JP4425917B2 - 太陽電池セルおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、太陽電池セルおよびその製造方法に関するものであり、特に、電極の剥離の発生が防止された太陽電池セルおよびその製造方法に関するものである。
太陽発電は、無限のエネルギーである光エネルギーを用いて発電し、有害物質を排出しないクリーンな発電方法である。この太陽発電には、太陽からの光エネルギーを電気エネルギーに変換して電力を発生する光電変換素子である太陽電池セルが用いられている。
従来、一般的に生産されている太陽電池セルにおける受光面の裏面の電極は、シリコン基板の裏面に銀ペーストおよびアルミニウムペーストをスクリーン印刷により印刷して、乾燥、焼成することにより形成される。ここで、シリコン基板の裏面のほぼ全面に形成されるアルミニウムは正電極としての役割を果たす。しかし、太陽電池モジュールを作製する際に、アルミニウムで形成されたアルミニウム電極には出力取り出し用のタブ線を直接はんだ付けすることができない。このため、出力取り出し用の電極として銀電極が、該銀電極とアルミニウム電極とが部分的に重なり合うようにシリコン基板の裏面に形成されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
特開2003−273378号公報 特開平10−335267号公報
このように太陽電池セルの基板の裏面では、高出力化のためのアルミニウム電極と出力取り出し用の銀電極とが、部分的に重なり合うように形成されている。そして、このアルミニウム電極と銀電極とが重なった部分では、シリコン基板のシリコン、アルミニウム電極のアルミニウム、銀電極の銀、の3種類の金属が一部、合金化している。
しかしながら、この重なり合った部分(合金化している部分)は、焼成時における急激な加熱および冷却において各部材の熱膨張率の差に起因して発生すると思われる応力により、非常に脆弱になっている。このため、電極形成時の焼成後、たとえばアルミニウム電極上に銀電極が重なっている場合には、この重なり合った部分においてアルミニウム電極が銀電極ごと剥離し、その後の、モジュール作製工程で、タブ線を正常に電極に接合できないという問題が発生する。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電極の剥離が効果的に防止された太陽電池セルおよびその製造方法を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる太陽電池セルは、光電変換機能を有する基板と、基板の一面側に設けられた第一電極と、基板の他面側に設けられた第二電極と、基板の他面側に、基板の面内方向において外縁部が第二電極と重なって設けられ、第二電極から出力を取り出すための第三電極と、を備えた太陽電池セルであって、第二電極の厚みが第三電極の厚みよりも大であり、且つ第二電極の厚みと第三電極の厚みとの差が10μm以上30μm以下であり、さらに第二電極において、第三電極と重なる部分の厚みのみが第三電極の厚みよりも大であること、を特徴とする。
本発明にかかる太陽電池セルは、光電変換機能を有する基板と、基板の一面側に設けられた第一電極と、基板の他面側に設けられた第二電極と、基板の他面側に、基板の面内方向において外縁部が第二電極上に重なって設けられ第二電極から出力を取り出すための第三電極と、を備えた太陽電池セルにおいて、第二電極の厚みを第三電極の厚みよりも大とし、且つ第二電極の厚みと第三電極の厚みとの差を10μm以上30μm以下とすることにより、基板と、一部が第三電極と合金化している第二電極と、の界面での接合力を向上させ、良好な接合性を得ることができる。その結果、電極剥離(合金剥離)を効果的に防止することができる。また、第二電極と第三電極との厚みの差に起因した電極の形成不良を効果的に防止することができる。
したがって、本発明にかかる太陽電池セルによれば、電極の形成不良を防止しつつ、光電変換機能を有する基板と、一部が第三電極と合金化している第二電極と、を確実に接合して電極剥離(合金剥離)を効果的に防止した太陽電池セルを実現することができる、という効果を奏する。
そして、太陽電池セル製造後のモジュール作製時において、タブ線を正常に電極に接合することができるため、タブ付け不良を低減し、生産歩留まりを向上させることができる、という効果を奏する。
図1−1は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの概略構成を示す断面図である。 図1−2は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの表面側((受光面側)の概略構成を示す平面図である。 図1−3は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの裏面側(受光面に相対する面側)の概略構成を示す平面図である。 図1−4は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルにおいてシリコン、アルミニウム、銀、の3種類の金属が一部合金化した合金部周辺を拡大して示す図である。 図2は、従来の太陽電池セルの裏面に設けられたアルミニウム電極と裏面銀電極とが部分的に重なった領域B’および領域C’の周辺部を拡大して示す断面図である。 図3は、焼成後のアルミニウム電極と裏面銀電極との厚みの差(アルミニウム電極厚から焼成後の裏面銀電極厚を引いた値)と、電極(合金)剥離の発生頻度と、の関係を示す特性図である。 図4は、焼成後のアルミニウム電極と裏面銀電極との厚みの差(アルミニウム電極厚から焼成後の裏面銀電極厚を引いた値)と、印刷不良の発生頻度と、の関係を示す特性図である。 図5−1は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造方法を説明する断面図である。 図5−2は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造方法を説明する断面図である。 図5−3は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造方法を説明する断面図である。 図5−4は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造方法を説明する断面図である。 図5−5は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造方法を説明する断面図である。 図5−6は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造方法を説明する断面図である。 図5−7は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造において銀ペーストの印刷に用いるスクリーンマスクの一例を示す平面図である。 図5−8は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造において銀ペーストの印刷に用いるスクリーンマスクの一例を示す断面図である。 図5−9は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造方法を説明する断面図である。 図5−10は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの製造方法を説明する断面図である。 図6は、本発明の実施の形態2にかかる太陽電池セルの概略構成を示す断面図である。 図7は、本発明の実施の形態2にかかる他の太陽電池セルの概略構成を示す断面図である。
10 半導体層部
11 シリコン基板
13 n型拡散層
13a n型拡散層
14 p+
15 反射防止膜
17 アルミニウム電極
17a アルミニウムペースト層
19 裏面銀電極
19a 銀ペースト層
21 表面銀電極
21a 銀ペースト層
23 合金部
25 メッシュ
27 乳剤
29 マスク枠
31 アルミニウム電極と裏面銀電極との重なり領域
33 アルミニウム電極と裏面銀電極との重なり領域およびその周辺領域
以下に、本発明にかかる太陽電池セルおよびその製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は以下の記述により限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下の図面においては、各図面間の縮尺および各部材間の縮尺は理解の容易のため実際とは異なる場合がある。
実施の形態1.
図1−1〜図1−3は、本発明の実施の形態1にかかる太陽電池セルの概略構成を示す図であり、図1−1は実施の形態1にかかる太陽電池セルの概略構成を示す断面図である。また、図1−2は実施の形態1にかかる太陽電池セルの表面側(受光面側)の概略構成を示す平面図であり、図1−3は実施の形態1にかかる太陽電池セルの裏面側(受光面に相対する面側)の概略構成を示す平面図である。なお、図1−1は図1−3の線分A−Aにおける断面図である。
本実施の形態にかかる太陽電池セルは、図1−1〜図1−3に示すように、半導体基板としてのp型シリコン基板であるp型層11と、該p型層11の表面の導電型が反転したn型拡散層13と、高濃度不純物を含んだp+層(BSF層:Back Surface Field)14と、からなる光電変換層である半導体層部10と、この半導体層部10の受光面に設けられて入射光の反射を防止する反射防止膜15と、この半導体層部10の受光面に略棒状に設けられた受光面電極部である表面銀電極21と、電力取り出しと入射光の反射を目的として半導体層部10の裏面のほぼ全面に設けられた裏面電極部であるアルミニウム電極17と、このアルミニウム電極17から電力を取り出すための取り出し電極部である裏面銀電極19と、を備えて構成されている。
このように構成された本実施の形態にかかる太陽電池セルでは、太陽光が太陽電池セルの受光面側(反射防止膜15側)から照射されて、内部のpn接合面(p型層11とn型拡散層13との接合面)に到達すると、このpn接合面において合体していたホールと電子が分離する。分離した電子はn型拡散層13に向かって移動する。一方、分離したホールはp+層14に向かって移動する。これにより、n型拡散層13とp+層14との間に、p+層14の電位が高くなるようにして電位差が発生する。その結果、n型拡散層13に接続した表面銀電極21がマイナス極、p+層14に接続したアルミニウム電極17がプラス極となって、外部回路(図示せず)に電流が流れる。
つぎに、本実施の形態にかかる太陽電池セルの特徴について説明する。図1−4に示すように本実施の形態にかかる太陽電池セルでは、p+層14上においてアルミニウム電極17と裏面銀電極19とが部分的に重なっている。図1−4は図1−1の断面図おける裏面銀電極19周辺を拡大して示す図であり、太陽電池セルの裏面に設けられたアルミニウム電極17と裏面銀電極19とが部分的に重なった領域Bおよび領域Cの周辺部を拡大して示す断面図である。
このアルミニウム電極17と裏面銀電極19とが部分的に重なっている領域Bおよび領域Cでは、シリコン基板のp+層14のシリコン、アルミニウム電極17のアルミニウム、裏面銀電極19の銀、の3種類の金属が一部合金化して図1−4に示すように合金部23を形成している。なお、図1−1および図1−4においては、作図の関係上、領域Bおよび領域Cについて各金属(シリコン、アルミニウム、銀)の境界が明確となっているが、当然、この部分は一部合金化されているため、実際には、不明瞭となっている。
ここで、本実施の形態にかかる太陽電池セルでは、図1−4に示すように半導体層部10の面内方向において裏面銀電極19の外縁部がアルミニウム電極17と重なって設けられ、アルミニウム電極17の厚みtAlが裏面銀電極19の厚みtAgよりも大とされるとともにアルミニウム電極17の厚みtAlと裏面銀電極19の厚みtAgとの差が10μm以上30μm以下であることを特徴とする。
これにより、本実施の形態にかかる太陽電池セルでは、図1−5に示すようにアルミニウム電極17と裏面銀電極19とが部分的に重なった領域Bおよび領域Cにおいて合金部23が確実に形成され、合金部23のアルミニウム電極17と裏面銀電極19とが確実に接合されるとともに、アルミニウム電極17および裏面銀電極19が確実にシリコン基板のp+層14に接合されている。
従来の太陽電池セルにおいては、図2に示すように半導体層部10の面内方向において裏面銀電極19の外縁部がアルミニウム電極17と重なって設けられ、アルミニウム電極17の厚みが裏面銀電極19の厚みよりも大とされている。したがって、従来の太陽電池セルにおいても本実施の形態にかかる太陽電池セルと同様に、図2に示すようにアルミニウム電極17と裏面銀電極19とが部分的に重なった領域B’および領域C’を有する。そして、アルミニウム電極17と裏面銀電極19とが部分的に重なっている領域B’および領域C’では、シリコン基板のp+層14のシリコン、アルミニウム電極17のアルミニウム、裏面銀電極19の銀、の3種類の金属が一部合金化している。
ここで、図2において領域B’は、シリコン基板のp+層14のシリコン、アルミニウム電極17のアルミニウム、裏面銀電極19の銀、の3種類の金属が一部合金化しており、一部が合金化したアルミニウム電極17および裏面銀電極19の剥離(合金剥離)が生じていない状態を示している。一方、領域C’は、シリコン基板のp+層14のシリコン、アルミニウム電極17のアルミニウム、裏面銀電極19の銀、の3種類の金属が一部合金化しているが、一部が合金化したアルミニウム電極17および裏面銀電極19の剥離(合金剥離)が生じている状態を示している。なお、図2においては作図の関係上、各金属(シリコン、アルミニウム、銀)の境界が明確となっているが、当然、この部分は一部合金化されているため、実際には、不明瞭となっている。
しかしながら、従来の太陽電池セルにおいては、この重なり合った部分(一部、合金化している部分)は、製造途中の焼成時における急激な加熱および冷却において各部材の熱膨張率の差に起因して発生すると思われる応力により、非常に脆弱になり、接合性が低下している。このため、電極形成時の焼成後、この重なり合った部分において図2の領域C’に示すようにアルミニウム電極17が裏面銀電極19ごと剥離する場合がある。この場合には、後のモジュール作製工程において、タブ線を正常に電極に接合できないという問題が発生する。
本発明者らの研究により、太陽電池セルの製造工程における電極の焼成工程後のセルを観察すると、電極剥離(合金剥離)と呼ばれるアルミニウム電極17と裏面銀電極19との重なり領域において「アルミニウム電極17および裏面銀電極19電極のシリコン基板(p+層14)からのめくれあがり」が、時折発生していることがわかった(図2の領域C’参照)。そして、この「アルミニウム電極17および裏面銀電極19電極のシリコン基板(p+層14)からのめくれあがり」がモジュール作製工程において、電極に対するタブ線の取り付け不良の一因となることが分かった。また、電極剥離(合金剥離)については、図2に示されるように、アルミニウム電極17と裏面銀電極19との重なり領域の端部下のシリコン基板と電極界面(一部、アルミニウムと銀が合金化)付近で剥離していることが、観察により分かった。
そこで、本発明者らは鋭意研究を進めた結果、半導体層部10の面内方向において裏面銀電極19の外縁部がアルミニウム電極17と重なって設けられた太陽電池セルにおいて、アルミニウム電極17の厚みtAlを裏面銀電極19の厚みtAgよりも大とするとともにアルミニウム電極17の厚みtAlと裏面銀電極19の厚みtAgとの差を10μm以上30μm以下とすることにより、シリコン基板(p+層14)とアルミニウム電極17(一部、裏面銀電極19と合金化している)とを確実に接合され電極剥離(合金剥離)が防止された太陽電池セルを得ることができるとの発明に至った。
図3および図4に、半導体層部10の面内方向において裏面銀電極19の外縁部がアルミニウム電極17と重なって設けられた太陽電池セルにおいて、アルミニウム電極17の厚みおよび裏面銀電極19の厚みを変化させた実験した場合の特性データを示す。図3は、電極形成工程における焼成後のアルミニウム電極17と裏面銀電極19との厚みの差(アルミニウム電極17の厚みtAlから焼成後の裏面銀電極19の厚みtAgを引いた値)と、合金剥離の発生頻度と、の相関関係を示した特性図である。ここで、合金剥離の頻度とは、評価したセル枚数に対して、どれくらい合金剥離が発生したセルがあるのか、を表している。
一方、図4は、電極形成工程における焼成後のアルミニウム電極17と裏面銀電極19との厚みの差(アルミニウム電極17の厚みtAlから焼成後の裏面銀電極19の厚みtAgを引いた値)と、印刷不良の頻度と、の相関関係を示した特性図である。ここで、印刷不良とは、合金形成領域およびその周辺領域で、印刷擦れ等、ペーストの塗布が不充分となった状態であり、電極の形成不良が生じた状態である。また印刷不良の頻度とは、評価したセル枚数に対してどれくらい印刷不良のセルがあるのか、を表している。
図3より、電極形成工程における焼成後のアルミニウム電極17と裏面銀電極19との厚みの差(アルミニウム電極17の厚みtAlから焼成後の裏面銀電極19の厚みtAgを引いた値)が10μm以上である場合に、合金剥離の頻度が大幅に低下していることが分かる。一方、図4より、電極形成工程における焼成後のアルミニウム電極17と裏面銀電極19との厚みの差(アルミニウム電極17の厚みtAlから焼成後の裏面銀電極19の厚みtAgを引いた値)が30μm以上である場合に、印刷不良の頻度が急激に上昇していることが分かる。
また、合金剥離については、アルミニウム電極17と裏面銀電極19との重なり領域の端部下のシリコン基板と電極との界面(一部、アルミニウム電極17と裏面銀電極19とが合金化している)付近で剥離しており、その界面での銀濃度が高いほど電極剥離(合金剥離)が生じやすいことが、他の実験と評価により判明した。
なお、アルミニウム、あるいは、銀が直接シリコンと接触する領域では、このような界面での電極剥離(合金剥離)は認められず、良好な接合性を有している。したがって、ある一定の割合で、アルミニウムとシリコンとの合金に銀が取り込まれると、熱膨張係数の変化など何らかの作用で、接合性を低下させることが予想される。
以上の結果から、電極剥離(合金剥離)を防止するためには、シリコン基板(p+層14)と電極(合金)との界面付近における銀濃度を下げることが必要であり、アルミニウム電極17の厚みtAlを厚くする、または裏面銀電極19の厚みtAgを薄くすることが、有効であると言える。そして、上記の実験結果はこれを裏付けるものである。一方、印刷不良については、アルミニウム電極17の厚みtAlと裏面銀電極19の厚みtAgの違いによる段差に起因して、ペーストが上手くカバレッジできないことによるものである。
そこで、以上のことから、本発明者らは、半導体層部10の面内方向において裏面銀電極19の外縁部がアルミニウム電極17と重なって設けられた太陽電池セルにおいて、アルミニウム電極17の厚みtAlを裏面銀電極19の厚みtAgよりも大とするとともにアルミニウム電極17の厚みtAlと裏面銀電極19の厚みtAgとの差を10μm以上30μm以下とすることにより、シリコン基板(p+層14)とアルミニウム電極17(一部、裏面銀電極19と合金化している)とを確実に接合され電極剥離(合金剥離)が防止された太陽電池セルを得ることができるとの発明に至った。
以上のように構成された本実施の形態にかかる太陽電池セルによれば、図1−4に示すようにアルミニウム電極17と裏面銀電極19とが部分的に重なった領域Bおよび領域Cにおいて、シリコン基板(p+層14)とアルミニウム電極17との界面(一部、アルミニウム電極17と裏面銀電極19とが合金化している)での基板接合力が向上し、良好な接合性を得ることができる。その結果、電極剥離(合金剥離)を効果的に防止することができる。また、アルミニウム電極17と裏面銀電極19との厚みの差(アルミニウム電極17の厚みから焼成後の裏面銀電極19の厚みを引いた値)に起因した印刷不良(電極の形成不良)を効果的に防止することができる。
したがって、本実施の形態にかかる太陽電池セルによれば、電極の形成不良を防止しつつ、シリコン基板(p+層14)とアルミニウム電極17(一部、アルミニウム電極17と裏面銀電極19とが合金化している)とを確実に接合して電極剥離(合金剥離)を効果的に防止した太陽電池セルを実現することができる、という効果を奏する。
つぎに、上記のように構成された本実施の形態にかかる太陽電池セルの製造方法について説明する。一般的に、低価格の太陽電池セルは、シリコン基板を使用して単純なpn接合で太陽光発電させ、数百μm厚のp型シリコン基板1にリン(P)等のV族元素を拡散等で数百nm厚のn層を形成する。本発明においては、p型シリコン基板は単結晶、多結晶のいずれでも良いが、以下では(100)面方位の単結晶基板を例に説明する。
まず、太陽電池セルの製造工程の概略について簡単に説明する。太陽電池セルの製造工程では、比抵抗0.1〜5Ω・cmのp型シリコン基板表面に、n層と基板側の光を閉じ込める凹凸構造のテクスチャーを設け、その上に反射防止膜を配置する。つづいて、基板表側に銀電極を配置する。
ついで、基板裏側にアルミニウム電極を配置し、BSF(Back Surface Field)効果を期待してp+層を設けてp層中の電子が消滅しないようにバンド構造の電界でp層電子濃度を高めるようにする。また、アルミニウム電極にはシリコン基板を通過する長波長光を反射させて発電に再利用するBSR(Back Surface Reflection)効果も期待している。ただし、アルミニウム電極は、基板反りが顕著になり、基板割れを誘発するため、熱処理でP+層が形成された後に除去する場合もある。最後に、基板裏側に銀電極を配置して太陽電池セルが完成する。
以下、図面を参照して本実施の形態にかかる太陽電池セルの製造方法について詳細に説明する。本実施の形態にかかる太陽電池セルを製造するには、まず、図5−1に示すように、たとえば引き上げ法により製造されるp型の単結晶シリコンインゴット、または鋳造法により製造される多結晶シリコンインゴットからp型のシリコン基板11’をスライスする。そして、たとえば数wt%〜20wt%程度の苛性ソーダや炭酸苛性ソーダで10μm〜20μm程度の厚みだけエッチング除去し、スライスした際に発生するシリコン表面のダメージ層や汚染を取り除く。
さらに、必要に応じて、塩酸と過酸化水素との混合溶液で洗浄し、基板表面に付着した鉄等の重金属類を除去する。その後、同様のアルカリ低濃度液にIPA(イソプロピルアルコール)を添加した溶液で異方性エッチングを行ない、たとえばシリコン(111)面が出るようにテクスチャーを形成する。
ついで、pn接合を形成するためにn型拡散層13aを形成する。このn型拡散層13aの形成工程では、たとえばオシキ塩化リン(POCl3)を使用し、800℃〜900℃の窒素、酸素の混合ガス雰囲気中で数十分間の拡散処理を施し、図5−2に示すようにリンを熱的に拡散させて導電型を反転させたn型拡散層13aをシリコン基板11’の全面に形成する。なお、このn型拡散層13aのシート抵抗はたとえば数十(30〜80〜Ω/□程度であり、n型拡散層13aの深さはたとえば0.3μm〜0.5μm程度である。
つぎに、また、受光面側のn型拡散層13aを保護するため、高分子レジストペーストをスクリーン印刷法で印刷・乾燥させてレジストを形成する。そして、たとえば20wt%水酸化カリウム溶液中へ数分間浸漬してシリコン基板11’の裏面や側面に形成されたn型拡散層13aを除去する。その後、レジストを有機溶剤で除去して、図5−3に示すようにn型拡散層13が表面(受光面)全面に形成されたシリコン基板11’を得る。
ついで、図5−4に示すようにシリコン酸化膜、シリコン窒化膜や酸化チタン膜などの反射防止膜15をn型拡散層13面に一様な厚みで形成する。反射防止膜15は、たとえば、シリコン酸化膜の場合にはプラズマCVD法でSiH4ガスおよびNH3ガスを原材料として、300℃以上の加熱温度で、減圧下で成膜形成する。屈折率はたとえば2.0〜2.2程度であり、反射防止膜15の最適な膜厚は70nm〜90nm程度である。なお、このようにして形成される反射防止膜は絶縁体であることに注意すべきであり、表面電極をこの上に単に形成しただけでは、太陽電池として作用しない。
つぎに、スクリーン印刷法を用いて、シリコン基板11’の裏面(受光面に相対する面)の全面に、図5−5に示すようにガラスを含むアルミニウムペーストを印刷・乾燥し、シリコン基板11’の裏面全面にアルミニウムペースト層17aを形成する。このアルミニウムペースト層17aにおいては、裏面銀電極19の形成部位に対応して開口が設けられている。アルミニウムペーストの塗布厚は、スクリーンマスクを形成する線径や、乳剤厚などで調整可能である。
ついで、スクリーン印刷法を用いて、アルミニウム電極17が形成されたシリコン基板11’の裏面(受光面に相対する面)に図5−6に示すように裏面銀電極19用銀ペーストを印刷・乾燥し、銀ペースト層19aを形成する。ここで、アルミニウムペースト層17aおよび銀ペースト層19aの形成工程において、焼成後のアルミニウム電極17の厚みtAlを裏面銀電極19の厚みtAgよりも大とするとともにアルミニウム電極17の厚みtAlと裏面銀電極19の厚みtAgとの差を10μm以上30μm以下となるようにそれぞれの厚みを調整する。
なお、銀ペーストの印刷は、たとえば図5−7におよび図5−8に示すようにメッシュ25に対して乳剤27によりパターン形成したスクリーンマスクを用いて行うことができる。メッシュ25の乳剤27と相対する面の外周にはマスク枠が形成されている。また、アルミニウムペーストの印刷も、同様にメッシュ25に対して乳剤27によりパターン形成したスクリーンマスクを用いて行うことができる。そして、アルミニウムペーストの塗布厚は、スクリーンマスクを形成する線径や、乳剤厚などで調整可能である。同様に、銀ペーストの塗布厚も、スクリーンマスクを形成するメッシュの線径、乳剤厚などで調整可能である。
従来は、基板の反り量や太陽電池の特性(前述のBSF効果やBSR効果)に影響を与えるアルミニウムペーストの塗布量の最適化に重点を置いていたため、銀ペーストの塗布量については、最適化が図られたことはなく、焼成後の裏アルミニウム電極厚と、裏銀電極厚については、ほぼ同じ厚さとしていた。
さらに、スクリーン印刷法を用いて、反射防止膜15が形成されたシリコン基板11’の表面(受光面)に表面銀電極21用の銀ペースト印刷・乾燥し、図5−9に示すように銀ペースト層21aを形成する。銀ペーストの塗布厚も、スクリーンマスクを形成するメッシュの線径、乳剤厚などにより調整可能である。
つぎに、電極形成のための焼成工程で、表裏電極用ペースト層を同時に600℃〜900℃で数分間〜十数分焼成する。シリコン基板11’の表面(受光面)側では、銀ペースト層が焼成されて図5−10に示すように表面銀電極21となるが、反射防止膜15が溶融している間に銀ペースト中に含まれているガラス材料で銀材料がシリコン基板11’のシリコンと接触し、再凝固する。これにより、表面銀電極21とシリコンの導通が確保される。このようなプロセスは一般にファイヤースルー法と呼ばれている。
一方、シリコン基板11’の裏面(受光面に相対する面)側では、アルミニウムペースト層が焼成されて図5−10に示すようにアルミニウム電極17となり、銀ペースト層が焼成されて図5−10に示すように裏面銀電極19となる。ここで、アルミニウムペーストのアルミニウムがシリコン基板11’のシリコンと反応してアルミニウム電極17の直下にp+層14を形成する。この層は、一般にBSF(Back Surface Field)層と呼ばれ、太陽電池のエネルギー変換効率の向上に寄与するものである。そして、シリコン基板11’のうち、n型拡散層13とp+層14とに挟まれた領域がp型層11となる。
また、銀ペーストは、シリコン基板11’と直接接する箇所では、直接シリコン基板11’のシリコンと反応し、また、アルミニウムペーストと接触する箇所では、シリコン基板11’のシリコン、アルミニウムペースト(アルミニウム電極17)のアルミニウム、裏面銀電極19の銀の3種の金属が、一部、合金を形成する。以上の工程により、太陽電池セル製造プロセスによりセルは、完成する。なお、セル作製工程後のモジュール作製工程では、この銀電極3上に出力を外部へ取り出すための銅製のタブ線が配置される。
以上のように構成された本実施の形態にかかる太陽電池セルの製造方法によれば、図1−4に示すようにアルミニウム電極17と裏面銀電極19とが部分的に重なった領域Bおよび領域Cにおいて、シリコン基板(p+層14)とアルミニウム電極17との界面(一部、アルミニウム電極17と裏面銀電極19とが合金化している)での基板接合力が向上し、良好な接合性を得ることができる。その結果、電極剥離(合金剥離)を効果的に防止することができる。また、アルミニウム電極17と裏面銀電極19との厚みの差(アルミニウム電極17の厚みから焼成後の裏面銀電極19の厚みを引いた値)に起因した印刷不良(電極の形成不良)を効果的に防止することができる。
したがって、本実施の形態にかかる太陽電池セルの製造方法によれば、電極の形成不良を防止しつつ、シリコン基板(p+層14)とアルミニウム電極17(一部、アルミニウム電極17と裏面銀電極19とが合金化している)とを確実に接合して電極剥離(合金剥離)を効果的に防止した太陽電池セルを実現することができる、という効果を奏する。
実施の形態2.
実施の形態2においては、本発明にかかる太陽電池セルの他の形態について説明する。上述した実施の形態1においては、アルミニウム電極17が一様に同じ厚みを有する場合について説明したが、本発明においてはアルミニウム電極17は必ずしも一様に同じ厚みを有する必要はない。
本発明において、たとえば裏面銀電極19の厚みを固定した場合には、アルミニウム電極17の厚みを厚くする必要があるが、この際、アルミニウムペーストの消費量が増え、製造コストが高くなる、また、アルミニウム電極17の厚みを厚くすることに起因して加熱時または冷却時に発生する応力による基板の反りが増大するという問題が発生する。
これらの問題を防ぐためには、図6に示すようにアルミニウム電極17と裏面銀電極19との重なり領域31のみ、アルミニウム電極厚を増やすこと、または、図7に示すようにアルミニウム電極17と裏面銀電極19との重なり領域およびその周辺領域33においてのみ、アルミニウム電極厚を増やすことが有効である。なお、図6および図7に示した本実施の形態にかかる太陽電池セルの基本的な構造は、アルミニウム電極17と裏面銀電極19との重なり状態以外は上述した実施の形態1にかかる太陽電池セルと同様であるため、上記を参照することとする。
このようなアルミニウム電極17の形成は、実施の形態1において説明した電極形成用のスクリーンマスクの乳剤厚の厚みを、アルミニウム電極17と裏面銀電極19との重なり領域31に隣接する部位のみ厚くする、またはアルミニウム電極17と裏面銀電極19との重なり領域およびその周辺領域33に隣接する部位のみ厚くすることで、実現可能である。
以上のように、本発明にかかる太陽電池セルは、アルミニウム電極と出力取り出し用の銀電極とが部分的に重なり合う構造の太陽電池セルに有用である。

Claims (4)

  1. 光電変換機能を有する基板と、
    前記基板の一面側に設けられた第一電極と、
    前記基板の他面側に設けられた第二電極と、
    前記基板の他面側に、前記基板の面内方向において外縁部が前記第二電極と重なって設けられ、前記第二電極から出力を取り出すための第三電極と、
    を備えた太陽電池セルであって、
    前記第二電極の厚みが前記第三電極の厚みよりも大であり、且つ前記第二電極の厚みと前記第三電極の厚みとの差が10μm以上30μm以下であり、さらに前記第二電極において、前記第三電極と重なる部分の厚みのみが前記第三電極の厚みよりも大であること、
    を特徴とする太陽電池セル。
  2. 前記第二電極が、アルミニウム電極であり、
    前記第三電極が、銀電極であること、
    を特徴とする請求項1に記載の太陽電池セル。
  3. 光電変換機能を有する基板の一面側に第一電極を形成する第一電極形成工程と、
    前記基板の他面側に第二電極を形成する第二電極工程と、
    前記基板の他面側に、前記基板の面内方向において外縁部が前記第二電極と重なるように前記第二電極から出力を取り出すための第三電極を形成する第三電極工程と、
    を含む太陽電池セルの製造方法であって、
    前記第二電極の厚みを前記第三電極の厚みよりも大とし、且つ前記第二電極の厚みと前記第三電極の厚みとの差を10μm以上30μm以下とし、さらに前記第二電極における該第二電極と前記第三電極とが重なる重なり部の厚みのみを前記第三電極の厚みよりも大きくすること
    を特徴とする太陽電池セルの製造方法。
  4. 前記第二電極が、アルミニウム電極であり、
    前記第三電極が、銀電極であること、
    を特徴とする請求項に記載の太陽電池セルの製造方法。
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