JP4442979B2 - ヘッドチップ及びヘッドユニット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、プリンタ、ファックスなどに適用されるインクジェット式記録装置に搭載されるヘッドチップ及びこれを用いたヘッドユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、複数のノズルからインクを吐出する記録ヘッドを用いて被記録媒体に文字や画像を記録するインクジェット式記録装置が知られている。かかるインクジェット式記録装置では、被記録媒体に対向する記録ヘッドはヘッドホルダに設けられ、ヘッドホルダはキャリッジに搭載されて被記録媒体の搬送方向とは直交する方向に走査される。
【0003】
このような記録ヘッドの一例の分解概略を図7に、また、要部断面を図8に示す。図7及び図8に示すように、圧電セラミックプレート101には、複数の溝102が並設され、各溝102は、側壁103で分離されている。各溝102の長手方向一端部は圧電セラミックプレート101の一端面まで延設されており、他端部は、他端面までは延びておらず、深さが徐々に浅くなっている。また、各溝102内の両側壁103の開口側表面には、長手方向に亘って、駆動電界印加用の電極105が形成されている。
【0004】
圧電セラミックプレート101の溝102の開口側には、カバープレート107が接着剤109を介して接合されている。カバープレート107には、各溝102の浅くなった他端部と連通する凹部となるインク室111と、このインク室111の底部から溝102とは反対方向に貫通するインク供給口112とを有する。
【0005】
また、圧電セラミックプレート101とカバープレート107との接合体の溝102が開口している端面には、ノズルプレート115が接合されており、ノズルプレート115の各溝102に対向する位置にはノズル開口117が形成されている。
【0006】
なお、圧電セラミックプレート101のノズルプレート115とは反対側でカバープレート107とは反対側の面には、配線基板120が固着されている。配線基板120には、各電極105とボンディングワイヤ121等で接続された配線122が形成され、この配線122を介して電極105に駆動電圧を印加できるようになっている。
【0007】
このように構成される記録ヘッドでは、インク供給口112から各溝102内にインクを充填し、所定の溝102の両側の側壁103に電極105を介して所定の駆動電界を作用させると、側壁103が変形して所定の溝102内の容積が変化し、これにより、溝102内のインクがノズル開口117から吐出する。
【0008】
例えば、図9に示すように、溝102aに対応するノズル開口117からインクを吐出する場合には、その溝102a内の電極105a,105bに正の駆動電圧を印加すると共にそれぞれに対向する電極105c,105dを接地するようにする。これにより、側壁103a,103bには溝102aに向かう方向の駆動電界が作用し、これが圧電セラミックプレート101の分極方向と直交すれば、圧電厚みすべり効果により側壁103a,103bが溝102a方向に変形し、溝102a内の容積が減少して圧力が増加し、ノズル開口117からインクが吐出する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した記録ヘッドでは、圧電セラミックプレートの溝のそれぞれと、カバープレートのインク室とが直接連通しているため、クロストークを起こしやすく、インク吐出特性が不安定であるという問題がある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑み、安定したインク吐出特性が得られるヘッドチップ及びこれを用いたヘッドユニットを提供することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、圧電セラミックプレートに形成された溝の側壁に設けられた電極に駆動電圧を印加することにより当該溝内の容積を変化させてその内部に充填されたインクをノズル開口から吐出するインクジェットヘッドにおいて、前記圧電セラミックスプレートに接合されて前記溝の上面を封止すると共に前記溝に連通するインク室を有するカバープレートを具備し、前記溝と前記インク室との間に複数の微少孔を有するフィルタを具備することを特徴とするヘッドチップにある。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記フィルタが弾性変形可能であることを特徴とするヘッドチップにある。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記フィルタが非導電性のフィルムからなることを特徴とするヘッドチップにある。
【0014】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記非導電性フィルムが、樹脂フィルムであることを特徴とするヘッドチップにある。
【0015】
本発明の第5の態様は、第1又は2の態様において、前記フィルタが網目の微小孔を有する不織布、織物又は編物であることを特徴とするヘッドチップにある。
【0016】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様のヘッドチップと、このヘッドチップを搭載すると共に前記ヘッドチップの駆動回路を搭載したヘッドホルダとを具備することを特徴とするヘッドユニットにある。
【0017】
本発明の第7の態様は、第6の態様において、前記ヘッドホルダには、インクを収容したインクカートリッジが着脱自在に保持できることを特徴とするヘッドユニットにある。
【0018】
かかる本発明では、フィルタによって各溝が実質的に分離されるため、各溝内のインクの動きが他の溝内のインクに伝搬するのを抑えることができ、クロストークを防止してインク吐出特性を良好に保持することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。図示するように、本実施形態のヘッドチップ10を構成する圧電セラミックプレート11には、複数の溝12が並設され、各溝12は、側壁13で分離されている。各溝12の長手方向一端部は圧電セラミックプレート11の一端面まで延設されており、他端部は、他端面までは延びておらず、深さが徐々に浅くなっている。また、各溝12内の両側壁13の開口側表面には、長手方向に亘って、駆動電界印加用の電極15が形成されている。
【0021】
また、このような圧電セラミックプレート11の溝12の開口側の表面には、カバープレート17が接合されている。カバープレート17には、各溝12の浅くなった他端部と連通する凹部となるインク室21と、このインク室21の底部から溝12とは反対方向に貫通するインク供給口22とを有する。
【0022】
ここで、本実施形態では、各溝12は、ブラック(B)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色のインクに対応したグループに分かれており、インク室21及びインク供給口22は、それぞれ4つずつ設けられている。
【0023】
なお、カバープレート17は、セラミックプレート、金属プレートなどで形成することができるが、圧電セラミックプレート11との接合後の変形等を考えると、熱膨張率の近似したセラミックプレートを用いるのが好ましい。
【0024】
また、圧電セラミックプレート11の溝12とカバープレート17のインク室21との間には、複数の微小孔18aを有するフィルタ18が複数の溝12に亘って設けられている。このフィルタ18は、弾性変形可能であることが好ましく、本実施形態では、厚さが25μm程度の非導電性フィルム、例えば、樹脂フィルムで形成されている。
【0025】
このように、溝12とインク室21との間にフィルタ18を設けることにより、各溝12が実質的に分離され、インクを吐出する際の各溝12内のインクの動きが他の溝12内のインクに伝搬されるのを抑えることができる。すなわち、クロストークを防止することができ、インク吐出特性が安定する。また、特に、本実施形態では、フィルタ18が弾性変形可能であるため、各溝12内のインクの動きがフィルタ18の厚さ方向の変形によって吸収され、クロストークをより確実に防止することができる。また、フィルタ18は、面方向にも変形可能であるため、インク吐出の際の各側壁13の変形に影響を及ぼすことがない。
【0026】
なお、このようなフィルタ18の固定方法は、特に限定されないが、例えば、本実施形態では、インク室21に対応する領域の圧電セラミックプレート11上に、複数の溝12に亘ってフィルタ18を接着し、その後、圧電セラミックプレート11とカバープレート17とを接合することにより固定されている。勿論、フィルタ18を各溝12毎に設けるようにしてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、フィルタ18を樹脂フィルムで形成するようにしたが、これに限定されず、例えば、網目の微小孔を有する不織布、織物又は編物等であってもよい。何れにしても、フィルタ18は、各溝12を実質的に分離できるもので形成されればよい。
【0028】
なお、圧電セラミックプレート11とカバープレート17との接合体の溝12が開口している端面には、ノズルプレート25が接合されており、ノズルプレート25の各溝12に対向する位置にはノズル開口27が形成されている。
【0029】
本実施形態では、ノズルプレート25は、圧電セラミックプレート11とカバープレート17との接合体の溝12が開口している端面の大きさより大きくなっている。また、このノズルプレート25は、ポリイミドフィルムなどに、例えば、エキシマレーザ装置を用いてノズル開口27を形成したものである。また、図示しないが、ノズルプレート25の被印刷物に対向する面には、インクの付着等を防止するために撥水性を有する撥水膜が設けられている。
【0030】
また、本実施形態では、圧電セラミックプレート11とカバープレート17との接合体の溝12が開口している端部の周囲には、ノズル支持プレート28が配置されている。このノズル支持プレート28は、ノズルプレート25の接合体端面の外側と接合されて、ノズルプレート25を安定して保持するためのものである。勿論、このノズル支持プレート28は設けなくてもよい。
【0031】
このような構成のヘッドチップ10は、まず、圧電セラミックプレート11とカバープレート17とを接合し、その接合体の端面にそれぞれ、封止板19及びノズルプレート25を接合する。次いで、ノズルプレート25の外側面、及び圧電セラミックプレート11とカバープレート17との接合体にノズル支持プレート28を嵌合接着することにより形成される。
【0032】
なお、このようなヘッドチップの駆動原理等は従来技術で述べたとおりであるので、ここでの説明は省略する。
【0033】
また、このようなヘッドチップ10を駆動するための配線等の設け方も特に限定されないが、以下に、その一例を示す。
【0034】
図3及び図4には、上述したヘッドチップ10をヘッドチップユニット30とする製造工程の一例を示す。
【0035】
図3に示すように、圧電セラミックプレート11とカバープレート17との接合体のノズル支持プレート28の後端側には、圧電セラミックプレート11側のアルミニウム製のベースプレート33と、カバープレート17側のヘッドカバー34とが組み付けられる。ベースプレート33とヘッドカバー34とは、ベースプレート33の係止孔33aにヘッドカバー34の係止シャフト34aを係合することにより固定され、両者で圧電セラミックプレート11とカバープレート17との接合体を挟持する。ヘッドカバー34には、カバープレート17のインク供給口22のそれぞれに連通するインク導入路35が設けられている。
【0036】
次に、図4(a)に示すように、圧電セラミックプレート11の後端側に突出したベースプレート33上にはヘッドチップを駆動するための集積回路等の駆動回路37が搭載された配線基板36が固着される。そして、駆動回路37と各電極15に接続されたリード電極とが図示しない異方性導電膜等を介して接続される。これにより、図4(b)のヘッドチップユニット30が完成する。
【0037】
さらに、このようなヘッドチップユニット30は、例えば、インクカートリッジを着脱自在に保持するタンクホルダに組み付けて用いられる。
【0038】
このようなタンクホルダの一例を図5に示す。図5に示すタンクホルダ41は、一方面が開口した略箱形形状をなし、図示しないインクカートリッジが着脱自在に保持可能なものである。また、底壁上面には、インクカートリッジの底部に形成された開口部であるインク供給口と連結する連結部42が設けられている。連結部42は、例えば、ブラック(B)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)の各色のインク毎に設けられている。連通部42内には図示しないインク流路が形成され、その開口となる連結部42の先端には、フィルタ43が設けられている。また、連結部42内に形成されたインク流路は底壁の裏面側まで連通して形成され、各インク流路は、タンクホルダ41の裏面側に設けられた流路基板45内の図示しないインク流路を介して流路基板45の側壁に開口するヘッド連結口46に連通する。このヘッド連結口46はタンクホルダ41の側面側に開口し、当該側壁の底部には、上述したヘッドチップユニット30を保持するヘッドチップユニット保持部47が設けられている。ヘッドチップユニット保持部47は、配線基板36上に設けられた駆動回路37を包囲する略コ字状に立設された包囲壁48と、包囲壁48内にあってヘッドチップユニット30のベースプレート33及び配線基板36に設けられた係止孔30aと係合する係合シャフト49が立設されている。
【0039】
従って、このヘッドチップユニット保持部47にヘッドチップユニット30を搭載してヘッドユニット40が完成する。このとき、ヘッドカバー34に形成されたインク導入路35が流路基板45のヘッド連結口46に連結される。これにより、タンクホルダ41の連結部42を介してインクカートリッジから導入されたインクは、流路基板45内のインク流路を通ってヘッドチップユニット30のインク導入路35に導入され、インク室21及び溝12内に充填される。
【0040】
このようなヘッドユニット40は、例えば、インクジェット式記録装置のキャリッジに搭載されて使用される。この使用態様の一例の概略を図6に示す。
【0041】
図6に示すように、キャリッジ61は、一対のガイドレール62a及び62b上に軸方向に移動自在に搭載されており、ガイドレール62の一端側に設けられてキャリッジ駆動モータ63に連結されたプーリ64aと、他端側に設けられたプーリ64bとに掛け渡されたタイミングベルト65を介して搬送される。キャリッジ61の搬送方向と直交する方向の両側には、ガイドレール62a及び62bに沿ってそれぞれ一対の搬送ローラ66及び67が設けられている。これらの搬送ローラ66及び67は、キャリッジ61の下方に当該キャリッジ61の搬送方向とは直交する方向に被記録媒体Sを搬送するものである。
【0042】
キャリッジ61上には、上述したヘッドユニット40が搭載され、このヘッドユニット40には上述したインクカートリッジを着脱自在に取付可能である。
【0043】
このようなインクジェット式記録装置によると、被記録媒体Sを送りつつキャリッジ61をその送り方向とは直交方向に走査することにより、ヘッドチップによって被記録媒体S上に文字及び画像を記録することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、勿論このような構成に限定されるものではない。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、圧電セラミックプレートの溝と、カバープレートのインク室との間に、複数の微小孔を有するフィルタを設けるようにしたので、各溝が実質的に分離されるためインクを吐出する際の各溝に発生するインクの動きが、他の溝内のインクに伝搬するのを防止できる。すなわち、クロストークを防止することができ、インク吐出特性を良好に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1に係るヘッドチップの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るヘッドチップの断面図及び平面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るヘッドチップを用いたユニットの組立を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るヘッドチップを用いたユニットの組立を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態1に係るヘッドチップを用いたユニットの組立を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態1に係るヘッドチップを用いたユニットの使用態様を示す斜視図である。
【図7】従来技術に係る記録ヘッドの概要を示す分解斜視図である。
【図8】従来技術に係る記録ヘッドの概要を示す断面図である。
【図9】従来技術に係る記録ヘッドの概要を示す断面図である。
【符号の説明】
11 圧電セラミックプレート
12 溝
13 側壁
15 電極
17 カバープレート
18 フィルタ
18a 微小孔
25 ノズルプレート
27 ノズル開口
30 ヘッドチップユニット
40 ヘッドユニット

Claims (7)

  1. 圧電セラミックプレートに形成する溝の側壁に設ける電極に駆動電圧を印加することにより当該溝内の容積を変化してその内部に充填したインクをノズル開口から吐出するヘッドチップにおいて、
    前記圧電セラミックスプレートに接合して前記溝の上面を封止すると共に前記溝に連通するインク室を有するカバープレートを具備し、
    複数の微少孔を有するフィルタを前記溝と前記インク室との間に具備するとともに、該フィルタを前記圧電セラミックスプレートと前記カバープレートとの接合面に具備することを特徴とするヘッドチップ。
  2. 請求項1において、前記フィルタが弾性変形可能であることを特徴とするヘッドチップ。
  3. 請求項1又は2において、前記フィルタが非導電性のフィルムからなることを特徴とするヘッドチップ。
  4. 請求項3において、前記非導電性フィルムが、樹脂フィルムであることを特徴とするヘッドチップ。
  5. 請求項1又は2において、前記フィルタが網目の微小孔を有する不織布、織布又編物であることを特徴とするヘッドチップ。
  6. 請求項1〜5の何れかのヘッドチップと、このヘッドチップを搭載すると共に前記ヘッドチップの駆動回路を搭載したベースプレートとを具備することを特徴とするヘッドチップユニット
  7. 請求項6のヘッドチップユニットと、インクを収容するインクカートリッジを着脱自在に保持するタンクホルダを設けることを特徴とするヘッドユニット。
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