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本発明は、研磨装置及び研磨方法の技術分野に属し、より詳細には、研磨後の被研磨物(以下、「ワーク」とも記載する。)回収の自動化を可能とする研磨方法である。
従来、両面研磨装置は両面の同時研磨が可能ということでハードディスクや液晶用ガラス基板などの研磨装置として広く用いられてきた(特許文献1)。しかし、両面研磨であるがゆえに研磨後のワーク回収時に研磨機の上盤にワークが張り付き回収が煩雑な上、ワークの落下による損傷が起こり歩留り低下に繋がっていた。
特開平5-169365号公報
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、研磨後の被研磨物の上部の研磨機構の張り付きを防止し、煩雑な回収及び歩留まり低下を改善するものである。
本発明は、基板などの被研磨物の研磨装置において、被研磨物(ワーク)に対する上下部の研磨機構の吸着力を下部機構に対し上部機構を小さくすることにより、研磨後、上部機構の上昇(解除)時に、ワークが上部機構に張り付かないで、基板に損傷を与えず、研磨後の被研磨物を効率よく回収するものである。
具体的には、被研磨物を回転又は摺動させて研磨する機構を有する上下一対の研磨機構間に被研磨物を挿入して研磨する両面研磨方法であって、上部の研磨機構が下部の研磨機構より被処理物に対する吸着力を弱くすることを特徴とする両面研磨方法を提供する。また、被研磨物を回転又は摺動させて研磨する機構を有する上下一対の研磨機構間に被研磨物を挿入して研磨する研磨方法であって、上部の研磨機構の被研磨物に対する吸着力と、前記下部の研磨機構の被研磨物に対する吸着力との比が、0.95以下である研磨方法を提供する。
本発明によれば、両面研磨機において、研磨後のワークが、上部研磨機構に張り付かず、全て下部に存在するため、基板の損傷がなく、被研磨物の回収が可能となる。
研磨するワークは、好ましくは、ガラス、B、C又はSi、又はFe、Cr、Ni、Cu、Co、Al、Sn、Mo、W、Ta、Ti及びNbからなる一群から選ばれる単金属又は2種以上の合金を含んでなり、この材質で被覆されたものであってもよい。ワークの形状は、両面が平坦で、円、角型など形状を有する板状のものが好ましい。具体的には、液晶ディスプレイ用ガラス基板、ハードディスク用基板、半導体用ウエハ等などである。
本発明に用いる研磨装置は、ワーク表面を上下から研磨できる上下研磨機構を有して、摺動または回転することによりワーク表面の欠陥・凹凸を研磨できるものである。
上下研磨機構は、例えば、上下動軸を有して駆動モータ等により回転を作動するものである。回転機構は、同期するのが好ましく、場合により、回転力を変えたり、反転できる機構を有するものであってもよく、通常は上下逆回転となっている。
上下研磨機構は、好ましくは、回転盤(摺動盤)及び回転軸を含んでなり、場合によって研磨パッドを有すものである。この上下盤の間に、ワークを配した加工キャリアを設置し、内外周のギアにはめ込み、加工キャリアを自公転させながら、被研磨物を支持体に固定しないフォローティングによって研磨する構造とする。
加工キャリアは、被処理物を研磨させる際に、被処理物を保持して被処理物に対し研磨材の回転力を伝えて研磨する機構である。加工キャリアは、平面研磨できる形状であれば特に限定しないが、好ましくは貫通孔を有する板状のものであり、その貫通孔に被処理物を設置して、貫通孔から突出した被処理物の両面を研磨するものである。例えば、被処理物が円筒状であれば、貫通孔の径は被処理物の径より大きくなる。加工キャリアは、好ましくは、真鍮、SUS、エポキシ含浸ガラス、鉄、銅、アルミ、ニッケル及びカーボンからなる一群から選ばれる一以上を含んでなり、この材質で被覆されたものであってもよい。
このような研磨方法は、ワークの厚みを調整するラッピングマシン、ワークの鏡面化処理のためなどのポリッシング等に利用可能である
上下研磨機構は、上部と下部でワークを研磨する手段を有する。
ラッピングマシンなどでは、上部と下部研磨機構は、定盤を用いてSUS410等の材質の研磨盤を研磨液とともに用いてワークを研磨できる。
また、ポリッシングマシンは、上下研磨機構が回転・摺動盤に研磨パッドが装着され、ポリッシングマシンに用いる研磨パッドは、不織布、ポリウレタン、スエード系のものを用いるとよい。
ワークは、上下の研磨機構間にキャリアを介して保持され、研磨液を供給できる挿入通路を設けて、研磨液を挿入して上下研磨機構を作動させて研磨する。
研磨液としては、ダイヤモンド、炭化ケイ素、コロイダルシリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン等の無機研磨材を含有する液状研磨材が好ましい。
本発明によれば、ワークに対して、上部の研磨機構の吸着力(張り付け力)を下部の研磨機構の吸着力より弱くすることにより、研磨後のワークの上部の研磨機構の張り付きの防止を可能とする。
上下研磨機構の吸着力のコントロールは、下部研磨機構(盤)に対する上部研磨機構(盤)の張り付き力(吸着力)の比を、好ましくは0.95以下、特に好ましくは0.1〜0.85とする。0.95より吸着力が大きい場合には、上下研磨機構に被研磨物が張付いてしまい、自動的に研磨物の回収ができなくなる場合がある。吸着力の比の測定方法については、実施例中に記載している。
上下研磨機構の吸着力のコントロールは、好ましくは、上下部の研磨機構を形成する研磨パッドの材質を異ならせたり、ワークに対する研磨部材の接触面積をコントロールすることで可能である。
上下部の研磨機構を形成する研磨パッドの材質の違いにより、上下研磨機構の吸着力のコントロールする場合は、研磨パッドは、好ましくは、不織布、ポリウレタン、スエード系の研磨布の中から選択する。
例えば、半導体ウエハのファイナルポリッシュの場合、下部機構にスエードを用い、上部機構に不織布もしくはポリウレタンを用いることにより、研磨終了後、上部機構を上げた時、ワークは下部機構に存在することになる。
ワークに対する研磨部材の接触面積をコントロールにより、上下研磨機構の吸着力のコントロールする場合は、たとえば、研磨布を用いるときに、上盤に溝や穴を入れ下盤に比べて接触面積を小さくする。もし、下盤に溝や穴を入れる場合は、上盤の穴、溝の数または大きさを大きくし、接触面積をコントロールすることで可能である。なお、研磨部材としては、ダイヤモンド、アルミナ、酸化チタン、炭化ケイ素等が挙げられる。研磨布の材質としては、上記したように、スエード、不織布、ポリウレタン等が挙げられる。
特に放射状、渦巻き状、直径と平行な多弦状、格子状、ディンプル状、ストライプ状といった溝を被研磨物との接触する面の定盤に形成することが好ましく、上盤は下盤の面積に対し0.99以下、好ましくは0.3〜0.95にすることがよい。
上下研磨機構の吸着力、例えば接触面積をコントロールすることにより、上記の研磨機構の張り付きを防止し、煩雑な回収及び歩留まり低下を改善するものである。本発明を利用することにより研磨工程を自動化することも可能である。
参考例1
ワークとして2.5インチガラス(厚み0.6mm)基板を30枚準備した。
ラッピングマシンとして9B型両面研磨機(キャリアサイズ9インチ)を用い、上盤を30mmのピッチで、幅3mmで深さ2mmの溝を有する格子状とし、下盤を40mmピッチ3mm溝を有する格子状とし、上下盤のワークに対する接触面積比を0.95とした。研磨盤は鉄製であった。
研磨材としてFO#240(フジミ社製の炭化ケイ素)の10%スラリー(水分散)を用い両面ラッピングを行い、目標0.5mm厚まで研磨した。
研磨後、上盤を上昇させ、上盤への張り付きの有無を確認した結果、図2に示すように、加工キャリアと共にすべて下盤に残っていた。下盤に対する上盤の吸着力比は、0.85であった。
比較例1
参考例1の比較として、上下盤の溝を共に40mmピッチ3mm溝とし上下盤のワークに対する接触面積比を1.00とした。その後、参考例1と同じ研磨を行い、研磨後、上盤を上昇させ、上盤への張り付きの有無を確認した結果、30枚中、6枚が、図3に示すように上盤に張り付きが確認された。下盤に対する上盤の吸着力比は、1.00であった。
参考例2〜7、比較例2〜3
ワークとして1インチガラス(厚み0.4mm)基板を200枚準備し、鏡面化したワークを用いて、検討を行った。
ポリッシングマシンとして、9B型両面研磨機(キャリアサイズ9インチ)を用い、上下盤には、スエード系研磨パッドを配備した。
研磨パッドには、種々溝を入れ、吸着力を単位面積当たり、下盤に対し、上盤の吸着力の比をコントロールした。上下研磨パッドを配備した後、両面研磨機の下盤にワークを加工キャリアと共にセットし、研磨液(10%−コロイダルシリカ、フジミ社製)を添加しながら10分間研磨した。その後、上盤を上昇させ、上盤への張り付きの有無を確認した。
参考例8〜13、比較例4〜5
ワークを1インチSi基板とし参考例2〜7と同様の試験を行った。
実施例14〜15、参考例16、比較例6〜8
ワークとして50mm角ガラス(厚み0.5mm)基板を40枚準備した。研磨パッドは、不織布、ポリウレタン、スエード系を上下盤に張り、ワークの張り付きについて確認した。その他は、研磨条件は参考例2〜7に従い行った。
吸着力比の計測方法
吸着力の測定方法を図1に示す。研磨パッド又は定盤1に鏡面化したSUS板2(φ40mm)を載せる。このとき、SUS板2を載せる研磨パッド又は定盤1は、水又は研磨液で濡らしておく。SUS板と接続部3で接続させたロードセル又はバネ秤4を研磨パッド又は定盤1の上昇速度と同じ速度で引っ張る。
上記測定法により、最大の数値を単位面積当たりの吸着力を測定し、上下盤の吸着力の大きさを吸着力比として表し検討を行った。
例えば、下盤の吸着力が20g/cm2で上盤の吸着力が18g/cm2とすると吸着力比は18g/cm2÷20g/cm2=0.90となる。
結果を表1と表2に示す。
吸着力比が0.95以下で、ワークがほぼ下盤に残ることが判った。更に、0.85以下で100%となり、上下盤もしくは研磨パッドの吸着力比をコントロールすることで、研磨後のワークを下盤に残すことができた。
また、上下盤に用いる研磨パッドを選定することでも、研磨後のワークを下盤に残すことができた。よって、本発明により、研磨後の基盤損傷がなく、効率よく被研磨物を回収することが可能となる。
Figure 0004448766
Figure 0004448766
吸着力の測定方法を示す。 参考例1の結果を示す。 比較例1の結果を示す。
符号の説明
1 研磨パッド又は定盤
2 鏡面化したSUS板
3 接続部
4 ロードセル又はバネ秤

Claims (2)

  1. 被研磨物を回転又は摺動させて研磨する機構を有する上下一対の研磨機構間に被研磨物を挿入して研磨する両面研磨方法であって、上部の研磨機構が下部の研磨機構より被処理物に対する吸着力を弱くすることを特徴とする両面研磨方法であって、
    前記上部と下部の研磨機構を形成する研磨パッドの材質の違いにより、前記上部と下部の研磨機構の吸着力をコントロールするため該研磨パットが、不織布、ポリウレタン及びスエード系の研磨布から選択され、下部の研磨機構を形成する研磨パッドが、スエード系であり、前記上部の研磨機構の前記被研磨物に対する吸着力と、前記下部の研磨機構の前記被研磨物に対する吸着力との比が、0.95以下である両面研磨方法。
  2. 前記上部の研磨機構の前記被研磨物に対する吸着力と、前記下部の研磨機構の前記被研磨物に対する吸着力との比が、0.1〜0.85である請求項1に記載の両面研磨方法。
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