JP4447116B2 - 色彩回復剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は一般家庭で使用することができる色柄物衣料の色彩を回復させるための色彩回復剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
色柄物衣料は、洗濯/着用を繰り返すうちに水道水中の塩素や太陽光の影響で色褪せが進行する。これを回復する方法として本出願人らは特開平3−180578号公報にエアゾール繊維濃色化剤を開示している。このような組成物はスプレーすることにより、衣類が机や椅子などの硬質表面と擦れによって生じたテカリをなくし濃色化することを可能とするものである。
【0003】
また、特開昭53−111192号公報、特開昭55−26232号公報には、染色した布帛に対して低屈折率化合物を吸着させ熱処理や湿熱処理等を行うことにより、工業的に布帛を深色化させる方法が開示されている。
【0004】
一方特開平10−96172号公報にはシリコーンを繊維に吸着させる方法が開示されている。また、特表平5−508889号公報にはアミノ変性シリコーンを含有した布帛柔軟剤組成物が開示されている。しかしながらこれらは布のすべり性や撥水性を付与することが目的であり、衣料の色彩を改善するものではない。
【0005】
また、特開昭62−174298号公報には、褪色した衣料の色彩を回復させるためにセルラーゼを含有する水溶液で処理することが記載されているが、その効果は十分でない。
【0006】
本発明の目的は、洗濯の繰り返し等により褪色した衣料の色彩を一般家庭で容易に回復させることのできる剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)25℃における屈折率が1.20〜1.45の水不溶性シリコーン化合物(以下、(a)成分という)、(b)分子中に4級アンモニウム基及び3級アミノ基の少なくとも1つと、炭素数8〜36のアルキル基及び炭素数8〜36のアルケニル基の少なくとも1つとを有する分子量300〜1000の化合物(以下、(b)成分という)並びに(c)水(以下、(c)成分という)を含有する色彩回復剤を提供するものである。
【0008】
なお、ここでいう「屈折率」はアッペ屈折計を用いて測定されるものであり、また「水不溶性」とは20℃のイオン交換水1Lに溶解する量が1g以下であることをいう。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の(a)成分は25℃における屈折率が1.20〜1.45、好ましくは1.25〜1.45、特に好ましくは1.30〜1.43の水不溶性のシリコーン化合物である。屈折率がこの範囲であると十分な色彩回復効果が得られ、また色彩も適正となる。なお、水に溶解するシリコーン化合物では、本発明の水不溶性のシリコーン化合物のような満足できる色彩回復効果を得ることができない。
【0010】
(a)成分のシリコーン化合物は、前記特定の屈折率範囲と溶解性の性質を有するオルガノポリシロキサンオイルであり、具体的には、ジメチルポリシロキサンオイル(以下、ジメチルシリコーンとする)又はジメチルシリコーンオイルの側鎖もしくは末端のメチル基の一部がヒドロキシ基になっているオルガノポリシロキサンオイル(以下、ヒドロキシシリコーンとする)の他に、前記ジメチルシリコーン又はヒドロキシシリコーンのメチル基(好ましくは側鎖のメチル基)の一部が“メチル基以外の有機基”になっているオルガノポリシロキサンオイル(以下、変性シリコーンとする)が挙げられる。変性シリコーンはシリコーンハンドブック(伊藤邦雄編集、日刊工業新聞社発行、1990年8月31日、初版1刷)の第6章を中心に例示されている。メチル基以外の有機基としては、アミノ基を含む有機基、アミド基を含む有機基、ポリエーテル基を含む有機基、エポキシ基を含む有機基、カルボキシ基を含む有機基、アルキル基を含む有機基又はハロゲノアルキル基、ハロゲノアルキレン基もしくはハロゲノアリール基を含む有機基の他に、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)鎖を含む有機基が挙げられる。本発明の色彩回復剤では、アミノ基又はポリ(N−アシルアルキレンイミン)鎖を含む有機基を有する変性シリコーンを用いることが好ましく、アミノ基又はポリ(N−アシルアルキレンイミン)鎖が炭素数2〜8のアルキレン基を介してポリシロキサン鎖の側鎖に結合している変性シリコーンがより好ましい。アミノ基を含む有機基を有する変性シリコーン(以下アミノ変性シリコーン)は、アミノ当量は1500〜40000g/mol、さらには2500〜20000g/mol、特には3000〜10000g/molのものが好ましい。なお、本発明において、水溶性の有機基を有する変性シリコーンを用いる場合は、変性率は20℃でのイオン交換水1L当たりの溶解性が1gを越えないものが選択される。
【0011】
本発明のシリコーン化合物は、ポリスチレンを標準とし、クロロホルムを展開溶媒とした時のゲル浸透型液体クロマトグラフィーによって求められる重量平均分子量が、1千〜100万のものが好ましく、3千〜50万のものがより好ましく、5千〜25万のものが最も好ましい。またB型粘度計を用い、25℃、ローターNo.2、60r/minの条件下で測定した粘度が、好ましくは10〜10万mm2/s、より好ましくは500〜5万mm2/s、最も好ましくは1千〜4万mm2/sのものである
本発明の(a)成分は水に不溶であるため、色彩回復剤中で均一に乳化、分散させる目的で乳化剤を配合することが好ましい。乳化剤としてはアルキルベンゼンスルホン酸又はその塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸塩等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキル又はアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキシド付加物、蔗糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤、アミンオキシド、スルホベタイン、カルボベタイン等の両性界面活性剤、モノ長鎖アルキル4級アンモニウム塩、ジ長鎖アルキル4級アンモニウム塩、トリ長鎖アルキル4級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0012】
本発明で特に好ましい乳化剤は一般式(1)の非イオン界面活性剤である。
R1−O−(R2O)p−H (1)
〔式中、R1は、炭素数8〜22、好ましくは10〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、R2は炭素数2又は3のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基である。また、pは2〜200、好ましくは5〜100、特に好ましくは5〜80の数を示す。〕
一般式(1)の化合物の具体例としては以下の化合物を挙げることができる。
R3−O−(C2H4O)r−H
〔式中、R3は炭素数10〜18のアルキル基であり、rは5〜60、好ましくは5〜40の数である。〕
R3−O−(C2H4O)s(C3H6O)t−H
〔式中、R3は上記と同じであり、s及びtは、それぞれ独立に2〜40、好ましくは2〜40の数であり、sとtの合計は5〜60の数である。エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム付加でもブロック付加でもよい。〕。
【0013】
本発明では乳化剤/(a)成分の重量比が、好ましくは1/1000〜2/1、より好ましくは5/1000〜1/1、特に好ましくは1/100〜1/1であることが、乳化、分散安定性の点から好ましい。また、色彩回復剤中の乳化粒子の粒径は0.02μm〜4μm、好ましくは0.02〜3μm、特に好ましくは0.01〜1μmが色彩回復性の点から好ましい。
【0014】
本発明の(b)成分としては、特に、(b1)下記一般式(2)の4級アンモニウム塩、(b2)下記一般式(3)又は(4)の3級アミン化合物、(b3)炭素数2〜10の多価アルコールと炭素数10〜20の脂肪酸エステル化合物、(b4)多価カルボン酸と炭素数10〜20のアルキル基を有する2級アミンとのアミド化合物、(b5)炭素数10〜20の脂肪酸とアルキレンジアミン、ジアルキレントリアミンもしくはヒドロキシアルキルアルキレンジアミンとのアミド化合物が好ましい。
【0015】
【化1】
【0016】
〔式中、R4は炭素数8〜36、好ましくは10〜24、特に好ましくは12〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、R6、R7は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR4−(X−R5)n−である。R8は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。Xは−COO−、−OCO−、−CONR9−、−NR9CO−から選ばれる基であり、R5は炭素数1〜5、好ましくは1〜3のアルキレン基である。R9は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。nは1又は0の数であり、Y-は無機又は有機の陰イオン、好ましくはハロゲンイオン、硫酸イオン、リン酸イオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数1〜12の脂肪酸イオン、特に好ましくはハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオンである。〕
【0017】
【化2】
【0018】
〔式中、R10は炭素数8〜36、好ましくは10〜24、特に好ましくは12〜18のアルキル基又はアルケニル基であり、R12、R13は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR10−(X−R11)m−である。Xは−COO−、−OCO−、−CONR9−、−NR9CO−から選ばれる基であり、R11は炭素数1〜5、好ましくは1〜3のアルキレン基である。mは1又は0の数である。R9は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。〕
【0019】
【化3】
【0020】
〔式中、R14、R15、R18、R21、R22は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基又はR23−(W−R24)l−であり、R14、R15、R18、R21、R22のうち、少なくとも1つはR23−(W−R24)l−である。ここでR23は炭素数8〜36のアルキル基であり、R24は炭素数1〜5のアルキレン基である。Wは−COO−、−OCO−、−CONR25−、−NR25CO−、−O−であり、各N原子に結合しているR23−(W−R24)l−間のW及びR24は同一又は異なっていてもよい。また、R25は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基もしくはヒドロキシアルキル基である。R16、R17、R19、R20は炭素数1〜5のアルキレン基であり、l、mは0、1又は2の数である。Y、Zは−COO−、−OCO−、−CONR26−、−NR26CO−、−O−、−CH(OR27)−から選ばれる基であり、これらは同一あるいは異なっていてもよい。R26、R27は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基あるいはヒドロキシアルキル基である。kは平均0〜10の数である。〕。
【0021】
(b3)の炭素数2〜10の多価アルコールと炭素数10〜20の脂肪酸エステル化合物としては、炭素数8〜22、好ましくは10〜20、より好ましくは12〜18の飽和又は不飽和の脂肪酸とグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールのモノ、ジ、トリ及び/又はテトラエステル体又はそれらの混合物や、炭素数8〜20、好ましくは12〜18のアルコールが少なくとも1つ付加したグリセリルエーテル又はジグリセリルエーテルあるいはこれらの混合物、あるいは炭素数8〜20、好ましくは12〜18の脂肪酸と炭素数1〜20、好ましくは1〜18のアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。これらの中でもグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールと炭素数12〜18の脂肪酸とのエステル化合物又はこれらの混合物が好ましい。
【0022】
(b4)の多価カルボン酸と2級アミンとのアミド化合物としては、蓚酸、グルタール酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、吉草酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ブラシル酸、ドデカンジ酸、トリカルバリン酸、1,2,3−プロパンジカルボン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸から選ばれる多価カルボン酸と炭素数8〜20、好ましくは12〜18の1級アミンとのアミド化合物を挙げることができる。
【0023】
(b5)の炭素数8〜20の脂肪酸とエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルエチレンジアミンとのアミド化合物も良好である。これらは全部もしくは部分的にアミド化されていてもよい。
【0024】
本発明の(b)成分としては、特に(b1)、(b2)及び(b3)が色彩回復効果の点で好ましく、特に(b1)及び(b2)が良好である。
【0025】
本発明の色彩回復剤は、(a)成分を2〜50重量%、更に5〜20重量%、(b)成分を1〜10重量%、更に1〜5重量%含有することが色彩回復効果の点から好ましい。また、(a)/(b)重量比は、好ましくは3/1〜100/1、さらに好ましくは3/1〜50/1、特に好ましくは4/1〜25/1である。
【0026】
本発明の(c)成分としては重金属イオンや硬度成分を除去した水が好ましく、イオン交換水や蒸留水が好ましい。本発明の色彩回復剤は、(c)成分を40重量%〜95重量%、更に50〜90重量%、特に60〜90重量%含有することが貯蔵安定性の点から望ましい。
【0027】
本発明の色彩回復剤は、(d)非水性溶媒(以下、(d)成分という)を含有することが好ましい。(d)成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、アルキルグリセリルエーテル、ジ又はトリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジ又はトリアルキレングルコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、シクロヘキサノール、2−ヘキサノール、1−オクタノール等を挙げることができる。
【0028】
これらの中でも特にエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、炭素数3〜8のアルキルグリセリルエーテル類、ジ又はトリエチレングルコールのモノ又はジアルキルエーテル、ジ又はトリエチレングルコールのモノ又はジフェニルエーテルが好ましい。特にエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール及びプロパノールから選ばれる1種以上を配合することが色彩回復効果、及び貯蔵安定性の点で好ましい。本発明の色彩回復剤は、(d)成分を0.1〜20重量%、更に0.5〜10重量%含有することが好ましい。
【0029】
本発明の色彩回復剤は、上記(a)、(b)更には(d)成分を水〔(c)成分〕によって希釈した分散液の形態で用いられる。
【0030】
また、本発明の色彩回復剤のpH(20℃)は2〜9、好ましくは3〜8.0が貯蔵安定性及び色彩回復効果の点から好ましい。
【0031】
本発明の色彩回復剤は、褪色衣料を浸け置きする方法以外に、中性洗剤のみならず一般に使用されている弱アルカリ性洗剤とともに衣料の洗浄の際に添加してもよく、また洗剤で衣料を洗浄後、すすぎ水に添加して用いられることにより、簡便に色柄物衣料の色彩を回復させることができる。洗剤とともに用いられる場合は洗濯液中の色彩回復剤の濃度は0.01〜2重量%が好ましく、特に0.033〜0.5重量%が好ましい。また、すすぎ水に添加して用いられる場合はすすぎ液中の色彩回復剤の濃度は0.001〜0.3重量%が好ましく、特に0.01〜0.2重量%が効率よく色彩回復効果を得るために好ましい。
【0032】
【実施例】
<色彩回復剤の調製>
下記(a−1)〜(e−2)成分を用いて表1〜2の組成物を調製した。調製に際し、各色彩回復剤は、配合成分を全重量が200gとなるように表1〜2の割合で200mlビ−カ−に入れ、直径30mmのステンレス製攪拌羽で300r/minの攪拌速度で室温にて4時間攪拌して混合調製した。各色彩回復剤の乳化物の粒径は0.02〜2μmの範囲内であった。なおこの粒径は大塚電子(株)製光散乱光度計ELS−800を用いて測定した。
(a−1):アミノ変性シリコーン(屈折率1.408、信越化学工業(株)社製KF−8002、粘度1,100mm2/s、アミノ当量1,700g/mol)
(a−2):アミノ変性シリコーン(屈折率1.408、信越化学工業(株)社製KF−8003、粘度1,850mm2/s、アミノ当量2,000g/mol)
(a−3):アミノ変性シリコーン(屈折率1.405、ジーイー東芝シリコーン社製TSF−4707、粘度10000mm2/s、アミノ当量7000g/mol)
(a−4):下記製造例1によって得られた、ポリ(N−アシルアルキレンイミン)鎖が導入された変性シリコーン(屈折率1.441)
<製造例1>
硫酸ジエチル29.7g(0.193モル)と2−エチル−2−オキサゾリン153g(1.54モル)を、脱水した酢酸エチル370gに溶解し、窒素雰囲気下、3時間加熱還流し、末端反応性ポリ(N−プロピオニルエチレンイミン)を得た。次に、側鎖1級アミノプロピル変性ポリジメチルシロキサン(分子量9,000、アミン当量1870)300g(アミノ基にして0.160モル)の50%酢酸エチル溶液を一括して加え、12時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、N−プロピオニルエチレンイミン-ジメチルシロキサン共重合体を淡黄色ゴム状固体(468g、収率97%)として得た。ジメチルポリシロキサンの含有率は61%であり、重量平均分子量は102,000であった。また、溶媒としてメタノ−ルを用いた塩酸による中和滴定の結果、アミノ基が残存していないことを確認した。
(a’−1):ポリエ−テル基が導入された変性シリコーン(屈折率1.460、信越化学工業(株)社製KF−354、粘度130mm2/s)
【0033】
【化4】
【0034】
<製造例2>
下記の製造方法(2−1)及び(2−2)により、(b−1)、(b−2)を製造した。
【0035】
(2−1)N−メチルエタノールアミンとアクリロ・ニトリルの付加物より、公知の方法[J.Org.Chem.,26,3409,(1960)]で合成したN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロピレンジアミン66gと硬化牛脂脂肪酸284gをフラスコに仕込み、180℃まで昇温した。その温度で約10時間、生成する水を留去しながら加熱した結果、(b−1)の化合物を主成分とする反応物300gを得た。得られた反応物の酸価、ケン化価、水酸基価、全アミン価、3級アミン価を測定し、反応物の組成を調べた結果、ジアルキル体が86重量%、モノアルキルアミド体が10重量%、未反応脂肪酸が4重量%であった。また、ガスクロマトグラフィーによる分析から、末反応のN−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル−1,3−プロピレンジアミンが反応物中に0.1重量%含有されていた。
【0036】
(2−2)上記の(2−1)で得られた化合物300gを8−アセチル化庶糟を添加した工業用アルコール60gに溶解し、才一トクレーブに仕込み、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール(BHT)を0.15g加えて、メチルクロライド28gを圧入した。100℃で約8時間反応させた結果、(b−2)の化合物を主成分とする反応物390gを得た。反応物の固形分は85重量%であり、アミン価の測定から、4級化反応率は96%であった。また、4級化されていないアミンのジアルキル体/モノアルキルアミド体の比率は85/15(重量比)であった。
【0037】
(b−3):下記製造例3によって得られた下記式の化合物
R−NH−(C2H4NH)n−H〔R:パーム核組成の炭化水素基〕
<製造例3>
2L4つ口フラスコに硫酸ジエチル21.4g(0.139モル)と2−オキサゾリン1.39モルを脱水した酢酸エチル700gに溶解し、窒素雰囲気下5時間加熱環流した。次にパーム核油由来のアルキル組成を持つ1級アミンの50%酢酸エチル溶液を444g(1.11モル)加え、10時間加熱環流した後、反応混合物中の酢酸エチルを減圧留去した。次に得られた化合物400gのアミド結合を加水分解し、副生したプロピオン酸を除去し化合物(b−3)を得た。平均重合度8モル、収率95%であった。
(b−4):セチルトリメチルアンモニウムクロライド(花王(株)製コ−タミン60W)
(b−5):グリセリン1モルと硬化牛脂組成の脂肪酸2モルとの脱水エステル化反応生成物
(b−6):クエン酸1モルとステアリルアミン2モルとの脱水アミド化反応生成物
(b−7):ヒドロキシエチルエチレンジアミン1モルと硬化牛脂組成の脂肪酸2モルとの脱水縮合反応生成物
(d−1):プロピレングリコール
(e−1):ラウリルアルコールにエチレンオキシドを5モル付加したもの(花王(株)製エマルゲン105)
(e−2):炭素数12〜14の2級アルコ−ルにエチレンオキシドを5モル付加したもの。
【0038】
<褪色衣料の調製>
市販紺色のポロシャツ(綿100%)2枚を弱アルカリ性洗剤を用いて洗濯機で洗浄した〔東芝製2槽式洗濯機VH−360S1、洗剤濃度0.0667重量%、水道水使用、強攪拌、浴比1/50(水量30L)、水温20℃、洗浄方法:10分間洗浄→1分間脱水→2分間ためすすぎ▲1▼→1分間脱水→2分間ためすすぎ▲2▼→1分間脱水を行った〕。この処理を7回繰り返した衣料は初期の色合が失われ全体的に白っぽくなっていた。これを褪色衣料として用いた。なお、ここで用いた弱アルカリ性洗剤は、平均粒径500μm(粒径125μm以下の粒子及び粒径1000μm以上の粒子を除去したもの)、見かけ嵩密度700g/cm3であり、組成は、直鎖アルキル(炭素数12と13の混合)ベンゼンスルホン酸ナトリウム22重量%、ラウリル硫酸エステルナトリウム5重量%、ミリスチン酸ナトリウム4重量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(エチレンオキシド平均付加モル数8)5重量%、1号ケイ酸ナトリウム8重量%、ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量1万)5重量%、A型ゼオライト15重量%、炭酸ナトリウム(ソーダ灰)15重量%、炭酸カリウム3重量%、プロテアーゼ(ノボノルディスク社製のサビナーゼ12.0T type−W)0.5重量%、セルラーゼ(花王株式会社製のKAC500)0.5重量%、無水硫酸ナトリウム17重量%(重量%は、揮発分7重量%を除いた洗剤中のもの)である。
【0039】
<処理方法1>
上記褪色衣料の1枚を、表1の色彩回復剤濃度が0.3重量%の水溶液に4分間浸漬後、1分間脱水し、次いで2分間すすぎと1分間脱水を2回繰り返した後、再度脱水し湿度50%、25℃の恒温室で12時間乾燥した。処理後の衣料の色彩回復の程度を、処理前の褪色衣料を対照として、10人(30代男性)のパネラーにより白色蛍光燈下で比較し、下記の基準で評価した。平均点が1未満を○、1以上〜1.5未満を△、1.5以上を×として表1に示した。
評価基準
0;新品衣料に近い色合
1:対照より色が鮮やかに見える
2:対照と同等である
3:対照より色が褪せて見える。
【0040】
【表1】
【0041】
(注)pHは、0.1N酢酸水溶液又は0.1N水酸化ナトリウム水溶液で調整した。また、各色彩回復剤の乳化状態の粒子の粒径は、0.02〜2μmの範囲内であった。また、比較品1−1は、便宜的にa’−1との重量比を(a)/(b)として示した。
【0042】
<処理方法2>
上記褪色衣料を、弱アルカリ性洗剤(褪色衣料の調製で用いたものと同じもの、洗剤濃度0.0667重量%)及び表2の色彩回復剤(0.3重量%)を併用して洗濯機で、前記褪色衣料の調製と同じ条件で、洗浄し、すすぎを行った。色彩回復効果を明確にするために、この操作を7回繰り返した。なお、対照は、表2の色彩回復剤を使用せずに7回洗浄した褪色衣料を用い、処理方法1の評価基準に従って評価した。結果を表2に示した。
【0043】
【表2】
【0044】
(注)pHは、0.1N酢酸水溶液又は0.1N水酸化ナトリウム水溶液で調整した。また、各色彩回復剤の乳化状態の粒子の粒径は、0.02〜2μmの範囲内であった。また、比較品2−1は、便宜的にa’−1との重量比を(a)/(b)として示した。
【0045】
<処理方法3>
上記褪色衣料の1枚を、上述と同様の方法で洗浄/すすぎを行い、ためすすぎ▲2▼の開始時に表1の本発明品1−1〜1−7の色彩回復剤20gを添加し2分間撹拌した。その後、脱水し湿度50%、25℃の恒温室で12時間乾燥した。この操作を7回繰り返した褪色衣料と、色彩回復剤を使用せずに7回洗浄した褪色衣料(対照)について、処理方法1の評価基準に従って評価したところ、処理方法1と同様に優れた色彩回復効果が得られた。
Claims (4)
- (a)25℃における屈折率が1.20〜1.45の水不溶性シリコーン化合物2〜50重量%、(b)分子中に4級アンモニウム基及び3級アミノ基の少なくとも1つと、炭素数8〜36のアルキル基及び炭素数8〜36のアルケニル基の少なくとも1つとを有する分子量300〜1000の化合物1〜10重量%、(c)水、並びに乳化剤〔(b)を除く〕を含有する衣料用色彩回復剤であって、
(a)と(b)の重量比が(a)/(b)で3/1〜25/1であり、
(a)と乳化剤の重量比が乳化剤/(a)で1/100〜1/1であり、
(b)が、(b1)下記一般式(2)の4級アンモニウム塩及び(b2)下記一般式(3)又は(4)の3級アミン化合物から選ばれる化合物である、
衣料用色彩回復剤。
- 更に(d)非水性溶媒を含有する請求項1記載の衣料用色彩回復剤。
- 洗剤を含む洗濯液を用いて色柄物衣料を洗浄する際に、請求項1又は2記載の衣料用色彩回復剤を0.01〜2重量の濃度となるように洗濯液中に添加して洗浄を行う、色柄物衣料の色彩を回復させる方法。
- 洗剤を含む洗濯液を用いて洗浄した色柄物衣料をすすぎ水ですすぐ際に、請求項1又は2記載の衣料用色彩回復剤を0.001〜0.3重量%の濃度となるようにすすぎ水中に添加してすすぎを行う、色柄物衣料の色彩を回復させる方法。
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