本発明者は、金属酸化物粒子を含有した表面層形成用塗布液を用いて、有機感光体に表面層を形成した時に、感光体表面に突起物が形成されることに着目した。そして、この突起物を観察すると、突起物は表面層形成用塗布液中に添加した金属酸化物粒子が凝集して形成されたものではないことに気がついた。すなわち、突起物の組成が表面層内における突起物以外の個所の組成と同じ構成であることに気がついたのである。
また、本発明者は、当初不規則に現れる突起物が規則的に形成されれば、クリーニングブレードが感光体表面に対し適度な接触性を得るものと考えた。また、突起物を規則的に形成することができれば、突起物の存在による光散乱の発生も抑えられ、安定した露光が行えるものと考えたのである。そして、検討を重ねた末に本発明を見出したのである。
すなわち、前記有機感光体の表面層を形成する際に、数平均一次粒径が0.01μm以上1.00μm以下の金属酸化物粒子を用いることにより、感光体表面にアスペクト比が0.01以上0.30以下で表される規則的な突起物が形成される様になり、この突起物の存在により本発明の課題が解消されることを見い出したのである。
つまり、感光体表面にアスペクト比が0.01以上0.3以下となる突起物が形成されることにより、感光体表面でのクリーニングブレードとの接触性が改善され、クリーニングブレードが突起物にあたっても、ブレードのカット面が摩耗したり、ブレードが破損したりする様なことは起こらなかった。また、突起物が存在していても、露光時に不必要な光散乱は発生せず、安定した露光が行われて良好な画質のプリント画像を安定して形成することができるようになった。
有機感光体表面に、この様な突起物が形成される理由は明らかではないが、おそらく、樹脂を構成する高分子鎖が分散液中で金属酸化物粒子表面に絡み易く、しかも強固に保持されるためと考えられる。すなわち、金属酸化物粒子の粒径が上記範囲のとき、高分子鎖が粒子表面に密着し、さらに、毛糸玉の様に、金属酸化物粒子を芯として高分子鎖が次から次へと絡みつき、突起物が形成されるものと推測される。この様に、分散した金属酸化物粒子の一部に樹脂を構成する高分子鎖が選択的に絡みつき、樹脂が絡みついた金属酸化物粒子により突起物が形成されるものと推測される。
また、トナーに滑剤として添加されている脂肪酸金属塩が、有機感光体表面に移行して適度な滑剤層を形成して良好な転写性を発現する様になった。これは、感光体表面の突起物の存在により、感光体表面に微細な凹凸が形成されていることで、滑剤が感光体表面に保持される様になったためと考えられる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
最初に、本発明に使用される有機感光体の構成について説明する。図1は、本発明に使用される有機感光体の層構成の一例を示す模式図である。本発明に使用される有機感光体は、図1に示す様に、表面層を有し、その表面には突起物が形成されているものである。
本発明に係る有機感光体の表面構成について説明する。
本発明では、帯電手段により均一帯電を付与した有機感光体上に像露光を行なって静電潜像を形成した後、有機感光体表面にトナー(現像剤)を供給することにより静電潜像をトナー画像に顕像化させる工程を経て画像形成を行うものである。
本発明で使用される有機感光体は、その表面層に数平均一次粒径で0.01μm以上1.00μm以下の金属酸化物粒子を含有するものである。また、前記金属酸化物粒子を含有する塗布液を用いて形成した表面には、アスペクト比が0.01以上0.3以下となる突起物が存在するものである。
本発明では、有機感光体上にお椀をかぶせた様な突起物が形成されることにより、クリーニング時には感光体表面とクリーニングブレードとの間に適度な接触状態が形成されて、両者の密着性を軽減させることができる。その結果、クリーニング時にクリーニングブレードのエッジが破損したり、感光体表面あるいはクリーニングブレードの大幅な摩耗が起きず、感光体表面から残留トナーのみが安定して除去されたりする様になった。
また、有機感光体表面に形成された突起物により、画像形成時にトナーより有機感光体表面に滑剤として供給された脂肪酸金属塩は有機感光体上に保持されるので、長期にわたり安定した転写性を発現するとともに、滑剤の脱離も防止できる。さらに、有機感光体表面に形成される滑剤層の厚みは突起物を超えることがないので、有機感光体表面の凹凸が維持される。
この様に、本発明によれば画像形成時に、安定したクリーニング性能、転写性能、滑剤脱離による汚染防止が実現されるので、良質な電子写真画像を安定して提供することができる。
次に、本発明に使用される有機感光体表面に形成される突起物について説明する。本発明に使用される有機感光体表面には、アスペクト比が0.01以上0.3以下の突起物が形成されてなるものである。図1は突起物を上方、および、側方より見たときの模式図で、(a)に示す様に、上方から見ると円形形状を有し、また、(b)に示す様に側方より見るとお椀をかぶせた様な曲線形状を有している。
突起物の形状は、図1(b)に示す直径と高さにより、アスペクト比で定義することが可能である。すなわち、突起物のアスペクト比は下記式にて定義されるものである。
突起物のアスペクト比=突起物の高さ/突起物の直径
本発明に使用される有機感光体表面に形成される突起物は、そのアスペクト比が、0.01以上0.3以下のものであり、好ましくは0.03以上0.2以下となるものである。
突起物のアスペクト比の値が、上記範囲内にあることにより、感光体表面とクリーニングブレードとの間には強い圧接力が作用せず、良好な接触状態が得られるものと見られる。その結果、突起物の存在により、クリーニングブレードが破損したり、あるいは、感光体表面がクリーニングブレードによってみだりに摩耗したりすることがなく、残留トナーのみを効率除去することができる様になっている。また、上記アスペクト比の範囲とすることにより、感光体表面にはトナーより移行してきた滑剤が適度に保持され、安定した転写性能が発現される。
本発明に使用される有機感光体表面に形成される突起物の大きさは、直径が5μm以上50μm以下のものであり、好ましくは10μm以上40μm以下である。また、高さは0.2μm以上3μm以下で、好ましくは高さ0.8μm以上2.4μm以下である。
突起物の直径と高さを上記範囲とすることにより、突起物はクリーニングブレードと接触しても削り取られることがなく、クリーニングブレードによる感光体表面の摩耗を回避することができる。
また、有機感光体表面における突起物の個数密度は、1mm2あたり5個以上乃至50個以下の範囲にあることが好ましい。突起物の個数密度が上記範囲のとき、有機感光体表面に突起物が規則的に配置され、有機感光体とクリーニングブレードとの間に適度な密着性が確保される。
また、トナーから移行してきて突起物間の隙間に入った滑剤が、ちょうどよい具合に突起物により保持され、滑剤が感光体表面から脱離しなくなる。また、個数密度が上記範囲となることで、突起物の適度な分散性が実現されることにより、有機感光体表面に均一な滑剤層が形成され易くなる。
本発明において、突起物のサイズの測定は、レーザーテック株式会社製の走査型レーザー顕微鏡システム1LM21機を用い、以下のようにして行った。
まず、測定対象となる電子写真感光体を試料台に設置し、調整治具にて水平を合わせ、電子写真感光体の周面を軸方向に均等間隔で3点、さらに電子写真感光体を、0度、120度、240度回転させた3点の合計9点を測定した。その際、倍率は20倍に設定し、1mm2の領域を観察した。
次に、走査型レーザー顕微鏡システム1LM21機付属のZ軸コントローラー1ZC1を用いて表面層の凹凸を表示した。1ZC1は顕微鏡のZ軸微動ノブに取り付けたモーターにより上下微動動作を行うZ軸コントローラーであり、焦点位置を任意に設定することができ、レーザー顕微鏡システム1LM21に接続することによって表面形状を測定することができる。実際の測定においては、焦点を突起物上端から突起物に存在しない電子写真感光体表面位置までZ軸方向に走査し、Z軸方向位置と焦点位置の情報より突起物の直径と高さを測定した。
そして、レーザー顕微鏡システム1LM21画面上に突起物と判別できる凸部の個数をカウントし、これを凸部の個数とし、視野観察1mm2より個数密度を求めた。
更に、突起物としてカウントした凸部の直径と高さを測定し、視野観察内の全突起物の平均直径、平均高さ、平均アスペクト比を求めた。この時、直径は、突起物の高さの1%裾部の外接円の直径とした。
次に、感光体周面の9点の各視野の平均を求め、この値を本発明の、突起物の直径、高さ、アスペクト比、個数密度とした。
本発明の突起物を表面層に形成する方法としては、金属酸化物粒子の分散時に突起物になる塊を形成し塗布する方法、金属酸化物粒子をあらかじめ均一に分散処理した塗布液に後処理を施すことで突起物になる塊を形成し塗布する方法、金属酸化物粒子の均一分散塗布液を塗布して塗膜を形成する時に製膜条件をコントロールして突起物を形成する方法等が挙げられる。ただし、本発明では突起物の形状が前述のものであればよく、その手段は任意に選択されるが、突起物の形状を安定してコントロールするためには、金属酸化物粒子をあらかじめ均一に分散処理した塗布液に後処理を施すことで突起物になる塊を形成し塗布する方法が特に好ましい。
金属酸化物粒子分散液の後処理の方法としては、分散液にマイクロ波や超音波を照射する方法、分散液を加熱、冷却、またはこれを繰り返す方法、分散液を撹拌装置によって撹拌する方法等が挙げられるが、本発明ではこれらに限定されない。特に、メディアレスで撹拌する方法が好ましい。
次に、有機感光体表面に含有される金属酸化物粒子について説明する。本発明に使用される有機感光体表面には、数平均一次粒径が0.01μm以上1.00μm以下の金属酸化物粒子が含有されている。
金属酸化物粒子の具体例としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ等が挙げられ、この中でもシリカ、酸化チタン、及び、アルミナが好ましいものであり、特に、シリカが最も好ましい金属酸化物粒子である。
金属酸化物粒子の大きさは、数平均一次粒径で0.01μm以上1.00μm以下のもので、0.015μm以上0.85μm以下のものが好ましいものである。
ここで、金属酸化物粒子の数平均一次粒径は、金属酸化物粒子を透過型電子顕微鏡により、観察、撮影された写真画像より算出するもので、顕微鏡の倍率を10000倍に設定して写真撮影を行い、写真画像上よりランダムに100個の金属酸化物粒子を抽出して算出する。具体的には、画像解析処理により100個の金属酸化物粒子のフェレ方向平均径を測定して、これを数平均一次粒径とするものである。なお、前記画像解析処理は、たとえば、透過型電子顕微鏡測定装置に内蔵されているプログラムを駆動させることにより自動的に行うことができる。
金属酸化物粒子の数平均一次粒径が0.01μmに満たない場合、金属酸化物粒子が表面層中で均一に分散しにくくなって金属酸化物粒子同士の凝集が起こるおそれがある。金属酸化物粒子が凝集すると、これが電荷トラップとなり感光体表面における残留電位の上昇を招き、画像濃度の低下や画像ボケの発生、転写メモリー等による画像むらの発生を起こすことがある。
一方、金属酸化物粒子の数平均一次粒径が1.00μmを超えるものになると、有機感光体表面に金属酸化物粒子による凹凸が形成される一方で、前述した突起物が形成しにくくなる傾向が出てくる。これは、数平均一次粒径が1.00μmを超えると塗布液中で金属酸化物粒子中が均一に分散しにくくなり、その重みによって塗布液中で沈殿し易いためと考えられる。
また、金属酸化物粒子を用いることにより、感光体表面に存在する水酸基が金属酸化物粒子に封鎖され、その結果、有機感光体表面層の帯電性能が向上するものと考えられる。したがって、金属酸化物粒子の水酸基に対する封鎖レベルをより向上させるため、表面処理を施した金属酸化物粒子を用いることが好ましい。
本発明で行う金属酸化物粒子の表面処理は、金属酸化物粒子表面を有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等により被覆することを示す。金属酸化物粒子表面が有機化合物、有機金属化合物、フッ素化合物、反応性有機ケイ素化合物等によって被覆されていることは、光電子分光法(ESCA)、オージェ電子分光法(Auger)、2次イオン質量分析法(SIMS)や拡散反射FI−IR等の表面分析手法を複合的に用いることにより高精度に確認される。
金属酸化物粒子の表面処理は、湿式法で行うことができる。例えば、金属酸化物粒子を水中に分散させて水性スラリーとし、この水性スラリーと、水溶性ケイ酸塩、水溶性のアルミニウム化合物等を混合して行う。前記水溶性のケイ酸塩として、ケイ酸ナトリウムを使用した場合には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸で中和することができる。
一方、水溶性のアルミニウム化合物として硫酸アルミニウムを用いたときは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで中和することができる。反応性有機ケイ素化合物による表面処理では、有機溶剤や水に対して反応性有機ケイ素化合物を溶解または懸濁させた液と金属酸化物粒子を混合し、この液を数分から1時間程度撹拌する。そして、場合によっては該液に加熱処理を施した後に、濾過等の工程を経た後乾燥し、表面を有機ケイ素化合物で被覆した金属酸化物粒子を得ることができる。
フッ素化合物による表面処理は、有機溶剤や水に対してフッ素原子を有する有機ケイ素化合物等を溶解または懸濁させ、該懸濁液と金属酸化物粒子を混合し、該混合溶液を数分から1時間程度撹拌混合し、場合によっては加熱処理を施した後に、濾過などの工程を経て乾燥し、フッ素化合物で被覆する。本発明の複数回表面処理アルミナは、ある層では分散性を向上するための表面処理を施して該粒子を含有する塗布液の安定性を改善し、ある層では、例えば滑り性、表面性向上の為のシリコーンオイル、或いはシリコーン樹脂で処理することにより、滑り性、表面性の向上を行っている。
本発明に係わる複数回の表面処理の好ましい例としては、一次処理をハロゲン化シラン類による表面処理を行ない、最終処理をシラザン化合物類の表面処理の表面処理を行なった酸化物粒子が好ましい。
また、一次処理をシリコーンオイル類による表面処理を行ない、最終処理をシラザン化合物類の表面処理の表面処理を行なった酸化物粒子も好ましい。例えば、ハロゲン化シラン類或いはシリコーンオイル系処理剤によって一次表面処理し、この一次処理粉末を解砕し、さらに解砕粉末をアルキルシラザン系処理剤によって二次表面処理することにより、疎水化度および疎水化度分布を改善した酸化物粒子を得ることができる。
ハロゲン化シラン類或いはシリコーンオイル系処理剤による一次表面処理、解砕処理後のアルキルシラザン系処理剤による二次表面処理は乾式処理または湿式処理の何れでも良い。ただし、上記一次表面処理と二次表面処理の順序が異なったり、あるいは最終処理の処理剤の種類、使用量や処理方法などが適切でない場合には、疎水度や疎水化度分布が改善されず、本発明の目的を達成し得ない。特に、最終処理がシラザン化合物類以外の場合は、表面処理が時間の経過と共に、離脱しやすく、疎水化度分布が大きくなりやすい。
このような複数回の表面処理を行なうことにより、酸化物粒子の疎水化度及び疎水化度分布を改善することができ、画像濃度の低下や画像ボケ、ダッシュマーク或いは転写メモリーの発生を効果的に防止することができる。
又、本発明に係わる表面層の金属酸化物粒子は、疎水化度を66体積%以上にすることが好ましい。該金属酸化物粒子の疎水化度が66体積%未満では、金属酸化物粒子の表面に存在する水酸基が多く、電位特性(帯電電位や残留電位等)の湿度依存性が大きく、又、画像ボケや転写メモリーの発生による画像むらが発生しやすい。金属酸化物粒子の疎水化度は70体積%以上がより好ましい。
又、本発明に係わる表面層の金属酸化物粒子は、疎水化度分布値が20体積%以下が好ましい。疎水化度分布値が20体積%より大きいと、表面に水酸基が多く残存する金属酸化物粒子が含まれ、画像ボケの発生やド転写メモリーを発生しやすい。
尚、本発明の疎水化度(メタノールウェッタビリティ)とはメタノールに対する濡れ性の尺度で示される。即ち、以下のように定義される。
疎水化度(メタノールウェッタビリティ)=(a/(a+50))×100
また、疎水化度の測定は以下の手順で行われる。
内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の金属酸化物粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸せきされているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で金属酸化物粒子の全体が濡れるまで(全部が沈降するまで)ゆっくり滴下する。この金属酸化物粒子全体を濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、上記式により疎水化度が算出される。
さらに、疎水化度分布値は下記の手順で測定される。
(1)測定対象の金属酸化物粒子を0.2g秤量し、遠沈管に入れる。
(プロットしたい点数分+1本(全沈用)を用意する)
(2)駒込ピペットにて濃度の異なるメタノール溶液を各7ml遠沈管に入れ、しっかりしめる(全沈用は上記疎水化度で決定されたメタノール濃度を用いる)。
(3)ターブラーミキサー90rpmで30秒間分散する。
(4)遠心分離器にかける(3500rpm、10分間)
(5)沈降容積を読みとり、全沈降容積(全部が沈降した容積)を100%としたときの各沈降容積%を求める。
(6)上記、各測定値を基に、横軸メタノール濃度(体積%)、縦軸沈降容積(体積%)のグラフを作製する。
上記測定より、疎水化度分布を測定し、疎水化度分布値は次のように定義される。
(沈降容積が100%のメタノール体積%)−(沈降容積が10%のメタノール体積%)≦25
疎水化度分布曲線を図2に示す。図2の分布曲線ではa点のメタノール濃度が疎水化度を表し、a点のメタノール濃度とb点のメタノール濃度の差;Δ(a−b)が本発明の疎水化度分布値を表す。
次に、前述した一次表面処理或いは二次表面処理に使用可能な表面処理剤について説明する。一次処理に好ましく使用されるシリコーンオイル系処理剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルといったストレートシリコーンオイルやアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、片末端反応性変性シリコーンオイル、異種官能基変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、親水性特殊変性シリコーンオイル、高級アルコキシ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸含有変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルを用いることができる。また目的に応じて2種以上を混合しても良い。
ハロゲン化シラン類としては、ジメチルジクロロシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等が有る。
最終処理の表面処理剤に用いられるシラザン類としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等が使用できる。
上記のシリコーンオイル系処理剤及びハロゲン化シラン類以外に下記に示すアルコキシシラン類、シロキサン類、金属アルコキシド、脂肪酸及びその金属塩等をシラザン類の最後の表面処理の前に表面処理剤として用いてもよい。
アルコキシシラン類としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等がある。
シロキサン類としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサンなどがある。
金属アルコキシドとしては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−i−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−s−ブトキシアルミニウム、トリ−t−ブトキシアルミニウム、モノ−s−ブトキシジ−i−プロピルアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−s−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、ジメトキシ錫、ジエトキシ錫、ジ−n−ブトキシ錫、テトラエトキシ錫、テトラ−i−プロポキシ錫、テトラ−n−ブトキシ錫、ジエトキシ亜鉛、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド等が挙げられる。
脂肪酸及びその金属塩としては、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸が挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウム等の金属との塩が挙げられる。
これらの処理剤はヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、アセトン等、場合によっては、水などで希釈して用いると良い。
表面処理の具体的な手順;例えば、シリコーンオイルを溶かした溶剤(好ましくは有機酸等でpH4に調整)の中にアルミナ粉末を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。その後、シラザン化合物を溶かした溶剤の中に、解砕した処理粉を入れて反応させ、その後、溶剤を除去し、解砕処理を施す。また、次のような方法でも良い。例えば、アルミナ粉末を反応槽に入れ、窒素雰囲気下、攪拌しながらアルコール水を添加し、オルガノポリシロキサン等のシリコーンオイル系処理液を反応槽に導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去する。その後、解砕処理を行った後に、窒素雰囲気下、撹拌しながら、アルキルシラザン系処理液を導入して表面処理を行い、さらに加熱撹拌して溶剤を除去した後に冷却する。処理条件はアルミナ粉末が上記疎水率、疎水化度および上記分布頻度を有するように調整する。
又、これらの処理剤はヘキサン、トルエン、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、アセトン等、場合によっては水などで希釈して用いることもできる。
また、金属酸化物粒子は、高耐久性を有するものが好ましく、焼成処理を行ったものが好ましく用いられる。具体的には、焼成処理を施したアルミナが挙げられる。アルミナの焼成処理において、焼成温度を500℃以上、好ましくは、1000℃以上の温度で焼成処理を行うことにより焼成処理を行わなかったものよりも格段に強度を向上させることができる。また、前記温度下で5時間以上、好ましくは10時間以上焼成処理を行うことが好ましい。この様な焼成処理をアルミナに施すことにより、アルミナ粒子表面に存在する水酸基等の極性を有する官能基が分解されて、感光体表面に存在する水酸基の封鎖を促進させることになる。
前記表面層中には金属酸化物粒子の分散性を助けるバインダー樹脂を含有する。該バインダー樹脂としては、ポリカーボネートやポリアリレートが好ましい。これらポリカーボネートやポリアリレートの分子量は10,000〜100,000が好ましい。
又、表面層中の無機子の比率は質量比でバインダー樹脂100質量部に対し、少なくとも5質量部以上50質量部以下の量で用いることが好ましい。5質量量部未満では表面層の摩耗が大きく、擦り傷等が発生してハーフトーン画像が荒れやすい。50質量部より多いと表面層が脆弱な膜となり、クラック等が発生しやすい。
又、本発明に係わる表面層は電荷輸送物質を含有することが好ましい。
電荷輸送物質(CTM)としては公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)を用いることが好ましい。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。
表面層中のバインダー樹脂と電荷輸送物質の質量比はバインダー100質量部に対し、電荷輸送物質30〜200質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましい。
又、表面層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。表面層に酸化防止剤と本発明の無機粒子を含有させることにより、繰り返し使用中の表面層の特性変動を防止し、画像ボケの発生やドット画像の劣化を防止し、良好な電子写真画像を提供することができる。該酸化防止剤とは、その代表的なものは有機感光体中ないしは有機感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸化作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。
ここで、酸化防止剤とは、感光体中ないしは感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。詳しくは下記の化合物群が挙げられる。
(1)ラジカル連鎖禁止剤
・フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系)
・アミン系酸化防止剤(ヒンダードアミン系、ジアリルジアミン系、ジアリルアミン系)
・ハイドロキノン系酸化防止剤
(2)過酸化物分解剤
・硫黄系酸化防止剤(チオエーテル類)
・燐酸系酸化防止剤(亜燐酸エステル類)
上記酸化防止剤のうちでは、(1)のラジカル連鎖禁止剤が良く、特にヒンダードフェノール系或いはヒンダードアミン系酸化防止剤が好ましい。又、2種以上のものを併用してもよく、例えば(1)のヒンダードフェノール系酸化防止剤と(2)のチオエーテル類の酸化防止剤との併用も良い。更に、分子中に上記構造単位、例えばヒンダードフェノール構造単位とヒンダードアミン構造単位を含んでいるものでも良い。
前記酸化防止剤の中でも特にヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系酸化防止剤が高温高湿時のカブリの発生や画像ボケ防止に特に効果がある。
ヒンダードフェノール系或いはヒンダードアミン系酸化防止剤の表面層中の含有量は0.01〜20質量%が好ましい。0.01質量%未満だとポチが発生しやすく、20質量%より多い含有量では表面層中の電荷輸送能の低下がおこり、残留電位が増加しやすくなり、又膜強度の低下し、筋傷が発生しやすい。
ここでヒンダードフェノールとはフェノール化合物の水酸基に対しオルト位置に分岐アルキル基を有する化合物類及びその誘導体を云う(但し、水酸基がアルコキシに変成されていても良い。)。
ヒンダードアミン系とはN原子近傍にかさ高い有機基を有する化合物である。かさ高い有機基としては分岐状アルキル基があり、例えばt−ブチル基が好ましい。例えば下記構造式で示される有機基を有する化合物類が好ましい。
式中のR13は水素原子又は1価の有機基、R14、R15、R16、R17はアルキル基、R18は水素原子、水酸基又は1価の有機基を示す。
ヒンダードフェノール部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118137号公報(P7〜P14)記載の化合物が挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
ヒンダードアミン部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118138号公報(P7〜P9)記載の化合物も挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
有機リン化合物としては、例えば、一般式:RO−P(OR)−ORで表される化合物で代表的なものとして下記のものがある。尚、ここにおいてRは水素原子、各々置換もしくは未置換のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。
有機硫黄系化合物としては、例えば、一般式:R−S−Rで表される化合物で代表的なものとして下記のものがある。尚、ここにおいてRは水素原子、各々置換もしくは未置換のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。
以下に代表的な酸化防止剤の化合物例を挙げる。
又、製品化されている酸化防止剤としては以下のような化合物、例えばヒンダードフェノール系として「イルガノックス1076」、「イルガノックス1010」、「イルガノックス1098」、「イルガノックス245」、「イルガノックス1330」、「イルガノックス3114」、「イルガノックス1076」、「3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシビフェニル」、ヒンダードアミン系として「サノールLS2626」、「サノールLS765」、「サノールLS770」、「サノールLS744」、「チヌビン144」、「チヌビン622LD」、「マークLA57」、「マークLA67」、「マークLA62」、「マークLA68」、「マークLA63」が挙げられ、チオエーテル系として「スミライザーTPS」、「スミライザーTP−D」が挙げられ、ホスファイト系として「マーク2112」、「マークPEP−8」、「マークPEP−24G」、「マークPEP−36」、「マーク329K」、「マークHP−10」が挙げられる。
本発明は前述したような表面層を有する有機感光体であるが、表面層以外の有機感光体の構成について以下に記載する。
本発明でいう有機感光体とは、電子写真感光体の構成に必要不可欠な電荷発生機能及び電荷輸送機能の少なくとも一方の機能を有機化合物に持たせて構成した電子写真感光体を意味するものである。本発明でいう有機感光体には、公知の有機電荷発生物質又は有機電荷輸送物質から構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能を高分子錯体で構成した感光体等公知の有機感光体を全て含有する。
本発明に使用可能な有機感光体の構成は、前記した表面層を有する限り特に制限されるものではなく、例えば、以下に示すような構成が挙げられる。すなわち、
(1)導電性支持体上に感光層として電荷発生層および電荷輸送層を順次積層した構成
(2)導電性支持体上に感光層として電荷発生層、第1電荷輸送層および第2電荷輸送層を順次積層した構成
(3)導電性支持体上に感光層として電荷輸送材料と電荷発生材料とを含む単層を形成した構成
(4)導電性支持体上に感光層として電荷輸送層および電荷発生層を順次積層した構成
(5)上記(1)〜(5)の感光体の感光層上にさらに表面保護層を形成した構成。
感光体が上記いずれの構成を有する場合であってもよい。感光体の表面層とは、感光体が空気界面と接触する層であり、導電性支持体上に単層式の感光層のみが形成されている場合は当該感光層が表面層であり、導電性支持体上に単層式または積層式感光層と表面保護層とが積層されている場合は表面保護層が最表面層である。本発明では上記(2)の構成が最も好ましく用いられる。尚、本発明の感光体はいずれの構成を有する場合であっても、導電性支持体上、感光層の形成に先だって、中間層(下引層とも呼ばれる)が形成されたものであってもよい。
電荷輸送層とは、光露光により電荷発生層で発生した電荷キャリアを有機感光体の表面に輸送する機能を有する層を意味し、該電荷輸送機能の具体的な検出は、電荷発生層と電荷輸送層を導電性支持体上に積層し、光導伝性を検知することにより確認することができる。
次に、有機感光体の層構成を上記(2)の構成を中心にして記載する。
導電性支持体
感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。本発明の導電性支持体としては、アルミニウム支持体が最も好ましい。該アルミニウム支持体は、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウム等の成分が混合したものも用いられる。
中間層
本発明に使用可能な有機感光体では、導電性支持体と感光層の間に中間層を設けることが好ましい。そして、中間層にN型半導性粒子を含有することが好ましい。該N型半導性粒子とは、主たる電荷キャリアが電子である粒子を意味する。すなわち、主たる電荷キャリアが電子であることから、該N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させた中間層は、支持体からのホール注入を効率的にブロックし、また、感光層からの電子に対してはブロッキング性が少ない性質を有する。
N型半導性粒子としては、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)が好ましく、特に酸化チタンが特に好ましく用いられる。
N型半導性粒子は数平均一次粒径が3.0〜200nmの範囲の微粒子を用いる。特に、5nm〜100nmが好ましい。数平均一次粒径とは、微粒子を透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。数平均一次粒径が3.0nm未満のN型半導性粒子は中間層バインダー中での均一な分散ができにくく、凝集粒子を形成しやすく、該凝集粒子が電荷トラップとなって残電上昇が発生しやすい。一方、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は中間層の表面に大きな凹凸を作りやすく、これらの大きな凹凸を通してドット画像が劣化しやすい。又、数平均一次粒径が200nmより大きいN型半導性粒子は分散液中で沈でんしやすく、凝集物が発生しやすく、その結果、ドット画像が劣化しやすい。
前記酸化チタン粒子の結晶形としては、例えば、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形及びアモルファス形等が挙げられる。この中でもルチル形又はアナターゼ形の酸化チタン粒子は、中間層を通過する電荷の整流性を高め、即ち、電子の移動性を高めるので、帯電電位を安定させて、残留電位の増大を防止することができる。また、ドット画像の劣化を防止することもできる。個に様な理由で、ルチル形またはアナターゼ形の酸化チタン粒子は、N型半導性粒子として最も好ましいものである。
N型半導性粒子は、メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体で表面処理されたものが好ましい。メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体の分子量は、1000〜20000のものが表面処理効果が高く、その結果、N型半導性粒子の整流性を高めることができる。このN型半導性粒子を中間層に含有させることにより、黒ポチの発生が防止され、又、良好なドット画像の再現性に効果を有する。
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体は、−(HSi(CH3)O)−の構造単位とこれ以外の構造単位(他のシロキサン単位のこと)の共重合体が好ましい。他のシロキサン単位としては、ジメチルシロキサン単位、メチルエチルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位及びジエチルシロキサン単位等が好ましく、特にジメチルシロキサン単位が好ましい。共重合体中のメチルハイドロジェンシロキサン単位の割合は10〜99モル%、好ましくは20〜90モル%である。
メチルハイドロジェンシロキサン共重合体はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよいがランダム共重合体及びブロック共重合体が好ましい。又、共重合成分として、メチルハイドロジェンシロキサン以外に、一成分あるいは二成分以上の他のシロキサン単位を含有させたものでもよい。
中間層を形成するための中間層塗布液は、前記表面処理酸化チタン等のN型半導性粒子の他に、バインダー樹脂や分散溶媒等から構成される。
N型半導性粒子の中間層中での比率は、中間層のバインダー樹脂との体積比(バインダー樹脂の体積を1とすると)で1.0〜2.0倍が好ましい。中間層中にN型半導性粒子を高密度で充填させることにより、中間層における電荷の整流性を高め、中間層の膜厚を厚くしても残留電位の上昇やドット画像の劣化を効果的に防止することができ、良好なトナー画像形成が行える。
一方、これらの粒子を分散させ、中間層の層構造を形成するバインダー樹脂としては、粒子の良好な分散性を得る為にポリアミド樹脂が好ましい。
中間層のバインダー樹脂に使用するポリアミド樹脂としては、アルコールに可溶性のポリアミド樹脂が好ましい。その理由は、中間層を均一な膜厚を有する中間層を形成するために、溶媒に対し、優れた溶解性を示す樹脂が必要とされるためである。このようなアルコール可溶性のポリアミド樹脂の具体例としては、6−ナイロンに代表されるアミド結合間の炭素鎖の少ない構造のポリアミド樹脂や、メトキシメチル化ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、吸水率が高いため、中間層の温湿度依存性が高くなる傾向を示す。したがって、高温高湿や低温低湿といった環境下や長時間にわたる連続プリントを行ったときなどにの帯電特性や感度等が変化しやすくなり、転写メモリー等の発生を起しやすくなる傾向があった。アルコール可溶性のポリアミド樹脂は、上記の様な欠点を有しているため、その改良が行われ、融解熱0〜40J/gで、且つ、吸水率5質量%以下の特性を与えることにより、上記欠点を解消したアルコール可溶性のポリアミド樹脂が提供されるようになった。
このアルコール可溶性ポリアミド樹脂によれば、高温高湿、あるいは低温低湿といった環境下でのプリント作製や、長時間にわたる連続使用を行ったときでも、良好な電子写真画像を安定して形成することができる。以下、融解熱が0〜40J/gで、且つ、吸水率が5質量%以下の特性を有するアルコール可溶性ポリアミド樹脂について説明する。
前記アルコール可溶性ポリアミド樹脂は、アミド結合間の炭素数が7〜30の繰り返し単位を有し、その繰り返し単位が、40〜100モル%含有させることにより実現することができる。
ここで、アミド結合間の炭素数が7〜30の繰り返し単位について説明する。前記繰り返し単位とは、ポリアミド樹脂を形成するアミド結合単位を意味する。このことを、繰り返し単位構造がアミノ基とカルボン酸基の両方を持つ化合物の縮合により形成されるポリアミド樹脂(タイプA)と、ジアミノ化合物とジカルボン酸化合物の縮合で形成されるポリアミド樹脂(タイプB)の両方の例で説明する。
タイプAの繰り返し単位は、一般式(1)で表される構造のもので、Xに含まれる炭素数が繰り返し単位構造におけるアミド結合単位の炭素数を表す。一方、タイプBの繰り返し単位は、一般式(2)で表される構造のもので、Yに含まれる炭素数もZに含まれる炭素数も各々繰り返し単位を構成するアミド結合単位の炭素数である。
一般式(1)中、R1は水素原子、置換又は無置換のアルキル基、Xは置換又は無置換の、アルキレン基、2価のシクロアルカンを含む基、2価の芳香族基、及び、これらの混合構造を示す。また、lは自然数を示す。
一般式(2)中、R2、R3は、各水素原子、置換又は無置換のアルキル基、Y、Zは各置換又は無置換の、アルキレン基、2価のシクロアルカンを含む基、2価の芳香族基及びこれらの混合構造を示す。また、m、nは自然数を示す。
前記のごとく、炭素数が7〜30の繰り返し単位は、置換又は無置換の、アルキレン基、2価のシクロアルカンを含む基、2価の芳香族基及びこれらの混合構造を有する化学構造等が挙げられる。これらの中でも、2価のシクロアルカンを含む基を有する構造が好ましい。
上記ポリアミド樹脂は、繰り返し単位におけるアミド結合間の炭素数が7〜30のものであるが、好ましくは9〜25、更には11〜20がより好ましい。また、アミド結合間の炭素数が7〜30の繰り返し単位が全構造中に占める比率は、40〜100モル%であり、好ましくは60〜100モル%、更には80〜100モル%がより好ましい。
前記繰り返し単位アミド結合間の炭素数が7よりも小さいと、ポリアミド樹脂の吸湿性が大きくなる傾向があり、繰り返しプリント作成を行うときなどで電位の湿度依存性が大きくなり、黒ポチ等の画像欠陥を発生させ、ドット画像の劣化を招くおそれがある。また、炭素数が30よりも大きくなると、ポリアミド樹脂の溶媒への溶解性が低下し、塗布液が中間層の形成に適さないものになるおそれがある。
又、アミド結合間の炭素数が7〜30の繰り返し単位の全構造中に占める比率が、40モル%よりも小さくなると、上記効果の発現を抑制する傾向がみられるようになる。
本発明に好ましく使用することが可能なポリアミド樹脂としては、下記一般式(3)で示される繰り返し単位を有するポリアミド樹脂が挙げられる。
一般式(3)中、Y1は2価のアルキル置換されたシクロアルカンを含む基、Z1はメチレン基、mは1〜3、nは3〜20を示す。
一般式(3)中、Y1の2価のアルキル置換されたシクロアルカンを含む基は、下記構造を有するものが好ましい。即ち、Y1が下記構造を有するポリアミド樹脂は、黒ポチやドット画像の劣化にとても効果的である。
上記構造において、Aは単結合、炭素数1〜4のアルキレン基を示し、R4は、アルキル基を示し、pは1〜5の自然数を示す。但し、R4が複数の場合、R4は同一でも、異なっているものでも良い。
上記ポリアミド樹脂の具体例としては、下記のものが挙げられる。
上記具体例中のかっこ内の%は、アミド結合間の炭素数が7以上の繰り返し単位の比率(モル%)を示す。
上記具体例の中でも、一般式(3)の繰り返し単位構造を有するN−1〜N−4のポリアミド樹脂が特に好ましい。
又、上記ポリアミド樹脂の分子量は、数平均分子量で5,000〜80,000が好ましく、10,000〜60,000がより好ましい。数平均分子量が5,000以下よりも小さくなると、中間層の膜厚を均一に形成することが難しくなり、電子写真特性に影響を与えるおそれがある。一方、数平均分子量が80,000よりも大きくなると、樹脂の溶媒に対する溶解性が低下していくおそれがあり、中間層中に凝集の樹脂物が存在していると、黒ポチの発生やドット画像の劣化を起こすおそれがある。
上記ポリアミド樹脂は、一般的なポリアミドの合成法で作製することができる。また、市販されているものを使用することも可能で、例えばダイセル・デグサ(株)社製のベスタメルトX1010、X4685等の商品名のものが使用できる。
上記ポリアミド樹脂を溶解させる溶媒としては、炭素数2〜4のアルコール類が好ましく、ポリアミドの溶解性と作製された塗布液の塗布性の点で優れている。具体的には、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、sec−ブタノール等が挙げられる。これらの溶媒は、全溶媒中に30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、更には50〜100質量%含有させることが好ましい。また、前記アルコール類と併用することが可能な助溶媒としては、メタノール、ベンジルアルコール、トルエン、メチレンクロライド、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
本発明に係わる有機感光体を構成する中間層の膜厚は、0.3〜10μmが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。中間層の膜厚が0.3μm未満の場合、黒ポチの発生や、ドット画像の劣化を起こすおそれがある。10μmを超えると、残留電位が上昇しやすくなる傾向があり、ドット画像の劣化を起こしやすくするおそれがある。
上記中間層は、実質的に絶縁性を有することが好ましい。ここで、絶縁性を有するとは、体積抵抗が1×108Ω・cm以上であることを意味する。中間層の体積抵抗は、1×108〜1015Ω・cmが好ましく、1×109〜1014Ω・cmがより好ましく、2×109〜1×1013Ω・cmが特に好ましい。同様に、本発明に係る有機感光体の表面層における体積抵抗も前記範囲が好ましい。
なお、体積抵抗は下記の条件の下で測定が可能である。
測定条件;JIS C2318−1975に準ずる。
測定器:三菱油化社製Hiresta IP
測定条件:測定プローブ HRS
印加電圧:500V
測定環境:温度30±2℃、湿度80±5RH%
体積抵抗が1×108Ω・cm未満の場合、中間層における電荷のブロッキング性が低下する傾向があり、黒ポチ発生の増大や、有機感光体の電位保持性の劣化をおこすおそれがあり、良好な画質が得られなくなるおそれがある。一方、体積抵抗が1×1015Ω・cmより大きくなると、画像形成を繰り返し行ったときに残留電位が増大しやすくなる傾向があり、良好な画像形成が難しくなるおそれがある。
感光層
本発明に係わる感光体を構成する感光層は、前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造のものでも良いが、少なくとも電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)からなる機能分離した構造をとるものがより好ましい。機能分離型の構造とすることにより、画像形成を繰り返し行ったときに残留電位を小さく抑えることが事ができる。また、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しすることが容易に行えるようになる。負帯電用の感光体は、中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)を配置させた構造とすることが好ましい。
以下に機能分離型構造の負帯電性感光体の感光層の構成について説明する。
電荷発生層
本発明に係わる有機感光体に使用可能な電荷発生物質(CGM)としては公知のものを用いることが可能で、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などが挙げられる。これらの中で、本発明の効果が顕著に現れ、繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできるCGMとしては、例えば、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するオキシチタニルフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中でバインダーを用いてCGMを分散させる場合、バインダーとして公知の樹脂を用いることが可能で、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が好ましい樹脂として挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返しプリント作製を行ったときに残留電位の増加を小さく抑えることができる。なお、電荷発生層の膜厚は、0.3μm〜2μmが好ましい。
電荷輸送層
前記したように、本発明に係わる有機感光体は電荷輸送層が複数のものから構成され、最上層を構成する電荷輸送層が本発明でいう表面層に該当するもので、そこには、金属酸化物粒子が含有されている。
電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により前記した金属酸化物粒子の他に酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。そして、本発明では、表面層に前述した金属酸化物粒子を含有するものである。
電荷輸送物質(CTM)としては、公知の正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)が好ましく用いられる。正孔輸送性(P型)の電荷輸送物質(CTM)としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などが挙げられる。
電荷輸送層(CTL)に用いられるバインダー樹脂は、熱可塑性樹脂、あるいは、熱硬化性樹脂いずれの樹脂であってもよい。バインダー樹脂の具体例としては、以下のものが挙げられる。ポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂。また、これらの樹脂を構成する繰り返し単位を2つ以上有する共重合体樹脂や、これらの樹脂を混合させた樹脂(ブレンド物)も挙げられる。更に、これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体も使用可能である。これらの中でも吸水率が小さく、かつ、電荷輸送物質を均一に分散させ易い性質を有し、かつ、良好な電子写真特性が得られるポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し50〜200質量部が好ましい。
電荷輸送層の合計膜厚は、10〜40μmが好ましい。合計膜厚が10μm未満では、画像ムラが発生しやすく、40μmを超えると残電上昇が起こりやすく、鮮鋭性も劣化しやすい。また、表面層を構成する電荷輸送層の膜厚は、0.5〜10μmが好ましい。
また、電荷発生層、電荷輸送層等の層形成に使用可能な溶媒又は分散媒としては以下の物が挙げられる。
(1)ケトン類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等
(2)エーテル類;テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン等
(3)アルコール類;メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール等
(4)エステル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等
(5)アミン類;n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン等
(6)炭化水素系;ベンゼン、トルエン、キシレン等
(7)その他:N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等。
これらの中でも、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン等の地球環境に優しい溶媒が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
又、本発明に係る有機感光体は、感光体を構成する層構成全層の残留溶媒量を5000ppm以下にすることが好ましく、更に、3000ppm以下にすることがより好ましい。残留溶媒を前記範囲とすることで、NOx等の活性ガスの感光層中への進入を抑え、画像ボケ等のない良好な画像形成を維持させる。
残留溶媒量の測定は、例えば、次の手順で行う。
(1)感光体の支持体から全構成層を剥離する。
(2)剥離した層中の残留溶媒量を熱分解ガスクロマトグラフィー(GC15A:島津製作所製)及びキューリーポイントパイローライザー(JHP−3S:日本分析工業社製)を用いて測定する。
又、これらの各層の塗布溶液は塗布工程に入る前に、塗布溶液中の異物や凝集物を除去するために、金属フィルター、メンブランフィルター等で濾過することが好ましい。例えば、日本ポール社製のプリーツタイプ(HDC)、デプスタイプ(プロファイル)、セミデプスタイプ(プロファイルスター)等を塗布液の特性に応じて選択し、濾過をすることが好ましい。
次に、有機感光体を製造するために用いられる塗布方法としては、円形スライドホッパー型塗布装置による塗布の他に、浸漬塗布、スプレー塗布等が挙げられる。特に、本発明の表面層を形成する際には、円形スライドホッパー型塗布装置を用いるのが最も好ましい。
また、円形スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方法は、低沸点溶媒を用いた塗布液を用いる場合に最も適している。円形スライドホッパー型塗布装置を用いて、円筒状の感光体への塗布を行う方法は、特開昭58−189061号公報等の記載を参照するとよい。
円形スライドホッパー型塗布装置を用いる塗布方法は、スライド面終端と基材とを、ある間隙(約2μm〜2mm)を持って配置させて塗布を行うもので、基材表面を傷つける事なく、また性質の異なる層を多層形成させる場合でも、既に塗布された層を損傷させずに塗布ができる。また、性質が異なり同一溶媒に溶解する層を多層形成させる際にも、浸漬塗布方法と比べて溶媒中に存在する時間がはるかに短いので、下層成分が上層側へ殆ど溶出せず、塗布槽にも溶出することなく塗布できる。
次に、本発明で使用することが可能なトナーについて説明する。本発明で使用されるトナーは、いわゆる外添処理によりトナー粒子表面に脂肪酸金属塩が添加されてなるものである。
この脂肪酸金属塩は、一般に滑剤とよばれるもので、画像形成時に有機感光体上へ移行して、有機感光体の表面に脂肪酸金属塩の膜を形成することにより、有機感光体の耐摩耗性を改善している。また、滑剤の存在により、クリーニングブレードのカット面の摩耗を和らげ、同時に感光体表面の摩耗を抑える働きを持つ。この様に、トナーに滑剤として添加した金属酸化物粒子により、クリーニング性と転写性に優れ、長期に亘り安定した画像形成を行えるようにしている。
本発明に使用可能な脂肪酸金属塩は、炭素数10以上の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩が好ましい。脂肪酸金属塩の具体例としては、以下の挙げるステアリン酸金属塩が代表的である。すなわち、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸インジウム、ステアリン酸ガリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。また、ステアリン酸金属塩の他に、パルチミン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム等が挙げられる。
上記脂肪酸金属塩はフローテスターの流出速度が高い傾向があり、また、高い劈開性を有することから、感光体表面により効果的に脂肪酸金属塩の層を形成することができる。脂肪酸金属塩の範囲は、1×10-7以上1×10-1以下が好ましく、5×10-4以上1×10-2以下がより好ましい。フローテスターの流出速度の測定は島津フローテスター「CFT−500」(島津製作所(株)製)を用いて測定されたものである。
トナー中に脂肪酸金属塩を含有させる方法としては、トナーの後処理工程(外添処理工程)で脂肪酸金属塩をトナーとともに混合攪拌して、トナー表面に付着させる方法が好ましい。脂肪酸金属塩添加量は、トナーの粒径等にも依存するが、一般的にはトナーに対し、0.01〜1質量%となるように添加するのが好ましい。脂肪酸金属塩がトナーに対して、0.01質量%未満埜場合、トナー表面から感光体表面への脂肪酸金属塩の移行が十分に行えず、感光体表面に脂肪酸金属塩の層を形成することが難しくなる。また、脂肪酸金属塩の含有量が1質量%より多くなると、感光体表面に形成された脂肪酸金属塩の層が形成されるものの、層に紙粉が付着し易くなり、画像ボケ等の画像不良の発生が懸念されるようになる。
又、トナーに流動性を付与するために、脂肪酸金属塩とともに、無機微粒子や有機微粒子をトナーに添加することが好ましい。この場合、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物粒子の使用が特に好ましく、更に、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等によって疎水化処理された無機酸化物粒子が好ましい。
トナーは、結着樹脂、着色剤及びワックス等を含有してなり、その表面に脂肪酸金属塩を添加してなるものである。トナーの体積基準メディアン径は3〜20μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。トナーを構成する粒子の製造法は、特に限定されず、粉砕法或いは重合法により作製したものを用いることができるが、本発明では、粒度分布が均一で、帯電分布のシャープな特性が得られる重合法により作製される、いわゆる、重合トナーが好ましい。ここで、重合トナーとは、トナー用バインダーの樹脂の生成とトナー形状がバインダー樹脂の原料モノマーの重合と、必要によりその後の化学的処理により形成されるトナーを意味する。より具体的には懸濁重合、乳化重合等の重合反応と、必要によりその後に行われる粒子同士の融着工程を経て形成されるトナーを意味するものである。重合トナーは、原料モノマーを水系で均一に分散した後に重合させトナーを製造することから、トナーの粒度分布、及び形状が均一で帯電分布のシャープなトナーが得られる。
先ず、本発明に係るトナーに使用可能な樹脂としては、下記(1)乃至(10)に示す様なビニル系単量体に代表される重合性単量体を重合して作製される重合体が代表的なものである。すなわち、本発明に係るトナーに使用可能な樹脂としては、下記に示すビニル系単量体を単独あるいは複数種類組み合わせて重合を行って得られるものが挙げられる。
(1)スチレンあるいはスチレン誘導体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等
(2)メタクリル酸エステル誘導体
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等
(3)アクリル酸エステル誘導体
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等。
(4)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等
(5)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等
(6)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等
(7)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等
(8)N−ビニル化合物
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等
(9)ビニル化合物類
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等
(10)アクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等。
また、樹脂を構成する重合性単量体として、イオン性解離基を有する重合性単量体を組み合わせて使用することも可能である。イオン性解離基としては、たとえば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の置換基が挙げられ、イオン性解離基を有する重合性単量体はこれらの置換基を有するものである。
イオン性解離基を有する重合性単量体の具体例を以下に挙げる。
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等。
さらに、樹脂を構成する重合性単量体として、多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることも可能である。多官能性ビニル類の具体例を以下に挙げる。
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等。
次に、本発明に係るトナーに使用可能な着色剤としては公知のものが挙げられる。具体的な着色剤を以下に示す。
黒色の着色剤としては、たとえば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
さらに、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
これらの着色剤は必要に応じて単独もしくは2つ以上を選択併用することも可能である。また、着色剤の添加量はトナー全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%の範囲に設定するのが良い。
次に、本発明に係るトナーに使用可能なワックスについて説明する。本発明に係るトナーに使用可能なワックスとしては、従来公知のものが挙げられ、具体的には、以下のものが挙げられる。
(1)長鎖炭化水素系ワックス
ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等
(2)エステル系ワックス
トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等
(3)アミド系ワックス
エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等
(4)ジアルキルケトン系ワックス
ジステアリルケトン等
(5)その他
カルナウバワックス、モンタンワックス等。
又、磁性トナーは、着色剤として磁性体微粒子を用いることにより得ることが出来る。磁性体微粒子としては、平均一次粒子径が0.1〜2.0μmのフェライト、マグネタイト等の粒子が用いられる。磁性体微粒子の添加量はトナー中の20〜70質量%が好ましい。
又、流動性付与の観点から、無機微粒子を着色粒子に混合することが好ましい。無機微粒子としては、シリカ、チタニア及びアルミナ等の無機酸化物粒子が好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤、或いはチタンカップリング剤等によって疎水化処理されていることがより好ましい。
〈現像剤〉
本発明に係るトナーは、キャリアを用いずに画像形成を行う一成分現像剤(磁性、非磁性を含む)、及びキャリアを用いて画像形成を行う二成分現像剤のどちらも使用することができる。
二成分現像剤として用いる場合は、トナー及びキャリアを混合して作製することが出来る。トナーのキャリアに対する混合量は、2〜10質量%が好ましい。
キャリアは、体積平均粒径が10〜60μm、飽和磁化値が20〜80emu/gであるフェライトキャリアが好ましい。このようにキャリアの粒径が小さく、飽和磁化値も低いキャリアを用いることにより、現像スリーブ上の磁気ブラシが柔らかくなり、鮮鋭性が良好な電子写真画像を形成することができる。
混合する装置としては特に限定されず、ナウターミキサー、Wコーン及びV型混合機等を用いることが出来る。
体積平均粒径は、湿式分散器を備えたレーザー回折式粒度分析装置「HELOS」(シンパテック株式会社製)により測定される体積基準の平均粒径である。
飽和磁化は、「直流磁化特性自動記録装置3257−35」(横河電気株式会社製)により測定される。
又、キャリアは磁性体粒子を芯材(コア)とし、その表面を樹脂で被覆することが好ましい。上記キャリア芯材の被覆に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、各種の樹脂を用いることが可能である。正帯電性トナーに対しては、例えばフッ素系樹脂、フッ素−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂等を用いることができ、好ましくは縮合型のシリコーン系樹脂が良い。また、逆に、負帯電性トナーに対しては、例えばアクリル−スチレン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂及びその硬化樹脂、シリコーン系樹脂、変性シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が挙げられ、好ましくはアクリル−スチレン系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂及びその硬化樹脂、並びに縮合型のシリコーン系樹脂である。また必要に応じ、荷電制御剤、密着性向上剤、プライマー処理剤あるいは抵抗制御剤等を添加しても良い。
次に、本発明に係る有機感光体と脂肪酸金属塩を含有するトナーを用いて行う画像形成方法と、画像形成装置の説明をする。
図3は本発明の画像形成方法の1例としての画像形成装置の断面構成図である。
図3において50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器(帯電手段)で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた帯電前露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
感光体への一様帯電の後、像露光手段としての像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー532により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
ここで反転現像プロセスとは帯電器52により、感光体表面を一様に帯電し、像露光が行われた領域、即ち感光体の露光部電位(露光部領域)を現像工程(手段)により、顕像化する画像形成方法である。一方未露光部電位は現像スリーブ541に印加される現像バイアス電位により現像されない。
その静電潜像は次いで現像手段としての現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像器54内部は現像剤攪拌搬送部材544、543、搬送量規制部材542等から構成されており、現像剤は攪拌、搬送されて現像スリーブに供給されるが、その供給量は該搬送量規制部材542により制御される。該現像剤の搬送量は適用される電子写真感光体の線速及び現像剤比重によっても異なるが、一般的には20〜200mg/cm2の範囲である。
現像剤は、例えば前述のフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、前述のスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は搬送量規制部材によって層厚を規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。感光体の電位測定は電位センサー547を図2のように現像位置上部に設けて行う。
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写電極(転写手段:転写器)58が作動し、給紙された記録紙Pにトナーと反対極性の帯電を与えてトナーを転写する。
次いで記録紙Pは分離電極(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写電極58及び分離電極59は記録紙Pの通過後、一次作動を中止し、次なるトナー像の形成に備える。図3では転写電極58にコロトロンの転写帯電極を用いている。転写電極の設定条件としては、感光体のプロセススピード(周速)等により異なり一概に規定することはできないが、例えば、転写電流としては+100〜+400μA、転写電圧としては+500〜+2000Vを設定値とすることができる。
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器(クリーニング手段)62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び帯電前露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
本発明の電子写真感光体は電子写真複写機、レーザプリンター、LEDプリンター及び液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適応するが、更に、電子写真技術を応用したディスプレー、記録、軽印刷、製版及びファクシミリ等の装置にも幅広く適用することができる。