JP4432265B2 - 成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリノルボルネン系樹脂からなる硬化物の表面に被膜が形成された成形体を、同一の成形型内で製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、意匠性や耐候性といった各種特性を付与するために、ノルボルネン系モノマーを反応射出成形(RIM)法により金型内で塊状重合させて得られるポリノルボルネン系樹脂成形品の表面に、被膜をスプレー塗装により形成することが一般的に試みられている。
【0003】
ところが、ポリノルボルネン系樹脂成形品のスプレー塗装では、樹脂の表面酸化による経時変化から被膜密着力が不十分になる傾向があった。また、スプレー塗装工程は、成形工程とは別工程となるため、生産コストが高くなる問題があった。
【0004】
そこで、ポリノルボルネン系樹脂成形品の表面に、密着性良く被膜を形成するための種々の提案がなされている。そして、このような提案の一つとしてインモールドコート法が知られている。
【0005】
たとえば、特開平11−300776号公報では、ジシクロペンタジエンを主成分とする成形材料を、可動型と固定型とで形成されたキャビティ内に反応射出成形法により成形し、同一金型内にて、得られた成形品と金型内面との間に、重合開始剤、離型剤、エチレン系不飽和モノマーなど5種類の成分を必須とし、さらに必要に応じて配合できる着色顔料からなる被覆材を注入し、該被覆材が硬化した後、被覆された成形品を金型から取り出す樹脂成形品の製造方法が開示してある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報記載の方法では、工程を簡略化できるメリットはあるが、依然として被膜の密着性が不十分であり、過酷な使用条件では剥がれる恐れがある。
【0007】
また、上記公報記載の方法では、金型温度を一律95℃にしてRIM成形、被覆剤の注入および被覆剤の硬化を実施していることから、RIM成形における反応原液の硬化時間が短くなる。このため、この方法では小型品には対応できるが、住宅設備関連などの大型品の成形には対応できない。
【0008】
さらに、上記公報記載の金型温度条件では、被覆剤を注入中に硬化増粘してしまい、被覆膜厚が必要以上に厚くなったり、被覆すべき面の全面に行き渡らず、被膜ムラが生じることもあった。
【0009】
本発明の目的は、密着性に優れ、一定膜厚の被膜を有し、大型で外観が良好なポリノルボルネン系樹脂からなる成形体を簡易に製造できる成形体の製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ポリノルボルネン系樹脂からなる硬化物の表面に被膜が形成された成形体を同一型内で製造するに際し、ポリノルボルネン系樹脂からなる硬化物を製造した後、金型を昇温して被覆剤を硬化させることにより、密着性に優れ、膜厚が一定で、ムラの少ない被膜を形成でき、しかもこのような方法が、大型で外観が良好な成形体の製造に好適であることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、第1の観点に係る成形体の製造方法は、ノルボルネン系モノマーを含む反応原液を金型内に入れ、硬化させて硬化物を得る工程と、
前記金型内面と前記硬化物との間隙に被覆剤を入れる工程と、
前記被覆剤と接する金型を昇温して前記被覆剤を硬化させ、前記硬化物の表面に被膜を形成する工程とを有する。
【0012】
好ましくは、前記被覆剤と接する金型を少なくとも5℃昇温する。
【0013】
第1の観点に係る発明は、以下に示す第2の観点に係る発明が好ましい。
第2の観点に係る成形体の製造方法は、85℃以下の温度に保持された第1金型と、前記第1金型よりも低い温度に保持された第2金型との間に形成されたキャビティ内に、ノルボルネン系モノマーを含む反応原液を入れ、硬化させて硬化物を得る工程と、
前記第1金型内面と前記硬化物との間隙に被覆剤を入れる工程と、
前記第1金型を90℃以上に昇温して前記被覆剤を硬化させ、前記硬化物の表面に被膜を形成する工程とを有する。
【0014】
好ましくは、前記第1金型の温度を85℃以下に保持しつつ、前記第1金型内面と前記硬化物との間隙に被覆剤を入れる。
【0015】
【作用】
第1の観点に係る発明では、金型内面と硬化物との間隙に入れた被覆剤を硬化させる際に、前記被覆剤と接する金型を好ましくは少なくとも5℃昇温する。すなわち、RIM成形時の金型温度より、被覆剤の硬化時の金型温度を好ましくは少なくとも5℃高くする。このため、RIM成形時の反応原液の硬化時間を容易に調整でき、小型品は勿論、住宅設備関連などの大型品(たとえば縦500〜3000mm×横500〜3000mm×厚み2〜20mm程度)の成形にも対応可能である。また、被覆剤を硬化させる際に金型温度を高くすることから、被覆剤の注入中に当該被覆剤が硬化増粘することを効果的に防止でき、密着性に優れ、一定膜厚の被膜を形成できる。
【0016】
第2の観点に係る発明では、RIM成形時の金型温度を85℃以下に保持することで反応原液の硬化時間を長くでき、大型品の成形に対応することが容易になる。また、被覆剤の硬化時の金型温度を90℃以上に保持することで密着性に優れ、一定膜厚の被膜を硬化物の表面に形成することが容易になる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1(A)〜図1(E)は本発明の一実施形態に係る成形体の製造方法を説明するための工程図である。
【0018】
本実施形態では、たとえば図1(A)に示す金型装置20を用いて成形体を製造する場合を例示する。
【0019】
図1(A)に示すように、本実施形態に係る金型装置20は、分割面22に沿って型開き方向Xに分割可能なコア型(第1金型)24と、キャビ型(第2金型)26とを有し、これらコア型24とキャビ型26とを分割面22で型締めすることにより、内部にキャビティ28が形成されるようになっている。コア型24およびキャビ型26は、たとえば合成樹脂や金属などで構成される。
【0020】
本実施形態では、コア型24には、成形されるべき成形体の良好な外観を必要とする面(製品面)に接する製品面形成金型面242が形成してある。また本実施形態では、キャビ型26には、成形されるべき成形体の良好な外観を必ずしも必要としない面(非製品面)に接する非製品面形成金型面262が形成してある。ただし、本発明では特に限定されず、いずれの面242,262とも製品面形成金型面であってもよい。
【0021】
本実施形態では、このような金型装置20を用いて浴槽パンや防水パンなどの各種成形体を以下のようにして製造する。
【0022】
まず、図1(A)に示すように、コア型24をキャビ型26と分割面22で組み合わせて、コア型24とキャビ型26との間にキャビティ28を形成し、ここに反応原液を供給する。供給前の反応原液の温度は、好ましくは10〜60℃であり、反応原液の粘度は、たとえば30℃において、通常5〜3000cps、好ましくは50〜1000cps程度である。
【0023】
本実施形態で用いるノルボルネン系の反応原液には、ノルボルネン系モノマーのほか、通常、メタセシス触媒と活性剤とが含まれる。
【0024】
ノルボルネン系モノマーとしては、ノルボルネン環を有するものであればよく、その具体例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン等の二環体、ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエン二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエン等の三環体、テトラシクロドデセン等の四環体、シクロペンタジエン三量体等の五環体、シクロペンタジエン四量体等の七環体、およびこれら二環体〜七環体のメチル、エチル、プロピルおよびブチル等のアルキル、ビニル等のアルケニル、エチリデン等のアルキリデン、フェニル、トリルおよびナフチル等のアリール等の置換体、更には、これら二環体〜七環体のエステル基、エーテル基、シアノ基、ハロゲン原子等の極性基を有する置換体等が例示される。中でも、入手が容易であり、反応性に優れることから、三環体以上の多環ノルボルネン系モノマーが好ましく、より好ましくは三環体、四環体、或いは五環体のノルボルネン系モノマーである。ノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0025】
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、ノルボルネン系モノマーと開環共重合し得るシクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロオクテン、シクロドデセンなどの単環シクロオレフィンなどを、コモノマーとして用いることもできる。
【0026】
メタセシス触媒としては、RIM法でノルボルネン系モノマーを開環重合できるものであれば特に限定されず、公知のもので良い。たとえば、六塩化タングステン、又はトリドデシルアンモニウムモリブデート、もしくはトリ(トリデシル)アンモニウムモリブデート等のモリブデン酸有機アンモニウム塩等のノルボルネン系モノマーの塊状重合用触媒として公知のメタセシス触媒であれば特に制限はないが、モリブデン酸有機アンモニウム塩が好ましい。また、メタセシス触媒として、公知のルテニウムカルベン錯体(WO97/06185、特表平10−508891号公報、特開平11−322953号公報など)を適用することもできる。
【0027】
メタセシス触媒の使用量は、反応原液全体で使用するモノマー1モルに対し、通常0.01ミリモル以上、好ましくは0.1ミリモル以上、かつ50ミリモル以下、好ましくは20ミリモル以下である。メタセシス触媒の使用量が少なすぎると重合活性が低すぎて反応に時間がかかるため生産効率が悪く、使用量が多すぎると反応が激しすぎるため型内に十分に充填される前に硬化したり、触媒が析出し易くなり均質に保存することが困難になる。
【0028】
メタセシス触媒は、通常、モノマーに溶解して用いるが、RIM法による成形体の性質を本質的に損なわれない範囲であれば、少量の溶剤に懸濁させ溶解させた上で、モノマーと混合することにより、析出しにくくしたり、溶解性を高めて用いても良い。
【0029】
活性剤(共触媒)としては、特開昭58−127728号公報、特開平4−226124号公報、特開昭58−129013号公報、特開平4−145247号公報に開示してあるような公知の活性剤であれば、特に制限はなく、たとえば、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のアルキルアルミニウムハライド、アルコキシアルキルアルミニウムハライド等の有機アルミ化合物、有機スズ化合物などが挙げられる。なお、メタセシス触媒としてルテニウムカルベン錯体を用いる場合には、活性剤を用いても用いなくてもよい。
【0030】
活性剤の使用量は、特に限定されないが、通常、反応液全体で使用するメタセシス触媒1モルに対して、0.1モル以上、好ましくは1モル以上、かつ100モル以下、好ましくは10モル以下である。活性剤を用いないか、又は活性剤の使用量が少なすぎると、重合活性が低すぎて反応に時間がかかるため生産効率が悪くなる。また、逆に、使用量が多すぎると、反応が激しすぎるため型内に十分に充填される前に硬化することがある。
【0031】
活性剤は、モノマーに溶解して用いるが、RIM法による成形体の性質を本質的に損なわない範囲であれば、少量の溶剤に懸濁させた上で、モノマーと混合することにより、析出しにくくしたり、溶解性を高めて用いてもよい。
【0032】
反応原液には、所望により、補強材、酸化防止剤、充填剤、エラストマー、顔料、着色剤、発泡剤、難燃剤、摺動付与剤、ジシクロペンタジエン系熱重合樹脂およびその水添物など種々の添加剤を配合してもよい。
【0033】
ノルボルネン系モノマーは、2つ以上の反応原液に分けて用いる。具体的には、メタセシス触媒を含むノルボルネン系モノマーからなる反応原液(B液)と、活性剤を含むノルボルネン系モノマーからなる反応原液(A液)との少なくとも2つの反応原液を用意する。これらA液とB液とは、それぞれを別のタンクに入れておくことが好ましい。各反応原液はそれぞれ単独ではノルボルネン系モノマーの重合が起こらないが、各反応原液を混合すると塊状重合が起こる。各反応原液に含まれる各成分の和が本発明の塊状重合に必要な成分の量に相当する。
【0034】
塊状重合を行うに際しては、2またはそれ以上の反応原液をミキシングヘッドなどを用いて瞬間的に混合し、直ちにその混合液をキャビティ28内に注入して重合を開始させる。ノルボルネン系の反応原液を用いる場合において、成形時の重合時間その他の条件は、通常のポリノルボルネン系樹脂の塊状重合による成形と同様であってよい。
【0035】
本実施形態では、キャビティ28内に反応原液を供給し、硬化させるにおいて、製品面となる金型面242が形成されたコア型24の金型温度T1(℃)を、非製品面となる金型面262が形成されたキャビ型26の金型温度T2(℃)より高く設定しておくことが好ましい(T1>T2)。T1>T2とすることで、成形体50の製品面を、ヒケや気泡のない表面外観の美麗な面とすることができる。 本実施形態では、T1−T2は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、上限は好ましくは50℃程度である。T1は、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下であり、下限は好ましくは50℃程度である。T2は、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下であり、下限は好ましくは30℃程度である。
【0036】
金型温度を調整する方法としては、たとえば、ヒータによる金型温度の調整;金型内部に埋設した配管中に、温調水、油等の熱媒体を循環させる温度の調整;などが挙げられる。
【0037】
そして、キャビティ28内での塊状重合が終了すると、図1(B)に示すように、ポリノルボルネン系樹脂からなる硬化物50が得られる。
【0038】
次に、図1(C)に示すように、コア型24をキャビ型26に対して相対的に僅かに型開きし、コア型24の金型内面(本実施形態では製品面形成金型面242)と硬化物50との間に空隙(間隙60)を形成し、ここに被覆剤を注入する。あるいは、コア型24とキャビ型26とを閉じたままで、被覆剤を型締圧より高い圧力(通常10MPa程度)で、コア型24の金型内面と硬化物50との間に注入する。
【0039】
間隙60は、最終的に得られる被膜厚みを考慮して適宜決定すればよく、通常5〜500μm程度、好ましくは10〜200μm程度に設定される。
【0040】
被覆剤の組成は、本発明では特に限定されないが、たとえば特定のブロック共重合体(A)と、エチレン性不飽和モノマー(B)と、重合開始剤(C)とを含むことが好ましい。
【0041】
本発明で使用可能なブロック共重合体(A)は、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロックを有するブロック共重合体が好ましく、より好ましくはビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体、水素化ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体などが挙げられる。特に硬化物50との被膜密着性能の観点からは、水素化ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体が好ましい。
【0042】
このようなブロック共重合体としては公知のものを用いることができる。ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体としては、たとえば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭57−49568号公報、特公昭58−11446号公報などに記載してあるものが挙げられる。水素化ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体としては、たとえば、特公昭43−19960号公報、同48−3555号公報、同48−30151号公報、特開平2−305814号公報、同3−72512号公報などに記載してあるものが挙げられる。
【0043】
ブロック共重合体とは、各々のブロック(ポリマー構成区分)が、その隣接したブロックと構造的に異なるホモまたは共重合体の交互するブロックを含む重合体鎖を有する共重合体であり、少なくとも1つのビニル芳香族重合体ブロックを有することが必須である。最も単純なブロック共重合体は、A−B構造(ジブロック構造)を有し、ここでAが例えばポリスチレンブロックを、またBが例えばポリイソプレンブロックを表わすようなものである。前記Bブロックは、例えばポリ−1,4−ブタジエンブロック、ポリ−1,4および1,2−ブタジエンランダムコポリマーブロック、ポリイソプレン−エチレンランダムコポリマーブロックなどであってもよい。さらに、ブロック構造がA−B−A、A−B−A−Bなどのトリブロックあるいはそれ以上のものであってもよい。
【0044】
ブロック共重合体を構成する、少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロックの「ビニル芳香族化合物」としては、特に限定されず、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルピリジンなどが挙げられるが、スチレンが好ましい。すなわち、本発明に用いられるブロック共重合体としては、少なくとも1つのポリスチレンブロックを有することが好ましい。
【0045】
ビニル芳香族化合物の含有量は、ブロック共重合体を基準として、通常10〜80重量%、好ましくは15〜70重量%、より好ましくは20〜60重量%である。このビニル芳香族化合物含有率が過度に少ないと、またビニル芳香族化合物含有率が過度に多いと、被膜密着力が著しく低下するおそれがある。
【0046】
ブロック共重合体の分子量は、特に限定されないが、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算値として測定される重量平均分子量(Mw)で、通常70000以上、好ましくは100000〜2000000、好ましくは150000〜1000000である。Mwが過度に小さいと被膜密着性が低下し、逆に過度に大きいと後述するエチレン性不飽和モノマーへの溶解性が低下するおそれがある。
【0047】
少なくとも1つのビニル芳香族化合物重合体ブロックを有するブロック共重合体の具体例としては、たとえば、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SBIS)などが挙げられる。
【0048】
本発明では、上記ブロック共重合体を公知の方法により水素化した「水素化ブロック共重合体」が好ましく用いられる。水素化してあることにより、硬化物50との密着性が向上する。
【0049】
水素化ブロック共重合体の具体例としては、たとえば水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、水素化スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合体などが挙げられる。なお、かかる水素化物においては、ポリスチレンブロックのフェニル基自体が水素化されることはなく、ポリイソプレンブロックやポリブタジエンブロックだけが水素化されているものである。
【0050】
本発明で使用可能な水素化ブロック共重合体の、230℃、荷重2.16kgfにおけるJIS−K−6719により測定したメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、通常、1g/10min.未満、好ましくは0.1g/10min.未満である。MFRがあまりに大きいと加熱した際に流動してしまうおそれがある。
【0051】
以上のようなブロック共重合体としては、工業的に生産されている市販品を用いてもよく、たとえば、日本ゼオン社製の「クインタック」、旭化成工業社製の「タフプレン」および「タフテック」、シェル社製の「クレイトン」、クラレ社製の「セプトン」などが例示できる。中でも、シェル社製の「クレイトン」のGグレード、クラレ社製のセプトン2005、同2006、同4055、同4077などのような水素化ブロック共重合体が好ましく、より好ましくはクラレ社製のセプトン2005、同2006、同4055、同4077などである。
【0052】
これら特定のブロック共重合体は、それぞれ単独で、あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0053】
本発明で使用可能なエチレン性不飽和モノマー(B)としては、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、シリコーンアクリレート、シリコーンジアクリレートなどが挙げられる。エチレン性不飽和モノマーの配合量は、特定のブロック共重合体100重量部に対して、通常20〜200重量部、好ましくは40〜160重量部程度であり、この範囲で適度な硬化特性と粘性とを有する被覆剤が得られる。
【0054】
本発明で使用可能な重合開始剤(C)としては、たとえばビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートや、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。重合開始剤の配合量は、特定のブロック共重合体100重量部に対して、通常0.1〜15重量部、好ましくは1〜8重量部程度である。
【0055】
前記被覆剤には、前記重合開始剤を速やかに活性化させるために活性促進剤(D)を含めてもよい。使用可能な促進剤としては、たとえば、ナフテン酸コバルトや、オクチル酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸鉛、あるいはこれらの混合物等が挙げられる。活性促進剤を含める場合の活性促進剤の配合量は、特定のブロック共重合体100重量部に対して、通常0.01〜20重量部、好ましくは0.04〜10重量部程度である。
【0056】
前記被覆剤には、必要に応じて、たとえば、酸化チタン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、タルク、カーボンブラックなどの充填剤、各種顔料や染料などの着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防曇剤、帯電防止剤、石油樹脂のごとき接着性向上剤などの種々の添加剤(E)が配合してあってもよい。この場合の配合量は、前記特定のブロック共重合体100重量部に対して、通常5〜100重量部程度である。
【0057】
なお、上述した特定のブロック共重合体(A)の代わりに、少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー、および/または不飽和ポリエステル樹脂(A1)を用いてもよい。
【0058】
少なくとも2個の(メタ)アクリレート基を有するオリゴマーとしては、エポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0059】
エポキシアクリレートオリゴマーは、エポキシ化合物と不飽和カルボン酸とをエポキシ基1当量当たり、カルボキシル基当量0.5〜1.5となるような割合で、通常のエポキシ基への酸の開環付加反応によって製造される。ここで、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸や、メタクリル酸が代表的なものとして挙げられる。
【0060】
ウレタンアクリレートオリゴマーは、ジイソシアネート化合物、ジオール化合物及びヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを、一括混合して反応させることによって得ることができる。他の方法として、ジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させて、1分子当たり1個以上のイソシアネート基を含むウレタンイソシアネート中間体を形成し、次いで、この中間体とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート基とを反応させる方法、ジイソシアネート化合物とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとを反応させて、1分子当たり1個以上のイソシアネート基を含むウレタン(メタ)アクリレート中間体を形成し、次いで、この中間体とジオール化合物とを反応させる方法等が挙げられる。ここで、ジイソシアネート化合物としては、各種公知のものを用いることができ、具体的には、トルエンジイソシアネートや、イソホロンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、1,2−ジイソシアナトエタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の有機ジイソシアネートを挙げることができる。これらジイソシアネート化合物は、単独又は混合物として用いても良い。また、ジオール化合物としては、エチレングリコールや、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルキレンジオールや、ジカルボン酸又はその無水物のジエステル反応生成物であるジエステルジオール等が代表的なものとして挙げられる。更に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、一般式:CH2 =CRCO2 −(Cn H2n)−OH(但し、Rは−H又は−CH3 であり、nは2〜8の正数である)で示される化合物が有用である。
【0061】
ポリエステルアクリレートオリゴマーは、例えば、水酸基を末端に有するポリエステルポリオールと、前述の不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。ポリエーテルアクリレートオリゴマーは、例えば、ポリエチレングリコールや、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオールと、前述の不飽和カルボン酸との反応によって製造することができる。不飽和ポリエステル樹脂は、例えば、マレイン酸やフマル酸などの不飽和二塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールとの縮合反応によって製造することができる。
【0062】
本実施形態では、コア型24の金型内面と硬化物50との間隙60に、被覆剤を注入するタイミングは、特に限定されず、反応原液が金型内で完全に硬化した後に注入してもよく、反応原液が、金型内で適正に、たとえば被覆剤の注入や流動圧力に耐えうる程度に硬化した段階で注入すればよい。いずれにしても被覆剤を注入する際に、反応射出成形時の金型の型締め圧力をそのまま維持するか、あるいは低減させることにより行う。
【0063】
被覆剤を間隙60に注入する方法は、特に限定されず、たとえば特開平11−300776号公報記載の方法などが挙げられる。被覆剤の注入圧力は、特に限定されないが、好ましくは1〜50MPa程度である。
【0064】
なお、被覆剤を注入する前に、予め金型内面に離型剤を塗布しておいてもよい。離型剤を塗布しておくことにより、得られる成形体の表面状態が良好となる。さらに、こうした離型剤を前記被覆剤に含めておいてもよい。使用可能な離型剤としては、たとえばシリコン油やヘキサフルオロプロペンオリゴマーなどのフッ素化合物、ワックスなどが挙げられる。
【0065】
本実施形態では、被覆剤を間隙60に注入する際も、前記同様、コア型24の金型温度T1(℃)をキャビ型26の金型温度T2(℃)より高く設定しておくことがより好ましい(T1>T2)。被覆剤を間隙60に注入する際にT1>T2としておくことで、被覆剤の硬化増粘が一層防止され、被膜ムラが効果的に防止される。この場合のT1−T2、T1、T2および金型温度調整方法は、上述したのと同様であることが好ましい。
【0066】
次に、被覆剤を注入した後、コア型24を昇温する。すなわち、コア型24を好ましくは少なくとも5℃、より好ましくは10℃以上昇温し、コア型24の金型温度を好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上にして、注入された被覆剤を硬化させる。これにより、図1(D)に示すように、被膜70が硬化物50の表面に形成される。被覆剤の硬化時間は、好ましくは1〜10分、より好ましくは2〜5分である。
【0067】
形成される被膜70の占有面積は、硬化物50の面積と同じあってもよく、あるいは異なっていてもよく、使用目的に応じて適宜決定すればよい。
【0068】
本実施形態の方法で形成された被膜70は、硬化物50に対して密着性に優れ、膜厚が一定で、被覆すべき面の全面に渡ってムラが少ない。
【0069】
最後に、図1(E)に示すように、型開きして、脱型することにより、成形体80が得られる。成形体80の大きさや形状などは、特に限定されず、所望の大きさおよび形状にすることができる。
【0070】
本実施形態で得られた成形体80は、たとえば、浴槽、洗面ボール、洗面カウンター、洗い場パン、防水パンといった住宅設備関連の大型部品の他、広範な用途に用いることができる。
【0071】
本実施形態では、RIM成形時のコア型24の金型温度を85℃以下に保持することで反応原液の硬化時間を長くでき、大型品の成形に対応することが容易になる。また、被覆剤硬化時のコア型24の金型温度を90℃以上に保持することにより、密着性に優れ、膜厚が一定で、被覆すべき面の全面に渡ってムラの少ない被膜70を硬化物50の表面に形成することができる。これらに加えて、本実施形態では、被覆剤注入時のコア型24の金型温度を85℃以下に保持することで被覆剤の硬化増粘が一層防止され、被膜ムラが効果的に防止される。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0073】
たとえば、上述した実施形態では、硬化物50の一方の面のみ被膜70を形成したが、両方の面に被膜70を形成してもよい。この場合、たとえば、コア型24の金型内面と硬化物50との間に間隙60を形成し、ここに被覆剤を入れて硬化させた後、キャビ型26の金型内面と硬化物50との間に間隙60を形成し、ここに被覆剤を入れて硬化させればよい。
【0074】
【実施例】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0075】
実施例1
縦1000mm×横1800mm×厚み5mmの平板を、ノルボルネン系モノマーを含む反応原液の反応射出成形により成形した。
反応原液の調製は以下のように行った。すなわち、ジシクロペンタジエン(DCP)95重量%と、トリシクロペンタジエン5重量%とからなる混合モノマーを用い、このモノマー総量100重量部に対して、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(タフプレンA、旭化成工業社製)を6重量部溶解させ、さらに混合モノマーに対しジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)を80ミリモル/kg濃度と、n−プロパノールを80ミリモル/kg濃度、四塩化ケイ素を0.1重量部添加して均一に混合分散した(A液)。一方、ジシクロペンタジエン(DCP)95重量%と、トリシクロペンタジエン5重量%とからなる混合モノマーを用い、このモノマー総量100重量部に対して、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(タフプレンA、旭化成工業社製)を2重量部と、フェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010、チバスペシャリティーケミカルズ社製)を2重量部溶解させ、さらにトリ(トリデシル)アンモニウムモリブデートを20ミリモル/kg濃度添加して均一に混合分散した(B液)。
【0076】
このようにして調製されたA,B両反応原液を、2液衝突混合注入装置を用いて1:1の比率で混合し、コア型80℃、キャビ型50℃に加熱処理された金型のキャビティ内へ注入した。
【0077】
3分経過後、さらに金型のキャビティ内の金型内面とノルボルネン系モノマーの硬化物との間隙に、水素化ブロック共重合体(セプトン2005、スチレン含有量20重量%、MFR(230℃、荷重2.16kgfにおけるJIS−K−6719により測定した値)0.1g/10min.未満(流動せず)、クラレ社製)10重量%、スチレン69重量%、二酸化チタン20重量%およびビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキサイド1重量%からなる被覆剤を、注入圧力10MPaで注入した。被覆剤注入時の金型温度は、コア型、キャビ型ともにRIM成形時と同様であった。被覆剤の注入終了後に、コア型の金型温度を95℃に昇温させた。
【0078】
4分経過後、金型より成形品(平板)を取り出して測定用試験板を得た。
【0079】
得られた試験板を用いて、被膜密着性試験(JIS−K5400、碁盤目テープ法、切り傷間隔2mm、升目数25)を行い、10段階(最良10→最悪0)で評価した結果、10段階中10であった。これにより被膜密着性が極めて優れていることが確認できた。
【0080】
また、得られた試験板の被膜形成面の任意9カ所を選定して膜厚を測定し、最大膜厚180μmと最小膜厚150μmで膜厚の差は、30μmであり、全体に渡って被膜厚が均一であることが確認できた。
【0081】
実施例2
被覆剤注入後にコア型の金型温度を100℃に昇温した以外は、実施例1と同様にして測定用試験板を得て、同様の評価を行った。
【0082】
得られた試験板の被膜密着性試験の評価は、10段階中10であり、被膜密着性が極めて優れていることが確認できた。また、試験板の最大膜厚180μmと最小膜厚150μmで膜厚の差は30μmであり、被膜厚が均一であることが確認できた。
【0085】
比較例1
RIM成形時の金型温度を、コア型95℃、キャビ型50℃とし、被覆剤注入時および被覆剤注入後のそれぞれ金型温度を、このままに保持した以外は、実施例1と同様にして測定用試験板を得て、同様の評価を行った。得られた試験板は、充填途中で硬化が開始し、完全充填不能となり、約(1000mm×1000mm)のサイズの板が得られた。
【0086】
得られた試験板の被膜密着性試験の評価は、10段階中4であった。また、試験板の最大膜厚300μmと最小膜厚100μmで膜厚の差は200μmであった。これらの結果により、実施例1〜3の優位性が確認できた。
【0087】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、密着性に優れ、一定膜厚の被膜を有し、大型で外観が良好なポリノルボルネン系樹脂からなる成形体を簡易に製造できる成形体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(A)〜図1(E)は本発明の一実施形態に係る成形体の製造方法を説明するための工程図である。
【符号の説明】
20… 金型装置
22… 分割面
24… コア型(第1金型)
242… 製品面形成金型面
26… キャビ型(第2金型)
262… 非製品面形成金型面
28… キャビティ
50… ポリノルボルネン系樹脂からなる硬化物
60… 間隙
70… 被膜
80… 成形体
Claims (2)
- 85℃以下の温度に保持された第1金型と、前記第1金型よりも低い温度に保持された第2金型との間に形成されたキャビティ内に、ジシクロペンタジエン及びこの置換体から選ばれる少なくとも1つのノルボルネン系モノマーを含む反応原液を入れ、硬化させて硬化物を得る工程と、
前記第1金型内面と前記硬化物との間隙にスチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、シリコーンアクリレート、及びシリコーンジアクリレートから選ばれる少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーを含む被覆剤を入れる工程と、
前記第1金型を90℃以上に昇温して前記被覆剤を硬化させ、前記硬化物の表面に被膜を形成する工程とを有する成形体の製造方法。 - 前記第1金型の温度を85℃以下に保持しつつ、前記第1金型内面と前記硬化物との間隙に被覆剤を入れることを特徴とする請求項1に記載の成形体の製造方法。
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