JP2004169163A - マルエージング鋼の塩浴窒化用溶融塩組成物、その処理方法及び無端状金属ベルト - Google Patents
マルエージング鋼の塩浴窒化用溶融塩組成物、その処理方法及び無端状金属ベルト Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004169163A JP2004169163A JP2002339428A JP2002339428A JP2004169163A JP 2004169163 A JP2004169163 A JP 2004169163A JP 2002339428 A JP2002339428 A JP 2002339428A JP 2002339428 A JP2002339428 A JP 2002339428A JP 2004169163 A JP2004169163 A JP 2004169163A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- endless metal
- metal belt
- salt bath
- nitriding
- maraging steel
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02P—CLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
- Y02P10/00—Technologies related to metal processing
- Y02P10/20—Recycling
Landscapes
- Heat Treatment Of Articles (AREA)
Abstract
【解決手段】アニオン分として3〜20質量%のシアン(CN−)と、30〜50質量%のシアン酸(CNO−)を含有し、アニオン分の残分が少なくとも炭酸(CO3 2−)を含有し、さらにカチオン分として少なくともナトリウムまたはカリウムを含有するマルエージング鋼の塩浴窒化用溶融塩組成物、及び該溶融塩組成物の塩浴でマルエージング鋼を350〜470℃で処理すること含むマルエージング鋼の窒化方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マルエージング鋼製の無端状金属ベルト、詳しくは無段変速機の動力伝達ベルトに好適な塩浴窒化のための溶融塩組成物、その方法及び無端状金属ベルトに関するものであり、特に該無端状金属ベルトの耐磨耗性と曲げ疲労強度を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
無段変速機の動力伝達に使用される無端状金属ベルトに、耐磨耗性、耐疲労強度性を付与する目的で行われる表面硬化処理として、塩浴窒化やガス窒化による方法がある。
前記無段変速機は、V溝間隔を変換できる1対のプーリーと、両プーリー間に張設された動力伝達ベルトからなり、前記動力伝達ベルトとして複数の無端状金属ベルトを重ね合わせた状態で保持したものが使用されている。
前記無端状金属ベルトは、前記プーリー間を走行するときは直線状態を呈し、プーリーに沿って走行するときは、湾曲状態を呈する。この繰り返しによる過酷な曲げ応力が前記無端状金属ベルトに加わる。その曲げ応力に耐える強度と靱性が必要とされるため、マルエージング鋼板の端部同士を溶接してリング状に形成した後、所定の長さに圧延することにより形成されている。
【0003】
前記マルエージング鋼は17〜19%のNiの他、Co,Mo,Tiを含む低炭素鋼であり、溶体化後、適温に加熱することによりマルテンサイト状態において時効硬化を生じ、高強度、高靱性を兼ね備える超強力鋼である。前記マルエージング鋼は、前記高強度、高靱性により、前記の様な過酷な条件で使用される無段変速機の動力伝達ベルト用無端状金属ベルトに賞用されている。
しかし、前記動力伝達ベルト用無端状金属ベルトに用いる場合には、さらに耐磨耗性、耐疲労強度性を備えることが望まれるので、従来塩浴窒化、ガス窒化等により前記マルエージング鋼に表面硬化処理を実施している。
従来塩浴窒化で使用される溶融塩は通常35〜55%のシアン化ナトリウムまたはシアン化カリウムと、35〜55%のシアン酸ナトリウムとまたはシアン酸カリウムを含み、残分が炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムという組成であり、570℃〜580℃に加熱されて用いられる。
【0004】
従来塩浴組成では、処理温度が高いため前記マルエージング鋼が過時効となったり、変形が大きく、さらに窒化が短時間で進行するために、前記動力伝達ベルト用無端状金属ベルトの表面に形成される窒化層の厚さの単位時間当たりの変化が大きく、適正な厚さの窒化層を得ることが難しいとの問題がある。前記問題の解決のため、▲1▼特開2000−345317号公報「無端状金属ベルトの塩浴窒化のための溶融塩組成物」や▲2▼特開昭62−224665号公報「マルエージング鋼製薄板のガス窒化処理方法」が提案されている。
上記▲1▼は、前記無端状金属ベルトの表面に形成される窒化層の厚さの単位時間当たりの変化を小さくして、窒化深さのコントロールをするために、従来の塩浴の融点より塩浴の融点を下げるように塩浴組成を調整し、前記無端状金属ベルトの塩浴窒化の処理温度を同公報に記載される通り480〜530℃とすることを特徴とする。上記▲2▼は、前記マルエージング鋼の過時効や変形を小さくするため、塩浴窒化ではなくガス窒化法で処理温度を420〜470℃とすることを特徴とする。
【0005】
上記▲1▼は、前記無端状金属ベルトの塩浴窒化処理温度は480〜530℃で、前記無端状金属ベルトの塩浴窒化処理温度が480℃で処理時間が10分にても前記無端状金属ベルトの表面に脆い化合物層が生成してしまい、前記無端状金属ベルトの耐久性が極度に低下する。また、前記無端状金属ベルトの表面に化合物層が生成しないように短時間で塩浴窒化すると、前記無端状金属ベルトの耐久性が安定的でない。耐久性が安定しない原因は明確にはわからないが、前記無端状金属ベルトの表面の不均一にある酸化物層により窒化が阻害され、前記無端状金属ベルトの表面に均一な窒化層を形成させることができないものと考えられる。従って、▲1▼の処理温度範囲では前記無端状金属ベルトの塩浴窒化処理温度としては高すぎであり、前記無端状金属ベルトの処理温度が480℃より低温で処理可能な塩浴が必要である。言い換えれば、▲1▼の塩浴組成の融点より低融点の塩浴組成でなければ、前記無端状金属ベルトを塩浴窒化する組成としては不適当と言える。
【0006】
上記▲2▼は、前記無端状金属ベルトの処理温度として420〜470℃、処理時間1〜6時間であり、処理温度が▲1▼より低いため、前記無端状金属ベルトの表面に単位時間当たりに形成される窒化層の厚みは▲1▼より低く、前記無端状金属ベルトの表面に均一な窒化層を形成させることが可能ではあるが、ガス窒化のような雰囲気窒化では必然的に炉内温度のバラツキがあるため、前記無端状金属ベルトの炉内セット位置により表面に形成される窒化層の厚さはバラツキを生じる。
【0007】
【特許文献1】特開2000−345317号公報
【特許文献2】特開昭62−224665号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、酸化膜が形成されやすいマルエージング鋼を材質とする無端状金属ベルトに対して耐久性を害する化合物層を形成させずに、炉内セット位置による窒化層の厚さのバラツキを最小限に抑えて、均一な窒化層を形成できる塩浴窒化用溶融塩組成物を提供することを目的とする。
本発明は、又、上記溶融塩組成物を用いて、鉄系金属を塩浴窒化する方法を提供することを目的とする。
本発明は、又、上記溶融塩組成物を用いて塩浴窒化した無端状金属ベルトを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特定量のシアンとシアン酸を含有し、これに炭酸、ナトリウム及び/又はカリウムを併用すると、上記課題を効率的に解決できるとの知見に基づいてなされたのである。
すなわち、本発明は、アニオン分として3〜20質量%のシアン(CN−)と、30〜50質量%のシアン酸(CNO−)を含有し、アニオン分の残分が少なくとも炭酸(CO3 2−)を含有し、さらにカチオン分として少なくともナトリウムまたはカリウムを含有することを特徴とするマルエージング鋼の塩浴窒化のための溶融塩組成物を提供する。
本発明は、又、上記溶融塩組成物の塩浴でマルエージング鋼を350〜470℃で処理することを特徴とするマルエージング鋼の窒化方法を提供する。
本発明は、又、マルエージング鋼の鋼板の端部同士を溶接してリング状に形成した後、所定の長さに圧延して形成された、無段変速機の動力伝達ベルトに用いられる無端状金属ベルトに上記の方法を適用して得た無端状金属ベルトであって、その表面硬さがマイクロビッカース荷重50gにてHV800〜1000であることを特徴とする無端状金属ベルトを提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の塩浴窒化用溶融塩組成物に含有させるCN−、CNO−、CO3 2−、Na+、K+としては、これらのイオン供給源として当業界で用いられているものを使用することができる。例えば、CN−供給源としては、NaCNやKCNなどのシアン化物、CNO−供給源としては、NaCNOやKCNOなどのシアン酸塩、CO3 2−供給源としては、Na2CO3やK2CO3などの各種溶融性炭酸塩、Na+やK+供給源としては、前記ナトリウム塩やカリウム塩に加えて種々の非酸化性及び溶融性のナトリウム塩やカリウム塩を用いることができる。
本発明の塩浴窒化用溶融塩組成物は、アニオン分として3〜20質量%のシアン(CN−)と、30〜50質量%のシアン酸(CNO−)を含有し、アニオン分の残分が少なくとも炭酸(CO3 2−)を含有し、さらにカチオン分として少なくともナトリウムまたはカリウムを含有することを特徴とするが、シアン(CN−)を3〜5質量%、シアン酸(CNO−)を40〜45質量%含有するのが好ましく、炭酸(CO3 2−)を2〜13質量%含有するのが好ましい。又、ナトリウムまたはカリウムを合計で45〜50質量%(以下、単に%と表記する)含有するのが好ましく、特にナトリウム及びカリウムを含有するのが好ましい。この際、ナトリウムとカリウムを1/2〜1/20(質量比)で含有するのが好ましい。
【0011】
本発明の溶融塩組成物を用いる窒化方法においては、350〜470℃で窒化を行うのが好ましく、さらにこの温度域10分以上行うのが好ましく、より好ましくは1440〜15分である。
又、本発明の方法で得られる無端状金属ベルトとしては、無端状金属ベルトの表面に化合物層が無く、前記無端状金属ベルトの表面に形成される窒化層の厚さが前記無端状金属ベルトの厚さ全体の10〜40%となるように塩浴窒化を行うことが好ましい。前記窒化層の厚さはX線マイクロアナライザーにて窒素濃度が該無端状金属ベルトの窒化されていない時効部と等しくなるまでの表面からの距離である。
本発明の塩浴窒化の処理方法によれば、無段変速機の動力伝達ベルトとして使用されるマルエージング鋼製無端状金属ベルトの塩浴窒化に適した組成の溶融塩、前記塩浴での塩浴窒化処理方法及び優れた耐磨耗性と耐疲労強度性を確保した無端状金属ベルトを提供できる。
【0012】
本発明で対象とするマルエージング鋼としては、例えば、Cが0.03%以下、SiとMnを加えた合計が0.20%以下、Pが0.01%以下、Sが0.01%以下の低炭素鋼であり、17〜19%のNi、4.6〜5.2%のMo、0.05〜0.15%のAl、0.3〜0.7%のTi、7〜9.5%のCoを含む18%のNi鋼があげられるが、特にこれに限定されない。
塩浴窒化処理工程前の無端状金属ベルトの製造方法は、初めに前記組成を有するマルエージング鋼の薄板をベンディングしてループ化した後、端部を溶接して円筒状体を形成する。次に、前記円筒状体を所定の幅に切断し、リング状体を形成するのがよい。
次に、前記リング状体は前記切断により、その端部にエッジが立っているので、バレル研磨により面取りした後、冷間圧延し、無端状金属ベルトを形成する。
次に、前記無端状金属ベルトを真空炉中で溶体化処理する。前記溶体化処理により、溶接歪を除去し、異方性のない結晶組織を得る。
【0013】
本発明の溶融塩組成物によれば、30〜50%のシアン酸が前記無端状金属ベルトの表面の窒化を担い、3〜20%のシアンが前記塩浴に吹き込まれるエアーにより酸化されてシアン酸となり、前記無端状金属ベルトの窒化に消費されたシアン酸分を補給する。前記溶融塩はアニオン分として3〜20%のシアンと、30〜50%のシアン酸とを含み、アニオン分の残分に少なくとも炭酸を含有し、さらにカチオン分として少なくともナトリウムまたはカリウムを含有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の溶融塩組成物によれば、表1に示すように、アニオンとしてシアンを3〜20%含むことと合わせて、シアン酸を30〜50%含むことにより前記組成の融点を320℃以下とすることも可能で、炭酸塩が析出することが無く350℃以上の温度で塩浴窒化を行うことができる。前記塩浴中のシアンが20%を超えると前記無端状金属ベルトの表面に対してエッチング作用が過剰となり、表面粗度が増大する。また、前記塩浴中のシアン酸が50%を超えると窒化作用が過剰になって、前記無端状金属ベルトの表面粗度が増大したり、表面硬さの低下を引き起こす。さらに前記塩浴中のアニオンとしてシアンが3%以下あるいはシアン酸が30%以下では塩浴の融点が上昇するため、470℃以下の低温では炭酸塩が塩浴中に析出する。前記無端状金属ベルトの表面に一定時間当たりに形成する窒化層の厚さは塩浴中の組成比により影響を受けるが、前記炭酸塩が塩浴中に析出すると、塩浴の組成比の変動が大きくなるため、前記無端状金属ベルトを前記塩浴で窒化する際に、塩浴窒化の処理温度及び処理時間の制御だけにより無端状金属ベルトの表面に形成する窒化層の厚さを正確に制御することは困難となる。前記無端状金属ベルトに対して、適切な窒化能を保有する塩浴組成はアニオンとしてシアンが3〜5%、シアン酸が40〜45%であることがより好ましい。
【0015】
前記無端状金属ベルトの表面に形成する窒化層厚さの目標を一定とすれば、前記塩浴窒化の処理温度は高ければ高い程短時間で前記窒化層厚さの目標に到達することができる。しかし、図2に示すように前記組成の塩浴窒化では10分より短時間で塩浴窒化すると安定した耐磨耗性及び耐疲労強度性のある前記無端状金属ベルトを得ることができない。耐久性が安定しない原因は明らかではないが、前記無端状金属ベルトの表面に不均一に存在する酸化物層が窒化を阻害するため、10分未満の処理時間では前記無端状金属ベルトの表面に均一な窒化層を形成しないものと考えられる。ところで、図2に示される無端状金属ベルトにはいずれにも化合物層は付着していなかった。
【0016】
従って、前記無端状金属ベルトの表面の酸化物層の影響を受けずに均一な窒化層を形成させるためには最低10分以上の処理時間が必要となる。塩浴窒化の処理時間としては10分にて前記無端状金属ベルトの表面に化合物層の生成を認められなくなる温度は470℃以下であり、470℃以下の処理温度で処理時間10分以上でかつ化合物層を生成しないような条件で塩浴窒化すれば無端状金属ベルトの表面に形成される窒化層の厚さのバラツキが無く、安定した耐磨耗性及び耐疲労強度性を得ることができる。該塩浴組成の融点との関係から塩浴窒化の処理条件として、処理温度として350〜470℃、処理時間として10分以上が前記無端状金属ベルトに好適な塩浴窒化となる。さらに、前記無端状金属ベルトの窒化処理と同時に時効処理を行うことは経済効果が顕著であるため、該塩浴窒化の処理条件は処理温度として430〜450℃、処理時間として30分以上であることがより好ましい。
【0017】
次に、本発明の方法によって製造された無端状金属ベルトの表面硬さはマイクロビッカース荷重50gにてHV800〜1000であることが好ましい。図3に示すように表面硬さが800未満になると、耐疲労強度性が低下する。また、該無端状金属ベルトの表面に化合物層があるとHV1000以上となり、耐久性が極度に低下する。
さらに、前記無端状金属ベルトは、図4に示すように表層部に窒化層11、11が形成され、内部が時効層12となっている無端状金属ベルト13を得る。窒化層11の厚さはX線マイクロアナライザーにて窒素濃度が時効層12と等しくなるまでの無端状金属ベルトの表面からの距離とする。図5に示された無端状金属ベルト13において、窒化層の厚さをt1、t2、無端状金属ベルト13全体の厚さをTとすると、窒化層11の厚さの無端状金属ベルト13の厚さ全体に対する割合H(%)は、(1)式で表される。
【数1】H=(t1+t2)/T×100 ……(1)
本実施形態での製造方法では、前記無端状金属ベルトの表面に化合物層の生成が無く、Hが10〜40%の範囲になるように前記窒化処理を行うことで図5に示すように耐疲労強度性に優れた無端状金属ベルトを得る。
【0018】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例をあげて本発明をより具体的に説明する。
実施例1
溶融塩組成を、Na+ 2.4%、K+ 46.2%、CN− 2.8%、CNO− 45.8%、CO3 2− 2.7%にして融点を測定した。
実施例2
溶融塩組成を、Na+ 4.9%、K+ 44.4%、CN− 5.0%、CNO− 38.0%、CO3 2− 7.6%にして融点を測定した。
【0019】
実施例3
溶融塩組成を、Na+ 9.9%、K+ 39.7%、CN− 16.0%、CNO− 32.9%、CO3 2− 1.5%にして融点を測定した。
比較例1
溶融塩組成を、Na+ 9.3%、K+ 37.2%、CN− 1.2%、CNO− 45.2%、CO3 2− 7.1%にして融点を測定した。
上記の溶融塩組成の融点を測定した結果を表1に示す。
【0020】
【表1】表1
実施例にて示されたように、本発明の塩浴窒化の溶融塩の融点は400℃以下であり、470℃以下の温度で塩浴窒化を行うことは十分可能である。一方、比較例1では融点が440℃であり、470℃以下の低温では炭酸塩が塩浴中に析出してしまう。ここで、比較例1は特開2000−345317号公報に記載される通りの塩浴組成物である。本発明の溶融塩組成物によれば、350〜470℃の塩浴窒化ができることは明らかである。
【0021】
実施例4
無端状金属ベルトを、実施例2の溶融塩組成(CN 5.0%、CNO 38.0 %含有)で、窒化温度450℃の処理温度において、処理時間の条件を8分、10分、13分、15分として処理した。
このようにして窒化した無端状金属ベルトについて、図1に示す装置を使用して、無端状金属ベルトの耐久試験を行い、無端状金属ベルトが破断するまでの時間にて耐磨耗性及び耐疲労強度性の評価を行った。耐久試験の方法は図1に示すように無端状金属ベルト1を巻き付け、ロール2を固定して、ロール3に無端状金属ベルト1に対して150kgf/mm2となる引っ張り応力を負荷し、無端状金属ベルト1が破断するまでの回転数を計測した。前記耐久試験における回転数と耐久時間との関係は8×105回の回転数で耐久時間24時間相当である。
その結果を図2に示す。
【0022】
実施例5
無端状金属ベルトを、実施例2の溶融塩組成(CN 5.0%、CNO 38.0 %含有)で、窒化温度を430℃から480℃、処理時間10分から90分で処理した。実施例4と同様にして耐久試験を行った。又、表面硬さ(Hv)をマイクロビッカースの50g荷重で測定した。これらの結果を図3に示す。
表面硬さがHv800から1000で耐久時間が長くなっていることがわかる。処理温度が高いと窒化鉄が最表面に形成され、表面硬度が高くなる。
【0023】
実施例6
無端状金属ベルトを、実施例1の溶融塩組成(CN 2.8%、CNO 45.8 %含有)で、窒化温度を430℃から480℃、処理時間10分から90分で処理した。実施例4と同様にして耐久試験を行った。結果を図5に示す。
式1のHがパーセント表示となるので、横軸をH(%)で表示した。窒化層の割合が10%〜40%の間になれば耐久時間が長くなる。又、窒化層が約半分を占めると耐久時間が短くなる。
尚、図4は、式1を説明するための図であり、Tは無端状金属ベルトの厚さで約180μmである。t1及びt2は窒化層で、処理時間が増加するに従って厚くなり、t1とt2はほぼ同じ値になる。又、処理温度が高いほど厚くなる。t1及びt2の厚さは、X線マイクロアナライザーにより、無端状金属ベルトの断面の窒素濃度を測定して求めたものである。
【0024】
【発明の効果】
本発明の塩浴窒化の処理方法によれば、マルエージング鋼製無端状金属ベルトの表面に耐久性を害する化合物層を形成させずに、炉内セット位置による窒化層の厚さのバラツキを最小限に抑えて、均一な窒化層を形成させることができ、マルエージング鋼製無端状金属ベルトに最適な耐磨耗性と耐疲労強度性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】無端状金属ベルトの耐久試験の模式図。
【図2】無端状金属ベルトの塩浴窒化の処理温度が450℃における塩浴窒化処理時間と耐久時間との関係を示すグラフ。
【図3】無端状金属ベルトの表面硬さと耐久時間との関係を示すグラフ。
【図4】本実施形態の製造方法により得られた無端状金属ベルトの構成を示す説明的断面図。
【図5】無端状金属ベルトの窒化層の厚さと耐久時間との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1…無端状金属ベルト、2…固定ロール、3…可動ロール、11…窒化層、12…時効層、13…無端状金属ベルト。
Claims (5)
- アニオン分として3〜20質量%のシアン(CN−)と、30〜50質量%のシアン酸(CNO−)を含有し、アニオン分の残分が少なくとも炭酸(CO3 2−)を含有し、さらにカチオン分として少なくともナトリウムまたはカリウムを含有することを特徴とするマルエージング鋼の塩浴窒化用溶融塩組成物。
- 請求項1記載の溶融塩組成物の塩浴でマルエージング鋼を350〜470℃で処理することを特徴とするマルエージング鋼の窒化方法。
- 処理時間が10分以上である請求項2記載の窒化方法。
- マルエージング鋼の鋼板の端部同士を溶接してリング状に形成した後、所定の長さに圧延して形成された、無段変速機の動力伝達ベルトに用いられる無端状金属ベルトに請求項2又は3記載の方法を適用して得た無端状金属ベルトであって、その表面硬さがマイクロビッカース荷重50gにてHV800〜1000であることを特徴とする無端状金属ベルト。
- 前記無端状金属ベルトの表面に形成される窒化層に化合物層が無く、窒化層の厚さが該無端状金属ベルトの厚さ全体の10〜40重量%である請求項4記載の無端状金属ベルト。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002339428A JP2004169163A (ja) | 2002-11-22 | 2002-11-22 | マルエージング鋼の塩浴窒化用溶融塩組成物、その処理方法及び無端状金属ベルト |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002339428A JP2004169163A (ja) | 2002-11-22 | 2002-11-22 | マルエージング鋼の塩浴窒化用溶融塩組成物、その処理方法及び無端状金属ベルト |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004169163A true JP2004169163A (ja) | 2004-06-17 |
Family
ID=32702373
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002339428A Pending JP2004169163A (ja) | 2002-11-22 | 2002-11-22 | マルエージング鋼の塩浴窒化用溶融塩組成物、その処理方法及び無端状金属ベルト |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004169163A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014510840A (ja) * | 2011-03-11 | 2014-05-01 | アシュ.エー.エフ | 鋼製の機械部品を窒化するための溶融塩浴及び実行方法 |
CN113215521A (zh) * | 2021-03-31 | 2021-08-06 | 合肥赛飞斯金属科技有限公司 | 一种大尺寸齿圈的qpq加工方法 |
Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5534623A (en) * | 1978-08-31 | 1980-03-11 | Parker Netsushiyori Kogyo Kk | Treating method for salt bath nitriding for high alloy steel |
JPH06341442A (ja) * | 1993-05-31 | 1994-12-13 | Nippon Seiko Kk | 耐食性転がり軸受 |
JP2000063998A (ja) * | 1998-06-12 | 2000-02-29 | Nisshin Steel Co Ltd | 無段変速機ベルト用準安定オ―ステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 |
JP2000343104A (ja) * | 1999-05-28 | 2000-12-12 | Honda Motor Co Ltd | 無端状金属ベルトの製造方法 |
JP2000345317A (ja) * | 1999-05-28 | 2000-12-12 | Honda Motor Co Ltd | 無端状金属ベルトの塩浴窒化のための溶融塩組成物 |
JP2002030412A (ja) * | 2000-07-10 | 2002-01-31 | Nippon Parkerizing Co Ltd | 窒化処理に先立つオーステナイト系ステンレス鋼表面の前処理方法および前処理薬剤、並びに、表面処理方法、窒化処理品 |
JP2002173760A (ja) * | 2000-12-06 | 2002-06-21 | Dowa Mining Co Ltd | マルエージング鋼の窒化処理方法 |
-
2002
- 2002-11-22 JP JP2002339428A patent/JP2004169163A/ja active Pending
Patent Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS5534623A (en) * | 1978-08-31 | 1980-03-11 | Parker Netsushiyori Kogyo Kk | Treating method for salt bath nitriding for high alloy steel |
JPH06341442A (ja) * | 1993-05-31 | 1994-12-13 | Nippon Seiko Kk | 耐食性転がり軸受 |
JP2000063998A (ja) * | 1998-06-12 | 2000-02-29 | Nisshin Steel Co Ltd | 無段変速機ベルト用準安定オ―ステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 |
JP2000343104A (ja) * | 1999-05-28 | 2000-12-12 | Honda Motor Co Ltd | 無端状金属ベルトの製造方法 |
JP2000345317A (ja) * | 1999-05-28 | 2000-12-12 | Honda Motor Co Ltd | 無端状金属ベルトの塩浴窒化のための溶融塩組成物 |
JP2002030412A (ja) * | 2000-07-10 | 2002-01-31 | Nippon Parkerizing Co Ltd | 窒化処理に先立つオーステナイト系ステンレス鋼表面の前処理方法および前処理薬剤、並びに、表面処理方法、窒化処理品 |
JP2002173760A (ja) * | 2000-12-06 | 2002-06-21 | Dowa Mining Co Ltd | マルエージング鋼の窒化処理方法 |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014510840A (ja) * | 2011-03-11 | 2014-05-01 | アシュ.エー.エフ | 鋼製の機械部品を窒化するための溶融塩浴及び実行方法 |
CN113215521A (zh) * | 2021-03-31 | 2021-08-06 | 合肥赛飞斯金属科技有限公司 | 一种大尺寸齿圈的qpq加工方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP2218799B1 (en) | Carbonitrided induction-hardened steel part with excellent rolling contact fatigue strength at high temperature and process for producing the same | |
EP2966189B1 (en) | Semi-finished material for induction hardened component and method for producing same | |
JP5299140B2 (ja) | ショットピーニング用投射材の材料、及びショットピーニング用投射材の製造方法 | |
US6733600B2 (en) | Nitrided maraging steel and method of manufacture thereof | |
WO2012077705A1 (ja) | 面疲労強度に優れたガス浸炭鋼部品、ガス浸炭用鋼材およびガス浸炭鋼部品の製造方法 | |
JP4354277B2 (ja) | 浸炭焼入部材の製造方法 | |
JP3421265B2 (ja) | 無段変速機ベルト用準安定オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 | |
JP2003113449A (ja) | 耐遅れ破壊性に優れた高強度・高靭性ステンレス鋼板およびその製造方法 | |
JP7125923B2 (ja) | 真空浸炭用高炭素熱延鋼板およびその製造方法並びに浸炭鋼部品 | |
JP2005097682A (ja) | 無段変速機ベルト用の鋼,鋼板および素材ベルト並びに無段変速機ベルトおよびその製造法 | |
JP2004169163A (ja) | マルエージング鋼の塩浴窒化用溶融塩組成物、その処理方法及び無端状金属ベルト | |
JP2000073156A (ja) | 窒化ステンレス鋼材の製造方法 | |
US6858099B2 (en) | Steel material production method | |
JP2002053936A (ja) | 無段変速機ベルト金属リング用オーステナイト系ステンレス鋼板及びその製造方法 | |
JP2000337453A (ja) | 無端状金属ベルトの製造方法 | |
JP2005330565A (ja) | マルエージング鋼の表面硬化処理方法 | |
JP2000345317A (ja) | 無端状金属ベルトの塩浴窒化のための溶融塩組成物 | |
EP3560621A1 (en) | Endless metal ring and method of producing the same | |
JP2006265664A (ja) | 無段変速機ベルトの製造法 | |
JPH0582452B2 (ja) | ||
JP2004315869A (ja) | 金属リングの窒化処理方法 | |
JP4443673B2 (ja) | 無端状金属ベルトの製造方法 | |
WO2007142373A1 (en) | Method for nitriding metal in salt bath and metal manufactured by its method | |
JPH10158743A (ja) | 表面硬化処理方法および歯車 | |
JPH11200010A (ja) | 自動車用金属製多層ベルトの表面処理方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050805 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20070227 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070305 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20070502 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20071105 |