JP4450911B2 - μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光導電性材料に有用な新規なμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(μ−オキソ−アルミニウム及びガリウムフタロシアニンの二量体)に関し、特に、このμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体を含む新規な結晶変態を有する混晶、その製造法、及びそれらを電荷発生材料として用いた電子写真感光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真技術を応用した複写機やプリンター等の画像形成装置においては、当該装置の光源の波長領域に感度を有する有機感光体が多く使用されている。有機感光体としては、適当な結着樹脂からなる薄膜中に電荷発生材と電荷輸送材とを分散した単層型の感光層を備えた単層感光体や、上記電荷発生材を含有する電荷発生層と電荷輸送材を含む電荷輸送層とを積層した積層型感光体が知られている。
【0003】
電荷発生材料としては、半導体レーザーの発信波長域である800nm前後に感度を有する有機光導電性物質が注目されている。このような有機光導電性物質を有効成分とする有機感光体(OPC)は多数提案されており、例えば、チタニルフタロシアニン系化合物を電荷発生材料として用いた有機感光体が実用化されている。この種の有機感光体には、複写機やプリンターのデジタル化、高速化に伴い高感度、高安定性、及び耐久性が強く要求される。
【0004】
フタロシアニン化合物は、その誘導体の骨格構造に由来する多くの結晶多形を有し、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニンの中心金属種などにより様々な電気特性を有し、製造方法、処理方法の違いによって、或いは同じ構造のフタロシアニンであってもスタッキング状態の違いによって、電気特性が大きく変化することはよく知られている。特に、有機化合物のスタッキング状態は、化合物の結晶変態で決まるので、結晶変態は電子状態、とりわけΠ電子系の摂動を変え、有機感光材等の電子材料としての特性を有効に変える要因となる。このために新規な結晶変態の探索がなされている。
【0005】
また、最近では、発光ダイオード(LED)の普及等による光源の短波長化やカラーレーザービームプリンター(LBP)用OPC等に適した新たな性能が付与された中−高感度を有する高性能電荷発生材料の探索も精力的に行われている。
【0006】
ヒドロキシアルミニウムフタロシアニンやヒドロキシガリウムフタロシアニンについても、種々の結晶変態が研究され、電子写真感光体への適用が提案されている。例えば、特開平5−93150号には、特定の結晶型を有するヒドロキシアルミニウムフタロシアニン、同6−214415号にはヒドロキシメタルフタロシアニンが提案されている。また、特開昭60−501760号には、緑色吸収を減少せしめた特定のXRDブラッグ角を有するヒドロキシアルミニウムフタロシアニンが記載されている。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの新規な結晶変態に関しては、特開平5−249716号、同5−263007号、同5−279591号、同7−53892号、同10−67946号等に記載がある。
【0007】
さらに、[日本化学会誌(化学と工業化学)1997年、No.12、第887〜898頁、YAMASAKI Yasuhiroら]には、金属フタロシアニンの結晶変態の配列や短波長化に関し、電荷発生材料(CG材)としてのμ−オキソ−金属(Al、Ga、In)フタロシアニン二量体が報告されている。また、特開平4−362653号、同4−184452号には、μ−オキソ−金属(III、IV)フタロシアニン誘導体等を用いた電子写真感光体や塗布液が記載されている。特開平9−217020号には特定の結晶変態を有する、μ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体、同10−88023号にはμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体が記載されている。また、特開平7−295259号には、アルコキシ橋かけ金属フタロシアニン二量体が記載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術で述べたような観点から、特に、今後期待される高感度のみではなく、低乃至中乃至高感度、低波長分光感度に特徴を有するμ−オキソ−金属(III)フタロシアニン二量体に関し、光感度や電気特性にさらなる多様性をもたせた新規なμ−オキソ−異種金属(Al/Ga)フタロシアニン二量体を提供することを目的とする。また、本発明は、μ−オキソ−金属フタロシアニン二量体からなる混晶の製造法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、下記式で表されるμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)を提供するものであり、そのことにより上記の目的を達成できる。
【0010】
【化3】
【0011】
また、本発明は、上記μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)を含み、且つ、下記式で表されるμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体(B)又はμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体(C)のいづれか一方または両方を含んでなる混晶を提供するものであり、そのことにより上記の目的を達成できる。
【0012】
【化4】
【0013】
すなわち、本発明は、CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の6.6゜、15.2゜、22.5゜、23.0゜及び24.0゜に回折ピークを示す結晶変態を有する混晶(以下、「I型混晶」又は単に「I型」と言う。)[XRDスペクトル:図3]、及び、
【0014】
CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の6.9゜、15.5 ゜、13.3゜及び24.1゜に回折ピークを示す結晶変態を有する混晶(以下、「アモルホス型混晶」又は単に「アモルホス型」と言う。)[XRDスペクトル:図4]、及び、
【0015】
CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の6.8゜、9.7゜、15.4゜及び23.9゜に回折ピークを示す結晶変態を有する混晶(以下、「II型混晶」又は単に「II型」と言う。)[XRDスペクトル:図5]、及び、
【0016】
CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の6.7゜、7.3゜、9.8゜、15.3゜、25.0゜及び28.2゜に回折ピークを示す結晶変態を有する混晶(以下、「III型混晶」又は単に「III型」と言う。)[XRDスペクトル:図6]、及び、
【0017】
CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の6.4゜、6.7゜、9.8゜及び23.5゜に回折ピークを示す結晶変態を有する混晶(以下、「IV型混晶」又は単に「IV型」と言う。)[XRDスペクトル:図7]を提供するものであり、そのことにより上記の目的を達成できる。
【0018】
また、本発明は、μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)、及び(A)を含み、且つ、μ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体(B)又はμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体(C)のいづれか一方または両方を含んでなる混晶の製造方法を提供するものであり、そのことにより本発明の目的を達成できる。
【0019】
更に、本発明は、上記のμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)を含んでなる混晶からなる電子写真感光体用電荷発生材料(CG材)提供し、この電子写真感光体用電荷発生材料を含有する電子写真感光体を提供する。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)は、新規な化合物である。μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)及びμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体(B)及び/又はμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体(C)を含んでなる本発明の混晶もしくは電荷発生材料は、以下に説明する方法により得られる。しかし、本発明の混晶はこの方法で得られるものに限定されない。
【0021】
まず、クロロガリウムフタロシアニンとクロロアルミニウムフタロシアニンを得る。
【0022】
クロロガリウムフタロシアニンを得る方法は公知である。一般に、1-クロロナフタレン及びキノリンのような高沸点有機溶媒中、フタロニトリルもしくは1,3-ジイミノイソインドリンを塩化ガリウムと共に反応させる。反応物の精製は、熱時濾過後、熱DMFおよびDMFにより洗浄して得る。
【0023】
クロロアルミニウムフタロシアニンを得る方法は公知である。一般に、1-クロロナフタレン及びキノリンのような高沸点有機溶媒中、フタロニトリルもしくは1,3-ジイミノイソインドリンを塩化アルミニウムと共に反応させる。反応物の精製は、熱時濾過後、熱トルエン、アセトンにより洗浄して得る。
【0024】
次に、上記のようにして得られたクロロガリウムフタロシアニンとクロロアルミニウムフタロシアニンのを混合し、混合物を濃硫酸を用いてアシッドペースティングする。得られたウエットケーキを充分に水洗した後、これを水及び25%アンモニア溶液に加えて酸根を除去する。濾取したケーキを水及びイオン交換水で充分に洗浄し、乾燥する。
【0025】
次いで、得られた青色固体(ヒドロキシ金属フタロシアニンとμ−オキソ−金属フタロシアニン二量体の混合物)をo-ジクロロベンゼンのような水不混和性溶媒に加え、還流攪拌して、生成する水を留去する。熱時濾過して、熱DMF、DMF、メタノール、IEW(イオン交換水)を用いて順次振りかけ洗浄し、乾燥する。
【0026】
生成物の結晶は、μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)とμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体(B)とμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体(C)とからなる混晶と考えられる。図2に示す質量分析の結果もこのことを示している。
【0027】
クロロガリウムフタロシアニンとクロロアルミニウムフタロシアニンの混合比は任意であってよく、1:9〜9:1の範囲、好ましくは4:5〜5:4の範囲で実施できる。本発明の(A)の生成量を最も多くするための好ましい混合比は、モル比で1:1である。
【0028】
本発明の上記方法で得られる混晶は、単に、(A)と(B)と(C)とが配合されたもではなく、アシッドペースティングする前のクロロガリウムフタロシアニンとクロロアルミニウムフタロシアニンの混合比(配合比)により生成比率が異なるものである。この際の混晶としては、(A)と(B)と(C)からなるもの、(A)と(B)とからなるもの、(A)と(C)とからなるもの等がある。
【0029】
混晶中、μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)の含有量はμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体(B)の含有量、又はμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体(C)の含有量より大であることが好ましい。
【0030】
なお、μ−オキソ二量体、例えば本発明の前記混晶に含まれるμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体(C)は、一般には次のスキームに示すようにして得られる。
【0031】
【化5】
【0032】
まず、クロロガリウムフタロシアニン(Cl-GaPc)を加水分解することによりヒドロキシガリウムフタロシアニン(HO-GaPc)を得る(具体的な操作は公知である。)。
【0033】
例えば、クロロガリウムフタロシアニンを酸性もしくはアルカリ性溶液中で加水分解するか、濃硫酸によりアシッドペースティングを行うことにより、ヒドロキシガリウムフタロシアニンを得る。これらの方法は、例えば、特開平1−221459号公報及び特開平5−279591号公報に記載されている。
【0034】
濃硫酸を用いるアシッドペースティングとは、顔料を濃硫酸、好ましくは濃度95%以上の硫酸に溶解し、溶解物を氷水中に投入して、顔料を微細化及び精製する操作をいう。
【0035】
次に、得られたヒドロキシガリウムフタロシアニンを水不混和性の高沸点有機溶媒中で加熱脱水することにより、μ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体(PcGa-O-GaPc)を得ることができる。例えば、o-ジクロロベンゼンのような溶媒中、還流撹拌して、生成する水を反応系内から除去し、反応生成物を濾取し、DMFで洗浄し、DMFをメタノール等で置換後、乾燥、粉砕する。
【0036】
前記本発明の方法によれば、濃硫酸によるアシッドペースティングの際、加水分解と一部二量化が進行する。さらに水不混和性の高沸点有機溶媒中で加熱脱水することにより、実質上、μ−オキソ−二量体のみからなる本発明の(I型)混晶(結晶変態)が得られる。I型混晶の特異な結晶変態は新規である。[XRDスペクトル:図3]。
【0037】
上記のI型混晶を乾式粉砕することにより、アモルホス型混晶が得られる。アモルホス型混晶の特異な結晶変態は新規である。[XRDスペクトル:図4]。
【0038】
本発明において、「乾式粉砕」とは、溶媒を用いないで粉砕する操作をいう。「粉砕」とは、固体に機械的な力を加えて細分化することをいう。粉砕は、一般にペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、アトライターおよび自動乳鉢のような粉砕装置を用いて行う。必要に応じてガラスビーズ、スチールビーズ、ジルコニアビーズおよびアルミナビーズのような粉砕媒体を用いうる。
【0039】
乾式粉砕は、I型の顕著なXRD回折パターンがなくなり、結晶変態の変化が進行しなくなるまで行う。一般に、室温で20〜100時間、好ましくは48〜72時間行われる。乾式粉砕工程が20時間を下回ると結晶変態の形成が不十分となり、100時間を上回って行っても一般に有意な効果が得られない。
【0040】
例えば、試験用分散器(所謂ペイントシェーカー)を用い、試料7gに5mmφガラスビーズ80gを充填するような場合は、48〜72時間乾式粉砕を行う。
【0041】
本発明の前記μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)を含んでなるI型混晶及び他の混晶(II型、III型、IV型)の新規な結晶変態は、上記の方法で得られたアモルホス型混晶を、所定の溶媒中で、湿式粉砕、又は加熱もしくは室温下で単純分散して得られる。
【0042】
本発明において、「湿式粉砕」とは、溶媒の存在下に粉砕する操作をいう。一般に上記「乾式粉砕」と同様な粉砕装置を用いて行う。必要に応じてガラスビーズ、スチールビーズ、ジルコニアビーズおよびアルミナビーズのような粉砕媒体を用いうる。「単純分散」とは、粉体を溶媒の存在下に撹拌して溶媒中に細粒として浮遊させることをいう。
【0043】
湿式粉砕もしくは単純分散で用いる溶媒は、μ−オキソ−金属フタロシアニン二量体を溶解しないものである。所望の結晶変態に応じて、ケトン系、アルコール系、エーテル系、(ホルム)アミド系、芳香族系、グリコール系、ピロリドン系及び酢酸エステル系から選ばれる。
【0044】
ケトン系溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン(MEK)及びメチルイソブチルケトン(MIBK)等;アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールのような低級アルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール及びオクチルアルコールのような一価のアルコール;グリコール系溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びプロピレングリコールのようなアルキレングリコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルのようなアルキレングリコールモノアルキルエーテル(セロソルブ類);モノグライム、ジグライム、トリグライム及びテトラグライムのようなエチレングリコールジアルキルエーテル;(ホルム)アミド系溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドン等;エーテル系溶媒としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、エチルエーテル及びブチルエーテルのような鎖状または環状のエーテル系溶媒;酢酸エステル系溶媒としては、酢酸エチル及び酢酸ブチル等;芳香族系溶媒としては、トルエン、o-キシレン及びテトラリンのような炭化水素系溶媒、o-ジクロロベンゼン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン及びキノリンのような高沸点の芳香族炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
【0045】
本発明のI型混晶を製造する際に用いる溶媒としては、o-ジクロロベンゼン、クロロナフタレン、ブロモナフタレン、キノリンのような高沸点の芳香族炭化水素系溶媒、好ましくは1−クロロナフタレンが挙げられる。
【0046】
本発明のII型混晶を製造する際に用いる溶媒としては、ケトン系溶媒、好ましくはシクロヘキサノン等の環状ケトン、特にシクロヘキサノンが挙げられる。
【0047】
本発明のIII型混晶を製造する際に用いる溶媒としては、DMF、ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドン、特に好ましくはDMFのようなアミド系溶媒、もしくは、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、エチルエーテル及びブチルエーテルのような環状または鎖状のエーテル系溶媒、特にTHFが挙げられる。
【0048】
本発明のIV型混晶を製造する際に用いる溶媒としては、炭素数5以上のアルコール系溶媒、好ましくはアミルアルコール、ヘキシルアルコール及びオクチルアルコールのような一価のアルコール、特に2−ヘキサノールが挙げられる。
【0049】
本発明のI型、II型、III型、及びIV型以外の他の結晶変態を製造する際に用いる溶媒としては、グリコール系溶媒、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、特にエチレングリコールが挙げられる。
【0050】
本発明のI型、II型、III型、及びIV型以外の他の結晶変態を製造する際に用いる溶媒としては、(ポリ)エチレングリコールジアルキルエーテル系溶媒、好ましくはジグライム、トリグライム、テトラグライム、特にジグライムが挙げられる。
【0051】
本発明のI型、II型、III型、及びIV型以外の他の結晶変態を製造する際に用いる溶媒としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶媒、好ましくはエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、特にメチルセロソルブが挙げられる。
【0052】
本発明のI型、II型、III型、及びIV型以外の他の結晶変態を製造する際に用いる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールのような低級アルコールが挙げられる。
【0053】
湿式粉砕は、上述の特定の溶媒を用いて結晶変態の変化が進行しなくなるまで行う。一般には、室温〜溶媒の沸点以下の温度で5〜50時間、好ましくは10〜20時間行われる。湿式粉砕工程が5時間を下回ると結晶変態の形成が不十分となり、50時間を上回って行っても一般に有意な効果が得られない。
【0054】
単純分散は、上述の特定の溶媒を用いて結晶変態の変化が進行しなくなるまで行う。一般には、室温〜溶媒の還流温度で5〜50時間、好ましくは10〜20時間行われる。単純分散工程が5時間を下回ると結晶変態の形成が不十分となり、50時間を上回って行っても一般に有意な効果が得られない。
【0055】
例えば、用いる溶媒が1−クロロナフタレンの場合、アモルホス型混晶を還流下、約15〜30時間単純分散させることによりI型混晶が得られる。用いる溶媒がシクロヘキサノンの場合、アモルホス型混晶を約30〜40時間湿式粉砕させることによりII型混晶が得られる。用いる溶媒がDMFの場合、アモルホス型混晶を室温で10〜12時間、単純分散させることによりIII型混晶が得られる。用いる溶媒がTHFの場合、アモルホス型混晶を還流下、約15〜30時間単純分散させることによりIII型混晶が得られる。用いる溶媒が1−ヘキサノールの場合、アモルホス型混晶を還流下、約10時間単純分散させることによりIV型混晶が得られる。
【0056】
本発明の新規なμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体、及びそれを含んでなる新規な結晶変態を有する混晶(I型、II型、III型、及びIV型)は、電子写真技術を応用した複写機などに広く適用されている電子写真感光体のような光導電性材料として有用である。また、本発明のμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体または混晶を電荷発生材料(CG材)として含有する光導電材料は、電子写真感光体の電荷発生層に適用された場合に、帯電性が良好で、低乃至中、高感度、高耐久性(感度耐久性、電位耐久性)の感光体を提供する。
【0057】
次に、本発明の電荷発生材料(CG材)を用いる光導電材料の適用例について説明する。
【0058】
μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)、またはそれを含む混晶(以下、「μ−O−Al/GaPc二量体」と言う。)のような有機光導電材料(OPC)の少なくとも1種及び樹脂を備えてなる電子写真有機感光体は、感光層が電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)とに分離した積層型のものであってもよく、単層型のものであってもよい。しかし、μ−O−Al/GaPc二量体の結晶変態の電気特性及び光感光特性を有効に発揮させるためには、発生した電荷が捕獲される可能性が小さく、各層がそれぞれの機能を阻害することなく効率よく感光体表面に輸送される二層構造の機能分離型感光体に適用することが好ましい。
【0059】
このような機能分離型感光体は、例えば、導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層とを薄膜状に積層して形成される。導電性支持体の基材としては、アルミニウム、ニッケル等の金属、金属蒸着フィルム等用いることができ、ドラム状、シート状又はベルト状の形態で作製される。
【0060】
電子写真用有機感光体への適用は、まず本発明のμ−O−Al/GaPc二量体を電荷発生材料(CG材)として含む電荷発生層を導電性支持体上に薄膜状に形成する。この際の電荷発生層は、μ−O−Al/GaPc二量体を導電性支持体上に蒸着させ薄膜を形成することもできるが、一般には、結着樹脂を溶媒に溶解した溶液に電荷発生材料を分散させた塗布液を調製して、それを支持体上に塗布することによって形成する。
【0061】
μ−O−Al/GaPc二量体(CG材)を分散させる方法としては、ボールミル、サンドミル、ペイントシェイカー等用いる通常の分散法を採用することができる。
【0062】
電荷発生層の塗工手段としては、特に限定されることはなく、例えば、バーコーター、ディップコーター、スピンコーター、ローラーコーター等を適宜使用することができる。乾燥は、30〜200℃の温度で5分〜2時間、静止又は送風下で行うことができる。
【0063】
塗布液用の溶媒としては、μ−O−Al/GaPc二量体を溶解することなく、均一に分散させ、必要に応じて用いられる結着樹脂を溶解するものであれば特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;トルエン、キシレン、テトラリンのような芳香族系溶媒;ジクロルメタン、クロロホルム、トリクロルエチレン、四塩化炭素のようなハロゲン系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピルのようなエステル系溶媒;エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0064】
結着樹脂は、広範な絶縁性樹脂から選択することができる。好ましい樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアリレート等の縮合系樹脂;ポリスチレン、ポリアクリレート、スチレン-アクリル共重合体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル-ブタジエン共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等の付加重合体;ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン等の有機光導電性樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。これらは適宜混合して用いることができる。
【0065】
上記結着樹脂の使用量は、電荷発生材料に対して、0.1〜3重量比であり、3重量比よりも大であると、電荷発生層における電荷発生材料濃度が小さくなり光感度が悪くなる。電荷発生層の膜厚は、0.05〜5.0μmであり、一般に10μm以下である。
【0066】
次に電荷発生層の上部に、電荷輸送材料を含む電荷輸送層を薄膜状に形成する。この薄膜形成法としては、電荷発生層と同様な塗工法が用いられ、電荷輸送材料を、必要に応じて結着樹脂と共に溶媒に溶解し、電荷発生層の上部に均一に塗布し、その後乾燥させればよい。
【0067】
電荷輸送材料(CT材)としては、公知の、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、ヒドラジン誘導体、トリアジン誘導体、キナゾリン誘導体、トリアリールアミン系化合物、スチリル系化合物、スチリルトリフェニールアミン系化合物、ブタジエン系化合物、カルバゾール系化合物、さらに、ベンゾフラン誘導体(化合物)などが挙げられる。
【0068】
本発明では、富士写真フィルム社より商品名「CT−501」及び「CT−504」としてそれぞれ市販されている下記構造のCT材を用いて感光体を作成し、OPC特性を検討した。
【0069】
【化6】
【0070】
【化7】
【0071】
電荷輸送層を形成する結着樹脂及び溶媒としては、前記電荷発生層に使用されるものと同様なものが使用できる。
【0072】
上記結着樹脂の使用量は、電荷輸送材料に対して、0.1〜5重量比であり、5重量比よりも大であると、電荷輸送層における電荷輸送材料濃度が小さくなり光感度が悪くなる。電荷発生層の膜厚は、5〜100μmであり、好ましくは5〜50μmに形成する。
【0073】
なお、上記電荷発生層、電荷輸送層、或いは表面保護層には、従来公知の増感剤;アミン系、フェノール系の酸化防止剤、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤などの劣化防止剤;等の種々の添加剤を含有させることができる。
【0074】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、本発明のCuKα線によるX線回折スペクトルは、マックスサイエンス社製の自動X線回折システム「MXP3」を用いて測定した。
【0075】
合成例1
クロロガリウムフタロシアニンの合成
撹拌器、塩化カルシウム管などの必要器具を備えた2000mlのガラス製4口フラスコにフタロニトリル145.5g(1.13mol)と1-クロロナフタレン680ml及び塩化ガリウム(III)50.0g(0.284mol)を仕込み、加熱した。255℃で12時間還流下撹拌した。その後、還流を停止し、130℃程度まで放冷後熱時濾過して、熱ジメチルホルムアミド(100℃ DMF)2000ml、DMF1000mlを用いて振りかけ洗浄した。得られたケーキをDMF1500mlに再度分散し、3時間撹拌還流した後、110℃で熱時濾過後、熱DMF(110℃)1000ml、DMF1000mlを用いて振りかけ洗浄した。この操作を2度繰り返した後、得られたケーキをメタノール1000ml及び水1000mlで洗浄した後、70℃で乾燥して、クロロガリウムフタロシアニン128.8g(収率73.5%)を得た。この化合物の元素分析結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
合成例2
クロロアルミニウムフタロシアニンの合成
撹拌器、塩化カルシウム管などの必要器具を備えた2000mlのガラス製4口フラスコにフタロニトリル180.0g(1.41mol)と1-クロロナフタレン900ml及び塩化アルミニウム(III)47.0g(0.353mol)を仕込み、加熱した。240℃で6時間還流下撹拌した。その後、還流を停止し、130℃程度まで放冷後熱時濾過して、熱トルエン(100℃ )1800ml、トルエン80ml、アセトン900mlを用いて振りかけ洗浄し、トルエン100mlで置換した。得られたケーキをトルエン750ml中で3時間攪拌還流した後、100℃で熱時濾過後、熱トルエン(100℃)1800ml、トルエン80ml、アセトン900mlで洗浄し、トルエン700mlで置換した。この操作を3度繰り返した。得られたケーキをトルエン750ml中に分散し、3時間撹拌還流した後、100℃で熱時濾過後、熱トルエン(100℃)1800ml、トルエン180ml、アセトン900mlで洗浄し、水400mlで溶媒置換した。得られたケーキを水4500mlに加え、70℃で1時間加熱分散した。熱時濾過後、アセトン900ml、水1000mlで洗浄し、70℃で乾燥してクロロアルミニウムフタロシアニン187.6g(収率92.5%)を得た。この化合物の元素分析結果を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
実施例1
I型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(I型混晶と同意義)の合成(その1)
濃硫酸357gを氷−メタノールで5℃以下に冷却し、温度を保ちながら合成例1で得たクロロガリウムフタロシアニン6.17g(0.01mol)と、合成例2で得たクロロアルミニウムタロシアニン5.75g(0.01mol)の混合物を加え、5℃以下で2時間攪拌した。これを氷1400g/水600mlに、温度が10℃を越えないように撹拌しながら注加し、注加終了後さらに1時間分散した。静置後、上澄みを除去し、濾過した。水2000mlで洗浄した後、ケーキを水1800ml中で分散して、吸引濾過した。ケーキを水800mlで水洗した。水洗ケーキを温水550ml及び25%アンモニア水66mlに加え、還流下で6時間分散した。濾過後、ケーキを湯(60℃)600ml、イオン交換水(IEW)1650mlで洗浄した。濾液のpHと電導度がイオン交換水レベルとなったところで、70℃で乾燥し、10.5g(収率89.8%)の青色固体を得た。
【0080】
次いで、得られた青色固体9.0gとo-ジクロロベンゼン150mlを300mlのフラスコに仕込み、170〜180℃で撹拌した。生成してくる水を除去しながら10時間還流攪拌した。130℃で熱時濾過後、熱DMF(110℃)225ml、DMF45ml、メタノール90ml、IEW225mlで順次振りかけ洗浄した後、得られたケーキを70℃で乾燥し、目的のμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体を含む結晶変態を、(I型)混晶として8.4g(収率95%)得た。元素分析結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
このもののIR分析結果を図1に示す。また、FD−MS分析したところ、図2に示すように、本発明のμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)が確認されると共に、このものは、μ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体(B)及びμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体(C)を含む混晶であることがわかった。
【0083】
なお、FD-MS(電界脱離イオン化法による質量分析)の測定は、下記の条件で測定した。
【0084】
(1)測定法
【0085】
【表4】
【0086】
(2)測定結果:図2
図中、横軸はM/Z[質量/電荷]、縦軸はRelative Abundance[存在比]を示す。M/Z=1137[M+H]+に、μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体のイオンピークとμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体(M/Z:1095[M+H]+)及びμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体(M/Z:1180[M+H]+)のイオンピークが確認される。
【0087】
また、この混晶のXRDスペクトル(X線回折パターン)を図3に示す。スペクトルは、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の6.6 、15.2 、22.5 、23.0 及び24.0に回折ピークを示す本発明のI型混晶であることが確認された。
【0088】
実施例2
アモルホス型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(アモルホス型混晶と同意義)の合成
140mlのマヨネーズ瓶に、実施例1で得たI型混晶7.0gと5mmφガラスビーズ80gを仕込み、試験用分散器(ペイントシェーカー)を用いて、XRDにおいてI型の顕著な回折パターンがなくなり、変化が認められなくなるまで乾式粉砕を行った。結晶変態の変化が止まったところで、ふるいを用いてガラスビーズを分離し、6.9gの青色固体(アモルホス型混晶)を得た。
【0089】
このアモルホス型混晶のX線回析スペクトルを図4に示す。また、XRDブラッグ角を表5に示す。
【0090】
実施例3
II型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(II型混晶と同意義)の合成
実施例2で得たアモルホス型混晶1.0gとシクロヘキサノン30ml及び3mmφガラスビーズ48gを100ml容フラスコに仕込み、結晶成長が見られなくなるまで還流下、加熱攪拌した。130℃で熱時濾過し、ビーズを除去し、シクロヘキサノン100ml、メタノール100mlを用いて振りかけ洗浄した。減圧下、50℃で乾燥して、0.57gの青色固体(II型混晶)を得た。
【0091】
このII型混晶のXRDスペクトルを図5に示す。また、XRDブラッグ角を表5に示す。
【0092】
実施例4
III型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(III型混晶と同意義晶)の合成(その1)
実施例2で得たアモルホス型混晶1.0gとDMF30mlを100ml容フラスコに仕込み、室温分散した。XRDスペクトルに変化が見られなくなるまで22時間室温分散した後、DMF100ml、メタノール100mlを用いて振りかけ洗浄し、減圧下、50℃で乾燥して、0.89gの青色固体(III型混晶)を得た。
【0093】
このIII型混晶のXRDスペクトルを図6に示す。また、XRDブラッグ角を表5に示す。
【0094】
実施例5
III型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(III型混晶と同意義)の合成(その2)
実施例2で得たアモルホス型混晶1.0gとTHF30mlを100ml容フラスコに仕込み、XRDスペクトルに変化が見られなくなるまで加熱攪拌した。濾取したケーキをTHF100ml、メタノール100mlを用いて振りかけ洗浄し、減圧下、50℃で乾燥して、0.86gの青色固体(III型混晶)を得た。
【0095】
この混晶のXRDスペクトルは、実施例4で得たものと全く同じ(図6)であった。
【0096】
実施例6
I型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(I型混晶と同意義)の合成(その2)
実施例2で得たアモルホス型混晶1.0gと1−クロロナフタレン30mlを100ml容フラスコに仕込み、XRDスペクトルに変化が見られなくなるまで加熱攪拌した。濾取したケーキを1−クロロナフタレン100ml、メタノール100mlを用いて振りかけ洗浄し、減圧下、50℃で乾燥して、0.61gの青色固体(I型混晶)を得た。
【0097】
この混晶のXRDスペクトルは、実施例1で得たものと全く同じ(図3)であった。
【0098】
実施例7
IV型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(IV型混晶と同意義)の合成
実施例2で得たアモルホス型混晶1.0gと1−ヘキサノール30mlを100ml容フラスコに仕込み、XRDスペクトルに変化が見られなくなるまで加熱攪拌した。濾取したケーキを1−ヘキサノール100ml、メタノール100mlを用いて振りかけ洗浄し、減圧下、50℃で乾燥して、0.68gの青色固体(IV型混晶)を得た。
【0099】
このIV型混晶のXRDスペクトルを図7に示す。また、XRDブラッグ角を表5に示す。
【0100】
実施例1及び実施例2〜7の方法で合成した本発明のμ−オキソ−金属フタロシアニン二量体の混晶のXRDスペクトルにおけるブラッグ角(2θ±0.2゜)を表5に示す。
【0101】
【表5】
【0102】
実施例8〜14
これらの実施例では、本発明の新規な結晶変態を有するμ−オキソ−金属フタロシアニン二量体(混晶)を、CG材として積層型電子写真感光体に適用した例を説明する。
【0103】
実施例8
実施例2で得られたアモルホス型結晶変態を有するμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(アモルホス型混晶)0.2g、ポリビニルブチラール樹脂[積水化学社製のエレックスBH-3]0.2g、シクロヘキサノン59.6g及び3mmφガラスビーズ50gを広口瓶に入れ、ペイントシェーカーで1時間撹拌後、これをアルミニウム板上に膜厚が0.5μmになるようバーコーターを用いて製膜し、風乾させて電荷発生層(CGL)を形成した。次に、電荷輸送材(CT材)として、b:N-[p-(ジエチルアミノ)ベンジリデン]-N'-(3-メチル-2-ベンゾチアゾリデン)ヒドラジン[富士写真フィルム社製のCT−504]、又はa:p-(N,N'-ジフェニルアミノ)ベンズアルデヒド-N'-メチル-N'-フェニルヒドラゾン[富士写真フィルム社製のCT−501]4.5g、ポリカーボネート樹脂[帝人社製のパンライトL−1250]4.5g及び塩化メチレン51.0gを広口瓶に入れ、超音波分散により均一な溶液を調製した。これを電荷発生層の上に、バーコーターを用いて塗布し、室温で乾燥して、膜厚60μmの電荷輸送層(CTL)を形成した積層型電子写真感光体(片)を作製した。
【0104】
実施例9〜14
CG材(アモルホス型結晶変態)を、実施例3〜7で得られたそれぞれの結晶変態を有する混晶(実施例3のII型、実施例4のIII型、実施例5のIII型、実施例6のI型、実施例7のIV型)に代えた他は、実施例8と同様にして感光体片を作成し、OPC特性を評価した。結果を表6に示す。
【0105】
比較例1
実施例8〜14で用いたCG材としての本発明のμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(アモルホス型、I型、II型、III型、IV型)の代りに、特開平9−217020号公報記載のμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体を用いた以外は、実施例8と同様にして感光体片を作製し評価した。結果を表6に示す。
【0106】
比較例2
実施例8〜14で用いたCG材としての本発明のμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(アモルホス型、I型、II型、III型、IV型)の代りに、特開平10−88023号公報記載のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体を用いた以外は、実施例8と同様にして感光体片を作製し評価した。結果を表6に示す。
【0107】
比較例3
実施例8〜14で用いたCG材としての本発明のμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(アモルホス型、I型、II型、III型、IV型)の代りに、特開平7−207184号公報記載のχ型無金属フタロシアニンを用いた以外は、実施例8と同様にして感光体片を作製し評価した。結果を表6に示す。
【0108】
感光体特性評価
上記実施例8〜14及び比較例1〜3において作製した感光体片につき、電子写真特性(OPC特性)の測定を行った。測定は、静電気帯電試験装置ペーパーアナライザーEPA−8200[川口電気社製]を用い、まず、−8.0kVでSTAT3モードで帯電し、2.0秒間暗所放置後、5.0lxの白色光を10.0秒間照射して、帯電電位(Vmax)、暗減衰率(%)、残留電位(Vre)、半減露光量(感度)(E1/2)について測定し評価した。以上の測定結果を表6にまとめた。
【0109】
【表6】
【0110】
a:富士写真フィルム社製のCT−501
b:富士写真フィルム社製のCT−504
c:高砂香料社製のCTC−191(化学名:4−ベンジルアミノ−2−メチルベンズアルデヒド−1,1'−ジフェニルヒドラゾン)
−:測定不能
【0111】
暗減衰率の測定は、帯電直後の表面電位(V0=Vmax)及び2.0秒間放置後の表面電位(V2)を測定し、次の式より暗減衰率(%)を求めた。
【0112】
暗減衰率(%)=100×(V0−V2)/V0
【0113】
分光感度の測定は、バンドパス干渉フィルターを用いて450〜900nmの間において50nm(及び25nm)間隔で照射光の波長を変化させること以外は上述の感光体特性評価と同様にして、電子写真感光体片を帯電させた。露光エネルギーは1.00μWとした。それぞれの波長における初期帯電量(Vmax(V))及び半減露光感度(E1/2(μJ/cm2))を測定した。結果を図8に示す。
【0114】
また、耐久性試験については、静電気帯電試験装置EPA−8200を耐久性測定モードとし、感光体特性評価と同様の条件で、電子写真感光体片を帯電させた。耐久性測定モードでは、帯電する操作を約100回繰り返した。そして、それに伴う帯電電位(Vmax)、半減露光量感度(E1/2)の変化を測定した。結果を図9及び図10に示す。
【0115】
【発明の効果】
本発明のμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体、及びそれを含んでなる混晶は、電子写真感光体の電荷発生材料として有用であり、安定で、耐久性に優れた低乃至中感度のOPC特性を示した。
【0116】
また、X型無金属フタロシアニンについて同じ条件で評価した結果と比較すると、本発明の混晶、特にIII型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(III型混晶)は、感度耐久性、電位耐久性に優れ、感光体の電荷発生材料として実用し得ることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得られたI型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(I型混晶)のIRスペクトルである。
【図2】 実施例1〜7で得られた本発明のμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(アモルホス型、I型、II型、III型、及びIV型混晶)のFD−MSスペクトルである。
【図3】 実施例1、6で得られたI型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(I型混晶)のX線回折スペクトルである。
【図4】 実施例2で得られたアモルホス型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(アモルホス型混晶)のX線回折スペクトルである。
【図5】 実施例3で得られたII型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(II型混晶)のX線回折スペクトルである。
【図6】 実施例4、5で得られたIII型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(III型混晶)のX線回折スペクトルである。
【図7】 実施例7で得られたIV型μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(IV型混晶)のX線回折スペクトルである。
【図8】 本発明の感光体の分光感度を示すグラフである。
【図9】 本発明の感光体の感度耐久性を示すグラフである。
【図10】 本発明の感光体の電位耐久性を示すグラフである。
Claims (16)
- CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の6.6゜、15.2゜、22.5゜、23.0゜及び24.0゜に回折ピークを示す結晶変態を有する請求項2記載の混晶[I型混晶]。
- CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の6.8゜、9.7゜、15.4゜及び23.9゜に回折ピークを示す結晶変態を有する請求項2記載の混晶[II型混晶]。
- CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の6.7゜、7.3゜、9.8゜、15.3゜、25.0゜及び28.2゜に回折ピークを示す結晶変態を有する請求項2記載の混晶[III型混晶]。
- CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の6.4゜、6.7 ゜、9.8゜及び23.5゜に回折ピークを示す結晶変態を有する請求項2記載の混晶[IV型混晶]。
- CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2゜)の6.9゜、15.5 ゜、13.3゜及び24.1゜に回折ピークを示す結晶変態を有する請求項2記載の混晶[アモルホス型混晶]。
- 前記μ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)の含有量がμ−オキソ−アルミニウムフタロシアニン二量体(B)の含有量、又はμ−オキソ−ガリウムフタロシアニン二量体(C)の含有量より大である請求項2記載の混晶。
- 請求項2〜8のいずれか記載の混晶からなる電子写真感光体用電荷発生材料。
- クロロアルミニウムフタロシアニン及びクロロガリウムフタロシアニンを得る工程、得られたクロロアルミニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンとの混合物を濃硫酸を用いてアシッドペースティングする工程、及び水不混和性有機溶媒中で加熱脱水する工程、を包含するμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)を含んでなる混晶の製造方法。
- クロロアルミニウムフタロシアニンとクロロガリウムフタロシアニンの混合物の混合比が、モル比で1:1である請求項10記載の方法。
- 請求項11記載の方法で得られた混晶を、乾式粉砕する工程を包含する請求項8記載のアモルホス型混晶の製造方法。
- 請求項12記載の方法で得られたアモルホス型混晶を、クロロナフタレン中、単純分散もしくは湿式粉砕する工程を包含する請求項3記載のI型混晶の製造方法。
- 請求項12記載の方法で得られたアモルホス型混晶を、有機溶媒中、単純分散もしくは湿式粉砕する工程を包含する請求項4〜6いずれか記載の混晶[II型、III型、又はIV型]の製造方法。
- 請求項1記載のμ−オキソ−アルミニウム/ガリウムフタロシアニン二量体(A)を含有する電子写真感光体。
- 請求項9記載の電荷発生材料を含有する電子写真感光体。
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