第1の混合液と混合して、第2の混合液を作製する。第2の混合液を、再度、溶液タンクと超音波分散機の間で、循環させながら、機械的撹拌及び超音波分散により分散する。
本発明に用いられる機械的分散機としては、新東科学(株)、アズワン(株)、佐竹化学機械工業(株)、(株)中央理化等から市販されており、アズワン(株) SM−101、(株)エスエムテー SHFM、HEM−002CT、佐竹化学機械工業(株) S6、(株)中央理化 LZB22−S−1、LZB14−A190、LZB22−2S、新東科学(株) BL600Te等を使用することができる。
機械的撹拌の撹拌速度やトルクは特に限定されるものではなく、適宜対応される。
また、超音波撹拌(=超音波分散)とは、音響空洞現象(acoustic cavitation)、具体的には多数の泡の形成、成長及び爆縮崩壊(implosive collapse)に由来する。空洞現象によって誘発される泡崩壊は短寿命であるが、強力な局所的加熱(hot spot)及び高圧スポットをもたらし、液体中の被処理物質(分散質のこと)の凝集を解砕し、より均一に分散させることができる。
本発明に用いられる超音波分散機としては、(株)エスエムテー、(株)ギンセン、タイテック(株)、BRANSON社、Kinematica社、(株)日本精機製作所等から市販されており、(株)エスエムテー UDU−1、UH−600MC、(株)ギンセン GSD600CVP、(株)日本精機製作所 RUS600TCVP等を使用することができる。超音波の周波数は、特に限定されない。
機械的撹拌及び超音波分散を同時並行的に行う循環方式の装置としては、(株)エスエムテー UDU−1、UH−600MC、(株)ギンセン GSD600RCVP、GSD1200RCVP、(株)日本精機製作所 RUS600TCVP等を挙げれるが、これに限ったものでなく、上記の機械的分散機と超音波分散機を繋ぎ合わせ、循環させるものであれば構わない。
このような条件のもとで、保護層を分散することにより、保護層の分散液の無機粒子と、前記一般式(1)で表される電荷輸送物質及びバインダー樹脂の絡み合いが強くなり、無機粒子表面にバインダー樹脂が被覆され、無機粒子が均一に分散すると共に、分散安定性が増すものと考えられる。
保護層の塗工方法としては、浸漬法、スプレー塗工法、量規制型塗布装置(塗布量をコントロールして、保護層の膜厚を制御する塗布装置)を用いることができるが、保護層の膜厚を正確に制御し、下層の中間層や感光層全体を覆うには量規制型塗布装置を用いて塗布することが好ましい。
上記量規制型塗布装置としては、円形スライドホッパー型塗布ヘッドや押し出し型塗布ヘッドを用いた塗布装置が挙げられる。これらの中でも、後述する円形スライドホッパー型塗布ヘッドを有する塗布装置(以後、円形スライドホッパー型塗布装置またはスライド型塗布装置ともいう)が好ましく用いられる。このような円形塗布ヘッドを有する塗布装置は、円筒状導電性支持体のほとんど全体(上端の一部を除き)を塗布液に浸漬して塗布する浸漬塗布に比し、塗布装置内で分散液を滞留させず、ワンウエイで保護層を形成するので、無機粒子の分散粒子は、分散液中で凝集シェアを繰り返し受けることなく、また、無機粒子の塗布液中の沈降を防止して(分散媒に比し、無機粒子は比重が高く沈降しやすい)均一な保護層を形成することができる。しかも、感光体製造毎に分散液を作製できるので、分散液の経時による凝集や沈降を防止でき、かつ保護層形成時に、円筒状導電性支持体に既に形成されている下層を溶解せずに塗布できることから、塗布乾燥時も無機粒子の凝集が少なく、均一な分散性を有する保護層を形成することができる。また、ビード形成塗布は塗布膜厚を塗布装置から吐出される塗布液流量で正確に制御することができ、膜厚のバラツキが少なく、かつ光学的に均一な保護層を形成できる。その結果、鮮鋭性が良好な電子写真画像を形成することができる。
本発明の感光体は、無機粒子と前記一般式(1)で表される電荷輸送物質を含有する保護層を有することを特徴とする感光体であるが、これらの無機粒子と前記一般式(1)で表される電荷輸送物質を含有する保護層を有する感光体の構成について以下に記載する。
本発明において、感光体とは電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成された電子写真感光体を意味し、公知の有機電荷発生物質または有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の感光体を全て含有する。
本発明の感光体の構成は、無機粒子と前記一般式(1)で表される電荷輸送物質を含有する保護層を有する限り特に制限されるものではなく、例えば、以下に示すような構成が挙げられる;
1)導電性支持体上に感光層として電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層し、さらに保護層を形成した構成;
2)導電性支持体上に感光層として電荷発生層、第1電荷輸送層及び第2電荷輸送層を順次積層し、さらに保護層を形成した構成;
3)導電性支持体上に感光層として電荷輸送材料と電荷発生材料とを含む単層を形成し、さらに保護層を形成した構成;
4)導電性支持体上に感光層として電荷輸送層及び電荷発生層を順次積層し、さらに保護層を形成した構成。
感光体が上記いずれの構成を有する場合であってもよい。本発明では上記2)の構成が最も好ましく用いられる。なお、本発明の感光体はいずれの構成を有する場合であっても、導電性支持体上、感光層の形成に先だって、下引層(中間層)が形成されていてもよい。
電荷輸送層とは、光露光により電荷発生層で発生した電荷キャリアを感光体の表面に輸送する機能を有する層を意味し、該電荷輸送機能の具体的な検出は、電荷発生層と電荷輸送層を導電性支持体上に積層し、光導伝性を検知することにより確認することができる。
次に、感光体の層構成を上記2)の構成を中心にして記載する。
〔導電性支持体〕
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としては、シート状、円筒状のどちらを用いてもよいが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
円筒状導電性支持体とは、回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
導電性の材料としては、アルミニウム、ニッケル等の金属ドラム、またはアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウム等を蒸着したプラスチックドラム、または導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。本発明に用いられる導電性支持体としては、アルミニウム支持体が最も好ましい。アルミニウム支持体は、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウム等の成分が混合したものも用いられる。
〔中間層〕
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、中間層を設けることが好ましい。
本発明に用いられる中間層にはN型半導性粒子を含有することが好ましい。N型半導性粒子とは、主たる電荷キャリアが電子である粒子を意味する。すなわち、主たる電荷キャリアが電子であることから、N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させた中間層は、基体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性が少ない性質を有する。
N型半導性粒子としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)が好ましく、特に酸化チタンが特に好ましく用いられる。
N型半導性粒子は、数平均一次粒径が3.0〜200nmの範囲の微粒子が好ましく、特に、5〜100nmが好ましい。数平均一次粒径とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。数平均一次粒径が3.0nm未満のN型半導性粒子は中間層バインダー中での均一な分散ができにくく、凝集粒子を形成しやすく、該凝集粒子が電荷トラップとなって残電上昇が発生しやすい。一方、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は、中間層の表面に大きな凹凸を作りやすく、これらの大きな凹凸を通してドット画像が劣化しやすい。また、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は分散液中で沈澱しやすく、凝集物が発生しやすく、その結果、ドット画像が劣化しやすい。
前記酸化チタン粒子は、結晶形としては、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形及びアモルファス形等があるが、中でもルチル形酸化チタン顔料またはアナターゼ形酸化チタン顔料は、中間層を通過する電荷の整流性を高め、即ち、電子の移動性を高め、帯電電位を安定させ、残留電位の増大を防止すると共に、ドット画像の劣化を防止することができ、N型半導性粒子として最も好ましい。
N型半導性粒子はメチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体で表面処理されたものが好ましい。メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体の分子量は1000〜20000のものが表面処理効果が高く、その結果、N型半導性粒子の整流性を高め、このN型半導性粒子を含有する中間層を用いることにより、黒ポチ発生が防止され、また、良好なドット画像の再現性に効果がある。
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体とは−(HSi(CH3)O)−の構造単位と、これ以外の構造単位(他のシロキサン単位のこと)の共重合体が好ましい。他のシロキサン単位としては、ジメチルシロキサン単位、メチルエチルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位及びジエチルシロキサン単位等が好ましく、特にジメチルシロキサンが好ましい。共重合体中のメチルハイドロジェンシロキサン単位の割合は10〜99モル%、好ましくは20〜90モル%である。
メチルハイドロジェンシロキサン共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよいが、ランダム共重合体及びブロック共重合体が好ましい。また、共重合成分としてはメチルハイドロジェンシロキサン以外に、一成分でも二成分以上でもよい。
中間層塗布液は、前記表面処理酸化チタン等のN型半導性粒子の他にバインダー樹脂、分散溶媒等から構成される。
N型半導性粒子の中間層中での比率は、中間層のバインダー樹脂との体積比(バインダー樹脂の体積を1とすると)で1.0〜2.0倍が好ましい。中間層中でこのような高密度のN型半導性粒子を用いることにより、中間層の整流性が高まり、膜厚を厚くしても残留電位の上昇やドット画像の劣化を効果的に防止でき、良好な感光体を形成することができる。また、このような中間層はバインダー樹脂100体積部に対し、N型半導性粒子を100〜200体積部を用いることが好ましい。
一方、これらの粒子を分散し、中間層の層構造を形成するバインダー樹脂としては、粒子の良好な分散性を得るためにポリアミド樹脂が好ましいが、特に以下に示すポリアミド樹脂が好ましい。
中間層のバインダー樹脂としては、アルコール可溶性ポリアミド樹脂が好ましい。感光体の中間層のバインダー樹脂としては、中間層を均一な膜厚で形成するために、溶媒溶解性の優れた樹脂が必要とされている。このようなアルコール可溶性のポリアミド樹脂としては、6−ナイロン等のアミド結合間の炭素鎖の少ない化学構造から構成される共重合ポリアミド樹脂やメトキシメチル化ポリアミド樹脂が知られているが、これらの樹脂は吸水率が高く、このようなポリアミドを用いた中間層は温湿度依存性が高くなる傾向にあり、その結果、例えば高温高湿や低温低湿下の帯電特性や感度等が変化しやすく、転写メモリーの発生等を起しやすい。
上記ポリアミド樹脂を溶解し、塗布液を作製する溶媒としては、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等の炭素数2〜4のアルコール類が好ましく、ポリアミドの溶解性と作製された塗布液の塗布性の点で優れている。これらの溶媒は全溶媒中に30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、さらには50〜100質量%が好ましい。前記溶媒と併用し、好ましい効果を得られる助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
中間層の膜厚は0.3〜10μmが好ましい。中間層の膜厚が0.5μm未満では、黒ポチラが発生しやすく、ドット画像の劣化を起こしやすい。10μmを超えると、残留電位の上昇が発生しやすく、ドット画像が劣化しやすい。中間層の膜厚は0.5〜5μmがより好ましい。
〔感光層〕
本発明の感光体の感光層構成は、前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でもよいが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
(電荷発生層)
本発明の感光体には、電荷発生物質(CGM)として380〜500nmの波長領域に高感度特性を有する電荷発生物質を用いることが好ましい。このような電荷発生物質としてはアゾ顔料、ペリレン顔料、多感キノン顔料等が好ましく用いられる。また、これらの顔料を併用して用いることができる。本発明に好ましく用いられる顔料化合物を下記に例示する。
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としては、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.3〜2μmが好ましい。
(電荷輸送層)
前記したように、本発明では電荷輸送層を複数の電荷輸送層から構成することが好ましい。
電荷輸送層には、電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により前記した無機粒子の他に酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。
電荷輸送物質(CTM)としては、公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を用いることが好ましい。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物等を用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂いずれの樹脂かを問わない。例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。またこれらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。これらの中で吸水率が小さく、CTMの分散性、電子写真特性が良好なポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
電荷輸送層の合計膜厚は、10〜25μmが好ましい。合計膜厚が10μm未満では、現像時の潜像電位を十分に獲得しにくく、画像濃度の低下やドット再現性の劣化が発生しやすく、また、25μmを超えると、電荷キャリアの拡散(電荷発生層で発生した電荷キャリアの拡散)が大きくなり、ドット再現性が劣化しやすい。また、保護層となる電荷輸送層の膜厚は1.0〜8.0μmが好ましい。
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒または分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等の地球環境に優しい溶媒が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独あるいは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
また、本発明の感光体は、感光体を構成する層構成全層の残留溶媒を5000ppm以下に乾燥することが好ましい。さらに、3000ppm以下がより好ましい。残留溶媒が多すぎるとNOx等の活性ガスを感光層中に進入させやすく、画像ボケや転写メモリーの発生による画像ムラ等を発生させやすい。
残留溶媒量は下記のようにして測定する。
感光体の支持体から層構成全層を剥離して、熱分解ガスクロマトグラフィー(GC15A:島津製作所製)及びキューリーポイントパイローライザー(JHP−3S:日本分析工業社製)を用いて感光層中(中間層を含む全層)の残留溶媒量を測定する。
また、これらの各層の塗布溶液は塗布工程に入る前に、塗布溶液中の異物や凝集物を除去するために、金属フィルター、メンブランフィルター等で濾過することが好ましい。例えば、日本ポール社製のプリーツタイプ(HDC)、デプスタイプ(プロファイル)、セミデプスタイプ(プロファイルスター)等を塗布液の特性に応じて選択し、濾過をすることが好ましい。
次に感光体を製造するための塗布加工方法としては、スライドホッパー型塗布装置の他に、浸漬塗布、スプレー塗布等の塗布加工法が用いられる。
中間層、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に用いられる溶媒または分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独あるいは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
〔画像形成方法及び画像形成装置〕
次に、本発明の画像形成方法及び本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置について説明する。
本発明の画像形成方法は、上記本発明の感光体を用い、発振波長が380〜500nmの半導体レーザの書込み光源を用いて静電潜像を形成する露光工程、及び前記静電潜像をトナー像に顕像化する現像工程を有することが特徴である。
図1に示す画像形成装置1は、デジタル方式による画像形成装置であって、画像読取り部A、画像処理部B、画像形成部C、転写紙搬送手段としての転写紙搬送部Dから構成されている。
画像読取り部Aの上部には原稿を自動搬送する自動原稿送り手段が設けられていて、原稿載置台11上に載置された原稿は原稿搬送ローラ12によって1枚宛分離搬送され読み取り位置13aにて画像の読み取りが行われる。原稿読み取りが終了した原稿は原稿搬送ローラ12によって原稿排紙皿14上に排出される。
一方、プラテンガラス13上に置かれた場合の原稿の画像は走査光学系を構成する照明ランプ及び第1ミラーから成る第1ミラーユニット15の速度vによる読み取り動作と、V字状に位置した第2ミラー及び第3ミラーから成る第2ミラーユニット16の同方向への速度v/2による移動によって読み取られる。
読み取られた画像は、投影レンズ17を通してラインセンサである撮像素子CCDの受光面に結像される。撮像素子CCD上に結像されたライン状の光学像は順次電気信号(輝度信号)に光電変換されたのちA/D変換を行い、画像処理部Bにおいて濃度変換、フィルタ処理等の処理が施された後、画像データは一旦メモリに記憶される。
画像形成部Cでは、画像形成ユニットとして、像担持体であるドラム状の感光体21と、その外周に、該感光体21を帯電させる帯電手段(帯電工程)22、帯電した感光体の表面電位を検出する電位検出手段220、現像手段(現像工程)23、転写手段(転写工程)である転写搬送ベルト装置45、前記感光体21のクリーニング装置(クリーニング工程)26及び光除電手段(光徐電工程)としてのPCL(プレチャージランプ)27が各々動作順に配置されている。また、現像手段23の下流側には感光体21上に現像されたパッチ像の反射濃度を測定する反射濃度検出手段222が設けられている。感光体21には、本発明の感光体を使用し、図示の時計方向に駆動回転される。
回転する感光体21へは帯電手段22による一様帯電がなされた後、像露光手段(像露光工程)30としての露光光学系により画像処理部Bのメモリから呼び出された画像信号に基づいた像露光が行われる。書き込み手段である像露光手段30としての露光光学系は図示しないレーザダイオードを発光光源とし、回転するポリゴンミラー31、fθレンズ34、シリンドリカルレンズ35を経て反射ミラー32により光路が曲げられ主走査がなされるもので、感光体21に対してAoの位置において像露光が行われ、感光体21の回転(副走査)によって静電潜像が形成される。本実施の形態の一例では文字部に対して露光を行い静電潜像を形成する。
本発明の画像形成方法においては、感光体上に静電潜像を形成するに際し、発振波長が380〜500nmの半導体レーザまたは発光ダイオードを像露光光源として用いる。これらの像露光光源を用いて、書込みの主査方向の露光ドット径を10〜50μmに絞り込み、感光体上にデジタル露光を行うことにより、600dpi(dpi:2.54cm当たりのドット数)以上から2500dpiの高解像度の電子写真画像を得ることができる。
前記露光ドット径とは、露光ビームの強度がピーク強度の1/e2以上の領域の主走査方向にそった露光ビームの長さ(Ld:長さが最大位置で測定する)をいう。
用いられる光ビームとしては、半導体レーザを用いた走査光学系及びLEDの固体スキャナー等があり、光強度分布についてもガウス分布及びローレンツ分布等があるが、それぞれのピーク強度の1/e2以上の領域を露光ドット径とする。
感光体21上の静電潜像は現像手段23によって反転現像が行われ、感光体21の表面に可視像のトナー像が形成される。本発明の画像形成方法では、該現像手段に用いられる現像剤には重合トナーを用いることが好ましい。形状や粒度分布が均一な重合トナーを本発明の感光体と併用することにより、より鮮鋭性が良好な電子写真画像を得ることができる。
〔トナー〕
本発明の感光体上に形成された静電潜像は、現像によりトナー像として顕像化される。現像に用いられるトナーは、粉砕トナーでも、重合トナーでもよいが、本発明に係わるトナーとしては、安定した粒度分布を得られる観点から、重合法で作製できる重合トナーが好ましい。
重合トナーとは、トナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味する。
なお、トナーの体積平均粒径、即ち、上記50%体積粒径(Dv50)は2〜9μm、より好ましくは3〜7μmであることが望ましい。この範囲とすることにより、解像度を高くすることができる。さらに上記の範囲と組み合わせることにより、小粒径トナーでありながら、微細な粒径のトナーの存在量を少なくすることができ、長期に亘ってドット画像の再現性が改善され、鮮鋭性の良好な、安定した画像を形成することができる。
〔現像剤〕
本発明に係わるトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものが挙げられ、いずれも使用することができる。
また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることができる。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
キャリアは、磁性粒子がさらに樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂あるいはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
転写紙搬送部Dでは、画像形成ユニットの下方に異なるサイズの転写紙Pが収納された転写紙収納手段としての給紙ユニット41(A)、41(B)、41(C)が設けられ、また側方には手差し給紙を行う手差し給紙ユニット42が設けられていて、それらの何れかから選択された転写紙Pは案内ローラ43によって搬送路40に沿って給紙され、給紙される転写紙Pの傾きと偏りの修正を行う対の給紙レジストローラ44によって転写紙Pは一時停止を行ったのち再給紙が行われ、搬送路40、転写前ローラ43a、給紙経路46及び進入ガイド板47に案内され、感光体21上のトナー画像が転写位置Boにおいて転写極24及び分離極25によって転写搬送ベルト装置45の転写搬送ベルト454に載置搬送されながら転写紙Pに転写され、該転写紙Pは感光体21面より分離し、転写搬送ベルト装置45により定着手段50に搬送される。
定着手段50は定着ローラ51と加圧ローラ52とを有しており、転写紙Pを定着ローラ51と加圧ローラ52との間を通過させることにより、加熱、加圧によってトナーを定着させる。トナー画像の定着を終えた転写紙Pは排紙トレイ64上に排出される。
以上は転写紙の片側への画像形成を行う状態を説明したものであるが、両面複写の場合は排紙切換部材170が切り替わり、転写紙案内部177が開放され、転写紙Pは破線矢印の方向に搬送される。
さらに、搬送機構178により転写紙Pは下方に搬送され、転写紙反転部179によりスイッチバックさせられ、転写紙Pの後端部は先端部となって両面複写用給紙ユニット130内に搬送される。
転写紙Pは両面複写用給紙ユニット130に設けられた搬送ガイド131を給紙方向に移動し、給紙ローラ132で転写紙Pを再給紙し、転写紙Pを搬送路40に案内する。
再び、上述したように感光体21方向に転写紙Pを搬送し、転写紙Pの裏面にトナー画像を転写し、定着手段50で定着した後、排紙トレイ64に排紙する。
本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。また、帯電器、像露光器、現像器、転写または分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレール等の案内手段を用いて着脱自在の構成としてもよい。
図2は、本発明の画像形成方法に用いられるカラー画像形成装置の断面構成図である。
このカラー画像形成装置は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるもので、4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7と、給紙搬送手段21及び定着手段24とからなる。画像形成装置の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Yの周囲に配置された帯電手段(帯電工程)2Y、露光手段(露光工程)3Y、現像手段(現像工程)4Y、一次転写手段(一次転写工程)としての一次転写ローラ5Y、クリーニング手段6Yを有する。マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1M、帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5M、クリーニング手段6Mを有する。シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1C、帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5C、クリーニング手段6Cを有する。黒色画像を形成する画像形成部10Bkは、第1の像担持体としてのドラム状の感光体1Bk、帯電手段2Bk、露光手段3Bk、現像手段4Bk、一次転写手段としての一次転写ローラ5Bk、クリーニング手段6Bkを有する。
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkを中心に、回転する帯電手段2Y、2M、2C、2Bkと、像露光手段3Y、3M、3C、3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C、4Bk、及び、感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkをクリーニングするクリーニング手段5Y、5M、5C、5Bkより構成されている。
前記画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー画像の色が異なるだけで、同じ構成であり、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体ドラム1Yの周囲に、帯電手段2Y(以下、単に帯電手段2Y、あるいは、帯電器2Yという)、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Y(以下、単にクリーニング手段5Y、あるいは、クリーニングブレード5Yという)を配置し、感光体ドラム1Y上にイエロー(Y)のトナー画像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体ドラム1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段5Yを一体化するように設けている。
帯電手段2Yは、感光体ドラム1Yに対して一様な電位を与える手段であって、本実施の形態においては、感光体ドラム1Yにコロナ放電型の帯電器2Yが用いられている。
像露光手段3Yは、帯電器2Yによって一様な電位を与えられた感光体ドラム1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する手段であって、この露光手段3Yとしては、感光体ドラム1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子(商品名;セルフォックレンズ)とから構成されるもの、あるいは、レーザ光学系等が用いられる。
本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)として一体に結合して構成し、この画像形成ユニットを装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。また、帯電器、像露光器、現像器、転写または分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジ(画像形成ユニット)を形成し、装置本体に着脱自在の単一画像形成ユニットとし、装置本体のレール等の案内手段を用いて着脱自在の構成としてもよい。
無端ベルト状中間転写体ユニット7は、複数のローラにより巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体としての無端ベルト状中間転写体70を有する。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色の画像は、一次転写手段としての一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。給紙カセット20内に収容された転写材(定着された最終画像を担持する支持体:例えば普通紙、透明シート等)としての転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A、22B、22C、22D、レジストローラ23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラ5bに搬送され、転写材P上に二次転写してカラー画像が一括転写される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。ここで、中間転写体や転写材等の感光体上に形成されたトナー画像の転写支持体を総称して転写媒体と云う。
一方、二次転写手段としての二次転写ローラ5bにより転写材Pにカラー画像を転写した後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
画像形成処理中、一次転写ローラ5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラ5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。
二次転写ローラ5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
また、装置本体Aから筐体8を支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
筐体8は、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状中間転写体ユニット7とから成る。
画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。感光体1Y、1M、1C、1Bkの図示左側方には無端ベルト状中間転写体ユニット7が配置されている。無端ベルト状中間転写体ユニット7は、ローラ71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラ5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとから成る。
本発明の画像形成方法に用いられる画像形成装置は、電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、さらに、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」を表す。
実施例
〔感光体1の作製〕
〈中間層〉
〈中間層の形成〉
ポリアミド樹脂「CM8000」(東レ社製) 1部
ルチル型酸化チタン(一次粒径35nm;末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサンで表面処理を行い、疎水化度を33に調製した酸化チタン顔料) 5.6部
エタノール/n−プロピルアルコール/THF(=45/20/30質量比)
10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を調製した。
上記中間層分散液を同じ混合溶媒にて2倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター公称濾過精度:5μm、圧力:50kPa)し、中間層塗布液を調製した。
洗浄済み円筒状アルミニウム基体(導電性支持体、切削加工により最大粗さRt:1.1μmに加工した)上に、上記中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃30分で乾燥し、乾燥膜厚5μmの中間層を形成した。
〈電荷発生層の形成〉
電荷発生物質(例示化合物CGM−2) 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12部
2−ブタノン/シクロヘキサノン(=4/1体積比) 300部
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。
上記電荷発生層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、前記中間層の上に乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
〈電荷輸送層〉
(電荷輸送層塗布液の調製)
電荷輸送物質(N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−1,1′−ビフェニル−4,4′−ジアミン(TPD)) 225部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6部
テトラヒドロフラン/トルエン=80/20(体積比) 2000部
シリコーンオイル(KF−50:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液を調製した。
上記電荷輸送層塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚18.0μmの電荷輸送層を形成した。
〈保護層〉
(保護層の調製)
無機粒子:シリカ粒子(一次処理:ジメチルジクロロシラン、二次処理:ヘキサメチルジシラザンで表面処理された平均一次粒径30nmのシリカ:疎水化度76、疎水化度分布値10) 60部
電荷輸送物質:例示化合物M−6 150部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 12部
テトラヒドロフラン/トルエン=80/20(体積比) 2800部
シリコーンオイル(KF−50:信越化学社製) 4部
上記組成物を混合し、循環式超音波分散ろ過機(GSD1200RFCVP、ギンセン社製)を用いて下記条件で分散処理を行い、保護層塗布液を調製した。
<分散条件>
出力:600W
周波数:19.6kHz
振幅:30μm
循環ポンプ流量:50リットル/時間
分散時間:6時間
フィルターメッシュ:17μm
ろ過面径:φ70
ろ過フィルター:2μmリジメッシュSUSフィルター
このようにして分散した塗布液を分散機より回収後、24時間静置した後、円形スライドホッパー型塗布機に投入し、前記電荷輸送層上に塗布を行った。その後、110℃の温度で70分の乾燥処理を行い、乾燥膜厚3.0μmの表面層を形成することにより、「感光体1」を作製した。
〔感光体2の作製〕
感光体1の作製において、保護層の無機粒子を数平均一次粒径30nmのシリカ粒子の二次処理をヘキサエチルジシラザンで表面処理した、疎水化度69体積%、疎水化度分布21体積%の粒子に代えた他は、同様の手順で感光体2を作製した。
〔感光体3の作製〕
感光体1の作製において、保護層の無機粒子を数平均一次粒径30nmのシリカ粒子の二次処理をジビニルテトラメチルジシラザンで表面処理した、疎水化度60体積%、疎水化度分布12体積%の粒子に代えた他は、同様の手順で感光体3を作製した。
〔感光体4の作製〕
感光体1の作製において、保護層の無機粒子を数平均一次粒径30nmのシリカ粒子の二次処理をジビニルテトラメチルジシラザンで表面処理した、疎水化度60体積%、疎水化度分布30体積%の粒子に代えた他は、同様の手順で感光体4を作製した。
〔感光体5の作製〕
感光体1の作製において、保護層の無機粒子を数平均一次粒径10nmのシリカ粒子の二次処理をジビニルテトラメチルジシラザンで表面処理した、疎水化度69体積%、疎水化度分布12体積%の粒子に代えた他は、同様の手順で感光体5を作製した。
〔感光体6の作製〕
感光体1の作製において、保護層の無機粒子を数平均一次粒径90nmのシリカ粒子の二次処理をジビニルテトラメチルジシラザンで表面処理した、疎水化度72体積%、疎水化度分布18体積%の粒子に代えた他は、同様の手順で感光体6を作製した。
〔感光体7の作製〕
感光体1の作製において、保護層の無機粒子を数平均一次粒径50nmの酸化亜鉛粒子の二次処理をヘキサフェニルジシラザンで表面処理した、疎水化度65体積%、疎水化度分布24体積%の粒子に代え、表面層塗布液の分散条件を出力700W、分散時間8時間行った他は、同様の手順で感光体7を作製した。
〔感光体8の作製〕
感光体1の作製において、保護層の無機粒子を数平均一次粒径3nmのシリカ粒子の二次処理をヘキサメチルジシラザンで表面処理した、疎水化度70体積%、疎水化度分布10体積%の粒子に代えた他は、同様の手順で感光体8を作製した。
〔感光体9の作製〕
感光体1の作製において、保護層の無機粒子を数平均一次粒径30nmのアルミナ粒子をヘキサメチルジシラザンで表面処理した、疎水化度70体積%、疎水化度分布15体積%の粒子に代え、保護層塗布液の分散条件を出力500W、分散時間9時間行った他は、同様の手順で感光体9を作製した。
〔感光体10の作製〕
感光体1の作製において、保護層の無機粒子を数平均一次粒径35nmの酸化チタン粒子をヘキサシクロヘキシルジシラザンで表面処理した、疎水化度70体積%、疎水化度分布14体積%の粒子に代え、保護層塗布液の分散条件を出力400W、分散時間10時間行った他は、同様の手順で感光体10を作製した。
〔感光体11の作製〕
感光体1の作製において、保護層の電荷輸送物質を例示化合物M−1に代えた他は、同様の手順で感光体11を作製した。
〔感光体12の作製〕
感光体1の作製において、保護層の電荷輸送物質を例示化合物M−10に代えた他は、同様の手順で感光体12を作製した。
〔感光体13の作製〕
感光体1の作製において、保護層の電荷輸送物質を(N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−1,1′−ビフェニル−4,4′−ジアミン(TPD))に代えた他は、同様の手順で「感光体12」を作製した。
〔感光体14の作製〕
感光体1の作製において、保護層塗布液の分散条件を出力200W、分散時間50時間行った他は、同様の手順で感光体14を作製した。
〔感光体15の作製〕
感光体1の作製において、保護層の無機粒子を数平均一次粒径2nmのシリカ粒子の二次処理をヘキサフェニルジシラザンで表面処理した、疎水化度65体積%、疎水化度分布24体積%の粒子に代えた他は、同様の手順で感光体15を作製した。
〔感光体16の作製〕
感光体1の作製において、保護層の無機粒子を数平均一次粒径120nmの酸化亜鉛粒子の二次処理をヘキサフェニルジシラザンで表面処理した、疎水化度65体積%、疎水化度分布24体積%の粒子に代え、表面層塗布液の分散条件を出力700W、分散時間8時間行った他は、同様の手順で感光体16を作製した。
また、透明な石英ガラス上に、上記感光体1〜16の電荷輸送層、保護層をブレード塗布したサンプルを作製し、反射X線小角散乱法により前記した測定条件で無機粒子の粒度分布ピーク値を測定し、表1に合わせて示した。
〔感光体の評価〕
前記「感光体1〜16」を、市販のプリンタ「bizhubC350(コニカミノルタ社製)」改造機(発振波長405nmの半導体レーザを像露光光源として搭載。アパーチャーによる露光スポット径の調節が可能)に搭載し、以下の項目について評価を行った。
「評価1」(鮮鋭性の評価)
露光スポット径を10、25、50μmと変化させ、1ドットの直線状の静電潜像を形成し、23℃、50%RHの環境下で現像、転写を行った転写材上の出力画像の線の太さをデジタルハイスコープ(キーエンス社製)で測定してトナー像変化率Teを算出して鮮鋭性を評価した。露光スポット径に対するトナー線の太さの割合であるトナー像変化率Teは下記式より算出した。
トナー像変化率Te(%)
=トナー線太さ(μm)/露光スポット径(μm)×100
なお、評価は下記の基準で行い、◎、○、△を合格とした。
◎:80%<Te≦120%
○:120%<Te≦167%
△:167%<Te
×:上記以外
「評価2」(クリーニングブレードチッピングの評価)
上記の評価機で、30℃、80%RHにて10万枚画出し耐久試験を行い、クリーニングブレードのチッピングを評価した。クリーニングブレードのチッピングは、イエローのベタ画像を出したときに筋状にトナーがすり抜けているかどうかで判断し、下記基準で評価した。耐久試験後のクリーニングブレードの感光体に当接されたエッジ部をレーザ顕微鏡で観察するとブレードの一部が欠けているのが分かる。
◎:チッピングによる画像欠陥が全く認められない
○:チッピングによる画像欠陥がややあるが、実用上問題とならないレベル
×:チッピングによる画像欠陥が発生し、実用上問題となるレベル。
「評価3」(保護層塗布液の分散安定性の評価)
また、保護層塗布液の分散安定性を下記方法で評価した。
作製した保護層塗布液を下記の期間放置した後の無機粒子の沈降程度を目視で観察し、下記基準で評価した。
◎:30日間放置しても無機粒子の沈降が見られず(良好)
○:14日間放置後に無機粒子の沈降が見られる(実用性あり)
×:1日放置後に無機粒子の沈降が見られる(実用性に問題あり)
評価の結果を表1に示す。
表より、本発明の感光体は比較例に比べ鮮鋭性に優れ、クリーニングブレードのチッピングも改良されていることが分かる。さらに、本発明の感光体の保護層塗布液の分散安定性は、比較例に比べ良好であり、これがチッピング改良に寄与していると考えられる。