JP4297600B2 - フタロシアニン組成物を用いた電子写真感光体 - Google Patents

フタロシアニン組成物を用いた電子写真感光体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なフタロシアニン組成物に関するものであり、特に、プリンター、ファクシミリ、複写機に有効に用いることができ、半導体レーザーおよびLEDに対し高い感度、低い残留電位を示す光電材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フタロシアニン化合物は良好な光導電性を示し、例えば電子写真感光体などに使用されている。また、近年、従来の白色光のかわりにレーザー光を光源とし、高速化、高画質、ノンインパクト化をメリットとしたレーザープリンターが広く普及するに至り、その要求に耐えうる感光体の開発が盛んである。
【0003】
特にレーザー光の中でも近年進展が著しい半導体レーザーを光源とする方式が主流であり、その光源波長である780nm前後の長波長光に対して高感度な特性を有する感光体が強く望まれている。このような状況の中、フタロシアニン化合物は▲1▼比較的容易に合成できること、▲2▼600nm以上の長波長域に吸収ピークを有すること、▲3▼中心金属や結晶形により分光感度が変化し、半導体レーザーの波長域で高感度を示すものがいくつか発表されていることなどから、精力的に研究開発が行われてきている。
【0004】
その様な目的に対し、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等を用いた電子写真感光体が報告されているが、最も多く報告されているのがチタニルフタロシアニンである。特開昭61−23248号公報、特開昭62−670943号公報、特開昭62−272272号公報をはじめ、現在までに特開平1−17066号公報、特開平1−82046号公報、特開平2−131243号公報、特開平3−35242号公報、特開平3−220193号公報、特開平4−224872号公報、特開平5−17702号公報、特開平7−271073号公報等に数多くの技術開示がなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般に電子写真感光体用のフタロシアニンとしては高感度で帯電性に優れ、しかも高温高湿環境下・低温低湿環境下においても感度の変動が少なく、かつ、繰り返し使用の安定なものが望まれるが、上記特許公開公報記載のフタロシアニンではすべてに満足できるまでには至っていない。本発明はこのような従来の課題に鑑みなされたもので、高感度でしかも外部環境の影響を受けにくく、繰り返し使用特性も良好な電子写真感光体に使用できるフタロシアニン組成物および電子写真感光体を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アルキル基が置換したフタロニトリル(以下「RPDN」と称する)と無置換フタロニトリル(以下「PDN」と称する)を共合成して得たフタロシアニン組成物を、電荷発生材料として用いた場合に、高感度でしかも外部環境の影響を受けにくく、繰り返し使用特性も良好な電子写真感光体が得られることを見いだした。
【0007】
即ち、本発明の要旨は、導電性支持体上に、少なくともアルキル基が置換したフタロシアニンと無置換フタロシアニンと共合成して得られるフタロシアニン組成物を含有する感光層を有し、上記アルキル基がメチル基であることを特徴とする電子写真感光体、に存する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のフタロシアニン組成物は、アルキル基が置換したフタロシアニンと無置換フタロシアニンとが共合成されてなるものである。本発明において共合成とは、原料のフタロニトリルとして、例えば、アルキル基が置換したフタロニトリル(式(I)中の(1))と無置換フタロニトリル(式(I)中の(2))の混合物を用いることにより、これらのフタロニトリル4分子から形成される無置換フタロシアニン(式(I)中の(3A))とアルキル基が置換したフタロシアニン(式(I)中の(3B)〜(3E))とを同時に合成することを意味する。
上記の例は、下記式(I)で表される。
【0009】
【化1】
Figure 0004297600
【0010】
(式中、Mは2個の水素原子又は金属原子を表し、金属原子は配位子を有していても良い。Rはハロゲン原子が置換していても良いアルキル基、またはシクロアルキル基を表す。)
【0011】
本発明のフタロシアニン組成物中のフタロシアニン分子は、その中心位置に金属原子を有するものと有しないもののいずれでもよい。中心金属としては例えば、Cu、Co、Ni、Fe、Zn、Ti、V、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb等が挙げられ、その中でも、Ti、V、Al、Ga、In、Si、Ge、Snが好ましく、Ti、Ga、In、Sn、Siが更に好ましい。また、中心金属を有さないもの(フタロシアニン分子の中心位置に水素原子を2個有する、所謂無金属フタロシアニン)も好ましい。中心金属の配位子としては酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルキルチオ基等が挙げられるが、これらの内酸素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基が好ましい。
また、本発明のフタロシアニン組成物中のフタロシアニン分子は配位子を有していてもよく、また中心金属の価数によって電荷が残っている場合は対イオンを伴って塩として存在していても良い。
本発明のフタロシアニン組成物中の、アルキル基が置換したフタロシアニン分子のアルキル基としては、ハロゲン原子が置換していても良いアルキル基、シクロアルキル基が挙げられるが、炭素数10以下のアルキル基が好ましく、特にイソプロピル基、エチル基、メチル基、トリフルオロメチル基等の炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
原料として使用するアルキル置換フタロニトリルとして、式(I)中に示したモノアルキル置換フタロニトリルの他に、アルキル基が2個以上置換したフタロニトリルを使用しても良い。
【0012】
本発明のフタロシアニン組成物は、次のようにして製造することができるが、これに限定されるものではない。例えばアルキル基が置換したフタロニトリル(RPDN)と無置換フタロニトリル(PDN)をクロロナフタレン溶剤と混合し、これに金属ハロゲン化物、あるいは金属酸化物、あるいは水素供給物質を加え、窒素雰囲気下で加熱反応させる。RPDNとPDNのモル比率は任意に選択することができるが、好ましくは75/25〜1/99の範囲であり、更に好ましくは50/50〜1/99、更に好ましくは25/75〜1/99である。
反応温度は120〜300℃、好ましくは180〜250℃、さらに190〜230℃が好ましい。反応時間は1〜20時間、好ましくは2〜10時間、さらに2〜8時間が好ましい。反応終了後、100℃以上の温度で熱ろ過し、析出物をろ取することでフタロシアニン組成物を得ることができる。
また、ハロゲン化金属フタロシアニン組成物の場合は加水分解することにより、オキシ化あるいはヒドロキシ化金属フタロシアニン組成物も得ることができる。
【0013】
このように製造されたフタロシアニン組成物は、無置換フタロシアニン(3A)、モノアルキル置換フタロシアニン(3B)、ジアルキル置換フタロシアニン(3C)、トリアルキル置換フタロシアニン(3D)、テトラアルキル置換フタロシアニン(3E)を含んでおり、その存在比率に特に制限はないが、アルキル置換フタロニトリル(1)と無置換のフタロニトリル(2)の反応性はほぼ同等と考えられるので、その存在比率は、フタロニトリル((1)及び(2))の混合比率に基づいた確立分布によるものと推定される。
【0014】
本発明のフタロシアニン組成物が電荷発生材料として優れた効果を発揮する理由は必ずしも明確ではないが、以下のように推定される。
本発明のフタロシアニン組成物は、前述したフタロシアニン化合物(3A)〜(3E)の混合物であり、従来のフタロシアニン化合物とは結晶の凝集状態が異なるという特徴を有している。即ち、混合物であるため個々の化合物の結晶成長速度が押さえられること、また置換基の導入量によりフタロシアニン分子間の距離を意図的にコントロールすることにより、スタッキング状態を変えることができる。その結果、特殊な結晶の集合体として存在しているものと考えられ、これによって、半導体レーザー光等に対して極めて高感度な特性に加えて良好な繰り返し特性をを発揮しうるものである。
【0015】
次に、本発明のフタロシアニン組成物を光導電材料として使用した電子写真感光体について説明する。
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体上に上記のフタロシアニン組成物を含有する感光層を有している。感光層は、単層型構造からなるものであっても、あるいは電荷発生層および電荷輸送層からなる積層型構造であっても良い。また、導電性支持体と感光層との間に下引き層を形成してもよく、単層型構造では感光層上に、積層型構造では電荷輸送層上に表面保護層を設けていても良い。
【0016】
導電性支持体としては、従来より電子写真感光体として使用されるものならばいずれも用いることができる。具体的には例えば、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属ドラム、シートあるいはこれら金属箔のラミネート物、蒸着物が挙げられる。さらに、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電物質を適当なバインダーとともに塗布して導電処理したプラスティックフィルム、プラスティックドラム、紙等が挙げられる。また、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性物質を含有し、導電性となったプラスティックシートやドラムあるいは酸化スズ、酸化インジウム等の導電性金属酸化物層を表面に有するプラスティックフィルムなどが挙げられる。
【0017】
下引き層は、導電性支持体からの不必要な電荷の注入を阻止するために有効であり、感光層の帯電を高める作用がある。さらに、感光層と導電性支持体との密着性を高める作用もある。下引き層を構成する材料としては、アルミニウム陽極酸化皮膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、表面処理酸化チタン等の無機物、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン類、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層、その他、有機ジルコニウム化合物、チタニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。下引き層の膜厚は0.1〜20mmの範囲が好ましく、0.1〜10mmの範囲で使用するのが最も効果的である。
【0018】
電子写真感光体が積層型構造を有する場合、電荷発生層は上述のフタロシアニン組成物および結着樹脂から構成される。本発明では前記フタロシアニン組成物の他にさらに他の電荷発生物質を併用しても良い。併用できる電荷発生物質は、フタロシアニン系化合物、アゾ化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、多環キノン系化合物、スクアリック酸メチン系化合物等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0019】
電荷発生層の結着樹脂は広範な絶縁性樹脂から選択することができる。好ましい結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル、ビニルピリジン等のビニル化合物の重合体および共重合体、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、アルキッド樹脂、ポリアリレート等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0020】
電荷発生層は、上記結着樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に前記フタロシアニン組成物を分散(一部溶解しても良い)させて塗布液を調整し、それを導電性支持体上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。分散処理する方法としては、公知の方法、例えば、ボールミル、サンドグラインドミル、遊星ミル、ロールミル、ペイントシェーカー等の方法を用いることができる。その場合、前記フタロシアニン組成物と結着樹脂との割合は、特に制限されないが、フタロシアニン組成物100重量部に対して結着樹脂1〜1000重量部、好ましくは10〜400重量部の範囲である。フタロシアニン組成物の組成比率が上記範囲より著しく高い場合には、塗布液の安定性が低下する傾向にあり、著しく低い場合には、残留電位が高くなる傾向にある。
【0021】
使用する有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、N,N-ジメチルホルムアミド、 N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。
【0022】
塗布液は、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、リングコーティング法等のコーティング法により塗布することができる。塗布後の乾燥は、好ましくは25〜250℃の温度で5分〜3時間の範囲で静止または送風下で行うことができる。また、形成される電荷発生層の膜厚は、通常0.1〜5mm、好ましくは0.3〜3mmである。
【0023】
電荷輸送層は電荷輸送材料および結着樹脂、また必要に応じて酸化防止剤等の添加物より構成される。電荷輸送材料は一般に電子輸送材料とホール輸送材料の2種に分類されるが、本発明の電子写真感光体はいずれも使用することができ、また、その混合物も使用できる。電子輸送材料としては、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基等の電子吸引性基を有する電子受容性化合物、例えば、2,4,7ートリニトロフルオレノン、 2,4,5,7-テトラニトロフルオレノン等のニトロ化フルオレノン、テトラシアノキノジメタン、あるいはジフェノキノン等のキノン類が挙げられる。
【0024】
また、ホール輸送材料としては、電子授与性の有機光電性化合物、例えば、カルバゾール系、インドール系、イミダゾール系、オキサゾール系、チアゾール系、オキサジアゾール系、ピラゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系、ナフトチアゾール系等の複素環化合物、ジフェニルメタンなどのジアリールアルカン誘導体、トリフェニルメタンなどのトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベンなどのジアリールエチレン誘導体、ヒドラゾン系誘導体、ジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基のような置換アミノ基、あるいはアルコキシ基、アルキル基のような電子供与基(+M効果を有する置換基)、あるいはこれらの電子供与基が置換した芳香族環基が置換した電子授与性の大きな化合物が挙げられる。また、ポリビニルカルバゾール、ポリグリシジルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルフェニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ピレンーホルムアルデヒド樹脂等、上記化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体も挙げられる。
これらの内、例えば、分子内に式(4)、式(5)、式(6)、又は式(7)で表される原子団を有する化合物が好ましい。
【0025】
【化2】
Figure 0004297600
【0026】
電荷移動剤として好ましい化合物の具体例を以下に示す。なお、下記の具体例の内、(A−1)〜(A−14)は式(4)で表される原子団を有する化合物であり、(B−1)〜(B−8)は式(5)で表される原子団を有する化合物であり、(C−1)〜(C−7)は式(6)で表される原子団を有する化合物であり、(D−1)〜(D−3)は式(7)で表される原子団を有する化合物である。
【0027】
【化3】
Figure 0004297600
【0028】
【化4】
Figure 0004297600
【0029】
【化5】
Figure 0004297600
【0030】
【化6】
Figure 0004297600
【0031】
【化7】
Figure 0004297600
【0032】
【化8】
Figure 0004297600
【0033】
【化9】
Figure 0004297600
【0034】
【化10】
Figure 0004297600
【0035】
【化11】
Figure 0004297600
【0036】
また、電荷移動層に用いられる結着樹脂としては、前記した電荷発生層に使用されるものと同様の絶縁性樹脂が使用できる。電荷輸送材料と結着樹脂との割合は、特に制限されないが、前記電荷輸送材料100重量部に対して結着樹脂20〜3000重量部、好ましくは50〜1000重量部の範囲である。電荷輸送層は、上記電荷輸送材料および結着樹脂を前記した電荷発生層に使用されるものと同様の有機溶剤を用いて塗布液を調整した後、前記と同様の方法により塗布し、乾燥することによって形成することができる。また、電荷輸送層の膜厚は、通常5〜50mm、好ましくは10〜40mmである。
【0037】
電子写真感光体が単層型構造を有する場合は、感光層は前記フタロシアニン組成物、電荷輸送材料、結着樹脂から構成され、電荷輸送材料および結着樹脂は、前期と同様なものが使用される。感光層には必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加物を含んでいても良い。フタロシアニン組成物および電荷輸送材料と結着樹脂との割合は、フタロシアニン組成物および電荷輸送材料10重量部に対して結着樹脂2〜300重量部、フタロシアニン組成物と電荷輸送材料との割合は、フタロシアニン組成物1重量部に対して電荷輸送材料0.01〜100重量部の範囲が適当である。そして、前期と同様に塗布液を調整した後、塗布、乾燥することによって感光層が得られる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の実施例によって制限されるものではない。
【0039】
[実施例1](4−メチルオルトフタロジニトリルの製造)
4−メチルフタル酸無水物84.28gと尿素46.84gとキシレン325mlを2.5時間加熱還流した。放冷後濾取し、水およびトルエンで洗浄して乾燥することにより4−メチルフタルイミド78.4gを得た。この全量を濃アンモニア水1400mlとともに室温で1時間攪拌し、濾取後イソプロパノールで洗浄し乾燥して4−メチルフタルアミド56.6gを得た。次に、塩化チオニル57.6mlとN,N−ジメチルホルムアミド226ml中に、4−メチルフタルアミド56.5gとN,N−ジメチルホルムアミド226mlの懸濁液を15℃以下に保って滴下した後、室温に戻しながら1時間攪拌した。反応液を氷水1.8lにあけ1時間攪拌後濾取し、水洗後、トルエン−ヘキサンで再結晶して4−メチルオルトフタロジニトリル37.4gを得た。構造解析は、マススペクトル、およびIR、融点(m.p.120℃)測定により行った(J.Org.Chem.(1977)42,3442参照)。
【0040】
[実施例2](フタロシアニン組成物の製造)
窒素雰囲気下、実施例1で合成した4−メチルオルトフタロジニトリル1.48gとフタロジニトリル25.32g(MePDN/PDNモル比:5/95)をメチルナフタレン174ml中に加え、次に四塩化チタン10mlを滴下した。滴下後昇温し、攪拌しながら200〜220℃の温度範囲で5時間反応させた後、放冷し、100〜130℃の温度範囲で熱ろ過して、フタロシアニン組成物を得た。本組成物はジクロロチタニウムフタロシアニン組成物である。これをN−メチルピロリドン213mlと濃アンモニア水12.3gとともに145℃で2時間攪拌することにより加水分解後、水、トルエン、メタノールでそれぞれ熱懸洗してオキシチタニウムフタロシアニン組成物13.37gを得た。図1に本組成物のマススペクトル(ネガティブ測定)を示す。m/z:576と590のピークより、オキシチタニウムフタロシアニンの無置換体とモノメチル置換体を含む組成物であることが確認された。
【0041】
[実施例3]
実施例2において、4−メチルオルトフタロジニトリルを2.96g、フタロジニトリルを23.98g(MePDN/PDNモル比:10/90)とした以外は、実施例2と同様に製造して、オキシチタニウムフタロシアニン組成物13.76gを得た。図2に本組成物のマススペクトル(ネガティブ測定)を示す。m/z:576、590、604のピークより、オキシチタニウムフタロシアニンの無置換体、モノメチル置換体およびジメチル置換体を含む組成物であることが確認された。
【0042】
[実施例4]
実施例2において、4−メチルオルトフタロジニトリルを7.39g、フタロジニトリルを19.99g(MePDN/PDNモル比:25/75)とした以外は、実施例2と同様に製造して、オキシチタニウムフタロシアニン組成物13.86gを得た。図3に本組成物のマススペクトル(ナガティブ測定)を示す。m/z:576、590、604、618のピークより、オキシチタニウムフタロシアニンの無置換体、モノメチル置換体、ジメチル置換体およびトリメチル置換体を含む組成物であることが確認された。
【0043】
[比較例1]
実施例2において、フタロジニトリルを全て無置換体とした以外は、実施例2と同様に製造して、無置換のオキシチタニウムフタロシアニンを得た。
【0044】
[実施例5](電子写真感光体の作成)
実施例2で製造したフタロシアニン組成物1.6gをジメトキシエタン30gに加え、サンドグラインドミルで2時間粉砕、微粒子化分散処理を行った。次に、ジメトキシエタン16gと4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2を6g加え希釈し、さらにポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、デンカブチラール#6000C)0.4gとフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド(株)製、UCAR)0.4gをジメトキシエタン7gに溶解した液と混合し、分散液を得た。 この分散液をアルミニウム蒸着されたポリエステルフィルム上に乾燥後の重量が0.4g/m2になるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成させた。次にこの電荷発生層の上に、下記に示すヒドラゾン化合物5.6gと
【0045】
【化12】
Figure 0004297600
【0046】
下記に示すヒドラゾン化合物1.4g
【0047】
【化13】
Figure 0004297600
【0048】
及びポリカーボネート樹脂(三菱化学(株)製、ノバレックス7030A)10gをTHF62gに溶解させた溶液をアプリケーターにより塗布し、乾燥後の膜厚が20μmとなるように電荷輸送層を設けた。
【0049】
[実施例6]
実施例5において用いた実施例2のフタロシアニン組成物に代えて、実施例3のフタロシアニン組成物を用いた他は実施例5と同様にして電子写真感光体を作成した。
[実施例7]
実施例5において用いた実施例2のフタロシアニン組成物に代えて、実施例4のフタロシアニン組成物を用いた他は実施例5と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0050】
[比較例2]
実施例5において用いた実施例2のフタロシアニン組成物に代えて、比較例1のフタロシアニン組成物を用いた他は実施例5と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0051】
「評価」
次にこれらの電子写真感光体を感光体特性測定装置に装着して、表面電位が−700Vになるように帯電させた後、780nmの光を照射したときの半減露光量(E1/2感度)、さらに−700Vに帯電して5秒放置後の電荷保持率(DDR5)、660nmのLED光除電後の残留電位を測定した。繰り返し安定性は帯電−除電を30000回繰り返し、1回目と30000回後の表面電位の差(△V)でみた。その結果を第1表に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0004297600
【0053】
第1表に示すとおり本発明のフタロシアニン組成物は、実用上問題なくしようできるものであり、特に電荷保持率、繰り返しの電位安定性に優れていることがわかる。
【0054】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明のフタロシアニン組成物を用いた電子写真感光体は、電荷保持率が高く、繰り返し安定性に優れており、プリンター、ファクシミリ、デジタル複写機に有効に用いることができるものである。
【0055】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2のフタロシアニン組成物のマススペクトル図を示す。
【図2】実施例3のフタロシアニン組成物のマススペクトル図を示す。
【図3】実施例4のフタロシアニン組成物のマススペクトル図を示す。

Claims (2)

  1. 導電性支持体上に、少なくともアルキル基が置換したフタロシアニンと無置換フタロシアニンとを共合成して得られるフタロシアニン組成物を含有する感光層を有し、前記アルキル基がメチル基であることを特徴とする電子写真感光体。
  2. アルキル基が置換したフタロシアニン及び無置換フタロシアニンが、その中心金属がTi、Ga、In、Sn、Si(ぞれぞれ配位子を有していても良い)のうちのいずれかであるか、または中心金属を有さないものである請求項1に記載の電子写真感光体。
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