JP2008100371A - インクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】色材を含むインクと、色材を凝集あるいは沈降させる化合物を含む液体組成物と、を有するインクセットであって、インクに水酸基を3〜5個有する単糖類、少なくとも液体組成物に式(1) CnH2n−(OH)2 (n=4〜6)及び/または式(2) C3XH6X+2OX+1 (X=1〜2)で表される化合物を含有するインクセット、並びにそれを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置。
【選択図】なし
Description
水系のインクジェットプリンターでは、カール発生により高速で媒体搬送を行うことは困難な場合がある。このカール対策としては水系インクに糖類を添加する手法がある。
また、高速化のため、高速印字に対応した高浸透インク(FD)があるが、それを用いるとその浸透性のため濃度低下が生じてしまう。これを解決するために、高浸透インク(FD)と処理液との反応を利用し、色材を紙媒体上に残すことを意図した二液システムが検討されている。
しかし、二液システムに糖類含有FDインクを用いると凝集体が不均一となり、特にベタ印字部で濃度ムラが発生するので高速・高画質の両立は困難であった。
このような中、カールを抑制して高精細な画像を得る方法として、インク及び液体組成物からなる二液システムにおいて、インク及び液体組成物の双方が少なくとも特定の糖類及びグリコール類から選択される1以上の化合物を含有し、被記録媒体への総水分量と該化合物の総量比を特定するインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
インク及び反応液からなる二液システムにおいて、インク組成物が顔料、糖又は糖の誘導体、尿素、樹脂エマルジョン粒子、水溶性有機溶媒、水を含み、反応液が凝集反応剤を含有する構成により、耐擦性、耐光性、吐出安定性、及び良好な画像を改良する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、ベタ印字部での濃度ムラ等の発生がない等、高画質・超高速印字の両立については、未だ充分なレベルではないのが実状であった。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
少なくとも液体組成物に式(1) CnH2n−(OH)2 (n=4〜6)及び/または式(2) C3XH6X+2OX+1 (X=1〜2)で表される化合物を含有するインクセット。
<3>前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物の添加量が液体組成物全質量に対して、3〜10質量%である上記<1>又は<2>に記載のインクセット。
<5>前記色材を凝集あるいは沈降させる化合物の添加量が液体組成物全質量に対して、3〜20質量%である上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクセット。
<7>前記色材が顔料である上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクセット。
<9>前記液体組成物に含有する単糖類の量が40質量%以下である上記<8>に記載のインクセット。
<11>上記<1>〜<10>のいずれか1項に記載のインクセットにおけるインク及び液体組成物を記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法。
<13>上記<1>〜<10>のいずれか1項に記載のインクセットにおけるインク及び液体組成物を記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録装置。
また、本発明によれば、前記インクジェット用インクセットを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することができる。
従って、本発明のインクセットを用いてインクジェット記録装置により印字することにより、ベタ印字部での濃度ムラが発生しにくく、超高速・高画質印字の両立が可能となる。
<インク>
本発明におけるインクは、少なくとも色材及び水酸基を3〜5個有する単糖類を含有し、また必要に応じてその他の添加成分等を含有し、一般的には有機溶媒や水等の溶媒に前記成分を分散したものである。
本発明におけるインクは、水系インクジェットプリンターでの高速記録媒体移動の障害となるカール発生を抑制するために、水酸基を3〜5個有する特定の単糖類(以下、「本発明における単糖類」ともいう。)を含有する。
本発明における水酸基を3〜5個有する単糖類は、アルドース又はケトースで、テトロース、ペントース、ヘキソースが挙げられる。前記水酸基を3〜5個有する単糖類の具体例としては、エリトロース、トレオース;リボース、アラビノース、キシロース、リキソース;アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、又はタロースが挙げられ、中でも、使用時のインク粘度、入手性の観点からグルコース、ガラクトース、マンノース、グロース、アラビノース、キシロース、エリトロースが好ましく、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、エリトロースがより好ましくグルコース、ガラクトース、キシロースが特に好ましい。
本発明における単糖類は、1種単独で用いても複数種を併用して用いてもよい。
本発明における色材としては、顔料、染料のいずれであってもかまわないが、画像保存性の観点から顔料であることが好ましい。
本発明におけるインクに使用される顔料としては、自己分散可能な顔料であるか、若しくは実質的に樹脂によって分散された顔料であることが好ましい。
自己分散可能な顔料とは、表面に親水性官能基を有し、所謂高分子分散剤を含まず、自身で溶媒中に分散可能な顔料である。
本発明において、顔料が「自己分散可能」であるか否かは、以下の試験により確認される。
黒色と、シアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。
また、本発明に用いられる顔料は、前述の通り、実質的に樹脂によって分散されている顔料も好ましい態様である。ここで、「実質的に樹脂によって分散されいる」とは、樹脂を用いて顔料が分散されていればよく、樹脂と顔料との結合強度の大小に左右されることなく、例えば、顔料が単に樹脂との弱い係わりをもって分散しても、また、樹脂のカプセルに内包するような形態で顔料が存在する状態であってもいずれの状態であってもこれに該当するものとする。
実質的に樹脂によって分散される顔料は、前記「自己分散可能な顔料」の記載中に列挙した、親水性官能基を導入する以前の顔料と同一である。
例えば、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)にて標準試料としてポリスチレンを用い、樹脂を適当な溶媒(THF、NMP、トルエン等)に溶解し測定することで相対分子量を得ることができる。
上記の通り、インク全質量中における顔料の含有量は、2〜15質量%の範囲が好ましく、3〜10質量%が更に好ましく、4〜8質量%が特に好ましい。
本発明においては、前述の「インクに含有される樹脂」とは以下の方法によって定量される成分をさす。即ち、前記樹脂の含有率は以下の方法によって定量される。
インク組成物を秤量し、質量(A)を測定する。これを加熱乾固させ、インク組成物中の固形分量(B)を秤量する。この固形物を量り取り熱重量分析により顔料以外の熱分解する固形分の質量(C)を測定する。この(C)を樹脂分とし、(B)中の樹脂量が分かる。さらに(A)と(B)の比を用いてインク中の樹脂の含有率を決定できる。
色材として染料を用いる場合は、公知のもの、あるいは新規に合成したものを用いることができ、又前記顔料と併用することもできる。中でも、鮮やかな色彩の得られる、直接染料あるいは酸性染料が好ましい。具体的には次のようなものが挙げられる
特に好ましい染料は、C.I.フードブラック−2、C.I.ダイレクトブラック−154、−168、−195である。
インクは、上記の成分の他に、溶媒として水を含むが、更に水溶性有機溶媒を添加することができる。水溶性有機溶媒をインクに添加すると、インクや液体組成物の保湿性及びインク中の顔料の分散性がさらに良好になり、目詰まりを防止したり、記録ヘッドからインクを吐出する際の吐出安定性を維持し、さらに、インクの長期の保存に対しても顔料、液体組成物に含まれる処理剤の凝集・析出を防ぐことができる。
水溶性有機溶媒の具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
含硫黄溶媒としてはチオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を併せて用いることも出来る。エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類も使用することができる。水溶性有機溶媒の含有量としては、1〜60質量%、好ましくは、5〜40質量%で使用される。
さらに、インクに界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、その分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等を使用することが出来、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等のいずれを使用しても構わない。
その他、インクの吐出性改善等の特性制御を目的として、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション等のポリマーエマルション、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド等を用いることができる。
その他必要に応じ、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤等も添加することができる。
以下にインクの調製方法の一例を示す。
本発明に用いるインクが、前記の実質的に樹脂によって分散された顔料を用いたインクである場合には、例えば、前記樹脂(分散剤)を所定量含む水溶液に所定量の前記顔料を添加し、十分に攪拌した後、分散機を用いて分散を行い、遠心分離等で粗大粒子を除いた後、所定の前記水溶性有機溶媒、前記添加剤等を加えて攪拌混合し、次いで濾過を行って得ることができる。この際、予め顔料の濃厚分散体を作製し、インク調製時に希釈する方法も使用できる。また、分散工程の前に顔料の粉砕工程を設けてもよい。あるいは、所定の水溶性有機溶媒、水、分散剤を混合後、顔料を添加して、分散機を用いて分散させてもよい。
本発明における液体組成物(以下、「処理液」と言う場合がある。)は、基本的に顔料等の色材を含まず、かつ、前記インクに含有される色材を凝集或いは沈降させる作用を有する化合物(以下、「凝集剤」ともいう。)、並びに式(1) CnH2n−(OH)2 (n=4〜6)及び/または式(2) C3XH6X+2OX+1 (X=1〜2)で表される化合物を含有する。
本発明における液体組成物は、前記凝集剤と、式(1)及び/又は式(2)で表される化合物と、を少なくとも含むものが用いられ、更に単糖類を添加することが好ましく、必要に応じてその他の成分が含まれていてもよい。
本発明における液体組成物には、インクと接触して固液分離する際の分離速度を速くするため、式(1) CnH2n−(OH)2 (n=4〜6)及び/又は式(2) C3XH6X+2OX+1 (X=1〜2)で表される化合物を少なくとも含有する必要がある。
上記式(1)及び/又は(2)で表される化合物を添加した液体組成物を用いた本発明のインクセットを用いて印字すると、特にベタ印字部で生じていた濃度ムラが減り、更にドライングが顕著に向上する。
本発明において、前記液体組成物に前記上記式(1)及び/又は(2)で表される化合物を添加した際の効果のメカニズムについては不明であるが下記のように推察している。
前記インク及び液体組成物を接触させた際、恐らく保水性が高い糖類により凝集体が水分を抱き込み凝集体の大きさが不揃いとなり、ベタ印字部で濃度ムラが生じ、更に凝集体の水分抱き込みによりドライングが遅くなるものと考えている。
本発明の前記特定の化合物を含有するインクセットでは、凝集体からの水分離脱が促進され、凝集体の液成分が凝集体から記録媒体(紙媒体)へと移動して、記録媒体への液成分の浸透が劇的に向上し高画質・高速印字が可能となるものと推察している。
本発明において、式(1)で表される化合物を単独で用いても複数を併用してもよい。また式(2)で表される化合物を単独で用いても複数を併用してもよい。
また、前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物の添加量としては、液体組成物全質量に対して、粘度上昇、インク保存安定性の観点から、3〜10質量%であることが好ましく、3.5〜8質量%であることがより好ましく、4〜7質量%であることが特に好ましい。
前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物の添加量が3質量%未満であると固液分離が遅く、ドライング不良となる場合があり、10質量%を超えるとインクの保存安定性が劣化する場合がある。
本発明における液体組成物は、インク中に含有される色材を凝集あるいは沈降させる化合物を含有する。該機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、溶解性、インク保存安定性の観点から、有機酸、多価金属塩、ポリアミン類から選択される1種以上の化合物であることが好ましい。
本発明における有機酸の具体例としては、2−ピロリドン−5−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、4−ブタノリド−3−カルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−5−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、チオフェンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−カルボン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸、フタル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、これらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の化合物が挙げられる。これらはpH調整等の機能も有する。
多価金属塩としては、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、チオシアン酸、並びに、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、フタル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
具体例としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体、及び、これら化合物のスルフォニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩、又は、リン酸エステル等が挙げられる。
また液体組成物中における凝集剤の添加量は、溶解性の観点から、3質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、4質量%以上18質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以上15質量%以下である。
液体組成物中における凝集剤の添加量が3質量%未満の場合には、記録媒体上でインクと液体組成物とが接触・混合した時に顔料の凝集が不充分となり、画像濃度、滲み、色間滲みが悪化する場合が存在し、一方、添加量が20質量%を超える場合には、噴射特性が低下し、液体が正常に噴射しにくくなる場合がある。
本発明における液体組成物には、前記インクにおいて用いることができる単糖類を含有することがカール抑制向上の観点から好ましい。
該単糖類の好ましい例としては、前記インクと同様である。それらの中でも、前記インクと同一の単糖類を用いることが生産性、インクとの親和性の点で好ましい。
前記単糖類は単独で用いても、複数種併用してもよい。
また、その他の成分としてもインクに用いるものと同様のものが粘度や表面張力等、所望の物性や特性が得られるように適宜利用できる。
次に本発明のインクセットに用いられるインクおよび液体組成物の好ましい物性について説明する。
本発明のインクセットがインク及び液体組成物を含む態様であり、インクが塩基性であり、液体組成物が酸性の組合せの場合、インクのpHは7.5以上10.5以下であり、液体組成物のpHは2.5以上7.0以下であることが好ましい。
一方、酸性の液体のpHが7.0を超える場合には、インクと液体組成物とが記録媒体上で接触・混合した際に樹脂や顔料の凝集が不充分となり、画像濃度、滲み、色間滲みが悪化する場合がある。
塩基性の液体(インク又は液体組成物)のpHが7.5未満の場合、液体の長期噴射性が低下する場合があり、pHが10.5を超える場合には、記録ヘッドのインク流路構成部分を溶解し、記録ヘッドを故障させる場合がある。
液体組成物が単糖類を含有する場合は、25mN/m以上35mN/m以下であることが好ましい。
液体組成物が単糖類を含有する場合は、3mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明のインクジェット用インクセットを用い、インクと液体組成物とを記録媒体に付与して画像を記録(形成)する方法である。特に前記各液体を互いに接触させるように記録媒体上に吐出して、画像を形成する方法であることが好ましい。
これらは、通常のインクジェット記録装置は勿論、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、又は、中間体転写機構を搭載し、中間体にインク及び液体組成物を吐出(印字)した後、紙等の記録媒体に転写する記録装置等を適用することができる。
該加温する機構をインクジェット記録装置に搭載することにより、インクと液体組成物とが記録媒体に付与され、その混合液を速く乾燥することができる点で好ましい。記録媒体上は前記インク及び液体組成物を付与する前に、加温されても、また、インク及び液体組成物が付与された後で加温されても良いが、インク及び液体組成物が付与された前及び/又は後で、或いは付与されると同時に加温することがより好ましい。
前記記録媒体を加温する機構としては、前記記録媒体を加温できる機構(媒体加温部)を有するものであれば特に限定されず用いることができ、具体的には、媒体搬送ローラ中にヒーターを組み込んだもの等を適用することができる。
インクジェット記録装置における前記媒体加温部の位置としては、前記記録媒体を効率的に加温できる場所であれば、インクジェット記録装置のいずれの場所であってもよいが、水分の効率的な蒸発の観点から、水平位置としては記録媒体にインク及び液体組成物が付与される位置(記録位置)のヘッド近傍が好ましく、媒体搬送経路中のヘッド部分の前後がより好ましい。また、前記記録媒体に対して、前記媒体加温部の垂直方向の位置としては、前記記録媒体に直接接していても、また離れていてもよいが、水分の効率的な蒸発及び記録媒体の汚染の観点から、ヘッド近傍が好ましく、媒体搬送経路中のヘッド部分の前後がより好ましい。
以上の中でも、ヘッド部分の前及び後に加温部を配置することが好ましい。
前記加温する温度としては、水分の蒸発乾燥の観点から、40〜180℃であることが好ましく、60〜150℃がより好ましく、60〜100℃が特に好ましい。
40℃未満の温度であると、水分蒸発が不十分となる場合があり、180℃を超えると部材変形が顕著となる場合がある。
但し、一つのノズルから複数の体積のドロップを噴射することが可能であるインクジェット装置において、上記ドロップ量とは、印字可能な最小ドロップのドロップ量を指すこととする。
図5は、本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観構成を示す斜視図である。また、図6は図5に用いられる加熱ローラ(媒体加温部)の一例を示す縦断面図である。更に、図7は本発明のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する。)の別の好適な一実施形態の外観構成を示す横断面概略図である。
該画像形成装置102は、媒体搬送経路の最後に位置する搬送ローラ2に対向する位置に加熱ローラ201(媒体加温部)を有している以外は、図3及び4に示す画像形成装置101と同様の構成及び機能を有している。
そして、前記画像形成装置102は、前記加熱ローラ201を搭載することにより、画像形成された記録媒体1の水分は素早く蒸発して、効率的に乾燥した画像を形成することができる。
そして、前記画像形成装置103は、前記加熱用装置207を搭載することにより、画像形成される記録媒体1を加温して、画像形成された後の記録媒体上の水分は素早く蒸発して、効率的に乾燥した画像を得ることができる。
下記のインク組成及び液体組成物(処理液)組成に従い、化合物を混合し、攪拌した後、目開き5μmのメンブランフィルターを用いてろ過して、所望のインク及び液体組成物を得た。
・顔料(キャボット社製 MogulL):5質量%
・スチレン/ n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体のナトリウム塩(分子量約7000):2質量%
・ジエチレングリコール:10質量%
・グリセリン:5質量%
・グルコース:30質量%
・オルフィンE1010(日信化学社製):1質量%
・純水:残部
このインクのpHは8.4、粘度は11mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
上記インク1において、グルコースを10質量%とし、あらたに1,2−ヘキサンジオール量を5質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.5、粘度は6mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
上記インク1において、グルコースを20質量%とし、あらたにプロピレングリコール量を3質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.3、粘度は9mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
上記インク1において、グルコースをガラクトースに変えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.4、粘度は11mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
上記インク1において、グルコースを20質量%、あらたにジプロピレングリコールを3質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.5、粘度は9mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
上記インク1において、グルコースを40質量%とした以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.4、粘度は15mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
上記インク1において、グルコースを10質量%とし、あらたに1,2−ヘキサンジオールを10質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.4、粘度は8mPa・s、表面張力は30mN/mであった。
上記インク1において、グルコースを5質量%とした以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.6、粘度は4mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
上記インク1において、グルコースを10質量%とし、あらたに1,2−ヘキサンジオール量を2質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.5、粘度は5mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
上記インク1において、グルコースを45質量%とした以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.6、粘度は18mPa・s、表面張力は33mN/mであった。
上記インク1において、あらたに1,2−ヘキサンジオールを15質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.4、粘度は13mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
上記インク1において、グルコースを10質量%とし、あらたにジエチレングリコールモノブチルエーテルを5質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.3、粘度は6mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
上記インク1において、色材をC.I. Food Black 2とし、樹脂成分を0質量%、あらたに1,2−ヘキサンジオールを5質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.9、粘度は5mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
上記インク1において、グルコースを0質量%とした以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.6、粘度は4mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
・ジエチレングリコール:15質量%
・グリセリン:5質量%
・1,2−ヘキサンジオール:5質量%
・ピロリドンカルボン酸:5質量%
・オルフィンE1010(日信化学社製):1質量%
・純水:残部
上記に水酸化ナトリウムを用いてpH3に調整した。
この処理液の粘度は4mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを0質量%とし、あらたにプロピレングリコールを3質量%加え、ピロリドンカルボン酸量を3質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は3.5mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、ピロリドンカルボン酸を0質量%とし、あらたに硝酸マグネシウムを3質量%加えた以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は4.5mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを3質量%、ピロリドンカルボン酸を10質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は5mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
処理液1において、ピロリドンカルボン酸を10質量%とし、あらたにグルコースを40質量%加えた以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は13mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを0質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は3.5mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを2質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は3.5mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを15質量%、ピロリドンカルボン酸を3質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は12mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
処理液1において、ピロリドンカルボン酸を15質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は5mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
処理液1において、ピロリドンカルボン酸を2質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は4mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
処理液1において、グルコースを45質量%加えた以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は15mPa・s、表面張力は33mN/mであった。
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールをジエチレングリコールモノブチルエーテルとした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は3.5mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを0質量%、オルフィンE1010を3質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は4.5mPa・s、表面張力は30mN/mであった。
[評価]
(印字)
印字装置として、A4の富士ゼロックス製C2紙に800dpi、256ノズルの試作ヘッドを紙幅に並べたヘッドユニット2本からなる試作プリンタを用いて、上記で得られた処理液を1.8mg/inch2条件かつ余白部5mmのベタ画像を印字後、更に上記で得られたインクを7.3mg/inch2の条件かつ余白部5mmのベタ画像を印字した。
サンプル瓶に、上記で得られたインク:処理液=20g:6gの量を量り取り混合後静置し、固液分離するまでの時間(分)を測定して、下記基準で評価した。
固液分離するまでの時間は、目視観察して透明な上澄み層を確認したときを固液分離したと判断した。結果を表1に記載した。
<評価基準>
◎:5分未満
○:5分以上15分未満
△:15分以上30分未満
×:30分以上
上記で得られた印字物の印字部の光学濃度をX−Rite404にて測定して下記基準で評価した。結果を表1に記載した。
<評価基準>
◎:OD値1.4以上
○:OD値1.2以上1.4未満
△:OD値1.1以上1.2未満
×:OD値1.1未満
上記で得られた印字物のベタ部の濃度ムラを目視観察により下記基準で評価した。結果を表1に記載した。
<評価基準>
○:ムラなし
×:ムラあり
上記で得られた印字物を温湿度18〜23℃35〜45%RHの条件下24時間後に四隅のカール高さを測定し平均のカール量(mm)を算出し、下記基準で評価した。結果を表1に記載した。
<評価基準>
◎:カール量が20mm未満
○:カール量が20mm以上30mm未満
△:カール量が30mm以上40mm未満
×:カール量が40mm以上
ベタ部印字中をビデオカメラで目視観察し、液体分が表面から無くなる時間を測定してドライングを下記基準で評価した
<評価基準>
○:1秒未満で液体なし
×:1秒以上で液体あり
一方、実施例はいずれの評価においても、不良であるものがなく、特に実施例1〜8、14、16は極めて良好であることが分かった。
2 搬送ローラ
3 記録ヘッド
4 メインインクタンク
5 サブインクタンク
6 外部カバー
7 トレイ
8 画像形成部
9 給電信号ケーブル
10 キャリッジ
11 ガイドロッド
12 タイミングベルト
13 駆動プーリ
14 メンテナンスユニット
15 補給装置
16 補給管
41、42、43、44、45 メインインクタンク
51、52、53、54、55 サブインクタンク
56 排気孔
57 補給孔
100、101、102、103 画像形成装置
151 排気用ピン
152 補給用ピン
201 加熱ロール
203 表面層
204 導電層
206 弾性層
207 ヒーターを組み込んだ装置
209 ヒーター
P 用紙搬送方向
Claims (14)
- 色材を含むインクと、色材を凝集あるいは沈降させる化合物を含む液体組成物と、を有するインクセットであって、インクに水酸基を3〜5個有する単糖類、少なくとも液体組成物に式(1) CnH2n−(OH)2 (n=4〜6)及び/または式(2) C3XH6X+2OX+1 (X=1〜2)で表される化合物を含有するインクセット。
- 前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物がn=6及び/またはx=2である請求項1に記載のインクセット。
- 前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物の添加量が液体組成物全質量に対して、3〜10質量%である請求項1又は2に記載のインクセット。
- 前記インク全質量中に含有する単糖類の量が10〜40質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクセット。
- 前記色材を凝集あるいは沈降させる化合物の添加量が液体組成物全質量に対して、3〜20質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクセット。
- 前記色材を凝集あるいは沈降させる化合物が有機酸、多価金属塩、ポリアミン類から選ばれる1種以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクセット。
- 前記色材が顔料である請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクセット。
- 前記液体組成物に単糖類を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクセット。
- 前記液体組成物に含有する単糖類の量が40質量%以下である請求項8に記載のインクセット。
- 前記単糖類を含有する液体組成物の粘度が3〜15mPa・sであり、表面張力が25〜35mN/mである請求項8又は9に記載のインクセット。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクセットにおけるインク及び液体組成物を記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクセットを収納したインクタンク。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクセットにおけるインク及び液体組成物を記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録装置。
- 前記記録媒体を加温する機構を有する請求項13に記載のインクジェット記録装置。
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- 2006-10-17 JP JP2006282681A patent/JP2008100371A/ja active Pending
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