JP4410879B2 - 神経再生用材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、神経再生用材料およびそれを用いてなる神経再生材に関する。より詳細には、本発明は、特定のペプチドおよび/またはその塩を基材に固定化した神経再生用材料および該神経再生用材料を生体吸収性のチューブに充填してなる神経再生材に関するものであり、本発明の神経再生用材料および神経再生材は、強い神経細胞増殖促進作用、神経軸索伸長作用を有し、神経細胞や神経組織の損傷、欠損などによる中枢神経や末梢神経系の疾患、脊椎疾患、頭部外傷、卒中などの脳血管疾患のような外傷性疾患などの治療に有効であり、良好な神経再生作用、前記疾患の回復や改善効果を有する。
【0002】
【従来の技術】
交通事故、労働災害、その他家庭内や屋外における各種の事故によって生じた末梢神経損傷の治療は、外科領域、特に整形外科領域で大きな位置を占めており、近年、切断した神経を繋ぐ外科手術の技術は顕微手術の導入によって著しい進歩を遂げてきた。しかしながら、神経の欠損部が大きい場合は他の材料を用いて該欠損部を補わなければならず、これに対する治療は外科医にとって大きな問題となっている。
現在、臨床的に行われている方法は、腓腹神経を用いる自家神経移植である。自家神経は最も理想的な神経再生用材料であるが、患者の負担、手術の複雑化などの点で問題があり、その採取にはおのずから制限がある。しかも、腓腹神経の切除は実生活にそれほど大きな障害にならない場合が多いとはいえ、腓腹神経の切除によって足首から足の甲にかけての小指側の感覚神経が消失するため患者の生活の質が低下し、できれば自家神経移植を避けるのが好ましい。
このような状況下に、自家神経に代わる移植材料の開発が切望され、種々の研究がなされている。例えば、神経以外の組織を用いる自家移植として自家血管移植や自家筋膜移植などが行われているが、患者の生体組織を使用するという点ではやはり患者の負担を解消できず、しかも手術時の複雑さの点でも自家神経移植の場合と大差がない。
【0003】
一方、生体組織の受けた創傷などを治癒促進する作用を有するペプチドとして、例えば、配列番号8で表されるペプチド(TRAP−508)が知られており、このペプチドは動物に作製した創に対して治癒促進効果があることが報告されている[SAAS Bull. Biochem.Biotechnol.,3,8−12(1990)、J.Clin.Invest.,89,1469−1477(1992)、Thromb. and Haemost.,70(1),158−162(1993)、J.Surg.Res.,53,117−122(1992)]。
また、配列番号9で表されるペプチド(EGF−14−31)は、ヒト線維芽細胞の増殖を促進することが報告されている[Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,81,1351−1355(1984)]。
【0004】
そして、配列番号10で表されるペプチド(Laminin誘導体ペプチド)は、細胞の接着、遊走および血管新生を促進することが報告されている[J.Biol. Chem.,270,20583−20590(1995)、J.Biol. Chem.,270,10365−10368(1995)]。
さらに、配列番号12で表されるペプチド(TGFβ69−84)は、軟寒天中のNRK−49F細胞のコロニー形成を促進することが確認されている(特開平6−025288号公報)。
また、配列番号13で表されるペプチド(Elastin由来ペプチド)は、ヒト皮膚由来の線維芽細胞の遊走と増殖を刺激することが報告されている[Annales Chirurgiae et Gynaecologiae,83,296−302(1994)およびCell Biology International,18,111−117(1994)]。
しかしながら、前記した配列番号8、9、10、12および13で表されるペプチドは、細胞接着活性または細胞増殖刺激活性を示すことは報告されているが、神経再生能についての検討はなされていない。
【0005】
一方、神経再生材として、ポリグリコール酸(PGA)の筒状メッシュ(メッシュ状チューブ)にコラーゲンを塗布して付着させたものが知られている[J.Artif.Organs,27,490−494(1998)]。しかしながら、この神経再生材は、充分な神経再生効果を示さない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、神経細胞増殖促進作用および神経軸索伸長作用を有し、損傷、欠損などの生じた神経細胞および神経組織を増殖、修復して神経を再生することができ、しかも感染の恐れがなく、さらに生体に対する安全性の点にも優れる、神経再生用材料および神経再生材を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意研究を重ねてきた。そして、配列番号8〜14で表される従来既知のペプチドおよびその誘導体を含水ゲルなどの基材に固定化し、それを神経細胞や神経組織の損傷部に適用したところ、基材への固定化後も前記既知のペプチド類の生理活性が失われず、良好な神経細胞増殖促進作用および神経軸索伸長作用を示し、神経細胞や神経組織の損傷、欠損などによる中枢神経や末梢神経系の疾患の治療、脊椎疾患、頭部外傷、卒中などの脳血管疾患のような外傷性疾患などの治療に有効であり、しかも安全性の点でも優れていて、神経再生用材料として有用であることを見出した。
また、本発明者らは、配列番号8〜14で表される従来既知のペプチドおよびその誘導体を基材に固定化したものを生体吸収性材料からなるチューブに充填したものは、神経組織修復のための外科手術などに用いる神経再生材として優れた作用を示すことを見出した。
さらに、本発明者らは、前記の研究と並行して、神経細胞の増殖促進作用および神経軸索伸長作用を示す新しい物質を開発すべく研究を行ってきた。その結果、下記の一般式(I);
【0008】
【化1】
X−A−D−E−G−J−L−M−Pro−Q−Y (I)
(式中、Xは水素、CH3−CO−およびCH3−CO−Lys−からなる群から選ばれる基、AはSerおよびThrから選ばれるアミノ酸残基、DはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、EはLysおよびArgから選ばれるアミノ酸残基、GはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、JはGlyおよびAlaから選ばれるアミノ酸残基、LはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、MはGlyおよびAlaから選ばれるアミノ酸残基、QはGly、AlaおよびGly−Lys−Lys−Glyからなる群から選ばれるアミノ酸残基またはペプチド残基、並びにYは−OHまたは−NH2を示す。)
で表される新規なペプチドおよびその塩、特にそのうちでも配列番号1〜7で表される新規なペプチドおよびその塩が、上記した配列番号8〜14で表されるペプチド並びにそれらの誘導体よりも一層強い神経細胞増殖促進作用と神経軸索伸長作用を有し、しかも細胞毒性が低く安全性に優れていることを見出した。
【0009】
そして、前記した新規なペプチドおよび/またはその塩を基材に固定化したものは、末梢神経障害、末梢ニューロパシーおよび局在ニューロパシーなどの末梢神経系の疾患、アルツハイマー症、パーキンソン症、ハンチントン症、筋萎縮性側索硬化症、シャイ−ドレーガー(Shy−Drager)症候群などの中枢神経疾患を包含する神経疾患用の神経再生用材料として有効であること、また脊椎疾患、頭部外傷や卒中などの脳血管疾患のような外傷性疾患に対しても有効であること、さらに該新規なペプチドおよび/またはその塩を基材に固定化したものを生体吸収性のチューブに充填すると神経組織修復用の外科手術などに有効に用い得る神経再生材が得られることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0010】
したがって、本発明は、下記の一般式(I);
【0011】
【化2】
X−A−D−E−G−J−L−M−Pro−Q−Y (I)
(式中、Xは水素、CH3−CO−およびCH3−CO−Lys−からなる群から選ばれる基、AはSerおよびThrから選ばれるアミノ酸残基、DはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、EはLysおよびArgから選ばれるアミノ酸残基、GはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、JはGlyおよびAlaから選ばれるアミノ酸残基、LはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、MはGlyおよびAlaから選ばれるアミノ酸残基、QはGly、AlaおよびGly−Lys−Lys−Glyからなる群から選ばれるアミノ酸残基またはペプチド残基、並びにYは−OHまたは−NH2を示す。)
で表されるペプチドに含まれるペプチドおよびその塩のうち、特に配列番号1で表されるペプチド、配列番号2で表されるペプチド、配列番号3で表されるペプチド、配列番号4で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチド、配列番号6で表されるペプチド、配列番号7で表されるペプチドおよびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を基材に固定化してなることを特徴とする神経再生用材料である。
【0012】
本発明の神経再生用材料では、上記した配列番号1〜7で表されるペプチドおよびその塩から選ばれる少なくとも1種を固定化する基材として、多糖類のゲルが好ましく用いられ、その際の多糖類のゲルとしてはアルギン酸ゲルがより好ましく用いられ、アルギン酸共有結合架橋ゲルがさらに好ましく用いられる。
【0013】
さらに、本発明は、上記した本発明の神経再生用材料を、生体吸収性の材料からなるチューブに充填してなることを特徴とする神経再生材を包含する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の神経再生用材料について説明する。
本発明の神経再生用材料では、上記の一般式(I)で表されるペプチドに含まれるペプチドおよびその塩のうち、配列番号1〜配列番号7で表されるペプチドおよびその塩から選ばれる少なくとも1種が基材に固定化されている。
ここで、本発明でいう「神経再生用材料」とは、上記した特定のペプチドおよび/またはその塩を基材に固定化した状態で、神経細胞または神経組織の損傷、欠損などを含む、中枢神経および/または末梢神経系の疾患、脊椎疾患、頭部外傷、卒中などの脳血管疾患のような外傷性疾患に対して用いる、治癒、接着、補強および/または再生用の材料の総称である。
【0015】
前記の一般式(I)で表されるペプチド、特に配列番号1〜7で表されるペプチドは、上記したように、本発明者らが初めて見出した新規なペプチドであって、該一般式(I)において、Xは水素、CH3−CO−およびCH3−CO−Lys−から選ばれる基であり、AはSerおよびThrから選ばれるアミノ酸残基であり、DはIle、ValおよびLeuから選ばれるアミノ酸残基であり、EはLysおよびArgから選ばれるアミノ酸残基であり、GはIle、ValおよびLeuから選ばれるアミノ酸残基であり、JはGlyおよびAlaから選ばれるアミノ酸残基であり、LはIle、ValおよびLeuから選ばれるアミノ酸残基であり、MはGlyおよびAlaから選ばれるアミノ酸残基であり、QはGly、AlaおよびGly−Lys−Lys−Glyから選ばれるアミノ酸残基またはペプチド残基であり、そしてYは−OHおよび−NH2から選ばれる基であることが必要である。
X、A、D、E、G、J、L、M、QおよびYが前記した以外の基である場合は、神経細胞増殖促進作用、神経軸索伸長作用などの生理活性が弱い。
【0016】
上記の一般式(I)において、Xが水素またはCH3−CO−であり且つQがGlyまたはAlaの場合は、左末端にSer、アセチル化Ser、Thrまたはアセチル化Thrが結合し且つ右末端にGly、アミド化Gly、Alaまたはアミド化Alaが結合し、それらの間に上記したD、E、G、J、L、Mのアミノ酸およびProが順次結合してなる、合計9個のアミノ酸よりなる直鎖状のペプチドである。
また、上記の一般式(I)において、XがCH3−CO−Lys−であり且つQがGlyまたはAlaの場合は、左末端にアセチル化Lysが結合し且つ右末端にGly、アミド化Gly、Alaまたはアミド化Alaが結合し、それらの間に上記したA、D、E、G、J、L、Mのアミノ酸およびProが順次結合してなる、合計10個のアミノ酸よりなる直鎖状ペプチドである。
そして、上記の一般式(I)において、Xが水素またはCH3−CO−であり且つQがGly−Lys−Lys−Glyの場合は、左末端にSer、アセチル化Ser、Thrまたはアセチル化Thrが結合し且つ右末端にGlyまたはアミド化Glyが結合し、それらの間に上記したD、E、G、J、L、Mのアミノ酸、Pro、Gly、LysおよびLysが順次結合してなる、合計12個のアミノ酸よりなる直鎖状のペプチドである。
また、上記の一般式(I)において、XがCH3−CO−Lys−であり且つQがGly−Lys−Lys−Glyの場合は、左末端に左末端にアセチル化Lysが結合し且つ右末端にGlyまたはアミド化Glyが結合し、それらの間に上記したA、D、E、G、J、L、Mのアミノ酸、Pro、Gly、LysおよびLysが順次結合してなる、合計13個のアミノ酸よりなる直鎖状のペプチドである。
【0017】
本発明の神経再生用材料は、配列番号1〜7で表されるペプチドおよびその塩の少なくとも1種を基材に固定化したものであればいずれでもよい。
【0018】
本発明の神経再生用材料において基材に固定化して用いるペプチドまたはその塩は、具体的には、下記の(1)〜(7)のペプチドまたはその塩である(但し以下の式中、「Ac」はアセチル基を意味する)。
(1)配列番号1で表されるペプチド(Ac−Lys−Ser−Ile−Arg−Val−Ala−Val−Ala−Pro−Gly)。
(2)配列番号2で表されるペプチド(Ser−Ile−Arg−Ile−Ala−Ile−Ala−Pro−Gly)。
(3)配列番号3で表されるペプチド(Ac−Ser−Val−Arg−Val−Ala−Val−Ala−Pro−Gly)。
(4)配列番号4で表されるペプチド(Thr−Ile−Lys−Val−Ala−Val−Ala−Pro−Gly)。
(5)配列番号5で表されるペプチド(Ac−Lys−Ser−Ile−Arg−Ile−Ala−Ile−Ala−Pro−Gly)。
(6)配列番号6で表されるペプチド(Ser−Ile−Arg−Val−Ala−Val−Ala−Pro−Gly−Lys−Lys−Gly)。
(7)配列番号7で表されるペプチド(Ac−Lys−Ser−Ile−Arg−Val−Gly−Val−Gly−Pro−Gly)。
【0019】
また、下記の(8)〜(14)のペプチドも、神経細胞増殖促進作用および神経軸索伸長作用を有する。
(8)配列番号8で表されるペプチド(Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val)。
(9)配列番号9で表されるペプチド(Cys−Leu−Asn−Gly−Gly−Val−Ala−Met−His−Ile−Glu−Ser−Leu−Asp−Ser−Tyr−Thr−Cys)。
(10)配列番号10で表されるペプチド(Ser−Ile−Lys−Val−Ala−Val)。
(11)配列番号11で表されるペプチド(Ac−Lys−Ser−Ile−Lys−Val−Ala−Val)。
(12)配列番号12で表されるペプチド(Asn−Pro−Gly−Ala−Ser−Ala−Ala−Pro−Cys−Cys−Val−Pro−Gln−Ala−Leu−Glu)。
(13)配列番号13で表されるペプチド(Val−Gly−Val−Ala−Pro−Gly)。
(14)配列番号14で表されるペプチド(Ac−Lys−Val−Gly−Val−Ala−Pro−Gly)。
【0020】
上記した(1)〜(14)のペプチドのうち、本発明で用いる上記(1)〜(7)のペプチド(配列番号1〜配列番号7のペプチド)およびその塩は、強い神経細胞増殖作用および神経軸索伸長作用を有し、神経の再生などに極めて有効に作用する。
【0021】
本発明の神経再生用材料では上記したペプチドの生理学的に許容される塩を用いてもよく、例えば、上記したペプチドと、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩;乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの有機酸との塩;ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの金属の水酸化物または炭酸塩との塩;トリエチルアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、t−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アルギニンなどの有機塩基との塩などを挙げることができる。それらの塩は、上記したペプチドに対して通常の塩形成反応を利用することにより得ることができる。
【0022】
本発明の神経再生用材料では、ペプチドを固定化するための基材として、生体吸収性を有する基材であればいずれも使用でき、具体例としては、アルギン酸、架橋アルギン酸、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、セルロース、デンプン、架橋デンプンおよびこれらの誘導体などの多糖類;ゼラチン、架橋ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、フィブリン、アルブミンなどの蛋白質;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリジンなどのポリペプチド;ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/ポリ乳酸共重合体などを挙げることができる。
これらのうちでも、基材としては、前記した多糖類またはそれを架橋してなるゲルが好ましく用いられる。そして多糖類のゲルのうちでも、アルギン酸のゲル(架橋アルギン酸)がより好ましく用いられ、アルギン酸を共有結合により架橋したアルギン酸共有結合架橋ゲルが特に好ましく用いられる。
【0023】
本発明において、神経再生用材料の基材として好ましく用いられるアルギン酸共有結合架橋ゲルの製法は特に制限されないが、一般にはアルギン酸の水溶性塩を架橋剤を用いて架橋することにより製造できる。
アルギン酸共有結合架橋ゲルの原料であるアルギン酸の水溶性塩は市販品として入手可能である。アルギン酸の水溶性塩としては、得られるゲルの強度の点から、アルギン酸ナトリウム塩の形態で濃度1重量%の水溶液にしたときに、該水溶液の20℃での粘度が100センチポイズ(cp)以上であるものが好ましく用いられ、300cp以上であるものがより好ましく用いられる。
しかしながら、アルギン酸の水溶性塩の水溶液の粘度が高すぎるものでは、水への溶解に時間を要し、アルギン酸共有結合架橋ゲルの製造時の操作性が悪くなるので、アルギン酸ナトリウム塩の形態で濃度1重量%の水溶液としたときに該水溶液の20℃での粘度が1200cp以下のものを使用することが好ましい。1重量%水溶液の20℃での粘度が前記した100〜1200cpの範囲になるようなアルギン酸の水溶性塩を形成するアルギン酸は、一般に約10万〜1000万程度の分子量を有している場合が多い。
【0024】
アルギン酸共有結合架橋ゲルの製造に用いられる架橋剤としては、ジアミン類の塩が好ましく用いられ、具体例としては、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ジアミノオクタデカンなどのジアミノアルカン類の塩、N−(リジル)−ジアミノエタン、N,N’−ジ(リジル)−ジアミノエタン、N−(リジル)−ジアミノヘキサン、N,N’−ジ(リジル)−ジアミノヘキサンなどのモノまたはジ(リジル)ジアミノアルカン類の塩などを挙げることができる。そのうちでも、ジアミノエタンの2N−ヒドロキシコハク酸イミド塩、ジアミノヘキサンの2N−ヒドロキシコハク酸イミド塩、N,N’−ジ(リジル)−ジアミノエタンの4N−ヒドロキシコハク酸イミド塩、N−(リジル)−ジアミノヘキサンの3N−ヒドロキシコハク酸イミド塩などが好ましく用いられる。
【0025】
上記の架橋剤によるアルギン酸の架橋反応は、水溶性カルボジイミドなどの脱水縮合剤を用いて行うことができる。架橋率(架橋剤のアルギン酸に対する反応率)は、用いる架橋剤のアルギン酸に対するモル比で制御することができ、該モル比を低くすると、柔軟で含水率の高いゲルが得られ、モル比を高くすると、強固で含水率の低いゲルが得られる。
架橋率は所望により適宜選択されるが、架橋率が低すぎると、ゲルの強度が低くなり、架橋率が高すぎると、架橋剤が未反応のままゲル中に残る可能性があることから、架橋率としては、アルギン酸が有するカルボキシル基の内1〜50モル%のカルボキシル基が架橋剤と反応していることが好ましく、10〜40モル%のカルボキシル基が架橋剤と反応していることがより好ましい。このようにして得られるアルギン酸共有結合架橋ゲルは、それ自体で実用的な強度と安定性を示すが、必要に応じて、共有結合架橋と共にイオン結合架橋、疎水結合架橋などの他の架橋が施されていてもよい。
【0026】
アルギン酸共有結合架橋ゲルは含水率が高く、しかも多糖類であることから免疫原性が低く、生体との親和性および安全性に優れる。しかも、アルギン酸共有結合架橋ゲルの製造に用いられる上記した架橋剤の原料は一般に生体に投与可能な化合物であることから、架橋剤の原料が生体内に残存した場合でも吸収と排泄が容易に行われて安全性が高い。
【0027】
本発明において、神経再生用材料の基材としてアルギン酸共有結合架橋ゲルなどの多糖類のゲルを用いる場合は、多糖類のゲルは、水で膨潤した状態(含水ゲル)であっても、水で膨潤する前の乾燥した状態(含水性ゲル)であっても、または水で完全には膨潤していないが水を多少含んだ状態であってもよい。
【0028】
本発明の神経再生用材料では、必要に応じて、含水率のコントロール、粘着性の付与などの目的で、ナトリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどの金属イオン類、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などの高分子化合物などの薬理学的に許容される添加剤を基材に含有または付着させておくことができる。
さらに、本発明の神経再生用材料では、必要に応じて、消毒剤、抗生剤、抗菌剤、アクトシン、PGE1などの血行改善剤、TGFβ、PDGF、FGFなどの増殖因子、ウリナスタチン、TIMPなどの酵素阻害剤、ステロイド、非ステロイド性抗炎症剤、フィブリン、コラーゲンなどの構造蛋白質などの薬剤や生理活性物質などを基材に含有または付着させておいてもよい。
【0029】
ペプチドを固定化するための基材の形態は特に制限されず、例えば、スポンジ状、フィルム状、シート状、マット状、不織布状、織布状、編布状、網状、繊維状、ペレット状、小塊状、大塊状、粉末状、粒子状、管状、線状などの任意の形態にしておくことができる。
【0030】
上記したペプチドおよび/またはその塩を基材に固定化する方法は特に制限されず、ペプチドおよび/またはその塩の生理活性が失われず、しかもペプチドおよび/またはその塩が基材から離れずに固定化され得る方法であればいずれの方法で固定化してもよい。
基材の種類やペプチドの種類などに応じて好ましい固定化方法は異なり得るが、例えばN−ヒドロキシコハク酸イミドを用いる活性エステル法、水溶性カルボジイミドを用いる直接縮合法などが好ましく採用される。
また、基材へのペプチドおよび/またはその塩の固定化量は、神経再生用材料の用途、基材の種類、基材の形状や構造、神経再生用材料が用いられる患部の状態などに応じて、種々調節することができる。
【0031】
上記したペプチドおよび/またはその塩を基材に固定化してなる本発明の神経再生用材料を、生体吸収性の材料からなるチューブに充填した神経再生材は、神経組織の再生などを行うための外科手術などにおいて良好な操作性で便利に使用することができる。本発明の神経再生材を形成するためのチューブとしては、生体吸収性であって且つ生理学的に許容され得る材料から形成されたチューブであればいずれも使用できる。
該チューブの形成に用い得る材料の具体例としては、アルギン酸、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、架橋ヒアルロン酸、セルロース、デンプン、架橋デンプンおよびこれらの誘導体などの多糖類;ゼラチン、架橋ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、フィブリン、アルブミンなどの蛋白質;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリジンなどのポリペプチド;ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/ポリ乳酸共重合体、グリコール酸/カーボネート共重合体、ポリジオキサノン、シアノアクリレート系重合体などの合成高分子材料;水酸アパタイト、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機材料などを挙げることができる。そのうちでも、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/ポリ乳酸共重合体などの合成高分子材料からなるチューブが、安定性、柔軟性、透明性、耐熱性、耐湿熱性、強度などの点で優れていることから、好ましく用いられる。
【0032】
神経再生用材料を充填するチューブは両方の端部が開口していることが好ましい。また、チューブの形態は特に制限されず、例えば、生体吸収性で且つ生理的に許容し得る上記した物質からなる不織布、織布、編布、フェルト、網体、フィルム、シート、マット、スポンジなどを用いて管状に形成したもの、生体吸収性で且つ生理的に許容し得る上記した物質を中空紡糸または管状押出成形などによって直接管状に形成したものなどを挙げることができる。
チューブの内径、厚さ、長さなどは特に制限されず、神経再生用材料を充填してなるチューブからなる神経再生材の用途、神経再生用材料が用いられる患部の状態、外科手術の方法などに応じて種々調節することができる。
チューブの内径としては、通常0.5〜20mmの範囲内であり、外科手術などにおける使用のしやすさなどの点から、1〜10mmの範囲内であるのが好ましく、2〜5mmの範囲内であるのがより好ましい。
チューブの厚さとしては、0.1〜1mmの範囲内であるのが好ましく、0.1〜0.5mmの範囲内であるのがより好ましい。
【0033】
上記の一般式(I)で表されるペプチド、特に本発明の神経再生用材料で用いる配列番号1〜配列番号7で表されるペプチドの製造法、および配列番号8〜14で表されるペプチドの製造法は特に制限されず、ペプチドを合成する従来既知の方法と同様にして製造することができ、例えば固相合成法、液相合成法などによって合成することができ、そのうちでも固相合成法が操作が簡便であるなどの点から好ましく用いられる。
何ら限定されるものではないが、ペプチドの固相合成法に関しては、例えば、日本生化学学会編「続生化学実験講座2 タンパク質の化学(下)」 第641〜694頁(昭和62年5月20日;株式会社東京化学同人発行)などに記載されている。
【0034】
例えば、固相合成法によって本発明で用いるペプチドを製造する場合は、反応溶媒に不溶性なスチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの樹脂に目的とするペプチドのカルボキシル末端に対応するアミノ酸をそれが有するα−カルボキシル基を介して結合させ、次いで該アミノ酸に目的とするペプチドのアミノ末端の方向に向かって、対応するアミノ酸またはペプチド断片を該アミノ酸またはペプチド断片が有するα−カルボキシル基以外のα−アミノ基などの官能基を保護したうえで縮合させて結合させる操作と、該結合したアミノ酸またはペプチド断片におけるα−アミノ酸などのペプチド結合を形成するアミノ基が有する保護基を除去する操作とを順次繰り返すことによってペプチド鎖を伸長させ、目的とするペプチドに対応するペプチド鎖を形成し、次いで該ペプチド鎖を樹脂から脱離させ、かつ保護されている官能基から保護基を除去して目的とするペプチドを得、それを精製する方法などを採用できる。その際に、樹脂からのペプチド鎖の脱離および保護基の除去は、トリフルオロ酢酸を用いて同時に行うのが副反応を抑制できる点から好ましい。また、得られたペプチドの精製は、例えば、逆相液体クロマトグラフィーによって好ましく行われる。
【0035】
本発明の神経再生用材料および神経再生材で用いる配列番号1〜7で表されるペプチドおよびその塩、配列番号8〜14で表されるペプチドおよびそれらの塩は、強い細胞増殖促進作用、神経軸索伸長作用を有し且つ低毒性であることが、生理活性試験および毒性試験によって確認されている。
【0036】
【実施例】
以下に実施例などによって本発明について具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されるものではない。
【0037】
《製造例1》
[配列番号1で表されるペプチド(Ac−Lys−Ser−Ile−Arg−Val−Ala−Val−Ala−Pro−Gly)の製造]
(1) 4−ヒドロキシメチル−フェノキシ−メチル基を0.89ミリモル/g(樹脂)の割合で有するスチレン/ジビニルベンゼン共重合体(99/1モル比)からなる粒状樹脂(米国アプライド・バイオシステムズ社製「HMPレジン」)0.25ミリモルを用い、目的とするペプチドのカルボキシル末端からアミノ末端に向かって順次対応するアミノ酸を結合させて、配列番号1で表されるペプチドを合成した。
その際に、上記合成反応(結合反応)では、原料アミノ酸として、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−アラニン(Fmocアラニン)、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−グリシン(Fmocグリシン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−Ng−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル−L−アルギニン(Fmocアルギニン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−プロリン(Fmocプロリン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−バリン(Fmocバリン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−イソロイシン(Fmocイソロイシン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−Nε−(t−ブトキシカルボニル)−L−リジン(Fmocリジン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−(t−ブチル)−L−セリン(Fmocセリン)を、それぞれ1ミリモル用いた。
【0038】
(2) 上記(1)で得られたペプチド−樹脂に、DMF中で無水酢酸0.96Mを、トリエチルアミン32.6mM 下で3時間反応させ、アセチル化を行った。
(3) 上記(2)で得られたペプチド−樹脂に、5%の水、5%のチオアニソール、7.5%のフェノール、2.5%のエタンジチオールを含むトリフルオロ酢酸10mlを添加して6時間処理して、ペプチドの保護基の脱離と、固相(樹脂)からのペプチド脱離を行った。それによって生成した溶液をジエチルエーテルに加えてペプチドを沈殿させ、生成した沈殿をジエチルエーテルで数回洗浄して、粗生成物(粗製ペプチド)を得た。
(4) 上記(3)で得られた粗生成物を、分取用高速液体クロマトグラフィー(カラム:デルタパックC18 47×300mm プレップパック1000加圧モジュール付)(ミリポア・ウォーターズ社製)で精製し、それにより得られた精製ペプチドを、分析用高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製「LC6A」、カラム:東ソー株式会社製「TSKgel ODS−80TM CTR、移動相:トリフルオロ酢酸を0.05容量%含有するアセトニトリルと水の混合溶媒)に付し、アセトニトリル濃度を30分間で5容量%から50容量%に徐々に変化させたところ、14.4分の位置に単一のピークが示された。FAB法マススペクトルにより求めた精製ペプチドの分子量は1039であり(分子量の理論値=1039.18)、配列番号1で表されるペプチドであることが確認された。
【0039】
《製造例2〜7》
[配列番号2〜配列番号7で表されるペプチドの製造]
製造例1と同様にして合成反応(結合反応)を行って、配列番号2で表されるペプチド、配列番号3で表されるペプチド、配列番号4で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチド、配列番号6で表されるペプチドおよび配列番号7で表されるペプチドをそれぞれ合成した。
それにより得られた配列番号3、5および7のペプチドについて、実施例1と同様にしてアセチル化および保護基の脱離と固相(樹脂)からの脱離を行って粗生成物(粗製ペプチド)を得て、それを精製した。
また、配列番号2、4および6のペプチドは、アセチル化を行わず、保護基の脱離と固相(樹脂)からの脱離を行って粗生成物(粗製ペプチド)を得て、それを精製した。
それぞれの精製ペプチドについて、製造例1と同様の分析用高速液体クロマトグラフィーを行ったときの溶出時間、およびFAB法マススペクトル測定により求めた分子量は、下記の表1に示すとおりであった。
なお、その際に、製造例2〜3(配列番号2〜配列番号3で表されるペプチドの合成)および製造例5〜7(配列番号5〜配列番号7で表されるペプチドの合成)では、原料アミノ酸として、製造例1で使用した原料アミノ酸のうちから各々のペプチドの合成に必要なアミノ酸を選んで用いた。
また、製造例4(配列番号4で表されるペプチドの合成)では、製造例1で使用した原料アミノ酸のうちから必要なアミノ酸を選んで用いると共に、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−(t−ブチル)−L−トレオニン(Fmocトレオニン)を更に使用した。
【0040】
《製造例8〜14》
[配列番号8〜配列番号14で表されるペプチドの製造]
製造例1と同様にして合成反応(結合反応)を行って、配列番号8で表されるペプチド、配列番号9で表されるペプチド、配列番号10で表されるペプチド、配列番号11で表されるペプチド、配列番号12で表されるペプチド、配列番号13で表されるペプチドおよび配列番号14で表されるペプチドをそれぞれ合成した。
それにより得られた配列番号11および14のペプチドについて、製造例1と同様にしてアセチル化および保護基の脱離と固相からの脱離を行って粗生成物(粗製ペプチド)を得て、それを精製した。
また、配列番号8、9、10、12および13のペプチドは、アセチル化を行わず、保護基の脱離と固相(樹脂)からの脱離を行って粗生成物(粗製ペプチド)を得て、それを精製した。
それぞれの精製ペプチドについて、製造例1と同様の分析用高速液体クロマトグラフィーを行ったときの溶出時間、およびFAB法マススペクトル測定により求めた分子量は、下記の表1に示すとおりであった。
なお、その際に、製造例10〜11(配列番号10〜配列番号11で表されるペプチドの合成)および製造例13〜14(配列番号13〜配列番号14で表されるペプチドの合成)では、原料アミノ酸として、製造例1で使用した原料アミノ酸のうちから各々のペプチドの合成に必要なアミノ酸を選んで用いた。
【0041】
また、上記において、製造例8(配列番号8で表されるペプチドの合成)では、製造例1で使用した原料アミノ酸のうちから必要なアミノ酸を選んで用いると共に、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−(t−ブチル)−L−チロシン(Fmocチロシン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−β−(t−ブチルオキシ)−L−アスパラギン酸(Fmocアスパラギン酸)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−γ−(t−ブチルオキシ)−L−グルタミン酸(Fmocグルタミン酸)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−S−トリチル−L−システイン(Fmocシステイン)、およびNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−フェニルアラニン(Fmocフェニルアラニン)を更に使用した。
【0042】
また、上記において、製造例9(配列番号9で表されるペプチドの合成)では、製造例1で使用した原料アミノ酸のうちから必要なアミノ酸を選んで用いると共に、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−S−トリチル−L−システイン(Fmocシステイン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−ロイシン(Fmocロイシン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−アスパラギン(Fmocアスパラギン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−メチオニン(Fmocメチオニン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−N1M−トリチル−L−ヒスチジン(Fmocヒスチジン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−γ−(t−ブチルオキシ)−L−グルタミン酸(Fmocグルタミン酸)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−β−(t−ブチルオキシ)−L−アスパラギン酸(Fmocアスパラギン酸)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−(t−ブチル)−L−チロシン(Fmocチロシン)、およびNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−(t−ブチル)−L−トレオニン(Fmocトレオニン)を更に使用した。
【0043】
また、上記において、製造例12(配列番号12で表されるペプチドの合成)では、製造例1で使用した原料アミノ酸のうちから必要なアミノ酸を選んで用いると共に、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−アスパラギン(Fmocアスパラギン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−S−トリチル−L−システイン(Fmocシステイン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−グルタミン(Fmocグルタミン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−ロイシン(Fmocロイシン)、およびNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−γ−(t−ブチルオキシ)−L−グルタミン酸(Fmocグルタミン酸)を更に使用した。
【0044】
【表1】
【0045】
《製造例15》
[アルギン酸共有結合架橋ゲルの製造]
(1) 2.3g(20mmol)のN−ヒドロキシコハク酸イミド(株式会社ペプチド研究所製)を酢酸エチル150mlに溶解し、この溶液に、0.6g(10mmol)のエチレンジアミン(和光純薬株式会社製)を酢酸エチル10mlに溶解した溶液を撹拌しながら室温下に滴下し、滴下終了後さらに1時間撹拌を続けた。析出した結晶を濾取し、減圧下に乾燥してエチレンジアミン2N−ヒドロキシコハク酸イミド塩2.9g(収率100%)を得た。
(2) アルギン酸ナトリウム(和光純薬株式会社製)の1重量%水溶液(粘度500〜600cp)の500ml(カルボキシル基;275mmol)に、上記(1)で得られたエチレンジアミン2N−ヒドロキシコハク酸イミド塩2.42g(8.5mmol)と、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(株式会社ペプチド研究所製)17.6g(92mmol)を添加して溶解し、それにより得られた溶液をテフロン被覆アルミ製トレイ(15cm×25cm)に流延し、室温下に静置して、約51時間後に含水ゲルを得た。
(3) 上記(2)で得られた含水ゲルを、カルシウムイオンとナトリウムイオンの濃度が細胞間質液におけるのと同じ濃度(カルシウムイオン5meq、ナトリウムイオン143meq)になるように、塩化カルシウムと塩化ナトリウムを溶解した水溶液で十分に洗浄した後、純水で十分に洗浄し、次いで凍結乾燥してスポンジ状のアルギン酸共有結合架橋ゲル約5gを得た。
【0046】
《実施例1》
[神経再生用材料の製造(アルギン酸共有結合架橋ゲルへの配列番号1で表されるペプチドの固定化)]
上記の製造例15で得られたアルギン酸共有結合架橋ゲルの0.1gをジメチルホルムアミドで洗浄してゲル中の水分をジメチルホルムアミドで置換した後、N−ヒドロキシコハク酸イミド1.2mgと1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩1.9mgを加えて、一晩振盪した。次いで、メタノールとジメチルホルムアミドで数回洗浄した後、上記の製造例1で得られた配列番号1で表されるペプチド10μmolとジイソプロピルエチルアミン1.7μlを加えて、さらに一晩振盪してアルギン酸共有結合架橋ゲルにペプチドを結合させた。これを、メタノールとエタノールで数回洗浄した後、真空乾燥して、γ線滅菌(25kGy)を施して、アルギン酸共有結合架橋ゲルに配列番号1で表されるペプチドが固定化された神経再生用材料を製造した。
【0047】
《実施例2〜7および参考例1〜7》
[神経再生用材料の製造(アルギン酸共有結合架橋ゲルへの配列番号2〜14で表されるペプチドの固定化)]
配列番号1で表されるペプチドの代わりに、配列番号2〜7で表されるペプチドのそれぞれを用いるか(実施例2〜7)または配列番号8〜14で表されるペプチドを用いた(参考例1〜7)以外は実施例1と同様にして、アルギン酸共有結合架橋ゲルに配列番号2〜14のそれぞれが固定化された神経再生用材料を製造した。
【0048】
《比較例1》[神経再生用材料)]
ペプチドの固定化されていないスポンジ状のコラーゲンゲル(Matrigel R:Collaborative Biomedical Products社製)をこの比較例1の神経再生用材料とした。
【0049】
《実施例8》
[神経再生材の製造(生体吸収性チューブへの神経再生用材料の充填物の製造)]
上記の実施例1で得られた神経再生用材料(ペプチド固定化アルギン酸共有結合架橋ゲル)の0.1gおよび蒸留水4mlを試験管に入れ、37℃の恒温水槽中で12時間振盪してゲル化させた。得られたゲルを注射器に吸い取り、十分な長さのポリグリコール酸チューブ(内径約4mm、厚さ約0.3mm)中に注射器で充填し、凍結乾燥して神経再生材(神経再生用材料充填チューブ)を製造した。なお、前記の全ての操作は滅菌条件下で行った。
【0050】
《実施例9〜14、参考例8〜14および比較例2》
[神経再生材の製造(生体吸収性チューブへの神経再生用材料の充填物の製造)]
実施例1で得られた神経再生用材料の代わりに、実施例2〜7で得られた神経再生用材料のそれぞれを用いるか(実施例9〜14)、参考例1〜7で得られた神経再生用材料のそれぞれを用いるか(参考例8〜14)または比較例1で得られた神経再生用材料を用いた(比較例2)以外は実施例8と同様にして神経再生材(神経再生用材料充填チューブ)を製造した。
【0051】
《試験例1》
(1)神経再生材の移植手術(末梢神経再生実験):
(i) 外科手術前に手術室内で、上記の実施例8〜14、参考例8〜14および比較例2で得られた神経再生材(神経再生用材料充填チューブ)の両端の余分な管を除去し、必要な長さに調整した。
(ii) 各試験区ごとに5匹の猫を準備し(1〜15試験区)、各々の猫にケタラール2mlを筋肉注射し、全身麻酔を施した後、メスで座骨部を切開して座骨神経の軸索を露出させ、定規で正確に測定して45mmの座骨神経を切除した。
(iii) 前記(2)において座骨神経を切除した部分に、上記(1)で準備した神経再生材を長さ50mmで挿入し、その両端を10−0ナイロン糸を用いて座骨神経に縫合固定した。次いで、筋肉を数箇所および表皮を数箇所縫合し、神経再生材の埋植および創の閉鎖を行った。
【0052】
(2)末梢神経再生の評価:
上記(1)の手術後13週目で、筋電図計(Nicolet Biomedical Instruments社製「The Nicolet Viking」)を使用して、体性感覚誘発電位(SEP)および誘発筋電図(EMG)を記録した。
その際に、SEPは神経再生部位よりも末梢の腓骨神経に電気刺激を加えて、それにより生じた誘発電位を大脳皮質で記録した。また、EMGは大脳皮質運動野に磁気刺激を加えて、神経再生部位よりも末梢の下腿の筋肉の筋電図を記録した。
さらに、20週目に光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いて組織の形態学的評価を行った。
【0053】
(3)末梢神経再生の評価結果:
(i) 実施例8〜14で得られた本発明の神経再生材(配列番号1〜7で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区1〜7および参考例8〜14で得られた神経再生材(配列番号8〜14で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区8〜14の場合には、手術後13週目にすでにSEPおよびEMGが記録され、神経の再生が行われていた。そのうちでも、実施例8〜14の神経再生材(配列番号1〜7で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区1〜7では、SEPおよびEMG共に、その潜時は短く且つ電位が高くて、神経の再生が良好であった。特に、実施例8、12および14の神経再生材(配列番号1で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチドおよび配列番号7で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区1、5および7では、SEPおよびEMG共に、その潜時は一層短く且つ電位が一層高かった。
(ii) 一方、比較例2で得られた神経再生材(コラーゲンゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区15では、手術後13週目にSEPおよびEMGが記録されず、神経の再生が円滑に行われていなかった。
【0054】
(iii) 20週目の標本では、実施例8〜14で得られた本発明の神経再生材(配列番号1〜7で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区1〜7および参考例8〜14で得られた神経再生材(配列番号8〜14で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区8〜14の場合には、神経再生材を埋植した部分で有髄軸索が数多く観察された。そのうちでも、実施例8〜14の神経再生材(配列番号1〜7で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区1〜7では、より多くの有髄軸索が観察され、特に実施例8、12および14の神経再生材(配列番号1で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチドおよび配列番号7で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区1、5および7ではより一層多くの有髄軸索が観察された。
(iv) 一方、20週目の標本において、比較例2で得られた神経再生材(コラーゲンゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区15では、神経再生材を埋植した部分で有髄軸索がほとんど観察されなかった。
【0055】
(v) さらに、実施例8〜14で得られた本発明の神経再生材(配列番号1〜7で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区1〜7および参考例8〜14で得られた神経再生材(配列番号8〜14で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区8〜14の場合には、神経再生材の埋植部位よりも遠位部でもシュワン細胞を伴う細い有髄軸索、無髄軸索が観察され、種々の段階の再生軸索が混在していた。そのうちでも、実施例8〜14の神経再生材(配列番号1〜7で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填してもの)を埋植した試験区1〜7では、より太い有髄軸索が数多く観察され、特に実施例8、12および14の神経再生材(配列番号1で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチドおよび配列番号7で表されるペプチドを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲルをチューブに充填したもの)を埋植した試験区1、5および7では、一層より太く、より数多くの有髄軸索が観察された。
【0056】
(vi) 上記の結果から、配列番号1〜7で表されるペプチドの各々を基材に固定化した実施例1〜7の神経再生用材料およびそれを生体吸収性のチューブに充填した実施例8〜14の神経再生材、並びに配列番号8〜14で表されるペプチドの各々を基材に固定化した参考例1〜7の神経再生用材料およびそれを生体吸収性のチューブに充填した参考例8〜14の神経再生材は、軸索伸長作用を有すること、そのうちでも配列番号1〜7で表されるペプチドの各々を基材に固定化した実施例1〜7の神経再生用材料並びにそれを生体吸収性のチューブに充填した実施例8〜14の神経再生材は軸索伸長作用に優れること、特に配列番号1で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチドおよび配列番号7で表されるペプチドの各々を基材に固定化した実施例1、5および7の神経再生用材料並びにそれを生体吸収性のチューブに充填した実施例8、12および14の神経再生材は軸索伸長作用に一層優れること、それに対して比較例1の神経再生用材料(コラーゲンゲル)およびそれを生体吸収性のチューブに充填した比較例2の神経再生材は軸索伸長作用に劣っていることがわかる。
【0057】
《試験例2》
(1)神経再生用材料の移植手術(中枢神経再生実験):
(i) 上記の実施例1〜7で得られた神経再生用材料(配列番号1〜7で表されるペプチドのそれぞれを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲル)、参考例1〜7で得られた神経再生用材料(配列番号8〜14で表されるペプチドのそれぞれを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲル)および比較例1の神経再生用材料(ペプチドの固定化されていないスポンジ状コラーゲンゲル)ごとに10匹ずつの生後10日の幼若ラットを準備した(試験区16〜30)。
(ii) エーテル麻酔下に、顕微鏡下で胸椎のラミネクトミーを行い、鋭利なメスを用いて、第8〜10胸椎レベルで脊髄に2mmのギャップを作成し、実施例1〜7、参考例1〜7および比較例1で得られた神経再生用材料のそれぞれを充填(埋植)した後、骨を元に戻し、筋肉を数箇所および皮膚を数箇所縫合して手術を終了した。
【0058】
(2)中枢神経再生の評価:
上記(1)の手術後9週目で、筋電図計(Nicolet Biomedical Instruments社製「The Nicolet Viking」)を使用して、体性運動誘発電位(MEP)および体性感覚誘発電位(SEP)を記録した。
その際に、MEPは大脳皮質運動野に電気刺激を加えて、それにより生じた誘発電位を末梢の腓腹筋で記録した。また、SEPは下肢に電気刺激を加えて、それにより生じた誘発電位をpostcruciate sensory cortex で記録した。
さらに、12週目に光学顕微鏡および電子顕微鏡を用いて組織の形態学的評価を行った。
【0059】
(3)中枢神経再生の評価結果:
(i) 実施例1〜7で得られた本発明の神経再生用材料(配列番号1〜7で表されるペプチドのそれぞれを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲル)を用いた試験区16〜22および参考例1〜7で得られた神経再生用材料(配列番号8〜14で表されるペプチドのそれぞれを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲル)を用いた試験区23〜29では、いずれも、手術後9週目にすでにMEPおよびSEPが記録され、神経の再生されていると評価された。そのうちでも、実施例1〜7の神経再生用材料(配列番号1〜7で表されるペプチドのそれぞれを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲル)を用いた試験では、MEPおよびSEP共に、その潜時は短く且つ電位が高くて、より正常に近い評価が得られた。特に、実施例1、5および7の神経再生用材料材(配列番号1、配列番号5および配列番号7で表されるペプチドのそれぞれを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲル)を用いた試験では、MEPおよびSEP共に、その潜時は一層短く且つ電位が一層高かった。
(ii) 一方、比較例1の神経再生用材料(ペプチドを固定化してないスポンジ状コラーゲンゲル)を用いた試験区30では、手術後9週目にMEPおよびSEPが記録されず、神経の再生が円滑に行われていなかった。
【0060】
(iii) 12週目の標本では、実施例1〜7で得られた本発明の神経再生用材料(配列番号1〜7で表されるペプチドのそれぞれを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲル)を用いた試験区16〜22および参考例1〜7で得られた神経再生用材料(配列番号8〜14で表されるペプチドのそれぞれを固定化したアルギン酸共有結合架橋ゲル)を用いた試験区23〜29では、神経再生用材料を埋植した部分で有髄軸索および無髄軸索が数多く観察された。軸索はシュワン様細胞と1対1の関係を持ち、厚いミエリン髄鞘を持っていた。そのうちでも、実施例1〜7の神経再生用材料を用いた試験区16〜22では、より多くの有髄軸索および無髄軸索が観察され、特に実施例1、5および7の神経再生用材料を用いた試験区16、20および22ではより一層多くの有髄軸索および無髄軸索が観察された。
(iv) 一方、12週目の標本において、比較例1の神経再生用材料(ペプチドを固定化してないスポンジ状のコラーゲンゲル)を用いた試験区30では、神経再生用材料を埋植した部分で有髄軸索および無髄軸索が共に観察されず、軸索の伸長を妨げる多数の線維状の瘢痕組織が観察された。
【0061】
(v) 上記の結果から、配列番号1〜7で表されるペプチドのそれぞれを基材に固定化した実施例1〜7の神経再生用材料および配列番号8〜14で表されるペプチドのそれぞれを基材に固定化した参考例1〜7の神経再生用材料は、軸索伸長作用を有すること、そのうちでも配列番号1〜7で表されるペプチドのそれぞれを基材に固定化した実施例1〜7の神経再生用材料は軸索伸長作用に優れること、特に配列番号1で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチドおよび配列番号7で表されるペプチドのそれぞれを基材に固定化した実施例1、5および7の神経再生用材料は軸索伸長作用に一層優れること、それに対して比較例1の神経再生用材料は軸索伸長作用に劣っていることがわかる。
【0062】
【発明の効果】
上記の一般式(I)で表されるペプチドに含まれるペプチドおよび/またはそれらの塩を基材に固定化してなる神経再生用材料、特に配列番号1〜7で表されるペプチドおよび/またはその塩を基材に固定してなる本発明の神経再生用材料、並びに前記の神経再生用材料を生体吸収性チューブに充填してなる本発明の神経再生材、配列番号8〜14で表されるペプチドおよび/またはそれらの塩を基材に固定化してなる神経再生用材料、並びに前記の神経再生用材料を生体吸収性チューブに充填してなる神経再生材は、神経細胞増殖促進作用および神経軸索伸長作用を示し、安全性、生体適合性などの点でも優れているため、神経細胞や神経組織の損傷、欠損などによる中枢神経や末梢神経系の疾患の治療、脊椎疾患、頭部外傷、卒中などの脳血管疾患のような外傷性疾患などの治療に有効に用いることができる。
そのうちでも、配列番号1〜7で表されるペプチドおよび/またはそれらの塩を基材に固定化してなる本発明の神経再生用材料は、特に強い神経細胞増殖促進作用および神経軸索伸長作用を有し、且つ安全性、生体適合性の点でも優れているので、上記した種々の神経系疾患の治療に用いる神経再生用材料として特に有用である。
【0063】
[配列表フリーテキスト]
配列番号1 :神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号2 :神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号3 :神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号4 :神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号5 :神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号6 :神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号7 :神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号8 :神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号9 :神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号10:神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号11:神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号12:神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号13:神経組織を再生する合成ペプチド。
配列番号14:神経組織を再生する合成ペプチド。
【0064】
【配列表】
Claims (5)
- 配列番号1で表されるペプチド、配列番号2で表されるペプチド、配列番号3で表されるペプチド、配列番号4で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチド、配列番号6で表されるペプチド、配列番号7で表されるペプチドおよびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を基材に固定化してなることを特徴とする神経再生用材料。
- 基材が多糖類のゲルからなるものである請求項1に記載の神経再生用材料。
- 多糖類のゲルがアルギン酸ゲルである請求項2に記載の神経再生用材料。
- アルギン酸ゲルがアルギン酸共有結合架橋ゲルである請求項3に記載の神経再生用材料。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の神経再生用材料を、生体吸収性の材料からなるチューブに充填してなることを特徴とする神経再生材。
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