JP4441177B2 - フェノール類含有シソ科植物エキスの製造法及びその用途 - Google Patents
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Description
【0001】
本発明は、シソ科植物に含まれるフェノール類、特にフェノール酸であるロスマリン酸を含有するシソ科植物エキス又はその濃縮粉末の製造法、更に当該エキス又は濃縮粉末、並びにそれらを含有する炎症細胞の浸潤抑制剤と肝障害抑制剤、更には当該エキス又はその濃縮粉末を含有する飲食品、さらにまた、炎症細胞の浸潤抑制作用、若しくは肝障害抑制作用を有する飲食品を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年、感染症などにとって変わって、アレルギーや癌、虚血性心疾患、糖尿病などの生活習慣病が疾病の主体を占めるようになってきた。これらのことは、現代社会におけるストレスや食生活の変化、衛生状態の向上などに起因すると考えられている。その特性からもこれらの疾病に関しては、予防することが最も有効な手段であると考えられている。
特にアレルギーは、現代人の約30%が羅患していると言われている。現在、脱感作療法やステロイド剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤などの併用療法など種々の治療法が行われているが、長期間治療する必要があることや、副作用があるため、患者のQOL(Quality Of Lifeの略称)を著しく阻害する。
これらのことから、患者への負担を軽減することを目的として、植物抽出物を用いた予防及び治療法の試みが成されている。また、赤シソは古くから食品や嗜好品として重要視されている。赤シソの脂溶性成分はα−リノレイン酸が多く含まれておりアレルギーを軽減すると言われているが、赤シソの葉に含まれるフェノール類が炎症細胞の浸潤抑制作用を有することは未だ知られていない。
【0003】
一方、肝障害は、臨床的には急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、肝硬変、肝癌等に分けられ、原因的にはウイルスの感染によるウイルス性やアルコールの多飲によるアルコール性などに区分される。ウイルス性肝炎では、A型肝炎は自然治癒するものがあるが、B型・C型肝炎に関しては劇症化し、生命に関わる症例も少なくない。また、ウイルス性肝炎やアルコール性肝炎は慢性化し、肝臓の繊維化が起こり、肝硬変や肝臓癌につながることが知られている。
肝障害はほとんど自覚症状がなく、軽い病変では気づかれないことが多い。そこで、肝障害の早期発見のために、通常血液中のGOT、GPTを測定する肝機能検査が行われる。民間療法では、ウコンやカワラヨモギ、オトギリソウといった植物を煎じて飲用することが肝障害を軽減するのによいと伝えられている。
しかしながら、シソ科植物の抽出物が肝障害抑制作用を有することは未だ知られていない。
【0004】
本発明は、天然物由来であり、炎症細胞の浸潤抑制作用を有していて、炎症細胞の浸潤抑制剤、或いは炎症細胞の浸潤抑制作用を有する飲食品などとして有用な植物エキス及びその濃縮粉末を提供すること、並びに当該エキス又はその濃縮粉末の効率的な製造法を提供すること、を目的とするものである。
また、本発明は、天然物由来であり、肝障害の予防や治療のために用いる肝障害抑制剤、或いは肝障害抑制作用を有する飲食品などとして有用な植物エキス及びその濃縮粉末を提供すること、並びに当該エキス又はその濃縮粉末の効率的な製造法を提供すること、を目的とするものである。
【発明の開示】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、シソ科植物を酸性条件下で抽出して得られるフェノール類含有シソ科植物エキス及びその濃縮粉末が、これらの課題を解決しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに到った。
すなわち、請求項1記載の本発明は、シソ科植物の刻まない生葉全葉を、pH0.5〜4.0の酸性条件下で、水にて50〜93℃にて抽出し、もしくは、水及びエタノールの容量の割合が90:10〜20:80の混液にて37〜50℃にて抽出することを特徴とする、ロスマリン酸含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末の製造法を提供するものである。
請求項2記載の本発明は、前記抽出の後、;得られた抽出液を、吸着性樹脂を充填したカラムに供し、水及びエタノールの容量の割合が50:50〜20:80の混液にて溶出する、請求項1記載の製造法を提供するものである。
請求項3記載の本発明は、前記抽出の前乃至抽出と同時に、前記シソ科植物の生葉全葉を食物繊維分解酵素で処理する請求項1又は2に記載の製造法を提供するものである。
請求項4記載の本発明は、前記食物繊維分解酵素が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びペクチナーゼのうち1種又は2種以上の酵素である請求項3記載の製造法を提供するものである。
請求項5記載の本発明は、前記シソ科植物が、赤シソ、青ジソ、チリメンジソ、ローズマリー、セージ、エゴマ、スイートバジルである請求項1乃至4のいずれかに記載の製造法を提供するものである。
請求項6記載の本発明は、前記シソ科植物エキス又はその濃縮粉末が、ロスマリン酸を固形分当たり1〜80重量%含有するものである、請求項1乃至5のいずれかに記載の製造法を提供するものである。
請求項7記載の本発明は、前記シソ科植物エキス又はその濃縮粉末が可食性のものである請求項1乃至6のいずれかに記載の製造法を提供するものである。
【0006】
本発明において使用するシソ科植物は、例えば、赤シソ(Perilla flutescens Britton)、青ジソ、チリメンジソ、ローズマリー、セージ、エゴマ、スィートバジル等が挙げられ、好ましくは赤シソ、エゴマ、セージが適している。これらのシソ科植物は古くから食品や嗜好品として重用されていたものであり、現在でも多くの量を消費されていることは、その安全性を証明するものである。特に、赤シソ葉を用いた場合、鮮やかな赤色で風味の良いエキス又はその濃縮粉末を得ることができる。
本発明において使用するシソ科植物の部位は、葉、茎、根が挙げられるが、葉が好ましく、葉全体、すなわち全葉を刻むことなく用いるのがより好ましい。
シソ科植物の細胞壁には、ポリフェノールオキシダーゼ(以下、PPOと称する)が多く含まれているため、一般に植物からフェノール類を抽出するために実施するような操作、例えば粉砕・乾燥などを実施すると、PPOの活性化を誘導してしまい、ポリフェノールが酸化を受け、効率的に回収できない。従って、原料としてシソ科植物の葉を用いる場合、乾燥した状態でも生の状態でも使用可能であるが、PPOの影響を受けにくい生葉を用いる方が効率的である。また、刻んだ植物体や粉砕した植物体も原料として用いることができるが、そのような葉を傷つける操作によるPPOの活性化を避けるため、全葉をそのまま用いるのが望ましい。
【0007】
このようなシソ科植物を酸性条件下で有機溶剤、水又はその混液にて抽出することにより、フェノール類、特にフェノール酸であるロスマリン酸含量の高いフェノール類含有シソ科植物エキスを効率的に得ることができる。
フェノール類は、PPOの至適pHである中性領域では、この酵素によって酸化されてしまうだけでなく、化学的にも不安定であることから高度に回収することは難しいが、酸性条件下にて抽出することにより、PPOの活性が低下し、より安定な状態で、効率よく抽出することが可能となる。
酸性条件とするための酸としては、例えば塩酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、リン酸、コハク酸、酢酸等、及びそれらの塩を用いた緩衝液などが挙げられ、pHを0.1〜4.5、好ましくはpH0.4〜4.0とする。緩衝液を用いる場合、濃縮後にアルカリの塩として残存しない塩を用いた緩衝液が好ましい。
【0008】
本発明では、抽出溶媒として、水、有機溶剤又はその混液を用いる。
有機溶剤としては、エタノール、メタノール、アセトニトリル、アセトン等の親水性溶剤や、酢酸エチル、ブタノール等が挙げられ、親水性溶剤は水と混液にして抽出に使用することができる。
抽出溶媒として、水、親水性溶剤又はその混液を用いる場合には、水対親水性溶剤の容量比を100:0〜4:96とする。
飲食品への添加を目的とした、フェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末を製造する際の抽出溶媒としては、安全性の面から、水、エタノール又はその混液の使用が好ましい。
抽出組成比としては、例えばシソ科植物の生葉を抽出する場合は、生葉100重量部に対し、抽出溶媒は100〜10000重量部、好ましくは200〜5000重量部とする。
抽出温度は、水を使用する場合は、加熱条件が好ましく、30〜100℃、好ましくは50〜93℃である。また、親水性溶剤を単独で又は水と親水性溶剤との混液を用いる場合は、10〜93℃、好ましくは10〜80℃、より好ましくは20〜50℃である。さらに、親水性溶剤でない有機溶剤を単独で使用する場合は、10〜40℃、好ましくは20〜30℃である。
抽出時間は、水の場合は、加熱して1〜360分、好ましくは、20〜60分処理をする。有機溶剤を使用する場合は、1〜48時間、好ましくは5〜24時間撹拌下処理する。
従って、特に、シソ科植物の生葉の全葉を、pH0.1〜4.5の酸性条件下で、水及びエタノールの割合が100:0〜4:96の混液にて10〜93℃にて抽出することが好ましい。
【0009】
なお、赤シソ等のシソ科植物は、フェノール類の回収率・含有量を上げる為、抽出の前乃至抽出と同時に食物繊維分解酵素で処理することが好ましい。
ここで食物繊維分解酵素としては、例えばセルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びぺクチナーゼが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上の酵素を用いることが好ましい。食物繊維分解酵素による処理(酵素反応)は、抽出前の前処理として行うこともできるが、食物繊維分解酵素の至適pHが酸性であれば、酸性条件下で反応可能であり、酵素反応と抽出を同時に行い得る。この酵素反応は、例えば生葉と反応させる場合は、生葉100重量部に対し、水又は緩衝液100〜10000重量部、好ましくは200〜5000重量部に酵素をその力価に応じて適宜選択して添加する。食物繊維分解酵素がセルラーゼの場合の生葉100重量部に対する酵素の重量組成比は、0.1〜20重量部、好ましくは1〜5重量部を加える。反応温度は20℃〜60℃、好ましくは30〜50℃であり、反応時間は1〜360分、好ましくは、10〜30分である。
食物繊維分解酵素がヘミセルラーゼの場合の生葉100重量部に対する酵素の重量組成比は、0.5〜30重量部、好ましくは1〜10重量部であり、また、当該酵素がペクチナーゼの場合は0.2〜15重量部、好ましくは1〜5重量部とする。反応温度及び反応時間はセルラーゼと同様にする。
従って、特に、抽出の前乃至抽出と同時に、シソ科植物の生葉の全葉をセルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びペクチナーゼのうち1種又は2種以上の食物繊維分解酵素で処理し、pH0.1〜4.5の酸性条件下で、水及びエタノールの割合が100:0〜4:96の混液にて10〜80℃にて抽出することが好ましい。
【0010】
本発明では、上記した如きシソ科植物を原料として用い、これを必要に応じて食物繊維分解酵素で処理したものについて、酸性条件下で有機溶剤、水又はその混液にて抽出する。
本発明においては、このようにシソ科植物を酸性条件下で有機溶剤、水又はその混液にて抽出し、さらに必要に応じて濾過等により沈殿物を除去することにより、抽出液、つまりフェノール類含有植物エキスを得ることができる。
さらに、このフェノール類含有植物エキスは、適当な濃度に減圧濃縮したものを含み、更に該濃縮液を凍結乾燥又はスプレードライなどにより粉末化して濃縮粉末とすることもできる。
また、抽出の際に有機溶剤を使用した場合は、上記の如く濾過等により沈殿物を除去した後、残存している有機溶剤を減圧下で除去しておくことが好ましく、これにより目的とするフェノール類含有植物エキスを得ることができる。また得られたフェノール類含有植物エキスは、上記同様に、凍結乾燥又はスプレードライ等により、粉末化することもできる。
【0011】
更に、得られた抽出液、つまりフェノール類含有植物エキスは、不純物を除き目的物質の濃度を高めるために、クロマトグラフィーなどによってさらに精製することも可能である。クロマトグラフィーとしては、吸着性樹脂の使用が有効である。樹脂の使用量としては、樹脂量対抽出液との容量比が、1:1から1:300、好ましくは、1:2から1:150である。樹脂に吸着後、水や低濃度の含水親水性溶媒によって非吸着物質を洗い流すことで、最終的に得られるエキス中のフェノール類、特にロスマリン酸濃度を高めることができる。洗い流す水又は含水親水性溶媒の使用量は、樹脂の1〜30倍量、好ましくは、3〜20倍量が適当である。含水親水性溶媒は、例えば0〜60%エタノールを用いることができる。洗い流す溶液のエタノール濃度を段階的に高め、溶液量を調節し、洗いを数回行うことにより、よりフェノール類、特にロスマリン酸含量の高いエキスを得ることができる。
その後、含水親水性溶媒を溶離液として用い、フェノール類を溶出する。ここで、含水親水性溶媒としては、飲食品への添加を目的とした、フェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末を製造する際の溶離液としては、安全性の面から、水とエタノールの混液を好ましく用いることができる。水とエタノールの混液を用いる場合、水:エタノールの容量比は、10:90から80:20の範囲が好ましく、50:50から20:80が特に好ましい。溶離液の量としては、カラム樹脂量の1〜20倍量が用いられ、好ましくは、2〜10倍量が好適である。
フェノール類を溶出して得られる溶出液は、上記した如く、減圧濃縮することができる。更に、濃縮液を凍結乾燥又は、スプレードライなどをして、粉末化することもできる。また、スプレードライの際、バインディング材としてデキストリン、乳糖等を添加して、フェノール類の量を調整することも可能である。
【0012】
本発明においては、以上説明した製造法により、フェノール類を高濃度に含有するフェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末を得ることができる。
本発明において、フェノール類とは、ベンゼン環に水酸基が結合した構造を有する物質の総称であり、通常、プルシアンブルー法(Method in Enzymology Vol.243, 432-433)で測定することができる。
本発明において、フェノール類の回収率は、例えば赤シソ葉を用いてシソ科植物エキスの濃縮粉末を製造した場合、赤シソ葉中のフェノール類の全量を100%とし、下記の計算式によって求めることができる。
【0013】
・フェノール類回収率(%)=(製造したフェノール類含有赤シソエキス又は濃縮粉末中のフェノール類量/赤シソ葉中のフェノール類の全量)×100
【0014】
なお、赤シソ葉中のフェノール類の全量は、赤シソ生葉5gを1重量%クエン酸溶液500mlにて2回沸騰水浴中で抽出し、それを1Lにメスアップ後、プルシアンブルー法で測定することができる。
シソ科植物の葉に含まれるフェノール類としては、例えば、フラボノイド、アントシアン、フェノール酸等が挙げられる。
フラボノイドとしては、ルテオリンが挙げられる。
アントシアンとしては、例えば、シアニジン(Biosci. Biotechnol. Biochem. 60(4) 589-593 (1996)を参照して同定した)、デルフィニジン(Biosci. Biotechnol. Biochem. 60(4) 589-593 (1996)を参照して同定した)、シソニン(Agric. Food Chem. 54(7) 589-593(1990)を参照して同定した)及びそれらの配糖体が挙げられる。
フェノール酸としては、ロスマリン酸・クロロゲン酸(Planta Medica 63, 177-179(1997)を参照して同定した)、クマリン酸(J. Agric. Food Chem. 48 5512-5516(2000)を参照して同定した)、カフェ酸・没食子酸(Food Chem. 65 1-8(1999)を参照して同定した)、バニリン酸(J. Agric. Food Chem. 47, 12-18(1999)を参照して同定した)、フェルラ酸(J. Chromatography A 825 102-106(1998))を参照して同定した)、プロトカテキュ酸(Planta Medica 63, 177-179(1997)を参照して同定した)等が挙げられる。
以上のようにして、フェノール類を含有するシソ科植物エキス又はその濃縮粉末を得ることができる。
【0015】
本発明においては、このようにして得られるフェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末による抗皮膚炎、抗アレルギー効果を、実際にin vivoで確認した。また、前記フェノール類の中でも、炎症局所にマクロファージ、好酸球、好塩基球、好中球やリンパ球などの炎症細胞の浸潤を抑制し抗アレルギー、抗炎症作用を発揮する効果は、ロスマリン酸が最も強いことを確認し、ロスマリン酸がアレルギー及び炎症に対し、直接的かつ即効性であることを見出した。
更に、本発明の製造法で得られるフェノール類含有シソ科植物エキス又は粉末は、フェノール類の中でも、炎症細胞の浸潤抑制作用の有効成分であるロスマリン酸の割合が高い。
【0016】
以上の如き知見に基づいてなされたのが、請求項6及び請求項7に記載の本発明である。
即ち、請求項6に記載の本発明は、前記シソ科植物エキス又はその濃縮粉末が、ロスマリン酸を固形分当たり1〜80重量%含有するものである、請求項1乃至5のいずれかに記載の製造法である。
また、請求項7に記載の本発明は、前記シソ科植物エキス又はその濃縮粉末が可食性のものである請求項1乃至6のいずれかに記載の製造法である。
本発明において製造されるシソ科植物エキス及びその濃縮粉末は、フェノール類、特にロスマリン酸を高濃度に含有することを特徴とする。ロスマリン酸含有量は、好ましくはロスマリン酸を固形分当り1〜80重量%、更に好ましくは3〜70重量%である。ロスマリン酸が1重量%より低含有量であると、炎症細胞の浸潤抑制作用を発揮する量を摂取、又は塗布する際、大量の投与が必要となり、実際の施用が困難である。また、80重量%より高含量にするためには、より複雑な操作が必要となること、またヒトの摂取に適さない有機溶剤の使用が必要となることからも、安価で安全なエキスの提供が困難となる。
【0017】
このようにして得られたフェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末は、これらを含有する飲食品として用いることができると共に、かかる飲食品は、炎症細胞の浸潤抑制作用を有する飲食品として、アレルギー疾患又は皮膚炎の治療及び予防のために用いることができる。
本発明において、フェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末は、これらを含有する炎症細胞の浸潤抑制剤として、アレルギー疾患又は皮膚炎の治療及び予防のために利用することができる。
このように、フェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末を用いて炎症細胞の浸潤を予防又は治療する方法を提供するのが、請求項10記載の本発明である。
なお、アレルギー疾患としては、例えば花粉症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、食物アレルギー等が挙げられる。皮膚炎としては日焼けなどでおこる皮膚炎や接触性皮膚炎等が挙げられる。
【0018】
さらに、上記した如きフェノール類含有シソ科植物エキス及びその濃縮粉末は、肝障害抑制剤として利用することができる。また、肝障害抑制作用を有する飲食品としても利用することができる。
なお、本発明において、肝障害としては、例えばウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、又はそれらが進行した肝硬変、肝臓癌などが挙げられる。本発明において、肝障害抑制剤は、前記の肝障害を治療するのみならず予防する場合にも用いられる。
【0019】
フェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末を配合した飲食品の形態としては、栄養ドリンク、清涼飲料水、紅茶、緑茶などの飲料、キャンデー、クッキー、錠菓、チューインガム、ゼリー状食品などの菓子のほか、麺、パン、米飯、ビスケット等の穀類加工品、ソーセージ、ハム、かまぼこ等の練製品、バター、ヨーグルト等の乳製品、ふりかけ、調味料等が挙げられる。
これらの飲食品は、製造の適宜の段階で、フェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末を必要量添加することにより製造される。上記飲食品におけるフェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末の含有量は、例えば濃縮粉末を含ませる場合、0.1〜90重量%とすることができる。
このように飲食品として用いる場合、栄養ドリンク、清涼飲料水、キャンデー、クッキー又は錠菓の形態が好ましい。
【0020】
炎症細胞の浸潤抑制および/または肝障害の抑制のための投与量は、用法、患者の年齢、性別、症状の程度などを考慮して適宜決定されるが、通常ロスマリン酸の血中濃度が0.1nmol/L〜5μmol/L、好ましくは10nmol/L〜1μmol/L程度とするのがよく、通常、成人1日当りロスマリン酸として約1〜5000mg、好ましくは約5〜500mg程度とするのがよい。そして、これを1日1回又は数回に分けて投与することができる。
また、例えば、赤シソエキスを含む飲料の場合、1〜400mgのロスマリン酸を含む、好ましくは5〜200mgのロスマリン酸を含む飲料を、1日1回から5回、好ましくは1回から3回摂取することができる。
【0021】
炎症細胞の浸潤抑制剤や肝障害抑制剤は、経口又は非経口投与のいずれかの投与経路で、ヒト及びヒト以外の動物に投与することができる。
経口投与する場合には、例えば、乳糖、結晶セルロース、デンプン、リン酸カルシウム等の賦形剤、例えば、デンプン、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、例えばカルメロースカルシウム、炭酸カルシウム等の崩壊剤、例えばステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、コーティング剤、保存剤、安定剤などを用いることにより、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、散剤、丸剤、細粒剤、トローチ錠、乳濁剤や、又は常法によるシロップを含む各種液剤、ドリンク剤等の形態に処方できる。そして、これらの各種製剤は、長時間にわたって作用が持続する徐放性製剤とすることもできる。
経口投与以外の点鼻、点眼、皮下投与、静注、筋注、直腸投与、経皮投与などの投与経路を介する場合としては、舌下錠、坐剤、吸入剤、点鼻剤、点眼剤、経皮吸収製剤としての貼付剤、軟膏、クリーム剤、ローション剤、更にシャンプー、リンス、ボディーソープ、石鹸、洗顔料、整髪料、乳液、パック、入浴剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の方法により得られたフェノール類含有シソ科植物エキス及びその濃縮粉末は、急性毒性、反復投与毒性及び変異原性などの毒性は認められなかった。
【0022】
本発明によれば、シソ科植物を原料として、シソ科植物に含まれるフェノール類を高収率で回収でき、フェノール類、特にロスマリン酸を高濃度に含有するフェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末を効率的に製造することができる。
このようにして得られたフェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末は、炎症細胞の浸潤抑制作用を有しており、炎症細胞の浸潤抑制作用を有する飲食品、或いは炎症細胞の浸潤抑制剤として有効に利用することができる。
また、このようにして得られたフェノール類含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末は、優れた肝障害抑制作用を有しており、肝障害抑制作用を有する飲食品、或いは肝障害抑制剤として有効に利用することができる。
従って、本発明によれば、副作用などの危険がなく高い安全性を保障しつつ、花粉症、アトピー性皮膚炎、皮膚炎等のアレルギー疾患の予防及び/又は治療、日焼けなどでおこる皮膚炎や接触性皮膚炎の予防及び/又は治療、更には肝機能の低下、肝炎、肝硬変、肝臓がんなどの予防及び/又は治療のため極めて有用である。
【実施例】
【0023】
以下、実験例をあげて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0024】
実施例1
刻むことなく全葉を使用した赤シソ生葉(水分含量 90.2重量%)1000gに90℃の熱水50000ml及び10mlの濃塩酸を添加し、pH0.5とし、93℃で30分撹拌し、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いて濾過した。この抽出液をBx24まで減圧濃縮後、凍結乾燥した。生葉抽出液からは5.1重量%のフェノール類、そのうちロスマリン酸3.0重量%を含む赤シソエキス濃縮粉末23.6gを得た。フェノール類としての回収率は60.6%であった。
フェノール類の測定は、プルシアンブルー法(Method in Enzymology Vol.243, 432-433)により実施した。すなわち、1重量%クエン酸溶液に溶解したロスマリン酸(Extrasynthese社製)を標品として予め作成しておいた検量線から求めた。
また、ロスマリン酸量は、Planta Medica 63, 177-179(1997)を参照し、HPLC法で分析した。すなわち、HPLC分析は、溶離液としてA液(0.1% トリフルオロ酢酸含有蒸留水)とB液(0.1% トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル)の2液を用いたグラジエントの系で実施した。カラムはODS120T(東ソー社製、4.6mm×150mm)を用い、流速は0.8 ml/minで行った。UV検出器の検出波長は280nmとした。標品として、ロスマリン酸(Extrasynthese社製)を用いた。なお、グラジェント条件は、下記の通りである。
【0025】
0−10(分):A液/B液=90/10
10−35(分):A液/B液=90/10→A液/B液=60/40
35−40(分):A液/B液=60/40→A液/B液=0/100
40−45(分):A液/B液=0/100
【0026】
フェノール類の回収率は、赤シソ葉中のフェノール類の全量を100%とし、下記の計算式によって求めた。
【0027】
・フェノール類回収率=(製造された赤シソエキス濃縮粉末中のフェノール類量/赤シソ葉中のフェノール類の全量)×100
【0028】
なお、赤シソ葉中のフェノール類の全量は、赤シソ生葉5gを1重量%クエン酸溶液 500mlにて2回沸騰水浴中で抽出し、それを1Lにメスアップ後、上記と同様にプルシアンブルー法で測定した。
【0029】
実施例2
刻むことなく全葉を加熱乾燥して使用した赤シソ乾燥葉(水分含量 0.85重量%)100gに90℃の熱水50000ml及び10mlの濃塩酸を添加し(pH0.5)、93℃で30分撹拌し、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いて濾過した。この抽出液をBx24まで減圧濃縮後、凍結乾燥した。乾燥葉からの抽出液からはフェノール類1.1重量%、そのうちロスマリン酸 0.6重量%を含む赤シソエキス濃縮粉末1.6gを得た。実施例1と同様の方法に準拠したフェノール類としての回収率は11.2%であった。実施例1と実施例2を比較すると、生葉中の水分含有量は90.2重量%であることから考えても、乾燥葉からよりも生葉からの抽出の方が遥かに効率的であることがわかった。
【0030】
実施例3
刻むことなく全葉を使用した赤シソ生葉100gに、pH3.4とした0.01M 酢酸水溶液5000ml及び1gのセルラーゼ(天野製薬(株)製 セルラーゼAアマノ、30000U)及び2gのペクチナーゼ(天野製薬(株)製 ペクチナーゼAアマノ、2400U)を加え、30℃で30分撹拌したのち、80℃で30分攪拌後、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いて濾過した。この抽出液をBx20まで減圧濃縮後、凍結乾燥し赤シソエキス濃縮粉末を得た。抽出液からは6.2重量%のフェノール類、そのうちロスマリン酸3.6重量%を含む粉体4.1gを得た。実施例1と同様の方法に準拠したフェノール類としての回収率は96.5%であった。
【0031】
実施例4
刻むことなく全葉を使用した赤シソ生葉100gに、pH4.0とした0.01M クエン酸/クエン酸ナトリウム緩衝液5000ml及び1gのヘミセルラーゼ(新日本化学工業社製 スミチームX、10000U)を加え、30℃で30分撹拌したのち、50℃で60分攪拌後、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いて濾過した。この抽出液をBx20まで減圧濃縮後、凍結乾燥した。抽出液からは1.4重量%のフェノール類、そのうちロスマリン酸0.8重量%を含む赤シソエキス濃縮粉末14.6gを得た。実施例1と同様の方法に準拠したフェノール類としての回収率は85.5%であった。
【0032】
実施例5
刻むことなく全葉を使用した赤シソ生葉100gに、pH3.4とした0.01M 酢酸水溶液5000ml及び2gのへミセルラーゼ(天野製薬(株)製 へミセルラーゼ アマノ90G、180000U)を加え、30℃で30分撹拌したのち、85℃で20分攪拌後、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いて濾過した。この抽出液をBx24まで減圧濃縮後、凍結乾燥した。抽出液からは12.0重量%のフェノール類、そのうちロスマリン酸7.0重量%を含む赤シソエキス濃縮粉末3.4gを得た。実施例1と同様の方法に準拠したフェノール類としての回収率は81.0%であった。
【0033】
実施例6
刻むことなく全葉を使用した赤シソ生葉100gに1重量%のクエン酸を含む容量比が水:エタノール=20:80の混液(pH3.2)500mlを加え5時間、50℃で加熱還流しながら撹拌し、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いて濾過した。得られた濾液をBx20まで減圧濃縮し、吸着性樹脂(商品名:ダイヤイオンHP2MG、三菱化学(株)製)265mlを充填したオープンカラム(カラムサイズ2.6cmφ×60cm)にアプライした。混在する水溶性高分子物質を除去するため、水1300ml、次に容量比が水:エタノール=80:20の混液1300mlを順次流してカラムを洗浄した後、容量比が水:エタノール=20:80の混液1300mlで溶出し、粗フェノール類の画分を得た。精製法の概略を第1図に示す。この溶出液をBx20まで減圧濃縮後、凍結乾燥し、1.4gの赤シソエキス濃縮粉末を得た。フェノール類は、実施例1のプルシアンブルー法で、フェノール類の各成分については、実施例1のHPLC法に準拠した方法にて同定・定量した結果、この赤シソエキス濃縮粉末中にはフェノール類70.7重量%、その内訳としてロスマリン酸40.8重量%、カフェ酸0.16重量%、ルテオリン1.13重量%、未確認物質28.61重量%が含まれていた。なお、標品として、ロスマリン酸はExtrasynthese社製を、カフェ酸はSIGMA社製を、ルテオリンはSIGMA社製をそれぞれ用いた。
【0034】
実施例7
実施例6と同様にして粗フェノール類の画分を得た。この溶出液をBx20まで減圧濃縮後、デキストリン8.1gを混ぜスプレードライし、9.5重量%のフェノール類、そのうちロスマリン酸6.0重量%を含む9.5gの赤シソエキス濃縮粉末を得た。
【0035】
実施例8
刻むことなく全葉を使用した赤シソ生葉100gに1重量%のクエン酸を含む容量比が水:エタノール=20:80の混液(pH3.2)500mlを加え5時間、50℃で加熱還流しながら撹拌し、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いて濾過した。得られた濾液をBx20まで減圧濃縮し、吸着性樹脂(商品名:ダイヤイオンHP2MG 、三菱化学(株)製)265mlを充填したオープンカラム(カラムサイズ1.3cmφ×60cm)にアプライした。混在する不純物を除去するため水1500ml、次に容量比が水:エタノール=90:10の混液1500ml、次に60:40の混液1500ml、次に40:60混液265mlを順次流して洗浄した後、水:エタノール=40:60混液1000mlで溶出しロスマリン酸高含有画分を得た。この溶出液をBx20まで減圧濃縮後、凍結乾燥し、1.0gの赤シソエキス濃縮粉末を得た。フェノール類の各成分についてHPLCにて同定・定量した結果、この赤シソエキス濃縮粉末中にはフェノール類重量75.4重量%、そのうちロスマリン酸68.0重量%が含まれていた。
【0036】
実施例9
刻むことなく全葉を使用した青ジソ生葉3gに37℃の1%(w/v)塩酸を含む10%(v/v)エタノール溶液(pH1.0)を60ml加え37℃で24時間加温した。抽出後濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いてろ過した。この抽出液をBx24まで減圧濃縮後、スプレードライによって濃縮粉末とした。生葉抽出液からは、フェノール類3.4重量%、そのうちロスマリン酸2.7重量%を含む青ジソエキス濃縮粉末0.8gを得た。
【0037】
比較例1
刻むことなく全葉を使用した青ジソ生葉3gに37℃の10%(v/v)エタノール溶液(pH6.0)を60ml加え37℃で24時間加温した。抽出後濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いてろ過した。この抽出液をBx24まで減圧濃縮後、スプレードライによって濃縮粉末とした。生葉抽出液からは、フェノール類0.9重量%、そのうちロスマリン酸0.7重量%を含む青ジソエキス濃縮粉末0.8gを得た。実施例9と比較してフェノール類の抽出量が悪く、酸性条件下で抽出することが有効であることが確認された。
【0038】
実施例10
刻むことなく全葉を使用したスイートバジル生葉20gに90℃のクエン酸1gを加えた水(pH2.3)100mlを加え90℃で30分間加熱した。加熱後、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いてろ過した。この抽出液をBx24まで減圧濃縮後、スプレードライによって濃縮粉末とした。生葉抽出液からは、フェノール類8.3重量%、そのうちロスマリン酸3.4重量%を含むスイートバジルエキス濃縮粉末1.5gを得た。
【0039】
実施例11
刻むことなく全葉を使用したセージ生葉20gに90℃のクエン酸1gを加えた水(pH2.3)100mlを加え90℃で30分間加熱した。加熱後、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いてろ過した。この抽出液をBx24まで減圧濃縮後、スプレードライによって濃縮粉末とした。生葉抽出液からは、フェノール類8.7重量%、そのうちロスマリン酸7.2重量%を含むセージエキス濃縮粉末1.5gを得た。
【0040】
実施例12
刻むことなく全葉を使用したエゴマ生葉20gに90℃のクエン酸1gを加えた水(pH2.3)100mlを加え90℃で30分間加熱した。加熱後、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いてろ過した。この抽出液をBx24まで減圧濃縮後、スプレードライによって濃縮粉末とした。生葉抽出液からは、フェノール類16.3重量%、そのうちロスマリン酸8.0重量%を含むエゴマエキス濃縮粉末1.5gを得た。
【0041】
実施例13
刻むことなく全葉を使用したローズマリー生葉20gに90℃のクエン酸1gを加えた水(pH2.3)100mlを加え90℃で30分間加熱した。加熱後、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いてろ過した。この抽出液をBx24まで減圧濃縮後、スプレードライによって濃縮粉末とした。生葉抽出液からは、フェノール類9.2重量%、そのうちロスマリン酸4.0重量%を含むローズマリーエキス濃縮粉末1.5gを得た。
【0042】
実施例14
赤シソ生葉20gに1%重量クエン酸溶液(pH2.3)100mlを添加しワーリングブレンダ-(EXCEL AUTO 250、(株)日本精機製作所製)で10,000rpmで10分間かけ 続いて93℃に加熱し30分間撹拌し、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いてろ過した。この抽出液をBx24まで減圧濃縮後、凍結乾燥によって濃縮粉末とした。刻んだ生葉抽出液からは、フェノール類1.2重量%、そのうちロスマリン酸0.6重量%を含む赤シソエキス濃縮粉末1.5gを得た。
【0043】
実施例15
刻むことなく全葉を使用した赤シソ生葉20gに1%重量クエン酸溶液(pH2.3)100mlを加え93℃に加熱し30分間撹拌し、濾紙(アドバンテック東洋(株)製、No.6)を用いてろ過した。この抽出液をBx24まで減圧濃縮後、凍結乾燥によって濃縮粉末とした。生葉抽出液からは、フェノール類2.0重量%、そのうちロスマリン酸1.0重量%を含む赤シソエキス濃縮粉末1.5gを得た。
【0044】
試験例1[花粉症に対する赤シソドリンクによるアレルギー改善作用]
花粉症状の自覚症状のあるヒト10名に後述の製造例1で調製した赤シソエキス濃縮粉末187mgを含有する赤シソドリンク150gを一日3回食後に飲用させた。摂取前、摂取2週間後、4週間後にアンケート調査を実施した。各項目とも1:ひどい、2:中等度、3:軽度、4:無しの4段階設定し、第1表にはその平均値を示した。統計処理はSPSS社製の統計解析ソフトを用いて実施した。
【0045】
【表1】
【0046】
各項目とも赤シソドリンクの摂取によって症状の緩和が認められ、特に 花粉症の眼、鼻の症状を改善する事が第1表から示された。
【0047】
試験例2[アトピー性皮膚炎に対する赤シソエキス濃縮粉末の改善作用]
実施例6で得た赤シソエキス濃縮粉末をNC/Nga雄性マウスを用いて評価した。NC/Ngaマウスはヒトアトピー性皮膚炎に酷似した掻痒性皮膚炎を発症することが発見され、広くアトピー性皮膚炎治療薬の評価に用いられているモデル動物である(International Immunology, 9,461-466,1997)。4週齢のNC/Ngaマウスに実施例6で得られた赤シソエキス濃縮粉末を5%(v/v)エタノール200mg/ml(ロスマリン酸81.6mg/ml含有)となるよう溶解し、200mg/ml/kgの用量で、1日1回計50日間連続して経口投与した。一週間後に5重量%塩化ピクリルを腹腔内投与し、以後1週間毎に1回、計5回にわたって0.8重量%塩化ピクリルを耳介及び背部皮膚に塗布した。同様のことを赤シソエキス濃縮粉末を含まない、5%(v/v)エタノールのみを同様に経口投与した群にも行い、対照群とした。なお、市販固形飼料のみを給餌し、他の群と同じ期間飼育した群を無処置群とした。アトピー性皮膚炎様掻痒性皮膚炎を呈し肥厚した耳介の厚みを測定し、エーテル麻酔下で採血・解剖した。採取した耳介はホルマリン固定後、パラフィン包埋し、病理組織切片を作成した。ヘマトキシリン・エオジン染色及びトルイジンブルー染色し、肥満細胞、好酸球、リンパ球などの炎症細胞数を顕微鏡下で計測した。統計処理は一元配置の分散分析の後、Tukeyの多重検定法を用いて実施した。赤シソエキス濃縮粉末経口投与の耳介肥厚軽減効果に関する結果を第2表に、アトピー性皮膚炎モデルマウス表皮における肥満細胞数に対する効果に関する結果を第2図に示した。
【0048】
【表2】
【0049】
対照群に比べて、赤シソエキス濃縮粉末経口投与群においては皮膚炎の有意な軽減が認められた(第2表)。またこの作用の機作を解明するため種々の検討を行ったところ、赤シソエキスには炎症細胞の一つである肥満細胞の局所への浸潤を顕著に抑制することが解明され、この作用により赤シソエキスが抗アレルギー作用を発現することがわかった(第2図)。
【0050】
試験例3[赤シソエキス濃縮粉末によるアトピー性皮膚炎の改善作用]
実施例8で得られた赤シソエキス濃縮粉末をNC/Nga雄性マウスを用いて評価した。実施例8で得られた赤シソエキス濃縮粉末1.5mg(ロスマリン酸1mg含有)をメタノールで溶解し、5週齢のNC/Ngaマウスの耳介にマウス当り0.1mlを塗布した。一週間後に5重量%塩化ピクリルを腹腔内投与し、以後1週間毎に1回、計5回にわたって0.8重量%塩化ピクリルを耳介及び背部皮膚に塗布した。同様のことを赤シソエキス濃縮粉末を添加しない、メタノールのみをマウス当り0.1ml塗布した群にも行い、対照群とした。なお、市販固形飼料のみを給餌し、他の群と同じ期間飼育した群を無処置群とした。アトピー性皮膚炎様掻痒性皮膚炎を呈し肥厚した耳介の厚みを測定し、統計処理は一元配置の分散分析の後、Tukeyの多重検定法を用いて実施し、その結果を第3表に示した。
【0051】
【表3】
【0052】
赤シソエキス濃縮粉末塗布群においては対照群に比べて皮膚炎の有意な軽減が認められた。
【0053】
試験例4[皮膚炎モデルにおける赤シソエキスによる皮膚炎の改善作用]
実施例8で得たロスマリン酸を高度に含有する赤シソエキス濃縮粉末及びロスマリン酸の、phorbolmyristateacetate(PMA)によって誘導されるマウス耳介皮膚炎に対する作用を確認した。実施例8で得られた赤シソエキス濃縮粉末1.5mg(ロスマリン酸1mg含有)及びロスマリン酸(Extrasynthese社製)1mgをメタノール0.1mlで溶解し、6週齢のICRマウスの右耳介にマウス当り0.1ml塗布した。30分後にPMA2μMを同様に塗布した。同様のことを赤シソエキス濃縮粉末を添加しない、メタノールのみをマウス当り0.1ml塗布した群にも行い、対照群とした。5時間後にマウスをエーテル麻酔下で放血致死後、耳介を採取し、浮腫の程度を耳介重量で測定した。耳介はホモジネート調整後、好中球のマーカーエンザイムであるミエロペルオキシダーゼ活性をThomasらの方法(Annal.Biochem. 75, 168-176, 1976)に従って以下の方法で測定し、浸潤の程度を検証した。反応溶液は117mMの酢酸緩衝液(pH5)に0.4mMテトラメチルベンチジン、0.3%過酸化水素水、及び上記の耳介ホモジネートをタンパク量として1mg添加し655nmにおける吸光度の変化を5分間測定し、1分当たりの吸光度変化量を活性値とした。
統計処理は一元配置の分散分析の後、Tukeyの多重検定法を用いて実施し、赤シソエキス濃縮粉末及びロスマリン酸の皮膚炎に対する効果に関する結果を第3図に、赤シソエキス濃縮粉末及びロスマリン酸の好中球の浸潤に対する効果に関する結果を第4図に示した。
【0054】
その結果、第3、4図から明らかなとおり、赤シソエキス及びロスマリン酸ともに有意に皮膚炎に対する改善作用を有していた。又、赤シソエキス(ロスマリン酸1mg含有)の改善効果とロスマリン酸1mgの改善効果が同程度であったことから、赤シソエキス中の抗皮膚炎作用の有効成分はロスマリン酸であることが示唆された。
【0055】
試験例5[肝障害に対する赤シソエキス濃縮粉末の改善作用]
8週令の雄性Balb/cマウスを無差別抽出し、対照群、50,100,200mg/kgの4群に分け、各群10匹とした。対照群は精製水のみを与え、50,100,200mg/kgの群には実施例8で得た赤シソ抽出濃縮粉末を精製水に溶解してそれぞれ5,10,20mg/mlの濃度に調製し、それぞれ50,100,200mg/kgの用量で経口投与した。全群のマウスを一晩絶食させ、前記経口投与した17時間後に、ガラクトサミン及びLPSを 生理食塩水に溶解して、それぞれ600mg/kg及び3μg/kgの用量で腹腔内に注射した。5時間後に頚動脈を切断し、採血し血漿を調製した。血漿50μlを用い、肝障害のマーカーである血漿中GPT(glutamic pyruvic transaminase)活性を測定試験キット(和光純薬社製)で測定した。各群の血漿中GPT活性の測定結果(GPT値(U/L))を第4表に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
第4表に示すように、赤シソ抽出物は50〜200mg/kgの用量で有意に肝障害を抑制することが示された(p<0.01)。
【0058】
製造例1[赤シソドリンクの製造]
実施例1で得られた赤シソエキス濃縮粉末を用いて、下記処方により赤シソドリンクを製造した。
【0059】
処方
赤シソエキス濃縮粉末 18.7g
蔗糖 1500.0g
仕込水 13481.3g
【0060】
上記配合を十分に混合した後、この混合液をチューブラヒーターを用いて96℃に加熱し、150gずつ空缶に充填して巻締めた後、これを冷却して赤シソドリンクとした。
【0061】
製造例2[赤シソ清涼飲料水の製造]
実施例3で得られた赤シソエキス濃縮粉末を用いて、下記処方により赤シソ清涼飲料水を製造した。
【0062】
原 料 配合率(重量%)
赤シソエキス濃縮粉末 0.67
蔗糖 12.00
無水クエン酸 0.30
1/8梅濃縮果汁 0.50
仕込水 86.53
【0063】
上記配合割合からなる原料に仕込水を加えて全量を100重量%とし、十分に混合したのちに濾過した。その後この混合液をチューブラヒーターを用いて96℃に加熱し、空缶に充填して巻締めた後、これを冷却して赤シソ清涼飲料水とした。
【0064】
製造例3[赤シソエキス含有キャンデーの製造]
実施例6で得られた赤シソエキス濃縮粉末を用いて、下記処方によりハードキャンデーを製造した。
【0065】
原 料 配合率(重量%)
赤シソエキス濃縮粉末 0.7
砂糖 45.1
水飴(水分25重量%) 45.0
1/8梅濃縮果汁 8.0
無水クエン酸 1.0
香料 0.2
【0066】
上記配合割合の砂糖と水飴を固形分が80重量%になるように予め溶解し、110℃に保つ。残りの他の原料を混合溶解し50℃に保温する。これらを混合し、直ちに減圧濃縮装置に送り減圧度が60000Pa、煮詰器外壁温度135℃で水分を蒸発させてから成型し、最終水分2重量%のハードキャンデーを得た。
【0067】
製造例4[赤シソエキス濃縮粉末含有クッキーの製造]
実施例5で得られた赤シソエキス濃縮粉末を用いて、下記処方によりクッキーを製造した。
【0068】
原 料 配合率(重量%)
赤シソエキス濃縮粉末 2.0
小麦粉 42.5
砂糖 24.0
マーガリン 19.0
全卵粉 7.3
仕込水 5.0
バニラエッセンス 0.2
【0069】
まず砂糖、マーガリンを混合する。次に全卵粉、赤シソエキス濃縮粉末、バニラエッセンスを仕込水に溶かしたものをこれに加え均一に混合した後に小麦粉を加え生地とする。生地を7mmに圧延し型抜きし、200℃に設定したオーブンで7分間焼成しクッキーを得た。
【0070】
製造例5[赤シソエキス濃縮粉末含有錠菓の製造]
実施例8で得られた赤シソエキス濃縮粉末を用いて、下記処方により錠菓を製造した。
【0071】
原 料 配合率(重量%)
赤シソエキス濃縮粉末 3.2
粉糖 85.0
ゼラチン 0.7
クエン酸 3.1
ハチミツパウダー 1.0
シュガーエステル(HLB 2.3) 2.0
仕込水 5.0
【0072】
上記配合のうち粉糖以外の原料を仕込水に溶解する。これをバインダー液として粉糖に加えて混練し、網目を通して顆粒を作る。顆粒を乾燥したのちロータリー式打錠機にかけ、錠菓を得た。
【0073】
製造例6[セージエキス含有キャンデーの製造]
実施例11で得られたセージエキス濃縮粉末を用いて、製造例3の赤シソエキス濃縮粉末をセージエキス濃縮粉末にし、同様の配合、方法でハードキャンデーを製造した。
【0074】
製造例7[スイートバジルエキス濃縮粉末含有クッキーの製造]
実施例10で得られたスイートバジルエキス濃縮粉末を用いて、製造例4の赤シソエキス濃縮粉末をスイートバジルエキス濃縮粉末にし、同様の配合、方法でクッキーを製造した。
【0075】
製造例8[エゴマ濃縮粉末含有錠菓の製造]
実施例12で得られたエゴマエキス濃縮粉末を用いて、製造例5の赤シソエキス濃縮粉末をエゴマエキス濃縮粉末にし、同様の配合、方法で錠菓を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明により得られるフェノール類含有シソ科植物エキスは、副作用などの危険がなく高い安全性を保障しつつ、花粉症、アトピー性皮膚炎、皮膚炎等のアレルギー疾患の予防及び/又は治療、日焼けなどでおこる皮膚炎や接触性皮膚炎の予防及び/又は治療、更には肝機能の低下、肝炎、肝硬変、肝臓がんなどの予防及び/又は治療のため、食品産業をはじめとして広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、赤シソからのフェノール類の精製法を示す工程図である。
第2図は、アトピー性皮膚炎モデルマウス表皮における肥満細胞数に対する赤シソエキス濃縮粉末の効果を示す図である。
第3図は、赤シソエキス濃縮粉末及びロスマリン酸の皮膚炎に対する効果を示す図である。
第4図は、赤シソエキス濃縮粉末及びロスマリン酸の好中球浸潤抑制作用に対する効果を示す図である。
Claims (7)
- シソ科植物の刻まない生葉全葉を、pH0.5〜4.0の酸性条件下で、水にて50〜93℃にて抽出し、もしくは、水及びエタノールの容量の割合が90:10〜20:80の混液にて37〜50℃にて抽出することを特徴とする、ロスマリン酸含有シソ科植物エキス又はその濃縮粉末の製造法。
- 前記抽出の後、;得られた抽出液を、吸着性樹脂を充填したカラムに供し、水及びエタノールの容量の割合が50:50〜20:80の混液にて溶出する、請求項1記載の製造法。
- 前記抽出の前乃至抽出と同時に、前記シソ科植物の生葉全葉を食物繊維分解酵素で処理する請求項1又は2に記載の製造法。
- 前記食物繊維分解酵素が、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ及びペクチナーゼのうち1種又は2種以上の酵素である請求項3記載の製造法。
- 前記シソ科植物が、赤シソ、青ジソ、チリメンジソ、ローズマリー、セージ、エゴマ、スイートバジルである請求項1乃至4のいずれかに記載の製造法。
- 前記シソ科植物エキス又はその濃縮粉末が、ロスマリン酸を固形分当たり1〜80重量%含有するものである、請求項1乃至5のいずれかに記載の製造法。
- 前記シソ科植物エキス又はその濃縮粉末が可食性のものである請求項1乃至6のいずれかに記載の製造法。
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