JP4443673B2 - 無端状金属ベルトの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無段変速機の動力伝達ベルトに用いられる無端状金属ベルトの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
V溝間隔を変換できる1対のプーリと、両プーリ間に張設された動力伝達ベルトからなる無段変速機が知られている。前記無段変速機では、前記動力伝達ベルトとして複数の無端状金属ベルトを重ね合わせた状態で保持したものが用いられている。
【0003】
前記無端状金属ベルトは、前記プーリ間を走行するときには直線状態を呈する一方、前記プーリに沿って走行するときには湾曲状態を呈し、前記直線状態と湾曲状態との繰り返しによる過酷な曲げ変形が加えられる。そこで、前記無端状金属ベルトは、前記過酷な曲げ変形に耐える強度を備えることが必要とされる。
【0004】
従来、前記過酷な曲げ変形に耐える強度を備える材料としてマルエージング鋼が知られている。前記マルエージング鋼は、17〜19%のNiの他、Co,Mo,Tiを含む低炭素鋼であり、溶体化後、適温に加熱することによりマルテンサイト状態において時効硬化を生じ、高強度、高靱性を兼ね備える超強力鋼であるので、前記無端状金属ベルトに賞用される。
【0005】
前記無端状金属ベルトは、前記マルエージング鋼の薄板の端部同士を溶接してリング状に形成した後、所定の長さに圧延することにより形成されている。しかし、前記動力伝達ベルト用無端状金属ベルトに用いる場合には、さらに、耐摩耗性、耐疲労強度を備えることが望まれるので、前記マルエージング鋼に表面硬化処理を施すことが行われている。前記表面硬化処理は、一般に、前記リング状に形成したマルエージング鋼を所定の長さに圧延して形成した無端状金属ベルトに、溶体化処理、周長補正、時効処理を施した後、ガス窒化処理、ガス軟窒化処理または塩浴窒化処理を施すことにより行われる。
【0006】
前記ガス窒化処理は、前記時効処理を施した無端状金属ベルトを、アンモニアガス雰囲気中に500〜550℃の処理温度で所定時間保持するものであり、前記ガス軟窒化処理は、ガス窒化処理のアンモニアガスに替えてアンモニアガスとRXガスとの混合雰囲気を用いるものである。前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理によれば、アンモニアの分解により生じる窒素がマルエージング鋼の金属組織中に浸透することにより、前記無端状金属ベルトの表面に窒化層を形成して硬化させ、耐摩耗性及び耐疲労強度を向上させることができる。
【0007】
しかしながら、前記マルエージング鋼は前記の様に一般の鋼に比較して多量のNiを含むので、前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理の際に、窒素が金属組織中に浸透しにくく、50〜100時間という長時間の処理を行っても十分な厚さの前記窒化層が形成されにくく、所期の物性を得ることが難しいとの不都合がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる不都合を解消して、ガス窒化処理またはガス軟窒化処理により容易に窒化層を形成して優れた物性を備える無端状金属ベルトを製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明の無端状金属ベルトの製造方法は、マルエージング鋼の鋼板の端部同士を溶接してリング状に形成し、所定の長さに圧延した後、ガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施して、無段変速機の動力伝達ベルトに用いられる無端状金属ベルトを製造する方法において、前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理に先立って、硫酸水素ナトリウム水溶液を用いて酸洗浄処理を施すことを特徴とする。
【0010】
本発明の製造方法によれば、前記酸洗浄処理によりマルエージング鋼の表面が活性化され、ガス窒化処理またはガス軟窒化処理により、金属組織中に容易に窒素を浸透させることができるようになる。この結果、無端状金属ベルトの表面に適正な厚さの窒化層が形成され、表面硬度及び圧縮残留応力等の物性に優れた無端状金属ベルトを得ることができる。尚、前記無端状金属ベルトは表面硬度が大きいほど耐摩耗性に優れ、圧縮残留応力が大きいほど耐疲労強度に優れている。
【0012】
本発明において、前記酸洗浄処理は15〜30秒の範囲の時間で行う。15秒未満では前記酸洗浄によりマルエージング鋼の表面を活性化する作用が十分に得られず、30秒を超えると酸洗浄が過剰になり、無端状金属ベルトの曲げ応力が低減する。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は酸洗浄の時間と形成される窒化層の厚さの関係を示すグラフ、図2は酸洗浄の時間と無端状金属ベルトの表面硬度との関係を示すグラフ、図3は酸洗浄の時間と無端状金属ベルトの圧縮残留応力との関係を示すグラフである。
【0014】
本実施形態に用いるマルエージング鋼は、Cが0.03%以下、Siが0.10%以下、Mnが0.10%以下、Pが0.01%以下、Sが0.01%以下の低炭素鋼であり、18〜19%のNi、4.7〜5.2%のMo、0.05〜0.15%のAl、0.50〜0.70%のTi、8.5〜9.5%のCoを含む18%のNi鋼である。
【0015】
本実施形態の製造方法では、まず、前記組成を有するマルエージング鋼の薄板をベンディングしてループ化したのち、端部を溶接して円筒状体を形成する。次に、これを真空炉中、820〜830℃に20〜60分間保持して溶体化処理する。前記溶体化処理により、結晶を再配列し、溶接歪を除去することができる。
【0016】
次に、前記円筒状体を所定の幅に切断し、リング状体を形成する。前記リング状体は前記切断により、その端部にエッジが立っているので、バレル研磨により面取りしたのち、圧下率40〜50%で冷間圧延し、無端状金属ベルトを形成する。
【0017】
次に、前記無端状金属ベルトを、硫酸水素ナトリウム(NaHSO4 )水溶液に15〜30秒間浸漬し、酸洗浄処理を行う。前記NaHSO4 水溶液は、例えば、240g/リットルの濃度で、55℃に加熱したものを用いる。
【0018】
次に、前記無端状金属ベルトにガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施すことにより、表層部に窒化層が形成され、内部が時効層となっている無端状金属ベルトを得ることができる。
【0019】
次に、冷間圧延後の無端状金属ベルト(厚さ0.18mm)を、55℃に加熱したNaHSO4 水溶液(240g/リットル)に浸漬する酸洗浄処理を施した後、ガス軟窒化処理を施したときに、該酸洗浄処理の時間と、窒化層の厚さとの関係を図1に示す。前記ガス軟窒化処理は、アンモニアガスとRXガスとの混合雰囲気中、500℃の処理時間で60分間行った。また、窒化層の厚さは目視により測定した。
【0020】
前記無端状金属ベルトでは、形成される窒化層が厚いほど、耐摩耗性及び耐疲労強度が向上する。しかし、表層部の窒化層が厚くなると、相対的に内部の時効層が薄くなり、マルエージング鋼本来の強度及び靱性が低減するので、一般に全体の厚さの20〜40%の厚さの窒化層が形成されることが好ましいとされる。本実施形態の製造方法によれば、窒化処理に要する時間が前記のように60分間という極く短い時間であるにも関わらず、図1から明らかな様に、酸洗浄処理の時間を15〜30秒の範囲とすることにより、前記範囲の厚さの窒化層を形成することができる。
【0021】
次に、図1の場合と全く同一の条件で処理した無端状金属ベルトについて、酸洗浄処理の時間と、マイクロビッカース硬度で示す表面硬度との関係を図2に示す。前記無端状金属ベルトでは、表面硬度は耐摩耗性の指標とされ、表面硬度が大きいほど耐摩耗性に優れている。しかし、前記表面硬度を大きくするために表層部の窒化層を厚くすると、前記のようにマルエージング鋼本来の強度及び靱性が低減するので、前記表面硬度は一般に820〜890(HMV)の範囲であることが好ましいとされる。
【0022】
図2から明らかなように、本実施形態の製造方法によれば、酸洗浄処理の時間を15〜30秒の範囲とすることにより前記範囲の表面硬度が得られ、特に酸洗浄処理の時間を30秒としたときに前記表面硬度が最大となることが明らかである。
【0023】
次に、図1の場合と全く同一の条件で処理した無端状金属ベルトについて、酸洗浄処理の時間と、圧縮残留応力との関係を図3に示す。前記無端状金属ベルトでは、圧縮残留応力は耐疲労強度の指標とされ、圧縮残留応力が大きいほど耐疲労強度に優れている。そして、前記圧縮残留応力は、前記無端状金属ベルトを無段階変速機の動力伝達ベルトに使用したときに破断までに十分な耐久回数を得るために、90kgf/mm2 以上であることが好ましいとされる。
【0024】
図3から明らかなように、本実施形態の製造方法によれば、酸洗浄処理の時間を15〜30秒の範囲とすることにより前記範囲の圧縮残留応力が得られ、特に酸洗浄処理の時間を30秒としたときに前記圧縮残留応力が最大となることが明らかである。
【0025】
本実施形態では、ガス軟窒化処理の場合について説明しているが、前記ガス軟窒化処理に替えてガス窒化処理を行ってもよく、同様の結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法において、酸洗浄の時間と形成される窒化層の厚さの関係を示すグラフ。
【図2】本発明の製造方法において、酸洗浄の時間と無端状金属ベルトの表面硬度との関係を示すグラフ。
【図3】本発明の製造方法において、酸洗浄の時間と無端状金属ベルトの圧縮残留応力との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
符号無し。
Claims (2)
- マルエージング鋼の鋼板の端部同士を溶接してリング状に形成し、所定の長さに圧延した後、ガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施して、無段変速機の動力伝達ベルトに用いられる無端状金属ベルトを製造する方法において、
前記ガス窒化処理またはガス軟窒化処理に先立って、硫酸水素ナトリウム水溶液を用いて酸洗浄処理を施すことを特徴とする無端状金属ベルトの製造方法。 - 前記酸洗浄処理は、15〜30秒の範囲の時間で行うことを特徴とする請求項1記載の無端状金属ベルトの製造方法。
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