JP2004027266A - 焼入用鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】焼入前の加工が容易であって、ガス冷却による低歪で高精度の焼入が可能であり、焼入れ後の破断強度や疲労強度にも優れた焼入用鋼を提供する。
【解決手段】塑性加工により板状、棒状または線状の素材形態とされ、
Fe含有率が92質量%以上であり、C、Si、Mn、Cr及びMoのうち、少なくともC、Si、Mn及びCrを必須元素として含有し、Cの含有率をWC(質量%)、Siの含有率をWSi(質量%)、Mnの含有率をWMn(質量%)、Crの含有率をWCr(質量%)、及びMoの含有率をWMo(質量%)として、WC:0.1質量%以上0.8質量%以下;WSi:0.4質量%以上1.5質量%以下;WMn:0.3質量%以上1.8質量%以下;WCr:0.5質量%以上2質量%以下;
WMo:0.35質量%以下;とされる。さらに、H≡142+122WC−8.8WSi+14.5WMn−25WCr+113WMo;K≡0.5WSi+WMn+WCr+2WMo;と定義したとき、Hが240以下であり、かつ、Kが1.8以上4.5以下となるように、各成分の組成が調整されてなる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、疲労強度及び形状精度に優れた焼入部材の製造に適した焼入用鋼に関する。
【0002】
【発明の属する技術分野】
本発明は、疲労強度及び形状精度に優れた浸炭焼入れ部材の製造方法、ならびに浸炭焼入れ部材に関する。
【0003】
【従来の技術】
高強度が要求される軸受、歯車、シャフトなどの機械部品は、油冷あるいは水冷処理による焼入処理を施して製造される。また、耐摩耗性や疲労強度を向上させるために、必要に応じて、浸炭や浸炭窒化などの表面硬化熱処理が施され、熱処理後は同様に油冷あるいは水冷処理により焼入される。この焼入処理時においては、大形部品等においては、部品内の肉厚分布等により冷却速度にムラが生ずることがある。また、熱処理炉内の温度分布等により、炉内の部品間でも冷却の不均一が生ずる場合がある。これらはいずれも、部品内あるいは部品間の硬さのバラツキや、熱処理歪の不均一化による寸法精度の低下等につながる。前者は部品の強度や耐摩耗性のバラツキを招く。また、後者は、例えば歯車の場合は振動や騒音あるいは偏摩耗の原因となり、軸受の場合は軸嵌合の不具合のほか、軸偏心による疲労強度の低下につながることがある。
【0004】
熱処理歪の不均一化により部品寸法精度に狂いが生じた場合は、研削や鍛造による修正あるいは矯正の加工が必要となる。しかし、この加工は、熱処理により硬化した後の部品について行なわなければならないので、一般的な切削加工よりもコストが高く、時に、部品全体の製造コストの30%以上を占める場合もある。したがって、部品の焼入れ時においては、発生する歪がなるべく小さくなることが求められ、従来、主として焼入れ技術による改善が図られているが、十分な改善には至っていない。そこで、冷却媒体として、熱処理歪の大きい油や水に代え、空気や不活性ガス等のガスを冷媒として用いた焼入れが行われることがある。なお、本明細書では、空気焼入も含め、冷媒としてガスを用いる焼入を「ガス焼入」と総称する。ガス焼入れは熱処理歪が小さいため、寸法や形状の精度を確保して加工コストを削減する観点において好都合である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
空気や不活性ガスによるガス焼入の場合、冷媒として用いるガスの冷却能が一般的には低いため、合金成分の調整により、鋼材の焼入性を高めることが行なわれている。鋼の焼入性を高める元素として代表的なものに、Si、Mn、Cr、Ni、Moなどが知られているが、従来の鋼材では、焼ならしあるいは焼なまし状態での機械加工性や冷間加工性が該して悪く、部品の製造性が劣化せざるを得ない問題があった。例えばJIS(日本工業規格)には、焼入性の高い肌焼鋼としてSNCM616やSNCM815などが規定されているが、これらは、最も一般的な肌焼鋼であるSCr420やSCM420に比べると焼ならしや焼なまし状態の硬さが非常に高く、切削加工や冷間加工が困難である。すなわち、空気や不活性ガスによるガス焼入れに適合した焼入性と、大量生産に適した部品の製造性を両立することは、本質的に困難だったのである。
【0006】
本発明の課題は、焼入前の加工が容易であって、しかもガス冷却による低歪で高精度の焼入が可能であり、焼入れ後の破断強度や疲労強度などの機械的特性に優れた焼入用鋼を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記課題を解決するために、本発明の焼入用鋼は、
塑性加工により板状、棒状または線状の素材形態とされ、
Fe含有率が92質量%以上であり、
C、Si、Mn、Cr及びMoのうち、少なくともC、Si、Mn及びCrを必須元素として含有し、Cの含有率をWC(質量%)、Siの含有率をWSi(質量%)、Mnの含有率をWMn(質量%)、Crの含有率をWCr(質量%)、及びMoの含有率をWMo(質量%)として、
WC:0.1質量%以上0.8質量%以下;
WSi:0.4質量%以上1.5質量%以下;
WMn:0.3質量%以上1.8質量%以下;
WCr:0.5質量%以上2質量%以下;
WMo:0.35質量%以下;
とされ、さらに、
H≡142+122WC−8.8WSi+14.5WMn−25WCr+113WMo;
K≡0.5WSi+WMn+WCr+2WMo;
と定義したとき、Hが240以下であり、かつ、Kが1.8以上4.5以下となるように、各成分の組成が調整されてなることを特徴とする。
【0008】
上記本発明の方法によると、焼入前の圧延、鍛造、プレス、打抜等の冷間塑性加工や、切削等の除去加工が容易であり、しかも、部材寸法に関係なく、ガス冷却により低歪で高精度の焼入が可能となる。また、焼入れ後の破断強度や疲労強度に優れ、部材全体の製造コストを大幅に削減できる。具体的には、焼入れ後の硬さ確保を主にC、Si(及び必要に応じたMo)の添加量調整により図り、さらに、ガス焼入を可能とする焼入れ性を、Mn、Crにより確保する。そして、本発明において独自に見出した2つの組成パラメータH及びKが、それぞれ規定の数値範囲に収まるように、各成分の含有量を調整することにより、焼入性と加工性との両立が可能となる。
【0009】
パラメータHは、各成分の組成を表す変数WC、WSi、WMn、WCr及びWMoに、加工性改善の観点から実験的に見出した固有の係数を乗じて一次式の形態にて結合したものである。Hの値が大きいほど、鋼の焼なまし状態での加工性は悪くなる(以下、本明細書において単に「加工性」と記した場合は、特に断らない限り、焼なまし状態あるいは焼きならしでの加工性を意味するものとする)。鋼に合金元素を添加すると硬さが増大するから、加工性は損なわれる方向に向かう。本発明の鋼においても、焼入性と焼入れ後の硬さを確保するため、C、Si、Mn、Cr(必要に応じMo)を前記した範囲内で添加する。このうち、WC、WMn及びWMoの係数はいずれも正である。例えば、部品の強度や耐摩耗性を確保するにはCの添加量増加が必要であり、さらに、焼入れ性改善のためには、Mnも一定の添加量を確保せざるを得ないが、いずれもHを大きく増大させ、加工性が損なわれるジレンマが生ずる。
【0010】
本発明者らはこのジレンマを解消するために鋭意検討した結果、焼入れ後の硬さや焼入れ性を損なわず、しかも焼なまし状態での鋼の加工性を改善するために、特に有効な役割を果たす合金元素がSiとCrであることを見出した。Hの表式を見てもわかる通り、WSiとWCrの係数はいずれも負であり、CやMnの添加によるH値の増分はSi及びCrの添加により相殺されることがわかる。このうち、Siは焼入れ後の硬さにも寄与し、Crは焼入れ性の向上にも寄与するが、他の元素とは異なり、鋼の加工性については意外にも改善の方向に作用するのである。従って、C添加量を抑制する代わりにSi添加量を増加させれば、加工性を損ねることなく、焼入れ後の硬さを十分に確保できる。また、Mn添加量を抑制する代わりにCr添加量を増加させれば、焼入れ性を損ねることなく、焼入れ後の硬さを十分に確保できる。
【0011】
鋼の加工性は組織の影響を強く受け、単に硬さの大小のみでは一義的に論ずることができない。そして、SiやCrの添加量増大により、焼なまし(あるいは焼ならし)状態における鋼の加工性が改善されるのは、組織中の炭化物の存在形態が、これら元素の作用により加工に好都合なものに変化するからである。すなわち、一定量以上の炭素を含有する鋼を焼なまし又は焼ならし処理すると、オーステナイト相からは、フェライトと炭化物との共析組織であるパーライトが生成する。パーライトは、薄板状の炭化物とフェライトとが交互に積層したラメラーと称される組織形態を有し、プレスや打抜、あるいは切削等における加工性を低下させやすいことが知られている。パーライト形成による加工性低下を抑制するためには、ラメラー組織をなるべく破壊して、薄板状の炭化物を細分化すること、望ましくは球状化することが有効である。このとき、本発明に規定した範囲内のSi及びCrが含有されていると、炭化物の球状化が促進され、加工性が大幅に向上するのである。特に、一度焼なましあるいは焼ならし処理した鋼に冷間加工を加えて、パーライト組織の破壊を促進し、その後、再びパーライト変態点(A1点)付近に保持するか、あるいは該温度域を徐冷通過させる熱処理を行なうと、Si及びCr添加量増大の効果とも相俟って、炭化物の球状化は一層顕著となり、焼なまし材の加工性改善に寄与する。
【0012】
以下、本発明にて採用する鋼の組成限定理由について説明する。
(1)WC:0.1質量%以上0.8質量%以下
Cは焼入れ後の硬さ確保のために必要な元素である。しかし、含有量が0.1質量%未満ではその効果が小さい。また、0.8質量%を超えると、オーステナイト化処理時に未固溶の炭化物が残存し、その未固溶炭化物を核として焼入時にパーライトを生成しやすくなり、硬さが不足する不具合につながる。また、焼なまし又は焼ならし組織に生成するパーライト量が増加し、加工性が低下する問題も生じやすい。
【0013】
(2)WSi:0.40質量%以上1.50質量%以下
Siは鋼のマトリックス強度を向上させるとともに、焼なまし又は焼ならし組織に生成する炭化物の球状化を促進し、前述のH値を減少させて加工性の改善を促す。その含有量が0.40質量%未満では、焼入れ後の強度が不足することにつながり、1.50質量%を超えると加工性が却って低下するほか、A3変態点の上昇により、焼入れ前の均一オーステナイト化が困難になる。
【0014】
(3)WMn:0.3質量%以上1.8質量%以下
Mnは焼入性を向上する元素である。その含有量が0.3質量%未満では効果が小さく、1.8質量%を超えると、焼なまし後又は焼ならし後の硬さが過剰となり、加工性が低下することにつながる。
【0015】
(4)WCr:0.5質量%以上2質量%以下
Crも焼入性を向上する元素である。しかし、含有量が0.5質量%未満では効果が不足し、また、2質量%を超えて添加すると、素材においてベイナイト組織が生成しやすくなり、加工性を著しく劣化させる。
【0016】
(5)WMo:0.35質量%以下
焼入れ後の硬さをMnやCrの増量のみでは十分な焼入硬さが得られない場合、例えば部材厚さが大きく、焼入組織が必ずしも十分に形成されない場合に、焼入れ後の部品硬さ確保のため補足的に添加する。しかし、含有量が0.35質量%を超えると、焼なまし後又は焼ならし後の素材硬さが過度に高くなり、加工性が損なわれるとともに、高価な添加元素なので素材コストの高騰にもつながる。
【0017】
(6)H:240以下
Hの値が240を超える組成は、焼なまし状態での加工性の劣化を招く。Hの値は、より望ましくは230以下となっているのがよい。
(7)K:1.8以上4.5以下
Kの値が1.8以下となる組成は焼入性が不十分であり、ガス焼入により十分な焼入組織が形成されず、硬さや強度が不足する。他方、Kの値が4.5を超えると、ガス焼入を採用しても熱処理歪が大きくなり、歪低減効果が不十分となる。
【0018】
なお、以上説明した本発明の効果が十分に達成可能な範囲内であれば、特許請求の範囲に記載した組成要件を充足する限り、上記以外の成分を、不可避不純物あるいは積極添加副成分として含有していてもよい。例えば、不可避不純物としては、0.15質量%以下のNi、0.15質量%以下のCu、0.02質量%以下のS、0.02質量%以下のP、0.05質量%以下のTi、0.05質量%以下のV及び0.03質量%以下のAlの1種ないし2種以上が含有されていてもよい。
【0019】
次に、本発明の焼入用鋼は、素材表層部に浸炭層又は浸炭窒化層を形成することができる。部材表面に浸炭層又は浸炭窒化層を形成して、該層に優先的にマルテンサイトを生成させることにより、表層部の硬度を増し、耐摩耗性を向上させるようにする。なお、浸炭層あるいは浸炭窒化層の表面炭素濃度は0.6質量%以上1質量%以下とするのがよい。該表面炭素濃度は浸炭焼入れ材の表面硬さに影響するが、0.6質量%未満では表面硬さが不足し、1質量%を超えると炭化物の析出量が多くなって、基地の焼入性が顕著に低下し、表面硬さが不足することにつながる。なお、浸炭層又は浸炭窒化層を形成する場合、浸炭焼入れ後の表面硬さは、ロックウェルCスケール硬さにて50以上となっていることが、耐摩耗性あるいは耐疲労強度を改善する上で望ましい。なお、浸炭あるいは浸炭窒化により得られる硬さは、例えば65程度が限界である。なお、本発明においてロックウェルCスケール硬さは、JIS:Z2245(1998)に規定された試験方法により測定されたものをいう。
【0020】
また、加工性に関しては、素材に対し試験処理として、
素材表層部に浸炭層または浸炭窒化層が形成されている場合は、それら浸炭層または浸炭窒化層を除去し、
1000℃にてオーステナイト化した後、600℃までの冷却速度が1℃/分となるように炉冷し、
次に、素材を、減面率30%となるように、冷間にて圧延、伸線又は鍛造により延伸加工を行い、
さらに、その延伸加工後に700℃に昇温し、600℃までの冷却速度が1℃/分となるように炉冷する処理(焼なまし処理である)を行なったとき、以下のような組織が得られるように、組成調整がなされていることが望ましい。すなわち、上記試験処理後の素材の研磨組織を観察したとき、該組織上にて観察される炭化物相の全面積のうち、パーライト相を構成するラメラー状の炭化物相を除いた残余部分(以下、非ラメラー炭化物という)の比率が80%以上(100%を含む)となる。この残余部分をなす炭化物相は、なるべく多くの部分が球状化していることが望ましい。上記試験処理後の組織において、炭化物相の全面積に対する非ラメラー炭化物の比率が80%未満になると、焼なまし後あるいは焼ならし後の加工性を十分に確保することができなくなる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の効果を確認するために行なった実験結果について説明する。
まず、表1に示す化学組成の鋼をアーク炉で溶製後、熱間圧延により直径80mm及び直径20mmの丸棒、及び幅100mm、厚さ3mmの板とした。
【0022】
【表1】
Figure 2004027266
【0023】
直径80mmの丸棒は、900℃に1時間保持後空冷の焼ならしを行い、次いで直径70mmの旋削試験片に加工した後、被削性の評価を、切削加工時の工具摩耗量により評価した。切削工具は、コーティングを付与したハイス・バイトを使用し、切削幅1.5mm、切削速度40mm/min、送り速度0.15mm/回転、乾式の条件で旋削加工を行ない、バイトの横逃げ面の平均摩耗幅が0.2mmとなる旋削長さを測定した(結果は、比較例であるSCr420についての結果を100として、相対値にて表示する)。
【0024】
次に、直径20mmの丸棒を同様に焼ならし後、小野式回転曲げ疲れ試験片(平行部直径:8mm)形状に加工した。また、直径80mmの丸棒からは、外径70mm、内径60mm、高さ12mmのリング試験片を加工した。いずれも、本発明の鋼種1、2、4、5及び比較例については930℃にて、表面炭素濃度が0.75質量%となるように浸炭処理後、空冷した。他方、鋼種3については、表面炭素濃度が0.7質量%となるように浸炭処理後、840℃にて表面窒素濃度が0.2質量%となるように窒化処理を行い、その後空冷した。鋼種1〜5の有効硬化層深さ(ビッカース硬さHvが513以上)を0.7〜1mmに調整した。鋼種6〜10は、830℃にてオーステナイト化加熱後、常温空気中にて放冷した。各疲れ試験片は、いずれも空冷後、平行部にてロックウェルCスケール硬さと、平行部の心振れ量とを測定した。試験片は、円柱状の平行部の両端に、それよりも径大(直径15mm)の保持端部が略同心的に一体化された形状を有する。そして、保持端部を回転チャックに対し同軸となるよう取り付け、その状態で試験片を回転チャックとともに回転させ、平行部外周面に当接するダイヤルゲージにより、該外周面の半径方向の変位量を心振れ量として求めている。そして、これらの試験片を小野式回転曲げ疲れ試験機に取り付け、繰り返し数1千万回を基準とする疲労強度を求めた。また、リング試験片は、空冷後の外径の最大値と最小値との差をひずみ量として求めた。
【0025】
一方、板材を用いて、以下の評価を行なった。すなわち、1000℃にてオーステナイト化した後、600℃までの冷却速度が1℃/分となるように炉冷した。次に、該板材を、減面率30%となるように冷間にて圧延加工し、その後、再び700℃に昇温し、600℃までの冷却速度が1℃/分となるように炉冷した。処理後の素材は板面を研磨し、ピクラル腐食液にてエッチングした後、光学顕微鏡により組織観察するとともに、その観察画像上にて炭化物相の全面積と、パーライト相を構成するラメラー状の炭化物相を除いた残余部分、つまり、非ラメラー炭化物の面積を求め、該非ラメラー炭化物の占める比率を算出した。また、試験片長手方向が圧延方向と直角になるように、JIS:Z2201に規定された5号試験片を採取して引張試験を行い、その破断伸びの値を求めた。該破断伸びは、塑性加工性の指標となり、例えば深絞り性と正の相関を有するものである。以上の結果を表2に示す。
【0026】
【表2】
Figure 2004027266
【0027】
この結果から明らかなように、本発明に属する鋼種は、いずれも、焼ならし後の切削加工性が良好であり、また、浸炭焼入れ後の硬さ及び疲労強度も十分なレベルに確保されていることがわかる。また、焼入れ後の心振れ量や歪も小さく、寸法精度が良好である。これに対し、比較例は、いずれも空冷では十分な硬さが得られなかったり、あるいは寸法精度の低下を招いていることがわかる。

Claims (3)

  1. 塑性加工により板状、棒状または線状の素材形態とされ、
    Fe含有率が92質量%以上であり、
    C、Si、Mn、Cr及びMoのうち、少なくともC、Si、Mn及びCrを必須元素として含有し、Cの含有率をWC(質量%)、Siの含有率をWSi(質量%)、Mnの含有率をWMn(質量%)、Crの含有率をWCr(質量%)、及びMoの含有率をWMo(質量%)として、
    WC:0.1質量%以上0.8質量%以下;
    WSi:0.4質量%以上1.5質量%以下;
    WMn:0.3質量%以上1.8質量%以下;
    WCr:0.5質量%以上2質量%以下;
    WMo:0.35質量%以下;
    とされ、さらに、
    H≡142+122WC−8.8WSi+14.5WMn−25WCr+113WMo;
    K≡0.5WSi+WMn+WCr+2WMo;
    と定義したとき、Hが240以下であり、かつ、Kが1.8以上4.5以下となるように、各成分の組成が調整されてなることを特徴とする焼入用鋼。
  2. 素材表層部に浸炭層または浸炭窒化層が形成されてなる請求項1記載の焼入用鋼。
  3. 素材に対し試験処理として;
    素材表層部に浸炭層または浸炭窒化層が形成されている場合は、それら浸炭層または浸炭窒化層を除去し、
    1000℃にてオーステナイト化した後、600℃までの冷却速度が1℃/分となるように炉冷し、
    次に、素材を、減面率30%となるように、冷間にて圧延、伸線又は鍛造により延伸加工し、
    さらに、その延伸加工後に700℃に昇温し、600℃までの冷却速度が1℃/分となるように炉冷する;
    処理を行なったとき、該試験処理後の素材の研磨組織上にて観察される炭化物相の全面積のうち、パーライト相を構成するラメラー状の炭化物相を除いた残余部分の比率が80%以上となることを特徴とする請求項1又は2に記載の焼入用鋼。
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