JP4416080B2 - プリント配線基板形成用インク、プリント配線基板の形成方法及びプリント配線基板 - Google Patents

プリント配線基板形成用インク、プリント配線基板の形成方法及びプリント配線基板 Download PDF

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Description

本発明は、プリント配線基板、特にオンデマンドで回路を形成したプリント配線基板に関し、さらに高密度の回路が簡易に形成できるプリント配線基板の形成方法及びそれに用いるインクに関する。
基板上に導電パターンを形成する方法として、(i) 銀や銅等の導電膜をスパッタリング、真空蒸着、無電解めっき、金属箔の接合等により全面に形成した後、フォトリソグラフィーにより所望のパターンにエッチングする方法、(ii) マスクを通して無電解めっきや真空蒸着等により所望の導電パターンを形成する方法、(iii) はんだや導電ペーストを用いて基板上に描画する方法、(iv) 異方性導電膜を形成し、所望のパターンに圧着する方法等が知られている。しかしながら、これらの方法では微細な導電パターンを迅速に形成することは困難である。
以上の方法の他に、インクジェットやディスペンサー等の技術を用いて銀インクを吐出させ、銀の導電パターンを形成する方法も知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、金属粒子のサイズが数十nm以下になると表面積が大きくなり、酸化を受けやすくなるので、抵抗値の増大が無視できなくなる。この傾向は銅や錫等の標準電極電位がより卑であるナノ粒子の場合顕著であり、インクの保存や取扱いが面倒であるという問題を有する。
また特開昭59-36993号(特許文献2)には、Cu2O単体、Cu2OとSiOの混合物、Cu2OとSiO2の混合物等の絶縁物をスパッタリング、イオンプレーティング、CVD等の気相法で成膜し、選択的なエネルギー照射により前記絶縁層の一部を金属化して導電パターンを形成する方法が開示されている。この方法は平滑な表面が得られることから薄膜多層配線構造を形成するには適しているが、成膜に時間を要すること、オンデマンドには不適であること等の問題を有している。
さらに特開平5-37126号(特許文献3)には、基板上に金属酸化物を主成分とする層を設け、光もしくは熱の作用により還元金属領域からなる配線パターンを形成する方法が開示されている。この方法はカーボン微粒子や水素ガスを還元性物質として用いておりしかも金属酸化物を主成分とする層全面に作用する構成となっている。このため、光もしくは熱の拡散により高精細な導電パターンを得にくいという問題がある。
特開2002-299833号公報 特開昭59-36993号公報 特開平5-37126号公報
従って本発明の目的は、多層配線構造が可能なオンデマンドで高精細のプリント配線基板を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、簡易且つ迅速に微細な導電パターンを描画することができるプリント配線基板の形成方法を提供することである。
本発明のさらにもう一つの目的は、簡易且つ迅速に微細な導電パターンを描画することができるプリント配線基板の形成に用いるインクを提供することである。
(1) 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する分散液からなるプリント配線基板形成用インクであって、エネルギー照射により前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部が金属に還元されることを特徴とするプリント配線基板形成用インク。
(2) 前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子に対して実質的に常温では還元性を有さないがエネルギー照射により還元性を発揮する還元剤を含有する分散液からなることを特徴とする前記(1)に記載のプリント配線基板形成用インク。
(3) 前記還元剤が有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする前記(2)に記載のプリント配線基板形成用インク。
(4) 前記有機還元剤がヒドラジン系化合物類、ヒドロキシルアミン系化合物類、アルカノールアミン類、ジオール類及び一般式:X-(A=B)n-Y(ただし、A及びBはそれぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYの各々は非共有電子対を有する原子がA又はBに結合する原子団を表し、nは0〜3を表す。)により表される化合物類からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物であることを特徴とする前記(3)に記載のプリント配線基板形成用インク。
(5) さらに塩基又は塩基プレカーサを含有することを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
(6) さらに吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
(7) 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する分散液と、前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子に対して還元性を発揮する還元剤又はその溶液との少なくとも2パーツからなり、両液を混ぜることにより前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部が金属に還元されるプリント配線基板形成用インク。
(8) 前記還元剤が有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする前記(7)に記載のプリント配線基板形成用インク。
(9) 前記有機還元剤がヒドラジン系化合物類、ヒドロキシルアミン系化合物類、アルカノールアミン類、ジオール類及び一般式:X-(A=B)n-Y(ただし、A及びBはそれぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYの各々は非共有電子対を有する原子がA又はBに結合する原子団を表し、nは0〜3を表す。)により表される化合物類からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物であることを特徴とする前記(8)に記載のプリント配線基板形成用インク。
(10) 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する分散液又は別液(還元剤又はその溶液)に塩基又は塩基プレカーサを添加することを特徴とする前記(7)〜(9)のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
(11) 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の表面に吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子を吸着させることを特徴とする前記(7)〜(10)のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
(12) 前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を構成する金属がAu、Ag、Cu、Pt、Pd、In、Ga、Sn、Ge、Sb、Pb、Zn、Bi、Fe、Ni及びCoからなる群から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
(13) 前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を構成する金属がAg又はCuからなることを特徴とする前記(1)〜(12)のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
(14) 前記(1)〜(13)のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インクによって基板上にパターンを描画する工程、および前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部を金属に還元して導電パターンを形成する工程を有することを特徴とするプリント配線基板の形成方法。
(15) インクジェットプリンター又はディスペンサーによってパターンを描画することを特徴とする前記(14)に記載のプリント配線基板の形成方法。
(16) 前記パターンを図形情報としてコンピュータに入力し、前記図形情報に基づき、前記プリント配線基板形成用インクでパターンを描画することを特徴とする前記(14)又は(15)に記載のプリント配線基板の形成方法。
(17) 前記導電パターンを形成する工程において、エネルギー照射を行うことを特徴とする前記(14)〜(16)のいずれか一項に記載のプリント配線基板の形成方法。
(18) レーザービーム、電子ビーム、イオンビーム及び熱線から選ばれる少なくとも1種によってエネルギー照射を行うことを特徴とする前記(17)に記載のプリント配線基板の形成方法。
(19) 導電パターンを形成する工程を不活性ガス中で行うことを特徴とする前記(14)〜(18)のいずれか一項に記載のプリント配線基板の形成方法。
(20) 前記(1)〜(13)のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インクで描画されたパターンを有することを特徴とするプリント配線基板。
(21) 前記(14)〜(19)のいずれか一項に記載のプリント配線基板の形成方法で形成されたことを特徴とするプリント配線基板。
Cu2OやAg2O等の金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する本発明のプリント配線基板形成用インクを用いることで、基板上に容易に精密な導電パターンを形成することができる。これにより、簡単、迅速かつ安定に精密な導電パターンを有するプリント配線基板を提供することができる。
本発明の第一のプリント配線基板は、金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する分散液を基板上にパターン状に描画した後、エネルギー照射により前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部を金属に還元して導電パターンを形成したことを特徴とする。
本発明の第二のプリント配線基板は、金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子及び前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子に対して実質的に常温では還元性を有さないがエネルギー照射により還元性を発揮する還元剤を含有する分散液を基板上にパターン状に描画した後、エネルギー照射により前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部を金属に還元して導電パターンを形成したことを特徴とする。
本発明の第三のプリント配線基板は、金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する分散液と、前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子に対して還元性を発揮する還元剤又はその溶液とを別々に調製し、両液を使用直前に混合して基板上にパターン状に描画した後、又は別々に基板上に描画して混合した後に、前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部を金属に還元して導電パターンを形成したことを特徴とする。
本発明の第一のプリント配線基板の形成方法は、金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する分散液を基板上にパターン状に描画した後、エネルギー照射により前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部を金属に還元して導電パターンを形成することを特徴とする。
本発明の第二のプリント配線基板の形成方法は、金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子及び前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子に対して実質的に常温では還元性を有さないがエネルギー照射により還元性を発揮する還元剤を含有する分散液を基板上にパターン状に描画した後、エネルギー照射により前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部を金属に還元して導電パターンを形成したことを特徴とする。
本発明の第三のプリント配線基板の形成方法は、(a) 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する分散液と、前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子に対して還元性を発揮する還元剤又はその溶液とを別々に調製し、(b) 両液を使用直前に混合して基板上にパターン状に描画するか、別々に基板上にパターン状に描画して混合した後に、(c) 前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部を金属に還元して導電パターンを形成することを特徴とする。
本発明のプリント配線基板及びその形成方法において、以下の条件を満たすのが好ましい。
(1) 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する分散液、又は別液(還元剤又はその溶液)のいずれかに塩基又は塩基プレカーサを含有する。
(2) 前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を構成する金属がAu、Ag、Cu、Pt、Pd、In、Ga、Sn、Ge、Sb、Pb、Zn、Bi、Fe、Ni及びCoからなる群から選ばれた少なくとも1種からなる。
(3) 前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を構成する金属がAg又はCuからなる。
(4) 前記還元剤が有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物である。
(5) 前記有機還元剤がヒドラジン系化合物類、ヒドロキシルアミン系化合物類、アミノアルコール類、ジオール類及び一般式:X-(A=B)n-Y(ただし、A及びBはそれぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYの各々は非共有電子対を有する原子がA又はBに結合する原子団を表し、nは0〜3を表す。)により表される化合物類からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物である。
(6) エネルギー照射手段がレーザービーム、電子ビーム、イオンビーム及び熱線から選ばれた少なくとも1種である。
本発明のプリント配線基板の形成方法において、さらに以下の条件を満たすのが好ましい。
(7) 導電パターンを図形情報としてコンピュータに入力し、前記図形情報に基づき、インクを基板上に吐出して導電パターンを形成する。
(8) 導電パターンを図形情報としてコンピュータに入力し、前記図形情報に基づき、インクを基板上にパターン状に吐出した後、さらにエネルギー照射することにより導電パターンを形成する。
(9) 分散液と還元剤又はその溶液の混合から、基板上への分散液などの吐出・描画、乾燥、導電パターンの形成まで、全ての工程を不活性ガス中で行う。
本発明のプリント配線基板形成用インクは、(a) 少なくとも金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する分散液、(b) 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液及び還元剤を含有する溶液の少なくとも2パーツ、又は(c) 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液及び塩基又は塩基プレカーサ溶液の少なくとも2パーツからなることを特徴とする。
本発明のプリント配線基板形成用インクをインクジェットやディスペンサー等の技術を用いて描画した基板にエネルギー照射すると、金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部が還元されて金属からなる導電性のパターンがオンデマンドで簡易、迅速に形成される。さらに常温では安定な(金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を還元しにくい)弱い還元剤でもエネルギー照射により還元作用が増強されるので、併用することが望ましい。またエネルギービームを絞って金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の還元を選択的に行うことにより絶縁体である金属酸化物微粒子描画層がさらに微細なパターン状に導体化するので、平滑な面の中に高精細・高密度の導電パターンを形成することができ、多層配線パターンを得ることができる。本発明では、基板上に均一に塗布したインクの上にエネルギー照射をパターン状に行っても良いし、基板上にパターン状に吐出したインクの上にエネルギー照射を全体的に行っても良い。また、導電性のパターン部以外の箇所には絶縁体からなる別のインクを吐出してして平面性をもたせることもできる。
以下、本発明について詳細に説明する。
[1] 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液
(A) 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の組成及びサイズ
本発明に用いる金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を構成する金属としては、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、In、Ga、Sn、Ge、Sb、Pb、Zn、Bi、Fe、Ni、Co、Mn、Tl、Cr、V、Ru、Rh、Ir、Al等が挙げられる。これらの金属の酸化物又は水酸化物の中では、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、In、Ga、Sn、Ge、Sb、Pb、Zn、Bi、Fe、Ni及びCoの酸化物が好ましく、特にAg又はCuの酸化物(例えばAg2OやCu2O等)は還元されやすく、生成した金属が比較的安定であるので好ましい。この金属酸化物微粒子の平均結晶子サイズは1〜100 nm、好ましくは1〜50 nmである。
(B) 製造方法
金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液は、金属塩(前記金属の塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、有機酸塩等)の溶液を塩基性溶液で中和処理したり、金属アルコキシドを加水分解したり、高原子価の金属塩溶液に還元剤を添加して、低原子価の金属酸化物又は水酸化物に還元すること等により調製することができる。有機酸塩の場合、有機酸の好ましい具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2-エチル酪酸、ピバル酸、吉草酸、イソ吉草酸、プロピオール酸、乳酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、安息香酸、フタル酸、サリチル酸、アクリル酸、メタクリル酸、エチルメチル酢酸、アリル酢酸、アセト酢酸等が挙げられる。
必要に応じて金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の表面に吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子を吸着させて、金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を表面修飾して分散液を安定化しても良い。
金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液は、必要に応じて吸着性化合物及び/又は界面活性剤の存在下で遠心分離等によって沈降させ、得られた金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を洗浄した後、別の分散溶媒で再分散しても良い。また、脱塩等の精製、濃縮処理を行っても良い。
(a) 吸着性化合物
吸着性化合物としては、-SH、-CN、-NH2、-SO2OH、-SOOH、-OPO(OH)2、-COOH等の官能基を有する化合物が有効であり、特に-SH基を有する化合物(ドデカンチオール、L-システイン等)、又は-NH2基を有する化合物(オクチルアミン、ドデシルアミン、オレイルアミン、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等)が好ましい。親水性コロイドの場合、親水性基[例えば、-SO3Mや-COOM(Mは水素原子、アルカリ金属原子又はアンモニウム分子等を表わす)]を有する吸着性化合物を使用するのが好ましい。
(b) 界面活性剤
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤(例えば、ビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、ノニオン界面活性剤(例えばポリアルキルグリコールのアルキルエステルやアルキルフェニルエーテル等)、フッ素系界面活性剤等を使用することができる。
(c) 親水性高分子
また親水性高分子として、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等をコロイド分散液中に含有させても良い。
(d) 添加量
吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子の添加量は、金属酸化物微粒子に対して質量比で0.01〜2倍であるのが好ましく、0.1〜1倍がさらに好ましい。吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子は金属酸化物微粒子の表面を0.1〜10 nmの厚さに被覆するのが好ましい。なお被覆は一様である必要がなく、金属酸化物微粒子の表面の少なくとも一部が被覆されていれば良い。
金属酸化物微粒子が吸着性化合物、界面活性剤又は親水性高分子等の有機化合物で表面修飾されていることは、FE-TEM等の高分解能TEMの観察において金属酸化物微粒子間隔が一定であること、及び化学分析により確認することができる。
(e) 溶媒
金属酸化物又は金属水酸化物の分散溶媒(および後述のインクの溶媒)としては以下のものが挙げられる。
(1) 酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類
(2) メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類
(3) ジクロルメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類
(4) ジメチルホルムアミド等のアミド類
(5) シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類
(6) トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類。
(7) テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類
(8) エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコール、2,5-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロヘキセノール等のアルコール類
(9) 2,2,3,3-テトラフロロプロパノール等のフッ素系溶剤類
(10) エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類
(11) 2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノイソプロパノール、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-メチルアミノエタノール、4-ジメチルアミノ-1-ブタノール等のアルキルアミノアルコール類
(12) 酪酸、イソ酪酸、2-エチル酪酸、ピバル酸、吉草酸、プロピオン酸、乳酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロピオール酸、エチルメチル酢酸、アリル酢酸等のカルボン酸類
(13) ジエチレントリアミン、エチレンジアミン等のアミン類等。
(14) 水
これらの溶媒は、金属酸化物又は金属水酸化物の分散安定性、還元剤の溶解性、還元剤の酸化に対する安定性、粘度等を考慮して、単独又は二種以上を組合せて用いることができる。また金属酸化物又は金属水酸化物の分散性及び還元剤の溶解性に優れた溶媒(共通溶媒)を選択するのが好ましい。
(C) 分散液
分散液中の金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の濃度は金属換算値で1〜80質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましい。また分散液は一種類の金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有していても、複数種の金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有していても良い。また金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子中の金属の価数は1種類でも複数の混合物でも良い。さらにエネルギーの未照射部及び照射部の絶縁性/導電性を調節するために、SiO、SiO2、TiO2等の無機微粒子やポリマー(微粒子であってもなくても良い)を金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子と併用しても良い。なお分散液中の金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の粒径は通常コロイドを形成する程度であるが、限定的ではない。好ましい粒径は1〜100nm、より好ましくは1〜50nmである。
[2] インク
上記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液をそのままインクとして用いることができる。上記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液のみでは、エネルギー照射しても金属への還元反応が起こりにくい場合には、還元剤を添加することができる。
金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の還元に用いる還元剤は、無機還元剤でも有機還元剤でも良い。無機還元剤としては、NaBH4、ヒドラジン又はヒドロキシルアミン等が挙げられる。また有機還元剤としては、(i) ヒドラジン基を含有するヒドラジン系化合物類(例えばフェニルヒドラジン等)、(ii) p-フェニレンジアミン、エチレンジアミン、p-アミノフェノール等のアミン類、(iii) 窒素原子にアシル基やアルコキシカルボニル基などが置換したヒドロキシルアミン系化合物類、(iv) 2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、2-アミノエタノール、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等のアミノアルコール類、(v) ヒドロキノン、カテコール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール等のジオール類、又は(vi) 一般式:X-(A=B)n-Y(ただし、A及びBはそれぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYの各々は非共有電子対を有する原子がA又はBに結合する原子団を表し、nは0〜3を表す。)により表される有機還元剤又はその互変異性体、又は熱的にこれらを生成する化合物類等が挙げられる。
これらの還元剤は単独で用いても複数を組合せて用いても良いが、金属酸化物又は金属水酸化物に対する還元作用に選択性があるので、適宜組合せるのが好ましい。なお必要に応じて還元剤を有機溶媒として使用しても良い。
一般式:X-(A=B)n-Yにより表される前記(vi)の化合物における非共有電子対を有する原子としては、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、リン原子等が好ましく、酸素原子、窒素原子がより好ましい。これらの原子を含む原子団X及びYとしては、OR1、NR1R2、SR1、及びPR1R2(ただし、R1及びR2はそれぞれ水素原子又は置換基を表す。)が好ましい。前記置換基としては、置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基、又は置換されていても良い炭素数1〜10のアシル基が好ましい。
nは0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1が最も好ましい。nが2以上のときA及びBは繰り返し単位ごとに異なっていても良い。またAとB、XとA、又はYとBは互いに結合して環構造を形成しても良い。環構造を形成する場合、5員環又は6員環が好ましく、さらにこれらの環は縮環していても良い。縮環する場合、5〜6員環が好ましい。
本発明では還元反応後に電気伝導度が小さい還元剤が望ましく、具体的には金属イオンが残留しない有機還元剤、ヒドラジン又はヒドロキシルアミンが好ましい。還元後に残渣が多く残ると配線の導電性に悪影響を及ぼすため、残渣が少ないものが好ましく、還元後に揮発性(昇華性)又は分解して揮発性になる性質を有するものが好ましい。
同様の観点から、還元剤は少量で金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を還元可能なこと、すなわち低分子量であることが好ましい。従って、還元剤の分子量は500以下が好ましく、300以下がより好ましく、200以下が最も好ましい。
以下、金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の還元に用いることができる還元剤の具体例を例示するが、本発明はこれらの例に限定されない。
Figure 0004416080
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金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子と還元剤との好ましい組合せとしては、(a) 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子と、その金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子に対する還元作用が常温で実質的にないがエネルギー照射下では強い還元剤とを1つの分散液に含有させる場合(一液型インク)、及び(b) 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液(還元剤を含有しなくて良い)と、その金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子に対して還元作用を示す還元剤(常温での還元作用の強弱は問わないが、少なくともエネルギー照射下では強い還元作用を示す)の溶液を別々に調製する場合(二液型インク)が挙げられる。
エネルギー照射だけでは還元されにくい金属酸化物微粒子と還元剤の組合せの場合、又はエネルギー照射下でより強い還元性を発揮させる場合、金属酸化物微粒子又は金属水酸化物分散液又は別液(還元剤又はその溶液)に塩基又は塩基プレカーサのような還元作用促進剤を入れておくことができる。塩基又は塩基プレカーサに還元作用があっても良い。
以上の通り、本発明に使用する還元剤としては、常温では金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を還元する速度が小さいが、エネルギー照射によって速やかに金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を還元するものが好ましい。エネルギー照射による加熱温度は、照射時間に依存するので一概には規定できない。基板や素子の耐熱性から熱拡散により加熱される温度は約300℃以下であるのが好ましく、約250℃以下であるのがより好ましい。従って、還元剤は約300℃以下の温度で金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子に対して十分な還元性を有するものが好ましい。前記(b) の二液型インクに室温でも還元作用の強い還元剤を使用する場合、混合後直ちに金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子が還元され金属を生成するので、その後のエネルギー照射は必ずしも必要ないことは言うまでもない。
後述のように、金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液、還元剤又はこれらの混合物は、インクジェットプリンターやディスペンサー等でパターン状に描画するインクとして使用するのが好ましいので、粘度調整のために必要に応じて溶媒を添加する。インクに使用し得る溶媒は上記したものと同じである。
金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液及び/又は還元剤又はその溶液中には、さらに必要に応じて、帯電防止剤、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、カーボンナノ粒子、色素、熱硬化型フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等の各種添加剤を目的に応じて添加しても良い。
金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液、還元剤又はその溶液あるいはこれらの混合物をインクとしてインクジェットプリンターやディスペンサー等でパターン状に描画する場合、インクの粘度は重要である。インクの粘度が高すぎるとノズルから射出するのが困難であり、またインクの粘度が低すぎると描画パターンが滲む恐れがある。具体的には、インクの粘度は1〜100 cPであるのが好ましく、特に5〜30 cPであるのが好ましい。またインクの表面張力は25〜80 mN/mであるのが望ましく、特に30〜60 mN/mであるのが望ましい。
[3] プリント配線基板の形成
(A) 基板
本発明に使用する好ましい基板材料としては以下のものが挙げられる。
(1) 石英ガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、パイレックスガラス、サファイア等のガラス
(2) Al2O3、MgO、BeO、ZrO2、Y2O3、ThO2、CaO、GGG(ガドリウム・ガリウム・ガーネット)等のセラミックス
(3) ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリイミド、フッ素樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ナイロン、スチレン系樹脂、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂
(4) エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂
(5) 金属等。
上記基板材料は所望により併用しても良い。用途に応じてこれらの基板材料から適宜選択して、フィルム状等の可撓性支持体、又は剛性のある支持体とすることができる。なお前記支持体の形状は円盤状、カード状、シート状等いずれの形状であっても良い。また三次元的に積層されたものでも良い。さらに基板のプリント配線を行う箇所にアスペクト比1以上の細孔又は細溝を有していてもよく、この中にインクジェット又はディスペンサーにより前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の分散液、還元剤又はその溶液、あるいはこれらの混合物を吐出しても良い。
前記基板には、表面の平滑性の改善、接着力の向上、変質防止等の目的で、下地層を設けても良い。下地層の材料は支持体とインクとの密着性に優れているのが好ましく、例えば以下のものが挙げられる。
(1) ポリメチルメタクリレート、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、N-メチロールアクリルアミド、スチレン・ビニルトルエン共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂
(2) 熱硬化性又は光・電子線硬化性樹脂
(3) カップリング剤(例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ゲルマニウム系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等)
(4) コロイダルシリカ等。
前記下地層は、上記材料を適当な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、前記塗布液をスピンコート、ディップコート、エクストルージョンコート、バーコート等の塗布法を利用して支持体表面に塗布することにより形成することができる。前記下地層の層厚(乾燥時)は、一般に0.001〜20μmが好ましく、0.005〜10μmがより好ましい。
(B) インクの描画
インクで基板表面にパターンを形成するには、インクをノズルから液滴状で基板上に吐出するのが好ましく、それにはインクジェットプリンターやディスペンサーを用いるのが好ましい。また2液を使用直前に混合するにはマイクロリアクタやマイクロミキサを用いるのが好ましい。
マイクロリアクタやマイクロミキサの詳細は特開2003-193119号に記載されているが、このマイクロリアクタは、流体1を通す第一の流路と流体2を通す第二の流路を具備し、前記2つの流体が各々実質的に薄い流体層をなして流れる領域の少なくとも1箇所で両流体の接触界面が形成され、前記接触界面における前記2つの薄い流れの厚さがそれぞれ1〜500μmであり、前記接触界面において前記2つの流体が反応又は混合する構造を有する。
インクジェットプリンターには、インクの吐出方式により各種のタイプがある。例えば、圧電素子型、バブルジェット型、空気流型、固形熱溶融性インク型、静電誘導型、音響インクプリント型、電気粘性インク型、また大量プリントに適した連続噴射型等があり、いずれも本発明に使用することができる。これらのインクジェットプリンターは、パターンの形状や厚さ、インクの種類等により適宜選択することができる。
インクジェット方式の場合は吐出するインク滴の大きさを調節し、またディスペンサー方式の場合はインク滴の流量を調節することにより、パターン幅やピッチを数μm程度まで微細化することができる。従って、回路パターンの形成にも十分対応できる。またインクジェットプリンターやディスペンサー等の吐出装置とパソコン等のコンピュータを接続することにより、コンピュータに入力された図形情報により、基板上にパターンを描画することができる。金属酸化物微粒子は通常絶縁体であるのでインクジェット又はディスペンサーを用いて回路パターンより幅広に描画し、その中に微細な回路パターンを得るように選択的にエネルギー照射して導電パターンを形成することができる。この場合、導電パターンと絶縁部の乾燥膜厚はほぼ同じであるので望ましい。導電パターン及び絶縁部の膜厚は、用途により0.1〜10μmの範囲で設定できる。
このように本発明によると、フォトレジストを使用して導電膜をパターンニングする従来の方法に比べて、格段に容易に短時間でパターン形成を行うことができる。
(C) 導電パターンの形成
導電パターンの形成に用いるエネルギーを与える手段は、電気炉、マイクロ波等の電磁波、赤外線、ホットプレート、レーザービーム、電子ビーム、イオンビーム、熱線等が挙げられる。特に局所的に微細に加熱できる点でレーザービーム、電子ビーム、イオンビーム、熱線が好ましい。比較的小型で、簡易にエネルギー照射が可能な点でレーザービームが最も好ましい。
レーザービームの波長としては、金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子、還元剤、溶媒又は必要に応じて両液中に添加されるカーボンナノ粒子や色素等が吸収を有するものであれば、紫外光から赤外光まで任意のものを選択できる。代表的なレーザーとしては、AlGaAs、InGaAsP、GaN系等の半導体レーザー、Nd:YAGレーザー、ArF、KrF、XeCl等のエキシマレーザー、色素レーザー、ルビーレーザー等の固体レーザー、He-Ne、He-Xe、He-Cd、CO2、Ar等の気体レーザー、自由電子レーザー等が挙げられる。また面発光型半導体レーザーやこれを1次元又は2次元に配列したマルチモードアレイを用いることもできる。
これらのレーザービームの第二高調波、第三高調波等の高次高調波を利用しても良い。これらのレーザービームは連続的に照射しても、パルス状に複数回照射しても良い。照射エネルギーは金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子種、還元剤種、バインダーや溶剤等の種類や量等に依存し、一概には言えないが、生成した金属ナノ粒子が実質的にアブレーションせずに、溶融するように設定する。
分散液と溶液の混合から、基板上への分散液などの吐出・描画、乾燥、導電パターンの形成までの工程のうち、少なくとも導電パターンの形成工程を不活性ガス中で行うことが望ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が挙げられる。導電パターンの形成工程を不活性ガス中で行うことにより、生成した金属ナノ粒子が再酸化することなく効率的な導電パターン形成が可能になる。
以下に実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
50gの酢酸銅(II)1水和物を、50 mlのイソ酪酸、70 mlの2-エトキシエタノール、及び水20 mlの混合溶媒に130℃で加熱溶解した。1.5 mlのドデシルアミン及び45 mlの例示化合物(R-10)を添加した。そのまま1分間反応後、室温まで冷却し、赤褐色のコロイド分散液を得た。乾燥させてX線回折(XRD)測定を行うと、平均結晶子サイズが14 nmのCu2O微粒子が生成していることが分かった。
得られたCu2Oコロイド分散液に5倍容量のメタノールを添加し、Cu2Oナノ粒子を沈降させた。デカンテーションにより上澄み液を除去し、再度メタノールを添加してCu2Oナノ粒子を洗浄した。この操作を3回繰り返した後、Cu2Oナノ粒子を、ドデシルアミン1mlを含む2-エトキシエタノール35 ml及び水15 mlの混合溶媒に再分散して、25質量%の濃度のCu2O微粒子分散液を得た。
ディスペンサーを用い、深さ50μm、幅1mmの細溝を有するポリイミド基板の細溝に沿って上記Cu2O微粒子分散液を液厚70μmで吐出した。80℃のホットプレート上で乾燥後、窒素ガス雰囲気下、20 J/cm2のエネルギーで830 nmの赤外線レーザーを照射したところ、比抵抗8μΩ・cm、厚さ約4μmの銅配線を得た。
実施例2
実施例1において、830 nmの赤外線を照射する工程を空気中で実施したところ、照射部の比抵抗は20μΩ・cmになった。
実施例3
実施例1のCu2O微粒子分散液と例示化合物(R-10)液を容量比で10:3になるように特開2003-193119号に記載のマイクロリアクタを用いて瞬間に混合した後、窒素ガス雰囲気下、ディスペンサーを用いて実施例1のポリイミド基板上の細溝に液厚100μmで吐出した。窒素ガス雰囲気下、乾燥及び830 nmの赤外線レーザーを照射したところ、比抵抗6μΩ・cm、厚さ約4μmの銅配線を得た。
実施例4
17gの硝酸銀(I)を25 mlの水及び25 ml の2-エトキシエタノールの混合溶媒に溶解し、氷冷した。0.1 NのNaOH水溶液(50容量%の2-エトキシエタノールを含む)500 mlを氷冷して前記硝酸銀溶液に添加した。実施例1と同様に得られたナノ粒子を沈降、洗浄した後、シクロヘキサノールと2-エトキシエタノールの混合溶媒(容量比50:50)に再分散して、20質量%の濃度のAg2O微粒子分散液を得た。Ag2O微粒子の平均結晶子サイズは16 nmであった。
上記Ag2O微粒子分散液を、予めコンピュータに入力してある導電パターンの図形情報に基づき、ピエゾ方式のインクジェットプリンターを用いてポリイミド基板上に50ピコリットル/滴で描画した。実施例1と同様に乾燥後、赤外線レーザーを照射したところ、Ag2O微粒子がAgに還元されて導電性を示した。

Claims (20)

  1. 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子と、前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子に対して実質的に常温では還元性を有さないがエネルギー照射により還元性を発揮する還元剤とを含有する分散液からなるプリント配線基板形成用インクであって、塗布したインクへのエネルギー照射により前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部が金属に還元され導体化することを特徴とするプリント配線基板形成用インク。
  2. 前記還元剤が有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線基板形成用インク。
  3. 前記有機還元剤がヒドラジン系化合物類、ヒドロキシルアミン系化合物類、アルカノールアミン類、ジオール類及び一般式:X-(A=B)n-Y(ただし、A及びBはそれぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYの各々は非共有電子対を有する原子がA又はBに結合する原子団を表し、nは0〜3を表す。)により表される化合物類からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物であることを特徴とする請求項2に記載のプリント配線基板形成用インク。
  4. さらに塩基又は塩基プレカーサを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
  5. さらに吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
  6. 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する分散液と、前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子に対して還元性を発揮する還元剤又はその溶液との少なくとも2パーツからなり、両液を混ぜることにより前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部が金属に還元されるプリント配線基板形成用インク。
  7. 前記還元剤が有機還元剤、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項6に記載のプリント配線基板形成用インク。
  8. 前記有機還元剤がヒドラジン系化合物類、ヒドロキシルアミン系化合物類、アルカノールアミン類、ジオール類及び一般式:X-(A=B)n-Y(ただし、A及びBはそれぞれ炭素原子又は窒素原子を表し、X及びYの各々は非共有電子対を有する原子がA又はBに結合する原子団を表し、nは0〜3を表す。)により表される化合物類からなる群から選ばれた少なくとも1種の有機化合物であることを特徴とする請求項7に記載のプリント配線基板形成用インク。
  9. 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を含有する分散液又は別液(還元剤又はその溶液)に塩基又は塩基プレカーサを添加することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
  10. 金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の表面に吸着性化合物、界面活性剤及び/又は親水性高分子を吸着させることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
  11. 前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を構成する金属がAu、Ag、Cu、Pt、Pd、In、Ga、Sn、Ge、Sb、Pb、Zn、Bi、Fe、Ni及びCoからなる群から選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
  12. 前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子を構成する金属がAg又はCuからなることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インク。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インクによって基板上にパターンを描画する工程、および前記金属酸化物又は金属水酸化物の微粒子の少なくとも一部を金属に還元して導電パターンを形成する工程を有することを特徴とするプリント配線基板の形成方法。
  14. インクジェットプリンター又はディスペンサーによってパターンを描画することを特徴とする請求項13に記載のプリント配線基板の形成方法。
  15. 前記パターンを図形情報としてコンピュータに入力し、前記図形情報に基づき、前記プリント配線基板形成用インクでパターンを描画することを特徴とする請求項13又は14に記載のプリント配線基板の形成方法。
  16. 前記導電パターンを形成する工程において、エネルギー照射を行うことを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載のプリント配線基板の形成方法。
  17. レーザービーム、電子ビーム、イオンビーム及び熱線から選ばれる少なくとも1種によってエネルギー照射を行うことを特徴とする請求項16に記載のプリント配線基板の形成方法。
  18. 導電パターンを形成する工程を不活性ガス中で行うことを特徴とする請求項13〜17のいずれか一項に記載のプリント配線基板の形成方法。
  19. 請求項1〜12のいずれか一項に記載のプリント配線基板形成用インクで描画されたパターンを有することを特徴とするプリント配線基板。
  20. 請求項13〜18のいずれか一項に記載のプリント配線基板の形成方法で形成されたことを特徴とするプリント配線基板。
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