JP2000063998A - 無段変速機ベルト用準安定オ―ステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法 - Google Patents

無段変速機ベルト用準安定オ―ステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法

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JP2000063998A
JP2000063998A JP11003420A JP342099A JP2000063998A JP 2000063998 A JP2000063998 A JP 2000063998A JP 11003420 A JP11003420 A JP 11003420A JP 342099 A JP342099 A JP 342099A JP 2000063998 A JP2000063998 A JP 2000063998A
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宏紀 冨村
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憲一 森本
Naoto Hiramatsu
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 疲労特性を向上させた無段変速機ベルト用高
強度ステンレス鋼板を提供する。 【解決手段】 質量%で、C:0.15%以下,Si:1.0〜4.
0%,Mn:5.0%以下,Ni:4.0〜10.0%,Cr:12.0〜18.
0%,Cu:0〜3.5%,Mo:1.0〜5.0%,N:0.15%以下を
含み、C+N≧0.10%、Si+Mo≧3.5%、かつ、Md(N)=58
0−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−10Moで定義さ
れるMd(N)の値が20〜100となるようにこれらの元素を含
有し、加工誘起マルテンサイト+オーステナイトの時効
処理された複相組織を有し、かつ表面に窒化層を有す
る、準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。リング圧
延等によりマルテンサイト濃度の高い表層部を得た後、
ガス窒化,ガス浸硫窒化,プラズマ窒化,塩浴窒化等の
方法で窒化層を形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い強度,疲労特
性および耐摩耗性が要求される無段変速機ベルト金属リ
ング用高強度準安定オーステナイト系ステンレス鋼板、
およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、無段変速機ベルト金属リング材に
は18Niマルエージング鋼が使用されてきた。その鋼は、
焼入れ状態でほぼマルテンサイト単相であり、時効処理
によって硬度を上昇させ、さらに窒化処理を施して耐摩
耗性や疲労特性の向上を確保しようとするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】18Niマルエージング鋼
は、組織が実質的にマルテンサイト単相であり、このマ
ルテンサイトはそれ自体が靱性や延性に乏しいものであ
る。このため、鋼中に介在物が存在すると疲労特性が低
下しやすい。特に、18Niマルエージング鋼は時効硬化元
素としてTiを使用しているためTi系介在物が生成し
やすく、これが疲労特性低下をもたらすという問題があ
る。この鋼を無段変速機ベルトなど疲労特性が重視され
る用途に適用する場合には、介在物が生じないよう、鋼
中の不純物を徹底的に低減しなくてはならず、そのため
には原料の選定,高真空溶解や二次精錬の導入など、製
造にかなりの労力を要する。その結果、一般汎用の鉄鋼
材料に比べ生産性が低く、製造コストも著しく高くな
る。
【0004】本発明は、従来の18Niマルエージング鋼よ
りも一層高い疲労特性を呈し、かつ、介在物低減のため
の特別な工程を採らなくても、高い疲労特性が安定して
得られる信頼性の高い無段変速機ベルト用の高強度鋼板
を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1の発明は、質量%で、C:0.15%以下,S
i:1.0〜4.0%,Mn:5.0%以下,Ni:4.0〜10.0%,C
r:12.0〜18.0%,Cu:0〜3.5%(無添加を含む),M
o:1.0〜5.0%,N:0.15%以下を含み、C+N≧0.10%、
Si+Mo≧3.5%、かつ、 Md(N)=580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−10M
o で定義されるMd(N)の値が20〜100となるようにこれらの
元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からな
り、加工誘起マルテンサイト+オーステナイトの時効処
理された複相組織を有し、かつ表面に窒化層を有する、
疲労特性に優れた無段変速機ベルト用準安定オーステナ
イト系ステンレス鋼板である。
【0006】請求項2の発明は、請求項1の発明におい
て、鋼板中の平均加工誘起マルテンサイト量が30〜80体
積%である点を規定したものである。ここで、「鋼板中
の平均加工誘起マルテンサイト量」とは、鋼板中の全加
工誘起マルテンサイト量を平均したものをいう。請求項
3の発明は、請求項1の発明において、鋼板の表面硬さ
がHv700以上である点を規定したものである。ここで、
「鋼板の表面硬さ」とは鋼板の表層部の硬さであり、具
体的には、荷重300gのビッカース硬度計を用いた測定
で特定される値である。
【0007】請求項4の発明は、請求項1の発明におい
て、鋼板中の平均加工誘起マルテンサイト量が30〜80体
積%であり、表面から深さ10μmまでの表層部における
加工誘起マルテンサイト量が60体積%以上であり、かつ
表面硬さがHv700以上である点を規定したものである。
ここで、「鋼板中の平均加工誘起マルテンサイト量」は
請求項2と同様の意味であり、「鋼板の表面硬さ」は請
求項3と同様の意味である。請求項5の発明は、請求項
1の発明において、鋼板中の平均加工誘起マルテンサイ
ト量が30〜80体積%であり、表面から深さ2μmまでの表
層部における加工誘起マルテンサイト量が80体積%以上
であり、かつ表面硬さがHv700以上である点を規定した
ものである。ここで、「鋼板中の平均加工誘起マルテン
サイト量」は請求項2と同様の意味であり、「鋼板の表
面硬さ」は請求項3と同様の意味である。
【0008】請求項6の発明は、請求項1〜3に記載の
無段変速機ベルト用準安定オーステナイト系ステンレス
鋼板の製造方法に関するものであり、加工誘起マルテン
サイトを30〜80体積%含有する冷間加工鋼板に対し、時
効窒化処理を施すことに特徴がある。ここで、「時効窒
化処理」とは、時効処理と窒化処理を同時に行う熱処理
である。請求項7の発明は、請求項6の製造方法におい
て、時効窒化処理に供する冷間加工鋼板を特に、溶体化
処理鋼板の端面どうしを溶接してリング状の無端ベルト
とし、これにリング圧延を施して30〜80体積%の加工誘
起マルテンサイトを生成させたものに規定したものであ
る。ここで、「リング圧延」とは、無端金属ベルトを2
個のドラムあるいはプーリーに架けて張力を付加した状
態で回動させながら圧延ロールで冷間圧延する圧延方法
であり、スチールベルトの製造等において一般的に使用
されているものである。
【0009】請求項8の発明は、請求項4に記載の無段
変速機ベルト用準安定オーステナイト系ステンレス鋼板
の製造方法に関するものであり、溶体化処理鋼板の端面
どうしを溶接して、リング状の無端ベルトとし、これに
リング圧延を施すことにより鋼板中の平均マルテンサイ
ト量が30〜80体積%となり、かつ表面から深さ10μmま
での表層部におけるマルテンサイト量が60体積%以上と
なるように加工誘起マルテンサイトを生成させ、次いで
時効窒化処理を施すことに特徴がある。
【0010】請求項9の発明は、請求項4に記載の無段
変速機ベルト用準安定オーステナイト系ステンレス鋼板
の製造方法に関するものであり、溶体化処理鋼板の端面
どうしを溶接して、リング状の無端ベルトとし、これに
リング圧延を施した後、さらにバレル研磨,ショットピ
ーニング処理またはショットブラスト処理の何れかの手
段を施すことにより鋼板中の平均マルテンサイト量が30
〜80体積%となり、かつ表面から深さ10μmまでの表層
部におけるマルテンサイト量が60体積%以上となるよう
に加工誘起マルテンサイトを生成させ、次いで時効窒化
処理を施すことに特徴がある。
【0011】請求項10の発明は、請求項5に記載の無
段変速機ベルト用準安定オーステナイト系ステンレス鋼
板の製造方法に関するものであり、溶体化処理鋼板の端
面どうしを溶接して、リング状の無端ベルトとし、これ
にリング圧延を施すことにより鋼板中の平均マルテンサ
イト量が30〜80体積%となり、かつ表面から深さ2μmま
での表層部におけるマルテンサイト量が80体積%以上と
なるように加工誘起マルテンサイトを生成させ、次いで
時効窒化処理を施すことに特徴がある。
【0012】請求項11の発明は、請求項6〜11の発
明において、時効窒化処理を、300〜650℃の窒化雰囲気
中で鋼板を30分以上加熱するガス窒化法によって行う点
を規定したものである。請求項12の発明は、請求項6
〜11の発明において、時効窒化処理を、アンモニアガ
スを基本成分とするガスにH2Sを混合した300〜650℃の
ガス中で鋼板を20分以上加熱するガス浸硫窒化法によっ
て行う点を規定したものである。請求項13の発明は、
請求項6〜11の発明において、時効窒化処理を、窒素
ガスを基本成分とする減圧ガス中で鋼板と炉壁間に生成
させたプラズマによって鋼板を300〜650℃で20分以上加
熱するプラズマ窒化法によって行う点を規定したもので
ある。請求項14の発明は、請求項6〜11の発明にお
いて、時効窒化処理を、NaCN,KCN,NaCNOおよびKCNOの
1種または2種以上を基本成分とする300〜650℃の塩浴
中に鋼材を20分以上浸漬する塩浴窒化法によって行う点
を規定したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明者らは、過酷な使用環境に
耐え得る無段変速機ベルト用材料として、高い疲労特性
が安定して得られる信頼性の高い高強度ステンレス鋼板
を作る研究を重ねた。その結果、そのような鋼板はマル
テンサイト単相のいわゆる「マルテンサイト系ステンレ
ス鋼」ではなく、加工誘起マルテンサイト+オーステナ
イトの複相組織に制御できかつ時効硬化が可能な「準安
定オーステナイト系ステンレス鋼」によって達成できる
ことを見出した。ただし、単に鋼種をそのような系に変
更するだけで無段変速機ベルト用途にそのまま適用でき
るわけではない。それには工夫を要する。以下、本発明
を特定する事項について説明する。
【0014】Cはオーステナイト形成元素であり、高温
で生成するδフェライトの抑制,冷間加工で誘発された
マルテンサイト相の強化に極めて有効である。ただし、
本発明で対象とする鋼はSi含有量が高いため、Cの固溶
限が低下している。Cを多量に含有させると時効処理で
粗大なCr炭化物が析出し、耐粒界腐食性や疲労特性の劣
化の原因となるので、Cは0.15質量%以下(0%を含ま
ず)の含有量に制限する。特に好ましいC含有量の範囲
は0.05〜0.10質量%である。
【0015】Siは通常、脱酸の目的で使用され、その場
合はSUS310,SUS304等の加工硬化型ステンレス鋼の例に
見られるように1.0質量%以下の含有量で十分である。
しかし本発明ではSiを比較的多量に含有させ、冷間加工
によるマルテンサイトの生成を著しく促進させる効果を
利用している。またSiは加工で誘起されたマルテンサイ
ト相を硬くするとともに、オーステナイト相にも固溶し
てこれを硬化させ、冷間加工後の強度を向上させる。さ
らに時効処理においてはCuとの相互作用により時効硬化
能を向上させる。これらのSiの効果を十分に発揮させて
無段変速機ベルトに適した特性を得るためには、1.0質
量%以上のSiを必要とする。ただし、4.0質量%を超え
る多量のSiを含有させると高温割れを誘発しやすくな
り、製造上種々の問題も生じる。特に好ましいSi含有量
の範囲は1.0超え〜3.5質量%である。
【0016】Mnはオーステナイト相の安定度を調整する
目的で本発明においては比較的広い含有量範囲で含有さ
せることができる。その含有量は他の元素とのバランス
によって決定されるが、Mn含有量が高くなりすぎると冷
間圧延でマルテンサイトが誘起されにくくなるので、Mn
は5.0質量%以下(0%を含まず)の範囲で含有させるの
がよい。特に好ましいMn含有量の範囲は0.1〜4.5質量%
である。
【0017】Niは高温および室温でオーステナイト相を
得るために必須の元素である。ただし本発明では焼鈍状
態での金属組織がオーステナイト単相であることが望ま
しく、しかも冷間加工で適量のマルテンサイトを誘起さ
せなくてはならない。Ni含有量が4.0質量%未満では高
温で多量のδフェライト相が生成し、かつ室温までの冷
却過程でマルテンサイトが生成して、焼鈍状態でオース
テナイト相が単相として存在できなくなる可能性が高
い。逆に、Ni含有量が10.0質量%を超えると冷間加工で
マルテンサイトが誘起されにくくなる。このためNi含有
量は4.0〜10.0質量%とする。特に好ましいNi含有量の
範囲は5.0〜9.5質量%である。
【0018】Crは耐食性を確保するために必須の元素で
ある。無段変速機ベルトに望まれる耐食性を付与するに
は12.0質量%以上のCrが必要である。しかし、Crはフェ
ライト形成元素でもあるので、多すぎると高温でδフェ
ライト相が多量に生成してしまう。Cr含有量を高くする
場合にはδフェライト相抑制のためにオーステナイト形
成元素(C,N,Ni,Mn,Cu等)を多目に添加する必要が
あるが、これらの元素の過度の添加は室温でのオーステ
ナイトの安定化をもたらし、加工誘起マルテンサイトの
生成が不十分となって時効処理後に十分な高強度が得ら
れなくなる。無段変速機ベルトに望まれる耐食性と強度
を両立させるためには、Cr含有量の上限を18質量%に制
限するのがよい。特に好ましいCr含有量の範囲は12.0〜
16.5質量%である。
【0019】CuはSiとの相互作用により時効硬化能を向
上させる元素であるため、本発明においては積極的に添
加することが望ましい。ただし、過剰のCu添加は熱間加
工性を劣化させ鋼板の割れ発生原因となるので、Cuを添
加する場合は3.5質量%以下の範囲で行うのがよい。特
に好ましいCu含有量の範囲は1.0〜3.0質量%である。
【0020】Moは耐食性を向上させるとともに、時効処
理で炭窒化物を微細に分散させる効果がある。また本発
明では疲労特性に悪影響を及ぼす過度の圧延歪を低減す
るために時効温度を高目にすることが有利であるが、Mo
は高温時効での急激な歪の解放を抑制するので、本発明
では非常に有効な元素である。さらにMoは強度に寄与す
る時効析出物を形成するので、Moを添加することによっ
てかなりの高温域で時効処理を行っても強度の低下を防
ぐことができるようになる。これらの効果を十分に発揮
させるため、本発明では1.0質量%以上のMo含有量を確
保する。ただし多量のMo添加は高温でのδフェライト相
の生成を促し、また高温での変形抵抗を高めて熱間加工
性劣化の原因ともなるので、5.0質量%以下の範囲とす
るのがよい。特に好ましいMo含有量の範囲は1.0〜4.5質
量%である。
【0021】Nはオーステナイト形成元素であるととも
に、オーステナイト相およびマルテンサイト相を硬化さ
せる極めて有効な元素である。ただし多量の添加は鋳造
時のブローホールの原因となるので、0.15質量%以下
(0%を含まず)の範囲で含有させる。
【0022】CとNは互いに同様な硬化作用を示し、その
効果を十分に発揮させるためにはC+Nの合計量を0.10質
量%以上にする必要がある。
【0023】本発明では時効処理によりMo系の析出物を
形成させるが、Si添加によりそのMo系析出物が微細かつ
均一に分散するようになる。このようなSiとMoの複合添
加の効果を十分得るためには、Si+Moの合計量を3.5質
量%以上とするのがよい。
【0024】本発明では、無段変速機ベルトの疲労特性
を向上させる手段として、ベルト製造段階(例;リング
圧延時)におけるマルテンサイト誘起変態、および、製
品(無段変速機ベルト)としての使用時におけるマルテ
ンサイト誘起変態を利用する。このため、溶体化処理後
の冷間加工(例;リング圧延)において付与される歪、
および無段変速機ベルトとして使用されるときの局所的
な歪に対してそれぞれ最適にマルテンサイトが形成する
ことが重要である。そこで種々検討の結果、次式で定義
されるMd(N)値(オーステナイトの加工に対する安定
度)が20〜100の範囲になるように鋼組成を規定した。 Md(N)=580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−10M
o
【0025】Md(N)が20未満となる鋼組成では、ベルト
製造段階において、リング圧延等の冷間加工を工業的に
非常に困難な低温で実施しないと強度に寄与するマルテ
ンサイト相を十分生成させることができない。また、無
段変速機ベルトとして使用する際には、疲労特性向上に
有効に働く「オーステナイト→マルテンサイト変態」が
十分に起こらない。さらに、オーステナイトが安定であ
るために、鋼板表層部のマルテンサイト量が80体積%以
上にならず、またこれを安定して60体積%以上にするこ
とも難しくなるので、後述するように時効窒化処理にお
いて表面窒化が十分に進まず、その結果、耐摩耗性や疲
労特性の飛躍的な向上が望めない。一方、Md(N)が100を
超えるような鋼組成では、無段変速機ベルトとして使用
する際の「変形」によって、マルテンサイトが早く生成
し過ぎてしまい、これは疲労特性の向上には逆効果とな
る。このような理由から、本発明ではMd(N)値が20〜100
の範囲になるように成分調整された鋼を使用する必要が
ある。
【0026】以上のような化学組成の鋼を溶製して、熱
間圧延あるいはさらに冷間圧延を施した後、溶体化処理
を施し、金属組織が準安定オーステナイト相に調整され
た鋼板を得る。本発明ではこの溶体化処理鋼板に対し
て、リング圧延等の冷間加工を施し、加工歪を導入す
る。その際、準安定オーステナイト相の一部はマルテン
サイト相に変態する。この段階で生成させるマルテンサ
イト量は、後工程の時効窒化処理後における鋼板の「強
度」と「靱性・疲労特性」のバランスを保つうえで重要
である。すなわち、時効材の強度は、冷間加工度が大き
いほど高くなる反面、靱性低下は著しくなる。特に、過
度の加工は疲労特性の低下をも引き起こす。強度の面か
らは、材料自体の強度を高くし、さらに時効窒化処理で
形成する析出物の核サイトを増やすために、鋼板中の平
均マルテンサイト量は30体積%以上であることが望まし
い。一方、靱性および疲労特性の面からは、未変態オー
ステナイトも必要であり、鋼板中の平均マルテンサイト
量は80体積%以下に抑えることが望ましい。
【0027】本発明では、製品表面の強度上昇および疲
労特性向上を図るために、時効処理を兼ねた窒化処理を
施す。窒化には、オーステナイト組織よりもマルテンサ
イト組織の方が、窒素の拡散が著しく速いために有利で
ある。しかし、鋼中の平均マルテンサイト量は先述のよ
うに80体積%以下に制限されるべきである。そこで本発
明では、リング圧延等の冷間加工において加工誘起マル
テンサイトを生成させる際、鋼板全体の平均マルテンサ
イト量は30〜80体積%に維持しながら、鋼板表層部にお
いてのみ高い体積率のマルテンサイト相を形成させる手
法を採用する。
【0028】鋼板表面全体における窒化層の均一性を考
慮すると、表面から深さ10μmまでの表層部におけるマ
ルテンサイト量が60体積%以上となっていることが望ま
しく、特に表面から深さ2μmまでの表層部におけるマル
テンサイト量が80体積%以上となっていることが一層望
ましい。また、このような鋼板に対して時効窒化処理を
施したとき、表面硬さHv700以上のものが安定して得ら
れ、無段変速機ベルトとして理想的な耐摩耗性が付与さ
れるのである。
【0029】鋼板全体の平均マルテンサイト量を30〜80
体積%に維持し、かつ鋼板表層部にのみ高い体積率のマ
ルテンサイト相を形成させる冷間加工方法として、溶体
化処理鋼板の端面どうしを溶接してリング状の無端ベル
トとし、これにリング圧延を施す方法が好適に適用でき
る。また、リング圧延を施した後、さらにバレル研磨,
ショットピーニング処理またはショットブラスト処理の
何れかの手段を施すことにより、一層効果的に鋼板表層
部のマルテンサイト量をコントロールすることができ
る。
【0030】時効窒化処理は、冷間加工を受けて上記の
ような金属組織構造に調整された鋼板については、一般
的な鋼材の窒化処理である「ガス窒化法」,「ガス軟窒
化法」の他、「ガス浸硫窒化法」,「プラズマ窒化
法」,「塩浴窒化法」を適用することが可能である。ま
た「イオン窒化法」,「塩浴浸炭窒化法」,「塩浴浸硫
窒化法」を適用することもできる。
【0031】ガス窒化法では、アンモニアガスを主体と
した成分のガスが使用できる。例えば、アンモニアガス
単体や、アンモニアガスにRXガス(吸熱型変成ガス;
一酸化炭素+水素+窒素),NXガス(ブタン等を完全
燃焼させた変成ガス;窒素が主成分),プロパン,ブタ
ン,(CO2+CO)混合ガス等を加えたものなどが挙げられ
る。ガス浸硫窒化法では、アンモニアガスにCO2+N2+H
2Sを混合したガスが使用できる。プラズマ窒化法では、
N2+H2混合ガスが使用できる。塩浴窒化法では、NaCN,
KCN,NaCNOおよびKCNOの1種または2種以上を基本成分
とし、これにNa2CO3およびK2CO3の1種または2種を添
加した溶融塩が使用できる。
【0032】本発明で規定する組成範囲の準安定オース
テナイト系ステンレス鋼において時効処理を兼ねた窒化
処理を効果的に行うには、時効窒化処理温度は300〜650
℃の範囲とすることが望ましい。300℃未満では窒化が
十分進行せず、時効による強度上昇も望めない。650℃
を超えると、鋼材表面に形成しているマルテンサイト相
の一部がオーステナイト相に逆変態して強度低下や窒化
反応停滞をもたらす。また、時効窒化処理の加熱時間が
20分未満だと十分な窒化が達成できない可能性が高い。
望ましい時効窒化処理の加熱時間は、20分〜5時間、さ
らに好ましくは30分〜5時間である。
【0033】
【実施例】〔実施例1〕表1に、供試材の化学成分値お
よびMd(N)値を示す。表1中、C1〜C6は化学組成が本発
明規定範囲にある鋼(発明対象鋼)、D1〜D6はそれ以外
の鋼(比較鋼)である。このうちD5およびD6は従来の18
Niマルエージング鋼である。
【0034】
【表1】
【0035】いずれの鋼も真空溶解炉にて溶製し、鍛造
→熱間圧延→中間焼鈍→冷間圧延の後、「1050℃×1分
間保持→水冷」の溶体化熱処理を行い、その後、鋼帯を
溶接によりリング状のベルトにし、種々の圧延率で板厚
0.18mmまでリング圧延を行った。このリング圧延材に、
アンモニアガス50%+NXガス50%の窒化雰囲気中で50
0℃×3時間加熱するガス窒化法を用いて、時効窒化処理
を施した。各供試材について、リング圧延後の試料全体
の平均マルテンサイト量,表層2μmでの平均マルテンサ
イト量、および時効窒化材の表面硬さ,引張強さ,曲げ
−引張疲労特性を調査した。
【0036】試料全体のマルテンサイト量は、振動型試
料磁力計で磁気的性質である飽和磁化を求め、マルテン
サイト量と飽和磁化量が比例することを利用して、その
比率より算出した。表層部のマルテンサイト量は、X線
回折により特定した。表面硬さは、荷重300gのビッカ
ース硬度計で測定した。引張強さは、JIS Z 2201に規定
されている13B号試験片を用い、JIS Z 2241に規定され
る引張り試験方法によて求めた。曲げ−引張疲労特性
は、平行部の長さが100mm,幅が3mmの試験片を直径37.5
mmのプーリーに掛け、両端を駆動プーリーに掛けたベル
トで交互に引っ張ることにより500rpm(プーリーによる
の反復(上下)運動回数が500回/分)の速さで往復運
動させ、試料が破断に至ったときのサイクル数によって
評価した。試料平行部に加わる張力は、最大応力が1450
N/mm2,最小応力が50N/mm2となるようにした。なお、曲
げ−引張疲労試験は最大1000×104サイクルまで実施
し、破断しないものは「1000×104サイクル以上」と評
価した。これらの試験結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】表2の結果に見られるように、発明対象鋼
を用いた材料はいずれも、表面硬さがHv700以上、引張
強さが1900N/mm2以上、曲げ−引張疲労試験での破断ま
での振幅回数は700×104以上と、強度および疲労特性に
極めて優れており、無段変速機ベルトに適した特性を有
している。これに対し比較鋼を用いた材料では、破断ま
での振幅回数が700×104未満と低く、無段変速機ベルト
としては十分とは言えない。
【0039】上述したように、Md(N)はオーステナイト
相の加工に対する安定度の指標であり、この値が小さい
と加工時に加工誘起マルテンサイトが形成されにくい
し、大きいと形成されやすいことを意味する。発明対象
鋼のC1〜C9は、いずれもMd(N)の値が20〜100の間にあ
り、疲労試験での変形中にオーステナイト→マルテンサ
イト変態が起こる。そして、その適度な起こりやすさが
材料の疲労特性を支配していると言える。例えば、Md
(N)が20未満の比較鋼D1は、疲労試験での変形中にオー
ステナイト→マルテンサイト変態が起こらないために疲
労特性が低く、逆にMd(N)が100を超える比較鋼D2では、
マルテンサイトの形成がはやいためにやはり疲労特性が
低くなっている。
【0040】比較鋼D3およびD4の引張強さが低いのは、
D3はSi含有量が十分でないために時効による強化の寄与
が小さいこと、D4はMo含有量が少ないために時効窒化処
理の加熱において軟化が早く開始したことによるものと
考えられる。従来材である比較鋼D5およびD6は、焼入れ
処理でほぼマルテンサイト単相組織となるために、疲労
試験での局部的変形時に破壊を起こしやすく、その結
果、疲労特性が本発明のものより劣っている。
【0041】〔実施例2〕表1の供試材を用いて、実施
例と同様の工程で板厚0.18mmまでリング圧延を行った。
このリング圧延材に、ガス浸硫窒化,プラズマ窒化,ま
たは塩浴窒化の各窒化法を用いて時効窒化処理を施し
た。ガス浸硫窒化法を用いた時効窒化処理処理は、アン
モニア80体積%,H2S 0.1体積%で残部がCO2の混合ガス
中で560℃×3時間加熱する方法で行った。プラズマ窒化
法を用いた時効窒化処理は、N2 80体積%+H2 20体積%
の混合ガスを5Torr注入した密閉炉に試料を入れ、炉壁
に約1000Vの直流電圧をかけてプラズマを発生させ、そ
のプラズマに試料を接触させて540℃×3時間加熱する方
法で行った。塩浴窒化法を用いた時効窒化処理は、NaCN
40質量%+Na2CO3 40質量%を主成分とし残部が(NaK)4
Fe(CN)6である520℃の塩浴中に試料を1時間浸漬する方
法で行った。
【0042】各供試材について、実施例1と同様の手法
で、リング圧延後の試料全体の平均マルテンサイト量,
表層10μmでの平均マルテンサイト量、および時効窒化
材の表面硬さ,引張強さ,曲げ−引張疲労特性を調査し
た。これらの試験結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】ガス窒化法以外の種々の窒化法を用いて時
効窒化処理を行った表3の結果も、ガス窒化法による前
記表2の場合と同様の結果になった。すなわち、発明対
象鋼においては、種々の窒化法を適用して、強度および
疲労特性に極めて優れた無段変速機ベルトにふさわしい
特性を付与することができる。
【0045】〔実施例3〕時効窒化処理の温度・時間の
影響について、ガス窒化法または塩浴窒化法を適用した
場合の例を示す。ガス窒化法による例では、表1のC5を
用い、この溶体化処理鋼板に58%のリング圧延を施した
後、実施例1と同じガス組成の窒化雰囲気下で種々の温
度・時間で時効窒化処理を施した。また、塩浴窒化法に
よる例では、表1のC4を用い、この溶体化処理鋼板に57
%のリング圧延を施した後、さらにショットピーニング
処理(圧力1kgf/mm2,ビーズ径0.25〜0.60mm)を1minほ
ど施した試料について、実施例2と同じ組成の種々の温
度の塩浴に種々の時間浸漬して時効窒化処理を施した。
これらの時効窒化処理されたサンプルについて、表面硬
さ,引張強さ,曲げ−引張疲労特性を調べた。その結果
を表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】いずれの窒化法を適用した場合において
も、本発明で規定する条件で時効窒化処理を行ったもの
は、窒化が十分に起こり、表面硬さがHv700以上になっ
ている。さらに、引張強さ2000N/mm2以上,疲労破断ま
での振幅回数900×104以上を同時に満足し、無段変速機
ベルトとしての特性に不足はない。これに対し、比較例
のものは強度不足に起因して、疲労破断までの振幅回数
は600×104以下である。
【0048】〔実施例4〕曲げ−引張疲労試験で付与す
る最大応力値を変化させた実験も行った。試験片を掛け
るプーリーとして直径が35.0mm,37.5mm,40.0mmの3種
類のものを用いることにより、最大応力値がそれぞれ15
50N/mm2,1450N/mm2,1380N/mm2の3水準になるように
した。ただし、最小応力値はいずれも50N/mm2となるよ
うにした。図1は表1のC4,D2,D5について、図2は同
C5,D3,D6について、それぞれ曲げ−引張疲労試験で付
与する最大応力と破断までの振幅回数の関係をプロット
したグラフである。図1のサンプルはいずれもガス窒化
法を用いたもの、図2のサンプルはC5が塩浴窒化法,D3
がガス浸硫窒化法,D6が塩浴窒化法をそれぞれ用いたも
のである。図1中には、曲げ−引張疲労試験方法を表す
概念図、およびその応力付与サイクルを表す概念図を併
せて示しておく。図1,図2から、本発明に係る鋼を用
いたものは、各最大応力レベルにおいて、比較鋼を用い
たものより飛躍的に高い疲労特性を呈することがわか
る。
【0049】
【発明の効果】以上のように、本発明では、オーステナ
イト安定度を適度に調整したオーステナイト系ステンレ
ス鋼において、リング圧延等の冷間加工時におけるマル
テンサイト変態・加工硬化,時効硬化,窒化による表面
硬化,さらには無段変速機ベルト使用時におけるマルテ
ンサイト変態の各々の作用を有効に引き出すことによっ
て、従来のマルテンサイト系ステンレス鋼では実現でき
なかった高い強度と疲労特性を兼ね備えた無段変速機ベ
ルト用鋼板の提供を可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】曲げ−引張疲労試験で付与する最大応力と破断
までの振幅回数の関係をあらわすグラフ,曲げ−引張疲
労試験方法を表す概念図,およびその応力付与サイクル
を表す概念図。
【図2】曲げ−引張疲労試験で付与する最大応力と破断
までの振幅回数の関係をあらわすグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16G 5/16 F16G 5/16 B (72)発明者 森本 憲一 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社技術研究所内 (72)発明者 平松 直人 山口県新南陽市野村南町4976番地 日新製 鋼株式会社技術研究所内

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.15%以下,Si:1.0〜4.
    0%,Mn:5.0%以下,Ni:4.0〜10.0%,Cr:12.0〜18.
    0%,Cu:0〜3.5%(無添加を含む),Mo:1.0〜5.0
    %,N:0.15%以下を含み、C+N≧0.10%、Si+Mo≧3.5
    %、かつ、 Md(N)=580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−10M
    o で定義されるMd(N)の値が20〜100となるようにこれらの
    元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からな
    り、加工誘起マルテンサイト+オーステナイトの時効処
    理された複相組織を有し、かつ表面に窒化層を有する、
    疲労特性に優れた無段変速機ベルト用準安定オーステナ
    イト系ステンレス鋼板。
  2. 【請求項2】 鋼板中の平均加工誘起マルテンサイト量
    が30〜80体積%である、請求項1に記載の無段変速機ベ
    ルト用準安定オーステナイト系ステンレス鋼板。
  3. 【請求項3】 鋼板の表面硬さがHv700以上である、請
    求項1に記載の無段変速機ベルト用準安定オーステナイ
    ト系ステンレス鋼板。
  4. 【請求項4】 鋼板中の平均加工誘起マルテンサイト量
    が30〜80体積%であり、表面から深さ10μmまでの表層
    部における加工誘起マルテンサイト量が60体積%以上で
    あり、かつ表面硬さがHv700以上である、請求項1に記
    載の無段変速機ベルト用準安定オーステナイト系ステン
    レス鋼板。
  5. 【請求項5】 鋼板中の平均加工誘起マルテンサイト量
    が30〜80体積%であり、表面から深さ2μmまでの表層部
    における加工誘起マルテンサイト量が80体積%以上であ
    り、かつ表面硬さがHv700以上である、請求項1に記載
    の無段変速機ベルト用準安定オーステナイト系ステンレ
    ス鋼板。
  6. 【請求項6】 質量%で、C:0.15%以下,Si:1.0〜4.
    0%,Mn:5.0%以下,Ni:4.0〜10.0%,Cr:12.0〜18.
    0%,Cu:0〜3.5%(無添加を含む),Mo:1.0〜5.0
    %,N:0.15%以下を含み、C+N≧0.10%、Si+Mo≧3.5
    %、かつ、 Md(N)=580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−10M
    o で定義されるMd(N)の値が20〜100となるようにこれらの
    元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からな
    り、かつ加工誘起マルテンサイトを30〜80体積%含んで
    いる冷間加工鋼板に対し、時効窒化処理を施す、請求項
    1〜3に記載の無段変速機ベルト用準安定オーステナイ
    ト系ステンレス鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 冷間加工鋼板が、溶体化処理鋼板の端面
    どうしを溶接してリング状の無端ベルトとし、これにリ
    ング圧延を施して30〜80体積%の加工誘起マルテンサイ
    トを生成させたものである、請求項6に記載の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 質量%で、C:0.15%以下,Si:1.0〜4.
    0%,Mn:5.0%以下,Ni:4.0〜10.0%,Cr:12.0〜18.
    0%,Cu:0〜3.5%(無添加を含む),Mo:1.0〜5.0
    %,N:0.15%以下を含み、C+N≧0.10%、Si+Mo≧3.5
    %、かつ、 Md(N)=580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−10M
    o で定義されるMd(N)の値が20〜100となるようにこれらの
    元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる
    溶体化処理鋼板の端面どうしを溶接して、リング状の無
    端ベルトとし、これにリング圧延を施すことにより鋼板
    中の平均マルテンサイト量が30〜80体積%となり、かつ
    表面から深さ10μmまでの表層部におけるマルテンサイ
    ト量が60体積%以上となるように加工誘起マルテンサイ
    トを生成させ、次いで時効窒化処理を施す、請求項4に
    記載の無段変速機ベルト用準安定オーステナイト系ステ
    ンレス鋼板の製造方法。
  9. 【請求項9】 質量%で、C:0.15%以下,Si:1.0〜4.
    0%,Mn:5.0%以下,Ni:4.0〜10.0%,Cr:12.0〜18.
    0%,Cu:0〜3.5%(無添加を含む),Mo:1.0〜5.0
    %,N:0.15%以下を含み、C+N≧0.10%、Si+Mo≧3.5
    %、かつ、 Md(N)=580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−10M
    o で定義されるMd(N)の値が20〜100となるようにこれらの
    元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる
    溶体化処理鋼板の端面どうしを溶接して、リング状の無
    端ベルトとし、これにリング圧延を施した後、さらにバ
    レル研磨,ショットピーニング処理またはショットブラ
    スト処理の何れかの手段を施すことにより鋼板中の平均
    マルテンサイト量が30〜80体積%となり、かつ表面から
    深さ10μmまでの表層部におけるマルテンサイト量が60
    体積%以上となるように加工誘起マルテンサイトを生成
    させ、次いで時効窒化処理を施す、請求項4に記載の無
    段変速機ベルト用準安定オーステナイト系ステンレス鋼
    板の製造方法。
  10. 【請求項10】 質量%で、C:0.15%以下,Si:1.0〜
    4.0%,Mn:5.0%以下,Ni:4.0〜10.0%,Cr:12.0〜1
    8.0%,Cu:0〜3.5%(無添加を含む),Mo:1.0〜5.0
    %,N:0.15%以下を含み、C+N≧0.10%、Si+Mo≧3.5
    %、かつ、 Md(N)=580−520C−2Si−16Mn−16Cr−23Ni−300N−10M
    o で定義されるMd(N)の値が20〜100となるようにこれらの
    元素を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる
    溶体化処理鋼板の端面どうしを溶接して、リング状の無
    端ベルトとし、これにリング圧延を施すことにより鋼板
    中の平均マルテンサイト量が30〜80体積%となり、かつ
    表面から深さ2μmまでの表層部におけるマルテンサイト
    量が80体積%以上となるように加工誘起マルテンサイト
    を生成させ、次いで時効窒化処理を施す、請求項5に記
    載の無段変速機ベルト用準安定オーステナイト系ステン
    レス鋼板の製造方法。
  11. 【請求項11】 時効窒化処理を、300〜650℃の窒化雰
    囲気中で鋼板を30分以上加熱するガス窒化法によって行
    う、請求項6〜10に記載の製造方法。
  12. 【請求項12】 時効窒化処理を、アンモニアガスを基
    本成分とするガスにH2Sを混合した300〜650℃のガス中
    で鋼板を20分以上加熱するガス浸硫窒化法によって行
    う、請求項6〜10に記載の製造方法。
  13. 【請求項13】 時効窒化処理を、窒素ガスを基本成分
    とする減圧ガス中で鋼板と炉壁間に生成させたプラズマ
    によって鋼板を300〜650℃で20分以上加熱するプラズマ
    窒化法によって行う、請求項6〜10に記載の製造方
    法。
  14. 【請求項14】 時効窒化処理を、NaCN,KCN,NaCNOお
    よびKCNOの1種または2種以上を基本成分とする300〜6
    50℃の塩浴中に鋼材を20分以上浸漬する塩浴窒化法によ
    って行う、請求項6〜10に記載の製造方法。
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