JP3781067B2 - ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の製造方法 - Google Patents

ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の製造方法に関するものである。さらに、この製造方法により製造されたジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物を感光層に含有する電子写真感光体、特にプリンター、ファクシミリ、複写機に有効に用いることができる電荷発生材料の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フタロシアニン化合物は良好な光導電性を示し、例えば電子写真感光体等に使用されている。また、近年、従来の白色光のかわりにレーザー光を光源とし、高速化、高画質、ノンインパクト化をメリットとしたレーザープリンターが広く普及するに至り、その要求に耐えうる感光体の開発が盛んである。特にレーザー光の中でも近年進展が著しい半導体レーザーを光源とする方式が主流であり、その光源波長である780nm前後の長波長光に対して高感度な特性を有する感光体が強く望まれている。このような状況の中、フタロシアニン化合物は▲1▼比較的容易に合成できること、▲2▼600nm以上の長波長域に吸収ピークを有すること、▲3▼中心金属や結晶形により分光感度が変化し、半導体レーザーの波長域で高感度を示すものがいくつか発表されていること等から、精力的に研究開発が行われてきている。
【0003】
フタロシアニン化合物は、中心金属の種類により吸収スペクトルや光導電性が異なるだけでなく、結晶形によってもこれらの物性には差があり、同じ中心金属を持つフタロシアニンでも結晶形の違いで光導電性に大きな影響を及ぼすことが知られている。例えば、銅フタロシアニンについてみると、安定系のβ形以外にα、γ、ε、π、χ、τ、ρ、δ等の結晶形が知られており、これらの結晶形は、機械的歪力、硫酸処理、有機溶剤処理、加熱処理等により相互に転移可能であることが知られている(有機エレクトロニクス材料シリーズ6 フタロシアニン参照)。また、特開昭50−38543号公報には、銅フタロシアニンの結晶形と電子写真特性について、α、β、γ、ε形の比較では、ε形が最も高い感度を示すことが記載されている。
【0004】
一方、ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物については、ジヒドロキシゲルマニウムフタロシアニン、ジヒドロキシスズフタロシアニン、ジヒドロキシシリコンフタロシアニンを用いた電子写真感光体が、米国特許第4,557,989号明細書に記載されている。また、特開平6−214415号公報にもヒドロキシシリコンフタロシアニン(Al、Ga、In、Si、Ge、Sn)を用いた電子写真感光体についての報告がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記記載のジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の製造方法は、対応するハロゲン化シリコンフタロシアニン化合物を硫酸に溶解、あるいはスラリー化して水等の貧溶剤に注ぐといったアシッドペースト、アシッドスラリー法で行っていたり、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等のアルカリで処理する方法で行っている。これらの方法では、酸、アルカリ、副生する塩等が多量に系中に存在し、これを取り除く操作が必要となる。多くの場合は大量の水を用いて数回以上洗浄を行うが、操作性の問題、排水処理の問題、生産性の問題等多くの問題が随伴する。また、フタロシアニン結晶中に取り込まれた塩等は容易には除去できなく、その影響で、顔料の分散性、分散液の塗布性、保存性に関して問題がおき、また、電子写真特性においても十分な帯電性、感度、低残留電位特性が得られないのが現状である。そこで、本発明は、従来の技術における上述のような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光電材料として光感度、耐久性、環境特性に優れたジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の新規な製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の製造方法と電子写真特性との関係について十分な検討を重ねた結果、アルコキシ化シリコンフタロシアニン化合物を水の存在下、誘電率15以上の極性溶剤中で加熱することで容易にしかも生産性良くジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物が製造できることを見い出した。また、この製造方法で製造されたジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物は、光電材料として光感度、耐久性、環境特性に優れていることも見出された。すなわち、本発明は、光電材料として優れたジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の製造方法に係わるものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の製造法により製造されるジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の基本構造は次の一般式で表される。
【0007】
【化1】
Figure 0003781067
【0008】
(式中、X1〜4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基またはアルコキシ基を表す。a〜dはそれぞれ独立して1〜4の整数を意味する。)
本発明の製造方法は上記一般式に対応したアルコキシ化シリコンフタロシアニン化合物を用いて製造する。アルコキシ化シリコンフタロシアニン化合物は、モーザーおよびトーマスの「フタロシアニン化合物」(Moser and Thomas,“Phthalocyanine Compounds”)記載の方法等で製造できる。例を挙げれば、1,3−ジイミノイソインドリンあるいはその誘導体をアルコキシケイ素とともに加熱融解、あるいは有機溶媒中で加熱する方法、また、1,3−ジイミノイソインドリンあるいはその誘導体を金属塩化物とともに加熱融解、あるいは有機溶媒中で加熱して得られたハロゲン化シリコンフタロシアニン化合物をナトリウムアルコキシド等の金属アルコキシドと反応させる方法等が挙げられる。
【0009】
本発明の製造方法は、上記の方法によって得られたアルコキシ化シリコンフタロシアニン化合物を水の存在下、誘電率15以上の極性溶剤中で加熱することにより、フタロシアニンの中心金属に結合したアルコキシ基を加水分解し、ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物を製造することを特徴とする。アルコキシ化シリコンフタロシアニン化合物のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、ter−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、シクロヘキソキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基等が挙げられる。ここで誘電率15以上の極性溶剤としては、アセトン(20.7)、ジエチルケトン(17.0)、エチルメチルケトン(18.5)、シクロヘキサノキン(18.3)等のケトン類、メタノール(32.6)、エタノール(24.3)、プロパノール(18.3〜20.1)、シクロヘキサノール(15.0)等のアルコール類、アセトアルデヒド(21.1)、プロピルアルデヒド(18.5)、ベンズアルデヒド(17.8)等のアルデヒド類、ニトロメタン(35.9)、ニトロエタン(28.4)、ニトロプロパン(23.2)、ニトロベンゼン(34.8)、ジニトロベンゼン(21〜42)、クロロニトロベンゼン(21〜38)、フルオロニトロベンゼン(28〜40)、ニトロトルエン(23〜27)等のニトロ化合物類、アセトニトリル(37.5)、プロピオノニトリル(27.2)、ブチロニトリル(20.3)、ベンゾニトリル(25.2)、ナフトニトリル(16.0)、シアノ酢酸エチル(27.7)等のニトリル化合物、エチレンカーボネート(89.6)、プロピレンカーボネート(69.0)等のカーボネート類、ジメチルスルホキシド(48.9)、スルホラン(43.3)等のスルホキシド類、ホルムアミド(111)、N−メチルホルムアミド(182.4)、N,N−ジメチルホルムアミド(36.7)、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド(59)、N−メチルアセトアミド(191.3)、N,N−ジメチルアセトアミド(37.8)、N−メチルプロピオンアミド(172.2)等のアミド類、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン(32.0)等のラクタム類が挙げられる。尚、上記( )内は25℃における誘電率を示す。これら有機溶剤中で、沸点が70℃以上のものが好ましく、100℃以上のものが更に好ましい。沸点が70℃以下の上記有機溶剤でも加水分解反応は進行するが、反応時間を多く必要とする。また、15以上の極性溶剤の中では、エチレンカーボネート(89.6)、プロピレンカーボネート(69.0)等のカーボネート類、ジメチルスルホキシド(48.9)、スルホラン(43.3)等のスルホキシド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン等のアミド類、ラクタム類が好ましい。
【0010】
加水分解反応に必要な水の量としては、反応理論モル量以上あれば特に限定はないが、好ましくは処理溶剤(上記有機溶剤+水)に対して30wt%以下、更に20wt%以下が好ましい。
処理溶剤(上記有機溶剤+水)の量としては、アルコキシ化シリコンフタロシアニン化合物1重量部に対して0.5〜1000重量部、好ましくは1〜800重量部、更に好ましくは5〜300重量部である。
加水分解反応時の加熱温度としては、用いる有機溶媒によって異なるが、0〜250℃の範囲で行い、好ましくは70〜200℃、更に好ましくは100〜200℃である。また、処理時間としては0.5〜100時間程度である。
【0011】
このようにして処理されたジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物は、処理溶剤から単離、洗浄、乾燥することにより得られる。本製造法では、酸、アルカリ等の無機物は使用しないため、従来法に見られるような過剰の酸、アルカリを取り除くための洗浄操作が必要なく、容易にしかも生産性良くジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物が製造できる。
【0012】
次に、本発明の製造法により製造されたジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物を感光層における光導電材料として使用した電子写真感光体について説明する。本発明の電子写真感光体において、導電性支持体上に被覆される感光層は、単層型構造からなるものであっても、あるいは電荷発生層および電荷輸送層からなる積層型構造であっても良い。また、導電性支持体と感光層との間に下引き層を形成してもよく、単層型構造では感光層上に、積層型構造では電荷輸送層上に表面保護層を設けていても良い。
【0013】
導電性支持体としては、電子写真感光体として使用することができるものならばいかなるものでも良い。具体的には例えば、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属ドラム、シートあるいはこれら金属箔のラミネート物、蒸着物が挙げられる。さらに、金属粉末、カーボンブラック、ヨウ化銅、高分子電解質等の導電物質を適当なバインダーとともに塗布して導電処理したプラスティックフィルム、プラスティックドラム、紙等が挙げられる。また、金属粉末、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性物質を含有し、導電性となったプラスティックシートやドラムあるいは酸化スズ、酸化インジウム等の導電性金属酸化物層を表面に有するプラスティックフィルム等が挙げられる。
【0014】
下引き層は、導電性支持体からの不必要な電荷の注入を阻止するために有効であり、感光層の帯電を高める作用がある。さらに、感光層と導電性支持体との密着性を高める作用もある。下引き層を構成する材料としては、アルミニウム陽極酸化皮膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、表面処理酸化チタン等の無機物、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン類、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層、その他、有機ジルコニウム化合物、チタニウムキレート化合物、チタニウムアルコキシド化合物、有機チタニウム化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。下引き層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、0.1〜10μmの範囲で使用するのが最も効果的である。
【0015】
電子写真感光体が積層型構造を有する場合、電荷発生層は前記ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物および結着樹脂から構成される。本発明では前記ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の他にさらに他の電荷発生物質を併用しても良い。併用できる電荷発生物質は、チタニルフタロシアニン、ガリウムフタロシアニン、インジウムフタロシアニン、無金属フタロシアニン等が挙げられる。また、上記以外のフタロシアニン系化合物、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、多環キノン系化合物、スクアリック酸メチン系化合物等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。結着樹脂は広範な絶縁性樹脂から選択することができる。好ましい結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルアルコール、エチルビニルエーテル、ビニルピリジン等のビニル化合物の重合体および共重合体、フェノキシ樹脂、ポリスルホン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、セルロースエステル、セルロースエーテル、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、アルキッド樹脂、ポリアリレート等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0016】
電荷発生層は、上記結着樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に前記ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物を分散(一部溶解しても良い)させて塗布液を調整し、それを導電性支持体上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。分散処理する方法としては、公知の方法、例えば、ボールミル、サンドグラインドミル、遊星ミル、ロールミル、ペイントシェーカー等の方法を用いることができる。その場合、前記ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物と結着樹脂との割合は、特に制限されないが、前記ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物100重量部に対して結着樹脂1〜1000重量部、好ましくは10〜400重量部の範囲である。ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の比率が高すぎる場合には、塗布液の安定性が低下し、低すぎる場合は、残留電位が高くなるので、組成比は上記範囲が適当である。使用する有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等か挙げられる。塗布液は、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、リングコーティング法等のコーティング法により塗布することができる。塗布後の乾燥は、25〜250℃の温度で5分〜3時間の範囲で静止または送風下で行うことができる。また、形成される電荷発生層の膜厚は、通常0.1〜5μmの範囲が適当である。
電荷輸送層は電荷輸送材料および結着樹脂、場合によって酸化防止剤等の添加物より構成される。電荷輸送材料は一般に電子輸送材料とホール輸送材料の2種に分類されるが、本発明の電子写真感光体はいずれも使用することができ、また、その混合物も使用できる。電子輸送材料としては、ニトロ基、シアノ基、エステル基等の電子吸引性基を有する電子吸引性化合物、例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロフルオレノン等のニトロ化フルオレノン、テトラシアノキノジメタン、あるいはジフェノキノン等のキノン類が挙げられる。また、ホール輸送材料としては、電子供与性の有機光電性化合物、例えば、カルバゾール系、インドール系、イミダゾール系、オキサゾール系、チアゾール系、オキサジアゾール系、ピラゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系、ベンゾオキサゾール系、ベンゾチアゾール系、ナフトチアゾール系等の複素環化合物、ジフェニルメタン等のジアリールアルカン誘導体、トリフェニルメタン等のトリアリールアルカン誘導体、トリフェニルアミン等のトリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、N−フェニルカルバゾール誘導体、スチルベン等のジアリールエチレン誘導体、ヒドラゾン系誘導体、ジアルキルアミノ基、ジフェニルアミノ基のような置換アミノ基、あるいはアルコキシ基、アルキル基のような電子供与基、あるいはこれらの電子供与基が置換した芳香族環基が置換した電子供与性の大きな化合物が挙げられる。また、ポリビニルカルバゾール、ポリグリシジルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルフェニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ピレン−ホルムアルデヒド樹脂等、上記化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体も挙げられる。また、結着樹脂としては、前記した電荷発生層に使用されるものと同様の絶縁性樹脂が使用できる。電荷輸送材料と結着樹脂との割合は、特に制限されないが、前記電荷輸送材料100重量部に対して結着樹脂20〜3000重量部、好ましくは50〜1000重量部の範囲である。電荷輸送層は、上記電荷輸送材料および結着樹脂を前記した電荷発生層に使用されるものと同様の有機溶剤を用いて塗布液を調整した後、前記と同様の方法により塗布し、乾燥することによって形成することができる。また、電荷輸送層の膜厚は、通常5〜50μmの範囲が適当である。
【0017】
電子写真感光体が単層型構造を有する場合は、感光層は前記ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物、電荷輸送材料、結着樹脂から構成され、電荷輸送材料および結着樹脂は、前期と同様なものが使用される。感光層には必要に応じて酸化防止剤、増感剤等の各種添加物を含んでいても良い。ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物および電荷輸送材料と結着樹脂との割合は、ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物および電荷輸送材料10重量部に対して結着樹脂2〜300重量部、ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物と電荷輸送材料との割合は、ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物1重量部に対して電荷輸送材料0.01〜100重量部の範囲が適当である。そして、前期と同様に塗布液を調整した後、塗布、乾燥することによって感光層が得られる。
以下、実施例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の実施例によって制限されるものではない。
【0018】
【実施例】
合成例1
「ジクロロシリコンフタロシアニンの合成」
1,3−ジイミノイソインドリン43.5gおよび四塩化ケイ素73.5gをキノリン500ml中に添加し、窒素雰囲気下、210〜220℃で1時間反応させた。生成物を180℃で熱ろ過し、キノリン、アセトンの順で洗浄した。次いで、アセトン300ml中で加熱還流した後、結晶をろ別し、乾燥してジクロロシリコンフタロシアニン38.7gを得た。構造解析はマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)元素分析で行った。図1にジクロロシリコンフタロシアニンのマススペクトルを、図2にIRスペクトルを示す。マススペクトルではm/z:610にジクロロシリコンフタロシアニンのピークが確認された。m/z:575は塩素原子が一つはずれたフラグメントピークである。IRスペクトルでは1533、1079、1060cm-1にジクロロシリコンフタロシアニン特有の吸収が見られた(E.Ciliberto et al.,J.Am.Chem.Soc.,106,7748(1984)参照)。元素分析の結果も以下に示すが、計算値とほぼ一致している。これにより合成物はジクロロシリコンフタロシアニンと確認された。
【0019】
Figure 0003781067
【0020】
合成例2
「ジメトキシシリコンフタロシアニンの合成」
合成例1で合成したジクロロシリコンフタロシアニン10gをナトリウムメトキシド1.86g、メタノール100ml、ピリジン100mlの混合液に添加し、還流下で3時間反応させた。生成物を熱ろ過し、メタノール、水、アセトンの順で洗浄した。次いで、水100ml中で洗浄を数回繰り返した後、中性を確認し、結晶をろ別、乾燥してジメトキシシリコンフタロシアニン9.7gを得た。構造解析はマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)、元素分析で行った。図3にジメトキシシリコンフタロシアニンのマススペクトルを示す。マススペクトルではm/z:602にジメトキシシリコンフタロシアニンのピークが確認された。m/z:571はメトキシ基が一つはずれたフラグメントピークである。元素分析の結果も以下に示すが、計算値とほぼ一致している。これにより合成物はジメトキシシリコンフタロシアニンと確認された。
【0021】
Figure 0003781067
【0022】
実施例1
合成例で合成したジメトキシシリコンフタロシアニン10gを水5gとN−メチルピロリドン95g(95%NMP水溶液)に添加し、115℃で3時間反応させた。生成物を熱ろ過し、NMP、アセトンの順で洗浄した。次いで、アセトン100ml中で室温撹拌した後、結晶をろ別し、乾燥してジヒドロキシシリコンフタロシアニン8.0gを得た。構造解析はマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)、元素分析で行った。図4にジヒドロキシシリコンフタロシアニンのマススペクトルを、図5にIRスペクトルを示す。マススペクトルではm/z:574にジヒドロキシシリコンフタロシアニンのピークが確認された。m/z:557は水酸基が一つはずれたフラグメントピークである。IRスペクトルでは1519、1066、839cm-1にジヒドロキシシリコンフタロシアニン特有の吸収が見られた(上記論文参照)。元素分析の結果も以下に示すが、計算値とほぼ一致している。これにより合成物はジヒドロキシシリコンフタロシアニンと確認された。
【0023】
Figure 0003781067
【0024】
実施例2
合成例で合成したジメトキシシリコンフタロシアニン10gを水10gとN,N−ジメチルホルムアミド90g(90%DMF水溶液)に添加し、120℃で3時間反応させた。生成物を熱ろ過し、DMF、アセトンの順で洗浄した。次いで、アセトン50ml中で室温撹拌した後、結晶をろ別し、乾燥してジヒドロキシシリコンフタロシアニン8.4gを得た。構造解析をマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)で行った結果、実施例1と同様のスペクトルが得られジヒドロキシシリコンフタロシアニンと確認された。
【0025】
実施例3〜6
合成例で合成したジメトキシシリコンフタロシアニン5gを下記表に示す各処理溶剤で処理した。生成物は熱ろ過し、DMF、アセトンの順で洗浄した。次いで、アセトン50ml中で室温撹拌した後、結晶をろ別し、乾燥してジヒドロキシシリコンフタロシアニンを得た。いずれも構造解析をマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)で行った結果、実施例1と同様のスペクトルが得られジヒドロキシシリコンフタロシアニンと確認された。
【0026】
【表1】
Figure 0003781067
【0027】
比較例1(従来技術1:J.B.Davision et al.,Macromol.,1978,11,186)
合成例で合成したジクロロシリコンフタロシアニン4.4gをNaOH 1.1g、水100ml、ピリジン26mlの混合液に添加し、還流加熱で1時間反応させた。生成物を熱ろ過し、ピリジン、アセトン、水の順で洗浄した。次いで、水50ml中で室温撹拌を数回繰り返した後、中性を確認し、結晶をろ別、乾燥してジヒドロキシシリコンフタロシアニン3.2gを得た。構造解析をマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)で行った結果、実施例1と同様のスペクトルが得られジヒドロキシシリコンフタロシアニンと確認された。
【0028】
比較例2(従来技術2:特開平6−214415号公報 合成例10)
合成例で合成したジクロロシリコンフタロシアニン3gを濃硫酸80gに5℃にて溶解した後、0℃の水450g中に徐々に滴下して結晶を析出させた。その後、水、希アンモニア水、水で順次洗浄し、乾燥してジヒドロキシシリコンフタロシアニン2.6gを得た。構造解析をマススペクトル(ネガティブ測定)、IR(KBr法)で行った結果、実施例1と同様のスペクトルが得られジヒドロキシシリコンフタロシアニンと確認された。このジヒドロキシシリコンフタロシアニン2.5gを1mmφのガラスビーズ100gとともにメチレンクロライド60g中で24時間ボールミルした後、ろ別した。次いで、メチレンクロライドで洗浄し、乾燥してジヒドロキシシリコンフタロシアニン1.8gを得た。
【0029】
「電子写真感光体の作成」
評価例1
実施例1で製造したジヒドロキシシリコンフタロシアニン0.4gを4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2、30gとともに、サンドグラインドミルで6時間粉砕、微粒子化分散処理を行った。次に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、デンカブチラール#6000C)0.1gとフェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド(株)製、UCAR)0.1gの10% 4−メトキシ−4−メチルペンタノン−2溶液と混合して分散液を調整した。この分散液をアルミニウム蒸着されたポリエステルフィルム上にバーコータにより乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように電荷発生層を設けた。次にこの電荷発生層の上に、下記に示すヒドラゾン化合物5.6gと
【0030】
【化2】
Figure 0003781067
【0031】
およびポリカーボネート樹脂(三菱化学(株)、ノバレックス 7030A)10gをTHF62gに溶解させた溶液をアプリケーターにより塗布し、乾燥後の膜厚が20μmとなるように電荷輸送層を設けた。
【0032】
評価例2
評価例1において用いたジヒドロキシシリコンフタロシアニンに代えて、実施例2で製造したジヒドロキシシリコンフタロシアニンを用いた他は評価例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0033】
比較評価例1
評価例1において用いたジヒドロキシシリコンフタロシアニンに代えて、比較例1で製造したジヒドロキシシリコンフタロシアニンを用いた他は評価例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0034】
比較評価例2
評価例1において用いたジヒドロキシシリコンフタロシアニンに代えて、比較例2で製造したジヒドロキシシリコンフタロシアニンを用いた他は評価例1と同様にして電子写真感光体を作成した。
【0035】
「評価」
得られた感光体を静電複写紙試験装置(川口電気製作所製、モデルEPA−8100)を用いて初期電気特性(帯電電位、暗減衰、半減露光量感度、残留電位)を評価した。評価法としては、暗所でコロナ電流が22μAになるように設定した印加電圧でコロナ放電により感光体を負帯電させ(この時の表面電位を帯電電位とする)、2.4秒後に780nmの単色光(1.0μW/cm2 )を10秒間連続的に露光し表面電位の減衰を測定した(露光10秒後の表面電位を残留電位とする)。暗減衰は帯電1秒後に低下した電位とし、半減露光量感度は表面電位が−450Vから−225Vに減少するのに要した露光量(E1/2)で求めた。結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
Figure 0003781067
【0037】
表2より同じジヒドロキシシリコンフタロシアニンでも製造法の違いで電気特性が著しく異なることがわかる。すなわち、本発明の製造法により製造されたジヒドロキシシリコンフタロシアニンは帯電性、暗減衰、感度、残留電位ともに優れた特性を示すが、他の製造法では帯電性が極めて悪く、実用上使用できない。
【0038】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明は、ジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の新規製造方法を提供するものであり、さらに、このジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物を感光層に用いた電子写真感光体は、表2からも明らかなように、感度特性、電荷保持性に優れており、プリンター、ファクシミリ、複写機に有効に用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】合成例1で得られたジクロロシリコンフタロシアニン化合物のマススペクトル図を示す。
【図2】合成例1で得られたジクロロシリコンフタロシアニン化合物のIRスペクトル図を示す。
【図3】合成例1で得られたジメトキシシリコンフタロシアニン化合物のマススペクトル図を示す。
【図4】実施例1で得られたジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物のマススペクトル図を示す。
【図5】実施例1で得られたジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物のIRスペクトル図を示す。

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  1. アルコキシシリコンフタロシアニン化合物を水の存在下、誘電率15以上の極性溶剤中で加熱することを特徴とするジヒドロキシシリコンフタロシアニン化合物の製造方法。
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