JP3862361B2 - 医療用手当材およびそれに用いる新規なペプチド - Google Patents

医療用手当材およびそれに用いる新規なペプチド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のペプチドおよび/またはその塩を基材に固定化した医療用手当材、前記医療用手当材に有効に用いる新規なペプチドまたは塩、並びに該新規なペプチドおよび/またはその塩を有効成分とする細胞増殖促進および/または細胞接着促進用の剤に関するものである。本発明の医療用手当材、並びにペプチドおよび/またはその塩は、生理活性が高く、特に強い細胞増殖促進作用および/または細胞接着作用を有し、生体組織の治癒、接着、補強および/または再生用の材料または剤として有用であり、例えば、創傷被覆材、生体組織接着剤、骨補強剤、軟骨再生剤、神経再生剤などとして用いることができ、特に難治性潰瘍などの難治性創傷の治療に有用である。
【0002】
【従来の技術】
生体組織の受けた創傷などを治癒促進する作用を有するペプチドとしては、例えば、配列番号8で表されるペプチド(TRAP−508)が知られており、このペプチドは動物に作製した創に対して治癒促進効果があることが報告されている[SAAS Bull. Biochem.Biotechnol.,,8−12(1990)、J.Clin.Invest.,89,1469−1477(1992)、Thromb. and Haemost.,70(1),158−162(1993)、J.Surg.Res.,53,117−122(1992)]。
また、配列番号9で表されるペプチド(EGF−14−31)は、ヒト線維芽細胞の増殖を促進することが報告されている[Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,81,1351−1355(1984)]。
さらに、配列番号10で表されるペプチド(Laminin誘導体ペプチド)は、細胞の接着、遊走および血管新生を促進することが報告されている[J.Biol. Chem.,270,20583−20590(1995)、J.Biol. Chem.,270,10365−10368(1995)]。
さらに、配列番号12で表されるペプチド(TGFβ69−84)は、軟寒天中のNRK−49F細胞のコロニー形成を促進することが確認されている(特開平6−025288号公報)。
そして、配列番号13で表されるペプチド(Elastin由来ペプチド)は、ヒト皮膚由来の線維芽細胞の遊走と増殖を刺激することが報告されている[Annales Chirurgiae et Gynaecologiae,83,296−302(1994)およびCell Biology International,18,111−117(1994)]。
【0003】
上記した配列番号8、9、10、12および13で表されるペプチドは、細胞接着活性または細胞増殖刺激活性を示すが、上記の従来技術ではそれらのペプチドはいずれも基材に固定化せずに遊離の状態で用いて実験が行われており、基材に固定化したときにも細胞接着活性または細胞増殖刺激活性が失われずに維持されるか否かについては何ら知られていない。しかしながら、上記したペプチド類を実際の医療に用いるには、基材に固定化して閉鎖性被覆材などを形成し、それを患部に直接接触させて使用することが、治癒を円滑に効率良く行う上で望ましい。
また、上記した従来既知のペプチド類は、細胞接着活性や細胞増殖刺激活性などの生理活性が必ずしも十分に強いとは言えず、それらの生理活性を高めるための改良技術や、該ペプチド類よりも高い細胞接着活性や細胞増殖刺激活性などの生理活性を示す物質の開発が求められている。
【0004】
また、従来、外傷や熱傷、潰瘍、褥瘡などの創傷の治療にはガーゼおよび/または軟膏類が汎用されてきた。これらは滲出液を吸収し、かつ外部からの細菌などの侵入を防ぐ効果がある。近年、創部からの滲出液中に治癒を促進する種々の増殖因子(bFGF、TGFβなど)が存在することが明らかになり[Howell, J.M., Current and Future Trends in Wound Healing, Emerg. Med. Clin. North Amer., 10, 655−663(1992)等]、そのような増殖因子を創部に保持して創部治癒促進効果を示す閉鎖性被覆材が注目されるようになってきた[Eaglstein, W.E., Experience with biosynthetic dressings, J. Am. Acad. Dermatol., 12,434−440 (1985)]。
【0005】
閉鎖性の創傷被覆材としては、ポリビニルアルコール含水ゲル、ポリエチレングリコール含水ゲル、ポリアクリルアミド含水ゲルなどの含水ゲル、ポリウレタンフイルム、ハイドロコロイド、アルギン酸塩繊維からなる不織布、ポリビニルアルコールスポンジなどが知られている。特許公報上では、具体的には、例えば、(1)不溶性アルギン酸塩と可溶性アルギン酸塩との混合アルギン酸塩の繊維よりなる不織布製の傷接触パッドに抗微生物剤や局部麻酔剤などの薬剤を含有させたもの(特表平4−501067号公報);(2)生体親和性の合成材料よりなる連続気泡フォームの細孔に硼酸塩で変性したグアーガムのヒドロゲルを包含させ、該ヒドロゲルに遊離ヒドロキシル基および/またはアミノ基と二官能カップリング剤とにより創傷治癒を促進するペプチドを表面に結合させるか、および/または殺菌性または抗真菌性の物質を含ませた創傷被覆材(特表平6−500028号公報);(3)ケン化度が95モル%以上で粘度平均重合度が1500以上のポリビニルアルコールと2〜8個の水酸基を有する水溶性有機化合物を用いて形成したヒドロゲルよりなる創傷被覆材(特開昭58−92359号公報);(4)ポリビニルアルコールと、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体などからなる複合化材とを物理的に架橋させた半結晶質の半透明で水不溶性の創傷被覆材などとして用いられるヒドロゲル(特開平6−212045号公報);(5)ヒアルロン酸および/またはその塩を包括したポリビニルアルコール含水ゲルに塩酸ピロカルピンなどを包含させた創傷被覆材などとして用いられる持続性活性体(特開平3−215417号公報)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、上記した従来の創傷被覆材は、創傷の治癒促進作用が十分ではないため、細胞増殖促進活性が高くて、創傷の治癒、生体組織の接着、骨補強、軟骨再生、神経再生などに有効に使用できる医療用手当材の開発が求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、生理活性が高く、特に強い細胞増殖促進作用を有していて、生体組織の受けた創傷などの治癒、生体組織の接着、補強(例えば骨の補強)、再生(例えば軟骨や神経などの再生)などに有効に使用することのできる新しい物質を提供することである。
さらに、本発明の目的は、生理活性が高くて良好な細胞増殖促進作用や細胞接着活性を示す物質を基材に固定化して、創傷の治癒、生体組織の接着、骨の補強、軟骨や神経の再生などに有効に用いることのできる医療用手当材を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意研究を重ねてきた。そしてそのような研究の一環として、配列番号8〜配列番号14で表される従来既知のペプチドおよびその誘導体を含水ゲルなどの基材に固定化したところ、固定化後も前記既知のペプチド類の生理活性が失われず、良好な細胞増殖促進作用、細胞接着作用を示し、その固定化物が医療用手当材として有効に使用できることを見出した。
さらに、本発明者らは、前記の研究と並行して、細胞増殖促進作用や細胞接着作用などの生理活性を示す新しい物質の開発を目指して研究を行ってきた。その結果、下記の一般式(I);
【0009】
【化3】
X−A−D−E−G−J−L−M−Pro−Q−Y (I)
[式中、Xは水素、CH3−C(O)−およびCH3−C(O)−Lys−からなる群から選ばれる基、AはSerまたはThrからなるアミノ酸残基、DはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、EはLysまたはArgからなるアミノ酸残基、GはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、JはGlyまたはAlaからなるアミノ酸残基、LはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、MはGlyまたはAlaからなるアミノ酸残基、QはGly、AlaおよびGly−Lys−Lys−Glyからなる群から選ばれるアミノ酸残基またはペプチド残基、並びにYは−OHまたは−NH2を示す。]
で表される新規なペプチドまたはその塩が、上記した配列番号8〜配列番号14で表されるペプチドよりも一層強い細胞増殖促進作用、細胞接着促進作用などの生理活性を有し、しかも細胞毒性が低く、そのまま遊離の状態で、または基材に固定化して、創傷の治癒、生体組織の接着、骨の補強、軟骨の再生、神経の再生などに有効に使用できることを見出した。
また、本発明者らは、上記の一般式(I)で表されるペプチドまたはその塩として、配列番号1〜配列番号7で表されるペプチドが、好ましく用いられることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0010】
したがって、本発明は、下記の一般式(I);
【0011】
【化4】
X−A−D−E−G−J−L−M−Pro−Q−Y (I)
[式中、Xは水素、CH3−C(O)−およびCH3−C(O)−Lys−からなる群から選ばれる基、AはSerまたはThrからなるアミノ酸残基、DはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、EはLysまたはArgからなるアミノ酸残基、GはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、JはGlyまたはAlaからなるアミノ酸残基、LはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、MはGlyまたはAlaからなるアミノ酸残基、QはGly、AlaおよびGly−Lys−Lys−Glyからなる群から選ばれるアミノ酸残基またはペプチド残基、並びにYは−OHまたは−NH2を示す。]
で表されるペプチドおよびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を基材に固定化してあることを特徴とする医療用手当材である。
【0012】
そして、本発明は、配列番号1で表されるペプチド、配列番号2で表されるペプチド、配列番号3で表されるペプチド、配列番号4で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチド、配列番号6で表されるペプチド、配列番号7で表されるペプチドおよびそれらの塩の少なくとも1種を基材に固定化してなる上記の医療用手当材をその好ましい態様として包含する。
【0013】
さらに、本発明は、下記の一般式(I);
【0014】
【化5】
X−A−D−E−G−J−L−M−Pro−Q−Y (I)
[式中、Xは水素、CH3−C(O)−およびCH3−C(O)−Lys−からなる群から選ばれる基、AはSerまたはThrからなるアミノ酸残基、DはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、EはLysまたはArgからなるアミノ酸残基、GはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、JはGlyまたはAlaからなるアミノ酸残基、LはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、MはGlyまたはAlaからなるアミノ酸残基、QはGly、AlaおよびGly−Lys−Lys−Glyからなる群から選ばれるアミノ酸残基またはペプチド残基、並びにYは−OHまたは−NH2を示す。]
で表される新規なペプチドまたはその塩である。
【0015】
そのうちでも、本発明は、配列番号1で表されるペプチド、配列番号2で表されるペプチド、配列番号3で表されるペプチド、配列番号4で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチド、配列番号6で表されるペプチド、配列番号7で表されるペプチドまたはその塩からなる新規なペプチドまたはその塩を好ましい態様として包含する。
さらに、本発明は、上記した本発明の新規なペプチドおよびその塩の少なくとも1種を有効成分とする、細胞増殖促進および/または細胞接着促進用の剤を包含し、本発明の前記した剤は、特に、生体組織の治癒、接着、補強および/または再生用の剤として有効に用いられる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の医療用手当材について説明する。
本発明の医療用手当材では、一般式(I);X−A−D−E−G−J−L−M−Pro−Q−Yで表されるペプチドおよびそれらの塩の少なくとも1種を基材に固定化してあることが必要である。
ここで、本発明でいう「医療用手当材」とは、上記した特定のペプチドおよび/またはその塩を基材に固定化した状態で、擦過創、切創、挫創などの一般外傷;採皮創、削皮創などの手術創;熱傷;潰瘍;褥瘡;前記以外の各種創傷などからなる患部に当てて用いることによって患部からの滲出液の吸収、該滲出液の保持、患部への菌類の感染や増殖の防止、患部の治癒促進させるために用いる材、生体組織の接着促進のために用いる材、骨の補強のために用いる材、軟骨の再生促進のために用いる材、神経の再生促進のために用いる材などの総称をいう。
【0017】
本発明の医療用手当材に用いる上記したペプチド類のうちで、前記の一般式(I)で表されるペプチドは、上記したように、本発明者らが初めて見出した新規なペプチドであって、該一般式(I)において、Xは水素、CH3−CO−およびCH3−CO−Lys−から選ばれる基であり、AはSerおよびThrから選ばれるアミノ酸残基であり、DはIle、ValおよびLeuから選ばれるアミノ酸残基であり、EはLysおよびArgから選ばれるアミノ酸残基であり、GはIle、ValおよびLeuから選ばれるアミノ酸残基であり、JはGlyおよびAlaから選ばれるアミノ酸残基であり、LはIle、ValおよびLeuから選ばれるアミノ酸残基であり、MはGlyおよびAlaから選ばれるアミノ酸残基であり、QはGly、AlaおよびGly−Lys−Lys−Glyから選ばれるアミノ酸残基またはペプチド残基であり、そしてYは−OHおよび−NH2から選ばれる基であることが必要である。
X、A、D、E、G、J、L、M、QおよびYが前記した以外の基である場合は、細胞増殖促進作用、細胞接着促進作用などの生理活性が弱く、本発明の目的が達成されない。
ここで、上記の一般式(I)で表されるペプチドを配列表に示すと、該配列表における配列番号15〜配列番号18で表されるペプチドが、一般式(I)で表されるペプチドに相当する。
【0018】
本発明の医療用手当材は、上記した一般式(I)で表されるペプチドおよびそれらの塩の少なくとも1種を基材に固定化してあるものであればいずれでもよい
限定されるものではないが、本発明の医療用手当材において基材に固定化して用いるペプチドの具体例としては、下記の(1)〜()のペプチドを挙げることができる。
(1)配列番号1で表されるペプチド(Ac−Lys−Ser−Ile−Arg−Val−Ala−Val−Ala−Pro−Gly)。
(2)配列番号2で表されるペプチド(Ser−Ile−Arg−Ile−Ala−Ile−Ala−Pro−Gly)。
(3)配列番号3で表されるペプチド(Ac−Ser−Val−Arg−Val−Ala−Val−Ala−Pro−Gly)。
(4)配列番号4で表されるペプチド(Thr−Ile−Lys−Val−Ala−Val−Ala−Pro−Gly)。
(5)配列番号5で表されるペプチド(Ac−Lys−Ser−Ile−Arg−Ile−Ala−Ile−Ala−Pro−Gly)。
(6)配列番号6で表されるペプチド(Ser−Ile−Arg−Val−Ala−Val−Ala−Pro−Gly−Lys−Lys−Gly)。
(7)配列番号7で表されるペプチド(Ac−Lys−Ser−Ile−Arg−Val−Gly−Val−Gly−Pro−Gly)。
【0019】
また、上記の一般式(I)で表されるペプチドには含まれないが、基材に固定化して医療用手当材として有効に用い得るペプチドの具体例としては、下記の(8)〜(14)のペプチドを挙げることができる。
(8)配列番号8で表されるペプチド(Ala−Gly−Tyr−Lys−Pro−Asp−Glu−Gly−Lys−Arg−Gly−Asp−Ala−Cys−Glu−Gly−Asp−Ser−Gly−Gly−Pro−Phe−Val)。
(9)配列番号9で表されるペプチド(Cys−Leu−Asn−Gly−Gly−Val−Ala−Met−His−Ile−Glu−Ser−Leu−Asp−Ser−Tyr−Thr−Cys)。
(10)配列番号10で表されるペプチド(Ser−Ile−Lys−Val−Ala−Val)。
(11)配列番号11で表されるペプチド(Ac−Lys−Ser−Ile−Lys−Val−Ala−Val)。
(12)配列番号12で表されるペプチド(Asn−Pro−Gly−Ala−Ser−Ala−Ala−Pro−Cys−Cys−Val−Pro−Gln−Ala−Leu−Glu)。
(13)配列番号13で表されるペプチド(Val−Gly−Val−Ala−Pro−Gly)。
(14)配列番号14で表されるペプチド(Ac−Lys−Val−Gly−Val−Ala−Pro−Gly)。
【0020】
上記した(1)〜(14)のペプチドのうちで、上記(1)〜(7)のペプチド(配列番号1〜配列番号7のペプチド)は、本発明者らが初めて見出した新規なペプチドであって、高い生理活性、特に強い細胞増殖促進作用および細胞接着促進作用を有し、創傷の治癒、生体組織の接着、骨の補強、軟骨の再生、神経の再生などに極めて有効に作用するので、本発明の医療用手当材においてより好ましく用いられる。
【0021】
また、本発明の医療用手当材では上記したペプチドの生理学的に許容される塩を用いてもよく、例えば、上記したペプチドと、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩;乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、オレイン酸、パルミチン酸などの有機酸との塩;ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、、カルシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウムなどの金属の水酸化物または炭酸塩との塩;トリエチルアミン、ベンジルアミン、ジエタノールアミン、t−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、アルギニンなどの有機塩基との塩などを挙げることができる。それらの塩は、上記したペプチドに対して通常の塩形成反応を利用することにより得ることができる。
【0022】
本発明の医療用手当材では、ペプチドを固定化するための基材として、創傷被覆材やその他の医療用手当材において従来から用いられている生理的に許容され得る基材であればいずれも使用可能であり、例えば、各種含水ゲルまたは含水性ゲル、ポリウレタンフイルムなどのプラスチックフイルム、ハイドロコロイド、アルギン酸塩繊維からなる不織布、ポリビニルアルコール系スポンジなどを用いることができる。そのうちでも、本発明の医療用手当材ではペプチドを固定化するための基材として含水ゲルまたは含水性ゲルが好ましく用いられる。
【0023】
その際の含水ゲルまたは含水性ゲルとしては、細胞毒性のない含水ゲルまたは含水性ゲルがより好ましく用いられ、例えば、アルギン酸、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、セルロースおよびこれらの誘導体などの多糖類;ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミンなどの蛋白質;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリジンなどのポリペプチド;ポリビニルアルコール系重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸およびこれらの誘導体などの高分子材料からなる含水ゲルまたは含水性ゲルを挙げることができる。
そして、基材に用いる含水ゲルまたは含水性ゲルとしては、特に、本発明者らの発明した特開平8−24325号公報に記載されているアルギン酸共有結合架橋ゲル、および本発明者らの発明した下記の(イ)および(ロ)のポリビニルアルコール系重合体から主としてなる含水ゲルまたは含水性ゲルが一層好ましく用いられ、これらの含水ゲルおよび含水性ゲルは、安定性、柔軟性、透明性、耐熱性、耐湿熱性、強度などの点で優れた特性を備えている。
【0024】
(イ) 下記の一般式(i);
【0025】
【化6】
Figure 0003862361
(式中、R1は水素原子または1価の炭化水素基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して1価の炭化水素基であるか又はR2とR3が一緒になってそれらが結合している炭素原子と共に環を形成するか、或いはR1、R2およびR3が一緒になってそれらが結合している炭素原子と共に環を形成している。)
で示される構造単位を5〜50モル%有し、かつ下記の数式▲1▼;
【0026】
【数1】
η=[OH、VES]/2[OH][VES] ▲1▼
(式中、[OH、VES]はポリビニルアルコール系重合体が有するメチレン炭素のうちで水酸基が結合したメチン炭素とアシルオキシ基が結合したメチン炭素に挟まれたもののモル分率を示し、[OH]はビニルアルコール単位のモル分率を示し、そして[VES]は上記の一般式(i)で表される構造単位のモル分率を示す。)
で表されるブロックキャラクター(η)が0.6以下である粘度平均重合度300以上のポリビニルアルコール系重合体(特開平8−206188号公報)。
【0027】
(ロ) 上記の一般式(i)で表される構造単位を0.05〜0.50のモル分率で含有し、且つ下記の一般式(ii);
【0028】
【化7】
Figure 0003862361
[式中、X1は、式−CO−Y1、式−Y1又は式−CO−COOHで表される基(前記式中Y1は、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種の極性基で変性された炭化水素基、またはカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基およびリン酸基から選ばれる少なくとも1種の極性基を有する基で変性された炭化水素基を示す)であるか、或いはそれが結合している酸素原子と共にリン酸基を形成している]
で表される構造単位の少なくとも1種を、0.0001〜0.50のモル分率、好ましくは下記の数式▲2▼;
【0029】
【数2】
{(1−Cest)×Cest}×0.01≦Cpol<{(1−Cest)×Cest}×2.0 ▲2▼
[式中、Cpolは上記の一般式(ii)で表される構造単位のモル分率、そしてCestは上記の一般式(i)で表される構造単位のモル分率を示す]
を満足するモル分率で含有するポリビニルアルコール系重合体(特願平8−308653号)。
【0030】
本発明の医療用手当材における基材として好ましく用いられる含水ゲルまたは含水性ゲルは、水で膨潤した状態(含水ゲル)であっても、水で膨潤する前の乾燥した状態(含水性ゲル)であっても、または完全には水で膨潤していないが水を多少含んだ状態であってもよい。
【0031】
上記したペプチドおよび/またはその塩を基材に固定化する方法は特に制限されず、ペプチドの生理活性が失われず、しかもペプチドが基材から離れずに固定化され得る方法であればいずれの方法で固定化してもよい。基材の種類やペプチドの種類などに応じて好ましい固定化方法は異なり得るが、例えば、N−ヒドロキシコハク酸イミドを用いる活性エステル法、水溶性カルボジイミドを用いる直接縮合法などが好ましく採用される。
また、基材へのペプチドの固定化量は、医療用手当材の用途、基材の種類、基材の形状や構造、医療用手当材が用いられる患部の状態などに応じて、種々調節することができる。
さらに、ペプチドを固定化する基材の形状も特に制限されず、例えば、フイルム状、シート状、小塊状、大塊状、粉末状、ペレット状、管状、線状、繊維状、布帛状、網状などの形態にしておくことができる。
【0032】
上記の一般式(I)で表されるペプチドおよびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種、特に配列番号1〜配列番号のペプチドおよびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を固定化してなる本発明の医療用手当材、配列番号8〜配列番号14で表されるペプチドおよびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を固定化してなる医療用手当材は、擦過創、切創、挫創などの一般外傷;採皮創、削皮創などの手術創;熱傷;潰瘍;褥瘡;前記以外の各種創傷などからなる患部に当てて用いて患部からの滲出液の吸収、該滲出液の保持、患部への菌類の感染や増殖の防止、患部の治癒促進させるための創傷被覆材として、さらには骨などの生体組織の接着促進、骨の補強、軟骨の再生促進、神経の再生促進などの用途に有効に使用することができる。
【0033】
さらに、上記の一般式(I)で表される新規なペプチドおよび/またはその塩、特に配列番号1〜配列番号7で表される新規なペプチドおよび/またはそれらの塩は、それ自体で高い生理活性、特に強い細胞増殖促進作用や細胞接着活性を有し、上記した各種創傷の治癒作用、生体組織の接着作用、骨の補強作用、軟骨の再生作用、神経の再生作用などを有しているので、基材に固定化せずに、そのまま遊離の状態で、単独で、または他の成分との併用下に、例えば、経口、塗布、注射、埋植などによって患者に投与することができる。
そのため、本発明は、上記の一般式(I)で表される新規なペプチドおよび/またはその塩、特に配列番号1〜配列番号7で表される新規なペプチドおよび/またはそれらの塩を本発明の範囲に包含し、更に上記の一般式(I)で表される新規なペプチドおよび/またはその塩、特に配列番号1〜配列番号7で表される新規なペプチドおよび/またはそれらの塩を有効成分として含む、細胞増殖促進および/または細胞接着促進用の剤を包含する。
そして、前記した本発明の細胞増殖促進および/または細胞接着促進用の剤は、特に生体組織の治癒、接着、補強および/または再生用の剤として有効に用いられる。
【0034】
本発明の新規なペプチドの合成法は特に制限されず、ペプチドを合成する従来既知の方法と同様にして製造することができ、例えば固相合成法、液相合成法などによって合成することができ、そのうちでも固相合成法が操作が簡便であるなどの点から好ましく用いられる。何ら限定されるものではないが、ペプチドの固相合成法に関しては、例えば、日本生化学学会編「続生化学実験講座2 タンパク質の化学(下)」 第641〜694頁(昭和62年5月20日;株式会社東京化学同人発行)などに記載されている。
【0035】
限定されるものではないが、固相合成法による本発明のペプチドの製造は、例えば、反応溶媒に不溶性なスチレン−ジビニルベンゼン共重合体などの樹脂に目的とするペプチドのカルボキシル末端に対応するアミノ酸をそれが有するα−カルボキシル基を介して結合させ、次いで該アミノ酸に目的とするペプチドのアミノ末端の方向に向かって、対応するアミノ酸またはペプチド断片を該アミノ酸またはペプチド断片が有するα−カルボキシル基以外のα−アミノ基などの官能基を保護したうえで縮合させて結合させる操作と、該結合したアミノ酸またはペプチド断片におけるα−アミノ酸などのペプチド結合を形成するアミノ基が有する保護基を除去する操作とを順次繰り返すことによってペプチド鎖を伸長させ、目的とするペプチドに対応するペプチド鎖を形成し、次いで該ペプチド鎖を樹脂から脱離させ、かつ保護されている官能基から保護基を除去することにより、目的とするペプチドを得、それを精製することにより行われる。
その際に、樹脂からのペプチド鎖の脱離および保護基の除去は、トリフルオロ酢酸を用いて同時に行うのが副反応を抑制できる点から好ましい。また、得られたペプチドの精製は、例えば、逆相液体クロマトグラフィーによって好ましく行われる。
【0036】
本発明の新規なペプチドおよびその塩は、高い生理活性、特に強い細胞増殖促進作用、細胞接着促進作用を有し且つ低毒性であることが、生理活性試験および毒性試験によって確認されている。
【0037】
【実施例】
以下に実施例によって本発明について具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されるものではない。
【0038】
《実施例1》
[配列番号1で表されるペプチド(Ac−Lys−Ser−Ile−Arg−Val−Ala−Val−Ala−Pro−Gly)の製造]
(1) 4−ヒドロキシメチル−フェノキシ−メチル基を0.89ミリモル/g(樹脂)の割合で有するスチレン/ジビニルベンゼン共重合体(99/1モル比)からなる粒状樹脂(米国アプライド・バイオシステムズ社製「HMPレジン」)0.25ミリモルを用い、目的とするペプチドのカルボキシル末端からアミノ末端に向かって順次対応するアミノ酸を結合させて、配列番号1で表されるペプチドを合成した。
その際に、上記合成反応(結合反応)では、原料アミノ酸として、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−アラニン(Fmocアラニン)、Nα−9−(フルオレニルメトキシカルボニル)−グリシン(Fmocグリシン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−Ng−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル−L−アルギニン(Fmocアルギニン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−プロリン(Fmocプロリン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−バリン(Fmocバリン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−イソロイシン(Fmocイソロイシン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−Nε−(t−ブトキシカルボニル)−L−リジン(Fmocリジン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−(t−ブチル)−L−セリン(Fmocセリン)を、それぞれ1ミリモル用いた。
【0039】
(2) 上記(1)で得られたペプチド−樹脂に、DMF中で無水酢酸0.96Mを、トリエチルアミン32.6mM 下で3時間反応させ、アセチル化を行った。
(3) 上記(2)で得られたペプチド−樹脂に、5%の水、5%のチオアニソール、7.5%のフェノール、2.5%のエタンジチオールを含むトリフルオロ酢酸10mlを添加して6時間処理して、ペプチドの保護基の脱離と、固相(樹脂)からのペプチド脱離を行った。それによって生成した溶液をジエチルエーテルに加えてペプチドを沈殿させ、生成した沈殿をジエチルエーテルで数回洗浄して、粗生成物(粗製ペプチド)を得た。
(4) 上記(3)で得られた粗生成物を、分取用高速液体クロマトグラフィー(カラム:デルタパックC18 47×300mm プレップパック1000加圧モジュール付)(ミリポア・ウォーターズ社製)で精製し、それにより得られた精製ペプチドを、分析用高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製「LC6A」、カラム:東ソー株式会社製「TSKgel ODS−80TM CTR、移動相:トリフルオロ酢酸を0.05容量%含有するアセトニトリルと水の混合溶媒)に付し、アセトニトリル濃度を30分間で5容量%から50容量%に徐々に変化させたところ、14.4分の位置に単一のピークが示された。FAB法マススペクトルにより求めた精製ペプチドの分子量は1039であり(分子量の理論値=1039.18)、配列番号1で表されるペプチドであることが確認された。
【0040】
《実施例2〜7》
[配列番号2〜配列番号7で表されるペプチドの製造]
実施例1と同様にして合成反応(結合反応)を行って、配列番号2で表されるペプチド、配列番号3で表されるペプチド、配列番号4で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチド、配列番号6で表されるペプチドおよび配列番号7で表されるペプチドをそれぞれ合成した。
それにより得られた配列番号3、5および7のペプチドについて、実施例1と同様にしてアセチル化および保護基の脱離と固相(樹脂)からの脱離を行って粗生成物(粗製ペプチド)を得て、それを精製した。
また、配列番号2、4および6のペプチドは、アセチル化を行わず、保護基の脱離と固相(樹脂)からの脱離を行って粗生成物(粗製ペプチド)を得て、それを精製した。
それぞれの精製ペプチドについて、実施例1と同様の分析用高速液体クロマトグラフィーを行ったときの溶出時間、およびFAB法マススペクトル測定により求めた分子量は、下記の表1に示すとおりであった。
なお、その際に、実施例2〜3(配列番号2〜配列番号3で表されるペプチドの合成)および実施例5〜7(配列番号5〜配列番号7で表されるペプチドの合成)では、原料アミノ酸として、実施例1で使用した原料アミノ酸のうちから各々のペプチドの合成に必要なアミノ酸を選んで用いた。
また、実施例4(配列番号4で表されるペプチドの合成)では、実施例1で使用した原料アミノ酸のうちから必要なアミノ酸を選んで用いると共に、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−(t−ブチル)−L−トレオニン(Fmocトレオニン)を更に使用した。
【0041】
《参考例1〜7》
[配列番号8〜配列番号14で表されるペプチドの製造]
実施例1と同様にして合成反応(結合反応)を行って、配列番号8で表されるペプチド、配列番号9で表されるペプチド、配列番号10で表されるペプチド、配列番号11で表されるペプチド、配列番号12で表されるペプチド、配列番号13で表されるペプチドおよび配列番号14で表されるペプチドをそれぞれ合成した。
それにより得られた配列番号11および14のペプチドについて、実施例1と同様にしてアセチル化および保護基の脱離と固相からの脱離を行って粗生成物(粗製ペプチド)を得て、それを精製した。
また、配列番号8、9、10、12および13のペプチドは、セチル化を行わず、保護基の脱離と固相(樹脂)からの脱離を行って粗生成物(粗製ペプチド)を得て、それを精製した。
それぞれの精製ペプチドについて、実施例1と同様の分析用高速液体クロマトグラフィーを行ったときの溶出時間、およびFAB法マススペクトル測定により求めた分子量は、下記の表1に示すとおりであった。
なお、その際に、参考例3〜4(配列番号10〜配列番号11で表されるペプチドの合成)および参考例6〜7(配列番号13〜配列番号14で表されるペプチドの合成)では、原料アミノ酸として、実施例1で使用した原料アミノ酸のうちから各々のペプチドの合成に必要なアミノ酸を選んで用いた。
【0042】
また、上記において、参考例1(配列番号8で表されるペプチドの合成)では、実施例1で使用した原料アミノ酸のうちから必要なアミノ酸を選んで用いると共に、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−(t−ブチル)−L−チロシン(Fmocチロシン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−β−(t−ブチルオキシ)−L−アスパラギン酸(Fmocアスパラギン酸)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−γ−(t−ブチルオキシ)−L−グルタミン酸(Fmocグルタミン酸)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−S−トリチル−L−システイン(Fmocシステイン)、およびNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−フェニルアラニン(Fmocフェニルアラニン)を更に使用した。
【0043】
また、上記において、参考例2(配列番号9で表されるペプチドの合成)では、実施例1で使用した原料アミノ酸のうちから必要なアミノ酸を選んで用いると共に、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−S−トリチル−L−システイン(Fmocシステイン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−ロイシン(Fmocロイシン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−アスパラギン(Fmocアスパラギン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−メチオニン(Fmocメチオニン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−N1M−トリチル−L−ヒスチジン(Fmocヒスチジン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−γ−(t−ブチルオキシ)−L−グルタミン酸(Fmocグルタミン酸)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−β−(t−ブチルオキシ)−L−アスパラギン酸(Fmocアスパラギン酸)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−(t−ブチル)−L−チロシン(Fmocチロシン)、およびNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−O−(t−ブチル)−L−トレオニン(Fmocトレオニン)を更に使用した。
【0044】
また、上記において、参考例5(配列番号12で表されるペプチドの合成)では、実施例1で使用した原料アミノ酸のうちから必要なアミノ酸を選んで用いると共に、米国アプライド・バイオシステムズ社製のNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−アスパラギン(Fmocアスパラギン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−S−トリチル−L−システイン(Fmocシステイン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−グルタミン(Fmocグルタミン)、Nα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−L−ロイシン(Fmocロイシン)、およびNα−(フルオレニルメトキシカルボニル)−γ−(t−ブチルオキシ)−L−グルタミン酸(Fmocグルタミン酸)を更に使用した。
【0045】
【表1】
Figure 0003862361
【0046】
《試験例1》
(1) 実施例1で得られた配列番号1で表されるペプチド、実施例4で得られた配列番号4で表されるペプチド、実施例5で得られた配列番号5で表されるペプチド、および配列[Gly−Arg−Gly−Asp−Ser]で表されるペプチド(株式会社ペプチド研究所製)の1mg/ml水溶液50μlを、96穴(96wells)プレートに分注後、乾燥してそれぞれの穴に各々のペプチドを固定化した。
(2) 上記の(1)とは別に、実施例2で得られた配列番号2で表されるペプチドおよび実施例3で得られた配列番号3で表されるペプチドの0.5mg/ml 50%アセトニトリル水溶液100μlを、96穴(96wells)プレートに分注後、乾燥してそれぞれの穴に各々のペプチドを固定化した。
(3) 次いで、上記(1)および(2)で各々のペプチドを固定化した各穴(well)に、NRK−49細胞(正常ラット腎由来線維芽細胞)を2.5×103個/wellの割合で投入し、5%CO2存在下に37℃で4日間培養し、そのときの細胞の増殖状態を、DNA量(LSQM Assay)により測定して、そのときの蛍光強度を求めたところ、下記の表2に示すとおりであった。
また、対照として、ペプチドを投入しない穴(well)にも、上記と同様にしてNRK−49細胞を2.5×103個/wellの割合で投入し、5%CO2存在下に37℃で4日間培養し、そのときの細胞の増殖状態を同様にして調べたところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0047】
【表2】
Figure 0003862361
【0048】
上記の表2の結果から明らかなように、配列番号1〜配列番号5で表されるペプチドのいずれもが、細胞増殖刺激活性を有していた。従来公知の配列[Gly−Arg−Gly−Asp−Ser]は有意な細胞増殖刺激活性を示さなかった。
【0049】
《実施例8〜9、参考例8〜9および比較例1》
(1)アルギン酸共有結合架橋ゲルの製造:
(i) 2.3g(20mmol)のN−ヒドロキシコハク酸イミド(HOSu)(株式会社ペプチド研究所製)を酢酸エチル150mlに溶解し、撹拌しながら10mlの酢酸エチルに溶解した0.6g(10mmol)のエチレンジアミン(EDA)(和光純薬株式会社製)を室温下に滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌を続けた。析出した結晶を濾取し、減圧下に乾燥してエチレンジアミン2N−ヒドロキシコハク酸イミド塩(EDA・2HOSu)2.9g(収率約100%)を得た。
(ii) アルギン酸ナトリウム(和光純薬株式会社製;粘度500〜600cp)の1重量%水溶液550ml(カルボキシル基:275mmol)に、2.42g(8.5mmol)の上記(i)で得られたEDA・2HOSuと、17.6g(92mmol)の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)(株式会社ペプチド研究所製)を溶解して、15cm×25cmのテフロン(登録商標)被覆アルミ製トレイ4枚に流延し、室温で静置した。約51時間後に、含水ゲルが得られた。得られた含水ゲルを、細胞間質液と同じ濃度(Caイオン5meq、Naイオン143meq)になるように、CaCl2とNaClを溶解した水溶液(ECF)で十分に洗浄した後、純水で十分に洗浄し、次いで凍結乾燥してスポンジ状のアルギン酸共有結合架橋ゲル約5gを得た。
【0050】
(2)アルギン酸共有結合架橋ゲル(基材)へのペプチドの固定(結合):
(i) 上記(1)で得られたアルギン酸共有結合架橋ゲルの0.1gをジメチルホルムアミドで洗浄してゲル中の水分をジメチルホルムアミドで置換した。次いで、1.2mgのN−ヒドロキシコハク酸イミドと1.9mgの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)を加えて、一晩振盪した。次いで、メタノールとジメチルホルムアミドで数回洗浄した後、実施例1で得られた配列番号1で表されるペプチド10μmolとジイソプロピルエチルアミン1.7μlを加えて、さらに一晩振盪し、ゲルにペプチドを結合させた。これを、メタノールとエタノールで数回洗浄した後、真空乾燥して、γ線滅菌(25kGy)を施して創傷被覆材を製造した(実施例8)。
(ii) ペプチドとして、実施例5で得られた配列番号5で表されるペプチドを用いた以外は、上記(i)と全く同様にして、創傷被覆材を製造した(実施例9)。
(iii) ペプチドとして、参考例4で得られた配列番号11で表されるペプチドを用いるか(参考例8)、または参考例7で得られた配列番号14で表されるペプチドを用いた(参考例9)以外は、上記(i)と全く同様にして、創傷被覆材を製造した(参考例8と9)。
(iv) ペプチドの代わりに、グリシンエチルエステル塩酸塩(株式会社ペプチド研究所製)の10μmolを用いた以外は、上記(i)と全く同様にして、創傷被覆材を製造した(比較例1)。
【0051】
《試験例2》
実施例8〜9、参考例8〜9および比較例1で得られた創傷被覆材から1cm×1cmの試験片を採取し、その各々を24穴(24wells)プレートの各wellに入れ、正常ヒト皮膚線維芽細胞を103個/wellの割合で投入し、各wellに10%FCS Eagle’s MEM培地1mlを加えて、5%CO2存在下に37℃で14日間培養した。次いで、ゲル上の細胞をメタノールで固定化した後、ギムザ染色を行い、ゲルの寸法(1cm×1cm=1cm2)に対する、ゲル上の染色された面積(%)を求めたところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0052】
【表3】
Figure 0003862361
【0053】
上記の表3の結果から、配列番号1で表されるペプチドまたは配列番号5で表されるペプチドを固定化した実施例8〜9の本発明の創傷被覆材、および配列番号11で表されるペプチドまたは配列番号14で表されるペプチドを固定化した参考例8〜9の創傷被覆材では、グリシンエチルエステル塩酸塩を固定化した比較例1の創傷被覆材に比べて、染色面積が大きく、正常ヒト皮膚線維芽細胞の増殖が促進されていること、そのうちでも、本発明の新規なペプチドである配列番号1で表されるペプチドおよび配列番号5で表されるペプチドを固定化してなる実施例8および実施例9の創傷被覆材は、染色面積が一層大きく、極めて高い、正常ヒト皮膚線維芽細胞の増殖促進活性を有していることがわかる。
【0054】
【発明の効果】
一般式(I)で表されるペプチドおよびそれらの塩の少なくとも1種を基材に固定化してなる本発明の医療用手当材は、高い生理活性、特に強い細胞増殖促進作用および細胞接着作用を有し、創傷の治癒促進などの生体組織の修復するための創傷被覆材、生体組織の接着促進材料、骨補強材、軟骨再生材、神経再生材などとして有効に使用することができ、難治性潰瘍などの難治性創傷の治療に有用である。
一般式(I)で表されるペプチド、特に配列番号1〜配列番号7で表される本発明の新規なペプチドおよび/またはその塩は、特に高い生理活性(細胞増殖促進作用や細胞接着促進作用など)を有しており、基材に固定化して、または固定化せずに遊離の状態で、創傷の治癒、生体組織接着促進、骨補強、軟骨再生促進、神経再生作用に極めて有効に使用することができる。
【0055】
【配列表】
【0056】
Figure 0003862361
【0057】
Figure 0003862361
【0058】
Figure 0003862361
【0059】
Figure 0003862361
【0060】
Figure 0003862361
【0061】
Figure 0003862361
【0062】
Figure 0003862361
【0063】
Figure 0003862361
【0064】
Figure 0003862361
【0065】
Figure 0003862361
【0066】
Figure 0003862361
【0067】
Figure 0003862361
【0068】
Figure 0003862361
【0069】
Figure 0003862361
【0070】
Figure 0003862361
【0071】
Figure 0003862361
【0072】
Figure 0003862361
【0073】
Figure 0003862361

Claims (6)

  1. 下記の一般式(I);
    Figure 0003862361
    [式中、Xは水素、CH3−C(O)−およびCH3−C(O)−Lys−からなる群から選ばれる基、AはSerまたはThrからなるアミノ酸残基、DはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、EはLysまたはArgからなるアミノ酸残基、GはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、JはGlyまたはAlaからなるアミノ酸残基、LはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、MはGlyまたはAlaからなるアミノ酸残基、QはGly、AlaおよびGly−Lys−Lys−Glyからなる群から選ばれるアミノ酸残基またはペプチド残基、並びにYは−OHまたは−NH2を示す。]
    で表されるペプチドおよびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を基材に固定化してあることを特徴とする医療用手当材。
  2. 配列番号1で表されるペプチド、配列番号2で表されるペプチド、配列番号3で表されるペプチド、配列番号4で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチド、配列番号6で表されるペプチド、配列番号7で表されるペプチドおよびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を基材に固定化してあることを特徴とする請求項1の医療用手当材。
  3. 下記の一般式(I);
    Figure 0003862361
    [式中、Xは水素、CH3−C(O)−およびCH3−C(O)−Lys−からなる群から選ばれる基、AはSerまたはThrからなるアミノ酸残基、DはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、EはLysまたはArgからなるアミノ酸残基、GはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、JはGlyまたはAlaからなるアミノ酸残基、LはIle、ValおよびLeuからなる群から選ばれるアミノ酸残基、MはGlyまたはAlaからなるアミノ酸残基、QはGly、AlaおよびGly−Lys−Lys−Glyからなる群から選ばれるアミノ酸残基またはペプチド残基、並びにYは−OHまたは−NH2を示す。]
    で表されるペプチドまたはその塩。
  4. 配列番号1で表されるペプチド、配列番号2で表されるペプチド、配列番号3で表されるペプチド、配列番号4で表されるペプチド、配列番号5で表されるペプチド、配列番号6で表されるペプチド、配列番号7で表されるペプチド、またはその塩。
  5. 請求項3または4のペプチドおよび/またはその塩を有効成分とする、細胞増殖促進および/または細胞接着促進用の剤。
  6. 生体組織の治癒、接着、補強および/または再生用の剤である請求項5の剤。
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