JP4007791B2 - 新規結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー及びそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents

新規結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー及びそれを用いた電子写真感光体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な結晶型を有するμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー、及びこのμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーを感光層に含有する電子写真感光体に関する。本発明に係るμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーを用いた電子写真感光体は、プリンター、ファクシミリ、複写機などに用いるのに好適である。
【0002】
【従来の技術】
近年、従来の白色光の代わりにレーザー光を光源とし、高速化、高画質、ノンインパクト化を利点としたレーザープリンターが広く普及しようとしている。
レーザープリンターの主流をなすのは、近年進展が著しい半導体レーザーを光源とするものであり、従ってその光源波長である780nm前後の長波長光に対して高感度な特性を有する感光体が強く望まれている。このような状況で、感光材料として最も有望視されているものの一つはフタロシアニン化合物である。何故ならば、フタロシアニン化合物は、比較的容易に合成でき、600nm以上の長波長域に吸収ピークを有しており、かつ中心金属や結晶形により分光感度が変化するからである。そして半導体レーザーの波長域で高感度を示すものも知られている。
【0003】
今迄にもチタンオキシフタロシアニン、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等を用いた電子写真感光体が報告されている。
一般に、フタロシアニン化合物は、製造方法、処理方法の違いにより、いくつかの結晶型を示し、この結晶型の違いはフタロシアニン化合物の光電変換特性に大きな影響を及ぼすことが知られている。
【0004】
μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー及びそれを用いた電子写真感光体に関しても、特開平10−88023号公報に記載があり、数種の結晶型が報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に電子写真感光体用のフタロシアニンとしては、高感度で帯電性に優れ、しかも高温高湿環境下・低温低湿環境下においても感度の変動が少なく、かつ、繰り返し使用に対して安定なものが望まれるが、上記特許公開公報記載のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーはこれらのすべてを満足できるまでには至っていない。従って本発明は、電子写真感光体に用いた場合に、高感度でしかも環境の影響を受けにくく、繰り返し使用特性も良好な新規結晶型フタロシアニンダイマー及びそれを用いた電子写真感光体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る新規結晶型フタロシアニンダイマーは、Cu−Kα線に対するX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(±0.3°)が下記
(1)6.2°、7.7°、12.5°、18.8°、25.1°
(2)7.0°、14.2°、26.3°
(3)6.2°、9.4°、14.8°、26.3°
のいずれかの位置にピークを示すμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーである。また本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体上にこの新規結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーを含有する感光層を有することを特徴とするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーは、既述した従来公知の結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーとは全く異なる結晶型を有するものであって、Cu−Kα線に対するX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(±0.3°)が下記
(1)6.2°、7.7°、12.5°、18.8°、25.1°
(2)7.0°、14.2°、26.3°
(3)6.2°、9.4°、14.8°、26.3°
のいずれかの位置にピークを有するものである。なお、それぞれの結晶型において、その他の位置にもピークを有することがある。なお、製造条件の微妙な違い、結晶配向性の違い、X線回折スペクトルの測定手法の差異などにより、ピークの強度、位置等は多少変動することがある。
【0008】
本発明に係る結晶型のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーは、従来のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのベンゼン核部分に置換基を導入することにより得ることができる。置換基の導入により、結晶中におけるフタロシアニン分子のスタッキング状態が変わり、本発明に係る新規な結晶型のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーとなると推定される。なお、本発明で規定するX線回折スペクトルを有する結晶は、通常は単一のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーから成っているが、置換基の種類や数などが異なるいくつかのμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーから成るものであっても良い。更にはX線回折スペクトルの規定が満足される限り、他のフタロシアニンが混入していても良い。
【0009】
ベンゼン核部分に導入する置換基としては、アルキル基、低級アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基又はハロゲン原子等が挙げられる。フタロシアニンダイマーには8個のベンゼン核が存在するが、置換基は少なくとも1個のベンゼン核に存在すればよく、また全てのベンゼン核に存在していても良いと考えられる。すなわち本発明に係る新規な結晶型を構成するμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーは、1〜32個の置換基を有し得ると考えられる。通常は各ベンゼン核にそれぞれ1個又は2個の置換基を有するもの、特にすべてのベンゼン核が同一の置換ベンゼン核であるμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーが好ましい。置換基としてはアルキル基又はアルコキシ基であって、かつ置換基の炭素数の合計が32以下のものが好ましい。置換基の合計炭素数が大きすぎると、μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーの有機溶媒への溶解性が高くなり、感光体の製造に際し好ましくないからである。最も好ましいμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーは、8個のベンゼン核のそれぞれに1個又は2個のメチル基を有するμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーである。
なお、本発明においてX線回折スペクトルは、下記条件で測定したものである。
【0010】
【表1】
Figure 0004007791
【0011】
本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーは、対応するフタロニトリルを原料として、従来公知のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー合成法と同様の方法で製造することができる。例えば、特開平10−88023号公報には、クロロガリウムフタロシアニンを合成し、これをヒドロキシ化した後、高温で縮合することによりダイマーを合成する方法が開示されており、この方法に準じて製造することができる。また、2種以上のフタロニトリルを用いることにより、構造の異なるμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーの集合体として製造することもできる。原料のフタロニトリルの合成は、一般的には、対応するフタル酸無水物から合成すればよい。また、本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーは、対応するフタル酸無水物からワイラー法によって合成することもできる。
【0012】
本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーは、公知の顔料化方法を用いて結晶状態を調整することにより、より光導電材料として特性の優れたものとすることができる。例えば、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等のフタロシアニンを溶解する無機酸、又は有機酸に溶解し生成した溶液を、水、アルコール等の貧溶剤に注入して結晶を析出させるアシッドペースティング法やアシッドスラリー法、ボールミル、アトライター、サンドミル、ペイントシェカー等で機械的に摩砕する方法により粒子を微細化し、アモルファスに近い結晶状態とした後、有機溶剤で処理することにより再び結晶を成長させる方法を用いることができる。
本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーが電荷発生材料として優れた効果を発揮する理由は必ずしも明確ではないが、以下のようなことが推定される。
【0013】
本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーは、フタロシアニンのベンゼン核の置換基の影響で、従来のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーよりも分子間の距離が大きく、より緩やかなスタッキング状態の結晶となっており、且つ結晶の凝集状態も異なるものと考えられる。そしてこのことが光導電材料として特性の優れていることに関係しているものと考えられる。
次に、本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーを光導電材料として使用した電子写真感光体について説明する。
【0014】
本発明に係る電子写真感光体は、導電性支持体上に上記の結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーを含有する感光層を有している。感光層は単層型構造からなるものであっても、あるいは電荷発生層及び電荷輸送層からなる積層型構造であっても良い。また、導電性支持体と感光層との間に下引き層を形成しても良く、単層型構造では感光層上に、積層型構造では電荷輸送層上に更に表面保護層を設けていても良い。
【0015】
導電性支持体としては、従来より電子写真感光体に使用し得ることが知られているものならば、いずれも用いることができる。例えば、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属のドラム、シート、又はこれら金属箔のラミネート物、蒸着物が挙げられる。さらに、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電物質を適当なバインダーとともに塗布して導電性を付与したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙等が挙げられる。また、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性物質を含有していて導電性を示すプラスチックシートやドラム又は酸化スズ、酸化インジウム等の導電性金属酸化物層を表面に有するプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0016】
下引き層は、導電性支持体からの不必要な電荷の注入を阻止するために有効であり、感光層の帯電を高める作用がある。さらに、感光層と導電性支持体との密着性を高める作用もある。下引き層を構成する材料としては、アルミニウム陽極酸化皮膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、表面処理酸化チタン等の無機物、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン類、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機物、その他、有機ジルコニウム化合物、チタニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。下引き層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、0.1〜10μmの範囲で使用するのが最も効果的である。
【0017】
電子写真感光体が積層型構造を有する場合、電荷発生層は上述の結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー及び結着樹脂から構成される。μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーの他にさらに他の電荷発生物質を併用しても良い。このような電荷発生物質としては、例えばこの用途に公知のフタロシアニン系化合物、アゾ化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、多環キノン系化合物、スクアリック酸メチン系化合物等が挙げられる。
【0018】
電荷発生層の結着樹脂は広範な絶縁性樹脂から選択することができる。好ましい結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル、ビニルピリジン等のビニル化合物の重合体及び共重合体、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、アルキッド樹脂、ポリアリレート等が挙げられる。
【0019】
電荷発生層は、上記の結着樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーを分散させて塗布液を調製し、それを導電性支持体上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。分散は、例えば、ボールミル、サンドグラインドミル、遊星ミル、ロールミル、ペイントシェーカー等を用いて常法により行えばよい。なお、分散に際しフタロシアニンの一部は塗布液に溶解することもある。分散は、フタロシアニンのX線回折スペクトルが処理前よりもブロードになるように行うのが好ましい。塗布液中のフタロシアニンをこのようにすることにより、得られる感光体の特性をよりすぐれたものとすることができる。結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーと結着樹脂との割合は、特に制限されないが、フタロシアニン100重量部に対して結着樹脂1〜1000重量部、好ましくは10〜400重量部の範囲である。フタロシアニンの組成比率が上記範囲より著しく高い場合には、塗布液の安定性が低下する傾向にあり、著しく低い場合には、残留電位が高くなる傾向にある。
【0020】
使用する有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。
【0021】
塗布は、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、リングコーティング法等の常用の方法により行うことができる。塗布後の乾燥は、25〜250℃の温度で5分〜3時間の範囲で静止または送風下で行うのが好ましい。また、形成される電荷発生層の膜厚は、通常0.1〜5μm、好ましくは0.3〜3μmである。
【0022】
電荷輸送層は電荷輸送材料及び結着樹脂で構成され、必要に応じて酸化防止剤等の添加物を含んでいてもよい。電荷輸送材料は一般に電子輸送材料とホール輸送材料の2種に分類されるが、本発明に係る電子写真感光体にはいずれも使用することができ、また、その混合物も使用できる。電子輸送材料としては、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基等の電子吸引性基を有する電子受容性化合物、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン等のニトロ化フルオレノン、テトラシアノキノジメタン、あるいはジフェノキノン等のキノン類が挙げられる。
【0023】
また、ホール輸送材料としては、電子授与性の有機光電性化合物、例えば、カルバゾール系、インドール系、イミダゾール系、オキサゾール系、チアゾール系、オキサジアゾール系、ピラゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系、ナフトチアゾール系等の複素環化合物、ジフェニルメタンなどのジアリールアルカン誘導体、トリフェニルメタンなどのトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベンなどのジアリールエチレン誘導体、ヒドラゾン系誘導体、ジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基のような置換アミノ基、あるいはアルコキシ基、アルキル基のような電子供与基(+M効果を有する置換基)、あるいはこれらの電子供与基が置換した芳香族環基が置換した電子授与性の大きな化合物が挙げられる。また、ポリビニルカルバゾール、ポリグリシジルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルフェニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂等、上記化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体も挙げられる。
特に以下の(A−1)〜(A−14)、(B−1)〜(B−8)、(C−1)〜(C−7)、(D−1)〜(D−3)に示す化合物が電荷輸送材料として好適に使用される。
【0024】
【化1】
Figure 0004007791
【0025】
【化2】
Figure 0004007791
【0026】
【化3】
Figure 0004007791
【0027】
【化4】
Figure 0004007791
【0028】
【化5】
Figure 0004007791
【0029】
【化6】
Figure 0004007791
【0030】
【化7】
Figure 0004007791
【0031】
【化8】
Figure 0004007791
【0032】
【化9】
Figure 0004007791
【0033】
また、電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、前記した電荷発生層に使用されるものと同様の絶縁性樹脂が使用できる。電荷輸送材料と結着樹脂との割合は、特に制限されないが、電荷輸送材料100重量部に対して結着樹脂20〜3000重量部、好ましくは50〜1000重量部の範囲である。電荷輸送層は、電荷輸送材料、結着樹脂及び前記した電荷発生層に使用されるものと同様の有機溶剤を用いて塗布液を調製し、これを電荷発生層と同様の方法により塗布し、乾燥することによって形成することができる。また、電荷輸送層の膜厚は、通常5〜50μm、好ましくは10〜40μmである。
【0034】
電子写真感光体が単層型構造を有する場合は、感光層は本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー、電荷輸送材料、結着樹脂から構成され、電荷輸送材料及び結着樹脂は、前記と同様なものが使用される。感光層には必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加物を含んでいても良い。μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー及び電荷輸送材料と結着樹脂との割合は、μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー及び電荷輸送材料10重量部に対して結着樹脂2〜300重量部、μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーと電荷輸送材料との割合は、μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー1重量部に対して電荷輸送材料0.01〜100重量部の範囲が適当である。そして、前記と同様に塗布液を調製した後、塗布、乾燥することによって感光層を形成できる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の実施例によって制限されるものではない。
実施例1(オクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーの製造−1)
窒素雰囲気下、4−メチルフタロニトリル39.2gにメチルナフタレン164mlを加え、さらにこれに三塩化ガリウム10.0gを添加した。この混合物を撹拌しながら加熱し、200〜220℃の温度範囲で5時間反応させた。反応液を放冷し、100〜130℃の温度範囲で濾過した。濾滓に130℃のN,N−ジメチルホルムアミド700mlを振りかけて洗浄した後、150℃のN,N−ジメチルホルムアミド160ml中で1時間熱懸洗した。この温度で濾過し、濾滓をメタノールで洗浄後、乾燥してオクタメチルクロロガリウムフタロシアニンの青色粉末11.28gを得た。
【0036】
このオクタメチルクロロガリウムフタロシアニン7.5gを0〜5℃に保った濃硫酸225g中に徐々に添加して溶解し、1時間攪拌した後、攪拌下に氷水2L中に滴下して結晶を析出させた。これを濾取し、水懸洗、希アンモニア水中での熱懸洗(85〜90℃で6時間)をし、さらに水懸洗を2回行って減圧乾燥することにより、オクタメチルヒドロキシガリウムフタロシアニン7.0gを得た。
このオクタメチルヒドロキシガリウムフタロシアニン7.0gをo−ジクロロベンゼン100ml中に加え、170〜180℃で2時間加熱縮合させる処理を2回行った。反応後、130℃で濾過し、オルトジクロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、及びメタノールで順次洗浄し、乾燥してオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー5.58gを得た。このものについてはマススペクトル(ネガティブ法)、及びIRスペクトル(KBr法)を測定し、また元素分析を行った。
【0037】
マススペクトル(図1)では、m/z=1291、1293にオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのピークが確認された。IRスペクトル(図2)では1617、1507、1338、1319、1279、1167、1139、1088、1061、934、822、775cm-1に吸収が見られた。
元素分析値は下記の通りであり、計算値とほぼ一致している。これにより、得られた合成物はオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーであることが確認された。
【0038】
【表2】
Figure 0004007791
【0039】
このオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのX線回折スペクトルを図3に示す。図3よりこの結晶は、2θ=6.2°、7.7°及び25.1°に主たるピークを有し、これに次ぐピークを12.5°、18.8°に有している。さらに10.3°、14.5°、21.2°、24.6°、25.9°、27.2°、30.2°、30.7°にもピークを有している。
【0040】
実施例2(オクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーの製造−2)
実施例1で得られたオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー3.7gを直径1mmのガラスビーズ40mlとともに100mlの容器に入れ、ペイントシェーカーで60時間乾式摩砕した。摩砕後のフタロシアニンダイマーの粉末X線スペクトルを図4に示す。摩砕によりアモルファス化しており、7.0°、14.8°および26.2°にブロードなピークを示す結晶型となっている。この摩砕後のフタロシアニンダイマー1.8gを145℃のN−メチルピロリドン40ml中にて2時間熱懸洗したのち乾燥して青色粉末1.7gを得た。
【0041】
得られたオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのX線回折スペクトルを図5に示す。図5では、主たるピークを2θ=26.3°に有し、次に強度の強いピークを7.0°、14.2°に有する本発明のオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーであることが確認された。
【0042】
実施例3(オクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーの製造−3)
実施例2と同様の方法で得られた摩砕後のオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー1.8gに、N,N−ジメチルホルムアミド40mlを加え、室温で8時間攪拌した後、一夜放置した。濾過して固体を取得し、メタノールで洗浄した後、乾燥して青色粉末1.7gを得た。
得られたオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのX線回析スペクトルを図6に示す。図6では主たるピークを2θ=26.3°に有し、次に強度の強いピークを6.2°、9.4°および14.8°に有する本発明のオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーであることが確認された。
【0043】
比較例1(特開平10−88023号公報の製造例1記載のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー「A型ダイマー」の合成)
攪拌器、塩化カルシウム管などの必要器具を備えた1000mlのガラス製4口フラスコに、フタロニトリル177.2g、1−クロロナフタレン820ml及び塩化ガリウム50.0gを仕込み、還流下に10時間攪拌した。200℃程度まで放冷後、熱時濾過し、濾滓に熱ジメチルホルムアミド(DMF)3500mlを振りかけて洗浄し、次いで室温のDMF3500mlを用いて同様に振りかけ洗浄をした。得られたウェットケーキをDMF800mlに懸濁させ、還流下に5時間攪拌した。熱時濾過後、前回と同様にして熱DMF2500ml、室温のDMF2000mlを用いて振りかけ洗浄し、次いでメタノールで振りかけ洗浄した後乾燥して、青色のクロロガリウムフタロシアニン118gを得た。X線回析スペクトル(図7)は、特開平10−88023製造例1記載のクロロガリウムフタロシアニン結晶(結晶X)と同一であった。この結晶X10gを温度0〜5℃の間に保った濃硫酸300g中に徐々に加えて溶解させ、この温度で1時間攪拌した。これを氷水1500mlへ温度が5℃を越えないように攪拌しながら注加し、注加終了後さらに2時間攪拌した。濾過して固体を取得しこれを水洗した後、1500mlのイオン交換水に懸濁させ、濾過をして固体を取得した。水洗後ウェットケーキを4%アンモニア水600mlに懸濁させ、還流下に6時間攪拌した。濾過後、ケーキをイオン交換水で念入りに洗浄した後、減圧下50℃で乾燥させた後、粉砕し8.5gの青色固体を得た。
リービッヒコンデンサーを備えたフラスコにo−ジクロロベンゼン130ml、及び上記で得られた青色固体7.7gを加え、170〜180℃で攪拌し、生成する水を除去しつつ反応させた。水の生成が少なくなったらリービッヒコンデンサーを空冷コンデンサーに替え、還流下に3時間攪拌した。熱時濾過し、DMFによる振りかけ洗浄した後、メタノールで洗浄してケーキ中のDMFを置換した。さらに乾燥、粉砕して、μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー7.0gを得た。X線回析スペクトル(図8)は、特開平10−88023製造例1記載のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー「A型ダイマー」と同一であった。
【0044】
実施例4(電子写真感光体の作成−1)
実施例1で製造したオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー1.6gをジメトキシエタン30gに加え、サンドグラインドミルで2時間粉砕して、微粒子化処理を行った。これにジメトキシエタン16gと4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2 6gとを加えて希釈し、さらにポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、デンカブチラール#6000C)0.4gとフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド(株)製、UCAR)0.4gをジメトキシエタン7gに溶解した液と混合し、塗布液を得た。この塗布液をアルミニウム蒸着したポリエステルフィルム上に乾燥後の重量が0.4g/m2になるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成させた。次にこの電荷発生層の上に、下記に示すアリールアミン系化合物40重量部及びポリカーボネート樹脂(三菱化学(株)製、ノバレックス7030A)100重量部をテトラヒドロフラン600重量部に溶解させた塗布液を、乾燥後の膜厚が20μmとなるようにアプリケーターにより塗布して乾燥し、積層型電子写真感光体を作成した。
【0045】
【化10】
Figure 0004007791
【0046】
実施例5(電子写真感光体の作成−2)
実施例4において、実施例1で得たオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーに代えて、実施例2で製造した図5のX線回析スペクトルを有するオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーを用いた他は、実施例4と同様にして塗布液を調液した。この塗布液中のオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのX線回析スペクトルを図9に示す。微粒子化分散処理によりそれぞれのピークがブロード化しているが、7.0°、14.3°および26.5°にピークを有し、調液前と比較し大きな変化はないことが確認できた。この塗布液を用い、実施例4と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0047】
実施例6(電子写真感光体の作成−3)
実施例4において、実施例1で得たオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーに代えて、実施例3で製造したオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーを用いた他は、実施例4と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0048】
比較例2(電子写真感光体の作成)
実施例4において、実施例1で得たオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーに代えて、比較例1で製造したオクタメチル−μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー「A型ダイマー」を用いた他は、実施例4と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0049】
評価;
上記で作成した電子写真感光体を感光体特性測定装置に装着して、表面電位が−700Vになるように帯電させた後、780nmの光を照射したときの半減露光量(E1/2感度)、さらに−700Vに帯電して5秒放置後の電荷保持率(DDR5)、660nmのLED光除電後の残留電位を測定した。繰り返し安定性は帯電−除電を30000回繰り返し、1回目と30000回後の表面電位の差(ΔV)でみた。その結果を表−1に示す。
【0050】
【表3】
Figure 0004007791
【0051】
表−1より、本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーは、公知結晶型のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーより、感度、残留電位、繰り返しの電位安定性のいずれに関しても優れていることがわかる。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーは、電荷保持性、繰り返し安定性に優れており、プリンター、ファクシミリ、デジタル複写機などに用いるのに好適である。また、本発明に係る結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーは、塗布液の分散安定性が非常に良く、電子写真感光体の電荷発生材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのマススペクトル図。
【図2】実施例1のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのIRスペクトル図。
【図3】実施例1のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのX線回折図。
【図4】実施例2でペイントシェーカーにより摩砕した後のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのX線回折図。
【図5】実施例2で得られたμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのX線回折図。
【図6】実施例3で得られたμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのX線回折図。
【図7】比較例1のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー(結晶X)のX線回折図。
【図8】比較例1のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー(A型ダイマー)のX線回折図。
【図9】実施例2で得られた調液後のμ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーのX線回折図。

Claims (8)

  1. Cu−Kα線に対するX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(±0.3°)=6.2°、7.7°、12.5°、18.8°及び25.1°にピークを示す結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー。
  2. Cu−Kα線に対するX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(±0.3°)=7.0°、14.2°及び26.3°にピークを示す結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー。
  3. Cu−Kα線に対するX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(±0.3°)=6.2°、9.4°、14.8°及び26.3°にピークを示す結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー。
  4. 少なくとも1個のベンゼン核部分に置換基を有するものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー。
  5. 置換基がアルキル基であることを特徴とする請求項4に記載の結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー。
  6. それぞれのベンゼン核部分に1又は2個のメチル基を有するものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマー。
  7. 導電性支持体上に請求項1ないし6のいずれかに記載の結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーを含有する感光層を有することを特徴とする電子写真感光体。
  8. 導電性支持体上に請求項1ないし6のいずれかに記載の結晶型μ−オキソ−ガリウムフタロシアニンダイマーを微粒子化処理したものを含有する感光層を有することを特徴とする電子写真感光体。
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