JP2005330565A - マルエージング鋼の表面硬化処理方法 - Google Patents

マルエージング鋼の表面硬化処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 マルエージング鋼を材質とする無端状金属ベルトに対して酸化処理を行った後、480℃未満の塩浴窒化処理温度にて窒化処理することが可能で、かつ、アニオン分としてシアンを含有する溶融塩組成物にて窒化処理を行い、耐久性を害する化合物層を形成させずに、均一な窒化層を形成させることができる処理方法を提供すること。
【解決手段】 マルエージング鋼の表面に酸化物層を形成する前処理を行い、その後、アニオン分として3〜20質量%のシアンと、30〜50質量%のシアン酸を含有し、アニオン分の残分が少なくとも炭酸を含有し、さらにカチオン分として少なくともナトリウムまたはカリウムを含有する塩浴中で窒化処理することを含むマルエージング鋼の表面硬化処理方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、マルエージング鋼製の無端状金属ベルト、詳しくは無段変速機の動力伝達ベルトに好適な表面硬化処理方法に関するものであり、特に該無端状金属ベルトの耐磨耗性と耐疲労強度性を向上させる技術に関するものである。
無段変速機の動力伝達に使用される無端状金属ベルトに、耐磨耗性、耐疲労強度性を付与する目的で行われる表面硬化処理として、塩浴窒化やガス軟窒化による方法がある。ここで、無段変速機は、V溝間隔を変換できる1対のプーリーと、両プーリー間に張設された動力伝達ベルトからなり、前記動力伝達ベルトとして複数の無端状金属ベルトを重ね合わせた状態で保持したものが使用されている。
前記無端状金属ベルトは、前記プーリー間を走行するときは直線状態を呈し、プーリーに沿って走行するときは、湾曲状態を呈する。この繰り返しによる過酷な曲げ応力が前記無端状金属ベルトに加わる。その曲げ応力に耐える強度と靱性が必要とされるため、マルエージング鋼板の端部同士を溶接してリング状に形成した後、所定の長さに圧延することにより形成されている。
前記マルエージング鋼は17〜19%のNiの他、Co,Mo,Tiを含む低炭素鋼であり、溶体化後、適温に加熱することによりマルテンサイト状態において時効硬化を生じ、高強度、高靱性を兼ね備える超強力鋼である。前記マルエージング鋼は、前記高強度、高靱性により、前記の様な過酷な条件で使用される無段変速機の動力伝達ベルト用無端状金属ベルトに賞用されている。
しかし、前記動力伝達ベルト用無端状金属ベルトに用いる場合には、さらに耐磨耗性、耐疲労強度性を備えることが望まれるので、前記塩浴窒化、ガス軟窒化等により前記マルエージング鋼に表面硬化処理を実施している。
前記マルエージング鋼の窒化処理温度が480℃未満では、前記マルエージング鋼の表面に緻密な酸化皮膜があるためか、窒化されにくい場合があり、塩浴窒化の場合では前記マルエージング鋼の窒化処理後の表面硬さが低くなったり、窒化層厚さが不均一になることがある。
前記マルエージング鋼の窒化処理温度が480℃以上では窒化処理時間が十分に長ければ、前記マルエージング鋼の表面にある緻密な酸化皮膜により窒化層厚さが不均一になる不具合は発生しないが、塩浴窒化の場合では10分にても前記無端状金属ベルトの表面に
Fe2-3Nなどの化合物層が生成し、前記無端状金属ベルトの耐久性は極端に低下する。
前記無端状金属ベルトの塩浴窒化処理に関するものでは、「無端状金属ベルトの塩浴窒化のための溶融塩組成物」が提案されている(特許文献1)。特許文献1の第3ページ左欄第29行以降に記載されるとおり、塩浴窒化の処理温度として480〜530℃の範囲に加熱して行うとある。しかし、前記の塩浴窒化の処理温度範囲で塩浴窒化処理をする場合、前記マルエージング鋼の表面に化合物層を生成させずに塩浴窒化処理を行うためには、塩浴窒化処理の処理時間が最大10分までとなるので、前記マルエージング鋼の表面にある酸化皮膜の影響を受けて窒化層厚さが不均一となる恐れがある。すなわち、窒化処理温度が480℃以上の温度では前記マルエージング鋼に化合物層を生成させずに、均一な厚さの窒化層を形成させるには不適当な温度領域といえる。前記問題の解決のため、「マルエージング鋼の窒化処理方法」(特許文献2)や「マルエージング鋼の表面硬化処理方法およびその方法によって製造されたベルト式無段変速機用のベルト」(特許文献3)が提案されている。
特許文献2の方法では、前記マルエージング鋼の窒化処理時に有機系塩化物を添加した雰囲気ガス中で、処理温度を時効析出温度以下、均熱時間を15〜60分の範囲内として、化合物層を形成させないで窒化処理することを特徴とする。特許文献3の方法では前記マルエージング鋼の窒化処理前に酸化雰囲気中で330〜450℃の酸化処理温度で15分未満の酸化処理時間で酸化処理して酸化物層を生成し、その後、窒化雰囲気中で430〜480℃の窒化処理温度で窒化処理することを特徴とする。
前記マルエージング鋼を一定の周長となるようにベルト状に成形して窒化しようとする場合、窒化処理炉内の温度のバラツキが大きいと前記無端状金属ベルトの窒化処理後の周長の変化のバラツキが大きくなる現象が認められている。
無段変速機用に無端状金属ベルトを使用する場合、10数枚のベルトを束ねてエレメントと呼ぶ薄板状のコマを環状に連ねたものに嵌め込まれて使用される。高い耐久性能が要求される無段変速機として機能させるためには、一組に束ねられる10数枚のベルトのおのおのの周長の公差は数10μm以下しかなく、窒化処理炉内の温度のバラツキが大きいと窒化処理後の無端状金属ベルトの周長が所定の公差に収まる割合は大きく減少する。
特許文献2の方法は、第2ページ右欄第32行以降に記載される通りに、窒化雰囲気としてNH3ガスもしくはそれにN2等のガスを混合したものを使用している。特許文献3の方法も、第4ページ第50行以降に記載される通りに、窒化雰囲気としてNH3ガスもしくはそれにN2等のガスを混合したものを使用している。しかし、このような窒化雰囲気炉の炉内温度分布のバラツキは塩浴窒化炉に比較すれば桁違いに大きく、窒化雰囲気炉内の温度に違いにより窒化ポテンシャルのバラツキが発生する。窒化雰囲気炉内のセット位置の違いにより前記無端状金属ベルトの窒化の進行程度にも相違が起こり、窒化処理後の周長のバラツキも大きくなる。従って、窒化雰囲気炉を使用する窒化処理方法では窒化処理後の前記無端状金属ベルトの周長を公差内に収めるのは非常に困難といえる。窒化処理後の周長が所定の公差に収まらないベルトは廃棄せざるを得ず、経済的に大変な損失である。
特開2000−345317号公報 特開2002−173760号公報 特開2004−43962号公報
本発明の目的は、マルエージング鋼を材質とする無端状金属ベルトに対して酸化処理を行った後、480℃未満の塩浴窒化処理温度にて窒化処理することが可能で、かつ、アニオン分としてシアンを含有する溶融塩組成物にて窒化処理を行い、耐久性を害する化合物層を形成させずに、均一な窒化層を形成させることができる処理方法を提供することにある。
本発明者らは、従来技術の抱える上記問題点を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、マルエージング鋼の表面に酸化物層を形成する前処理を行うと、緻密ではなくて格子欠陥の多い酸化物層が形成され、次いで特定の塩浴中で窒化処理すると、上記課題を解決できるとの知見を得、これにより本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、マルエージング鋼の表面に酸化物層を形成する前処理を行い、その後、アニオン分として3〜20質量%のシアンと、30〜50質量%のシアン酸を含有し、アニオン分の残分が少なくとも炭酸を含有し、さらにカチオン分として少なくともナトリウムまたはカリウムを含有する塩浴中で窒化処理することを特徴とするマルエージング鋼の表面硬化処理方法を提供する。
本発明は、又、酸化雰囲気中、280〜450℃で3〜60分の酸化処理を行う上記表面硬化処理方法を提供する。
本発明は、又、窒化処理を、350〜470℃で行う上記表面硬化処理方法を提供する。
本発明の塩浴窒化の処理方法によれば、無段変速機の動力伝達ベルトとして使用されるマルエージング鋼製無端状金属ベルトの塩浴窒化処理方法及び優れた耐磨耗性と耐疲労強度性を確保した無端状金属ベルトを提供できる。すなわち、窒化処理前後における無端状金属ベルトの周長の変化のバラツキを最小限に抑制することができる。従って、無端状金属ベルトの窒化処理後の公差不良による歩留まりの低下がほとんどないことから、工業的に極めて優れている方法といえる。また、無端状金属ベルトの酸化雰囲気中での酸化処理時間として最大60分まで可能であることから、例えば、大気雰囲気炉に投入する場合でも無端状金属ベルトの酸化を十分に行うことが可能であり、酸化処理時間が不足することによる窒化層厚さのバラツキを生じることはない。
特に、本発明の処理方法によれば、マルエージング鋼製無端状金属ベルトの表面に耐久性を害する化合物層を形成させずに、窒化処理前後における無端状金属ベルトの周長の変化のバラツキを最小限に抑えて、均一な窒化層を形成させることができ、マルエージング鋼製無端状金属ベルトに最適な耐磨耗性と耐疲労強度性を付与することができる。
本発明で処理の対象とするマルエージング鋼は、例えば、Cが0.03質量%(以下%と略称する)以下、SiとMnを加えた合計が0.20%以下、Pが0.01%以下、Sが0.01%以下の低炭素鋼であり、17〜19%のNi、4.6〜5.2%のMo、0.05〜0.15%のAl、0.3〜0.7%のTi、7〜9.5%のCoを含む18%のNi鋼があげられるが、特にこれに限定されない。
特に、本発明では、マルエージング鋼で形成された無端状金属ベルトを対象とするのが好ましく、無端状金属ベルトとしてはマルエージング鋼の鋼板の端部同士を溶接してリング状に形成した後、所定の長さに圧延して形成された、無段変速機の動力伝達ベルトに用いられるものが好ましい。
より具体的には、初めに前記組成を有するマルエージング鋼の薄板をベンディングしてループ化した後、端部を溶接して円筒状体を形成する。次に、得られた円筒状体を所定の幅に切断し、リング状体を形成する。次に、得られたリング状体は、切断によりその端部にエッジが立っているので、バレル研磨により面取りした後、冷間圧延し、無端状金属ベルトを形成する。次に、前記無端状金属ベルトを真空炉中で溶体化処理する。前記溶体化処理により、溶接歪を除去し、異方性のない結晶組織の無端状金属ベルトを得る。
本発明では、マルエージング鋼の表面に酸化物層を形成する前処理を行う前に、マルエージング鋼を真空炉中で時効処理するのが好ましい。ここで、時効処理としては、440〜500℃の時効処理温度で、かつ、50〜180分の条件で行うのがよい。これにより、マルエージング鋼の強度が向上し、耐久性をより高くすることができる。
次に、マルエージング鋼の表面に酸化物層を形成する前処理(酸化処理)を行う。酸化処理に用いる媒体は大気等の気体に限定されず、過酸化水素等の酸化剤を混合した水溶液による酸化処理でも可能であって、特に限定されるものではない。酸化雰囲気中で酸化処理を実施する場合は、280〜450℃の酸化処理温度で、かつ、3〜60分の酸化処理時間で酸化処理を行い、前記無端状金属ベルトの表面に酸化物層を生成させるのがよい。この条件で前処理を行うと、緻密ではなくて格子欠陥の多い酸化物層が形成されるので、窒化塩浴中に含有されるCNO-が鉄と接触した時に生成される原子状窒素が拡散しやすくなり、極めて効果的に窒化処理を行うことができる。酸化物層の厚みは、窒化後に、0.6〜1.5μmとなるような厚みであるのが好ましい。
酸化雰囲気中で酸化処理を行う場合、一般的な大気雰囲気炉にて行うことができる。酸化処理は、大気雰囲気炉内にセットされたマルエージング鋼の全ての表面の酸化を十分に行うため、350〜450℃の酸化処理温度で、かつ、15〜60分の酸化処理時間の酸化処理を行うことがより好ましい。
次に、塩浴窒化処理を実施する。
本発明で用いる塩浴窒化用溶融塩組成物に含有させるCN-、CNO-、CO3 2-、Na+、K+としては、これらのイオン供給源として当業界で用いられているものを使用することができる。例えば、CN-供給源としては、NaCNやKCNなどのシアン化物、CNO-供給源としては、NaCNOやKCNOなどのシアン酸塩、CO3 2-供給源としては、Na2CO3やK2CO3などの各種溶融性炭酸塩、Na+やK+供給源としては、前記ナトリウム塩やカリウム塩に加えて種々の非酸化性及び溶融性のナトリウム塩やカリウム塩を用いることができる。
本発明で用いる塩浴窒化用溶融塩組成物は、アニオン分として3〜20質量%のシアン(CN-)と、30〜50質量%のシアン酸(CNO-)を含有し、アニオン分の残分が少なくとも炭酸(CO3 2-)を含有し、さらにカチオン分として少なくともナトリウムまたはカリウムを含有することを特徴とするが、シアン(CN-)を3〜5質量%、シアン酸(CNO-)を40〜45質量%含有するのが好ましく、炭酸(CO3 2-)を2〜13質量%含有するのが好ましい。又、ナトリウムまたはカリウムを合計で45〜50質量%(以下、単に%と表記する)含有するのが好ましく、特にナトリウム及びカリウムを含有するのが好ましい。この際、ナトリウムとカリウムを1/2〜1/20(質量比)で含有するのが好ましい。
本発明で用いる溶融塩組成物によれば、30〜50%のシアン酸が前記無端状金属ベルトの表面の窒化を担い、3〜20%のシアンが前記塩浴に吹き込まれるエアーにより酸化されてシアン酸となり、前記無端状金属ベルトの窒化に消費されたシアン酸分を補給する。前記溶融塩はアニオン分として3〜20%のシアンと、30〜50%のシアン酸とを含み、アニオン分の残分に少なくとも炭酸を含有し、さらにカチオン分として少なくともナトリウムまたはカリウムを含有することを特徴とするものである。
本発明の溶融塩組成物を用いる窒化方法においては、350〜470℃で窒化を行うのが好ましく、さらにこの温度域10分以上行うのが好ましく、より好ましくは窒化処理温度が430〜460℃で、かつ、窒化処理時間が15分以上である。
本発明において前処理である酸化処理により窒化が促進されるメカニズムははっきりとはわからないが、マルエージング鋼、つまりこれで形成した無端状金属ベルトの表面に生成しており、通常、窒化を阻害している緻密な酸化物層が前記酸化処理により緻密でない酸化物層に変異したためであると推察される。
酸化処理により生成した前記無端状金属ベルトの表面の酸化物層は窒化用塩浴中に含まれるシアンによりエッチングされ除去されると同時に、塩浴中に含まれるシアン酸により窒化が進行する。無端状金属ベルトの酸化処理時間を最大60分と長時間にして厚い酸化物層が生成しても、塩浴中に含まれるシアンによるエッチング作用があるので、塩浴窒化処理時に酸化物層は除去もしくは十分に薄くすることができ、酸化処理時に生成した酸化物層が無端状金属ベルトの耐久性に悪影響を及ぼすことはない。
以下に、実施例および比較例をあげて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制約されるものではない。
実施例1〜19
18%Ni系マルエージング鋼の試料片を真空炉で溶体化処理し、470℃で90分間時効処理を真空炉で行った。その後、大気雰囲気炉にて280〜450℃、3〜60分間、酸化処理を行った。酸化処理が終了後、440℃、60分間、塩浴窒化処理を行った。実施例1〜4、16〜19の塩浴の溶融塩組成はCN-:3.0%、CNO-:47.0%、CO3 2-:3.6%、Na+:9.3%、K+:37.1%、また、実施例5〜7、12〜15の塩浴の溶融塩組成はCN-:10.3%、CNO-:39.0%、CO3 2-:4.5%、Na+:16.2%:K+:30.0%、さらに、実施例8〜11の塩浴の溶融塩組成はCN-:19.2%、CNO-:30.0%、CO3 2-:4.4%、Na+:23.2%、K+:23.2%であった。尚、窒化後における酸化物層の厚みは0.6〜1.5μmであった(以下同じ)。
実施例20〜23
酸化処理温度と酸化処理時間を変え、その後、塩浴窒化処理を行った。実施例20の塩浴の溶融塩組成はCN-:5.0%、CNO-:45.0%、CO3 2-:3.1%、Na+:9.4%、K+:37.5%、また、実施例21の塩浴の溶融塩組成はCN-:10.3%、CNO-:39.0%、CO3 2-:4.5%、Na+:16.2%、K+:30.0%、さらに、実施例22及び23の塩浴の溶融塩組成はCN-:17.5%、CNO-:30.0%、CO3 2-:5.0%、Na+:19.0%:K+:28.5%であった。その他の工程は実施例1と同一条件で、試料片の塩浴窒化処理を行った。
実施例における酸化処理条件、塩浴窒化処理後の硬さおよびFe2-3Nなどの化合物層の有無の調査結果を表1に示す。硬さの調査は、50g荷重のビッカース硬さ試験により表面硬さおよび断面硬さについて行った。
表1
Figure 2005330565
表1、図1および図2から本発明の処理方法により得られたマルエージング鋼は、表面硬さが800HV以上あり、かつ、耐久性能を低下させる化合物層の生成および芯部の硬さの低下が無いことから、本発明方法により得られた該無端状金属ベルトは優れた耐久性と耐磨耗性があることは明らかである。また、表1の実施例9〜11、13〜15、17〜19にて示されたように350〜450℃の酸化処理温度で、かつ、15〜60分の酸化処理時間の酸化処理を行った後、塩浴窒化処理を行ったマルエージング鋼の表面硬さは850HV以上であることから、好ましくは前記酸化処理条件で酸化処理を行う方がより優れた耐久性能がある無端状金属ベルトになる。
一方、表1の実施例20〜23にて示されたように200℃および250℃と酸化処理温度が低いもの、さらに、500℃の酸化処理温度と酸化処理温度が高いものは、塩浴窒化処理を行った後のマルエージング鋼の表面硬さは800HV未満となった。酸化処理温度が低いと塩浴窒化処理後の表面硬さが低い理由は、マルエージング鋼の表面に存在し、窒化反応を阻害する緻密な酸化物層を緻密でない酸化物層に置き換えるためには酸化処理温度が低すぎて十分に行われなかったためと考えられる。また、酸化処理温度が高いと塩浴窒化処理後の表面硬さが低い理由は、酸化処理時に生成する酸化物層が厚く成長しすぎて、該溶融塩組成中のシアンによるエッチング作用によっても十分に除去することができず、窒化処理後にも酸化物層が厚く残留したためであると考えられる。
実施例24及び25
18%Ni系マルエージング鋼製無端状金属ベルトを真空炉で溶体化処理し、470℃の時効処理温度で、かつ、90分の時効処理時間で時効処理を真空炉で行った。その後、大気雰囲気炉にて400℃の酸化処理温度で、かつ、10分および60分の酸化処理時間で酸化処理を行った。酸化処理が終了後、440℃の塩浴窒化処理温度で、かつ、60分の塩浴窒化処理時間で塩浴窒化処理を行った。その後、無端状金属ベルトの周長を測定した。実施例24の塩浴の溶融塩組成はCN-:5.0%、CNO-:45.0%、CO3 2-:3.1%、Na+:9.4%、K+:37.5%、また、実施例25の塩浴の溶融塩組成はCN-:10.0%、CNO-:36.8%、CO3 2-:5.3%、Na+:12.0%、K+:35.9%であった。酸化処理前の無端状金属ベルトの周長が610.00mmとなるようにした。
比較例1及び2
18%Ni系マルエージング鋼製無端状金属ベルトを真空炉で溶体化処理し、470℃の時効処理温度で、かつ、180分の時効処理時間で時効処理を真空炉で行った。その後、大気雰囲気炉にて400℃の酸化処理温度で、かつ、10分および60分の酸化処理時間で酸化処理を行った。酸化処理が終了後、450℃のガス軟窒化処理温度で、かつ、60分のガス軟窒化処理時間でガス軟窒化処理を行った。その後、無端状金属ベルトの周長を測定した。酸化処理前の無端状金属ベルトの周長が610.00mmとなるようにした。
塩浴窒化処理またはガス軟窒化処理する無端状金属ベルトは1ロットで200本用意し、有効加熱帯に偏りなく均一となるようにセットを行う。窒化処理が終了した無端状金属ベルトを無作為に20本選んで、無端状金属ベルトの周長を測定する。酸化処理前の無端状金属ベルトの周長を基準として窒化処理後の無端状金属ベルトの周長の変化量を求める。実施例20、21の窒化処理前後における周長の変化量と比較例5、6の窒化処理前後における周長の変化量の標準偏差に有意差があるかの検定を行う。前記検定を行って、有意差がある場合は標準偏差の小さいロットの方が標準偏差の大きいロットに比較して窒化処理後の周長の変化のバラツキが小さいといえる。
実施例24及び25と比較例1及び2の窒化処理後の周長の変化量の平均および標準偏差を表2に示す。
表2
Figure 2005330565
表2、図3、図4、図5および図6から本発明の処理方法により得られた該無端状金属ベルトはガス軟窒化処理により得られた無端状金属ベルトより1%の有意水準のもとで窒化処理前後における周長の変化のバラツキが小さいことは明らかである。ここで、比較例1は特許文献3に記載される通りの時効処理方法および窒化処理方法で製造された無端状金属ベルトである。すなわち、本発明の処理方法により得られた無端状金属ベルトの周長を所定の公差内に入れるのは容易であるといえる。本発明の処理方法により窒化処理後の周長の公差不良による無端状金属ベルトの廃棄という資源や製造に要したエネルギーの浪費を低減することができ、工業的にも経済的にも大変優れている処理方法といえる。
実施例26〜28
18%Ni系マルエージング鋼製無端状金属ベルトを真空炉で溶体化処理し、470℃の時効処理温度で、かつ、90分の時効処理時間で時効処理を真空炉で行った。その後、400℃の酸化処理温度で、かつ、15分の酸化処理時間で酸化処理を行った後、430〜470℃の塩浴窒化処理温度で、かつ、15〜90分の塩浴窒化処理時間でCN-:4.8%、CNO-:46.1%、CO3 2-:2.4%、Na+:9.3%、K+:37.4%の溶融塩組成の塩浴中で窒化処理を行った。その後、無端状金属ベルトの耐久性の評価を行った。
比較例3及び4
480℃の塩浴窒化処理温度で、かつ、8〜15分の塩浴窒化処理時間で塩浴窒化処理を行った後、無端状金属ベルトの耐久性の評価を行った。比較例13〜14の塩浴の溶融塩組成はCN-:1.2%、CNO-:52.3%、CO3 2-:3.5%、Na+:17.2%、K+:25.8%。その他の工程は実施例と同一条件である。
図7に示す装置を使用して、無端状金属ベルトの耐久試験を行い、無端状金属ベルトが破断するまでの時間にて耐磨耗性および耐疲労強度性の評価を行った。耐久試験の方法は図7に示すように無端状金属ベルト1を巻き付け、ロール2を固定して、ロール3に無端状金属ベルト1に対して150kgf/mm2となる引っ張り応力を負荷し、無端状金属ベルト1が破断するまでの回転数を計測した。前記耐久試験における回転数と耐久時間との関係は8×105回の回転数で耐久時間24時間相当である。
実施例および比較例における塩浴窒化処理条件、耐久時間および化合物層の有無の調査結果を表3に示す。



表3
Figure 2005330565
表3の実施例26〜28にて示されたように、本発明方法により得られた該無端状金属ベルトは優れた耐久性と耐磨耗性があることは明らかである。一方、表3の比較例3及び4にて示されたように480℃の塩浴窒化処理温度で8分の塩浴窒化処理時間の無端状金属ベルトは化合物層の形成は認められないものの、窒化層厚さのバラツキがあるためか、耐久時間が短くなった。また、480℃の塩浴窒化処理温度で15分の塩浴窒化処理時間の無端状金属ベルトはFe2-3Nである化合物層の形成があるために耐久時間が極端に短かくなった。
酸化処理が30分の酸化処理時間の場合の酸化処理温度と表面硬さとの関係を示す。 400℃の酸化処理温度の場合の酸化処理時間と表面硬さとの関係を示す。 塩浴窒化処理を行った場合(実施例24)の無端状金属ベルトの窒化処理前後における周長変化を示す。 塩浴窒化処理を行った場合(実施例25)の無端状金属ベルトの窒化処理前後における周長変化を示す。 ガス軟窒化処理を行った場合(比較例1)の無端状金属ベルトの窒化処理前後における周長変化を示す。 ガス軟窒化処理を行った場合(比較例2)の無端状金属ベルトの窒化処理前後における周長変化を示す。 無端状金属ベルトの耐久試験の模式図である。
符号の説明
1…無端状金属ベルト、2…固定ロール、3…可動ロール

Claims (3)

  1. マルエージング鋼の表面に酸化物層を形成する前処理を行い、その後、アニオン分として3〜20質量%のシアンと、30〜50質量%のシアン酸を含有し、アニオン分の残分が少なくとも炭酸を含有し、さらにカチオン分として少なくともナトリウムまたはカリウムを含有する塩浴中で窒化処理することを特徴とするマルエージング鋼の表面硬化処理方法。
  2. 前処理が、酸化雰囲気中、280〜450℃で3〜60分の酸化処理を行う請求項1に記載の表面硬化処理方法。
  3. 窒化処理を、350〜470℃で行う請求項1又は2に記載の表面硬化処理方法。
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