JP4425366B2 - N−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンの製造法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種医薬品の合成中間化合物として重要な、N−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンの新規な製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
次式(I):
【化4】
Figure 0004425366
(式中、Bzlはベンジル基を表す。)
で示されるN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンは、各種医薬品の合成中間体として重要な化合物である。
【0003】
たとえば、このN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジン(I)の窒素原子上に置換されたベンジル基を1,3−チアゾリン−2−イル基に置き換え、さらに3位の水酸基をメルカプト基に置き換えることにより誘導された3−メルカプト−1−(1,3−チアゾリン−2−イル)アゼチジンは、強力な抗菌活性を有するカルバペネム系抗生物質の2位の側鎖置換基として利用されているものであり(例えば、特許第2666118号)、また、窒素原子上のベンジル基を脱離させ、3位の水酸基をメチルアミノ基に置き換えた3−メチルアミノ−アゼチジンはニューキノロン系合成抗菌剤の合成原料として利用されている[例えば、ニューカレント、9(3),p34(1998)]。
【0004】
そのため、これまでにN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジン(I)を含めて、種々の3−ヒドロキシアゼチジン誘導体の合成法が提供されてきているが、その製造にあっては工程数が多く、したがって反応収率も低く、またかなり複雑な精製処理等を必要とするものであり、さらに工程数が少ない製造法においても高価な原材料を用いるなど、工業的な製造法としてはいまだ満足のいくものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は、各種医薬品の合成中間体として重要な、N−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンの工業的に応用し得る製造方法として、製造工程が短く、さらに複雑な反応処理を必要とせず、かつ、安価な原材料を用いて、収率的にも満足しうる、簡便な製造法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するために、本発明は、具体的態様として以下の製造法を提供する。すなわち、ベンジルアミンを含有する反応水溶液中に、冷却・攪拌下にエピクロルヒドリンを添加し、添加終了後、さらに室温下で反応の完結するまで攪拌を行い、反応混合液中から晶出する次式(II):
【0007】
【化5】
Figure 0004425366
(式中、Bzlはベンジル基を表す。)
【0008】
で示される化合物の結晶を採取したのち、次いで、得られた式(II)で示される化合物の結晶を、有機溶媒中で炭酸水素アルカリ金属塩と加熱処理を行うことを特徴とする次式(I):
【0009】
【化6】
Figure 0004425366
(式中、Bzlはベンジル基を表す。)
【0010】
で示されるN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンの製造法を提供するものである。
【0011】
したがって本発明が提供する製造法においては、その別の具体的態様として、式(II)で示される化合物と炭酸水素アルカリ金属塩とを有機溶媒中加熱反応することによる上記式(I)で示されるN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンの製造法を提供するものでもある。
【0012】
特に本発明においては、式(II)で示される化合物と炭酸水素アルカリ金属塩との加熱反応終了後、不溶物を濾別し、濾液を適宜攪拌処理し、式(I)の化合物を遊離の結晶として単離するか、あるいは、濾液に塩酸ガスを導入するか、または塩化水素含有の有機溶媒を添加することにより、式(I)の化合物を塩酸塩として結晶で単離する簡便な製造法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明が提供するN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンの製造法は、出発原料としてはベンジルアミンならびにエピクロルヒドリンという安価な化合物を用い、しかも反応条件には苛酷な高圧あるいは高温度での加熱、さらには高価な試薬、溶媒等を使用することなく、極めて簡便な操作により、高収率で目的とするN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンを製造できるという工業的製造法として特に優れたものである。
【0014】
すなわち、本発明の製造法におけるベンジルアミンとエピクロルヒドリンとの反応は、水溶液中で行われ、かつ、このベンジルアミンに対するエピクロルヒドリンの添加を低温条件下に徐々に行うことにより、反応溶液中に水に不溶の式(II)の化合物を結晶として晶出させること、さらに、かかる式(II)の化合物の結晶を用いて閉環反応を行うに際して、不活性有機溶媒中、炭酸水素アルカリ金属塩と単に加熱し、目的物であるN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンを遊離塩基の状態で反応溶液中から単離するか、あるいは、塩酸塩として反応溶液中から単離することができる点で、工業的製造手法として特に優れたものであるといえる。
【0015】
以下に本発明が提供するN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンの製造法について、さらに詳細に説明する。
本発明が提供するN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンの製造法は、基本的にはベンジルアミンとエピクロルヒドリンとの反応による式(II)で示される化合物の製造にかかる第1工程と、当該第1工程で得られた式(II)の化合物を閉環反応に付し、目的とするN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンへ誘導する第2工程からなるものである。
【0016】
この場合の、ベンジルアミンとエピクロルヒドリンとの反応による式(II)で示される化合物の製造にかかる第1工程は、具体的には以下のようにして実施される。すなわち、ベンジルアミンを水溶液中に溶解させ、この溶液中に、冷却・攪拌下、具体的には10℃以下の温度、好ましくは5℃以下の温度、より好ましくは3℃〜5℃程度の温度条件下で、エピクロルヒドリンを添加し、この添加終了後、さらに室温条件下で反応が完結するまで攪拌を行うことにより実施される。
【0017】
この第1工程において、反応に使用するベンジルアミンとエピクロルヒドリンの使用量は、理論的には1モル対1モルであるが、エピクロルヒドリン1モル相当量に対してベンジルアミンを1.05モル以上の過剰量を使用することが好ましいものであることが判明した。
【0018】
また、ベンジルアミンに対するエピクロルヒドリンの添加は、上記した温度条件下で徐々に滴下するか、あるいは間歇的に添加するのがよい。間歇的に添加する場合には、例えば、添加すべきエピクロルヒドリンの総量を適当な割合に分割して、例えば30分ないし1時間程度の間隔で分割添加するのがよい。ベンジルアミンに対するエピクロルヒドリンの添加時間については特に制限されないが、全添加時間として約1.5時間ないし約4時間程度をかけて行うのがよいことが判明した。
【0019】
上記の低温条件下によるエピクロルヒドリンの反応液中への添加が終了したのち、反応混合物を室温、好ましくは20℃〜30℃程度、より好ましくは25℃前後の温度に戻し、かかる温度条件下にて、反応が完結するまで反応混合物を攪拌する。この第1工程におけるベンジルアミンに対するエピクロルヒドリンの添加に従い、反応溶液中には目的とする式(II)の化合物の結晶が、水に対して不溶性であるため、結晶として徐々に晶出してくるが、一般的には20時間程度攪拌を行うのがよい。
【0020】
かくして反応溶液中に晶出した結晶を濾取したのち、減圧乾燥に付し、目的とする式(II)で示される化合物の結晶を90〜95%以上の高収率で得ることができる。
【0021】
以上のようにして製造された式(II)の化合物の結晶を用い、これを閉環反応に付し、本発明の目的化合物である式(I)のN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンへ誘導する工程2は、具体的には、式(II)の化合物の結晶を、炭酸水素アルカリ金属塩とともに、有機溶媒中で加熱処理することにより実施される。
【0022】
当該閉環反応に使用される炭酸水素アルカリ金属塩としては、炭酸水素ナトリウムあるいは炭酸水素カリウムが挙げられるが、なかでも炭酸水素ナトリウムを用いるのがよい。その使用量としては、式(II)の化合物の結晶1モルに対して約2倍モル相当量以上を使用するのが好ましい。
【0023】
当該反応に使用し得る有機溶媒としては、反応に対して不活性な有機溶媒が挙げられ、例えば、アセトニトリル、t−ブタノールまたはジオキサン等が挙げられる。なかでも、バルキーな置換基を有するアルコール、または極性の有機溶媒が好ましく、なかでもアセトニトリル、ジオキサンが特に好ましい。
【0024】
したがって、特に好ましい反応手段としては、炭酸水素アルカリ金属塩として炭酸水素ナトリウムを用い、有機溶媒としてジオキサンまたはアセトニトリル中で行うのがよい。
【0025】
用いる有機溶媒の量は厳密に制限されるものではないが、比較的低濃度で反応を行うことが好ましく、例えば、反応液中における式(II)の化合物の濃度が5モル濃度以下、好ましくは2モル濃度以下、特に好ましくは1モル濃度以下となるよう調整される。
【0026】
当該閉環反応は、加熱条件下に行われ、特に用いる有機溶媒の沸点付近の温度条件下に加熱還流することにより行われる。また、反応時間は用いる有機溶媒により特に限定されるものではないが、好ましく使用されるジオキサンを用いた場合には、10ないし20時間程度加熱還流することで十分である。また、アセトニトリルを用いた場合には、5ないし15時間程度加熱還流することで十分である。なお、所望により攪拌操作を加えることも可能である。
【0027】
当該閉環反応が終了した後、反応溶液中に混在する炭酸水素アルカリ金属塩、ならびに反応の進行にしたがい生成したアルカリ金属塩化物等の不溶物を濾別したのち、濾液を適宜濃縮し、得られた残渣に適当な有機溶媒を加え、攪拌等の処理を行うことにより、式(I)で示されるN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンを、遊離の塩基の状態で結晶として単離することができる。
【0028】
また一方、閉環反応が終了した後得られた反応液を濾過して得た濾液中に、塩酸ガスを導入するか、あるいは反応に使用した少量の有機溶媒と塩化水素の混合溶媒を添加し、適宜攪拌することにより、目的とする本発明の式(I)で示されるN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンの塩酸塩を結晶として晶出させることもできる。
【0029】
かくして、本発明の式(I)で示されるN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンを高収率で結晶として製造することができる。
【0030】
このように製造された本発明の式(I)のN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンを医薬品へ応用する例として、例えばニューキノロン系合成抗菌剤の一つである1−(6−アミノ−3,5−ジフルオロピリジン−2−イル)−8−ブロモ−6−フルオロ−7−(3−メチルアミノアゼチジン−1−イル)−1,4−ジヒドロキノリン−3−カルボン酸の側鎖である3−メチルアミノ−アゼチジンがある。この化合物は、式(I)の化合物のヒドロキシル基を活性化した後、メチルアミノ基へ変換し、その後N−ベンジル基を接触還元等による適当な脱ベンジル化反応に付すことにより得ることができる。
【0031】
【発明の効果】
以上記載のように、本発明が提供する製造法によれば、ベンジルアミンならびにエピクロルヒドリンという工業試薬として極めて安価な化合物から、わずか2ステップという製造工程で、しかも特別高価な試薬あるいは溶媒を使用することなく、高収率で目的とする式(I)のN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンを製造することができる。
そのうえ、各ステップにおける目的物の単離は、反応溶液中から結晶として単離することができるものであり、その操作も簡便なものであることより、工業的製造方法として特に優れたものであることが理解される。
【0032】
【実施例】
以下に本発明を、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に包含される限り、種々の変更例が可能であり、かかる変更例も本発明の権利範囲に含まれるものである。
【0033】
実施例1
前記した第1工程の方法に従い、92.5g(1モル)のエピクロルヒドリンおよび112.5g(1.05モル)のベンジルアミンを用い、1Lの溶媒量中で、下記の条件により反応を行い、式(II)の化合物の結晶を、下記の表の右欄に示す収率で得た。
【0034】
【表1】
Figure 0004425366
【0035】
実施例2
前記した第2工程の方法に従い、化合物(II)を200g(1モル)用い、1Lの溶媒量中で、下記の条件で反応を行った。反応終了後、不溶物を濾別し、濾液から式(I)の塩酸塩を結晶として単離し、下記の表の右欄に示す収率で製造した。
【0036】
【表2】
Figure 0004425366
【0037】
比較例1
下記の条件で、前記実施例1と同様の用量を用いて反応を行った結果、下記の表の右欄に示す結果を得た。
【0038】
【表3】
Figure 0004425366
【0039】
比較例2
下記の条件で前記実施例2と同様の用量を用いて反応を行った結果、下記の表の右欄に示す結果を得た。
【0040】
【表4】
Figure 0004425366
【0041】
実施例3
化合物(II)22.9g(114.7mmol)と炭酸水素ナトリウム19.3g(229mmol)を、230mlのアセトニトリル中、6時間加熱還流を行った。次いで室温まで冷却した後、反応溶液を濾過し、不溶物を濾別し、濾液を減圧濃縮し無色油状物を得た。得られた残渣にヘプタン115mlを加え、攪拌し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾取し、乾燥し、目的とする化合物(I)の遊離結晶を17.9g(収率:95.8%)得た。
1H−NMR(CDCl3)δ:3.89−3.98(m,2H),3.57−3.63(m,4H),4.35−4.45(m,1H),7.20−7.35(m,5H).
【0042】
実施例4
化合物(II)643.7g(3.22mol)および炭酸水素ナトリウム542g(6.45mol)を、6.4Lのアセトニトリル中に加え、7時間加熱還流下に攪拌を行った。1日放冷後、析出した塩を吸引濾別し、得られた濾液を0.6kgまで減圧濃縮した。得られた残渣に酢酸エチル300mlを加え1時間攪拌をした後、さらにヘプタン3.2Lを加え、1時間攪拌し結晶を析出させた。析出した結晶を濾取し、酢酸エチル50mlおよびヘプタン450mlの混合液にて洗浄後、乾燥し、目的とする化合物(I)の遊離結晶を519.8g(純度:93.9%;収率:92.9%)得た。
1H−NMR(400MHz;CDCl3)δ:2.93−2.97(m,2H),3.59−3.63(4H,m),4.39−4.45(1H,m),7.23−7.33(5H,m).

Claims (10)

  1. ベンジルアミンを含有する反応水溶液中に、冷却・攪拌下にエピクロルヒドリンを添加して、添加終了後、さらに室温下で反応が完結するまで攪拌を行い、反応混合液中から晶出する次式(II):
    Figure 0004425366
    (式中、Bzlはベンジル基を表す。)
    で示される化合物の結晶を採取したのち、次いで、得られた式(II)で示される化合物の結晶を、アセトニトリル、t−ブタノールまたはジオキサンから選択される有機溶媒中で、式(II)の結晶1モル相当量に対して2モル相当量以上の炭酸水素アルカリ金属塩と加熱処理を行うことを特徴とする次式(I):
    Figure 0004425366
    (式中、Bzlはベンジル基を表す。)
    で示されるN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンの製造法。
  2. エピクロルヒドリン1モル相当量に対してベンジルアミンを1.05モル以上の過剰量を使用する請求項1に記載の製造法。
  3. ベンジルアミンの反応水溶液とエピクロルヒドリンとの反応を、10℃以下の温度で行う請求項1に記載の方法。
  4. 炭酸水素アルカリ金属塩が、炭酸水素カリウムまたは炭酸水素ナトリウムである請求項1に記載の製造法。
  5. 式(II)の化合物の結晶と、炭酸水素アルカリ金属塩との加熱を行う有機溶媒がジオキサンまたはアセトニトリルであり、炭酸水素アルカリ金属塩が炭酸水素ナトリウムである請求項1に記載の製造法。
  6. 式(II)の化合物の結晶と、炭酸水素アルカリ金属塩との加熱反応後、不溶物を濾別し、濾液に塩酸ガスを導入するか、または塩化水素含有の有機溶媒を添加することにより式(I)の化合物を塩酸塩の結晶として得る請求項1に記載の製造法。
  7. 次式(II):
    Figure 0004425366
    で示される化合物を、アセトニトリル、t−ブタノールまたはジオキサンから選択される有機溶媒中で、式(II)の化合物1モル相当量に対して2モル相当量以上の炭酸水素アルカリ金属塩と加熱処理を行うことを特徴とする次式(I):
    Figure 0004425366
    (式中、Bzlはベンジル基を表す。)
    で示されるN−ベンジル−3−ヒドロキシアゼチジンの製造法。
  8. 炭酸水素アルカリ金属塩が、炭酸水素カリウムまたは炭酸水素ナトリウムである請求項7に記載の製造法。
  9. 式(II)の化合物と炭酸水素アルカリ金属塩との加熱反応後、不溶物を濾別し、濾液に塩酸ガスを導入するか、または塩化水素含有の有機溶媒を添加することにより式(I)の化合物を塩酸塩の結晶として得る請求項7に記載の製造法。
  10. 結晶状態の式(II)の化合物を使用する請求項7乃至9のいずれかに記載の製造法。
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