JP2005246880A - インモールドコーティング方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 大型の成形品であってもウェルド等の外観不良を生じずに均一な塗膜を形成できるインモールドコーティング方法を提供すること。
【解決手段】 複数の被覆剤注入口を有する金型内で樹脂を成形して樹脂成形品を得、次いで該被覆剤注入口から被覆剤を注入して、該樹脂成形品の表面を被覆剤によって被覆するインモールドコーティング方法であって、全ての接合点において、次式で与えられる値vが0.03m/秒以上2m/秒以下となる条件で被覆剤の注入を行うことを特徴とするインモールドコーティング方法。
(ただし、v=V/2πLDであり、V[m/秒]は各注入口における被覆剤の単位時間当たりの注入量を表し、L[m]は被覆剤注入口から接合点までの距離を表し、D[m]は被覆剤の接合点における硬化した被覆剤の厚みを表す。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂成形品の表面を被覆剤によって被覆するインモールドコーティング方法に関し、より詳しくは、ウェルド等の外観不良を生じずに均一な塗膜を形成できるインモールドコーティング方法に関する。
従来から、樹脂成形品に意匠性や耐候性といった各種特性を付与するために、樹脂成形品の表面をスプレー塗装して被膜を形成することが行われてきた。かかる塗装面の密着性を良好にするために、樹脂成形品を数日放置したのち、サンディングを施すなどの多大な前処理工程が必要である。しかしながら、このような前処理工程を施した場合でも、樹脂成形品表面の経時変化により被膜密着力が不十分になる場合があった。
これらの問題を改善する方法として、樹脂成形後の金型に直接熱硬化性の被覆剤を注入して成形品の表面を被覆するインモールドコーティング方法が提案されている。例えば、キャビティ金型とコア金型に温度差を設け、高温の金型側から塗料を注入することにより、塗料の密着性及び塗装効果を向上させるインモールドコーティング方法が試みられている(特許文献1参照)。また、塗料注入口を、成形体の成形後に切り取られる部分または製品組立後に外部から見えなくなる部分に対応する金型に設けることにより、外観不良及び密着性不良を低減するインモールドコーティング方法が試みられている(特許文献2参照)。しかしながらこれら従来の方法では、注入された被覆剤が徐々に硬化しながら表面の被覆が進行するため、特に大型成形品の被覆において、表面全体を均一な膜厚で被覆することが困難であった。
特開2001−71345号公報 特開2003−11159号公報
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、大型の成形品であってもウェルド等の外観不良を生じずに均一な塗膜を形成できるインモールドコーティング方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、複数の被覆剤注入口を有する金型を用いて樹脂成形を行い、次いで該注入口より、接合点における被覆剤の流速が特定範囲となるように被覆剤を注入することで均一な塗膜を形成できることを見出し、これらの知見に基づき本発明を完成させるに至った。
かくして本発明の第1によれば、複数の被覆剤注入口を有する金型内で樹脂を成形して樹脂成形品を得、次いで該被覆剤注入口から被覆剤を注入して、該樹脂成形品の表面を被覆剤によって被覆するインモールドコーティング方法であって、全ての接合点において、次式で与えられる値vが0.03m/秒以上2m/秒以下となる条件で被覆剤の注入を行うことを特徴とするインモールドコーティング方法が提供される。
(ただし、v=V/2πLDであり、V[m/秒]は各注入口における被覆剤の単位時間当たりの注入量を表し、L[m]は被覆剤注入口から接合点までの距離を表し、D[m]は被覆剤の接合点における硬化した被覆剤の厚みを表す。)
ここで、各注入口における被覆剤の単位時間当たりの注入量Vは、5mL/秒以上150mL/秒以下であることが好ましい。
また、各注入口における単位時間当たりの注入量Vのうち最大の値をVmax、最小の値をVminとしたとき、VmaxがVminに対して1.5〜15倍であることが好ましい。
前記インモールドコーティング方法においては、被覆剤の注入によって樹脂成形品が動かないように成形品固定手段で固定することが好ましい。
前記樹脂成形品は、環状オレフィン、触媒成分および触媒活性成分からなる成形材料を金型内で反応射出成形して得られる架橋樹脂成形品であることが好ましく、該環状オレフィンはノルボルネン系モノマーであることがより好ましい。
被覆剤注入時の金型の型締め圧力は、0〜1MPaであることが好ましい。
本発明の第2によれば、上記のインモールドコーティング方法で得られる被覆成形品が提供される。
本発明のインモールドコーティング方法によれば、大型の成形品であってもウェルド等の外観不良を生じずに均一な塗膜を形成することが可能である。本発明の方法で得られる被覆成形品は、バンパーやエアデフレクターなどの自動車用途、ホイルローダーやパワーショベルなどの建設・産業機械用途、ゴルフカーやゲーム機などのレジャー用途、医療機器や椅子などの産業用途に好適に用いることができる。
本発明のインモールドコーティング方法は、複数の被覆剤注入口を有する金型内で樹脂を成形して樹脂成形品を得、次いで該被覆剤注入口から被覆剤を注入して、該樹脂成形品の表面を被覆剤によって被覆するインモールドコーティング方法であって、全ての接合点において、次式で与えられる値vが0.03m/秒以上2m/秒以下となる条件で被覆剤の注入を行うことを特徴とする。ここでv=V/2πLDであり、V[m/秒]は各注入口における被覆剤の単位時間当たりの注入量を表し、L[m]は被覆剤注入口から接合点までの距離を表し、D[m]は被覆剤の接合点における硬化した被覆剤の厚みを表す。)
また、被覆剤の接合点とは、複数の被覆剤注入口から注入された被覆剤が合流する点の集合である。すなわち、複数の被覆剤注入口から注入された被覆剤は、徐々に硬化しつつ各々の注入口を中心とする略円状に広がりながら成形品表面を被覆する。そして、該複数の注入口間を結ぶ該成形品表面における最短線上の一点で被覆剤が合流し、そこから被覆剤が流れ方向に対し両側に広がりつつ成形品表面全体を被覆する。従って被覆剤の接合点は、該複数の注入口から注入された被覆剤が合流する点を結んだ線として形成される。接合点は、各注入口から注入する被覆剤としてそれぞれ色の異なる被覆剤を用いてインモールドコーティングの実験を行うことで確認できる。
本発明の製造方法においては、任意の接合点においてvが0.03m/秒以上2m/秒以下、好ましくは0.04m/秒以上1.7m/秒以下であり、より好ましくは0.05m/秒以上1.5m/秒以下である。vがこの範囲であると、外観不良を生じずに均一な塗膜を形成することが可能である。vが小さすぎると接合点でウェルドを生じやすい。また、vが大きすぎると接合点で泡が発生しやすく、いずれも外観不良の原因となる。
本発明においては、vがこの範囲となる限りにおいて、各注入口における被覆剤の単位時間当たりの注入量Vはそれぞれ異なっていることが好ましい。各注入口における注入量Vのうち、最大の値をVmax、最小の値をVminとしたとき、VmaxはVminに対して1.5〜15倍であることが好ましく、2〜10倍であることがより好ましい。VmaxとVminがこの範囲となるようにすることで、被覆剤の接合点における泡の発生を抑制できる。
本発明で用いる樹脂成形品の形状および大きさは特に制限はないが、本発明の方法は、特に大型の被覆成形品を得る方法として好適である。樹脂成形品の重量は1〜50kgが好ましく、2〜40kgがより好ましく、3〜30kgが特に好ましい。
樹脂成形品の種類も特に制限はなく、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれを成形した物も用いることができる。中でも、被覆剤の密着性に優れ、大型の成形品を容易に得ることができるとの観点から、環状オレフィン、触媒成分および触媒活性成分からなる成形材料を金型内で反応射出成形して得られる架橋樹脂成形品が好ましい。
架橋樹脂成形品の製造においては、通常、メタセシス重合触媒成分を含む環状オレフィン(溶液Aという)と、メタセシス重合活性化成分を含む環状オレフィン(溶液Bという)を、ミキシングヘッドで、混合し、混合液を、型に樹脂注入口から注入し、型内で、メタセシス重合と架橋と成形を一挙に行う。
成形時間は、環状オレフィン、触媒成分、活性化成分、それらの組成比、金型温度と温度差などによって、変化するので、一様ではないが、一般的には5秒〜6分、好ましくは10秒〜5分である。5秒未満であると、架橋が十分進行していないので、成形品が柔らかく、逆に6分を越えると、架橋は十分進行しているが、成形時間が長くなり過ぎ、生産性に劣る。
本発明で用いる環状オレフィンは、メタセシス重合性シクロアルケン基を分子中に1〜2個有するものであり、ノルボルネン骨格を分子中に少なくとも1個有する化合物(以下、「ノルボルネン系モノマー」と略す。)が好ましい。環状オレフィンの具体例としては、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、シクロペンタジエン−メチルシクロペンタジエン共二量体、5−エチリデンノルボルネン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−シクロヘキセニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4−メタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−ヘキサヒドロナフタレン、エチレンビス(5−ノルボルネン)などが挙げられる。なお、これらを2種以上混合して使用することもでき、酸素、窒素などの異種元素を含有する極性基を有する環状オレフィンを混合することもできるが、ジシクロペンタジエンまたはジシクロペンタジエンを50モル%以上、好ましくは70モル%以上含有する混合物が特に好ましい。
本発明で用いるメタセシス重合触媒成分は、タングステン、レニウム、タンタル、モリブデンなどの金属塩であり、タングステンやモリブデンの金属塩が好ましい。塩としてはハライドなどが好ましい。より具体的には、タングステンヘキサハライド、タングステンオキシハライド、モリブデンペンタハライドが好ましい。また有機アンモニウムタングステン酸塩、有機アンモニウムモリブデン酸塩なども使用できる。
タングステンの金属塩などの化合物の場合、環状オレフィンに接触させると、直ちに重合を開始するので、タングステンの化合物は、予めベンゼン、トルエン、クロロベンゼンなどの不活性溶媒に懸濁し、少量のアルコールおよび/またはフェノール類を添加して、可溶化して使用される。また、タングステンの化合物1モルに対し、約1〜5モルのルイス塩基またはキレート化剤を添加すると、不要な重合を防止できる。かかる添加剤としては、アセチルアセトン、アセト酢酸アルキルエステル、テトラヒドロフラン、ベンゾニトリルなどが例示される。共重合モノマーとして、極性基含有モノマーを用いる場合には、それ自体がルイス塩基であることがあり、添加剤としての作用を兼ね備えていることもある。本発明においては、前記重合触媒成分を、前記環状オレフィンに溶解して溶液Aとして、溶液Bと混合される。
本発明に使用されるメタセシス重合活性化成分は、周期律表第I族〜第III族の金属の有機金属化合物である。具体的には、テロラアルキル錫、アルキルアルミニウム化合物、アルキルアルミニウムハライドなどが挙げられる。好ましくは、塩化ジエチルアルミニウム、ジ塩化エチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジオクチルアルミニウムアイオダイド、テトラブチル錫などが例示される。これらの活性化成分は、前記環状オレフィンに溶解して溶液Bとして、溶液Aと混合される。
溶液Aと溶液Bを混合し、型に注入すれば、重合が開始されるが、型に注入する途中で重合が開始するのを防ぐために、活性調節剤を添加するのが好ましい。かかる調節剤としては、ルイス塩基が好適であり、エーテル、エステル、ニトリルなどが使用される。具体的には、安息香酸エチル、ブチルエーテル、ジグライムなどが例示される。共重合モノマーとして、極性基含有モノマーを用いる場合には、それ自体がルイス塩基であることがあり、調節剤としての作用を兼ね備えていることもある。調節剤は、活性化成分を含む溶液Bに添加されるのが好ましい。
重合触媒成分として、タングステン化合物を用いる場合は、環状オレフィン1モルに対して、1,000分の1〜15,000分の1モル、好ましくは1,500分の1〜2,500分の1モルである。また活性化成分として、アルミニウム化合物を用いる場合は、環状オレフィン1モルに対して、100分の1〜10,000分の1モル、好ましくは200分の1〜1,000分の1モルである。
本発明の被覆成形品には、特性の改良または維持のために、成形品の諸特性、および、硬化した被覆剤と成形品との接着・密着性、を損なわない範囲で、各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、エラストマー、充填剤、補強剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃化剤、発泡剤、軟化剤、粘着付与剤、可塑剤、離型剤、防臭剤、香料、顔料、増量剤などが挙げられる。これらは単独使用のみならず併用することができる。
添加剤としてのエラストマーは、溶液の粘度調節および成形品の耐衝撃性の向上に有効である。スチレン−ブタジエン−スチレントリブロックゴム、スチレン−イソプレン−スチレントリブロックゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ニトリルゴムなどが例示される。
各種添加剤は、溶液Aと/または溶液Bに添加して用いる方法、または溶液Aと/または溶液B以外の第三の溶液として調製し、反応射出成形時に溶液Aおよび溶液Bと共に混合する方法、あるいは、予め型内に充填しておく方法などの方法により添加される。例えば、ガラス繊維などの補強材は、予め型内に設置して、そこに溶液を注入する方法が好適である。
金型は、キャビティ金型とコア金型とからなるものが一般的に用いられ、成形時の型締め圧力は通常0〜9.8MPaである。型に混合液を注入する際、型内に窒素ガスを吹き込んでおくと、表面状態が良い成形品が得られ、被覆剤の密着性が向上するので好ましい。
型の材質は、スチール、鋳造あるいは鍛造のアルミニウム、亜鉛合金などの鋳造や溶射、ニッケルや銅などの電鋳、さらにニッケル、銅、クロム等のメッキ、および樹脂などが挙げられる。型の構造は型に混合液および被覆剤を注入する際の圧力を勘案して決めればよい。
本発明に用いられる金型は、複数の被覆剤注入口を有する。被覆剤注入口は金型の成形品面に形成される。その数および位置は特に限定されず、成形品の大きさおよび形状、用いる被覆剤の種類、所望の塗膜の厚さ等に応じて適宜選択される。注入口の数が多過ぎると金型の製造コストが高くなるので、注入口の数は通常2〜4箇所、好ましくは2〜3箇所である。また、各注入口間の距離は、通常0.5〜3m、好ましくは0.8〜2mである。
また、金型は、成形品固定手段を有することが好ましい。被覆剤の注入によって製品が動かないように成形品固定手段で固定することにより、被覆剤注入口から高圧の被覆剤が注入されても、成形品と金型との位置関係は変わらないので、被覆剤が成形品の被覆したい面全体に均一に行き渡ることが可能となる。成形品固定手段は、成形品を金型に固定できるものであれば特に限定されないが、金型に設けられた凹部、金型に設けられた凸部または、成形品吸引手段であることが好ましく、金型に設けられた凹部であることが特に好ましい。
金型に設けられた凹部の具体的形状としては、円柱状、台形状、四角柱状、三角柱状などの窪み、または、横置きの円柱状、台形状、四角柱状、三角柱状などの溝をいうが、加工の容易さの観点から窪みが好ましく、円柱状の窪みが特に好ましい。なお、金型に設けられた凹部は、下記の金型に設けられた凸部と併用することも出来る。
金型に設けられた凸部の具体的形状としては、円柱状、台形状、四角柱状、三角柱状などの突起、または、横置きの円柱状、台形状、四角柱状、三角柱状などの堤状をいうが、加工の容易さの観点から、突起が好ましく、円柱状の突起が特に好ましい。
さらに、金型に設けられた凸部は、出入自在に設けることが、成形体の取り出し易さの観点から好ましい。凸部を出入自在なものとした場合、成形工程及び被覆工程において成形品固定手段としての役割を果たした後、成形品取り出し時に凸部をスライドさせて引っ込ませることにより、成形体の取り出しが容易になる。
金型に設ける凹部及び凸部の合計数は、成形品をバランス良く金型に固定するために、好ましくは2以上、さらに好ましくは5以上、特に好ましくは8以上である。
金型に設ける凹部の深さ及び凸部の高さは、通常、1〜50mm、好ましくは5〜12mmである。凹部の深さ及び凸部の高さが大きすぎると、成形品が取り出しにくい場合があり、凹部の深さ及び凸部の高さが小さすぎると成形品の固定が十分でない場合がある。
本発明において成形品吸引手段とは、減圧手段により成形品を金型に吸着固定するものであれば特に限定されないが、出入自在に形成された凹部に減圧ラインが繋がった構造のものが好ましい。なお、凹部の形状は、上述の金型に設ける凹部と同様である。出入自在に形成された凹部は、成形工程においては金型表面とほぼ同じ位置にあり窪んでいないが、被覆剤を注入する前に金型内に引っ込んで窪みを形成し、減圧ラインが繋がることによって成形体が吸引・固定される。なお、成形体取り出し前に再び凹部を金型表面と同じ位置に戻すことによって減圧ラインをカットし、成形体が吸引されなくすると、取り出しが容易になる。
成形品の架橋が十分進行した段階、すなわち、成形品の表面が、被覆剤の注入圧力、流動圧力に耐え得るまでになった段階において、インジェクターにより、被覆剤を型内に注入する。注入圧力は1〜50MPa、さらに好ましくは5〜30MPa、特に好ましくは13〜22MPaである。注入圧力が低過ぎる場合は、金型面と成形品表面との間に被覆剤が十分浸透、流動せず、逆に注入圧力が高過ぎると被覆剤は十分浸透、流動するが、被覆剤注入設備費が過大になり、金型の構造も高圧に耐え得るように強化する必要が出てきて、経済性に劣る。また、被覆剤注入時の型締め圧力は通常0〜1MPaであり、塗料注入時の圧力による型の開き防止や型締め機の経済性から、0.1〜0.85MPaが好ましく、0.2〜0.7MPaがより好ましい。ここで、型締め圧力は、成形品の型締め方向への単位投影面積あたりに加えられる力である。型締め圧力を変えることにより、被覆剤により形成される塗膜の厚さを調整することができる。
被覆剤の注入量は、成形品の被覆すべき表面積および所望の塗膜の厚さに応じて適宜選択され、形成される塗膜の厚さが、30〜500μm、さらには40〜200μmとなる量が好ましい。被覆剤の注入時間は、通常、0.5〜9秒である。
被覆剤を注入後、所定時間、所定温度に保持することにより硬化させる。被覆剤の硬化時間は20秒〜6分であり、好ましくは60秒〜4分である。20秒より短いと、被覆剤の硬化が不十分で、被覆が十分でなくなる。逆に6分を越えると、硬化は十分であるが、生産性が劣る。
本発明で使用される被覆剤としては、塗料、フッ素樹脂系ラッカー、シリコン樹脂系ラッカー、シラン系ハードコート剤等の各種ハードコート剤などを例示することができるが、塗料が好適に用いられる。前記の架橋樹脂成形品の被覆に用いられる塗料としては、(a)不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマーまたはウレタンアクリレートオリゴマーと(b)それらと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーからなるビヒクル成分および(c)重合開始剤を含有する塗料が好ましい。
不飽和ポリエステル樹脂、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマーまたはウレタンアクリレートオリゴマーは、いずれも分子内に不飽和二重結合を有しており、エチレン性不飽和モノマーからなるビヒクル成分と、重合開始剤である有機過酸化物の熱分解で発生する活性ラジカルにより、重合(硬化反応)を開始するが、この活性ラジカルが、環状オレフィンの架橋樹脂成形品に残存する不飽和結合と反応する結果、成形品と塗料が化学結合し、もって、塗料の強固な密着性が発現するものと推察される。
不飽和ポリエステル樹脂は、マレイン酸、フマール酸などの不飽和二塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパンなどの多価アルコールとを縮合反応して製造したものである。
エポキシアクリレートオリゴマーは、エポキシ化合物とアクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸とをエポキシ基1当量当たり、カルボキシル基当量が0.5〜1.5当量となるような割合で、開環付加反応して製造したものである。
ポリエステルアクリレートオリゴマーは、例えば、水酸基を末端に有するポリエステルポリオールと不飽和カルボン酸との反応により製造したものである。
ウレタンアクリレートオリゴマーは、ジイソシアネートとジオールおよびヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを、一括混合して反応させて製造する方法やその他の公知の方法で製造される。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、一般式CH=CRCO−(C2n)−OH{ただし、Rは−Hまたは−CHであり、nは2〜8の整数である。}で示される化合物であるのが好ましい。
ジイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート、1,2−ジイソシアナトエタン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどが例示される。これらは単独使用または併用することができる。
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングルコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングルコールなどのアルキレングルコール、ジカルボン酸またはその無水物のジエステル反応生成物であるジエステルジオールが例示される。
特に好ましい塗料は、エポキシアクリレートオリゴマーまたはウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする塗料である。
塗料のビヒクル成分であるエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、メチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、シリコンアクリレート、シリコンジアクリレートなどが例示される。エチレン性不飽和モノマーの配合量は、前記の不飽和ポリエステル樹脂またはオリゴマー100重量部に対し20〜200重量部、好ましくは40〜160重量部である。この範囲であると、適度な硬化特性と粘性を有する塗料を得ることができる。
塗料粘度は、塗料の回り込みや、泡の発生を抑える観点から、B型粘度計30℃での測定において、500〜10,000mPa・sが好ましく、600〜7,000mPa・sがより好ましく、700〜6,000mPa・sが特に好ましい。
ビヒクル成分を重合するための重合開始剤は、有機過酸化物が好ましい。ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ラウロイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが例示される。有機過酸化物の配合量は、ビヒクル成分100重量部に対し、0.1〜15重量部である。
塗料は、前記成分の他に、必要に応じ、金属粉、離型剤、硬化促進剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色顔料、体質顔料、導電性顔料、改質樹脂、表面調整剤などを配合することができる。
これらの塗料は、プライマーを使用することなく、成形品表面に十分に密着することができる。これは、環状オレフィンの架橋樹脂成形品に極微量残存する不飽和結合に、塗料成分の熱分解で生成した活性ラジカルが反応するためと推測される。
本発明の被覆成形品は、上記本発明のインモールドコーティング方法で得られるものである。本発明のインモールドコーティング方法によれば、意匠面にウェルドや塗料膜の段差を実質的に有さない被覆成形品を容易に得ることができる。本発明の方法で得られる被覆成形品は、バンパーやエアデフレクターなどの自動車用途、ホイルローダーやパワーショベルなどの建設・産業機械用途、ゴルフカーやゲーム機などのレジャー用途、医療機器や椅子などの産業用途に好適に用いることができる。
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。実施例および比較例で用いた成形型、成形材料および被覆剤は以下に示すものを用いた。
(成形型)
本発明の実施例で用いた金型装置の全体略図を図1に示す。成形型としては、開口面が短半径470mm、長半径700mmの楕円形で、深さが900mmの椀型のエンジンカバー成形用金型を用いた。この金型はアルミニウムコア金型1と電鋳キャビティ金型2からなり、キャビティ金型2には混合液注入口3および被覆剤注入口4a,4bを設けた。各々の被覆剤注入口に最高圧力が40MPaの図示しないインジェクターノズルをはめ込んだ。被覆剤注入口の位置は、注入口4aを開口面からの距離が600mmの西側側面に設け、注入口4bを開口面からの距離が800mmの頂点南斜方で、注入口4aからの距離が900mmの位置に設けた。
(成形材料)
反応射出成形の成形材料としては、以下に示す溶液Aおよび溶液Bを用いた。
溶液A:重合触媒成分を含有するジシクロペンタジエンを主成分とする溶液(メトンT02A液:RIMTEC(株)製)。
溶液B:活性化成分を含有するジシクロペンタジエンを主成分とする溶液(メトンT02B液:RIMTEC(株)製)。
(被覆剤)
被覆剤としては、塗料100重量部に対し、ジブチルフタレート1重量部およびパーカドックス16(化薬アクゾ(株)製)1重量部からなるペーストを添加し、混合して調製したものを用いた。塗料は、ウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とする塗料(プラグラス#401:大日本塗料(株)製)で、グレー色のものとピンク色のものの2種を用い、各々の注入口から注入された塗料の接合点が分かるようにした。
実施例1
前記キャビティ金型を90℃、コア金型を60℃に加熱し、0.5MPaの圧力で型締めした。次いで型内にRIM成形機を利用して、ミキシングヘッド中で等量の溶液Aと溶液Bを衝突混合させ、得られた混合液を型に注入した。混合液を充填後、型を前記金型温度で1分間保持して成形を完了した。成形後、4a,4bそれぞれの注入口から同時に、被覆剤の注入速度Vを200mL/秒で型内に注入した。被覆剤圧入後、型を前記金型温度に3分間保持した。その後、型を開き、塗装された成形品を取り出した。
塗装された成形品の意匠面において、注入口4aおよび4bを結ぶ最短線上の接合点は、各々の注入口からの距離Lが450mmの位置に観測された。この接合点での塗膜の厚みDが120μmであったことから、この接合点でのvは0.59m/秒と算出された。また、各注入口からの距離が最も遠い接合点は、各々の注入口からの距離Lが1500mmの位置に観測された。この接合点での塗膜の厚みDは、140μmであったことから、この接合点でのvは0.15m/秒と算出された。いずれの接合点においても、意匠面に目視でウェルドや気泡は観測されず、外観は良好であった。なお、塗膜の厚みは、ペイントボアラー518型(エリクセン社製)を用いて測定した。結果を表1に示す。
実施例2,3
被覆剤の注入速度Vを表1に示す値とした他は、実施例1と同様にして成形、塗装を行った。各接合点での塗膜の厚みD、vおよび意匠面の外観について、結果を表1に示す。
比較例1
被覆剤の注入速度Vを20mL/秒とした他は、実施例1と同様にして成形、塗装を行った。各注入口からの距離が最も遠い接合点での塗膜の厚みDは、150μmであったことから、この接合点でのvは0.014m/秒と算出された。この接合点では意匠面にウェルドが発生していた。結果を表1に示す。
実施例4
注入口4aからの被覆剤の注入速度Vを200mL/秒、注入口4bからの被覆剤の注入速度Vを50mL/秒とした他は、実施例1と同様にして成形、塗装を行った。塗装された成形品の意匠面において、注入口4aおよび4bを結ぶ最短線上の接合点は、注入口4aからの距離Lが600mmで注入口4bからの距離Lが300mmである位置に観測された。この接合点での塗膜の厚みDが150μmであったことから、この接合点での注入口4a由来のvは0.35m/秒、4b由来のvは0.18m/秒と算出された。
また、各注入口からの距離が最も遠い接合点は、注入口4aからの距離Lが1600mmで注入口4bからの距離Lが800mmである位置に観測された。この接合点での塗膜の厚みDは、160μmであったことから、この接合点での注入口4a由来のvは0.12m/秒、注入口4b由来のvは0.06m/秒と算出された。いずれの接合点においても、意匠面にウェルドや気泡は観測されず、外観は良好であった。結果を表1に示す。
実施例5
被覆剤の注入速度を表1に示す値とし、金型の型締め圧力を成形品の投影面積あたり0.7MPaとした他は、実施例4と同様にして成形、塗装を行った。各接合点での塗膜の厚みD、vおよび意匠面の外観について、結果を表1に示す。
以上に示すように、本発明のインモールドコーティング方法によれば、ウェルドや気泡などの外観不良を生じずに均一な塗膜を形成することができる。
図1は、本発明の実施例で用いた金型装置の全体略図を示す。
符号の説明
1 コア金型
2 キャビティ金型
3 混合液注入口
4a 被覆剤注入口4a
4b 被覆剤注入口4b

Claims (8)

  1. 複数の被覆剤注入口を有する金型内で樹脂を成形して樹脂成形品を得、次いで該被覆剤注入口から被覆剤を注入して、該樹脂成形品の表面を被覆剤によって被覆するインモールドコーティング方法であって、全ての接合点において、次式で与えられる値vが0.03m/秒以上2m/秒以下となる条件で被覆剤の注入を行うことを特徴とするインモールドコーティング方法。
    (ただし、v=V/2πLDであり、V[m/秒]は各注入口における被覆剤の単位時間当たりの注入量を表し、L[m]は被覆剤注入口から接合点までの距離を表し、D[m]は被覆剤の接合点における硬化した被覆剤の厚みを表す。)
  2. 各注入口における被覆剤の単位時間当たりの注入量Vが5mL/秒以上150mL/秒以下である請求項1に記載のインモールドコーティング方法。
  3. 各注入口における被覆剤の単位時間当たりの注入量Vのうち最大の値をVmax、最小の値をVminとしたとき、VmaxがVminに対して1.5〜15倍である請求項1または2に記載のインモールドコーティング方法。
  4. 被覆剤の注入によって樹脂成形品が動かないように成形品固定手段で固定する請求項1〜3のいずれかに記載のインモールドコーティング方法。
  5. 樹脂成形品が環状オレフィン、触媒成分および触媒活性成分からなる成形材料を金型内で反応射出成形して得られる架橋樹脂成形品である請求項1〜4のいずれかに記載のインモールドコーティング方法。
  6. 環状オレフィンがノルボルネン系モノマーである請求項5記載のインモールドコーティング方法。
  7. 被覆剤注入時の金型の型締め圧力が、0〜1MPaである請求項5または6に記載のインモールドコーティング方法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のインモールドコーティング方法で得られる被覆成形品。
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