JP2008100371A - インクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 Download PDF

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弘之 植木
Manabu Numata
学 沼田
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【課題】二液システムにおいて、ベタ印字部での濃度ムラが発生しにくく、超高速・高画質印字の両立が可能なインクジェット記録用インクセット、並びにそれを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】色材を含むインクと、色材を凝集あるいは沈降させる化合物を含む液体組成物と、を有するインクセットであって、インクに水酸基を3〜5個有する単糖類、少なくとも液体組成物に式(1) C2n−(OH) (n=4〜6)及び/または式(2) C3X6X+2X+1 (X=1〜2)で表される化合物を含有するインクセット、並びにそれを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用インクセット、インクジェット用インクタンク、インクジェット記録方法、並びに、インクジェット記録装置に関するものである。
ノズル、スリット、多孔質フィルム等により形成されるインク吐出口からインクを吐出するインクジェット方式は、小型で安価である等の理由から多くのプリンターに用いられている。これらインクジェット方式の中でも、圧電素子の変形を利用しインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、及び、熱エネルギーによるインクの沸騰現象を利用しインクを吐出する熱インクジェット方式は高解像度、高速印字性に優れるという特徴を有する。
現在、インクジェットプリンターでは普通紙における高速化及び高画質化が重要な課題の一つとして挙げられている。特にA4サイズの用紙を毎分90枚以上印刷可能な超高速領域への展開は急務である。
水系のインクジェットプリンターでは、カール発生により高速で媒体搬送を行うことは困難な場合がある。このカール対策としては水系インクに糖類を添加する手法がある。
また、高速化のため、高速印字に対応した高浸透インク(FD)があるが、それを用いるとその浸透性のため濃度低下が生じてしまう。これを解決するために、高浸透インク(FD)と処理液との反応を利用し、色材を紙媒体上に残すことを意図した二液システムが検討されている。
しかし、二液システムに糖類含有FDインクを用いると凝集体が不均一となり、特にベタ印字部で濃度ムラが発生するので高速・高画質の両立は困難であった。
このような中、カールを抑制して高精細な画像を得る方法として、インク及び液体組成物からなる二液システムにおいて、インク及び液体組成物の双方が少なくとも特定の糖類及びグリコール類から選択される1以上の化合物を含有し、被記録媒体への総水分量と該化合物の総量比を特定するインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
インク及び反応液からなる二液システムにおいて、インク組成物が顔料、糖又は糖の誘導体、尿素、樹脂エマルジョン粒子、水溶性有機溶媒、水を含み、反応液が凝集反応剤を含有する構成により、耐擦性、耐光性、吐出安定性、及び良好な画像を改良する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、ベタ印字部での濃度ムラ等の発生がない等、高画質・超高速印字の両立については、未だ充分なレベルではないのが実状であった。
特開2004−209759号公報 特開2001−138629号公報
本発明は、二液システムにおいて、ベタ印字部での濃度ムラが発生しにくく、超高速・高画質印字の両立が可能なインクジェット記録用インクセット、並びにそれを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
前記実情に鑑み本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、上記課題を解決しうることを見出し本発明を完成した。
即ち、本発明は下記の手段により達成されるものである。
<1>色材を含むインクと、色材を凝集あるいは沈降させる化合物を含む液体組成物と、を有するインクセットであって、インクに水酸基を3〜5個有する単糖類、
少なくとも液体組成物に式(1) C2n−(OH) (n=4〜6)及び/または式(2) C3X6X+2X+1 (X=1〜2)で表される化合物を含有するインクセット。
<2>前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物がn=6及び/またはx=2である上記<1>に記載のインクセット。
<3>前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物の添加量が液体組成物全質量に対して、3〜10質量%である上記<1>又は<2>に記載のインクセット。
<4>前記インク全質量中に含有する単糖類の量が10〜40質量%である上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクセット。
<5>前記色材を凝集あるいは沈降させる化合物の添加量が液体組成物全質量に対して、3〜20質量%である上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のインクセット。
<6>前記色材を凝集あるいは沈降させる化合物が有機酸、多価金属塩、ポリアミン類から選ばれる1種以上である上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクセット。
<7>前記色材が顔料である上記<1>〜<5>のいずれか1項に記載のインクセット。
<8>前記液体組成物に単糖類を含有する上記<1>〜<7>のいずれか1項に記載のインクセット。
<9>前記液体組成物に含有する単糖類の量が40質量%以下である上記<8>に記載のインクセット。
<10>前記単糖類を含有する液体組成物の粘度が3〜15mPa・sであり、表面張力が25〜35mN/mである上記<8>又は<9>に記載のインクセット。
<11>上記<1>〜<10>のいずれか1項に記載のインクセットにおけるインク及び液体組成物を記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法。
<12>上記<1>〜<10>のいずれか1項に記載のインクセットを収納したインクタンク。
<13>上記<1>〜<10>のいずれか1項に記載のインクセットにおけるインク及び液体組成物を記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録装置。
<14>前記記録媒体を加温する機構を有する上記<13>に記載のインクジェット記録装置。
本発明によれば、二液システムにおいて、ベタ印字部での濃度ムラが発生しにくく、超高速・高画質印字の両立が可能なインクジェット記録用インクセットを提供することができる。
また、本発明によれば、前記インクジェット用インクセットを用いたインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明のインクセットは、色材を含むインクと、色材を凝集あるいは沈降させる化合物を含む液体組成物と、を有するインクセットであって、インクに水酸基を3〜5個有する単糖類と、少なくとも液体組成物に式(1) C2n−(OH) (n=4〜6)及び/または式(2) C3X6X+2X+1 (X=1〜2)で表される化合物を含有する。
従って、本発明のインクセットを用いてインクジェット記録装置により印字することにより、ベタ印字部での濃度ムラが発生しにくく、超高速・高画質印字の両立が可能となる。
<インク>
本発明におけるインクは、少なくとも色材及び水酸基を3〜5個有する単糖類を含有し、また必要に応じてその他の添加成分等を含有し、一般的には有機溶媒や水等の溶媒に前記成分を分散したものである。
(水酸基を3〜5個有する単糖類)
本発明におけるインクは、水系インクジェットプリンターでの高速記録媒体移動の障害となるカール発生を抑制するために、水酸基を3〜5個有する特定の単糖類(以下、「本発明における単糖類」ともいう。)を含有する。
本発明における水酸基を3〜5個有する単糖類は、アルドース又はケトースで、テトロース、ペントース、ヘキソースが挙げられる。前記水酸基を3〜5個有する単糖類の具体例としては、エリトロース、トレオース;リボース、アラビノース、キシロース、リキソース;アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、又はタロースが挙げられ、中でも、使用時のインク粘度、入手性の観点からグルコース、ガラクトース、マンノース、グロース、アラビノース、キシロース、エリトロースが好ましく、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、エリトロースがより好ましくグルコース、ガラクトース、キシロースが特に好ましい。
本発明における単糖類は、1種単独で用いても複数種を併用して用いてもよい。
本発明における単糖類の含有量としては、インク全質量に対し10〜40質量%の範囲で含まれることが好ましく、20〜30質量%がより好ましく、10〜35質量%が更に好ましく、15〜30質量%が特に好ましい。該単糖類の含有量が40質量%より多くなると、インクの粘度上昇によりインクの吐出安定性が悪化する場合がある。また、該単糖類の含有量が10質量%未満であるとカールの抑制が不十分となる場合がある。
(色材)
本発明における色材としては、顔料、染料のいずれであってもかまわないが、画像保存性の観点から顔料であることが好ましい。
−顔料−
本発明におけるインクに使用される顔料としては、自己分散可能な顔料であるか、若しくは実質的に樹脂によって分散された顔料であることが好ましい。
・自己分散可能な顔料
自己分散可能な顔料とは、表面に親水性官能基を有し、所謂高分子分散剤を含まず、自身で溶媒中に分散可能な顔料である。
本発明において、顔料が「自己分散可能」であるか否かは、以下の試験により確認される。
まず、水中に測定対象となる顔料を添加し、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、マイクロフルイダイザー、ボールミル等を用いて分散剤無しで分散させ、初期の顔料濃度が約5%になるように水で希釈して分散体を調製する。初期の顔料濃度と、前記分散体100gを径40mmのガラスビンに入れて1日静置後、その上層部(液の深さ方向に、液面から10%の分散液)の顔料濃度を測定する。そして、初期の顔料濃度に対する1日静置後の顔料濃度の割合(以下、「自己分散性指標」と称する。)が98%以上である場合、「自己分散性」であると評価した。
このとき、顔料濃度の測定方法は、特に限定されず、サンプルを乾燥させて固形分を測定する方法や、適当な濃度に希釈して透過率から求める方法等いずれでもよく、他に顔料濃度を正確に求める方法があれば、もちろんその方法によってもよい。
かかる顔料が有する親水性官能基としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性のいずれの親水性官能基であってもよく、特に、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基、りん酸基の単独もしくは2種以上の組み合わせが好ましく、この中でもカルボキシル基の単独、もしくはカルボキシル基を含む2種以上の組み合わせが更に好ましい。
カルボキシル基、スルホン酸基、あるいはりん酸基を有する場合、そのまま遊離酸の状態でも使用できるが、一部または全てが塩を形成している場合が分散性の点で有利であり、好ましい。このとき、塩を形成する物質としては、各種の塩基性物質が挙げられるが、アルカリ金属、アンモニア、あるいは有機オニウム化合物の単独または2種以上の組み合わせが好ましい。顔料表面の親水性官能基の数は、親水性官能基の種類や、塩を形成している場合はその塩を形成する物質の種類によって異なり一概には言えないが、例えば−COONaの場合は0.8〜4mmol/gが好ましい。
親水性官能基を導入する顔料としては、無機および有機顔料のいずれも使用できる。黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料が好ましく、例えばRaven7000、Raven5750、Raven5250、Raven5000ULTRAII、Raven3500、Raven2500ULTRA、Raven2000、Raven1500、Raven1250、Raven1200、Raven1190ULTRAII、Raven1170、Raven1255、Raven1080ULTRA、Raven1060ULTRA、Raven790ULTRA、Raven780ULTRA、Raven760ULTRA(以上コロンビア社製)、Regal400R、Regal330R、Regal660R、Mogul L、Black Pearls L、Black Pearls 1300、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black 18、Color Black FW200、Color Black S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex35、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140V、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。また、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
シアン顔料としては、C.I.Pigment Blue−1、C.I.Pigment Blue−2、C.I.Pigmet Blue−3、C.I.Pigmet Blue−15、C.I.Pigment Blue−15:1、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:34、C.I.Pigment Blue−16、C.I.Pigment Blue−22、C.I.Pigment Blue−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
マゼンタ顔料としては、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 57、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 123、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 202等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
イエロー顔料としては、C.I.Pigment Yellow−1、C.I.Pigment Yellow−2、C.I.Pigment Yellow−3、C.I.Pigment Yellow−12、C.I.Pigment Yellow−13、C.I.Pigment Yellow−14、C.I.Pigment Yellow−16、C.I.Pigment Yellow−17、C.I.Pigment Yellow−73、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−75、C.I.Pigment Yellow−83、C.I.Pigment Yellow−93、C.I.Pigment Yellow−95、C.I.Pigment Yellow−97、C.I.Pigment Yellow−98、C.I.Pigment Yellow−114、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、C.I.Pigment Yellow−151、C.I.Pigment Yellow−154等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明のために、新たに合成した顔料でもよいし、2種類以上の顔料を混合して使用してもよい。
黒色と、シアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。
これらの顔料に対し、顔料の表面に親水性官能基を導入する方法(表面改質処理)は公知の方法や新たに発明されたいずれの方法も使用できる。例えば、酸化剤(例えば硝酸、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、次亜塩素酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、オゾン等)による酸化処理、シラン化合物等のカップリング剤による処理、ポリマーグラフト化処理、プラズマ処理等公知の方法の他、新たに開発した方法も使用でき、またこれらの方法を組み合わせてもよい。
得られた親水性官能基が導入された顔料は、残余の酸化剤等の不純物、その他の無機不純物や有機不純物を除去し、精製することが望ましい。特に、インク中のカルシウム、鉄、珪素をそれぞれ10ppm以下、好ましくは5ppm以下にすることが望ましい。なお、本発明において、これらの無機不純物含有量は高周波誘導結合プラズマ発光分析法により測定した。これら不純物の除去は、例えば、水洗浄や、逆浸透膜、限外ろ過膜、イオン交換法等の方法、活性炭、ゼオライト等による吸着の方法を、単独または組み合わせて行うことができる。
これら親水性官能基が導入された自己分散可能な顔料は、本発明の為新たに作製されたものの他、市販の自己分散可能な親水処理顔料も使用することができる。市販の自己分散可能な親水処理顔料としては、例えば、MICROJET BLACK CW−1(オリエント化学工業(株)製)、MICROJET BLACK CW−2(オリエント化学工業(株)製)、CAB−O−JET200(キャボット社製)、CAB−O−JET300(キャボット社製)等が挙げられる。これら市販の自己分散可能な親水処理顔料は、いずれも自己分散性指標が100%である。
上記自己分散可能な顔料は、インク全質量に対し2〜15質量%の範囲で含まれることが好ましく、3〜10質量%が更に好ましく、4〜8質量%が特に好ましい。顔料の含有量が15質量%より多くなると、ノズル詰まりを発生する可能性が高くなる。一方、2質量%未満では、印字濃度が低くなってしまう場合がある。
・実質的に樹脂によって分散された顔料
また、本発明に用いられる顔料は、前述の通り、実質的に樹脂によって分散されている顔料も好ましい態様である。ここで、「実質的に樹脂によって分散されいる」とは、樹脂を用いて顔料が分散されていればよく、樹脂と顔料との結合強度の大小に左右されることなく、例えば、顔料が単に樹脂との弱い係わりをもって分散しても、また、樹脂のカプセルに内包するような形態で顔料が存在する状態であってもいずれの状態であってもこれに該当するものとする。
実質的に樹脂によって分散される顔料は、前記「自己分散可能な顔料」の記載中に列挙した、親水性官能基を導入する以前の顔料と同一である。
本発明におけるインクが、前記自己分散可能な顔料を用いたインクであっても、前記実質的に樹脂によって分散された顔料を用いたインクであっても、顔料分散剤として下記に示す樹脂が添加されることが好ましい。
上記顔料の分散剤として用いられる樹脂としては、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物、両性化合物等が使用でき、例えば、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの共重合体等が使用できる。
具体的には、α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
上記α,β−エチレン性不飽和基を有するモノマーの単独若しくは複数を共重合して得られる共重合体が分散剤として使用される。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
インクに添加される上記に列挙したような樹脂は、その重量平均分子量が2000〜15000の範囲内であることが好ましい。高分子物質の分子量が2000未満の場合、顔料分散性が低下する場合があり、一方、分子量が15000を超える場合には、インクの粘度が高くなり、吐出性が悪化する場合がある。なお、樹脂のより好ましい重量平均分子量は、3500〜10000の範囲内である。
上記樹脂の重量平均分子量は以下の方法によって測定することができる。
例えば、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)にて標準試料としてポリスチレンを用い、樹脂を適当な溶媒(THF、NMP、トルエン等)に溶解し測定することで相対分子量を得ることができる。
実質的に樹脂によって分散された顔料を用いる場合、インク全質量中における顔料の含有量は、前記「自己分散可能な樹脂」の場合と同様の理由から、2〜15質量%の範囲が好ましく、3〜10質量%が更に好ましく、4〜8質量%が特に好ましい。
上記の通り、インク全質量中における顔料の含有量は、2〜15質量%の範囲が好ましく、3〜10質量%が更に好ましく、4〜8質量%が特に好ましい。
また、インク(前記自己分散可能な顔料を用いたインク、及び実質的に樹脂によって分散された顔料を用いたインクの何れをも含む)中における前記樹脂(分散剤)の含有量は、0.1〜3質量%の範囲内であることが好ましい。添加量が3質量%を超える場合には、インク粘度が高くなり、インクの噴射特性が不安定となる場合がある。一方、添加量が0.1質量%未満の場合には、顔料の分散安定性が低下する場合がある。更に、0.15〜2.5質量%の範囲がより好ましく、0.2〜2質量%の範囲が特に好ましい。
また更に、ブラックインクとカラーインクとを用いたインクジェット記録装置である場合、自己分散可能な顔料を含んだブラックインクと、実質的に樹脂によって分散された顔料を含んだカラーインクと、を用いることが特に好ましい。なお、上記カラーインクは、シアン、マゼンタ、イエローインク等から1色を用いたものであっても、複数色用いたものであっても構わない。
−インクにおける樹脂量の定量−
本発明においては、前述の「インクに含有される樹脂」とは以下の方法によって定量される成分をさす。即ち、前記樹脂の含有率は以下の方法によって定量される。
インク組成物を秤量し、質量(A)を測定する。これを加熱乾固させ、インク組成物中の固形分量(B)を秤量する。この固形物を量り取り熱重量分析により顔料以外の熱分解する固形分の質量(C)を測定する。この(C)を樹脂分とし、(B)中の樹脂量が分かる。さらに(A)と(B)の比を用いてインク中の樹脂の含有率を決定できる。
・染料
色材として染料を用いる場合は、公知のもの、あるいは新規に合成したものを用いることができ、又前記顔料と併用することもできる。中でも、鮮やかな色彩の得られる、直接染料あるいは酸性染料が好ましい。具体的には次のようなものが挙げられる
染料としては、特に限定されないが、好ましくは水溶性染料である。水溶性染料としては、酸性染料、直接染料として、例えば、C.I.ダイレクトブラック−2、−4、−9、−11、−17、−19、−22、−32、−80、−151、−154、−168、−171、−194、−195、C.I.フードブラック−1、−2、C.I.アシッドブラック−1、−2、−7、−16、−24、−26、−28、−31、−48、−52、−63、−107、−112、−118、−119、−121、−156、−172、−194、−208、C.I.ダイレクトブルー−1、−2、−6、−8、−22、−34、−70、−71、−76、−78、−86、−112、−142、−165、−199、−200、−201、−202、−203、−207、−218、−236、−287、−307、C.I.ダイレクトレッド−1、−2、−4、−8、−9、−11、−13、−15、−20、−28、−31、−33、−37、−39、−51、−59、−62、−63、−73、−75、−80、−81、−83、−87、−90、−94、−95、−99、−101、−110、−189、−227、C.I.ダイレクトバイオレット−2、−5、−9、−12、−18、−25、−37、−43、−66、−72、−76、−84、−92、−107、C.I.ダイレクトイエロー−1、−2、−4、−8、−11、−12、−26、−27、−28、−33、−34、−41、−44、−48、−58、−86、−87、−88、−132、−135、−142、−144、−173、C.I.アシッドレッド−1、−4、−8、−13、−14、−15、−18、−21、−26、−35、−37、−52、−110、−144.−180、−249、−257、C.I.アシッドイエロー−1、−3、−4、−7、−11、−12、−13、−14、−18、−19、−23、−25、−34、−38、−41、−42、−44、−53、−55、−61、−71、−76、−78、−79、−122等を挙げることができる。
特に好ましい染料は、C.I.フードブラック−2、C.I.ダイレクトブラック−154、−168、−195である。
染料を用いる場合、インク中における含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましく、0.8〜6質量%が特に好ましい。10質量%より多く含有させると記録ヘッド先端での目詰まりが発生しやすく、また0.1質量%より少ないと十分な画像濃度を得ることができない。
(その他の添加成分)
インクは、上記の成分の他に、溶媒として水を含むが、更に水溶性有機溶媒を添加することができる。水溶性有機溶媒をインクに添加すると、インクや液体組成物の保湿性及びインク中の顔料の分散性がさらに良好になり、目詰まりを防止したり、記録ヘッドからインクを吐出する際の吐出安定性を維持し、さらに、インクの長期の保存に対しても顔料、液体組成物に含まれる処理剤の凝集・析出を防ぐことができる。
−水溶性有機溶媒−
水溶性有機溶媒の具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
グリコールエーテルでは、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等など多価アルコール誘導体が挙げられる。
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
含硫黄溶媒としてはチオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を併せて用いることも出来る。エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類も使用することができる。水溶性有機溶媒の含有量としては、1〜60質量%、好ましくは、5〜40質量%で使用される。
−界面活性剤−
さらに、インクに界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、その分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等を使用することが出来、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等のいずれを使用しても構わない。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩およびスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が使用でき、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ケリルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等も有効に使用される。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、脂肪族アルカノールアミド、グリセリンエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用できる。
インク中に界面活性剤を添加する場合の添加量は、10質量%未満であることが好ましい。添加量が10質量%以上の場合には、画像濃度、及び、インクの保存安定性が悪化する場合がある。
−その他−
その他、インクの吐出性改善等の特性制御を目的として、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション等のポリマーエマルション、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド等を用いることができる。
また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物を使用することが出来る。
その他必要に応じ、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤等も添加することができる。
(インクの調製方法)
以下にインクの調製方法の一例を示す。
本発明に用いるインクが、前記の実質的に樹脂によって分散された顔料を用いたインクである場合には、例えば、前記樹脂(分散剤)を所定量含む水溶液に所定量の前記顔料を添加し、十分に攪拌した後、分散機を用いて分散を行い、遠心分離等で粗大粒子を除いた後、所定の前記水溶性有機溶媒、前記添加剤等を加えて攪拌混合し、次いで濾過を行って得ることができる。この際、予め顔料の濃厚分散体を作製し、インク調製時に希釈する方法も使用できる。また、分散工程の前に顔料の粉砕工程を設けてもよい。あるいは、所定の水溶性有機溶媒、水、分散剤を混合後、顔料を添加して、分散機を用いて分散させてもよい。
前記分散機は、市販のものを用いることができる。例えば、コロイドミル、フロージェットミル、スラッシャーミル、ハイスピードディスパーザー、ボールミル、アトライター、サンドミル、サンドグラインダー、ウルトラファインミル、アイガーモーターミル、ダイノーミル、パールミル、アジテータミル、コボルミル、3本ロール、2本ロール、エクストリューダー、ニーダー、マイクロフルイダイザー、ラボラトリーホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられ、これらを単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。なお、無機不純物の混入を防ぐためには、分散媒体を使用しない分散方法を用いることが好ましく、その場合には、マイクロフルイダイザーや超音波ホモジナイザー等を使用することが好ましい。
一方、顔料として前記自己分散可能な顔料を用いたインクである場合、例えば、顔料に対して表面改質処理を行ない、得られた顔料を水に添加し、十分攪拌した後、必要に応じて前記と同様の分散機による分散を行ない、遠心分離等で粗大粒子を除いた後、所定の樹脂、溶媒、添加剤等を加えて攪拌、混合、濾過を行なうことにより得ることができる。
<液体組成物>
本発明における液体組成物(以下、「処理液」と言う場合がある。)は、基本的に顔料等の色材を含まず、かつ、前記インクに含有される色材を凝集或いは沈降させる作用を有する化合物(以下、「凝集剤」ともいう。)、並びに式(1) C2n−(OH) (n=4〜6)及び/または式(2) C3X6X+2X+1 (X=1〜2)で表される化合物を含有する。
本発明における液体組成物は、前記凝集剤と、式(1)及び/又は式(2)で表される化合物と、を少なくとも含むものが用いられ、更に単糖類を添加することが好ましく、必要に応じてその他の成分が含まれていてもよい。
(式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物)
本発明における液体組成物には、インクと接触して固液分離する際の分離速度を速くするため、式(1) C2n−(OH) (n=4〜6)及び/又は式(2) C3X6X+2X+1 (X=1〜2)で表される化合物を少なくとも含有する必要がある。
上記式(1)及び/又は(2)で表される化合物を添加した液体組成物を用いた本発明のインクセットを用いて印字すると、特にベタ印字部で生じていた濃度ムラが減り、更にドライングが顕著に向上する。
本発明において、前記液体組成物に前記上記式(1)及び/又は(2)で表される化合物を添加した際の効果のメカニズムについては不明であるが下記のように推察している。
前記インク及び液体組成物を接触させた際、恐らく保水性が高い糖類により凝集体が水分を抱き込み凝集体の大きさが不揃いとなり、ベタ印字部で濃度ムラが生じ、更に凝集体の水分抱き込みによりドライングが遅くなるものと考えている。
本発明の前記特定の化合物を含有するインクセットでは、凝集体からの水分離脱が促進され、凝集体の液成分が凝集体から記録媒体(紙媒体)へと移動して、記録媒体への液成分の浸透が劇的に向上し高画質・高速印字が可能となるものと推察している。
前記式(1)CH(2n)−(OH) (n=4〜6)の具体例としては、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられ、中でも、溶解性の点で、n=6である1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。
また、前記式(2)C3X6X+2X+1 (X=1、2)の具体例としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが挙げられ、中でも、溶解性の点で、X=2であるジプロピレングリコールが好ましい。
本発明において、式(1)で表される化合物を単独で用いても複数を併用してもよい。また式(2)で表される化合物を単独で用いても複数を併用してもよい。
また、前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物の添加量としては、液体組成物全質量に対して、粘度上昇、インク保存安定性の観点から、3〜10質量%であることが好ましく、3.5〜8質量%であることがより好ましく、4〜7質量%であることが特に好ましい。
前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物の添加量が3質量%未満であると固液分離が遅く、ドライング不良となる場合があり、10質量%を超えるとインクの保存安定性が劣化する場合がある。
(凝集剤)
本発明における液体組成物は、インク中に含有される色材を凝集あるいは沈降させる化合物を含有する。該機能を有するものであれば特に限定されるものではないが、溶解性、インク保存安定性の観点から、有機酸、多価金属塩、ポリアミン類から選択される1種以上の化合物であることが好ましい。
−有機酸−
本発明における有機酸の具体例としては、2−ピロリドン−5−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、4−ブタノリド−3−カルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−5−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、チオフェンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−カルボン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸、フタル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、これらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等の化合物が挙げられる。これらはpH調整等の機能も有する。
上記以外の有機酸としては、上記スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等、及びそれらの塩が挙げられる。
上記の有機酸の中でも、好ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フタル酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。より好ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、フランカルボン酸、クマリン酸、若しくはこれらの化合物誘導体、又は、これらの塩である。
−多価金属塩−
多価金属塩としては、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、チオシアン酸、並びに、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、フタル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
具体例としては、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
−ポリアミン類−
ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体、及び、これら化合物のスルフォニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩、又は、リン酸エステル等が挙げられる。
本発明においては、凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。
また液体組成物中における凝集剤の添加量は、溶解性の観点から、3質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、4質量%以上18質量%以下であり、更に好ましくは、5質量%以上15質量%以下である。
液体組成物中における凝集剤の添加量が3質量%未満の場合には、記録媒体上でインクと液体組成物とが接触・混合した時に顔料の凝集が不充分となり、画像濃度、滲み、色間滲みが悪化する場合が存在し、一方、添加量が20質量%を超える場合には、噴射特性が低下し、液体が正常に噴射しにくくなる場合がある。
(単糖類)
本発明における液体組成物には、前記インクにおいて用いることができる単糖類を含有することがカール抑制向上の観点から好ましい。
該単糖類の好ましい例としては、前記インクと同様である。それらの中でも、前記インクと同一の単糖類を用いることが生産性、インクとの親和性の点で好ましい。
前記単糖類は単独で用いても、複数種併用してもよい。
液体組成物に用いることができる単糖類の含有量としては、液体組成物全質量に対して40質量%以下であることが好ましく、15〜38質量%であることがより好ましく、20〜35質量%であることが特に好ましい。
本発明における液体組成物には、前述の通り、水等の溶媒が用いられ、溶媒としてはインクに用いたものと同様のものが利用できる。
また、その他の成分としてもインクに用いるものと同様のものが粘度や表面張力等、所望の物性や特性が得られるように適宜利用できる。
(インクおよび液体組成物の諸物性)
次に本発明のインクセットに用いられるインクおよび液体組成物の好ましい物性について説明する。
本発明のインクセットがインク及び液体組成物を含む態様であり、インクが塩基性であり、液体組成物が酸性の組合せの場合、インクのpHは7.5以上10.5以下であり、液体組成物のpHは2.5以上7.0以下であることが好ましい。
一方、インクが酸性であり、液体組成物が塩基性の組合せの場合、インクのpHは2.5以上7.0以下であり、液体組成物のpHは7.5以上10.5以下であることが好ましい。より好ましくはインクのpHは3.0以上7.0以下、更に好ましくは3.5以上6.0以下である。より好ましくは液体組成物のpHは7.5以上10.0以下、更に好ましくは8.0以上9.5以下である。
酸性の液体(インク又は液体組成物)のpHが2.5未満の場合には、記録ヘッドのインク流路構成部分を溶解し、記録ヘッドを故障させる場合がある。
一方、酸性の液体のpHが7.0を超える場合には、インクと液体組成物とが記録媒体上で接触・混合した際に樹脂や顔料の凝集が不充分となり、画像濃度、滲み、色間滲みが悪化する場合がある。
塩基性の液体(インク又は液体組成物)のpHが7.5未満の場合、液体の長期噴射性が低下する場合があり、pHが10.5を超える場合には、記録ヘッドのインク流路構成部分を溶解し、記録ヘッドを故障させる場合がある。
インクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN/m以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となると記録ヘッドのノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
また、インクの粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。インクの粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合があり、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
一方、液体組成物の表面張力は、20mN/m以上45mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上39mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、45mN/mを超えると浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。
液体組成物が単糖類を含有する場合は、25mN/m以上35mN/m以下であることが好ましい。
液体組成物の粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。液体組成物の粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合があり、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
液体組成物が単糖類を含有する場合は、3mPa・s以上15mPa・s以下であることが好ましい。
(インクジェット記録方法、インクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明のインクジェット用インクセットを用い、インクと液体組成物とを記録媒体に付与して画像を記録(形成)する方法である。特に前記各液体を互いに接触させるように記録媒体上に吐出して、画像を形成する方法であることが好ましい。
これらは、通常のインクジェット記録装置は勿論、インクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載した記録装置、又は、中間体転写機構を搭載し、中間体にインク及び液体組成物を吐出(印字)した後、紙等の記録媒体に転写する記録装置等を適用することができる。
また、本発明のインクジェット記録装置は、上記本発明のインクジェット用インクセットを用い、インクと液体組成物とを記録媒体に付与して画像を記録(形成)する装置であり、更に前記記録媒体を加温する機構を搭載することが好ましい。
該加温する機構をインクジェット記録装置に搭載することにより、インクと液体組成物とが記録媒体に付与され、その混合液を速く乾燥することができる点で好ましい。記録媒体上は前記インク及び液体組成物を付与する前に、加温されても、また、インク及び液体組成物が付与された後で加温されても良いが、インク及び液体組成物が付与された前及び/又は後で、或いは付与されると同時に加温することがより好ましい。
前記記録媒体を加温する機構としては、前記記録媒体を加温できる機構(媒体加温部)を有するものであれば特に限定されず用いることができ、具体的には、媒体搬送ローラ中にヒーターを組み込んだもの等を適用することができる。
インクジェット記録装置における前記媒体加温部の位置としては、前記記録媒体を効率的に加温できる場所であれば、インクジェット記録装置のいずれの場所であってもよいが、水分の効率的な蒸発の観点から、水平位置としては記録媒体にインク及び液体組成物が付与される位置(記録位置)のヘッド近傍が好ましく、媒体搬送経路中のヘッド部分の前後がより好ましい。また、前記記録媒体に対して、前記媒体加温部の垂直方向の位置としては、前記記録媒体に直接接していても、また離れていてもよいが、水分の効率的な蒸発及び記録媒体の汚染の観点から、ヘッド近傍が好ましく、媒体搬送経路中のヘッド部分の前後がより好ましい。
以上の中でも、ヘッド部分の前及び後に加温部を配置することが好ましい。
前記加温する温度としては、水分の蒸発乾燥の観点から、40〜180℃であることが好ましく、60〜150℃がより好ましく、60〜100℃が特に好ましい。
40℃未満の温度であると、水分蒸発が不十分となる場合があり、180℃を超えると部材変形が顕著となる場合がある。
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、インク及び液体組成物ともに、1ドロップ当たりの液体質量は25ng以下であることが好ましい。より好ましくは、0.5ng以上20ng以下であり、更に好ましくは、2ng以上8ng以下である。1ドロップ当たりの液体質量が25ngを超える場合には、滲みが悪化する場合が存在した。これは、インク及び液体組成物の記録媒体に対する接触角がドロップ量に依存して変化するためであり、ドロップ量が増えるにつれてドロップが紙表面方向に広がりやすい傾向があるためと考えている。
但し、一つのノズルから複数の体積のドロップを噴射することが可能であるインクジェット装置において、上記ドロップ量とは、印字可能な最小ドロップのドロップ量を指すこととする。
また、インク及び液体組成物とは互いに接触するように、記録媒体上に付与されるが、接触していれば、互いに隣接するよう付与されても、覆い被さるように付与されても、どちらでもよい。
また、記録媒体への付与の順番は、液体組成物を付与した後、インクを付与する。液体組成物を先に付与することで、インク中の色材を効果的に凝集させることが可能となるからである。液体組成物を付与した後であれば、いかなる時期にインクを付与してもかまわない。好ましくは、液体組成物を付与してから1秒以下であり、より好ましくは0.5秒以下である。
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、記録媒体上に吐出するインク総量と液体組成物総量との比率(インク総量:液体組成物総量)は、1:0.5〜1:0.05であることが好ましい。インク総量が液体組成物総量に対して少なすぎたり、多すぎたり場合には、色材の凝集が不充分となり、光学濃度の低下、滲みの悪化、色間滲みの悪化が生じる場合が存在した。
本発明のインクジェット記録方法(装置)は、滲み及び色間滲みの改善効果という観点から熱インクジェット記録方式、又は、ピエゾインクジェット記録方式を採用することが好ましい。この効果をもたらすメカニズムは明らかとはなっていないが、熱インクジェット記録方式の場合、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果があると考えられる。一方、ピエゾインクジェット方式の場合、高粘度の液体を吐出することが可能であり、高粘度の液体は記録媒体上での紙表面方向への広がりを抑制することが可能となるため、滲み、及び、色間滲みに改善効果があるものと推測している。
本発明のインクジェット記録方法(装置)において、インク及び液体組成物の記録ヘッドへの補給(供給)は、インク及び液体組成物のインクセットを収納した(各液体を満した)インクタンク(液体組成物タンクを含む)から行われることがよい。このインクタンクは、装置に脱着可能なカートリッジ方式であることがよく、このカートリッジ方式のインクタンクを交換することで、インク及び液体組成物の補給が簡易に行われる。
以下、図面を参照しながら本発明のインクジェット記録装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、実質的に同様の機能を有する部材については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。図2は、図1のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する)における内部の基本構成を示す斜視図である。
本実施形態の画像形成装置100は、前述の本発明のインクジェット記録方法に基づいて作動し画像を形成する構成を有している。すなわち、図1及び図2に示すように、画像形成装置100は、主として、外部カバー6と、普通紙などの記録媒体1を所定量載置可能なトレイ7と、記録媒体1を画像形成装置100内部に1枚毎に搬送するための搬送ローラ(搬送手段)2と、記録媒体1の面にインク及び処理液を吐出して画像を形成する画像形成部8(画像形成手段)と、画像形成部8のそれぞれのサブインクタンク5へインク及び処理液を補給するメインインクタンク4と、から構成されている。さらに、前記記録媒体1を加温する媒体加温部(媒体加温手段)を構成要素として有することが好ましい。前記媒体加温部については後述する。
搬送ローラ2は画像形成装置100内に回転可能に配設された一対のローラで構成された紙送り機構であり、トレイ7にセットされた記録媒体1を挟持するとともに、所定量の記録媒体1を所定のタイミングで1枚毎に画像形成装置100内部に搬送する。
画像形成部8は記録媒体1の面上にインクによる画像を形成する。画像形成部8は、主として記録ヘッド3と、サブインクタンク5と、給電信号ケーブル9と、キャリッジ10と、ガイドロッド11と、タイミングベルト12と、駆動プーリ13と、メンテナンスユニット14とから構成されている。
サブインクタンク5はそれぞれ異なる色のインク及び処理液が記録ヘッドから吐出可能に納められたサブインクタンク51、52、53、54、55を有している。これらには、例えば、ブラックインク(K)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)の4色のインクに加えて処理液が満たされ、メインインクタンク4から補給され納められている。
サブインクタンク5には、それぞれ排気孔56と補給孔57とが設けられている。そして、記録ヘッド3が待機位置(もしくは補給位置)に移動したとき、排気孔56及び補給孔57に補給装置15の排気用ピン151及び補給用ピン152がそれぞれ挿入されることで、サブインクタンク5と補給装置15とが連結可能となっている。また、補給装置15はメインインクタンク4と補給管16を介して連結されており、補給装置15によりメインインクタンク4から補給孔57を通じてサブインクタンク5へとインク又は処理液を補給する。
ここで、メインインクタンク4も、それぞれ異なる色のインク及び処理液が納めされたメインインクタンク41、42、43、44、45を有している。そして、これらには、例えば、第1の液体として、ブラックインク(K)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)、シアンインク(C)が、第2の液体として処理液が満たされ、それぞれが画像形成装置100に脱着可能に格納されている。
さらに、記録ヘッド3には給電信号ケーブル9とサブインクタンク5が接続されており、給電信号ケーブル9から外部の画像記録情報が記録ヘッド3に入力されると、記録ヘッド3はこの画像記録情報に基づき各サブインクタンク5から所定量のインクを吸引して記録媒体の面上に吐出する。なお、給電信号ケーブル9は画像記録情報の他に記録ヘッド3を駆動するために必要な電力を記録ヘッド3に供給する役割も担っている。
また、この記録ヘッド3はキャリッジ10上に配置されて保持されており、キャリッジ10はガイドロッド11、駆動プーリ13に接続されたタイミングベルト12が接続されている。このような構成により、記録ヘッド3はガイドロッド11に沿うようにして、記録媒体1の面と平行でありかつ記録媒体1の搬送方向X(副走査方向)に対して垂直な方向Y(主走査方向)にも移動可能となる。
画像形成装置100には、画像記録情報に基づいて記録ヘッド3の駆動タイミングとキャリッジ10の駆動タイミングとを調製する制御手段(図示せず)が備えられている。これにより、搬送方向Xにそって、所定の速度で搬送される記録媒体1の面の所定領域に画像記録情報に基づく画像を連続的に形成することができる。
メンテナンスユニット14は、チューブを介して減圧装置(図示せず)に接続されている。更にこのメンテナンスユニット14は、記録ヘッド3のノズル部分に接続し、記録ヘッド3のノズル内を減圧状態にすることにより記録ヘッド3のノズルからインクを吸引する機能を有している。このメンテナンスユニット14を設けておくことにより、必要に応じて画像形成装置100が作動中にノズルに付着した余分なインクを除去したり、作動停止状態のときにノズルからのインクの蒸発を抑制することができる。
図3は本発明のインクジェット記録装置の好適な他の一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。図4は、図3のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する)における内部の基本構成を示す斜視図である。本実施形態の画像形成装置101は、前述の本発明のインクジェット記録方法に基づいて作動し画像を形成する構成を有している。
図3及び図4に示す画像形成装置101は、記録ヘッド3の幅が記録媒体1幅と同じ又はそれ以上であり、キャリッジ機構を持たず、副走査方向(記録媒体1の搬送方向:矢印X方向)の紙送り機構(本実施形態では搬送ローラ2を示しているが、例えばベルト式の紙送り機構でもよい)で構成されている。
また、図示しないが、サブインクタンク51〜55を副走査方向(記録媒体1の搬送方向:矢印X方向)に順次配列させるのと同様に、各色(処理液も含む)を吐出するノズル群も副走査方向に配列させている。これ以外の構成は、図1及び2に示す画像形成装置100と同様なので説明を省略する。なお、図中、記録ヘッド3は移動しないので、サブインクタンク5は補給装置15と常時連結した構成を示しているが、インク補給時に補給装置15と連結する構成でもよい。
図3及び図4に示す画像形成装置101では、記録媒体1の幅方向(主走査方向)の印字を記録ヘッド3により一括で行うため、キャリッジ機構を持つ方式に比べ、装置の構成が簡易であり、印字速度も速くなる。
続いて、前記記録媒体1を加温する機構(媒体加温部)について図5〜7を用いて説明する。
図5は、本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観構成を示す斜視図である。また、図6は図5に用いられる加熱ローラ(媒体加温部)の一例を示す縦断面図である。更に、図7は本発明のインクジェット記録装置(以下、画像形成装置と称する。)の別の好適な一実施形態の外観構成を示す横断面概略図である。
図5に示す画像形成装置102は、前述の本発明のインクジェット記録方法に基づいて動作し画像を形成する構成を有している。
該画像形成装置102は、媒体搬送経路の最後に位置する搬送ローラ2に対向する位置に加熱ローラ201(媒体加温部)を有している以外は、図3及び4に示す画像形成装置101と同様の構成及び機能を有している。
そして、前記画像形成装置102は、前記加熱ローラ201を搭載することにより、画像形成された記録媒体1の水分は素早く蒸発して、効率的に乾燥した画像を形成することができる。
前記加熱ローラ201は、表面層203、導電層204、弾性層206、熱源205から構成され、前記熱源205から供給される熱により画像形成された記録媒体1を加温するようになっている。該加熱ローラ201は、インクジェット記録装置等に用いられる従来公知のものを適宜選択して用いることができる。
図7における画像記録装置103は、図5における画像記録装置102に有する加熱ロール13の代わりに、熱源209を有する加熱用装置207を用いる以外は、図5と同様な構成及び機能を有するようになっている。
そして、前記画像形成装置103は、前記加熱用装置207を搭載することにより、画像形成される記録媒体1を加温して、画像形成された後の記録媒体上の水分は素早く蒸発して、効率的に乾燥した画像を得ることができる。
以下、本発明を、実施例を挙げて更に具体的に説明する。但し、これらの各実施例は、本発明を制限するものではない。
[インク及び液体組成物の作製]
下記のインク組成及び液体組成物(処理液)組成に従い、化合物を混合し、攪拌した後、目開き5μmのメンブランフィルターを用いてろ過して、所望のインク及び液体組成物を得た。
<インク1>
・顔料(キャボット社製 MogulL):5質量%
・スチレン/ n−ブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体のナトリウム塩(分子量約7000):2質量%
・ジエチレングリコール:10質量%
・グリセリン:5質量%
・グルコース:30質量%
・オルフィンE1010(日信化学社製):1質量%
・純水:残部
このインクのpHは8.4、粘度は11mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<インク2>
上記インク1において、グルコースを10質量%とし、あらたに1,2−ヘキサンジオール量を5質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.5、粘度は6mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<インク3>
上記インク1において、グルコースを20質量%とし、あらたにプロピレングリコール量を3質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.3、粘度は9mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
<インク4>
上記インク1において、グルコースをガラクトースに変えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.4、粘度は11mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<インク5>
上記インク1において、グルコースを20質量%、あらたにジプロピレングリコールを3質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.5、粘度は9mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<インク6>
上記インク1において、グルコースを40質量%とした以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.4、粘度は15mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<インク7>
上記インク1において、グルコースを10質量%とし、あらたに1,2−ヘキサンジオールを10質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.4、粘度は8mPa・s、表面張力は30mN/mであった。
<インク8>
上記インク1において、グルコースを5質量%とした以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.6、粘度は4mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<インク9>
上記インク1において、グルコースを10質量%とし、あらたに1,2−ヘキサンジオール量を2質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.5、粘度は5mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<インク10>
上記インク1において、グルコースを45質量%とした以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.6、粘度は18mPa・s、表面張力は33mN/mであった。
<インク11>
上記インク1において、あらたに1,2−ヘキサンジオールを15質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.4、粘度は13mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<インク12>
上記インク1において、グルコースを10質量%とし、あらたにジエチレングリコールモノブチルエーテルを5質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.3、粘度は6mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<インク13>
上記インク1において、色材をC.I. Food Black 2とし、樹脂成分を0質量%、あらたに1,2−ヘキサンジオールを5質量%加えた以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.9、粘度は5mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
<インク14>
上記インク1において、グルコースを0質量%とした以外は、インク1と同様とした。
このインクのpHは8.6、粘度は4mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
<処理液1>
・ジエチレングリコール:15質量%
・グリセリン:5質量%
・1,2−ヘキサンジオール:5質量%
・ピロリドンカルボン酸:5質量%
・オルフィンE1010(日信化学社製):1質量%
・純水:残部
上記に水酸化ナトリウムを用いてpH3に調整した。
この処理液の粘度は4mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
<処理液2>
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを0質量%とし、あらたにプロピレングリコールを3質量%加え、ピロリドンカルボン酸量を3質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は3.5mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
<処理液3>
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを10質量%、ピロリドンカルボン酸を0質量%とし、あらたに硝酸マグネシウムを3質量%加えた以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は4.5mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
<処理液4>
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを3質量%、ピロリドンカルボン酸を10質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は5mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<処理液5>
処理液1において、ピロリドンカルボン酸を10質量%とし、あらたにグルコースを40質量%加えた以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は13mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<処理液6>
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを0質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は3.5mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<処理液7>
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを2質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は3.5mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
<処理液8>
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを15質量%、ピロリドンカルボン酸を3質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は12mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<処理液9>
処理液1において、ピロリドンカルボン酸を15質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は5mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
<処理液10>
処理液1において、ピロリドンカルボン酸を2質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は4mPa・s、表面張力は31mN/mであった。
<処理液11>
処理液1において、グルコースを45質量%加えた以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は15mPa・s、表面張力は33mN/mであった。
<処理液12>
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールをジエチレングリコールモノブチルエーテルとした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は3.5mPa・s、表面張力は32mN/mであった。
<処理液13>
処理液1において、1,2−ヘキサンジオールを0質量%、オルフィンE1010を3質量%とした以外は、処理液1と同様とした。
この処理液の粘度は4.5mPa・s、表面張力は30mN/mであった。
(実施例1〜18、比較例1〜10)
[評価]
(印字)
印字装置として、A4の富士ゼロックス製C2紙に800dpi、256ノズルの試作ヘッドを紙幅に並べたヘッドユニット2本からなる試作プリンタを用いて、上記で得られた処理液を1.8mg/inch条件かつ余白部5mmのベタ画像を印字後、更に上記で得られたインクを7.3mg/inchの条件かつ余白部5mmのベタ画像を印字した。
(固液分離)
サンプル瓶に、上記で得られたインク:処理液=20g:6gの量を量り取り混合後静置し、固液分離するまでの時間(分)を測定して、下記基準で評価した。
固液分離するまでの時間は、目視観察して透明な上澄み層を確認したときを固液分離したと判断した。結果を表1に記載した。
<評価基準>
◎:5分未満
○:5分以上15分未満
△:15分以上30分未満
×:30分以上
(濃度)
上記で得られた印字物の印字部の光学濃度をX−Rite404にて測定して下記基準で評価した。結果を表1に記載した。
<評価基準>
◎:OD値1.4以上
○:OD値1.2以上1.4未満
△:OD値1.1以上1.2未満
×:OD値1.1未満
(濃度ムラ)
上記で得られた印字物のベタ部の濃度ムラを目視観察により下記基準で評価した。結果を表1に記載した。
<評価基準>
○:ムラなし
×:ムラあり
(カール)
上記で得られた印字物を温湿度18〜23℃35〜45%RHの条件下24時間後に四隅のカール高さを測定し平均のカール量(mm)を算出し、下記基準で評価した。結果を表1に記載した。
<評価基準>
◎:カール量が20mm未満
○:カール量が20mm以上30mm未満
△:カール量が30mm以上40mm未満
×:カール量が40mm以上
(超高速ドライング)
ベタ部印字中をビデオカメラで目視観察し、液体分が表面から無くなる時間を測定してドライングを下記基準で評価した
<評価基準>
○:1秒未満で液体なし
×:1秒以上で液体あり
Figure 2008100371
表1から明らかな通り、比較例のいずれにおいても、固液分離等の評価項目の全てが良好となるものはなかった。
一方、実施例はいずれの評価においても、不良であるものがなく、特に実施例1〜8、14、16は極めて良好であることが分かった。
本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観の構成を示す斜視図である。 図1のインクジェット記録装置における内部の基本構成を示す斜視図である。 本発明のインクジェット記録装置の好適な他の一実施形態の外観構成を示す斜視図である。 図3のインクジェット記録装置における内部の基本構成を示す斜視図である。 本発明のインクジェット記録装置の好適な一実施形態の外観構成を示す斜視図である。 図5に用いられる加熱ロールの一例を示す縦断面図である。 本発明のインクジェット記録装置の別の好適な一実施形態の外観構成を示す横断面概略図である。
符号の説明
1 記録媒体
2 搬送ローラ
3 記録ヘッド
4 メインインクタンク
5 サブインクタンク
6 外部カバー
7 トレイ
8 画像形成部
9 給電信号ケーブル
10 キャリッジ
11 ガイドロッド
12 タイミングベルト
13 駆動プーリ
14 メンテナンスユニット
15 補給装置
16 補給管
41、42、43、44、45 メインインクタンク
51、52、53、54、55 サブインクタンク
56 排気孔
57 補給孔
100、101、102、103 画像形成装置
151 排気用ピン
152 補給用ピン
201 加熱ロール
203 表面層
204 導電層
206 弾性層
207 ヒーターを組み込んだ装置
209 ヒーター
P 用紙搬送方向

Claims (14)

  1. 色材を含むインクと、色材を凝集あるいは沈降させる化合物を含む液体組成物と、を有するインクセットであって、インクに水酸基を3〜5個有する単糖類、少なくとも液体組成物に式(1) C2n−(OH) (n=4〜6)及び/または式(2) C3X6X+2X+1 (X=1〜2)で表される化合物を含有するインクセット。
  2. 前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物がn=6及び/またはx=2である請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物の添加量が液体組成物全質量に対して、3〜10質量%である請求項1又は2に記載のインクセット。
  4. 前記インク全質量中に含有する単糖類の量が10〜40質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクセット。
  5. 前記色材を凝集あるいは沈降させる化合物の添加量が液体組成物全質量に対して、3〜20質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクセット。
  6. 前記色材を凝集あるいは沈降させる化合物が有機酸、多価金属塩、ポリアミン類から選ばれる1種以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクセット。
  7. 前記色材が顔料である請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクセット。
  8. 前記液体組成物に単糖類を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクセット。
  9. 前記液体組成物に含有する単糖類の量が40質量%以下である請求項8に記載のインクセット。
  10. 前記単糖類を含有する液体組成物の粘度が3〜15mPa・sであり、表面張力が25〜35mN/mである請求項8又は9に記載のインクセット。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクセットにおけるインク及び液体組成物を記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクセットを収納したインクタンク。
  13. 請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクセットにおけるインク及び液体組成物を記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録装置。
  14. 前記記録媒体を加温する機構を有する請求項13に記載のインクジェット記録装置。
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