JP4447724B2 - 熱感知ユニット及び火災報知システム - Google Patents

熱感知ユニット及び火災報知システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、差動式分布型熱感知器において、警戒区域の室内等に敷設された空気管内部の空気圧の変化を感知する熱感知ユニット及び火災報知システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6は、従来の差動式分布型熱感知器の構成図である。
この差動式分布型熱感知器は、比較的広い部屋等の火災を検出するもので、部屋の天井等に張られた空気管1Aと、この空気管1A内の空気圧の上昇に基づいて火災の発生を判定して発報信号OUTを出力する熱感知ユニット1Bとで構成されている。
【0003】
熱感知ユニット1Bは、コック部2、ダイヤフラム3、及び接点4,5を備えている。コック部2は、試験調整時に空気の通路を切り替えるための切替弁2aを有すると共に、空気管1Aを接続するための空気管接続孔P1,P2、ダイヤフラム3を接続するためのダイヤフラム接続孔F、試験用の空気を注入するための試験孔T、及び緩慢な温度変化に対して空気管1A内の空気圧を大気圧に合わせるためのリーク孔Lが設けられている。そして、切替弁2aの位置によって、各孔の間の空気の通路が切り替えられるようになっている。尚、図2中のコック部2は、切替弁2aが通常監視位置にあって、空気管接続孔P1,P2、ダイヤフラム接続孔F、及びリーク孔Lが内部で接続された状態を示している。
【0004】
ダイヤフラム3は、弾力性のある薄い金属板で作られたもので、火災等の発生で空気管1A内の空気が急激に膨脹したときに、その位置が変位するようになったものである。ダイヤフラム3の中央部には接点4が設けられ、この接点4に対向して調整可能な固定接点5が配置されている。
熱感知器は、火災の発生を早期に感知して通報することによって被害を最小限に抑えるためのものであり、その確実な感知動作を保証するために規定値が定められている。そして、その規定値を満たすように、定期点検が義務付けられている。
【0005】
図7(i)〜(iv)は、図6の差動式分布型熱感知器の試験方法を示す説明図である。定期点検等において、次の(i)〜(iv)のような試験が行われる。
(i) ポンプ試験
コック部2の切替弁2aをポンプ試験位置に切り替え、空気管接続孔P1、ダイヤフラム接続孔F、及びリーク孔Lの間の内部通路を構成すると共に、空気管接続孔P2及び試験孔Tの間の内部通路を構成する。また、空気管接続孔P1,P2に空気管1Aの両端を接続すると共に、試験孔Tに注射器等の試験ポンプTPを接続する。この状態で試験ポンプTPから試験孔Tに作動空気圧に相当する空気を注入し、これによって、ダイヤフラム3が変位して接点4,5がオンとなるまでの作動時間と、復旧するまで復旧時間を測定する。これらの時間が所定時間範囲内であれば正常、所定時間範囲外であれば異常と判断し、異常箇所を調査する。
【0006】
(ii) 流通試験
切替弁2aの位置を流通試験位置(ポンプ試験位置と同じ)に設定し、空気管接続孔P2及び試験孔Tの間の内部通路を構成する。空気管接続孔P2に空気管1Aの一端を接続すると共に、試験孔Tに試験ポンプTPを接続する。また、空気管1Aの他端に、マノメータ等の圧力計Mを接続する。この状態で試験ポンプTPから試験孔Tに所定の空気を注入し、空気管1Aに接続された圧力計Mで所定の圧力が安定して測定できれば、この空気管1Aから空気が漏れていないことになる。次にコックを開き、注入した所定の圧力の1/2になるまでの時間を測定し、所定時間範囲内であるかどうかを確認する。もしも、所定時間範囲外であれば、空気管のどこかで目詰まりが発生している可能性があるので、その箇所を調査する。
【0007】
(iii) ダイヤフラム試験
コック部2の切替弁2aをダイヤフラム試験位置に切り替え、空気管接続孔P1及びダイヤフラム接続孔Fの間の内部通路を構成する。空気管接続孔P1に、試験ポンプTPと圧力計Mを接続する。この状態で試験ポンプTPから空気管接続孔P1に徐々に空気を注入し、ダイヤフラム3が変位して接点4,5がオンとなるときの空気圧を圧力計Mで測定する。測定値が所定範囲外の場合は、感知ユニット器本体を交換する。
【0008】
(iv) リーク試験
切替弁2aの位置をリーク試験位置(ダイヤフラム試験位置と同じ)に設定し、空気管接続孔P2及びリーク孔Lの間の内部通路を構成する。空気管接続孔P2に、試験ポンプTPと圧力計Mを接続する。この状態で試験ポンプTPから空気管接続孔P2に空気を注入し、リーク孔Lから空気が漏れて圧力が低下する速度を測定する。そして、規定の速度で圧力が低下するように、リーク孔Lの漏れ具合を調整する。
【0009】
前述した各試験によって規定の状態に調整された差動式分布型熱感知器の空気管1A内の空気圧は、その敷設された部屋の温度の変化に応じて変化する。気温の変化や冷暖房等のように室温の変化が緩慢であれば、コック部2のリーク孔Lを通して少量の空気が空気管1Aに出入りする。これにより、空気管1A内の空気圧が大気圧と釣り合いを保ち、ダイヤフラム3は所定の位置に保持され、接点4,5はオフの状態に保たれる。一方、火災が発生した場合には、周囲の急激な温度上昇に伴って、空気管1A内の空気がリーク孔Lから漏れる以上に急激に膨脹し、ダイヤフラム3を押し上げて接点4,5がオンとなる。そして、接点4,5の情報は発報信号OUTとして図示しない受信機に伝えられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の差動式分布型熱感知器の熱感知ユニットでは、次のような課題があった。
平常の気温変化等による空気管1A内部の圧力変化と火災発生時の圧力変化とを確実に識別するために、コック部2のリーク孔Lの調整は、極めて厳密に行う必要がある。このため、調整作業には熟練を要すると共にその作業時間も長くなっていた。
【0011】
また、コック部2は、切替弁2aによって通常監視位置、ポンプ試験位置、及びダイヤフラム試験位置の3か所に切り替える必要があるため、構造が複雑でコストが高くなると共に、小型化にも限界があった。
更に、寸法の大きなダイヤフラム3を有すると共に、調整時には試験装置等の接続が大掛かりとなるため、複数の熱感知ユニットを1箇所に集中して配置することが困難であった。
【0012】
本発明は、前記従来技術が持っていた課題を解決し、構造を簡素化して、簡単に試験調整が行なえると共に、1箇所に集中配置することのできる熱感知ユニットを提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の内の第1の発明は、熱感知ユニットにおいて、警戒区域に沿って敷設され周囲温度の変化に対応して内部の空気圧が変化する空気管の両端を着脱自在に接続する気密性の接続部と、前記接続部に接続された前記空気管の一端に試験用の空気を注入するための注入口及び該空気管内の圧力を測定するための測定口を有する測定部と、前記接続部に接続された前記空気管の他端の空気圧を検出して圧力信号を出力する圧力センサと、前記圧力センサから出力された圧力信号を増幅して出力する増幅器を有する信号処理部と、前記接続部、前記測定部、前記圧力センサ、及び前記信号処理部を搭載する基板とを備えている。
【0014】
第2の発明では、第1の発明における信号処理部を、前記増幅器から出力された圧力信号を所定の周期で読み取り、前回読み取った圧力信号との差を温度変化信号として出力する温度変化検出部を備えた構成にしている。
【0015】
第3の発明では、第1の発明における信号処理部を、前記増幅器から出力された圧力信号を所定の周期で読み取って前回読み取った圧力信号との差を温度変化信号として出力する温度変化検出部と、前記温度変化信号が一定時間継続して一定の上昇率を越えたときに火災が発生したと判定して発報信号を出力する火災判定部とを備えた構成にしている。
【0016】
第1〜第3の発明によれば、以上のように熱感知ユニットを構成したので、次のような作用が行われる。
通常動作時に、空気管が敷設された周囲の温度が火災等によって急上昇すると、この空気管の内部の空気圧が上昇する。空気管の内部の空気圧は接続部を介して圧力センサに与えられて検出される。圧力センサの圧力信号は、信号処理部で周期的に読み取られて増幅され温度変化信号が出力される。温度変化信号は火災判定部に与えられ、その上昇率が一定時間継続して一定の上昇率を越えたときに火災が発生したと判定されて発報信号が出力される。
試験時には、試験治具を用いて測定部の注入口を介して空気管に試験用の空気を注入すると共に、空気管内の圧力を測定口に接続した試験治具で測定する。
【0017】
第4の発明は、火災報知システムにおいて、第1〜第3の発明の熱感知ユニットを複数の警戒区域に対応して複数設け、前記複数の熱感知ユニットを共通の中継器を介して火災受信機に接続するように構成し、前記中継器は前記熱感知ユニットから出力される信号を該熱感知ユニットに固有の信号とともに前記火災受信機に送信するように構成している。
【0018】
第5の発明は、第4の発明の火災報知システムにおいて、複数の熱感知ユニット及び中継器を熱感知ユニット収容箱に収容し、且つ該複数の熱感知ユニット及び該中継器をそれぞれコネクタで接続した構成にしている。
【0019】
第4及び第5の発明によれば、次のような作用が行われる。
複数の警戒区域毎に設けられた熱感知ユニットは、共通の中継器を介して火災受信機に接続される。そして、各熱感知ユニットから出力された信号は、中継器でこれらの熱感知ユニットに固有の信号が付加されて、火災受信機に送信される。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態の熱感知ユニットの構造を示す一部切り欠き平面図である。図2は、図1の熱感知ユニットを用いた差動式分布型熱感知器の概略の構成図である。
この熱感知ユニット1Cは、図1に示すように、基板10上に搭載された接続部20、圧力センサ30、信号処理部40、及びコネクタ50で構成されている。接続部20は、空気管1Aを接続するためのパッキング21と本体22を有している。本体22は、金属或いは耐熱性の硬質プラスチック等で形成され、空気管1Aの一端を圧力センサ30に接続するための貫通孔23と、この空気管1Aの他端を終端する試験孔24が設けられている。試験孔24には、空気管1Aに試験用の空気を注入するための注入口25と、この空気管1A内の圧力を測定するための測定口26が設けられている。
【0021】
パッキング21は、ゴム等の弾力性のある材料で形成され、空気管1Aの両端を気密性を保つように本体22の貫通孔23及び試験孔24に接続するものである。パッキング21は、空気管挿入用のテーパー部21aと、本体22に挿入するためのテーパー部21bを有すると共に、この本体22に設けられた切り欠き部に、嵌合して固定するための固定フィン21cを有している。本体22の試験孔24に設けられた注入口25と測定口26は、通常動作時はキャップ25a,26aで密閉され、試験調整時には外側から簡単に試験治具を接続することができるように、基板10に対して垂直に位置するように配置されている。貫通孔23の他端には、圧力センサ30が接続されている。
【0022】
圧力センサ30は、図2に示すように、感圧膜31と、この感圧膜31で仕切られた空気室32,33を有している。感圧膜31は、例えば単結晶シリコン基板上に4個のストレイン・ゲージ抵抗を形成し、この単結晶シリコン基板に圧力が加えられたときに、抵抗値が増加する抵抗同士と減少する抵抗同士を、それぞれ対向する辺となるようにブリッジ接続したものである。そして、ブリッジ回路の入力側に一定の電圧を印加することにより、加えられた圧力に対応する電圧(圧力信号)が、このブリッジ回路の出力側から出力されるようになっている。空気室32は接続部本体22の貫通口23に接続されて空気管1A内の空気圧が加えられ、空気室33には大気圧が加えられるようになっている。圧力センサ30の出力側は、信号処理部40に接続されている。
【0023】
信号処理部40は、増幅器41、アナログ・ディジタル変換器(以下、「ADC」という)42、温度変化検出部43、及び火災判定部44で構成されている。増幅器41は、圧力センサ30から出力された圧力信号を、ADC42の入力レベルまで増幅するものである。ADC42は、増幅器41から与えられた電圧をディジタル値に変換するものであり、その出力側が温度変化検出部43に接続されている。温度変化検出部43は、例えばマイクロプロセッサ等で構成され、ADC42から出力されるディジタル値を所定の周期(例えば、5秒)で読み取って、所定の圧力データに変換すると共に、前回読み取った圧力データとの差を温度変化信号として出力するものである。温度変化検出部43の出力側には、火災判定部44が接続されている。
【0024】
火災判定部44は、例えば温度変化検出部43と同一のマイクロプロセッサ等で構成され、この温度変化検出部43から与えられた温度変化信号に基づいて火災の発生を判定するものである。即ち、火災判定部44は、温度変化信号が一定時間継続(例えば、3回連続)して一定値(例えば、10℃/分相当)を越えた時に、火災が発生したと判定するものである。火災判定部44は、火災の発生を判定すると図示しない接点を閉じ、コネクタ50を介して発報信号OUTを出力するようになっている。
【0025】
図3(i)〜(iv)は、図1の熱感知ユニットに用いられる各種の接続部本体の外観を示す斜視図である。
図3(i),(ii)の本体22は、ほぼ半円形の断面を有するいわゆる蒲鉾型であり、図3(iii),(iv)の本体22は、長方形の断面を有する直方体となっている。いずれも、本体22の長手方向に貫通する貫通孔23と、同じく長手方向に形成されて他端が閉じられた試験孔24を有している。試験孔24の途中には、この試験孔24に対して直角方向で、本体22の上側に通ずる注入口25及び測定口26が形成されている。図3(i),(iii)の注入口25及び測定口26は、本体22に穴を明けて形成したものであり、図3(ii),(iv)の注入口25及び測定口26は、本体22に形成された穴とこれに接続するための円筒状の突起部を設けた構造である。これらの注入口25及び測定口26の形状は、これに接続する試験治具の接続部に対応したものとなっている。
【0026】
図4は、図1の熱感知ユニットの試験治具の一例を示す構成図である。
この試験治具60は、図1の熱感知ユニット1Cの本体22に接続するための接続部61を備えている。接続部61は、本体22の注入口25及び測定口26に接続するための突起61a,61bを有しており、これらの突起61a,61bの内部にそれぞれ貫通孔61c,61dが形成されている。貫通孔61cには、空気抜き孔61eが分岐され、この一端が外部に開放されている。また、空気抜き孔61eの途中には、空気抜き弁61fが設けられ、通常時は閉じられている。流通試験で空気管内の圧力を1/2に減圧する時などに、空気抜きレバー61gを操作することによって空気抜き弁が開放されて空気管内の圧力を抜くことができるようになっている。
【0027】
接続部61には、熱感知ユニット1Cの接続部本体22に接続したときに、突起61aに形成された貫通孔61cを通して注入口25に所定の速度で試験用の空気を注入する試験ポンプ62と、突起61bに形成された貫通孔61dを通して測定口26の空気圧を検出するための圧力センサ63が接続されている。試験ポンプ62は、例えばモータ、減速ギア、及びねじ式のポンプ等で構成され、減速ギアで減速されたモータの回転でねじを一定速度で徐々にねじ込み、このポンプ内の空気を一定速度で押し出すものである。圧力センサ63は、空気管1A内の空気圧を検出するもので、図2中の圧力センサ30と同様のものである。
【0028】
圧力センサ63の出力側は、増幅器64を介してADC65に接続され、このADC65の出力側が測定部66に接続されている。測定部66は、例えばマイクロプロセッサ等で構成され、ADC65から出力されるディジタル値を読み取って圧力データに変換するものである。測定部66の出力側は、制御部67に接続されている。制御部67は、測定部66と同一のマイクロプロセッサ等で構成され、この測定部66から与えられた圧力データに基づいてその上昇率を算出し、時間や圧力データの上昇率等を時間表示部68a及び圧力表示部68bに表示したり、操作部69から与えられた指示に基づいて試験ポンプ62の制御を行うものである。制御部67は、空気管1A内の空気圧が所定の値に達したときに試験ポンプ62の動作を停止させ、圧力センサ30,63が過大な空気圧で破壊することを防止するようになっている。
【0029】
操作部69により試験開始の指示が入力されると制御部67は、指示を受けてからの時間を測定し、その時間を時間表示部68aに表示させる。また、制御部67は、試験終了時に表示されている時間をその時点でストップさせる。時間表示部68aは、操作部69のマニュアル操作によってストップウォッチのように使用することも可能である。
【0030】
操作部69には、警戒区域に敷設された空気管の長さを設定するための設定スイッチが設けられている。流通試験時に空気管に加える圧力は、空気管の長さにより異なるため、この設定スイッチを接続される空気管の長さに合わせるように設定することで、制御部67は空気管の長さに合った所定の圧力上昇を注入するようポンプ62を制御するようになっている。
【0031】
図5(i),(ii)は、図2の差動式分布型熱感知器の設置例を示す図であり、同図(i)は警戒区域の平面図、及び同図(ii)は同図(i)中の熱感知ユニット収容箱の構成図である。
【0032】
図5(i)に示すように、警戒区域の部屋▲1▼,▲2▼,▲3▼と通路には、それぞれ空気管1A(但し、i=1〜4)が敷設されている。これらの空気管1Aの両端は、部屋▲3▼の片隅に設置された熱感知ユニット収容箱70に引き込まれている。熱感知ユニット収容箱70には、図5(ii)に示すように、部屋▲1▼,▲2▼,▲3▼及び通路の空気管1Aにそれぞれ対応する4組の熱感知ユニット1Cと、これらの4組の熱感知ユニット1Cの発報信号OUTを外部に出力する中継器80とが収容されている。
【0033】
中継器80には、伝送線を介して他の中継器や火災受信機90が接続されており、熱感知ユニット収容箱70内の4組の熱感知ユニット1Cの発報信号OUTのほか、他の中継器から伝送されてきた発報信号OUTを、伝送線を介して火災受信機90側へ送信する機能を有している。これらの空気管、熱感知ユニット、中継器、及び火災受信機によって火災報知システムが構成されている。
【0034】
次に、図4の試験治具60を用いた図5の差動式分布型熱感知器の試験調整例を説明する。
まず、試験対象の熱感知ユニット1Cにおける接続部本体22の注入口25と測定口26のキャップ25a,26aを取り外し、試験治具60の接続部61の突起61a,61bを、この注入口25と測定口26にそれぞれ接続する。
【0035】
(i) ポンプ試験
試験治具60の操作部69から試験開始の指示を入力する。この入力を受けて制御部67は、時間測定を開始して時間表示部68aに時間を表示させると共に、試験ポンプ62を駆動制御する。試験ポンプ62が駆動されることで、接続部61の貫通孔61c、熱感知ユニット1Ciの注入口25を介して空気管1Aに、所定の圧力上昇が加えられる。その時の空気管1Aの圧力上昇は、測定口26、接続部の貫通孔61dを介して試験治具60の圧力センサ63で検出され、増幅部64、ADC65、及び測定部66を介して制御部67に与えられ、更に圧力表示部68bに検出された圧力が表示される。所定の圧力上昇によって発報信号OUTが出力された時点で、時間表示部68aの時間を測定する。所定時間範囲内に発報すれば正常と判断し、所定時間範囲外ならば、空気管の目詰まりや漏れ、または圧力センサ63自体の故障が考えられるので、これらの箇所を調査する。
【0036】
(ii) 流通試験
試験治具60の操作部69から、試験開始の指示操作を入力する。この入力を受けて制御部67は、試験ポンプ62を駆動制御する。試験ポンプ62が駆動されることで、接続部61の貫通孔61c、熱感知ユニット1Ciの注入口25を介して空気管1Aiに、所定の圧力上昇が加えられる。その時の空気管1Aの圧力上昇は、測定口26、接続部の貫通孔61dを介して試験治具60の圧力センサ63で検出され、増幅部64、ADC65、及び測定部66を介して制御部67に与えられ、更に圧力表示部68bに検出された圧力が表示される。
【0037】
注入口25から所定圧力を加え、圧力表示部68bの表示によって所定の圧力に達し、安定することを確認する。圧力が安定しなければ、空気漏れの可能性があるので、その箇所を調査する。圧力の安定を確認できた場合には、その後、空気抜きレバー61gを操作し、空気抜き弁61fを開放させることによって、空気管1Ai内の空気を抜くと共に、操作部69のマニュアル操作によりストップウォッチ機能をスタートさせ、最初に加えた所定圧力の1/2になるまでの時間を圧力表示部68b及び時間表示部68aの表示により測定する。その時間が、所定時間範囲内であるかどうかを確認する。もしも所定時間範囲外であれば、空気管1Aiのどこかで目詰まりが発生している可能性があるので、その箇所を調査する。尚、上記試験における時間測定は、市販のストップウォッチを使用することも可能である。
【0038】
次に、警戒区域に設置された、例えば図2等の差動式分布型熱感知器の動作を説明する。
この差動式分布型熱感知器では、密閉された空気管1A内の空気圧が、接続部20を介して圧力センサ30の空気室32に加えられ、空気室33には大気圧が加えられている。火災の発生がない平常時は、空気管1Aが敷設された部屋等の温度変化や気圧の変化は緩慢で、圧力センサ30から出力される電圧(圧力信号)の変化も微小である。
【0039】
ここで、空気管1Aが敷設された部屋等に火災が発生すると、火災による温度上昇でこの空気管1A内の空気が膨脹し、その圧力が接続部20の貫通孔23を通して圧力センサ30の空気室32に加えられ、その圧力が上昇する。一方、空気室33には大気圧が加えられているので、空気室32,33の圧力の平衡が崩れ、圧力センサ30の感圧膜31から出力される圧力信号が変化する。圧力センサ30から出力された圧力信号は、増幅器41で所定のレベルに増幅されてADC42に与えられる。
【0040】
増幅器41の出力電圧は、ADC42によってディジタル信号に変換され、温度変化検出部43に伝えられる。温度変化検出部43では、ADC42から出力されるディジタル値が5秒周期で読み取られ、圧力データに変換される。更に、温度変化検出部43で前回読み取られた圧力データからの変化量が算出され、温度変化信号として火災判定部44に与えられる。
【0041】
火災判定部44において、温度変化信号の上昇率が10℃以上/分相当を越えていれば有効変化と判定される。更に火災判定部44において、温度変化信号が3回連続して有効変化であるか否かが監視され、3回有効変化が継続した時点で、火災発生と判定されてコネクタ50を介して発報信号OUTが出力される。発報信号OUTは、この熱感知ユニット1Cが収容された熱感知ユニット収容箱内の中継器80に出力される。
【0042】
中継器80では、熱感知ユニット1Cからの信号を受信すると、その熱感知ユニットを識別し、その中継器固有のアドレス及び該当する熱感知ユニット固有のアドレスを、熱感知ユニット1Cからの信号に付加して火災受信機90へ送信する。
中継器80と火災受信機90との間の伝送形態は、例えば、ポーリング方式等が適用される。中継器80は、各熱感知ユニットからの信号を一定時間毎に更新記憶しておき、火災受信機90からのポーリングによる呼び出しを受けると記憶してあった信号を、この火災受信機90に対して送信するようになっている。
【0043】
以上のように、この熱感知ユニット1Cは、次の(1)〜(3)のような利点がある。
(1) 温度変化検出部43において圧力センサ30で検出された圧力信号の変化に基づいて温度変化を検出し、火災判定部44において、この温度変化に基づいて火災発生の判定している。このため、接続部20にリーク孔を設ける必要がなく、従ってリーク抵抗試験を行う必要がない。また、ダイヤフラム試験も、ポンプ試験で代用できるため必要ない。よって、試験が非常に簡素化できる。
【0044】
(2) 熱感知ユニット1Cは、リーク孔を有するコック部や、ダイヤフラム等の大きな構成部品を持たないので、構成要素をすべて小形の基板10上に搭載すること可能である。また、試験調整は簡単な試験治具60で行うことができるので、複数の熱感知ユニット1Cを、熱感知ユニット収容箱70等に集中配置することが可能になる。これにより、定期点検等の作業効率が向上する。
【0045】
(3) 接続部20は、空気管1Aを着脱自在に接続することができる気密性のパッキング21を有している。これにより、例えば熱感知ユニット1Cが故障した場合等に、その熱感知ユニット1Cを簡単に交換することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。この変形例としては、例えば、次の(a)〜(e)のようなものがある。
(a) 基板10上の、接続部20、圧力センサ30、信号処理部40、及びコネクタ50等の配置は、図1に示したものに限定されない。個々の構成要素の形状寸法や操作性等を考慮して、適切に配置する必要がある。
【0047】
(b) 接続部20のパッキング21の形状構造は、図1に示したものに限定されず、気密を保って空気管1Aを着脱自在に接続できるものであれば良い。
(c) 接続部本体22の形状は、図3に例示したものに限定されない。特に、注入口25及び測定口26の形状は、接続する試験治具に対応した形状にする必要がある。
【0048】
(d) 圧力センサ30や信号処理部40の構成は、図2に例示したものに限定されない。同様の機能を有するものであれば、適用可能である。
(e) 熱感知ユニットから中継器80を介して火災受信機90へ送信される信号としては、発報信号OUTに限定されない。例えば、増幅器41から出力される圧力信号や、温度変化検出部43から出力される温度変化信号であっても良い。
【0049】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、第1の発明によれば、空気管を着脱自在に接続する接続部と、該空気管内の圧力を試験する測定部と、該空気管の内部の空気圧を検出する圧力センサと、圧力信号を増幅する増幅器を備えた信号処理部等を基板に搭載している。これにより、構造の小形簡素化が可能になると共に試験調整が簡素化できるという効果がある。また、複数の熱感知ユニットを1箇所に集中配置することができるので、点検作業がより効率化できるという効果がある。更に、故障等の場合に熱感知ユニットを簡単に交換することができるという効果がある。
【0050】
第2の発明によれば、信号処理部は、圧力信号の変化を温度変化信号として出力する温度変化検出部を備えているので、リーク孔を有するコック部やダイヤフラム等の精密機械部品が不要となり、第1の発明の効果に加えて、構造の小形簡素化が可能になると共に試験調整が簡素化できるという効果がある。
【0051】
第3の発明によれば、信号処理部は、圧力信号の変化を温度変化信号として出力する温度変化検出部と、この温度変化信号が一定時間継続して一定の上昇率を越えたときに火災発生を判定する火災判定部を備えているので、第2の発明の効果に加えて、確実な火災判定を行うことができるという効果がある。
【0052】
第4の発明によれば、第1〜第3の発明の熱感知ユニットを用いて火災報知システムを構成しているので、これらの第1〜第3の発明と同様の効果を備えた火災報知システムが得られる。
【0053】
第5の発明によれば、第4の発明の火災報知システムにおいて、熱感知ユニットと中継器を熱感知ユニット収容箱に収容し、これらの熱感知ユニットと中継器をコネクタで接続しているので、定期点検や故障修理等の作業が容易になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の熱感知ユニットの構造を示す一部切り欠き平面図である。
【図2】図1の熱感知ユニットを用いた差動式分布型熱感知器の概略の構成図である。
【図3】図1の熱感知ユニットに用いられる各種の接続部本体の外観を示す斜視図である。
【図4】図1の熱感知ユニットの試験治具の一例を示す構成図である。
【図5】図2の差動式分布型熱感知器の設置例を示す図である。
【図6】従来の差動式分布型熱感知器の構成図である。
【図7】図6の差動式分布型熱感知器の試験方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1A 空気管
1C 熱感知ユニット
20 接続部
21 パッキング
22 本体
23 貫通孔
24 試験孔
25 注入口
26 測定口
30 圧力センサ
40 信号処理部
70 熱感知ユニット収容箱
80 中継器
90 火災受信機

Claims (5)

  1. 警戒区域に沿って敷設され周囲温度の変化に対応して内部の空気圧が変化する空気管の両端を着脱自在に接続する気密性の接続部と、
    前記接続部に接続された前記空気管の一端に試験用の空気を注入するための注入口及び該空気管内の圧力を測定するための測定口を有する測定部と、
    前記接続部に接続された前記空気管の他端の空気圧を検出して圧力信号を出力する圧力センサと、
    前記圧力センサから出力された圧力信号を増幅して出力する増幅器を有する信号処理部と、
    前記接続部、前記測定部、前記圧力センサ、及び前記信号処理部を搭載する基板とを、
    備えたことを特徴とする熱感知ユニット。
  2. 前記信号処理部は、前記増幅器から出力された圧力信号を所定の周期で読み取り、前回読み取った圧力信号との差を温度変化信号として出力する温度変化検出部を備えたことを特徴とする請求項1記載の熱感知ユニット。
  3. 前記信号処理部は、前記増幅器から出力された圧力信号を所定の周期で読み取って前回読み取った圧力信号との差を温度変化信号として出力する温度変化検出部と、前記温度変化信号が一定時間継続して一定の上昇率を越えたときに火災が発生したと判定して発報信号を出力する火災判定部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の熱感知ユニット。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の熱感知ユニットを複数の警戒区域に対応して複数設け、前記複数の熱感知ユニットを共通の中継器を介して火災受信機に接続するように構成し、前記中継器は前記熱感知ユニットから出力される信号を該熱感知ユニットに固有の信号とともに前記火災受信機に送信することを特徴とする火災報知システム。
  5. 前記複数の熱感知ユニット及び前記中継器を熱感知ユニット収容箱に収容し、且つ該複数の熱感知ユニット及び該中継器をそれぞれコネクタで接続したことを特徴とする請求項4記載の火災報知システム。
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