JP4419362B2 - インクジェット記録用インクセット、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用インクセット、及びインクジェット記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ノズル、スリットあるいは多孔質フィルム等のインク吐出口から液体あるいは溶融固体等のインクを吐出する、いわゆるインクジェット方式は、小型で、安価である等の特徴から、多くのプリンターに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、あるいは、熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用した熱インクジェット方式等が高解像度、高速印字性などの観点から多く利用されている。また、インクジェットプリンターは、普通紙、インクジェット専用紙等のいわゆる紙に印字されるだけでなく、OHPシート等のフィルムあるいは布等に対しても印字することができる。
【0003】
現在、インクジェットプリンターでは高速化及び高画質化が重要な課題の一つとして挙げられている。その高速化、高画質化を達成する手段の一つとして、インク以外の液体組成物等を使用する方法が知られている。例えば、特許登録2667401号等では、カチオン性基を有する化合物を含む液体を記録媒体上に付着させた後、その液体が記録媒体に浸透し、媒体中に存在し、かつ、媒体表面から無くなった直後に、アニオン染料を含むインクを付着させて画像を形成する方法が公開されている。これは、印字後の画像の乾燥性、耐水性、耐光性だけでなく、解像度、鮮明性、シャープネス、画像濃度等の高画質化、ノズル目詰り等のプリンターの信頼性を目的にしている。
【0004】
また、特開平09−207424号公報、特開平09−234943号公報などにおいて、多価金属塩を含有する第一液及び顔料、水溶性樹脂等を含有するインクを印字するインクジェット記録方法が開示されている。但し、この方法では、噴射安定性が低下する場合が存在した。このメカニズムは明確となっていないが、インク中に遊離している水溶性樹脂が、インクのレオロジーの面で、噴射に悪影響を与えているものと推定している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、光学濃度、滲み、色間滲み、乾燥時間に優れたインクジェット記録用インクセット、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
(1)少なくとも色材、水溶性溶媒、及び水を含むインクと、該インクを凝集させる作用を有する液体組成物と、を含んで構成されるインクジェット記録用インクセットにおいて、
(i)前記インクのγ/η(γ:表面張力(mN/m)、η:粘度(mPa・s)が5以上30以下で、且つ前記インクの表面張力γが27.5mN/m以上37.5mN/m未満、
(ii)前記液体組成物のγ/η(γ:表面張力(mN/m)、η:粘度(mPa・s)が5以上40以下、
(iii)前記インクの記録媒体上における初期接触角が75度以上、
であることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。
【0007】
(2)前記色材が顔料であり、該顔料が高分子分散剤により分散されていることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0008】
(3)前記色材が、水に自己分散可能な顔料であることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0009】
(4)前記液体組成物中に多価金属塩が含まれていることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0010】
(5)前記インク及び/又は前記液体組成物中に界面活性剤が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0011】
(6)前記インク及び前記液体組成物の混合液中の5μm以上の粗粒数が、1×10 4 個/μl以上であることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0012】
(7)前記インク及び前記液体組成物の混合液の普通紙に対する接触角の時間変化率が、5度/秒以上であることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0013】
(8)前記液体組成物の表面張力が、20mN/m以上45mN/m未満であることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0014】
(9)前記インク及び/又は液体組成物の粘度が、1.2mPa・s以上6.0mPa・s未満であることを特徴とする前記(1)に記載のインクジェット記録用インクセット。
【0015】
(10)少なくとも顔料、水溶性溶媒、及び水を含むインクと、該インクを凝集させる作用を有する液体組成物と、を含んで構成されるインクジェット記録用インクセットを用い、前記インク及び前記液体組成物を記録媒体上に付与して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
(i)前記インクのγ/η(γ:表面張力(mN/m)、η:粘度(mPa・s)が5以上30以下で、且つ前記インクの表面張力γが27.5mN/m以上37.5mN/m未満、
(ii)前記液体組成物のγ/η(γ:表面張力(mN/m)、η:粘度(mPa・s)が5以上40以下、
(iii)前記インクの記録媒体上における初期接触角が75度以上、
であることを特徴とするインクジェット記録方法。
【0016】
(11)前記色材が顔料であり、該顔料が高分子分散剤により分散されていることを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0017】
(12)前記色材が、水に自己分散可能な顔料であることを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0018】
(13)前記液体組成物中に多価金属塩が含まれていることを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0019】
(14)前記インク及び/又は前記液体組成物中に界面活性剤が含まれていることを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0020】
(15)前記インク及び前記液体組成物の混合液中の5μm以上の粗粒数が、1×10 4 個/μl以上であることを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0021】
(16)前記インク及び前記液体組成物の混合液の普通紙に対する接触角の時間変化率が、5度/秒以上であることを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0022】
(17)前記液体組成物の表面張力が、20mN/m以上45mN/m未満であることを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0023】
(18)前記インク及び/又は液体組成物の粘度が、1.2mPa・s以上6.0mPa・s未満であることを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0024】
(19)熱インクジェット方式を用いてインク及び前記液体組成物を記録媒体上に付与することを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0025】
(20)前記インクを1ドロップ当たり25ng以下で記録媒体に付与することを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0026】
(21)前記記録媒体に対し、前記液体組成物を付与した後に、前記インクを付与することを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0027】
(22)前記記録媒体に対し、前記インクを付与した後に、前記液体組成物インクを付与することを特徴とする前記(10)に記載のインクジェット記録方法。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用インクセットは、少なくとも色材、水溶性溶媒、及び水を含むインクと、該インクを凝集させる作用を有する液体組成物と、を含んで構成され、下記(i)〜(iii)の条件を満たすものである。
(i)前記インクのγ/η(γ:表面張力(mN/m)、η:粘度(mPa・s)が5以上30以下で、且つ前記インクの表面張力γが27.5mN/m以上37.5mN/m未満、
(ii)前記液体組成物のγ/η(γ:表面張力(mN/m)、η:粘度(mPa・s)が5以上40以下、
(iii)前記インクの記録媒体上における初期接触角が75度以上、
【0029】
このような構成の本発明のインクジェット記録用インクセットを用いて、印字することで、光学濃度、滲み、色間滲み、乾燥時間に優れた画像を得ることができる。このメカニズムについては明確とはなっていないが、主に色材の凝集性および記録媒体へのインクの拡散性によるものであると推測している。
【0030】
まず、色材の凝集性と各種特性との関係について説明する。
一般的に、光学濃度は、記録媒体表面の色材濃度に比例する傾向にあると考えられる。本発明では、インクと液体組成物混合時に色材を凝集させるため、色材が記録媒体表面近傍に高密度で存在し、光学濃度が高くなると考えられる。
また、一般的に、滲みは、色材の紙表面方向へのインクの広がりに関係していると考えられる。本発明では、インクと液体組成物混合に色材を凝集させ、インク中の色材が液体成分から分離させるため、色材の記録媒体への拡散が抑制される。この結果、滲みが改善されると考えられる。
また、一般的に、色間滲みは、異なる色のインクが記録媒体上で接触し、混合(混色)することに起因すると考えられる。本発明では、インクと液体組成物混合時に色材を凝集させるため、異なる色を接触させて印字しても色材の混合(混色)が発生しにくくなる。この結果、色間滲みが改善されるものと考えられる。
【0031】
次に、記録媒体へのインクの拡散性と各種特性との関係について説明する。ここで、記録媒体へのインクの拡散性とは、インクの記録媒体表面方向への広がり、および、記録媒体深さ方向へのインクの浸透を示す。
一般的に、インク等の液体の紙への浸透現象を表すものとして、下記式(1)で示されるLucas−Washburnの式が知られている。
【0032】
【数1】
【0033】
式(1)において、hは液体が紙へ浸透する深さ、γは液体の表面張力、rは紙の毛細管の平均半径、tは浸透時間、θは液体と紙面との接触角、ηは液体の粘度である。このLucas−Washburnの式によれば、同じ紙を使用した場合の一定時間後の浸透深さhは、上式のr及びtを一定と見なすことができるため、γcosθ/ηの値で表されることになる。このように、液体の記録媒体への浸透性はγ、η、θで表すことが可能と考えられる。但し、γcosθの項に関して、θの影響も大きいと考えられるが、実際の系では、θは記録媒体への浸透に伴い経時で変化するため、この式を適用することは困難である。
【0034】
このようなことを鑑み、鋭意検討を行った結果、インクおよび液体組成物のγ/η値、並びに、インクの記録媒体上における初期接触角を用いることで、記録媒体への拡散性が規定されることが明らかとなり、更に、前述した凝集性と記録媒体への拡散性を適切に調整することで本発明の効果が得られることが判明した。
【0035】
まず、液体組成物のγ/η値と印字特性との関係について説明する。液体組成物のγ/η値が大きい場合、記録媒体中への浸透性が低下するため、乾燥時間が遅くなる場合が存在する。また、液体組成物の紙表面方向への広がりが小さくなるため、インクと液体組成物が接触しない部分が生じ、光学濃度、滲み等にバラツキが発生する場合も存在する。一方、液体組成物のγ/η値が小さい場合には、記録媒体への浸透性が向上し、更に、記録媒体上の単位面積あたりの液体組成物密度が低くなる。この結果、光学濃度の低下、滲みの悪化等が発生する場合がある。
【0036】
次に、インクのγ/η値と印字特性との関係について説明する。インクのγ/η値が大きい場合、記録媒体中へのインクの浸透性が低下するため、乾燥時間が遅くなる場合がある。一方、インクのγ/η値が小さい場合には、インクの記録媒体への拡散性が向上する。従って、インクの凝集性の効果よりも、インクの記録媒体への拡散性が大きい場合、光学濃度の低下、滲みの悪化が発生する場合があり、一方、インクの記録媒体上での初期接触角により、インクの記録媒体表面方向への広がりが規定される。そのため、滲み、色間滲みの少ない画像を得ることが可能となる。
【0037】
以上説明したように、インク及び液体組成物からなるインクセットを用いて印字する場合、記録媒体上にインク及び液体組成物を付与(吐出)して画像を記録するが、この際、インク及び液体組成物とは混合され、液体組成物により、インク中の色材は凝集されてインク画像が記録される。表面張力をγ(mN/m)、粘度をη(mPa・s)と表したとき、インクおよび液体組成物のγ/η値、及び、インクの記録媒体上での初期接触角が重要であり、これらの値を特定の範囲とすることで、記録媒体へのインクの拡散、即ち、記録媒体(例えば紙)中へのインクの浸透や、記録媒体(例えば紙)紙表面へのインクの広がりを適切に調整することが可能となる。この色材の凝集性とインクの記録媒体への拡散性を適切に調整することで、画質(光学濃度、滲み、色間滲み)及び乾燥時間が改善されると考えられる。
【0038】
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいて、インクのγ/ηは5以上30以下であるが、好ましくは5以上25以下、より好ましくは7以上20以下である。インクのγ/ηが5未満の場合、光学濃度が低下し、滲みが激しくなる。逆に、30を超える場合には乾燥時間が遅くなる。
一方、液体組成物のγ/ηは5以上40以下であるが、より好ましくは5以上35以下、更に好ましくは7以上30以下である。液体組成物のγ/ηが5未満の場合、光学濃度が低下し、滲みが激しくなる。逆に、30を超える場合には乾燥時間が遅くなる。
【0039】
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいて、インクの記録媒体上における初期接触角は75度以上であるが、好ましくは80度以上、より好ましくは、90度以上110度以下である。インクの記録媒体上における初期接触角が75度未満の場合には光学濃度が低下し、滲みが激しくなる。
【0040】
インクの記録媒体上における初期接触角は、インク及び液体組成物の表面張力、粘度、及び、インクと液体組成物混合時の凝集性などの要因によって決定される。従って、この値を調整するためには、インク及び液体組成物に添加する界面活性剤、溶媒、更には、液体組成物に添加する凝集剤、インクに添加する色材、高分子物質などの種類、及び、添加量によって決まるものである。
【0041】
ここで、インクの記録媒体上における初期接触角とは、FIBRO 1100DAT MK II(FIBRO system社製)装置を用いて測定された、普通紙に対するインクの接触角を指す。尚、インク4.0μlを普通紙上にセットした時の接触角を測定し、インク滴下後0.1秒時点での接触角をインクの記録媒体上における初期接触角として用いた。インク滴下後0.1秒時点で測定不可能であったものに関しては、測定可能となった最短時間における接触角を用いた。また、記録媒体としては、FX−P紙(富士ゼロックス製)を用いる。さらに、液体組成物を先に印字するインクジェット記録方法を用いる場合には、FX−P紙に対し液体組成物を付与した紙に対する接触角を測定する。
【0042】
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいて、インク及び/又は液体組成物の表面張力は、20mN/m以上45mN/m未満であることが好ましく、より好ましくは、25mN以上40mN/m未満であり、更に好ましくは、27.5mN/m以上37.5mN/m未満である。但し、インクの表面張力は、27.5mN/m以上37.5mN/m未満である。この表面張力が20mN/m未満となると浸透性が速くなり、印字順による色ムラ、光学濃度、滲みが悪化する場合がある。逆に、40mN/mを超えると浸透性が遅くなり、ベタ部濃度ムラが発生する場合がある。
【0043】
ここで、表面張力は、23℃、55%RHの環境において、表面張力計(CVBP−Z/協和界面化学(株)製)を用いて測定することができる。
【0044】
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいて、インク及び/又は液体組成物の粘度は、1.2mPa・s以上6.0mPa・s未満であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上4.5mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.0mPa・s未満である。インク及び/又は液体組成物の粘度が6.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下し、信頼性が低下する場合が存在した。一方、インク及び液体組成物の粘度が1.2mPa・sより小さい場合には、十分な光学濃度を得ることができないことがある。これは、普通紙への浸透力が大きくなり、色材が普通紙内部に浸透するためであると考えられる。
【0045】
ここで、粘度は、TVE−20L(東機産業(株)製)を測定装置として用いて測定することができる。このとき、測定条件としては、測定温度23℃、せん断速度は750s-1とした。
【0046】
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいて、インク及び液体組成物混合液中の5μm以上の粗粒数は、1×103個/μL以上であることが好ましく、より好ましくは5×103個/μL以上であり、更に好ましくは1×104個/μL以上である。インク及び液体組成物混合液中の5μm以上の粗粒数が1×103個/μL未満である場合には、印字順による色ムラ、光学濃度、滲みで改善効果が低下することがある。
【0047】
ここで、インク及び液体組成物の混合液中の5μm以上の粗粒数は、インクと液体組成物を質量比で1:1の割合で混合し、撹拌しながら混合液2μLを採取し、AccusizerTM 770 Optical Particle Sizer (Particle Sizing Systems社製)を用いて測定した。測定時のパラメータとして、分散粒子の密度には色材の密度を入力した。この色材の密度は、顔料分散液を加熱、乾燥させることによって得られた色材紛体を比重計、または比重ビン等を用いて測定することにより求めることができるる。
【0048】
尚、本発明において、インクを凝集させる作用を有する液体組成物とは、インクと液体組成物の質量比で1:1で混合した時に、5μm以上の粒子数が1×103個/μL以上であることが好適である。
【0049】
本発明のインクジェット記録用インクセットにおいて、インク及び液体組成物の混合液の普通紙に対する接触角時間変化率(動的接触角)は、5度/秒以上であることが好ましく、より好ましくは5〜10度/秒、更に好ましくは5〜8度/秒である。インク及び液体組成物混合液の接触角時間変化率が5度/秒未満の場合には、インク乾燥時間が長くなる場合が存在する。
【0050】
ここで、インク及び液体組成物の混合液の普通紙に対する接触角時間変化率は、以下の測定条件に従って測定した。即ち、インクと液体組成物を質量比で1:1の割合で混合した混合液を用い、この混合液4.0μLのP紙(富士ゼロックス社製)に対する接触角の時間変化を、FIBRO 1100 DAT MKII(FIBRO system社製)装置を用いて測定した。
【0051】
なお、本発明においては、測定開始から1秒までの接触角の変化量を測定時間(1秒)で除した値を接触角の時間変化率として用いた。尚、接触角の時間変化率が大きく、測定時間が1秒未満に終了したものについては、終了時点までの接触角の時間変化率を用いた。
【0052】
インクについて説明する。
インクは、少なくとも色材、水溶性溶媒、及び水を含むで構成される。
色材としては、顔料、染料のいずれも使用できる。
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料では、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色または淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用しても良い。また、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0053】
顔料として具体例には、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060(以上コロンビアン・カーボン社製)、
Regal400R,Regal330R,Regal660R,MogulL,Black Pearls L,Monarch700,Monarch800,Monarch880,Monarch900,Monarch1000,Monarch1100,Monarch1300,Monarch1400(以上キャボット社製)、
Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex 140U,Printex 140V,SpecialBlack 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black 4(以上デグッサ社製)、
No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)
等を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
また、シアン色にはC.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
マゼンタ色には、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−184,−202等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
黄色には、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
顔料として水に自己分散可能な顔料を用いることもできる。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤の存在がなくとも水中で安定に分散する顔料のことである。具体的には、例えば、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
【0056】
この「水に自己分散可能な顔料」であるか否かを判断する基準として、以下の基準を用いた。即ち、水95質量部と顔料5質量部とを加え、超音波ホモジナイザーを用いて分散させ、この分散液をガラス瓶中で1日放置する。該分散液について、放置前及び放置後に、上から3分の1の体積量の分散液の顔料濃度を測定する。放置後の顔料濃度が放置前の顔料濃度の98%以上であるものを「水に自己分散可能な顔料」であると判断する。
【0057】
水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、IJX−253、IJX−266、IJX−444、IJX−273、IJX−55、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用できる。
【0058】
顔料として、水に自己分散可能な顔料を用いた場合、長期保存性等の項目で優れる結果が得られる傾向がある。これは、水に自己分散可能な顔料は、他の添加剤による影響を受け難いためであると考えている。また、顔料として水に自己分散可能な顔料を用いる場合には、インク中に高分子分散剤などの高分子物質を含んでも構わない。
【0059】
一方、染料としては、水溶性染料、分散染料のいずれでも構わない。水溶性染料の具体例としては、C.I.Direct Black−2,−4,−9,−11,−17,−19,−22,−32,−80,−151,−154,−168,−171,−194,−195、C.I.Direct Blue−1,−2,−6,−8,−22,−34,−70,−71,−76,−78,−86,−112,−142,−165,−199,−200,−201,−202,−203,−207,−218,−236,−287,−307、C.I.Direct Red−1,−2,−4,−8,−9,−11,−13,−15,−20,−28,−31,−33,−37,−39,−51,−59,−62,−63,−73,−75,−80,−81,−83,−87,−90,−94,−95,−99,−101,−110,−189,−227、C.I.DirectYellow−1,−2,−4,−8,−11,−12,−26,−27,−28,−33,−34,−41,−44,−48,−58,−86,−87,−88,−132,−135,−142,−144,−173、C.I.FoodBlack−1,−2、C.I.Acid Black−1,−2,−7,−16,−24,−26,−28,−31,−48,−52,−63,−107,−112,−118,−119,−121,−156,−172,−194,−208、C.I.Acid Blue−1,−7,−9,−15,−22,−23,−27,−29,−40,−43,−55,−59,−62,−78,−80,−81,−83,−90,−102,−104,−111,−185,−249,−254、C.I.Acid Red−1,−4,−8,−13,−14,−15,−18,−21,−26,−35,−37,−52,−110,−144,−180,−249,−257,−289、C.I.Acid Yellow−1,−3,−4,−7,−11,−12,−13,−14,−18,−19,−23,−25,−34,−38,−41,−42,−44,−53,−55,−61,−71,−76,−78,−79,−122などが挙げられる。
【0060】
分散染料の具体例としては、C.I.Disperse Yellow−3,−5,−7,−8,−42,−54,−64,−79,−82,−83,−93,−100,−119,−122,−126,−160,−184:1,−186,−198,−204,−224、C.I.Disperse Orange−13,−29,−31:1,−33,−49,−54,−66,−73,−119,−163、C.I.Disperse Red−1,−4,−11,−17,−19,−54,−60,−72,−73,−86,−92,−93,−126,−127,−135,−145,−154,−164,−167:1,−177,−181,−207,−239,−240,−258,−278,−283,−311,−343,−348,−356,−362,C.I.Disperse Violet−33、C.I.Disperse Blue−14、−26,−56,−60,−73,−87,−128,−143,−154,−165,−165:1,−176,−183,−185,−201,−214,−224,−257,−287,−354,−365,−368、C.I.Disperse Green−6:1,−9などが挙げられる。
【0061】
色材は、インク質量に対し0.5から20質量%、好ましくは1から10質量%の範囲で使用される。インク中の色材量が0.5質量%未満の場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、色材量が20質量%よりも多い場合には、インクの噴射特性が不安定となる場合が存在した。
【0062】
インクには、顔料を分散させるために高分子分散剤を添加しても構わない。また、水に自己分散可能な顔料を用いた場合の高分子物質として、高分子分散剤を添加することもできる。高分子分散剤としては、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物等が使用でき、例えば、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体等が使用できる。
【0063】
具体的には、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0064】
上記α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独若しくは複数を共重合して得られる共重合体が高分子分散剤として使用される。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0065】
高分子分散剤は、重量平均分子量で2000〜15000のものが好ましい。高分子分散剤の分子量が2000未満の場合、顔料が安定に分散しない場合が存在し、一方、分子量が15000を超える場合には、インクの粘度が高くなり、吐出性が悪化する場合が存在した。より好ましい重量平均分子量は、3500〜10000である。
【0066】
高分子分散剤は、インクに対して0.1〜3質量%の範囲で添加されることが好適である。この添加量が3質量%を超える場合には、インク粘度が高くなり、インクの噴射特性が不安定となる場合が存在した。一方、添加量が0.1質量%未満の場合には、顔料の分散安定性が低下する場合が存在した。高分子分散剤としての添加量としてより好ましくは0.15〜2.5質量%であり、更に好ましくは、0.2〜2質量%である。
【0067】
インクに含まれる水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が挙げられる。具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることも出来る。
【0068】
水溶性有機溶媒は、少なくとも1種類以上使用することが好ましい。水溶性有機溶媒の含有量としては、1〜60質量%、好ましくは、5〜40質量%で使用される。インク中の水溶性有機溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、インク粘度が大きくなり、インクの噴射特性が不安定になる場合が存在した。
【0069】
インクには、界面活性剤を含ましても構わない。界面活性剤としては、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等を使用することが出来、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等のいずれを使用しても構わない。又、上記高分子分散剤を界面活性剤として使用することもできる。
【0070】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩およびスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が挙げられ、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ケリルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等も有効に使用される。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、脂肪族アルカノールアミド、グリセリンエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用できる。
【0071】
これらの中でも、顔料の分散安定性という観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。また、浸透性制御の観点より、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が特に好ましい。
【0072】
界面活性剤の添加量は、インクに対して10質量%未満であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、更に好ましくは0.01〜3質量%の範囲で使用される。添加量が10質量%以上の場合には、光学濃度、及び、顔料インクの保存安定性が悪化する場合が存在した。
【0073】
インクには、その他、インク吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション等のポリマーエマルション、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド等を用いることができる。また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することが出来る。
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等も添加することができる。
【0074】
インクを凝集させる作用を有する液体組成物について説明する。
液体組成物としては、インク中の特定成分と反応し、水難溶性の生成物を生じさせる化合物を含むものであれば構わない。さらにアニオン性基を有する色材を含有するインクに対しては、液体組成物中に電解質又はカチオン性化合物等を含有させても構わない。本発明において有効に用いられる電解質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、および、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
【0075】
具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等のアルカリ金属類の塩、および、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
【0076】
一方、カチオン性化合物としては、1級、2級、3級および4級アミンおよびそれらの塩等が挙げられる。具体例としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩、ポリアミン等が挙げられ、例えば、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、ジプロピルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体等が挙げられる。
【0077】
好ましい電解質としては、硫酸アルミニウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸スズ、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸アルミニウム、モノアリルアミン重合体、ジアリルアミン重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体等が挙げられる。
【0078】
一方、表面にカチオン性基を有する色材を含有するインクに対しては、液体組成物中にアニオン性化合物等を含有させても構わない。本発明において有効に用いられるアニオン化合物としては、有機カルボン酸または有機スルホン酸、およびそれらの塩等が挙げられる。具体的には、有機カルボン酸としては、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等が挙げられ、これらの基本構造を複数個有するオリゴマー、ポリマーでも構わない。また、有機スルホン酸としては、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の化合物が挙げられ、これら基本構造を複数個有するオリゴマー、ポリマーでも構わない。
【0079】
液体組成物には、上記化合物を単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、液体組成物中の上記化合物含有量としては、0.1〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%で使用される。
【0080】
液体組成物には、インクと同様に界面活性剤を含ましても構わない。この界面活性剤については、上述したものと同様なものが挙げられる。
【0081】
(インクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明のインクジェット記録用インクセットを用い、インク及び前記液体組成物を記録媒体上に付与(吐出)して画像を記録する。当該方法では、記録媒体に対し、液体組成物を付与した後にインクを付与してもよいし、記録媒体に対しインクを付与した後に液体組成物を付与してもよい。ここで、インクと液体組成物は、質量比でインク1に対して液体組成物を0.1〜2の範囲で付与することが好ましい
【0082】
本発明のインクジェット記録方法は、1ドロップ当たりのインク質量は25ng以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5ng以上20ng以下であり、更に好ましくは、2.5ng以上18ng以下である。1ドロップ当たりのインク質量が25ngを超える場合には、滲みが激しい場合または乾燥時間が遅い場合が存在した。これは、インクを凝集させる作用を有する液体組成物が記録媒体上に存在した場合、インクと記録媒体の接する面でインクが凝集し、インクの浸透が阻害されため、この時、インクのドロップ量が多い場合には、紙表面方向にインクが広がってしまうためであると考えられる。
【0083】
本発明のインクジェット記録方法では、インク及び液体組成物の吐出(付与)方式は、ヒータなどによりバブルを発生させて行うサーマル方式、圧電素子によって行うピエゾ方式のどちらでもよい。しかし、滲み及び色間滲みの改善効果という観点からサーマル方式(熱インクジェット記録方式)を採用することが好ましい。この原因は明らかとはなっていないが、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果があると考えられる。
【0084】
本発明のインクジェット記録方法は、通常のインクジェット記録装置は勿論、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、または、中間体転写機構を搭載し、中間体に記録材料を印字した後、紙等の記録媒体に転写する記録装置等も適用させることができる。
【0085】
【実施例】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0086】
[インクの作製]
下記Ink−1〜7、及びTL−1〜4の組成に従って、適量の顔料分散液に、水溶性有機溶媒、界面活性剤、イオン交換水等を適量加え、各材料が所定量含まれるように調製し、これを、混合、攪拌し、1μmフィルターをかけ、所望のインク(TL−1〜4は液体組成物)を得た。
【0087】
−顔料処理方法1−
顔料に次亜塩素酸ナトリウムで表面酸化処理を施した後、脱塩処理を行なった。このようにして得られた表面処理顔料を顔料濃度が20wt%となるようにイオン交換水中に加え、pHを7.5に調整した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散を行なった。この分散液を遠心分離装置で、遠心分離処理(8000rpm×30分)を施し、残渣部分(全量に対して20%)を除去した。
【0088】
(Ink−1)
―組成−
【0089】
このインク(Ink−1)の、粘度は2.4mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
【0090】
(Ink−2)
―組成―
【0091】
このインク(Ink−2)の粘度は2.3mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
【0092】
(Ink−3)
―組成―
【0093】
このインク(Ink−3)の粘度は1.8mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
【0094】
(Ink−4)
−組成−
【0095】
このインク(Ink−4)の粘度は1.8mPa・s、表面張力は34mN/mであった。
【0096】
(Ink−5)
−組成−
・Black Pearls L ・・・・4 質量%
(上記顔料処理方法1に従って処理された表面処理顔料)
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体・・・1 質量%
・ジグリセリンエチレンオキサイド付加物 ・・・・30 質量%
・ジエチレングリコール ・・・・5 質量%
・ユニダインDS−102(フッ素系界面活性剤) ・・・・0.1質量%
・尿素 ・・・・4 質量%
・イソプロピルアルコール ・・・・3.5質量%
・イオン交換水 ・・・・残部
【0097】
このインク(Ink−5)の粘度は7.1mPa・s、表面張力は16mN/mであった。
【0098】
(Ink−6)
−組成−
【0099】
このインク(Ink−6)の粘度は2.2mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
【0100】
(Ink−7)
−組成−
・Black Pearls L ・・・・4 質量%
(上記顔料処理方法1に従って処理された表面処理顔料)
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体・・・0.01質量%
・ジエチレングリコール ・・・・10 質量%
・尿素 ・・・・4 質量%
・イソプロピルアルコール ・・・・3 質量%
・イオン交換水 ・・・・残部
【0101】
このインク(Ink−7)の粘度は1.8mPa・s、表面張力は55mN/mであった。
【0102】
(TL−1)
―組成―
【0103】
この液体組成物(TL−1)の粘度は2.1mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
【0104】
(TL−2)
―組成―
・ジエチレングリコール ・・・・15 質量%
・1,5−ペンタンジオール ・・・・5 質量%
・ジエチレングリコールエチレンオキサイド付加物 ・・・・5 質量%
・尿素 ・・・・4 質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 ・・・・0.4質量%
・ポリオキシエチレンセチルエーテル(EO=6) ・・・・0.2質量%
・ポリアリルアミン ・・・・5 質量%
・イオン交換水 ・・・・残部
【0105】
この液体組成物(TL−2)の粘度は2.0mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
【0106】
(TL−3)
―組成―
・ジエチレングリコール ・・・・15 質量%
・プロピレングリコール ・・・・10 質量%
・尿素 ・・・・4 質量%
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 ・・・・1 質量%
・イソプロピルアルコール ・・・・3 質量%
・イオン交換水 ・・・・残部
【0107】
この液体組成物(TL−3)の粘度は2.2mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
【0108】
(TL−4)
―組成―
・ジエチレングリコール ・・・・15 質量%
・硝酸マグネシウム ・・・・4 質量%
・イオン交換水 ・・・・残部
【0109】
この液体組成物(TL−4)の粘度は1.5mPa・s、表面張力は63mN/mであった。
【0110】
(実施例1〜6、比較例1〜5)
表1〜表2に従ったインクセットを用い、800dpi、256ノズルの試作プリントヘッドを用い、液体組成物を記録媒体に付与した後に、インクを印字し、以下の評価を行なった。結果を表1〜2に示す。実施例1〜4、比較例1〜4は一色のインクを用いて印字したものである。実施例5及び比較例5は2色のインクを用いて印字したものである。実施例6は4色のインクを用いて印字したものである。記録媒体としてはFX−P紙(富士ゼロックス社製)を用いた。また、以下特に記載が無い場合、印字は一般環境下(温度23±0.5℃、湿度55±5%R.H)で行い、各種評価は印字後24時間一般環境下に放置した印字物に対して行った。
【0111】
−光学濃度−
100%カバレッジパターンを印字し、エックスライト404(エックスライト社製)を用いて光学濃度を測定した。評価基準は以下の通りである。
・ブラックインクの場合
◎・・・光学濃度が1.5以上
○・・・光学濃度が1.4以上
△・・・光学濃度が1.3以上1.4未満
×・・・光学濃度が1.3未満
・カラーインクの場合
◎・・・光学濃度が1.2以上
○・・・光学濃度が1.1以上
△・・・光学濃度が1.0以上1.1未満
×・・・光学濃度が1.0未満
【0112】
―滲み−
細線パターンを印字し、印字部の滲み度合いを限度見本に照合し、官能評価を行なった。評価基準は以下の通りである。
◎・・・滲みが殆ど発生していないもの
○・・・滲みが少ないもの
△・・・滲みは発生しているが、許容レベルのもの
×・・・滲みが激しく、許容範囲外のもの
【0113】
−乾燥時間−
100%カバレッジパターンを印字してから所定の時間経過後に印字パターン上に別のFX−P紙を1.9×104N/m2の荷重で押し当てる。この時、押し当てたFX−P紙側にインクが転写されなくなる時間を乾燥時間とした。評価基準は以下の通りである。
◎・・・乾燥時間が1秒未満
○・・・乾燥時間が3秒未満
△・・・乾燥時間が3秒以上10秒未満
×・・・乾燥時間が10秒以上
【0114】
−色間滲み−
色間滲みの評価は、異なる色が隣接するパターンを印字し、境界部分の滲み度合いを予め定めておいた限度見本に照合し、官能評価を行なった。評価基準は以下の通りである。
◎・・・滲みが殆ど発生していないもの
○・・・滲みが少ないもの
△・・・滲みは発生しているが、許容レベルのもの
×・・・滲みが激しく、許容範囲外のもの
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
表1〜2の結果から明らかなように、特定の範囲の物性を有するインク及び液体組成物から構成される本発明のインクジェット記録用インクセットを用いることで、光学濃度、滲み、色間滲み、乾燥時間が改善されることがわかる。
【0118】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、光学濃度、滲み、色間滲み、乾燥時間に優れたインクジェット記録用インクセット、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
Claims (14)
- 少なくとも色材、水溶性溶媒、及び水を含むインクと、該インクを凝集させる作用を有する液体組成物と、を含んで構成されるインクジェット記録用インクセットにおいて、
(i)前記インクのγ/η(γ:表面張力(mN/m)、η:粘度(mPa・s)が5以上30以下で、且つ前記インクの表面張力γが27.5mN/m以上37.5mN/m未満、
(ii)前記液体組成物のγ/η(γ:表面張力(mN/m)、η:粘度(mPa・s)が5以上40以下、
(iii)前記インクの記録媒体上における初期接触角が75度以上、
であることを特徴とするインクジェット記録用インクセット。 - 前記色材が顔料であり、該顔料が高分子分散剤により分散されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
- 前記色材が、水に自己分散可能な顔料であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
- 前記液体組成物中に多価金属塩が含まれていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
- 前記インク及び前記液体組成物の混合液中の5μm以上の粗粒数が、1×10 4 個/μl以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用インクセット。
- 少なくとも顔料、水溶性溶媒、及び水を含むインクと、該インクを凝集させる作用を有する液体組成物と、を含んで構成されるインクジェット記録用インクセットを用い、前記インク及び前記液体組成物を記録媒体上に付与して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
(i)前記インクのγ/η(γ:表面張力(mN/m)、η:粘度(mPa・s)が5以上30以下で、且つ前記インクの表面張力γが27.5mN/m以上37.5mN/m未満、
(ii)前記液体組成物のγ/η(γ:表面張力(mN/m)、η:粘度(mPa・s)が5以上40以下、
(iii)前記インクの記録媒体上における初期接触角が75度以上、
であることを特徴とするインクジェット記録方法。 - 前記色材が顔料であり、該顔料が高分子分散剤により分散されていることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録方法。
- 前記色材が、水に自己分散可能な顔料であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録方法。
- 前記液体組成物中に多価金属塩が含まれていることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録方法。
- 熱インクジェット方式を用いてインク及び前記液体組成物を記録媒体上に付与することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インクを1ドロップ当たり25ng以下で記録媒体に付与することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録媒体に対し、前記液体組成物を付与した後に、前記インクを付与することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録方法。
- 前記記録媒体に対し、前記インクを付与した後に、前記液体組成物インクを付与することを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録方法。
- 前記インク及び前記液体組成物の混合液中の5μm以上の粗粒数が、1×10 4 個/μl以上であることを特徴とする請求項6に記載のインクジェット記録方法。
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