JP4421067B2 - 熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物 - Google Patents

熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に関する。本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、その製造安定性に優れ、かつ表面平滑性に優れた成形品を与える。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性ポリウレタン樹脂は、高い弾性回復率を有し、耐摩耗性、耐熱性および耐寒性に優れており、通常のプラスチック成形加工法が適用できるため、射出成形および押出成形の材料として広範な分野で使用されている。熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法としては、高分子ジオール、有機ジイソシアナートおよび鎖伸長剤を混合して重合させることが好ましいことが知られている。熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ポリエステル系、ポリエーテル系およびポリカーボネート系のものが知られており、これらは、種々の特性を付与するために添加剤を配合した熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物として一般的には用いられる。
【0003】
熱可塑性ポリウレタン樹脂は難燃性でないために、難燃性が要求される用途においては難燃剤が配合されて使用されおり、ホース、チューブ分野などを中心に最近需要が高まっている。熱可塑性ポリウレタン樹脂の難燃化には、従来よりポリブロモジフェニルエーテルなどの臭素系難燃剤および酸化アンチモン等の無機金属化合物難燃助剤が必要性能に応じて適宜配合比を設定して用いられる。難燃性の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物としては、例えば、特開平8-241630号公報には、熱可塑性ポリウレタン樹脂に臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモンおよびリン化合物を配合してなる難燃性樹脂組成物が開示され、特開平8-302209号公報には、熱可塑性ポリウレタン樹脂に加熱膨張性黒鉛および三酸化アンチモンを配合した難燃性樹脂組成物が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの従来技術においては、熱可塑性ポリウレタン樹脂に平均粒径が小さい三酸化アンチモンを配合していることから、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を製造する際に、熱可塑性ポリウレタン樹脂が分解し、安定に熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を製造することができなかった。さらに、得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を用いて作製した成形品は、表面平滑性が悪く製品の外観を損ねるという問題があった。
【0005】
しかして、本発明の目的は、製造安定性に優れるとともに表面平滑性に優れた成形品を与える熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、上記の目的は熱可塑性ポリウレタン樹脂100重量部並びに平均粒径が2μm以上でありかつ粒径が15μm以上の成分および0.5μm以下の成分が各々5重量%未満である無機金属化合物1〜100重量部からなる熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を提供することによって達成される。
【0007】
本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂は、高分子ポリオール、有機ジイソシアナート、鎖伸長剤および必要に応じて他の成分などとともにワンショット法、プレポリマー法またはその他の方法を用いて反応させることにより製造することができる。
【0008】
高分子ポリオールとしては、平均分子量500〜5000、特に700〜4000の高分子ポリオールを使用するのが好ましい。高分子ポリオールとしてはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等を挙げることができ、これらのうちでもポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。これらの高分子ポリオールは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0009】
ポリエーテルポリオールの例としては、環状エーテル(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフランなど)の開環重合により得られるポリエーテルジオール、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなど)の重縮合により得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0010】
本発明におけるポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸、ポリオールおよび必要に応じて他の成分を用い、エステル化法またはエステル交換法による公知の重縮合法により製造することができる。
【0011】
ポリエステルポリオールの製造に用いるポリオールとしては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているものを用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの炭素数2〜15の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロオクタンジメタノールなどの脂環式ジオール;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族二価アルコールなどの1分子当たり水酸基を2個有するジオールおよびトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、1,2,6−ヘンサントリオール、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの1分子当たり水酸基を3個以上有するポリオールなどを挙げることができる。ポリエステルポリオールの製造に当たっては、これらのポリオールは単独で使用してもまたは2種以上使用してもよい。これらのうちでも、ポリエステルポリオールの製造に当たっては、2−メチル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオールなどのメチル基を側鎖として有する炭素数5〜12の脂肪族ジオールを用いるのが好ましい。
【0012】
ポリエステルポリオールの製造に用いるポリカルボン酸としては、ポリエステルの製造において一般的に使用されているポリカルボン酸を使用することができ、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、トリメチルアジピン酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸などの炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のポリカルボン酸;これらのエステル形成性誘導体などを挙げることができる。これらのポリカルボン酸は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらのうちでも、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸がより好ましく用いられる。
【0013】
ポリエステルポリオールを製造する際の重縮合反応は、触媒の存在下に行うことができ、その場合の触媒としてはチタン系触媒、スズ系触媒等が好ましく用いられる。チタン系触媒の例としては、チタン酸、テトラアルコキシチタン化合物、チタンアシレート化合物、チタンキレート化合物などを挙げることができ、より具体的には、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、テトラステアリルチタネート等のテトラアルコキシチタン化合物、ポリヒドロキシチタンステアレート、ポリイソプロポキシチタンステアレート等のチタンアシレート化合物、チタンアセチルアセテート、トリエタノールアミンチタネート、チタンアンモニウムラクテート、チタンエチルラクテート等のチタンキレート化合物などを挙げることができる。スズ系触媒の例としては、ジアルキルスズジアセテート、ジアルキルスズジラウレート、ジアルキルスズビスメルカプトカルボン酸エステル塩などを挙げることができ、より具体的にはジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸エトキシブチルエステル)塩などを挙げることができる。
【0014】
チタン系触媒を用いる場合にその使用量は、各々の状況に応じて調節でき特に制限されないが、一般に、ポリエステルポリオールの製造に用いる反応成分の全重量に基づいて、0.1〜50ppmであるのが好ましく、1〜30ppmであるのがより好ましい。また、スズ系触媒を用いる場合にその使用量は、各々の状況に応じて調節でき特に制限されないが、一般に、ポリエステルポリオールの製造に用いる反応成分の全重量に基づいて、1〜200ppmであるのが好ましく、5〜100ppmであるのがより好ましい。
【0015】
チタン系触媒を用いて製造されたポリエステルポリオールでは、ポリエステルポリオール中に含まれるチタン触媒を失活させておくことが必要であり、失活されていないチタン系触媒を含むポリエステルポリオールを用いて熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造すると、熱可塑性ポリウレタン樹脂の耐熱性などの特性が劣ったものになる。
【0016】
ポリエステルポリオール中に含まれるチタン系触媒の失活方法としては、例えば、(1)ポリエステルポリオールを加熱下に水と接触させる方法;(2)ポリエステルポリオールをリン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステルなどのリン化合物で処理する方法などを挙げることができる。そして、水と接触させる前記(1)の方法による場合は、例えば、ポリエステルポリオールに水を1重量%以上添加して、70〜150℃、好ましくは90〜130℃の温度で1〜3時間程度加熱すればよい。そして、その際の加熱による失活処理は、常圧下で行っても加圧下で行ってもよい。失活処理後に系を減圧にすると、失活に用いた水分をポリエステルポリオールから円滑に除去することができる。
【0017】
本発明に用いられるポリカーボネートポリオールとしては、低分子ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるものを使用することができる。ポリカーボネートジオールを構成する低分子ポリオールとしては、ポリエステルポリオールの構成成分として先に例示したポリオールを用いることができる。ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを挙げることができる。アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネートなどを挙げることができ、ジアリールカーボネートとしては、ジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0018】
また、ポリエステルポリカーボネートポリオールとしては、例えば低分子ポリオール、ポリカルボン酸およびカーボネート化合物を同時に反応させて得られるもの、予め上記した方法によりポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールをそれぞれ合成し、次いでそれらをカーボネート化合物と反応させるかまたは低分子ポリオールおよびポリカルボン酸と反応させて得られたものを使用することができる。
【0019】
本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造に用いられる有機ジイソシアナートとしては、通常の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造に従来から使用されている有機ジイソシアナートのいずれを使用してもよく、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、フェニレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、1,5−ナフチレンジイソシアナート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、トルイレンジイソシアナート等の芳香族ジイソシアナート;ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、水素化キシリレンジイソシアナート等の脂肪族または脂環式ジイソシアナートなどを挙げることができる。これらの有機ジイソシアナートは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナートを用いるのが好ましい。また、トリフェニルメタントリイソシアナートなどの3官能以上のポリイソシアナート化合物を必要に応じて少量添加してもよい。
【0020】
本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造に用いられる鎖伸長剤としては、通常の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造に従来から使用されている鎖伸長剤のいずれを使用してもよく、イソシアナート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。該低分子化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコール等のジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコール等のアミノアルコール類などが挙げられる。これらの低分子化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。これらの中でも、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、耐熱性、耐熱水性に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂を得る観点から、1,4−ブタンジオールを用いるのがより好ましい。
【0021】
本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法としては、上記の高分子ポリオール、有機ジイソシアナート、鎖伸長剤および必要に応じて他の成分を使用して、従来から用いられている方法のいずれもが使用できる。例えば溶融重合、溶液重合などの公知のウレタン化反応技術を利用して、プレポリマー法、ワンショット法などの方法で製造することができる。なかでも、実質的に溶媒の存在しない条件下で溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造するのが、重合を簡単にかつ円滑に行うことができる点から好ましく、特にその溶融重合を多軸スクリュー型押出機を用いる連続溶融重合法によって行うと、生産性が高くなりより好ましい。また、熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造に当たっては、スズ系ウレタン化触媒を用いてポリウレタン形成反応を行うことができ、特に、熱可塑性ポリウレタン樹脂原料の合計重量に基づいて、スズ系ウレタン化触媒をスズ原子に換算して0.5〜50ppmの割合で用いてポリウレタンを製造すると分子量の高い熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造することができる。その際のスズ系ウレタン化触媒としては、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビス(3−メルカプトプロピオン酸エトキシブチルエステル)塩などを挙げることができる。
【0022】
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、平均粒径が2μm以上でありかつ粒径が15μm以上の成分および0.5μm以下の成分が各々5重量%未満である無機金属化合物を含有する。該無機金属化合物としては、平均粒径が3μm以上でありかつ粒径が15μm以上の成分および0.5μm以下の成分が各々3重量%未満であるものが好ましく、平均粒径が3μm以上でありかつ粒径が15μm以上の成分および0.5μm以下の成分が各々2重量%未満であるものがより好ましい。また、難燃性の観点から、平均粒径は12μm以下であるのが好ましく、10μm以下であるのがより好ましい。平均粒径が2μm未満であると、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を製造するに際に、熱可塑性ポリウレタン樹脂の分解が顕著になり、生産安定性が低下する。また、粒径が15μm以上の成分の含有量が5重量%以上になると、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物からなる成形品の表面粗度が大きくなって表面平滑性が悪化し、光沢がなくなって外観が損なわれる。一方、粒径が0.5μm以下の成分の含有量が5重量%以上になると、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を製造する際に、熱可塑性ポリウレタン樹脂の分解が顕著になり、生産安定性が低下する。なお、無機金属化合物の粒径はレーザー回折法、湿式フルイ法などにより測定することができる。
【0023】
上記の無機金属化合物としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン等のアンチモン系無機金属化合物が挙げられる。これらの中でも、三酸化アンチモンがより好ましい。
【0024】
上記の無機金属化合物の配合量は、熱可塑性ポリウレタン樹脂100重量部に対して1〜100重量部であり、難燃性と機械的特性の観点から、5〜50重量部であるのが好ましい。
【0025】
上記した熱可塑性ポリウレタン樹脂および無機金属化合物からなる本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物に難燃剤を配合すると、難燃性を付与することができる。難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテル、臭素化ポリスチレン等のハロゲン系難燃剤;トリフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルフォスフェート等のリン系難燃剤;加熱膨張性黒鉛などが挙げられる。難燃剤の配合量としては熱可塑性ポリウレタン樹脂100重量部に対して、5〜50重量部であるのが好ましく、10〜40重量部であるのがより好ましい。
難燃剤が配合された本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物においては、上記の無機金属化合物は、難燃剤と併用することにより難燃効果を高める難燃助剤として作用する。
【0026】
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、熱可塑性ポリウレタン樹脂の重合過程または重合後に、上記した無機金属化合物並びに必要に応じて、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を製造する際に通常使用されている熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、着色剤、加水分解防止剤、結晶核剤、耐候性改良剤、防黴剤、EB架橋剤などの各種添加剤、ポリオレフィン樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などの他樹脂を適宜加えることにより製造することができる。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例においては、無機金属化合物として表1に示す酸化アンチモンを用いた。
【0028】
【表1】
Figure 0004421067
【0029】
実施例1
3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸とから重縮合によって得られた分子量1500の高分子ジオール61重量部、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート31重量部および1,4−ブタンジオール8重量部から得られた200℃における溶融粘度が8,000poiseの熱可塑性ポリウレタン(TPU−A)100重量部に対し、表1に示す三酸化アンチモンAおよびデカブロモジフェニルエーテルを表2に記載した割合で、バレル温度を原料供給口のC1ゾーンから先端部のC3ゾーンにかけて順に200℃、220℃、220℃、ダイスは210℃に設定した直径25mm、L/D=25の単軸押出機((株)プラスチック工学研究所製)によって混合し、本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を製造した。この際、当該組成物の製造において、ダイス付近からの発煙がなく、ストランドの引取安定性も良好であり、製造は安定していた。
【0030】
さらに、本発明における熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物の表面平滑性を評価するために、上記で得た熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を80℃で除湿乾燥し、チューブ成形用ダイスに変更した他は上記と同じ押出機を用い、バレル温度をC1ゾーンからC3ゾーンにかけて順に180℃、190℃、200℃とし、ダイス温度を190℃として、外径6mmのチューブを作製した。その表面状態(外観)を肉眼で判定したところ、光沢がありかつ表面の凹凸もなく表面平滑性に優れたものであった。
【0031】
また、難燃性の評価をUL94の垂直燃焼性試験に従って行った。試験は、上記で得た熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物を射出成形することで作製した厚さ3mmの試験片を用いて実施した。その結果は良好な難燃性を示すものであった。
【0032】
実施例2〜4
用いる酸化アンチモンの種類を表2に示すように変更した他は実施例1と同様にして、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、それからなるチューブおよび難燃性試験用試験片を作製した。結果は表2に示すように製造安定性、表面平滑性および難燃性に優れたものであった。
【0033】
実施例5
分子量1000のポリテトラメチレングリコール60重量部、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート33重量部および1,4−ブタンジオール7重量部から得られた200℃における溶融粘度が7000poiseの熱可塑性ポリウレタン(TPU−B)100重量部を用いた他は実施例1と同様にして、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、それからなるチューブおよび難燃性試験用試験片を作製した。結果は表2に示すように製造安定性、表面平滑性および難燃性に優れたものであった。
【0034】
比較例1〜4
用いる酸化アンチモンの種類を表2に示すように変更した他は実施例1と同様にして、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、それからなるチューブおよび難燃性試験用試験片を作製した。その結果、比較例1においてはチューブ外観を観察したところ、光沢がなく表面が粗面化しており、表面平滑性が不満足であった。また、比較例2および4においては、押出機ダイスから吐出した直後の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物が発泡して白煙を発生すると同時に、ストランドの引き取り性が悪化して製造性が不安定となった。さらに、比較例3においては、製造安定性については比較例2および4と同様に、さらに表面平滑性については比較例1と同様に、製造安定性および表面平滑性のいずれもが不満足であった。
【0035】
【表2】
Figure 0004421067
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、製造安定性に優れるとともに表面平滑性に優れた成形品を与える熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物が提供される。

Claims (2)

  1. 熱可塑性ポリウレタン樹脂100重量部並びに平均粒径が2μm以上でありかつ粒径が15μm以上の成分および0.5μm以下の成分が各々5重量%未満である無機金属化合物1〜100重量部からなる熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物であって、前記無機金属化合物が三酸化アンチモンまたは四酸化アンチモンである、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
  2. 熱可塑性ポリウレタン樹脂100重量部に対して、難燃剤5〜50重量部を含有してなる請求項1記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
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