JP4410867B2 - 成形パネルの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、意匠性を有する成形パネルの製造方法に係り、さらに詳しくは廃棄された樹脂の粉砕物を含む層を備える多層構造の形成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環境保護を目的とした意匠材および構造材などに用いられている多種多様な樹脂に関し、再利用が困難な使用済みの樹脂成型品を廃棄または燃焼処分に供する際の有害物質の流出や有害ガスの発生の可能性を無くするため、これら樹脂の有効活用または再利用に供する用途および技術が求められている。
【0003】
使用済みの樹脂を回収して再利用するための分別方法は、冷蔵庫やエアコンなどでは圧縮機や熱交換機などの主要部品を外した断熱箱体や筺体部分をクラッシャーによって数mm程度の大きさに粉砕後、磁力による鉄を中心とした磁性材料を回収し、その後、振動による比重差や渦電流による吸着を応用した分別方法によって金属と樹脂との分別を行う。さらに、非鉄金属類は比重の差を利用してアルミ類と銅類とを分別、さらに樹脂類についても風力によって発泡体の分別後に、場合によっては樹脂類をさらに水などを用いて、浮沈による選別を行えばオレフィン類の回収を行うことも可能である。
【0004】
分別された樹 脂を再利用する方法は、特開平9−194716号公報には冷蔵庫の内箱や内装材に用いられている熱可塑性樹脂と断熱材である発泡ウレタンとを特定の範囲を有する比率で溶融混合したものが記載され、さらに、特開平10−151629号公報には複数種のプラスチックスを高速回転する羽根を備えた混合機で撹拌し、その摩擦熱で溶融混合物を得る方法が記載されている。これら混合物は何れもこのままの状態で他の成型品への応用が成されることを目的に得られたものである。
【0005】
従って、このような回収システムから得られた樹脂を用いて再度の利用を図る場合には、上記の樹脂混合物に任意の顔料を添加して着色した後、適当な成形方法によって任意の形状に賦形されて再度の利用に供することとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以上の如き再生樹脂を用いることは、それが本来に保有する色を隠蔽して、更なる所望の発色を得るうえで、多量の顔料を添加することが不可欠であるばかりか、使用済みの樹脂の変質に伴う著しい変色が加味されて退色を促進させ、初期の意匠性を損ないやすいという問題を負うことになる。
【0007】
また、前記再生樹脂は、不特定で複数の樹脂による混合物であるから、常に安定した特性を得ることが困難であるため、例えば、真空成形法を用いて成型品を得る場合、その樹脂が任意の高温雰囲気下で示す伸びを一定の範囲で制御することは極めて困難であるから、常に温度や延伸速度を調整するなどをして、生産の安定性を確保することに煩雑な作業と非常な困難を伴うことになる。
【0008】
さらに、使用済みの不特定な複数の樹脂を混合する場合には相溶性に劣る組み合わせもあることから、得られた成型品の意匠面には不均一な縞模様や、場合によってはボイドなどの空孔の発生によって凹凸を生じることさえある。
【0009】
一方、このような材料から得た成型品を用いた各種製品が使用済みの廃棄品として回収された後に、再度の処理を行う場合には、その粉砕後の分別によって、更なる種類の樹脂混合物となりうることから、その再利用に一層の困難を来すこととなる。
【0010】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、廃棄された家電品などに用いられていた樹脂成型品などの粉砕品を有効に活用するうえで、意匠性を損なうこと無しに成型品に再生材として応用する手段と製品の態様、さらに前記再生材を用いた成型品が再度の使用を完了して廃棄された場合においても有効に活用し易い再生材として分別する方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の発明に係る成形パネルの製造方法は、意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、温度が前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低く第2の層を構成する樹脂の融点よりも高くなるように加熱して前記第2の層を前記第1の層に押し付けながら構成する樹脂混合物を積層して積層シートを得る工程を備えたものである。
【0012】
本発明の第2の発明に係る成形パネルの製造方法は、温度が前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低く第2の層を構成する樹脂の融点よりも高くなるように加熱して前記第2の層を前記第1の層に押し付けながら前記積層シートを熱成形する工程を備えたものである。
【0015】
本発明の第の発明に係る成形パネルの製造方法は、熱成形をする工程において、真空および圧空を用いて金型に押し付けて第1の層を意匠面に位置して形成するものである。
【0016】
本発明の第4の発明に係る成形パネルの製造方法は、意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂が繊維状物質を非直線および無秩序な配向状態に保持されて成る不織布状のシートを成形する工程と、温度が前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低く第2の層を構成する樹脂の融点よりも高くなるように加熱して前記第1の層と前記第2の層との間に前記不織布状のシートを挟み込んだ状態で前記第2の層を前記第1の層に押し付けながら構成する樹脂混合物を積層して積層シートを得る工程と、を備えたものである。
本発明の第の発明に係る成形パネルの製造方法は、意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂が繊維状物質を非直線および無秩序な配向状態に保持されて成る不織布状のシートを成形する工程と、前記第1の層の上に前記不織布状のシートを載置し、さらにその上に前記第2の層を構成する樹脂混合物を所定の厚さに撒布して成形前駆体を得る工程と、温度が前記第1の層を構成する樹脂の熱変形温度近傍にまで加温して前記第2の層を前記不織布状のシートを介して前記第1の層に押し付けながら前記成形前駆体を熱成形する工程と、を備えたものである。
【0017】
本発明の第の発明に係る成形パネルの製造方法は、意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、前記第1の層と繊維状物質を非直線および無秩序な配向状態で保持して成る不織布状のシートとを積層して積層シートを得る工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、前記積層シートの前記不織布状のシート側に前記第2の層を構成する樹脂混合物を所定の厚さに撒布して成形前駆体を得る工程と、温度が前記第1の層を構成する樹脂の熱変形温度近傍にまで加温して前記第2の層を前記不織布状のシートを介して前記第1の層に押し付けながら前記成形前駆体を熱成形する工程と、を備えたものである。
本発明の第7の発明に係る成形パネルの製造方法は、前記第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程において、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂の内、混合時に発生する静電気により樹脂粉砕物の表面に吸着しない結果得られる余剰分を、前記成形前駆体を得る工程において前記不織布状のシートに撒布するものである。
【0018】
本発明の第8の発明に係る成形パネルの製造方法は、成形前駆体を得る工程において、樹脂混合物を撒布した後に、さらに前記不織布の余剰分を折り曲げて成る不織布状のシートを前記樹脂混合物の上に載置し、前記熱成形する工程において、前記折り曲げて成る不織布状のシートを前記第2の層及び、前記不織布状のシートを介して前記第1の層に押し付けるものである。
【0019】
本発明の第9の発明に係る成形パネルの製造方法は、第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程において、樹脂の粉砕物中にオレフィン系樹脂を含む場合、第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点であることに加え、前記オレフィン樹脂の融点よりも高い融点の樹脂と混合するものである。
【0020】
本発明の第10の発明に係る成形パネルの解体方法は、本発明の第2の発明又は第3の発明による成形パネルを、第1の層を成す熱可塑性樹脂の軟化温度よりも高い温度で加熱した後、曲折させることによって、樹脂の分別を行うものである。
【0021】
本発明の第11の発明に係る成形パネルの解体方法は、本発明の第3の発明による成形パネルを、第1の層または第2の層が軟化する温度よりも高い温度に加熱後、第1の層と第2の層の間に設けた不織布状のシートを含めて剥離することによって、樹脂の分別を行うものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
本実施の形態で述べる態様は、本発明の請求項1、4、5、9に係るものであり、以下、図示の実施形態に基づいて説明する。図1は成形パネルを下方から見た場合の斜視図、図2は図1の成型品におけるA−Aで切断して内部構造を示す断面の概念図、図3は成形パネルの製造方法を示す製造工程図である。
【0023】
本発明の成形パネルの構造について説明すると、図1および図2に示す態様は、本発明に係る成形パネルであって、天井埋込型の空気調和機に用いる空気吹き出し口を備えた成形パネル1であり、幅および長さが500〜1200mmにも達する大形の成型品である。ここで、図1は成形パネル1であり、A面2は室内側に露出して意匠性の確保を必要とする反面、裏側であるB面3は天井側に位置するので、ほとんど意匠に供することがない。従って、B面3の表面には凹凸や色むらを有していても、寸法や形状を保持して必要な強度の確保に寄与できればよいことになる。
【0024】
この成型品を図1の成型品におけるA−Aで切断した断面構造を示した図2に基づき、その内部構造の詳細を以下に述べる。まず、第2の層4は廃棄された各種成型品から回収した樹脂の粉砕物と、それを固着するために接着に供する融点の低い熱可塑性樹脂の混合物を含んで成る樹脂混合物であり、必要に応じてカーボンブラックなどで着色された層である。次に、均一で任意に着色された平滑な面を有して意匠性を確保する第1の層5には、未使用の樹脂を用い、廃棄された成型品から回収した樹脂を用いた前記第2の層4を隠蔽する肉厚を有して成る。
つまり、第2の層4が有する色によって色の濃さと肉厚を決定すれば良く、従って、1mm以下の薄い層で形成されて成る。
【0025】
次に、図3に示す製造工程図と図4に示す成形装置の概念図を基づいて成形パネルの製造方法を説明する。まず、第2の層4に用いる廃棄された各種成型品などを粉砕した不特定な種類の樹脂が混合した粉砕物7に、粉砕物7に対して20〜100重量%のEVA樹脂8を添加し、加熱下で撹拌混合することによって、シート状に成形が可能な組成物を得る(S−1)。このとき、例えば、押出機6aを用いた撹拌混合時の温度は、EVA樹脂が溶融する110〜170℃が好ましく、130〜150℃が特に好ましい。もし、粉砕物7中に、この温度条件下で溶融しない樹脂が含まれていても、押出機6a内での混合、混練過程で粒子同志が擦れ合って角が無くなり、球に近い形状の島構造物として残存するうえ、EVA樹脂がそれら粒子を包み込んで接着、一体化した組成物を得ることが出来るので、後の意匠性を備える第1の層5との積層および積層されたシートを熱成形する場合に、意匠性を損なうような意匠面への損傷を与えることを抑制できる。
【0026】
次に、上述した粉砕物7と低融点で接着機能を備えた樹脂との混合物を用いて、前述した第1の層5と積層に供する第2の層4をシート状に形成した(S−2)。ここで用いる廃棄された樹脂は2mm以下であり、好ましくは0.5mm以下に粉砕および選別したものを用い、接着に供する低融点の樹脂は第1の層5を形成する着色したABS樹脂よりも低い融点を有する。もし、ここで廃棄された樹脂の粉砕物7が接着に供する樹脂の融点が第1の層5よりも高い場合には、第2の層4が硬くて変形を来し難い凸状部分を保持することになり、これが積層時や積層した状態にあるシートの熱成形時に第1の層5を押し付けると、製品の意匠面に供する第1の層5を変形させ、得られた成型品の意匠性を低下させるので、好ましくない。
【0027】
以上のことから、第2の層4に用いる低い融点の樹脂にはEVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合体)が好適であり、特に酢酸ビニル含有率が5〜7%のものは接着性に優れた可とう性を有する強じんな性質を有するので強固に積層して一体化するとともに、第1の層5に用いるABS樹脂と比較して軟化点が20〜40℃の低い温度であるから、廃棄された樹脂に融点の高い樹脂が含まれていたとしても、熱成形がABS樹脂の熱成形にかかる温度条件を保持すれば、第2の層4が第1の層5を押し付けたとしても硬くて変形を来し難い凸状部分が容易に移動して応力の付加が回避できるので変形の発生が抑制できる。
【0028】
ただし、粉砕物7中に接着に供さないオレフィン系樹脂が混合している場合は、可能な限り排除することが好ましい。もし、オレフィン系樹脂を排除することが出来ずに多量の残存が見られる場合には、EVA樹脂を過剰に投入したり、オレフィン系樹脂が溶融する温度条件近くにまで加温した状態で混合、混練することにより、粉砕物7中にある他の樹脂およびEVA樹脂と一体化できるので、剥離部分が無視できるほどの微小なものにしたり、接着性のある樹脂によって包み込むことによって欠陥部が排除でき、シート形状のうち、特に外観を損なうことのないように調整できる。
なお、オレフィン系樹脂が溶融する温度条件近くにまで加温した状態で混合すると摩擦により、オレフィン樹脂の融点よりも高い温度となる。すなわち、第2の層4は第1の層5を構成する樹脂の融点よりも低い融点であることに加え、オレフィン樹脂の融点よりも高い融点の樹脂とも混合することになる。
【0029】
一方、未使用で任意に着色したABS樹脂である第1の層5をシート状に形成した(S−3)。この時に用いるシート用材料は、通常の成型品が無着色の樹脂重量に対して0.5〜1.5%の顔料を用いて着色に供して成る肉厚が1.4mmのものであるのに対し、当該第1の層5との積層に供する第2の層4が一定ではない着色色むらや異なった色を呈する)を有することから、シートの肉厚をそのままにして顔料の添加量を増すか、場合によっては通常より厚い成型品肉厚である1.8mmにして隠蔽力を増加させて用いる。本実施の形態では、後の工程で廃棄された各種成型品から回収した樹脂の粉砕物を含む樹脂組成物を裏打ちして補強効果が得られることから、肉厚を0.5mmの薄肉化することによって使用樹脂の削減と軽量化を両立させることとし、顔料の濃度を通常よりも多い2.5%の顔料を用いて濃い着色のシート材を備えた。
【0030】
次に、図4に示す押出機6a,6bを用いて各種成型品を粉砕した不特定で複数の樹脂が混合した粉砕物7とEVA樹脂8を混練した混合物から成る第2の層4と未使用で任意に着色したABS樹脂9から成る第1の層5を積層して(S−4)、押出しシート11a,11bを成形する。図5は押出しシート11a,11bを賦型するTダイ10a,10bの斜視図である。ABS樹脂9を押出機6bからシート状に押出した押出しシート11bを第1の冷却ロール12で任意のシート表面温度に調整したものと、組成物7,8の押出しシート11aと一体化することにより、両樹脂材料を積層したシート積層物15を得る。さらに、シート積層物15は加圧ロール13を用いて押圧を付与することによって層間が完全に密着して融着できるとともに、シート積層物15のうち、少なくとも着色したABS樹脂の表面層が表面平滑性に優れる第2の冷却ロール14によって平滑となって優れた意匠性が確保できる。
【0031】
このとき、第2の層4に含まれる溶融に至らない樹脂の粉砕物の粒子が、軟化に近い状態にあって硬度が不足した状態の第1の層5を成すABS樹脂を過度に押し付けることによって、意匠面に紋様を与えることが予測できる。このような場合には、押出機6a,6bを交換してABS樹脂9を押出機6aから出た後の第1の冷却ロール12の温度を下げるなどして硬度を高くするとともに加圧ロール13による押圧を小さくするなどして、第1の層5の積層時の剛性向上と第2の層4の軟化状態の維持および粉砕物粒子が負荷を受けたときに移動するのを阻害しないように調整することが肝要である。また、第1の層5と第2の層4の間にガラス繊維などを備えた不織布を挟み込むことも有効である。
【0032】
このようにして得られたシートの積層物15は、端辺をナイフおよびシャー16などを用いて切除することによって成形パネルの成形に必要な任意の大きさの積層シート17を得る(S−5)。
【0033】
前記工程(S−5)で得られた積層シート17は、真空及び圧空、またはそれらを併用して意匠面である第1の層5を金型に押し付ける熱成形(S−6)によって成型品である成形パネル1を得た(S−7)。熱成形は、図6に示す真空・圧空併用成形装置18を用いることにより、通常の成形機に対し、圧空による遅い引張り速度で積層シート17に予備的な延伸を付与した後に、高速で引張ることによって積層シート17を延伸して賦形するので、厚肉であっても著しい肉厚の差異である偏肉を抑制するとともに、層間の密着が遊離するのを防止して保持するうえで有利となる。
【0034】
この真空・圧空併用成形装置18を用いた具体的な成形方法を図7の製造工程図を用いて以下に述べる。まず、前記積層シート温度を第2層の軟化点をやや上回る温度にまで加熱(S−11)する。このときの温度は140〜170℃であって、第1層に含まれるEVA樹脂が溶融に供するが、決して流れ落ちることのないように酢酸ビニルの含有量や分子量の調整したものを用いることが肝要である。 また、第1層が上面になるように成形機内の金型配置を設定しておくことも有効である。
【0035】
次に、金型19の内に空気(圧空)を送り込んで、加熱により軟化した積層シート17を金型19と反対方向に膨らませて予備延伸をさせた後(S−12)、金型19の下部にある金型内を真空状態に保持するように排気管20より排気を行う(S−13)ようにすれば、金型19の表面に第1の層5を密接させることができる。この成形時において、もしガラス繊維の不織布を備えていれば、その挙動は成形パネル1の形状が深い絞り構造を有さないので、大きな変形を受けることがないうえ、わずかな面方向に及ぼす引張りの歪みには上下の樹脂層、特に第1の層5が軟化した状態であることから、繊維間が滑って大きな反発応力を来すことなく、上下の層に追随して変形し、樹脂と良くなじんで密着を維持した状態の成型品を得ることが出来る。
【0036】
このとき、前の積層シートの成形を行う工程(S−4)にて、加圧ロールを用いた押圧付与が十分であれば、これら一連の工程(S−11、12)にある加熱状態下で層間が剥離することはないが、さらに、該工程(S−13)で上部箱21内に空気(圧空)を給気管22より送り込むことによって、積層シート17に押圧を付加するようにすれば、なお一層、層間の剥離を防止する効果が得られる。
【0037】
さらに、金型19に密着して賦形した積層シート17は、変形を来すことのない温度にまで樹脂温度を冷却する(S−14)ことによって、取出し時にかかる応力によって変形するのを防止するとともに、金型との離型(S−15)時に意匠面である第1の層5が円滑に離脱して成型品表面の艶を確保でき、意匠性に優れた成型品を得ることが出来る。最後に、必要部分だけを残して切断を行うトリミング)(S−16)ことによって、所望する形状の成形パネル1を得ることができる(S−17)。
【0038】
以上の方法によって得られた成形パネル1には、廃棄された各種成型品から回収した樹脂の粉砕物を好適に取込んで有効活用が図れるとともに、第1の層5である未使用のABS樹脂の量を限定して削減使用することが出来るという効果が得られる。
【0039】
また、成形パネル1の成形に供する前に、予め樹脂粉砕物を含んで複合化したシートを備えるので、通常の熱成形をそのまま活用でき、また、前記シートのみを作り溜めできるという長所を有する。
【0040】
実施の形態2.
本実施の形態で述べる態様は、本発明の請求項1、2、3、6、8、9に係るものであり、図8は実施の形態2を示す成形パネルの断面図、図10は成形パネルの製造方法を示す製造工程図、図11は成形方法を示す説明図である。
【0041】
本発明の成形パネルは、実施の形態1と同様な天井埋込型の空気調和機に用いる空気吹き出し口を備えた成形パネルであり、図1の斜視図に示す形状と同様に室内側に露出して意匠性を必要とするA面2と、天井側に位置して凹凸や色むらを有していても寸法や形状を保持して必要な強度の確保に寄与するB面3を備えている。図8は本発明の成形パネル1の断面図であり、任意に着色された平滑面を有して意匠性を確保するA面2側にある第2の層4と、廃棄された各種成型品から回収した樹脂の粉砕物と接着剤との混合物を含むB面3側にある第1の層5、及び第1の層5と第2の層4の間と第2の層のA面と反対側に積層されたガラス繊維の不織布27から成る。また、成形板の機器本体への取り付けやブレードなどの部品の取り付け構造についてもB面3側の層に部分的な肉厚部分24を設けたり、図9に示す如く、両層の境界部に鍔部分25を配した部品23を用いて固定すればよい。
【0042】
以下に、製造工程を図10の成形パネルの製造工程図及び図11の成形方法を示す説明図に基づいて説明する。まず、使用済みの樹脂成型品などを回転刃を備えたクラッシャーなどを用いて粉砕して樹脂粉砕物を得た(S−21)後、前記樹脂粉砕物と半硬化状態の熱硬化性樹脂であって接着剤として機能する半硬化状態のエポキシ樹脂を混合(S−22)する。混合は混合羽根を備えた混合機や回転ドラムなどを用いて行うことが好適である。
【0043】
ここで用いるエポキシ樹脂は、前記混合時に粉末状となって樹脂粉砕物同志が擦れて発生する静電気によって表面に均一に付着する状態が得られる微粉末状態を維持するとともに、意匠性を確保すべきA面2側の層が変形を来すことのない低い融点を有し、さらに短時間の加熱で硬化が進行する高活性なものであることが好ましい。その一例として、本実施の形態で用いた接着剤の組成を表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0004410867
【0045】
以上の原料を用いた接着剤の製造方法を以下に述べると、まず、これらの原料を均一に混合後、例えばポリエチレンテレフタレートやアルミ箔などの耐熱性と柔軟性を有するシート上に薄く散布した後、これを90℃の恒温槽中で10分間の乾燥処理を行ってアセトンの除去と予備反応を進行させる。得られた接着剤である半硬化状態のエポキシ樹脂は非常に脆くて容易に粉砕できる状態にあるから、混合時には微粉末状態を確保できるので、必ずしも事前に粉砕を行う必要が無く、前記シートから剥がしたままの状態で用いることも可能である。
【0046】
次に、未使用で任意に着色したABS樹脂であるA面2側の層となるシート26を、押出し成形などによってシート状に形成(S−23)して得た後、その反意匠側の面に、別途に作成していた表1に示す樹脂を含浸後に乾燥させたガラス繊維不織布27を図11(a)に示す如くの状態で載置する。このガラス不織布27は、表1に示す樹脂液にガラス繊維の不織布を浸漬(S−24)した後、90℃の恒温槽中で10分間の乾燥処理(S−25)を行って得たもので、得られたシートはガラス繊維に非常に脆い半硬化状態のエポキシ樹脂が付着して成るので、脆くて硬い状態を呈する。
【0047】
さらに、(S−23)で得たシート上にエポキシ樹脂を含浸したガラス不織布27を載置し、さらにその上に樹脂粉砕物と半硬化状態エポキシ樹脂との混合物28を約5mmの厚さに散布することによって積層(S−26)した後、余剰の前記不織布27)の端部を図11(b)に示す如く折り曲げて取り巻いた状態の成形前駆体29を形成する(S−27)。この時、混合時に発生する静電気により樹脂粉砕物の表面に吸着しない余剰の半硬化状態エポキシ樹脂を生じるが、これを前記散布に供しない方が本成型品が再度の廃棄物として処理されるときの解体性を損なうことがないので好ましい。
【0048】
この成形前駆体29は、図11(c)に示す如く状態で175℃に加温した圧縮成形用の下金型30の上面に外周を固定31した状態で載置してA面2側の層となるABS樹脂のシート26が熱変形温度近傍にまで加温後、図11(d)に示すように、上金型32を下降させて1〜10kg/cm2、好ましくは2〜5kg/cm2の圧力を付与して、圧縮成形(S−28)を行った。15分間の保持によって、接着剤であるエポキシ樹脂が硬化して樹脂粉砕物と接着剤の混合物28が固化する。その後、金型温度を、好ましくはエポキシ樹脂の熱変形温度以下である135℃以下に、さらに好ましくはA面2側の層となるABS樹脂の熱変形温度である95℃以下にまで低下させた後に、成型品を取り出した(S−29)。
【0049】
また、本実施の形態で得られた成型品をエポキシ樹脂の熱変形温度以下の金型温度で取り出したから、金型からの取り出しに係る応力を受けたとしても、成型品が変形を来し難くなるとともに、ABS樹脂の熱変形温度以下の金型温度で取り出した場合には意匠面に優れた光沢を得ることができた。
【0050】
以上のように、半硬化状態のエポキシ樹脂を接着剤として、本来は廃棄物である樹脂の粉砕物を意匠面を形成する成型品の裏打ちに用いて成型品を形成したので、簡易な圧縮成形によって意匠性と強度、剛性に優れる成型品が得られた。
【0051】
さらに、ガラス繊維を表面層に配したことによって、空気調和機などの成形パネル成形品で必要とされる難燃性が、難燃剤を用いなくとも付与できた。 しかも、表面層に配したこのガラス繊維を無方向に配向させた不織布であるから、圧縮などによる変形挙動を有しても、繊維間が容易にずれを生じて変形に追随するので、破れるなどの欠陥を生じることがない。
【0052】
なお、ここでは接着剤として半硬化状態のエポキシ樹脂を用いたが、意匠面であるA面2側の層を形成する使用樹脂に対して、溶解やクレイジングなどの不具合を侵すことのない組成の接着剤であれば、液状のものを用いても良く、同様の効果が得ることができる。
【0053】
実施の形態3.
本実施の形態は、本発明の請求項1、2、3、7、8、9に係り、実施の形態2の別な態様を示すものでありものであり、本発明の成形パネルの構造は、図8に示す断面構造を備える成型品であり、任意に着色された平滑面を有して意匠性を確保する意匠面、および樹脂粉砕物と接着剤との混合物を含む反意匠面である補強を目的とした裏打ち材から成り、接着剤が実施の形態2と異なり、意匠面に用いた樹脂よりも低い融点を備える熱可塑性樹脂を用いることにある。
【0054】
以下に、図12の製造工程図及び実施の形態2の図11の成形方法の説明図に基づいて説明する。まず、使用済みの樹脂成型品をクラッシャーなどを用いて粉砕して得た樹脂粉砕物などである樹脂の粒子を得た(S−31)後、意匠面に用いた樹脂より低い融点を備えて接着剤として機能する樹脂の粉末を、混合羽根を備えた混合機や回転ドラムなどを用いて混合する(S−32)。
【0055】
ここで用いる接着剤として機能する低融点樹脂には、EVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合体)が好適であり、特に酢酸ビニル含有率が5〜7%のものは接着性に優れた可とう性を有する強じんな性質を有するので強固に積層して一体化するとともに、意匠面である第1の層5に用いるABS樹脂よりも十分に低い融点と溶融粘度を備えるので、廃棄された複数種の樹脂が混合した粉砕物中に、溶融に至らない硬い粒子が含まれていても、第2の層4を第1の層5を押し付けた際に、硬くて変形を来し難い凸状部分が容易に移動して応力の付加が回避できるので意匠面の変形発生が抑制できる。
【0056】
次に、任意に着色したABS樹脂であるA面2側の層となるシート26を押出し成形などによってシート状に形成(S−33)して得た後、その反意匠側の面に、ガラス繊維の不織布27を図11(a)に示す如くの状態で載置して積層する(S−34)。さらに、載置したガラス不織布27上には、樹脂粉砕物とEVA樹脂粉末の混合物28を約5mmの厚さに散布(S−35)した。この時、混合時に発生する静電気により樹脂粉砕物の表面に吸着しない余剰のEVA樹脂粉末を生じるが、これも前記散布、特にガラス不織布27上に直接散布することによって、特にガラス不織布27に含浸して本成型品における補強効果の向上に寄与できるので好ましい。この後、余剰のガラス不織布27を図9−bの如く折り曲げることによって成形の前駆体29を得た(S−36)。
【0057】
この成形前駆体29を図11(c)に示す如く、50℃に加温した圧縮成形用の下金型30の上面に外周固定部31を固定した状態で載置した上に160℃に加温した上金型32を0.1kg/cm2以下の軽く当接した状態で保持し、意匠面に位置する第1の層5となるABS樹脂のシート26を熱変形温度の近傍にまで加温する(S−37)ことによって変形を来し始める状態を得た後、図11(d)に示すように1〜10kg/cm2、好ましくは2〜5kg/cm2の圧力を付与して上金型32を下降させて圧縮成形(S38)を行った。その後、金型温度を、好ましくは第1の層5となるABS樹脂の熱変形温度である95℃以下、さらに好ましくは第2の層4が十分に固化する50℃近傍にまで低下させた後に、成型品を取り出した(S−38)。
【0058】
また、本実施の形態で得られた成型品を、EVA樹脂の熱変形温度以下の金型温度で取り出したから、金型からの取り出しに係る応力によって成型品に変形を来し難くなり、さらに、ABS樹脂の熱変形温度よりも十分に低い金型温度であるから意匠面に優れた光沢を得ることができた。
【0059】
以上のように、接着剤であるEVA樹脂と各種樹脂粉砕物の混合物を意匠面を形成する樹脂シート上に散布した状態で熱成形を行ったので、ガラス繊維にEVA樹脂が含浸するとともにABS樹脂面との接着に供する態様を確保でき、簡易に成形を得ることができた。さらに、前記混合物を裏打ちに用いた成型品を形成したので、光沢に優れるなどの意匠性と強度、剛性などに優れた機械的特性を備えた成型品が得られた。
【0060】
さらに、ガラス繊維を表面層上に配して保持したので、空気調和機などの成形パネル成形品で必要とされる難燃性が、難燃剤を用いなくとも付与できた。
【0061】
なお、ここでは接着剤としてEVA樹脂を用いたが、図8の意匠面であるA面2側の層を形成する材料が鋼板などの耐熱性に優れるものであれば、一層の高い融点を備える接着剤を用いても良く、同様の効果を得ることができる。
【0062】
実施の形態4.
本実施の形態は本発明の請求項10に係るものであり、実施の形態2にて得られた意匠面である第1の層の樹脂材料よりも高い軟化点を有する接着剤を用いた裏打ち材を備える成型品が使用を完了して廃棄物として供される場合の分別を目的とした解体方法であり、図13に示す第1の層5と第2の層4を剥離する方法を示す工程図に基づいて、以下に説明する。
【0063】
ここで解体に供する実施の形態2にて得た成型品は、廃棄された樹脂成型品などの樹脂粉砕物に接着剤として半硬化状態のエポキシ樹脂を混合したものを第2の層4として成型品の裏打ちに用いたものであって、このエポキシ樹脂が成形時の加熱によって完全硬化に至るので、第1の層を成すABS樹脂よりも高い軟化点を備えるとともに、意匠性と強度、剛性が特に優れた成形品である。
【0064】
解体は、まず、実施の形態2で得た成形パネルの意匠面を形成するABS樹脂である第1の層5の軟化温度をわずかに超える110〜140℃まで加熱する(S−41)。この状態では、大半の廃棄成型品の樹脂粉砕物が軟化した状態を呈しているのに反し、エポキシ樹脂は剛直な状態を保持したままにある。
【0065】
次いで、加熱によって意匠面が軟化した成形パネルを、図14の概念図に示すように、ローラ33などの円筒状の回転工具を用いて加圧するようにして移動させる(S−42)。このとき、裏打ち材である第2の層4が高い剛性を維持した接着剤であるエポキシ樹脂によって保持されているので、両層の間の曲率が異なるように作用して界面に剪断力が発生し、その界面で破壊を来して剥離が生じる。これに衝撃的な振動を付与(S−43)すれば、意匠面を形成するABS樹脂と反意匠面に位置する樹脂粉砕物とエポキシ樹脂の混合物およびガラス繊維の不織布27から成る層4が分離できる。
【0066】
さらに、冷却した後に意匠面を形成するABS樹脂5と分離した反意匠面に位置する層4に対して衝撃的な振動を付与したり細かく折り曲げるなどをすれば、エポキシ樹脂を任意に付着したガラス繊維の不織布が剥離する(S−44)。また、意匠面に対しては、ABS樹脂層の意匠面に凹みを生じさせないようなヘラなどで軽く擦るなどすれば殆ど全ての裏打ち材が除去できる。残りの混合樹脂組成物については、簡易な羽根状の撹拌機を用いて剥離物同志を擦り合わせれば(S45)、エポキシ樹脂を任意に付着しているものの、実施の形態2および3と同様手段を用いて成型品の裏打ちに供することのできる樹脂粉砕物の如きものが、容易に粉砕された状態で得られる(S−46)。
【0067】
以上のように、各層および各樹脂の分別が達成されるが、解体に供される本成型品の反意匠面が多量の接着剤であるエポキシ樹脂を用いて固化されたものではないことから、比較的わずかな応力によって剥離と粉砕状態のものとしての回収が行われるうえ、意匠面に位置するABS樹脂の軟化温度まで加熱したことによって、前記意匠面を構成するのに用いられた熱可塑性樹脂が容易に剥離できる。
【0068】
また、以上の方法によって分離した意匠面に位置するABS樹脂には、接着剤に用いたエポキシ樹脂が殆ど付着していないので、他の用途への転用が容易に行うことができる。また、反意匠面に用いた樹脂組成物は適度な大きさに容易に粉砕できたので、再度の利用が可能であるほか、これもまた同様に、他用途への転用が容易である。
【0069】
また、樹脂粉砕物と接着剤として用いたエポキシ樹脂の混合組成物をガラス繊維の不織布が包み込んで形成したことによって、引き剥がし時に当該樹脂層が意匠面に位置するABS樹脂から確実に、しかも飛散すること無しに引き剥がすことができるほか、表面層における難燃性の向上に寄与することができる。もし、難燃性を必要としない部品であって、特に小型の成型品であれば、表面層と反意匠面の層との間にのみガラス繊維の不織布を配設しても同様手段を達成することが可能である。さらに本実施の形態では剥離に供する層間シートにガラス繊維の不織布を用いたが、不織布をクロス地に変更したり、ガラス繊維を他の繊維状物質の使用を妨げるものではない。
【0070】
実施の形態5.
本実施の形態は本発明の請求項11に係り、実施の形態3にて得られた成型品が使用を完了して廃棄物として供される場合の廃棄方法であって、構成する意匠面と反意匠面の両層を解体、分別するものである。以下に図15の工程図を用いて、その分別方法を説明する。
【0071】
解体は、各々の層を構成する樹脂組成物の再利用を目的とし、意匠面と反意匠面の両層の分離を容易に行うものである。従って、各々の層がもう一方の層の物質を殆ど含まないことが肝要であり、その為に以下の手段を行うものである。
まず、実施の形態3にて得た成形パネルを加熱する(S−51)ことによって第2の層4に含まれるEVA樹脂を軟化させる。この軟化によって、EVA樹脂の層間の接着強度が急激に低下するので、容易に引き剥がすことが可能になるうえ、意匠面に位置するABS樹脂に過度な応力を付与しない限り、変形を来すことがない。この時の温度は、意匠面に位置するABS樹脂の軟化温度が100〜110℃であるから、EVA樹脂の軟化点をわずかに上回る70〜90℃が好ましく、80℃近傍が特に好ましい。
【0072】
両層の引き剥がしに関しては、ヘラなどの工具を用いて削ぎ落とすようにして剥離する方法もあるが、意匠面に位置する第1の層5であるABS樹脂の層上に第2の層4である樹脂粉砕物とEVA樹脂粉末の混合物28が残存し易く、好適ではない。本発明では、図16に示す方法のように、両層間に配設したガラス繊維の不織布27を持ち上げ(S−52)、好ましくは前記ABS樹脂層4と90度以下の角度を成して配設方向から折返した後(S−53)、使用済み成型品からの裏打ち材である樹脂粉砕物とEVA樹脂の混合組成物4と共にゆっくりと引張るようにして剥離させる(S−54)。この手段によれば、安定して広範囲に両層を剥離する挙動が付与できるので、ABS樹脂から成る意匠面に局部的に過度な応力を付与させることがないので、意匠面が変形して凹凸を来すこともないので、再度の使用も可能になる。さらに、裏打ち材からガラス繊維の不織布27を引き剥がせば(S−55)、樹脂混合物28を回収することができる(S−56)。
【0073】
以上の如く方法によって、意匠性形パネルの解体を行うことによれば、得られた各層が相対する層を構成する材料の残存が極端に抑制できるので、再度の利用に供することが可能になる。つまり、本方法によって回収した意匠面を形成するABS樹脂の層には、殆ど、EVA樹脂などの反意匠面にある樹脂が付着すること無しに回収することができるので、破砕して同様成型品を再度に得ることも可能である。一方の反意匠面に位置する層にあった使用済み成型品の樹脂粉砕物とEVA樹脂の混合組成物については、剥離時に引張り応力によって変形を来しているから、そのままの形状での再利用は困難であるが、適度な大きさに粉砕して、同様の裏打ち材として、再度の利用に供することが可能である。
【0074】
さらに、端辺をわずかに持上げて剥離したことによって形成した空隙内に圧縮空気を封入して、剥離面を拡大していく方法を用いることも有効である。
【0075】
さらに、樹脂粉砕物とEVA樹脂の混合組成物をガラス繊維の不織布が包み込んで形成しているので、前記混合組成物を軟化点近傍にまで加温された状態であれば前記不織布との間で容易に剥離でき、不織布を残存させずに前記混合組成物のみを回収可能な状態で、確実に引き剥がすことができた。このとき、成型品の一辺の大きさが数10cm程度の小型の成型品であれば、表面層と反意匠面の層との間にのみガラス繊維の不織布を配設しても同様手段を達成することが可能である。
【0076】
また、用いたEVA樹脂の熱変形温度が、例えば空気調和機を暖房状態で使用する際に意匠面としての必要強度の発現が困難な程に上昇するようであれば、であれば、EVA樹脂が含むの酢酸ビニルの成分量を低下させたり、さらには意匠面に用いるABS樹脂のアクリロニトリル含有率を向上して耐熱性を向上したものを用いたり、他の種類の樹脂や意匠鋼板に代替するなどして高い熱変形温度のものを用いても良く、ここで使用する樹脂の種類にこだわるものではない。さらに、本実施の形態では剥離に供する層間シートにガラス繊維の不織布を反意匠面側の層を包み込むようにして用いたが、反意匠面の上層にある難燃性付与のためのシートを用いずとも、また、不織布をクロス地に、ガラス繊維を他の繊維を用いることを妨げるものではない。
【0077】
以上、本発明の実施の形態では成形パネル成型品の構造およびその成型方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば建材や構造材などのパネル、軽量で高剛性の板材構造体としての中間に廃棄樹脂成型品の粉砕物を挟んで用いる手段など、従来のパネル状構造体の用途への代替え使用も可能であり、その要旨を脱し得ない範囲で種々変形して実施することができる。
【0078】
【発明の効果】
本発明の第1の発明に係る成形パネルの製造方法は、意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、温度が前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低く第2の層を構成する樹脂の融点よりも高くなるように加熱して前記第2の層を前記第1の層に押し付けながら構成する樹脂混合物を積層して積層シートを得る工程を備えたので、第2の層4が第1の層5を押し付けたとしても硬くて変形を来し難い凸状部分が容易に移動して応力の付加が回避できるので変形の発生が抑制できる。従って、廃棄された樹脂を用いても意匠面の意匠性を損なうことなく第1の層を成す成型品に裏打ちできるので、樹脂成型品の廃棄物を有効に利用できる。
【0079】
本発明の第2の発明に係る成形パネルの製造方法は、温度が前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低く第2の層を構成する樹脂の融点よりも高くなるように加熱して前記第2の層を前記第1の層に押し付けながら前記積層シートを熱成形する工程を備えたものであるから、意匠面に位置する第2の層に廃棄された樹脂の剛性や着色によって変形や色写りなどの影響を受けることなく成型品を得ることができるうえ、予め樹脂粉砕物を含んで複素化したシートを備えるので、通常の熱成形をそのまま活用でき、また、前記シートのみを作り溜めできる。
【0082】
本発明の第5の発明に係る成形パネルの製造方法は、熱成形をする工程において、真空および圧空を用いて金型に押し付けて第1の層を意匠面に位置して形成するものであるから、粉砕材を備えて粉砕材またはそれを含む層が遊離するのを防止でき、剛直な裏打ち材を備えたものとすることができる。
【0083】
本発明の第4の発明に係る成形パネルの製造方法は、意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂が繊維状物質を非直線および無秩序な配向状態に保持されて成る不織布状のシートを成形する工程と、温度が前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低く第2の層を構成する樹脂の融点よりも高くなるように加熱して前記第1の層と前記第2の層との間に前記不織布状のシートを挟み込んだ状態で前記第2の層を前記第1の層に押し付けながら構成する樹脂混合物を積層して積層シートを得る工程と、を備えたものであるから、上記温度帯においては、不織布状のシートも第1の層よりも軟らかく且つ不織布が接着剤で補強されるので、第1の発明よりもさらに意匠面の変形発生が抑制される。
本発明の第の発明に係る成形パネルの製造方法は、意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂が繊維状物質を非直線および無秩序な配向状態に保持されて成る不織布状のシートを成形する工程と、前記第1の層の上に前記不織布状のシートを載置し、さらにその上に前記第2の層を構成する樹脂混合物を所定の厚さに撒布して成形前駆体を得る工程と、温度が前記第1の層を構成する樹脂の熱変形温度近傍にまで加温して前記第2の層を前記不織布状のシートを介して前記第1の層に押し付けながら前記成形前駆体を熱成形する工程と、を備えるものであるから、意匠面に過度の軟化を来すことなく良好な成形条件を付与することができるので、光沢低下や凹凸発生などの意匠性の低下を招かないようにすることができる。
【0084】
本発明の第の発明に係る成形パネルの製造方法は、意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、前記第1の層と繊維状物質を非直線および無秩序な配向状態で保持して成る不織布状のシートとを積層して積層シートを得る工程と、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、前記積層シートの前記不織布状のシート側に前記第2の層を構成する樹脂混合物を所定の厚さに撒布して成形前駆体を得る工程と、温度が前記第1の層を構成する樹脂の熱変形温度近傍にまで加温して前記第2の層を前記不織布状のシートを介して前記第1の層に押し付けながら前記成形前駆体を熱成形する工程と、を備えたものであるから、簡易に成形することができ、光沢に優れるなどの意匠性と強度、剛性などに優れた機械的特性を付与することができる。
本発明の第7の発明に係る成形パネルの製造方法は、前記第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程において、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂の内、混合時に発生する静電気により樹脂粉砕物の表面に吸着しない結果得られる余剰分を、前記成形前駆体を得る工程において前記不織布状のシートに撒布するものであるから、特にガラス不織布27に含浸して本成型品における補強効果の向上に寄与できる。
【0085】
本発明の第8の発明に係る成形パネルの製造方法は、成形前駆体を得る工程において、樹脂混合物を撒布した後に、さらに不織布の余剰分を折り曲げて成る不織布状のシートを前記樹脂混合物の上に載置し、前記熱成形する工程において、前記折り曲げて成る不織布状のシートを前記第2の層及び、前記不織布状のシートを介して前記第1の層に押し付けるものであるから、空気調和機などの成形パネル成形品で必要とされる難燃性が、難燃剤を用いなくとも付与することができる。
【0086】
本発明の第9の発明に係る成形パネルの製造方法は、第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程において、樹脂の粉砕物中にオレフィン系樹脂を含む場合、第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点であることに加え、前記オレフィン樹脂の融点よりも高い融点の樹脂と混合するものであるから、粉砕物中にある他の樹脂およびEVA樹脂と一体化できるので、剥離部分が無視できるほどの微小なものにしたり、接着性のある樹脂によって包み込むことによって欠陥部が排除でき、シート形状のうち、特に外観を損なうことのないように調整できる。
【0087】
本発明の第10の発明に係る成形パネルの解体方法は、本発明の第2の発明又は第3の発明による成形パネルを、第1の層を成す熱可塑性樹脂の軟化温度よりも高い温度で加熱した後、曲折させることによって、樹脂の分別を行うものであるから、容易かつ簡便に各組成物を剥離できるので、再度の利用が可能な成形部材を回収することができる。
【0088】
本発明の第11の発明に係る成形パネルの解体方法は、本発明の第3の発明による成形パネルを、第1の層または第2の層が軟化する温度よりも高い温度に加熱後、第1の層と第2の層の間に設けた不織布状のシートを含めて剥離することによって、樹脂の分別を行うものであるから、意匠面に損傷を与えること無しに剥離を行うことができるので、再度の利用に供することができる成形部材を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1を示す成形パネルの斜視図である。
【図2】 図1のA−A断面図である。
【図3】 本発明の実施の形態1を示す成形パネルの製造方法を示す工程図である。
【図4】 本発明の実施の形態1を示す成形パネルに係る樹脂シートを成形するのに用いる成形装置の概念図である。
【図5】 図4に示す押出機のTダイの形状を示す斜視図である。
【図6】 本発明の実施の形態1を示す成形パネルの製造に係る熱成形を行うための圧空併用成形装置の概念図である。
【図7】 図6の成形装置を用いた意匠性形パネルの工程図である。
【図8】 本発明の実施の形態2を示す成形パネルの断面図である。
【図9】 本発明の実施の形態2を示す成形パネルの製造方法を示す工程図である。
【図10】 本発明の実施の形態2を示す成形パネルに設けた鍔部分の配設方法を示す断面図である。
【図11】 本発明の実施の形態2を示す成形パネルの繊維状物質であるガラス繊維マットの配設に係る成形方法の説明図である。
【図12】 本発明の実施の形態3を示す成形パネルに係る成形パネルの製造方法を示す工程図である。
【図13】 本発明の実施の形態4に係る成形パネルの解体方法を示す工程図である。
【図14】 本発明の実施の形態4に係る成形パネルの解体方法の説明図である。
【図15】 本発明の実施の形態5に係る成形パネルの解体方法を示す工程図である。
【図16】 本発明の実施の形態5に係る成形パネルの解体方法の説明図である。
【符号の説明】
1 成形パネル、4 第2の層、5 第1の層、7 樹脂の粉砕物、8 低融点樹脂(EVA樹脂)、9 着色された樹脂、17 積層シート、18 真空・圧空併用成形機、27 ガラス繊維の不織布、28 樹脂混合物、29 成形前駆体、30,32金型。

Claims (9)

  1. 意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、
    前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、
    温度が前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低く第2の層を構成する樹脂の融点よりも高くなるように加熱して前記第2の層を前記第1の層に押し付けながら構成する樹脂混合物を積層して積層シートを得る工程を備えたことを特徴とする成形パネルの製造方法。
  2. 温度が前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低く第2の層を構成する樹脂の融点よりも高くなるように加熱して前記第2の層を前記第1の層に押し付けながら前記積層シートを熱成形する工程を備えたことを特徴とする請求項1記載の成形パネルの製造方法。
  3. 前記熱成形をする工程において、真空および圧空を用いて金型に押し付けて第1の層を意匠面に位置して形成することを特徴とする請求項記載の成形パネルの製造方法。
  4. 意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、
    前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、
    前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂が繊維状物質を非直線および無秩序な配向状態に保持されて成る不織布状のシートを成形する工程と、
    温度が前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低く第2の層を構成する樹脂の融点よりも高くなるように加熱して前記第1の層と前記第2の層との間に前記不織布状のシートを挟み込んだ状態で前記第2の層を前記第1の層に押し付けながら構成する樹脂混合物を積層して積層シートを得る工程と、を備えたことを特徴とする成形パネルの製造方法。
  5. 意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、
    前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、
    前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂が繊維状物質を非直線および無秩序な配向状態に保持されて成る不織布状のシートを成形する工程と、
    前記第1の層の上に前記不織布状のシートを載置し、さらにその上に前記第2の層を構成する樹脂混合物を所定の厚さに撒布して成形前駆体を得る工程と、
    温度が前記第1の層を構成する樹脂の熱変形温度近傍にまで加温して前記第2の層を前記不織布状のシートを介して前記第1の層に押し付けながら前記成形前駆体を熱成形する工程と、を備えたことを特徴とする成形パネルの製造方法。
  6. 意匠面に位置する第1の層をシート状に成形する工程と、
    前記第1の層と繊維状物質を非直線および無秩序な配向状態で保持して成る不織布状のシートとを積層して積層シートを得る工程と、
    前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂と樹脂の粉砕物を混合して第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程と、
    前記積層シートの前記不織布状のシート側に前記第2の層を構成する樹脂混合物を所定の厚さに撒布して成形前駆体を得る工程と、
    温度が前記第1の層を構成する樹脂の熱変形温度近傍にまで加温して前記第2の層を前記不織布状のシートを介して前記第1の層に押し付けながら前記成形前駆体を熱成形する工程と、を備えたことを特徴とする成形パネルの製造方法。
  7. 前記第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程において、前記第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点の樹脂の内、混合時に発生する静電気により樹脂粉砕物の表面に吸着しない結果得られる余剰分を、前記成形前駆体を得る工程において前記不織布状のシートに撒布することを特徴とする請求項6記載の成形パネルの製造方法。
  8. 前記成形前駆体を得る工程において、樹脂混合物を撒布した後に、さらに前記不織布の余剰分を折り曲げて成る不織布状のシートを前記樹脂混合物の上に載置し、前記熱成形する工程において、前記折り曲げて成る不織布状のシートを前記第2の層及び、前記不織布状のシートを介して前記第1の層に押し付けることを特徴とする請求項6または請求項7記載の成形パネルの製造方法。
  9. 前記第2の層を構成する樹脂混合物を得る工程において、樹脂の粉砕物中にオレフィン系樹脂を含む場合、第1の層を構成する樹脂の融点よりも低い融点であることに加え、前記オレフィン樹脂の融点よりも高い融点の樹脂と混合することを特徴とする請求項乃至請求項8のいずれかに記載の成形パネルの製造方法。
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