JP4057896B2 - 異常対応型ヘリウムリークディテクタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はヘリウムリークディテクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
気密を必要とする容器、機器、配管などの製品の気密性を調べるための洩れ探しの方法としてヘリウムリークディテクタが用いられることが多い。ヘリウムリークディテクタに用いるヘリウムが、分子直径が小さく洩れから侵入し易い、毒性・引火性がなく不活性であるため取り扱いが容易である、大気中の含有量が微小でバックグラウンドが小さい、などの点でプローブガスとして好都合であるためである。このため、近年は、宇宙開発・原子力・電子通信機器などの一般産業の分野に需要者層が拡大する傾向にある。
【0003】
ところが、需要者層の裾野が拡がるほど、ヘリウムリークディテクタの真空機器としての留意点を意識せずにこれを使用するユーザも多数出現している。ヘリウムリークディテクタは、高真空ポンプ、補助ポンプ、真空計を有する分析系とこれを制御する制御系とから構成され、真空装置としては比較的簡素であるが、真空機器特有の取り扱い方に不知なユーザにはその維持管理に相当の労力を要する。例えば、真空装置に対する知識の欠落により不適切な使用法で作動して、損傷を受けたり安定性を失ったりした装置をユーザ独自で回復させるのは困難であることが予想される。一方で、ヘリウムリークディテクタの不具合発生が常態であるとしてユーザ側で常駐の保守要員を確保することはまずあり得ない。このため、最適の作動環境で使用されないヘリウムリークディテクタが散見され、通常の製品寿命に至らずに使用不能となることも多い。そして、このことが、上記したヘリウムリークディテクタ需要の裾野拡大を抑制する要因ともなりかねない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑み、真空機器取り扱いに対しての精通を要さずに維持管理することが可能なヘリウムリークディテクタを提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、イオンソース室を備えた分析管と、分析管を真空排気する主ポンプと、主ポンプを補助排気するフォアポンプと、試験体を接続するテストポートと、テストポートの圧力をモニタする真空計とを搭載し、試験体中のプローブガスとしてテストポートから導入したヘリウムガスを、イオンソース室でイオン化させて分析管により検出すると共に標準リークを用いて校正するヘリウムリークディテクタにおいて、上記したイオンソース室、分析管、主ポンプ、フォアポンプ、圧力計及び標準リークのそれぞれに対する異常発生の前後各状態に応じて、異常未発生時における予備保全対応法と、異常発生時における不具合対応法と、異常発生後における危険回避対応法とを、それぞれディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供するものとした。
【0006】
これにより、ヘリウムリークディテクタの主要内部真空機器であり、慎重に取り扱わないと異常が発生し易いイオンソース室、分析管、主ポンプ、フォアポンプ、圧力計及び標準リークのそれぞれに特定して、発生する異常に関する予備保全対応法、不具合対応法及び危険回避対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供する。また、その際に、異常発生の前後各状態に応じて最適な対応法を告知する。このため、各真空機器の取り扱いや作動原理、及びこれらの連関機能に関して精通したユーザでなくても、異常発生の各段階で効率的に適切な対応をすることができ、ヘリウムリークディテクタ装置を簡易に維持管理することが可能となる。
【0007】
そして、主ポンプに関しては、この主ポンプに設けた温度センサと衝撃センサとがそれぞれ所定値以上の温度及び衝撃を検知したときに異常発生時における不具合対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供し、また、この主ポンプの稼動積算時間が所定値以上に到達したときに異常未発生時における予備保全対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供するシステムとする。
【0008】
これにより、主ポンプの維持管理対策に重要な、異常未発生時及び異常発生時の適切な対応法が整備される。
【0009】
また、フォアポンプに関しては、テストポートの排気に要する排気時間が所定値以上であるときに異常発生時における不具合対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供し、また、フォアポンプの稼動積算時間が所定値以上に到達したときに異常未発生時における予備保全対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供するシステムとする。
【0010】
これにより、フォアポンプの維持管理対策に重要な、異常未発生時及び異常発生時の適切な対応法が整備される。
【0011】
また、分析管に関しては、イオンソース室内のフィラメントへの通電時と未通電時との各検出ヘリウムの校正量差が所定値以上であるときに異常未発生時における予備保全対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供するシステムとする。
【0012】
これにより、分析管の維持管理対策に重要な異常実発生時の適切な対応法が整備される。
【0013】
また、標準リークに関しては、標準リーク管に設けた温度センサの検出温度とカレンダタイマの経過時間とから減衰率を算出し、この減衰率により補正された校正量を、異常発生後における危険回避対応法としてディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供することにより、標準リークの維持管理対策に重要な異常発生後の適切な対応法が整備される。
【0014】
そして、真空計に関しては、この真空計の出力電流が検出されないときに、イオンソース室に関しては、このイオンソース室のフィラメントのエミッション電流が検出されないときに異常発生時における不具合対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供するシステムとする。これにより、真空計及びイオンソース室の維持管理対策に重要な異常発生時の適切な対応策が整備される。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の異常対応型ヘリウムリークディテクタ装置の概略平面図であり、本装置の構成は真空排気系1と電気系2とに大別される。
【0016】
真空排気系1は、図外のイオンソース室を備えた分析管100と、分析管100を真空排気する分子ポンプ110と、分子ポンプ110を補助排気するフォアポンプ120と、図外の試験体を接続するテストポート130と、テストポート130の圧力をモニタする真空計140とを備えている。このとき、分子ポンプ110は、高真空排気のための主ポンプとして用いられ、フォアポンプ120には、例えば、油回転ポンプ、メンブレンポンプ、スクロールドライポンプなどが用いられる。一方、テストポート130は、第1導入バルブ150及び第2導入バルブ151を介して分子ポンプ110に接続され、また、第3導入バルブ152を介してフォアポンプ120に接続されている。そして、分子ポンプ110とフォアポンプ120とはフォアバルブ153を介して接続されている。さらに、テストポート130と、分子ポンプ110及びフォアポンプ120とを結ぶ主ライン131には、校正リークバルブ154を介して校正リーク160が接続されている。また、主ライン131にはベントバルブ155が接続されている。さらに、分子ポンプ110には、温度計111と振動センサ112とが設けられ、また、校正リーク160には温度計161が設けられている。
【0017】
本装置の運転に際しては、あらかじめ、第1導入バルブ150、第2導入バルブ151、第3導入バルブ152、校正リークバルブ154、ベントバルブ155及びテストポート130を閉じた状態で、フォアポンプ120と分子ポンプ110とにより、分析管100におけるヘリウム検出が可能となる真空圧力に到達させる。そして、この状態で、テストポート130を開いて図外の試験体からリークしたヘリウムガスを導入する。このとき、ヘリウムガスの検出を行う分析管100には、このヘリウムガスの想定分圧に応じて第1導入バルブ150(高感度/高応答対応)、第2導入バルブ151(中感度/中応答対応)及び第3導入バルブ152(低感度/低応答対応)のいずれかを経由してヘリウムガスを拡散させる。そして、分析管100で検出されたヘリウムガスの強度を、校正リーク160から導入してあらかじめ強度測定しておいた既知量のヘリウムガスの強度と比較することにより、試験体においてリークするヘリウムガス量として定量する。
【0018】
また、ヘリウムリークディテクタ装置運転時の各真空機器の作動は、電気系2内のI/O系21と電源系22と制御系23とにより行われる。即ち、I/O系21により電気系2と排気系1とが接続された状態で、電源系22により分析管100や真空計140などの電源入切が行われる。そして、制御系23が各真空機器の作動の制御を行うように構成される。
【0019】
前述したように、真空機器の取り扱いは慎重に行うことが必要であり、その取り扱いに精通していないユーザが発生する異常若しくは発生するおそれのある異常に対して適切に対応するには、異常発生の前後各段階で、その対応法を表示、電気信号出力または音声により提供することが効果的である。
【0020】
このため、本装置では、電気系2のI/O系21に、ディスプレイ表示装置24及び音声/警告音発生器25を接続した。そして、真空系1内の主要真空機器、即ち、イオンソース室(図示せず)、分析管100、分子ポンプ110、フォアポンプ120、真空計140及び校正リーク160のそれぞれに関して、異常未発生時の予備保全対応法と、異常発生時の不具合対応法と、異常発生後の危険回避対応法とを、必要に応じてそれぞれ表示、電気信号出力若しくは音声提供する。
【0021】
以下上記各機器の実際を説明する。
【0022】
分子ポンプ110に関しては、温度や衝撃・振動により製品寿命が左右されることから、分子ポンプ110に温度計111と衝撃センサ112とを設け、これらがそれぞれ所定値以上の温度及び衝撃を検知したときに、異常発生時の不具合対応法として、衝撃軽減のための丁寧な取り扱いや内部回転数の減少などの督促をディスプレイ表示装置24により表示し、または、音声/警告音発生器25により音声伝達し、または、I/O系21により電気信号を出力する。また、分子ポンプ110の稼動積算時間が所定値以上に到達したときに、異常未発生時の予備保全対応法として、内部部品の交換の督促をディスプレイ表示装置24により表示し、または、音声/警告音発生器25により音声伝達し、または、I/O系21により電気信号を出力する。なお、分子ポンプへの振動が継続されると、内部で高速回転しているフィンがその他の部品と接触してポンプが損傷して回復不能になるおそれがある。このため、異常発生後における危険回避対応法として、不具合対応の際なども慎重な取り扱いの督促を内部部品の交換の督促をディスプレイ表示装置24により表示し、または、音声/警告音発生器25により音声伝達し、または、I/O系21により電気信号を出力するものとしても良い。
【0023】
フォアポンプ120に関しては、テストポート130における排気時間と排気能力が相関することから、テストポート130の排気に要する排気時間が所定値以上であるときに異常発生時における不具合対応法として、内部部品の交換またはメンテナンスの督促をディスプレイ表示装置24により表示し、または、音声/警告音発生器25により音声伝達し、または、I/O系21により電気信号を出力する。また、フォアポンプ120の稼動積算時間が所定値以上に到達したときに、異常未発生時の予備保全対応法として、内部部品の交換の督促をディスプレイ表示装置24により表示し、または、音声/警告音発生器25により音声伝達し、または、I/O系21により電気信号を出力する。
【0024】
分析管100に関しては、内部の検出器がヘリウムにより汚染されていると正確な検出が不可能になることから、図外のイオンソース室内のフィラメントへの通電時と未通電時との各検出ヘリウムの校正量差が所定値以上であるときに異常未発生時における予備保全対応法として、分析管のオーバーホールの督促を、ディスプレイ表示装置24により表示し、または、音声/警告音発生器25により音声伝達し、または、I/O系21により電気信号を出力する。
【0025】
校正リーク(標準リーク)160に関しては、温度や経年変化により内圧が変化するため、校正リーク管160に設けた温度計161の検出温度と図外のカレンダタイマの経過時間とから減衰率を算出し、異常発生後における危険回避対応法として、この減衰率により補正された校正量をディスプレイ表示装置24により表示し、または、音声/警告音発生器25により音声伝達し、または、I/O系21により電気信号を出力する。
【0026】
真空計140やイオンソース室(図示せず)に関しては、内部での断線が最も重要な異常原因であることから、真空計140の出力電流が検出されないとき及びイオンソース室のフィラメントのエミッション電流が検出されないときに異常発生時における不具合対応法として、内部電線の交換の督促をディスプレイ表示装置24により表示し、または、音声/警告音発生器25により音声伝達し、または、I/O系21により電気信号を出力する。
【0027】
なお、本発明は上記した各真空機器に対する対応策表示等に留まるものではなく、例えば、真空計140によりテストポート130の圧力状態を常時監視して、これにより、第1導入バルブ150、第2導入バルブ151、第3導入バルブ152、フォアバルブ153、校正リークバルブ154及びベントバルブ155の適切な作動を制御系23により制御している内容を表示するシステムとしても良い。このようにすることによっても、真空機器に対して精通しないユーザにとって機器取り扱いの困難さの軽減につながる。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、ヘリウムリークディテクタを構成するイオンソース室、分析管、主ポンプ、フォアポンプ、圧力計及び標準リークの主要真空機器について、それぞれの機器にとってその維持管理対策に重要な各段階において必要な対応法、即ち、異常未発生時の予備保全対応法、異常発生時の不具合対応法、及び異常発生後の危険回避対応法を選択して提供する。このため、各真空機器に精通しなくても、発生する若しくは発生するおそれのある異常事態に対して適切に対応することができる。そして、提供される対応法にしたがって使用することにより、所期の製品寿命を想定したヘリウムリークディテクタの活用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の異常対応型ヘリウムリークディテクタ装置の概略図
【符号の説明】
21 I/O系
24 ディスプレイ表示装置
25 音声/警告音発生器
100 分析管
110 分子ポンプ(主ポンプ)
111 温度計
112 衝撃センサ
120 フォアポンプ
130 テストポート
140 真空計
160 校正リーク(標準リーク)
161 温度計
Claims (1)
- イオンソース室を備えた分析管と、該分析管を真空排気する主ポンプと、該主ポンプを補助排気するフォアポンプと、試験体を接続するテストポートと、該テストポートの圧力をモニタする真空計とを有し、前記試験体中のプローブガスとして前記テストポートから導入したヘリウムガスを、前記イオンソース室でイオン化させて前記分析管により検出すると共に標準リークを用いて校正するヘリウムリークディテクタにおいて、
前記主ポンプは、該主ポンプに設けた温度センサと衝撃センサとがそれぞれ所定値以上の温度及び衝撃を検知したときに異常発生時における不具合対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供し、また、該主ポンプの稼動積算時間が所定値以上に到達したときに異常未発生時における予備保全対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供し、 前記フォアポンプは、前記テストポートの排気に要する排気時間が所定値以上であるときに異常発生時における不具合対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供し、また、該フォアポンプの稼動積算時間が所定値以上に到達したときに異常未発生時における予備保全対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供し、前記分析管は、前記イオンソース室内のフィラメントへの通電時と未通電時との各検出ヘリウムの校正量差が所定値以上であるときに異常未発生時における予備保全対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供し、前記標準リークは、該標準リーク管に設けた温度センサの検出温度とカレンダタイマの経過時間とから減衰率を算出し、該減衰率により補正された校正量を、異常発生後における危険回避対応法としてディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供し、前記真空計は、該真空計の出力電流が検出されないときに異常発生時における不具合対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供し、前記イオンソース室は、該イオンソース室のフィラメントのエミッション電流が検出されないときに異常発生時における不具合対応法をディスプレイに表示し又はI/O系により電気信号を出力し又は音声/警告音発生器により音声提供することを特徴とする異常対応型ヘリウムリークディテクタ。
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