JP3737235B2 - ゲルマニウムフタロシアニン化合物およびそれを用いた電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な結晶形を有するジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物、(ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物の結晶)に関するものである。さらに、このゲルマニウムフタロシアニン化合物を感光層に含有する電子写真感光体、特にプリンター、ファクシミリ、複写機に有効に用いることができる電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フタロシアニン化合物は良好な光導電性を示し、例えば電子写真感光体などに使用されている。また、近年、従来の白色光のかわりにレーザー光を光源とし、高速化、高画質、ノンインパクト化をメリットとしたレーザープリンターが広く普及するに至り、その要求に耐えうる感光体の開発が盛んである。特にレーザー光の中でも近年進展が著しい半導体レーザーを光源とする方式が主流であり、その光源波長である780nm前後の長波長光に対して高感度な特性を有する感光体の開発が強く望まれている。このような状況の中、フタロシアニン化合物は、▲1▼比較的容易に合成できること、▲2▼600nm以上の長波長域に吸収ピークを有すること、▲3▼中心金属や結晶形により分光感度が変化し、半導体レーザーの波長域で高感度を示すものがいくつか発表されていることなどから、精力的に研究開発が行われてきている。
【0003】
フタロシアニン化合物は、中心金属の種類により吸収スペクトルや光導電性が異なるだけでなく、結晶形によってもこれらの物性には差があり、同じ中心金属を持つフタロシアニンでも結晶形の違いで光導電性に大きな影響を及ぼすことが知られている。例えば、銅フタロシアニンについてみると、安定系のβ形以外にα、γ、ε、π、χ、τ、ρ、δ等の結晶形が知られており、これらの結晶形は、機械的歪力、硫酸処理、有機溶剤処理、加熱処理等により相互に転移可能であることが知られている(有機エレクトロニクス材料シリーズ6 フタロシアニン参照)。また、特開昭50−38543号公報には、銅フタロシアニンの結晶形と電子写真特性について、α、β、γ、ε形の比較では、ε形が最も高い感度を示すことが記載されている。
【0004】
一方、ヒドロキシメタルフタロシアニンについては、ジヒドロキシシリコンフタロシアニン、ジヒドロキシスズフタロシアニン、ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンを用いた電子写真感光体が、米国特許第4,557,989号明細書に記載されている。また、特開平6−214415号公報にもヒドロキシメタルフタロシアニン(Al、Ga、In、Si、Ge、Sn)を用いた電子写真感光体についての報告があり、ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンに関しては一つの結晶形を提示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記記載の結晶形を有するジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンであっても、それらの分散性、分散液の塗布性、保存性に関して問題があり、また、電子写真特性においても十分な帯電性が得られない。また、従来提案されているフタロシアニン化合物であっても、光導電材料として使用した場合の光感度と耐久性の点で、いまだ十分満足のいくものではなく、新たな結晶形のフタロシアニン化合物の開発が強く望まれている。そこで、本発明は、従来の技術における上述のような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光電材料として光感度、耐久性、環境特性に優れた新規な結晶形を有するフタロシアニン化合物及び高感度かつ高耐久性、高安定性の電子写真感光体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フタロシアニン化合物の結晶形と電子写真特性との関係について十分な検討を重ねた結果、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(±0.3°)9.2°、19.6°、23.3°、27.1°に主たるピークを有する新規結晶形ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物が、光電材料として光感度、耐久性、環境特性に優れていることを見い出した。すなわち、本発明は、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(±0.3°)9.2°、19.6°、23.3°、27.1°に主たるピークを有する新規結晶形ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物および上記ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物を含有する電子写真感光体に係わるものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物は前述した既知のジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンとは全く異なる結晶形を有するものであって、図1に示すように、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ(±0.3°)9.2°、19.6°、23.3°、27.1°に主たるピークを有している。なお、製造条件の微妙な違い、X線回折スペクトルの測定手法等で強度の割合、位置等が多少変動することもある。本発明によるジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物は上記したように従来にはない新規なX線回折パターンを示すが、その基本構造は次の一般式で表される。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、X1 、X2 、X3 、X4 はそれぞれ独立にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子を表し、a、b、c、dはそれぞれ独立に0〜4の整数を表す)
また、上記X線回折スペクトルは下記の条件(以下同様)で測定したものである。
X線管球 Cu
電圧 40kV
電流 30mA
スタート角度 3.00deg
ストップ角度 40.00deg
ステップ角度 0.05deg
測定時間 0.50sec
【0010】
本発明の新規結晶形ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物は、例えば次のようにして製造することができる。1,3−ジイミノイソインドリンまたはフタロジニトリルと四塩化ゲルマニウムを溶媒中で加熱した後、反応生成物を濾過、洗浄、精製し、ジクロロゲルマニウムフタロシアニン化合物を得る。これを水或いはアルカリの存在下、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の誘電率20以上の極性溶剤で加熱することにより、加水分解が起き、同時に新規結晶形ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物が生成する。
【0011】
このようにして処理された新規結晶形ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物は、処理溶剤から単離、洗浄、乾燥することにより得られる。
次に、上記新規結晶形ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物を感光層における光導電材料として使用した電子写真感光体について説明する。本発明の電子写真感光体において、導電性支持体上に被覆される感光層は、単層型構造からなるものであっても、あるいは電荷発生層および電荷輸送層からなる積層型構造であっても良い。また、導電性支持体と感光層との間に下引き層を形成してもよく、単層型構造では感光層上に、積層型構造では電荷輸送層上に表面保護層を設けていても良い。
【0012】
導電性支持体としては、電子写真感光体として使用することができるものならばいかなるものでも良い。具体的には例えば、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属ドラム、シートあるいはこれら金属箔のラミネート物、蒸着物が挙げられる。さらに、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電物質を適当なバインダーとともに塗布して導電処理したプラスチックフィルム、プラスチックドラム、紙等が挙げられる。また、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性物質を含有し、導電性となったプラスチックシートやドラムあるいは酸化スズ、酸化インジウム等の導電性金属酸化物層を表面に有するプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0013】
下引き層は、導電性支持体からの不必要な電荷の注入を阻止するために有効であり、感光層の帯電を高める作用がある。さらに、感光層と導電性支持体との密着性を高める作用もある。下引き層を構成する材料としては、アルミニウム陽極酸化皮膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、表面処理酸化チタン等の無機物、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン類、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層、その他、有機ジルコニウム化合物、チタニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。下引き層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、0.1〜10μmの範囲で使用するのが最も効果的である。
【0014】
電子写真感光体が積層型構造を有する場合、電荷発生層は前記ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物および結着樹脂から構成される。本発明では前記ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物の他にさらに他の電荷発生物質を併用しても良い。併用できる電荷発生物質は、チタニルフタロシアニン、ガリウムフタロシアニン、インジウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン等が挙げられる。また、上記以外のフタロシアニン系化合物、アゾ化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、多環キノン系化合物、スクアリック酸メチン系化合物等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。結着樹脂は広範な絶縁性樹脂から選択することができる。好ましい結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル、ビニルピリジン等のビニル化合物の重合体および共重合体、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、アルキッド樹脂、ポリアリレート等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0015】
電荷発生層は、上記結着樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に前記ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物を分散(一部溶解しても良い)させて塗布液を調整し、それを導電性支持体上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。分散処理する方法としては、公知の方法、例えば、ボールミル、サンドグラインドミル、遊星ミル、ロールミル、ペイントシェーカー等の方法を用いることができる。その場合、前記ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物と結着樹脂との割合は、特に制限されないが、前記ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物100重量部に対して結着樹脂1〜1000重量部、好ましくは10〜400重量部の範囲である。ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物の比率が高すぎる場合には、塗布液の安定性が低下し、低すぎる場合は、残留電位が高くなるので、組成比は上記範囲が適当である。使用する有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。塗布液は、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、リングコーティング法等のコーティング法により塗布することができる。塗布後の乾燥は、25〜250℃の温度で5分〜3時間の範囲で静止または送風下で行うことができる。また、形成される電荷発生層の膜厚は、通常0.1〜5μmの範囲が適当である。
【0016】
電荷輸送層は電荷輸送材料および結着樹脂、場合によって酸化防止剤等の添加物より構成される。電荷輸送材料は一般に電子輸送材料とホール輸送材料の2種に分類されるが、本発明の電子写真感光体はいずれも使用することができ、また、その混合物も使用できる。電子輸送材料としては、ニトロ基、シアノ基、エステル基等の電子吸引性基を有する電子吸引性化合物、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン等のニトロ化フルオレノン、テトラシアノキノジメタン、あるいはジフェノキノン等のキノン類が挙げられる。また、ホール輸送材料としては、電子供与性の有機光電性化合物、例えば、カルバゾール系、インドール系、イミダゾール系、オキサゾール系、チアゾール系、オキサジアゾール系、ピラゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系、ナフトチアゾール系等の複素環化合物、ジフェニルメタンなどのジアリールアルカン誘導体、トリフェニルメタンなどのトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミンなどのトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベンなどのジアリールエチレン誘導体、ヒドラゾン系誘導体、ジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基のような置換アミノ基、あるいはアルコキシ基、アルキル基のような電子供与基、あるいはこれらの電子供与基が置換した芳香族環基が置換した電子供与性の大きな化合物が挙げられる。また、ポリビニルカルバゾール、ポリグリシジルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルフェニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂等、上記化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体も挙げられる。
更に、代表的には次の化合物が挙げられる。
【0017】
【化2】
【0018】
【化3】
【0019】
【化4】
【0020】
【化5】
【0021】
また、結着樹脂としては、前記した電荷発生層に使用されるものと同様の絶縁性樹脂が使用できる。電荷輸送材料と結着樹脂との割合は、特に制限されないが、前記電荷輸送材料100重量部に対して結着樹脂20〜3000重量部、好ましくは50〜1000重量部の範囲である。電荷輸送層は、上記電荷輸送材料および結着樹脂を前記した電荷発生層に使用されるものと同様の有機溶剤を用いて塗布液を調整した後、前記と同様の方法により塗布し、乾燥することによって形成することができる。また、電荷輸送層の膜厚は、通常5〜50μmの範囲が適当である。
【0022】
電子写真感光体が単層型構造を有する場合は、感光層は前記ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物、電荷輸送材料、結着樹脂から構成され、電荷輸送材料および結着樹脂は、前記と同様なものが使用される。感光層には必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加物を含んでいても良い。ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物および電荷輸送材料と結着樹脂との割合は、ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物および電荷輸送材料10重量部に対して結着樹脂2〜300重量部、ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物と電荷輸送材料との割合は、ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物1重量部に対して電荷輸送材料0.01〜100重量部の範囲が適当である。そして、前記と同様に塗布液を調整した後、塗布、乾燥することによって感光層が得られる。
以下、実施例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の実施例によって制限されるものではない。
【0023】
【実施例】
合成例
「ジクロロゲルマニウムフタロシアニンの合成」
1,3−ジイミノイソインドリン29gおよび四塩化ゲルマニウム10.7gをキノリン250ml中に添加し、窒素雰囲気下、210〜220℃で4時間反応させた。生成物を180℃で熱濾過し、キノリン、アセトンの順で洗浄した。次いで、アセトン300ml中で加熱還流した後、結晶を濾別し、乾燥してジクロロゲルマニウムフタロシアニン27.5gを得た。構造解析はマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)、元素分析で行った。図2にジクロロゲルマニウムフタロシアニンのマススペクトルを、図3にIRスペクトルを示す。マススペクトルではm/z:656にジクロロゲルマニウムフタロシアニンのピークが確認された。m/z:621は塩素原子が一つはずれたフラグメントピークである。IRスペクトルでは1608、1510、1122、781cm-1にジクロロゲルマニウムフタロシアニン特有の吸収が見られた(E.Ciliberto et al.,J.Am.Chem.Soc.,106,7748(1984)参照)。元素分析の結果も以下に示すが、計算値とほぼ一致している。これにより合成物はジクロロゲルマニウムフタロシアニンと確認された。
得られたジクロロゲルマニウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図4に示す。2θが10.7°、11.6°、12.2°、15.0°、19.9°、26.9°、27.6°にそれぞれピークを有する。
「ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンの合成」
【0024】
実施例1
合成例で合成したジクロロゲルマニウムフタロシアニン10gを10%水酸化ナトリウム水溶液10gとN−メチルピロリドン90gに添加し、145℃で5時間反応させた。生成物を熱濾過し、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、水の順で洗浄した。次いで、アセトン50ml中で室温撹拌した後、結晶を濾別し、乾燥してジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン8.4gを得た。構造解析はマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)、元素分析で行った。図5にジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンのマススペクトルを、図6にIRスペクトルを示す。マススペクトルではm/z:620にジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンのピークが確認された。m/z:603は水酸基が一つはずれたフラグメントピークである。IRスペクトルでは1498、1118、756、644cm-1にジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン特有の吸収が見られた(上記論文参照)。元素分析の結果も以下に示すが、計算値とほぼ一致している。これにより合成物はジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンと確認された。
得られたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図1に示す。2θに主たるピーク9.2°を有し、その他19.6°、23.3°、27.1°にそれぞれピークを有する本発明の結晶形を有するジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンである。
【0025】
実施例2
合成例で合成したジクロロゲルマニウムフタロシアニン10gを水5gとN−メチルピロリドン95gに添加し、190℃で10時間反応させた。生成物を熱濾過し、N−メチル−2−ピロリドン、アセトンの順で洗浄した。次いで、アセトン50ml中で室温撹拌した後、結晶を濾別し、乾燥してジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン8.0gを得た。構造解析をマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)で行った結果、実施例1と同様のスペクトルが得られ、ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンと確認された。得られたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図7に示す。2θに主たるピーク9.2°を有し、その他19.6°、23.3°、27.1°にそれぞれピークを有する本発明の結晶形を有するジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンである。
【0026】
実施例3
合成例で合成したジクロロゲルマニウムフタロシアニン10gを10%水酸化ナトリウム水溶液10gとN,N−ジメチルホルムアミド90gに添加し、150℃で10時間反応させた。生成物を熱濾過し、DMF、アセトン、水の順で洗浄した。次いで、アセトン50ml中で室温撹拌した後、結晶を濾別し、乾燥してジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン8.1gを得た。構造解析をマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)で行った結果、実施例1と同様のスペクトルが得られ、ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンと確認された。得られたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図8に示す。2θに主たるピーク9.2°を有し、その他19.6°、23.3°、27.1°にそれぞれピークを有する本発明の結晶形を有するジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンである。
【0027】
比較例1
合成例で合成したジクロロゲルマニウムフタロシアニン4.0gを濃アンモニア水100ml、ピリジン100mlの混合液に添加し、還流加熱で5時間反応させた。生成物を熱濾過し、ピリジン、アセトン、水の順で洗浄した。次いで、水50ml中で室温撹拌を数回繰り返した後、中性を確認し、結晶を濾別、乾燥してジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン3.6gを得た。構造解析をマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)で行った結果、実施例1と同様のスペクトルが得られ、ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンと確認された。得られたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンのX線回折スペクトルを図9に示す。2θが7.1°、12.9°、16.0°、17.1°、17.9°、21.4°、25.6°、27.0°にそれぞれピークを有し、本発明の結晶形とは異なるジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンである。
【0028】
電子写真感光体の作成
実施例4
実施例1で製造したジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン0.4gを4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン30gとともに、サンドグラインドミルで6時間粉砕、微粒子化分散処理を行った。次に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、デンカブチラール#6000C)0.1gとフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド(株)製、UCAR)0.1gの10%4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン溶液と混合して分散液を調整した。この分散液をアルミニウム蒸着されたポリエステルフィルム上にバーコータにより乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように電荷発生層を設けた。調液後の分散液中のジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンのX線回折スペクトル及び塗布後のシートサンプルのX線回折スペクトルはいずれも調液前と比較し大きな変化はないことは確認できている。次にこの電荷発生層の上に、下記に示すヒドラゾン化合物5.6gと
【0029】
【化6】
【0030】
下記に示すヒドラゾン化合物1.4g
【0031】
【化7】
【0032】
およびポリカーボネート樹脂(三菱化学(株)、ノバレックス7030A)10gをTHF62gに溶解させた溶液をアプリケーターにより塗布し、乾燥後の膜厚が20μmとなるように電荷輸送層を設けた。
実施例5
実施例4において用いたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンに代えて、実施例2で製造したジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンを用いた他は実施例4と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0033】
実施例6
実施例4において用いたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンに代えて、実施例3で製造したジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンを用いた他は実施例4と同様にして電子写真感光体を作成した。
比較例2
実施例4において用いたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンに代えて、合成例で製造したジクロロゲルマニウムフタロシアニンを用いた他は実施例4と同様にして電子写真感光体を作成した。
比較例3
実施例4において用いたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンに代えて、比較例1で製造したジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンを用いた他は実施例4と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0034】
評価
得られた感光体を静電複写紙試験装置(川口電気製作所製、モデルEPA−8100)を用いて初期電気特性(帯電電位、暗減衰、半減露光量感度、残留電位)を評価した。評価法としては、暗所でコロナ電流が22μAになるように設定した印加電圧でコロナ放電により感光体を負帯電させ(この時の表面電位を帯電電位とする)、2.4秒後に780nmの単色光(1.0μW/cm2 )を10秒間連続的に露光し表面電位の減衰を測定した(露光10秒後の表面電位を残留電位とする)。暗減衰は帯電1秒後に低下した電位とし、半減露光量感度は表面電位が−450Vから−225Vに減少するのに要した露光量(E1/2)で求めた。結果を表−1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表−1より同じジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンでも結晶形の違いで電気特性が著しく異なることがわかる(実施例3〜6と比較例3)。すなわち、本発明の新規結晶形ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニンは帯電性、暗減衰、感度、残留電位ともに優れた特性を示すが、他の結晶形では帯電性が極めて悪く、実用上使用できない。
【0037】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、従来にはない特定の結晶形を有するジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物を提供するものであり、さらに、このジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物を感光層として用いた電子写真感光体は、表−1からも明らかなように、感度特性、電荷保持性に優れており、プリンター、ファクシミリ、複写機に有効に用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で得られたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物のX線回折図を示す。
【図2】合成例で得られたジクロロゲルマニウムフタロシアニン化合物のマススペクトル図を示す。
【図3】合成例で得られたジクロロゲルマニウムフタロシアニン化合物のIRスペクトル図を示す。
【図4】合成例で得られたジクロロゲルマニウムフタロシアニン化合物のX線回折図を示す。
【図5】実施例1で得られたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物のマススペクトル図を示す。
【図6】実施例1で得られたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物のIRスペクトル図を示す。
【図7】実施例2で得られたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物のX線回折図を示す。
【図8】実施例3で得られたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物のX線回折図を示す。
【図9】比較例2で得られたジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物のX線回折図を示す。
Claims (2)
- X線回折スペクトルにおいて、ブラック角2θ(±0.3°)9.2°、19.6°、23.3°、27.1°に主たるピークを有するジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン化合物の結晶。
- 導電性支持体上に請求項1記載のゲルマニウムフタロシアニン化合物の結晶を含有する感光層を用いることを特徴とする電子写真感光体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04853497A JP3737235B2 (ja) | 1997-02-18 | 1997-02-18 | ゲルマニウムフタロシアニン化合物およびそれを用いた電子写真感光体 |
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