本発明は、観察者からみて距離(奥行き)が異なる位置にある複数の観察対象を光学的に重ねて観察できる表示装置、及び奥行きを感じさせる表示方法、及びこれらを備える機器に関するものである。
映像情報を表示する装置としては表示素子としてCRT(Cathod-Ray Tube),プラズマディスプレイパネル,液晶表示素子,有機エレクトロルミネッセンス表示素子等を備える直視型の表示装置や、小型の表示素子が形成した光学画像をスクリーンに拡大投影するプロジェクション型の表示装置がある。
これらの表示装置はいずれも基本的には2次元の映像情報をもとに2次元像を表示するものである。ここでは以下、2次元像を表示する表示素子およびこれを備える表示装置のことをそれぞれ2次元表示素子及び2次元表示装置と呼ぶ。
これらの表示装置のうち、特に液晶表示素子を備える表示装置は薄型,軽量であることから大画面テレビ,パーソナルコンピューター用のモニター,携帯電話,ゲーム機、或いはパチンコやパチスロなどの遊技機等に幅広く利用されている。
ところで、従来から複数の2次元表示素子または2次元表示装置の表示面を観察者からみて奥行きの異なる位置(距離)に配置し、光学的に重ねて表示することで観察者に奥行き感や立体感を感知させる表示装置がある。このような表示装置は単に2次元像を表示する表示装置と比べると表現力が高く、より臨場感のある表示を実現できる。
このような表示装置の典型的な構造としては複数の2次元表示素子と、ハーフミラーを有し、ハーフミラーを透過して観察される2次元表示素子の表示面と、ハーフミラーで反射して観察される2次元表示素子の表示面を奥行きの異なる位置に配置する表示装置がある。図43はこのような従来技術の一例を示すもので、2つの表示素子とハーフミラーを備える表示装置の概略断面図である。ここでは2次元表示素子として液晶表示素子を用い、観察者からみて奥行きが遠い位置に配置した表示素子(以下、遠距離用表示素子とも呼ぶ)からの映像光(以下、遠距離映像光とも呼ぶ)はハーフミラーを透過して観察され、観察者からみて奥行きが近い位置に配置した表示素子(以下、近距離用表示素子とも呼ぶ)からの映像光(以下、近距離映像光とも呼ぶ)はハーフミラーで反射して観察される場合を示す。この場合、観察者からみて奥行きの異なる位置に配置した2つの表示面に表示される映像は、ハーフミラーで光学的に合成され、重なった状態で観察される。
このような構造では異なる奥行き(距離)に配置する表示面が2つの場合、2つの2次元表示素子が必要となる。つまり、このような構造では異なる奥行きに配置する表示面の数と同じ数の2次元表示素子が必要となるため部品点数が増え、装置が大型化してしまうという欠点がある。特に2次元表示素子として液晶表示素子や有機エレクトロルミネッセンス表示素子などの薄型の表示素子を用いる場合にはその薄型という特徴は十分に活かすことができない。
また、従来技術では遠距離映像光と近距離映像光の合成はハーフミラーを介して行うが、一般にハーフミラーは透過率T%と反射率R%の合計が最大で100%となるものである。このため表示素子から放射する遠距離映像光と近距離映像光はそれぞれR%とT%の光が観察者には至らず損失光となり、観察者に届く映像光は表示素子から放射する光の半分以下に低減してしまうという問題があった。
特許文献1には観察者からみて異なる奥行き位置に配置した複数の反射型ホログラフィック拡散板と、各反射型ホログラフィック拡散板に2次元像を投影する複数のプロジェクタから構成される表示装置が開示されている。反射型ホログラフィック拡散板は設定された一定の方向、つまり対応するプロジェクタからの光は反射,散乱し、その他の方向から入射する光、例えば背面に配置した反射型ホログラフィック拡散板で反射,散乱した光は透過するものである。このため、奥行きの異なる位置に配置した複数の反射型ホログラフィック拡散板に投影される映像が重なった状態で観察される。
この場合、反射型ホログラフィック拡散板の透過率が100%でなければ奥行きが遠い位置に配置する反射型ホログラフィック拡散板に投影される映像光は観察者に至るまでに損失が生じる。
また、複数の反射型ホログラフィック拡散板を観察者に観察される奥行きと同じ距離を隔てて並べる必要があるため、装置は奥行き方向に厚くなる。さらに複数の反射型ホログラフィック拡散板と同じ数のプロジェクタが必要となるため部品点数が増えて装置が大型になる。
尚、特許文献1、及び特許文献2には観察者に3次元立体像を感知させる表示方法が開示されている。この方法では観察者からみて奥行きの異なる複数の表示素子の表示面に形成される2次元像(映像)が、観察者の右眼と左眼とを結ぶ線上の一点からみた場合に重なるように表示する。さらに奥行きの異なる各表示面に表示される2次元像(映像)は、観察者からみた場合の輝度を一定に保ちつつ、表示対象の奥行き位置、つまり表示対象の観察者からの距離に応じた輝度の調整を施すことで観察者に3次元立体像が感知されるというものである。
この方法は立体視の生理的要因間の矛盾を抑制でき、なおかつ情報量を少なくできる新たな3次元表示方法として期待されるが、3次元立体像が良好に観察できる観察者の位置は限定される。つまり、観察者の視点が大きく変わると良好な3次元立体像は観察できなくなる。
特開2003−57595号公報
特開2000−214413号公報
国際公開番号:WO95/27919号
本発明が解決しようとする問題点は、観察者からみて奥行きの異なる位置(距離)に配置する複数の観察対象を光学的に重ねて表示する表示装置を実現する場合に部品点数が多くなり、装置が大型化する点にある。つまり、本発明が解決しようとする課題は観察者からみて奥行きの異なる位置(距離)に配置する複数の観察対象を光学的に重ねて表示する表示装置において、部品点数を削減し、装置を小型化、あるいは薄型化することにある。また、本発明が解決しようとする第2の問題は、観察者からみて奥行きの異なる位置(距離)に配置する2次元表示素子の表示面などの複数の観察対象を光学的に重ねて表示する装置において、2次元表示素子から放射する映像光が、観察者に到達する前にその一部が損失することにある。つまり、本発明が解決しようとする第2の課題は2次元表示素子から放射される映像光を効率よく観察者に到達させることでより明るい表示装置を実現することにある。
また、本発明が解決しようとする第3の課題は、観察者からみて奥行きの異なる位置
(距離)に配置する2次元表示素子の表示面などの複数の観察対象を光学的に重ねて表示する装置において、視点が変化しても奥行き感を損なわない表示方法を実現することにある。本発明のその他の課題と新規な特徴については本明細書の記述及び添付図面を参照して明らかにする。
本発明は観察者からみて奥行きの異なる位置にある複数の観察対象を光学的に重ねて表示する表示装置であり、並列配置した複数の観察対象と、複数の反射鏡とを備える。前記複数の反射鏡のひとつは全反射ミラーであり、その他の反射鏡はハーフミラーである。前記ハーフミラーは観察者からみて最も遠い位置に配置した観察対象以外の観察対象の前面側に配置する。また、前記全反射ミラーは観察者からみて最も遠い位置に配置した観察対象からの光を前記ハーフミラーに向けて反射するように配置する。
さらに観察者からみて最も近い位置に配置した観察対象からの光は、観察者からみて最も近い位置に配置した観察対象の前面に配置したハーフミラーを透過して観察され、観察者からみて最も近い位置に配置した観察対象以外の観察対象からの光は、観察者からみて最も近い位置に配置した観察対象の前面に配置したハーフミラーで反射して観察されることを特徴とする。
また、前記複数の観察対象は同一平面上もしくは略同一平面上に配置されることを特徴とするものである。
この際、前記表示装置は前記複数の反射鏡の反射面が互いに略平行となるように配置し、さらに前記反射面は前記複数の観察対象が配置される略同一平面に対して、0°から
45°の角度をなすことを特徴とする。
また、前記表示装置は前記複数の観察対象が複数の2次元表示素子の表示面であり、該複数の2次元表示素子はその構成部材の少なくとも一つが共通化されていることを特徴とする。或いは前記表示装置は前記複数の観察対象が単一の2次元表示素子の表示面における複数の異なる表示領域であることを特徴とする。
また、前記複数の観察対象が単一の2次元表示素子の表示面における複数の異なる表示領域、もしくは複数の2次元表示素子の表示面であって、前記2次元表示素子は映像光として所定の偏光を放射するものである。さらに前記ハーフミラーの少なくとも一つが所定の偏光成分は反射し、これと偏光状態が異なる偏光成分は透過する偏光分離素子、あるいは、所定の偏光成分は透過し、これと偏光状態が異なる偏光成分は反射する偏光分離素子であることを特徴とする。
また、この際、前記2次元表示素子から放射され、前記偏光分離素子に入射する光はその80%以上が反射、もしくは透過することを特徴とする。
本発明の表示方法は、観察者からみて奥行きの異なる位置にある複数の観察対象を光学的に重ねて表示する表示装置の表示方法であって、前記複数の観察対象が単一の2次元表示素子の表示面における複数の異なる表示領域、もしくは複数の2次元表示素子の表示面である場合に以下の通りに表示することを特徴とする。
(1)異なる表示領域、或いは表示面には同時に同一の表示対象を表示しない。さらに遠くにあるものはその距離に対応する表示領域もしくは表示面に表示し、近くにあるものはその距離に対応する表示領域もしくは表示面に表示する。
(2)異なる奥行きに渡り連続的に存在する表示対象については観察者から遠い奥行き、つまり観察者から長い距離にある部分はその奥行き(距離)に対応する表示領域もしくは表示面のみに表示し、観察者から近い奥行き、つまり観察者から短い距離にある部分はその奥行き(距離)に対応する表示領域もしくは表示面のみに表示する。また、異なる奥行きの中間位置に相当する部分はそれぞれの表示領域もしくは表示面において、それ以外の部分よりも暗く表示する。この際、異なる奥行きの中間位置に相当する部分は異なる奥行きの中間に近づくに従い連続的に輝度が下がるように表示する。
(3)奥行きの異なる位置にある表示対象が重なる場合、相対的に遠くにある表示対象のうち、相対的に近くにある表示対象によって遮蔽される部分は、相対的に遠くにある表示対象を表示する表示領域もしくは表示面において、相対的に近くにある表示対象によって遮蔽される領域に相当する部分の少なくとも一部を暗く表示する。この際、遮蔽される部分はその遮蔽部分の周辺部から中央部に向かい連続的に表示を暗くする。
この他の手段については以下の記述で明らかとする。
本発明の表示装置は、同一平面上、または略同一平面上に並列配置した複数の観察対象を、観察者からみて奥行きの異なる位置にある複数の観察対象が光学的に重なった状態で観察できるものである。このため観察者が感知する奥行きよりも実際の奥行きが小さく、薄型の表示装置が実現できるという利点がある。
さらに、単一の2次元表示素子の表示面における複数の異なる表示領域を複数の観察対象とすることで、部品点数が少なく、低コストで薄型の表示装置を実現できるという利点がある。
また、前記複数の観察対象のうち、少なくとも一つの観察対象が所定の偏光を映像光として放射する2次元表示素子の表示面とし、この表示面の前面に配置するハーフミラーを所定の偏光成分は反射し、これと異なる偏光成分は透過する偏光分離素子、もしくは所定の偏光成分は透過し、これと異なる偏光成分は反射する偏光分離素子とすると、少なくともこの表示面から放射する映像光はほとんど損失することなく、観察者からの距離がこの表示面よりも遠い(長い)位置にある観察対象からの光と合成することができる。このため、ハーフミラーに偏光分離素子を用いない場合に比べて、映像光の損失が少なく、より明るい表示装置を実現することができる。
また、本発明の表示方式では観察者からみて奥行きが異なる表示面には同一の表示対象を同時に表示しないようにする。これにより奥行き感を感知できる視点の裕度が広がり、視点が多少変化しても奥行き感のある表示を維持できるという利点がある。
また、本発明の表示装置を備える機器では、通常の2次元表示装置では表現できない奥行き感のある表示を、観察者が感知する奥行きよりも実際の奥行きが小さく、薄型の機器で実現できるという利点がある。
本発明は観察者からみて奥行きの異なる位置にある複数の観察対象を光学的に重ねて表示する表示装置及び表示方法とこれを備える機器に関するものである。
複数の観察対象はほぼ同一平面上に並列に配置する。これは観察者からみた表示装置の奥行き方向の厚さを薄くするために極めて有効な配置である。
観察対象はCRT,液晶表示素子,有機エレクトロルミネッセンス表示素子,プラズマディスプレイパネルなどの2次元像を表示する表示素子(以下、2次元表示素子)の表示面を用いることができる。或いは、観察対象としてスロットマシンなどで使用される外周面に複数の絵柄を配置したリールを回転させることで絵柄を切り替える表示素子の表示面などが考えられる。
観察対象は特に限定されるものではないが、装置の小型化のためには液晶表示素子、もしくは有機エレクトロルミネッセンス表示素子といった薄型の2次元表示素子の表示面を用いることが望ましい。
さらに、複数の観察対象は単一の2次元表示素子の表示面における複数の異なる表示領域とすることが部品点数を少なくするために望ましい。また、こうすることで観察対象は自ずと同一平面に配置されることになる。
ここでは以下、観察対象として液晶表示素子を用い、観察対象が単一の液晶表示素子の表示面における2つの異なる表示領域である場合を説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の表示装置は複数の観察対象と複数の反射鏡を備える。反射鏡のひとつは少なくとも観察者からみて最も遠い位置に配置する観察対象からの光に対する反射率が高いミラー(以下、全反射ミラーとよぶ)とする。また、これ以外の反射鏡はハーフミラーとする。ここでは観察対象が2つの場合を説明するため、反射鏡は観察対象と同数の2つであり、一つの反射鏡はハーフミラー、もう一つの反射鏡は全反射ミラーである。
ハーフミラーは観察者からみて奥行きが近い、即ち観察者からの距離が短い位置にある観察対象と観察者との間に配置する。つまり、ハーフミラーは液晶表示素子の表示面のうち、奥行きが近い位置にある観察対象に対応する表示領域(以下、近距離表示領域と呼ぶ)の前面に配置する。
一方、全反射ミラーは観察者からみて奥行きが遠い、即ち観察者からの距離が長い位置にある観察対象からの光をハーフミラーに向けて反射する位置に配置する。つまり、全反射ミラーは液晶表示素子の表示面のうち、奥行きが遠い位置となる観察対象に対応する表示領域(以下、遠距離表示領域と呼ぶ)からの光をハーフミラーに向けて反射する位置に配置する。また、全反射ミラーは観察者が近距離表示領域を観察する際、妨げとならない形状とする。
ハーフミラーは液晶表示素子の近距離表示領域からの映像光(以下、近距離映像光と呼ぶ)と遠距離表示領域からの映像光(以下、遠距離映像光とよぶ)を合成する機能を担うものである。つまり、近距離映像光はハーフミラーを透過して観察者に観察され、遠距離映像光はハーフミラーで反射して観察される。
全反射ミラーは液晶表示素子の遠距離表示領域から放射する映像光をハーフミラーに向けて反射する機能を有するものである。このため、全反射ミラーは少なくとも遠距離映像光に対して反射率の高いミラーとすることが明るい映像を得るために重要である。
尚、液晶表示素子としてはバックライトを備え、バックライトからの光の透過光量を調整することで映像を表示する透過型の液晶表示素子を用いることができる。特に偏光板を備え、液晶層に入射する光の偏光状態を制御することで映像表示を行う液晶表示素子は比較的低い駆動電圧でコントラスト比の高い映像が得られることから望ましい。このような液晶表示素子から放射する映像光は直線偏光光となる。
このためハーフミラーとしては明るい映像光を得るために液晶表示素子の近距離表示領域から放射されハーフミラーに入射する直線偏光光は透過し、これと偏光軸が直交する直線偏光光は反射する偏光分離素子を用いることが望ましい。さらに遠距離表示領域とハーフミラーの間には遠距離表示領域から放射されハーフミラーに入射する映像光をハーフミラーが反射する偏光状態の光に変換する偏光変換素子を配置することが明るい映像を得るために望ましい。
ハーフミラーとして機能する偏光分離素子としては例えば特許文献3に開示されている複屈折反射型偏光フィルム、或いは、コレステリック液晶フィルムの表と裏に位相差フィルムを配置したもの、或いは屈折率の異なる誘電体を積層した誘電体多層膜を用いることができる。
また、偏光変換素子としてはこれに入射する直線偏光の偏光軸を90°回転させる旋光素子や1/2波長板を用いることができる。
ハーフミラーと全反射ミラーは共に反射面が平面であり、互いの反射面が平行となるように配置することが望ましい。これはレンズなどの光学部材を付加したり、反射鏡の反射面を曲面にしなくても観察者に遠距離表示領域の映像が近距離表示領域の映像と相似な形状で観察されるようにするためである。尚、本発明はレンズなどの光学部材を付加したり、反射面の形状を任意の曲面形状にすることを排除するものではないが、部品点数を少なくし、より低コストな表示装置を実現するためには上記構成とすることが望ましい。
また、ハーフミラーと全反射ミラーは液晶表示素子の表示面に対しては平行、或いは傾きを有して配置する。ここでは以下、図面を参照してハーフミラーと全反射ミラーを液晶表示素子の表示面に対して45°傾けて配置する場合を説明する。尚、液晶表示素子の表示面に対するハーフミラーと全反射ミラーの角度は用途によりそれぞれ好適な角度があるが、このことについては後述の実施例において詳細に説明する。
図21は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図であり、ハーフミラー2と全反射ミラー3を液晶表示素子1の表示面に対して45°傾けて配置する場合を示す。
上記構成とすることで、液晶表示素子1の近距離表示領域1nから放射する映像光11はハーフミラー2でほとんど反射されることなく透過して観察者20に観察される。一方、液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから放射する映像光12は全反射ミラー3で反射した後、ハーフミラー2で反射して観察者20に観察される。
この際、遠距離映像光12は遠距離表示領域1fとハーフミラー2の間に配置した偏光変換素子4の作用によって、その大部分が偏光軸が90°回転した直線偏光成分に変換されるため、ハーフミラー2でそのほとんどが反射して観察者20に観察される。
つまり、ハーフミラー2として偏光分離素子を用い、さらに偏光変換素子を備えることで近距離映像光11と遠距離映像光12は共にほとんど損失することなく観察者20に観察されるため映像光の損失がほとんどない明るい表示が得られる。
尚、遠距離表示領域1fは近距離表示領域1nと比べると、全反射ミラー3からハーフミラー2までの距離の分だけ観察者20からの距離が遠くなる。このため、この表示装置では観察者20からみて奥行きの異なる位置に配置した2つの2次元像を重ねた状態で表示することができる。
この際、観察者からみて奥行きの異なる観察対象は、実際には同一平面上に配置されているため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さい薄型の表示装置が実現できる。
ところで、奥行きの異なる2次元像を重ねて表示する場合、表示方法を工夫することで立体感のある表示が可能となる。
そのひとつの方法は基本的には同一の表示対象を遠距離表示領域1fと近距離表示領域1nの両方に表示し、観察者の右眼と左眼とを結ぶ線上の一点からみた場合に各表示領域に表示する表示対象が重なるように表示するものである。
この際、遠距離表示領域1fと近距離表示領域1nに表示される2次元像は観察者からみた場合にその合計の輝度が表示対象の輝度と等しくなるように保った上で、表示対象のうち観察者からみて遠い奥行きにある部分は遠距離表示領域での輝度を高くし、近距離表示領域での輝度は低くする。また、表示対象のうち観察者から近い奥行きにある部分は近距離表示領域での輝度を高くし、遠距離表示領域での輝度は低くする。
このように、表示対象の観察者からみた奥行き位置、つまり、観察者からの距離に応じた輝度調整を行うことで観察者には3次元立体像が感知される。しかし、この方法は観察者の視点が変わり、遠距離表示領域1fと近距離表示領域1nに表示する表示対象の相対的な位置がずれると良好な3次元立体像は観察できなくなる。そこで、3次元立体像が良好に観察できる視点位置を観察者が容易に判別できるようにするための位置合わせの印を遠距離表示領域と近距離表示領域の両方に適宜表示する、或いは表示領域外で観察可能な領域、例えば表示領域の額縁部分に表示するようにするとよい。
位置合わせの印としては図8に例示するような十文字とL字の組み合わせや、図9に例示するような同心の円と中空の円など上下左右全方位に渡って位置合わせを確認できる印を用いればよいだろう。
尚、医療用や美術品の観察といった観察対象を正確に再現することが要求される用途ではなく、例えば、ゲーム機やパチンコなどの遊技機において表示装置の表現力を高める方法として奥行き感のある表示を実現する場合には以下の方法で映像を表示すると視点が多少変わっても奥行き感のある表示を維持することができるようになる。尚、ここでは複数の観察対象を単一の2次元表示素子の表示面における複数の異なる表示領域、あるいは複数の2次元表示素子の表示面とする場合を述べる。
(1)異なる表示領域、或いは表示面には同時に同一の表示対象を表示しない。さらに遠くにあるものはその距離に対応する表示面、もしくは表示領域(例えば遠距離表示領域)に表示し、近くにあるものはその距離に対応する表示面、もしくは表示領域(例えば近距離表示領域)に表示する。
(2)異なる奥行きに渡り連続的に存在する表示対象については観察者から遠い奥行き、つまり観察者から長い距離にある部分はその奥行き(距離)に対応する表示面もしくは表示領域(例えば遠距離表示領域)のみに表示し、観察者から近い奥行き、つまり観察者から短い距離にある部分はその奥行き(距離)に対応する表示面もしくは表示領域(例えば近距離表示領域)のみに表示する。また、異なる奥行きの中間位置に相当する部分は各表示面もしくは表示領域において、それ以外の部分よりも暗く表示する。この際、異なる奥行きの中間位置に相当する部分は異なる奥行きの中間に近づくに従い連続的に表示を暗くする、つまり連続的に輝度が下がるように表示することが不自然さを感じさせないために望ましい。
(3)奥行きの異なる位置にある表示対象が重なる場合、相対的に遠くにある表示対象のうち、相対的に近くにある表示対象によって遮蔽される部分は、相対的に遠くにある表示対象を表示する表示面もしくは表示領域において、相対的に近くにある表示対象によって遮蔽される領域に相当する部分の少なくとも一部を暗く表示する。この際、遮蔽される部分はその遮蔽部分の周辺部から中央部に向かい連続的に表示を暗くする、つまり連続的に輝度が下がるように表示することが不自然さを感じさせないために望ましい。
さらに、表示面もしくは表示領域に表示する映像は奥行き知覚の心理的要因を積極的に利用するとよい。例えば、近いものははっきりと表示し、遠いものはぼんやりと表示する大気遠近法や、遠くに向かう道の幅が徐々に狭くなっていくように見えることを利用する線遠近法、あるいは、きめを構成する要素の密度が遠くにいくほど高くなることを利用するきめの勾配や、陰影をつけることで奥行き感を表現する方法を利用することができる。
これらの心理的要因を利用した方法と、上記(1)(2)(3)に記載の方法を適宜用いることで視点が多少変化しても奥行き感のある表示を維持することができる表示装置を実現できる。
本発明の表示装置は、実際に奥行きが異なる観察対象を重ねて表示するため、奥行き知覚の生理的要因である眼のピント調節,輻輳,両眼視差などにより自然に奥行きを感知できる表示装置が実現できる。
また、本発明の表示装置では観察対象を同一平面に配置するため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の長さが小さく薄型の表示装置が実現できる。さらに観察対象を単一の2次元表示素子とすることで部品点数を少なくすることができる。
尚、本発明の表示装置の用途としてはゲーム機やパチンコなどの遊技機の他に、視力訓練用機器への適用が考えられる。これは、本発明の表示装置では映像を表示する位置を観察者からみて奥行き(距離)の異なる任意の位置に切り替えることができるためである。つまり、観察者からみて映像が表示される位置が切り替わると、観察者は映像の表示位置が変わるたびに目の焦点調節を行うため、目の焦点調節機能、即ち視力の訓練ができると考えらる。
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1と図2は本発明の表示装置の一実施例を示す概略断面図である。また、図3は同じく本発明の表示装置の一実施例を示す概略斜視図である。
この表示装置は観察者からみて奥行きの異なる2つの観察対象を光学的に重ねて表示する表示装置であり、表示素子1と、ハーフミラー2と、全反射ミラー3と、偏光変換素子4とを備える。尚、本発明の主体は光学系の構成にあるので、信号系,電気系,機構系、及びこれらを支える構造部材などの説明は省略する。
表示素子1は映像情報をもとに映像を表示するものであり、その表示面は観察者20からみて奥行きの異なる位置に配置される2つの観察対象として機能するものである。このため、表示素子1の表示面は2つの観察対象に対応する2つの表示領域を有する。つまり、観察者からみて奥行きが近い位置となる観察対象に対応する表示領域1n(以下、近距離表示領域1nと呼ぶ)と、観察者からみて奥行きが遠い位置となる観察対象に対応する表示領域1f(以下、遠距離表示領域1fと呼ぶ)とを有する。
表示素子1としては薄型,軽量であることから液晶表示素子や有機エレクトロルミネッセンス素子を用いることが表示装置全体の薄型化のために望ましい。また、後述するハーフミラー2による映像光の合成における損失をできるだけ小さくするために表示素子1としては映像光として偏光光を放射するものが望ましく、このような表示素子1としては液晶表示素子を用いることが好適である。ここでは以下、表示素子1として液晶表示素子を用いる場合を説明するので符号1を液晶表示素子に対しても使用する。
液晶表示素子はバックライトと、バックライトから放射される光の透過量を調節することで映像を表示する液晶表示パネルとから構成される。液晶表示素子としては例えばTN(Twisted Nematic )方式,STN(Super Twisted Nematic)方式,ECB(ElectricalControlled Birefringence) 方式などを用いることができる。また、広視野角を特徴とするIPS(In Plane Switching)方式,VA(Vertical Alingned)方式などを用いることができる。これらの液晶表示素子は偏光板を備え、液晶層に入射する光の偏光状態を制御することで映像の表示を行うものであり、比較的低い駆動電圧でコントラスト比の高い映像が得られるものである。
次に図4を参照して液晶表示素子1について説明する。ここでは以下、液晶表示素子1としてIPS方式を用いる場合を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図4は液晶表示素子1の概略断面図である。液晶表示素子1は液晶表示パネル200とその背面に配置したバックライト100とから構成される。
バックライト100は液晶表示パネル200の表示領域を照明するもので、エッジライト方式(導光体方式),直下方式(反射板方式),面状光源方式などがある。バックライト100はこれらの方式やその他の方式の中から用途や目的,表示領域の大きさに合わせて最適な方式を選べばよい。ここでは、エッジライト方式のバックライトについて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
バックライト100は、裏面に白色顔料によるドット印刷、或いは微細な凹凸形状やレンズ形状等の光の進行方向を変える手段を形成した透明な樹脂からなる導光体103と、導光体103の端面に配置した光源101と、導光体103の裏面側に配置した反射シート104と、導光体103の表面側に配置したプリズムシートや、拡散シートなどの光学フィルム105,106とを有している。
光源101としては冷陰極管や熱陰極管などの線状光源やLEDなどの点状光源を使用することができる。ここでは以下、光源101として冷陰極管を使用する場合を説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
光源101として冷陰極管を用いる場合は、光源からの光を導光体に効率よく入射させるため、光源を覆うようにランプカバー102を配置すると良い。
この構成において、光源101から出射した光は直接、或いはランプカバー102で反射した後、導光体103に入射する。導光体103に入射した光は全反射しながら導光体103内を伝播するが、導光体103の裏面に施された、光の進行方向を変える手段に至った光は、その進行方向が変わり、導光体103表面側から出射する。導光体103から出射した光は、プリズムシートや拡散シートなどの光学フィルムにより出射角度の分布や、面内での輝度分布が調整された後、液晶表示パネル200に照射される。
液晶表示パネル200は、平坦かつ透明で光学的に等方なガラス、あるいはプラスチックからなる第1の透明基板201および第2の透明基板202とを有する。透明基板201には、カラーフィルタや、ポリイミド系高分子からなる配向膜(いずれも不図示)が積層されている。第2の透明基板202には、配向膜,画素を形成する電極,信号電極,薄膜トランジスタ等のスイッチング素子(いずれも不図示)が形成されている。
図5は本実施例の液晶表示パネル200の1画素の構成を示す概略正面図である。液晶表示パネル200の1画素は透明基板202上に形成した共通電極2003及び走査信号電極2004と、これらの上層に図示しないゲート絶縁膜を介して形成した映像信号電極2001及び画素電極2002と、非晶質もしくは多結晶Si膜等により形成したスイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)2006を有する。
また、画素電極2002は共通電極2003と一部重なり合い、保持容量を形成する。共通電極2003、及び画素電極2002は一画素を4つの領域に分割しており、互いに略一定の間隙を保ちながら、ジクザク型になっている。また、液晶表示素子の表示面における表示領域分割方向に対する共通電極2003、および画素電極2002のジグザグの傾き角度γは約±10°である。さらにこれらの上層には保護層が形成され、その上に配向膜が形成される。
2枚の透明基板201,202は配向膜形成面を向かい合わせ、図示しないスペーサーにより一定の間隙を設けた状態で枠状のシール材で周囲を接着することで内部に空間が形成される。この空間に誘電異方性が正のネマチック液晶を封入し、封止することで液晶層203が設けられる。
液晶層203は2枚の透明基板201,202上に形成された配向膜に施される配向処理により、その液晶分子長軸の配向方向が規定される。液晶層203の液晶配向方向は、2枚の透明基板201,204間で捩じれのない、いわゆるホモジニアス配向とする。
透明基板201の前面と透明基板202の背面にはそれぞれ偏光板204及び205を配置する。
図6は偏光板204及び偏光板205の直線偏光の透過軸と液晶層203の液晶分子長軸の配向方向の一例を示す図である。ここでは以下、図示の通り、液晶層の配向方向203aは表示領域分割方向と平行とし、偏光板204の直線偏光の透過軸204aは液晶層203の配向方向203aと平行とし、偏光板205の直線偏光の透過軸205aは液晶層203の配向方向203aと直交する場合を説明する。
尚、偏光板204,205の直線偏光の透過軸は図6に例示した方向に対して共に90°回転していても良い。
偏光板204および偏光板205としては、例えば延伸したポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させることにより偏光機能を付与した膜の両面に、トリアセチルセルロースの保護層を施したものを用いることができる。なお、偏光板204および偏光板205は、それぞれ透明基板201及び透明基板202に、透明な接着剤により接着される。
バックライト100からの光は偏光板205を透過した後、液晶層203を通過して偏光板204に入射する。この際、映像情報発生部(不図示)から伝えられる映像情報に対応した電圧を共通電極および画素電極に印加することで液晶層203を通過する光の偏光状態を変えて偏光板204を透過する光の量を制御することができる。これにより、偏光板204を透過する直線偏光からなる所望の映像光を形成することができる。
尚、液晶表示素子1は1つの連続した表示面を便宜上、近距離表示領域1nと遠距離表示領域1fに分割することで2つの観察対象を実現する。これにより、単一の表示素子で2つの異なる奥行きに配置した観察対象を実現できるため、部品点数が減る。また、2つの観察対象は同一平面上に配置されることになるので、観察者からみて奥行き方向の長さが小さく、薄型の表示装置が実現できるという利点がある。
本実施例では、ハーフミラー2は液晶表示素子1の近距離表示領域1nからの映像光
11(以下、近距離映像光11と呼ぶ)と遠距離表示領域1fからの映像光12(以下、遠距離映像光12とよぶ)を合成する機能を有するものである。また、全反射ミラー3は液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから放射する映像光12をハーフミラー2に向けて反射する機能を有するものである。このため、全反射ミラー3は少なくともこれに入射する遠距離映像光11に対して反射率が高いミラーとすることが明るい映像を得るために望ましい。
ここでは、ハーフミラー2と全反射ミラー3は共に反射面が平面であり、互いに平行となるように配置する場合を説明する。これはレンズなどの光学部材を新たに付加する、あるいはハーフミラーや全反射ミラーの反射面を曲面にする、あるいは遠距離表示領域や近距離表示領域の形状を変形させる、などしなくても観察者に遠距離表示領域の映像と近距離表示領域の映像を相似な形状で観察できるようにするためである。尚、本発明はレンズなどの光学部材を付加したり、ハーフミラーや全反射ミラーの反射面を任意の曲面形状にすることを排除するものではないが、部品点数を少なくし、より低コストな表示装置を実現するためには上記構成とすることが望ましい。
ハーフミラー2と全反射ミラー3は液晶表示素子1の表示面に対して平行、或いは傾きを有して配置する。ここでは以下、ハーフミラー2及び全反射ミラー3を液晶表示素子1の表示面に対して平行に配置する場合を説明する。
この場合、ハーフミラー2は液晶表示素子1の近距離表示領域1nの前面に配置する。ここでは特にハーフミラー2を液晶表示素子1の表示面に密着して配置する場合について述べる。ハーフミラー2の大きさは近距離表示領域1nを覆うのに必要最低限の大きさであれば良く、高い位置精度で組み立てられる場合には近距離表示領域と同じ大きさにすれば部材面積が必要最小限となり低コスト化につながる。ただし、ハーフミラー2の大きさは合わせずれを考慮して、近距離表示領域1nの大きさよりもやや大きくすることが現実的である。
全反射ミラー3は液晶表示素子1の前面側であって、想定する観察者の方向に応じて適切な距離だけ液晶表示素子1の表示面から離れた位置に配置する。
以下、全反射ミラー3の配置位置について図2及び図3を参照して説明する。ここでは、観察者20が液晶表示素子1の表示面に垂直な方向に対し、表示領域分割方向と平行で、なおかつ近距離表示領域1n側の方位(図では右側方向)へ、所定の角度(以下、観察角度とも呼ぶ)傾いた方向から観察する場合を想定する。
この場合、全反射ミラー3は観察者20からみて近距離表示領域1nを遮らず、なおかつ遠距離表示領域1fと近距離表示領域1nがハーフミラー2を介して重なって見える位置に配置する。
ハーフミラー2を液晶表示素子1の表示面上に密着して配置する場合は、ハーフミラー2の反射面は液晶表示素子1の表示面に極めて近い位置に存在する。そこで、ハーフミラー2の反射面と液晶表示素子1の表示面とが同じ平面に存在すると仮定し、ハーフミラー2の反射面から全反射ミラー3の反射面までの最短距離をH、観察角度をθ、遠距離表示領域1fの表示領域分割方向における幅をW1、遠距離表示領域1fと近距離表示領域
1nのすき間の距離をW0とする。この場合、距離Hが数式(数1)を満足していると、観察者20は遠距離表示領域1fの映像をハーフミラー2を介して観察することができるようになる。
(数1)
H=(W0+W1)/2/tanθ …(1)
例えば、W0+W1=100mm,θ=35°とすると、H=約71.4mm とすれば、観察者20は遠距離表示領域1fの映像をハーフミラー2を介して観察することができるようになる。
尚、実際には液晶表示素子1の表示面とハーフミラー2の反射面は完全に同一の平面にあるわけではない。このため、ハーフミラー2の反射面と液晶表示素子1の表示面との間にある有限の距離を考慮すると、遠距離表示領域1fの映像をハーフミラー2を介して観察できる場合、距離Hは数式(数2)を満足する。
(数2)
H≧(W0+W1)/2/tanθ …(2)
この際、全反射ミラー3の近距離表示領域1n側の端部(図中、右側の端部)の位置は想定される観察者が近距離表示領域1nを観察する際、妨げとならない位置とする。また、全反射ミラー3はその反射面の大きさが少なくとも遠距離表示領域1f以上の大きさであればよく、高い合わせ精度で組み立てられる場合には遠距離表示領域1fと同じ大きさにすれば部材面積が必要最小限に小さくなり低コスト化につながなる。ただし、全反射ミラー3の反射面の大きさは合わせずれの大きさを考慮して、遠距離表示領域1fよりもやや大きくすることが現実的である。
近距離映像光11はハーフミラー2を透過して観察者20に観察される。また、遠距離映像光12はハーフミラー2で反射して観察者20に観察される。このため観察者が明るい映像を得るにはハーフミラー2はこれに入射する近距離映像光11に対しては透過率が高く、遠距離映像光12に対しては反射率が高いことが望ましい。
そこで、本発明ではハーフミラー2として入射する光を透過と反射で偏光状態が異なる光に分離する偏光分離素子を用いる。偏光分離素子は言い換えると2方向から入射する偏光状態の異なる光を透過と反射により一方向に合成する機能を有するものである。
ここでは液晶表示素子1が映像光として直線偏光を放射することから、ハーフミラー2として液晶表示素子1から放射する直線偏光成分は透過し、これと偏光軸が直交する直線偏光成分は反射する偏光分離素子を用いる。
この際、偏光分離素子を用いることでより明るい映像を得るために、偏光分離素子は所定の直線偏光に対する透過率と、これと偏光軸が直交する直線偏光に対する反射率の和が100%よりも大きい必要がある。また、ハーフミラーでの映像光の損失を完全に無くすために偏光分離素子は所定の直線偏光に対する透過率と、これと偏光軸が直交する直線偏光に対する反射率の和が200%となることが望ましい。
このため、偏光分離素子の所定の直線偏光に対する透過率と、これと偏光軸が直交する直線偏光に対する反射率の和をTR%とすると、ハーフミラー2としては100%<TR%≦200%となる偏光分離素子を用いる必要がある。
尚、偏光分離素子は、偏光分離素子でない通常のハーフミラーと比べると高価であるため、費用対効果を考慮すると、ハーフミラー2としては160%<TR%≦200%となる偏光分離素子を用いることが望ましい。この場合、近距離映像光11と遠距離映像光
12の明るさを同程度にするために、偏光分離素子の所定の直線偏光に対する透過率と、これと偏光軸が直交する直線偏光に対する反射率は共に80%以上で同程度の値であることが望ましい。
尚、以下の説明ではハーフミラー2として偏光分離素子を用いる場合を説明するため、偏光分離素子に対してもハーフミラー2と同じ符号2を用いる。
偏光分離素子2は液晶表示素子1から放射する直線偏光は透過し、これと偏光軸が直交する直線偏光は反射するものを用いる。
このような偏光分離素子2としては例えば特許文献3に開示されている異なる複屈折性を有する高分子フィルムを複数層積層した複屈折反射型偏光フィルム、もしくはコレステリック液晶フィルムの表と裏に位相差フィルムを配置したもの、もしくは屈折率の異なる誘電体を積層した誘電体多層膜、もしくは金属ワイヤーグリッドによる偏光フィルターを用いることができる。
複屈折反射型偏光フィルムの場合、これに入射する光のうち所定の直線偏光成分は透過し、これと偏光軸が直交する直線偏光成分は反射するフィルムが3M社(米国)からDBEFという商品名で市販されており、これを偏光分離素子2として使用することができる。この際、マット処理等のように映像がぼやけるような処理がなされていないものを使用することが鮮明な映像を得るために重要である。
偏光分離素子2としてコレステリック液晶フィルムの表と裏に位相差フィルムを配置したものを使用する場合、コレステリック液晶フィルムの裏側、すなわち液晶表示素子1側に配置する位相差フィルムは液晶表示素子1から放射する映像光がコレステリック液晶フィルムを透過する楕円偏光(円偏光を含む)に変換するものを用いる。一方、コレステリック液晶フィルムの表側、すなわち観察者側に配置する位相差フィルムは、遠距離表示領域1fから放射し、全反射ミラー3で反射した後、偏光分離素子2に入射する映像光をコレステリック液晶フィルムで反射する楕円偏光(円偏光)に変換するものを用いる。
コレステリック液晶は、ヘリカルな分子配列に基づく特異な光学特性を示すもので、ヘリカル軸に対してやや傾いた角度で入射した光が、コレステリック螺旋の回転方向に応じて、一方の回転方向の楕円偏光は反射し、他方は透過するという選択反射を示すものである。選択反射の波長域は、分子配列のピッチによって決まるので、可視波長域全域で選択反射が起こるようにするためには、ピッチの異なる複数のコレステリック液晶を積層して用いることが必要である。或いは、可視波長域全域で選択反射を得るために、Asia
Display 95 Digest, p735, The Institute of Television Engineers of Japan (ITE) & The Society for Information Display (SID) に記載されているようなピッチを連続的に変化させたコレステリック液晶を用いてもよい。
誘電体多層膜による偏光分離素子は透明基材上に屈折率の異なる誘電体薄膜を積層するもので、プリズムタイプと平板タイプがある。
金属ワイヤーグリッドによる偏光フィルターは透明基材上に千数百オングストロームのピッチで、銀,アルミニウム,クロムなどの導電性の金属線状パターンを形成したもので、透明基材を平板とすれば平板タイプの偏光分離素子を実現できる。
尚、偏光分離素子2として、複屈折反射型偏光フィルムや、コレステリック液晶フィルムのように、フィルム状の部材を用いる場合は以下の点に注意することが望ましい。
すなわちフィルム状の偏光分離素子2は、そのままでは平坦性が低いため単に液晶表示素子1の前面に配置しただけではフィルムのゆがみにより映像がゆがむ場合がある。そこで、偏光分離素子2としてフィルム状の部材を使用する場合は、透明な粘着剤を介して、ガラス板あるいはプラスチック板等のように剛性が高く、平坦、かつ透明で光学的に等方な透明基材に粘着固定し、歪みがないようにすることが望ましい。あるいは偏光分離素子2を平坦な状態で固定するために新たな透明基材を用いるのではなく、液晶表示素子1の表示面上に偏光分離素子2を透明な粘着剤を介して粘着固定するようにしてもよい。
遠距離表示領域1fから放射する映像光が全反射ミラー3を介して偏光分離素子2に至る光路中には偏光変換素子を配置する。偏光変換素子は遠距離表示領域1fから放射され偏光分離素子2に入射する映像光を偏光分離素子2が反射する偏光状態の光に変換するものである。
ここでは、偏光変換素子4を遠距離表示領域1fの前面に密着して配置する場合を説明する。この場合、偏光変換素子4は遠距離表示領域1fから放射する直線偏光を、その偏光軸が90°回転した直線偏光に変換するものである。つまり、偏光変換素子4としてはこれに入射する直線偏光の偏光軸を90°回転させる旋光子や1/2波長板を用いればよい。この場合、偏光変換素子4の大きさは観察者20からみて遠距離表示領域1fが覆われるのに必要最低限の大きさであれば良い。偏光変換素子4が液晶表示素子1の表示面と平行に配置され、高い位置精度で組み立てられる場合には遠距離表示領域1fと同じ大きさにすれば部材面積が必要最小限となり低コスト化につながる。ただし、偏光変換素子4の大きさは合わせずれを考慮して、遠距離表示領域1fの大きさよりもやや大きくすることが現実的である。
偏光変換素子4としては配向処理された2枚の透明基板の間に液晶層を封入し、液晶の分子長軸を2枚の透明基板間で90°捩じった状態の液晶セルを用いることができる。この場合、偏光変換素子を実現する液晶セルは遠距離映像光12に対してウエーブガイドの条件を満足するように構成される。ウエーブガイドの条件は、例えば、J.Phys.D:Appl.Phys.Vol.8(1975)の1575〜1584頁のC.H.GoochとH.A.Tarryによる論文に記載されている。
ウエーブガイドの条件は、異常光モードと常光モードでは変わらないので、偏光変換素子4として使用する液晶セルの液晶表示素子側における液晶分子長軸の配向方向は、液晶表示素子1の偏光板204の直線偏光の透過軸に平行であっても垂直であってもどちらでもよい。
偏光変換素子としてはこの他に1/2波長板や、位相差フィルムの積層による捩じれ構造体を用いることができる。
1/2波長板としては、可視波長域において高い透過率を有する、一軸延伸した高分子のフィルム、例えばポリビニルアルコール,ポリカーボネート,ポリサルフォン,ポリスチレン,ポリアリレート、或いはノルボルネン系の樹脂などからなる位相差フィルムを用いることができる。この他にも雲母や水晶または分子長軸を一方向に揃えて配向した液晶層等を用いることができる。
尚、一般的には1/2波長板を構成する材質の屈折率の波長依存性(以下、波長分散)により、一種類の位相差板で可視波長の広い波長範囲に渡って1/2波長板として機能する位相差板を構成することは困難である。そこで波長分散の異なる少なくとも2種類の位相差板をその光学軸が交差するように貼り合わせることで広い波長域で1/2波長板として機能するよう構成したものを使用してもよい。或いは、波長が短くなるほど複屈折が大きくなる、いわゆる逆分散と呼ばれる性質を有する高分子フィルムを用いてもよい。位相差フィルムの積層による捩じれ構造体は、例えば1/2波長の位相差を有する位相差フィルムを複数枚その光学軸を連続的にずらしながら積層することで実現される。位相差フィルムとしては上記1/2波長板に使用する高分子フィルムを使用することができる。尚、ここで例示した偏光変換素子は光が垂直に入射する際に最も有効に機能するものである。従って、本実施例のようにハーフミラー(偏光分離素子)2及び全反射ミラー3を液晶表示素子1の表示面に対して平行に配置して、観察角度θが0°と成らない場合は考慮が必要である。
つまり、偏光変換素子として上記旋光子や一軸延伸した位相差フィルムからならる1/2波長板や捩じれ構造体を使用する場合は、図7に例示する通り、偏光変換素子4を液晶表示素子の表示面に対して、想定する観察角度θと同じ角度θだけ傾けて配置することが望ましい。ここで、図7は本発明の表示装置の一実施例を示す概略断面図である。
この場合、遠距離表示領域1fから放射される遠距離映像光12は偏光変換素子4に垂直に入射するため上記旋光子及び一軸延伸した位相差フィルムからならる1/2波長板や捩じれ構造体により実現する偏光変換素子4は最も有効に機能するようになる。さらに偏光変換素子4を液晶表示素子1の表示面に対して角度θだけ傾けて配置する場合は、偏光変換素子4を液晶表示素子1の表示面に平行に配置する場合に比べて、偏光変換素子4の必要最低限の大きさをcosθ倍だけ小さくすることができる。
尚、本発明は図1から図3に例示する通り、偏光変換素子を液晶表示素子1の表示面に対して平行に配置する場合を除外するものではない。偏光変換素子として上記旋光子及び一軸延伸した位相差フィルムからなる1/2波長板や捩じれ構造体を使用する場合であっても観察角度θが小さければ偏光変換素子は有効に機能する。
しかし、この場合は観察角度θを大きくすると偏光変換素子4の機能が低下して遠距離映像光12のハーフミラー(偏光分離素子)2での反射率が低下し、観察者20に観察される遠距離映像光の明るさが低下する。従って、この場合には光が斜めに入射しても有効に機能する偏光変換素子を用いるようにするとよい。つまり、偏光変換素子として光の入射角度θに対して有効に機能するものを用いれば良い。このような偏光変換素子は例えば1/2波長板であれば2軸異方性の位相差フィルムを用いることで実現できる。
尚、偏光変換素子4を液晶表示素子1の表示面に対して平行に配置する場合は、偏光変換素子4を液晶表示素子1の表示面上に透明な粘着材などにより接着固定すれば余分な保持部材が不要になり部品点数を減らすことができる。
全反射ミラー3は液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから放射する遠距離映像光12をハーフミラー2に向けて反射する機能を有するものである。このため、全反射ミラー3は少なくとも遠距離映像光12に対して反射率の高いミラーとすることが明るい映像を得るために重要である。
全反射ミラー3としてはガラスやプラスチックなどの光学的に等方で透明な平坦な基板に銀やアルミニウムなどの反射率の高い金属膜により反射面を形成したものや、誘電体多層膜により反射面を形成したものを用いることができる。
或いは全反射ミラー3に入射する遠距離映像光12に対応した偏光成分の光を反射する偏光反射ミラーであってもよい。偏光反射ミラーとしてはハーフミラー2と同様な偏光分離素子を用いることができる。
次に本表示装置の動作について説明する。上記構成とすることで、液晶表示素子1の近距離表示領域1nから放射される近距離映像光11はハーフミラー(偏光分離素子)2でほとんど反射されることなく透過して観察者20に観察される。一方、液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから放射する遠距離映像光12は偏光変換素子4を通過する際、偏光軸が90度回転した直線偏光となり、全反射ミラー3で反射した後、ハーフミラー(偏光分離素子)2でそのほとんどが反射して観察者20に観察される。
つまり、ハーフミラー2として偏光分離素子を用いることで近距離映像光11と遠距離映像光12は共にほとんど損失することなく観察者20に観察されるため明るい表示が得られる。この際、遠距離表示領域1fは近距離表示領域1nと比べると、遠距離表示領域1fから全反射ミラー3までの距離と全反射ミラー3からハーフミラー2までの距離の分だけ観察者20からみた距離が遠くなる。このため、観察者20からみて奥行きの異なる位置に配置した2つの2次元像が重なった状態で観察されることになる。
本発明の表示装置では特に観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象は、実際には同一平面上に配置しているため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さく、薄型の表示装置が実現できる。さらに観察対象を単一の表示素子とすることで部品点数を少なくすることができる。
尚、部品点数を減らすためには複数の観察対象は単一の液晶表示素子の表示面とすることが望ましいが、複数の観察対象を並列に配置した複数の液晶表示素子の表示面で実現するようにしても良い。この場合は、部品点数を少しでも減らすために、並列配置した複数の液晶表示素子は、それを構成する部材、例えば、バックライトや筐体、或いはバックライトを構成する光源,導光体,反射シート,光学フィルムなどの部材の一部を共通化することが望ましい。
尚、本実施例では液晶表示素子1が、表示領域分割方向と平行もしくは直交する方向に偏光軸を有する直線偏光を映像光として放射する場合を述べた。これは以下の理由による。一般に反射面に斜めに入射して反射する光は反射面に対してs偏光成分とp偏光成分とで位相差を生じる。このため、反射面に対してs偏光あるいはp偏光となる直線偏光以外の光が反射面に斜めに入射すると反射の前後でその偏光状態は変化する。
本表示装置では液晶表示素子1から放射する遠距離映像光12は全反射ミラー3に斜めに入射するが、液晶表示素子1が表示領域分割方向と平行もしくは直交する方向に偏光軸を有する直線偏光を映像光として放射するため、遠距離映像光12は全反射ミラー3に対してp偏光またはs偏光として入射する。この場合、遠距離映像光12は全反射ミラー3での反射の際、偏光状態が変化しないので、ハーフミラー(偏光分離素子)2において効率良く反射されて明るい映像を得ることができる。
一方、もしも液晶表示素子1が表示領域分割方向と平行もしくは直交する方向に偏光軸を有する直線偏光以外の偏光を映像光として放射するとすると、遠距離映像光は全反射ミラーでの反射の前後でその偏光状態が変わってしまう。このためハーフミラー(偏光分離素子)2において、効率良く映像光を反射させるためには新たに映像光の偏光状態を制御する部材を追加する必要が生じてしまう。
つまり、本実施例の表示装置のように液晶表示素子1が表示領域分割方向と平行もしくは直交する方向に偏光軸を有する直線偏光を映像光として放射するようにすることで、より明るい映像をより少ない部材で実現することができる。
尚、液晶表示素子1の表示面の形状は一般に矩形であるため、遠距離表示領域1fと近距離表示領域1nが同じ大きさの矩形であれば表示領域を有効に利用できる。ただし、本表示装置では遠距離表示領域1fと近距離表示領域1nが重なって観察されるが、観察者20からみて遠距離表示領域1fは遠くにあるため、遠距離表示領域1fと近距離表示領域1nの実際の大きさが同じである場合には観察者20には遠距離表示領域1fが近距離表示領域1nよりも小さく観察される。この状態は遠距離表示領域1fの周囲を光吸収部材により黒くするなどして不要な光が観察されないようにすれば用途によっては許容されると考えられる。
尚、観察者からみた遠距離表示領域1fと近距離表示領域1nの大きさが過不足なく同じに見えるようにするには観察者の視点を固定したうえで以下の通りとすると良い。
ここで、図2,図3に示す通り、遠距離表示領域1fの表示領域分割方向における幅をW1、これと直行する方向の幅をW3、近距離表示領域1nの表示領域分割方向における幅をW2、これと直行する方向の幅をW4とする。さらに観察者20から近距離表示領域1nの中央部までの距離をL1、観察者20からみた近距離表示領域1nから遠距離表示領域1fまでの距離をL2とする。
この場合、液晶表示素子1での実際の遠距離表示領域1fと近距離表示領域1nの大きさの比、すなわち、W1/W2及びW3/W4が数式(数3)を満足すると観察者からみて遠距離表示領域1fと近距離表示領域1nが同じ大きさに見える。
(数3)
W1/W2=W3/W4=(L1+L2)/L1=L2/L1+1 …(3)
尚、ハーフミラー2を液晶表示素子1の表示面上に密着配置する場合、ハーフミラー2の反射面は液晶表示素子1の表示面に極めて近い位置に存在する。そこで、ハーフミラー2の反射面と液晶表示素子1の表示面とが同じ平面に存在すると仮定し、ハーフミラー2の反射面から全反射ミラー3の反射面までの最短距離をH、観察角度をθとすると、L2は数式(数4)で表される。
(数4)
L2=2H/cosθ …(4)
例えば、L1=500mm,θ=35°,H=71.4mm の場合は、数式(数3)及び
(数4)からW1/W2およびW3/W4の値は約1.35 となり、遠距離表示領域は近距離表示領域に対して35%程度その幅を大きくすると、観察者からみた各表示領域の大きさは等しく見える。
尚、観察者からみた遠距離表示領域1fの大きさが近距離表示領域1nの大きさよりも大きくなると、遠近感が損なわれる場合がある。また、実際の遠距離表示領域1fの大きさを近距離表示領域1nの大きさよりも小さくすると液晶表示素子1の表示面に無駄な領域が生じてしまう。そこで、遠近感を損なうことがなく、さらに液晶表示素子1の表示面にできる不要な領域を小さくするためにW1/W2及びW3/W4は数式(数5)を満足するように設定することが望ましい。
(数5)
1≦W1/W2=W3/W4≦L2/L1+1 …(5)
尚、観察者からみて奥行きの異なる位置にある表示領域の映像を重ねて表示する場合、表示方法を工夫することで立体感のある表示が可能となる。
そのひとつの方法は奥行きの異なる位置にある表示領域に表示される映像は基本的には同一の表示対象とし、観察者の右眼と左眼とを結ぶ線上の一点からみた場合に重なるように表示するものである。この際、遠距離表示領域と近距離表示領域に表示される2次元像(映像)は観察者からみた場合の合計の輝度が表示対象の輝度と等しくなるように保った上で、観察者から遠い奥行きにあるものは遠距離表示領域の輝度を高くし、近距離表示領域の輝度は低くする。また、観察者から近い奥行きにあるものは近距離表示領域の輝度を高くし、遠距離表示領域の輝度は低くする。
このように表示対象の奥行き位置に応じた輝度調整をすることで観察者には3次元立体像が感知される。しかし、この方法は観察者の視点が変わると良好な3次元立体像が観察できなくなる。そこで、3次元立体像が良好に観察できる視点位置を観察者が容易に判別できるようにするための位置合わせの印を遠距離表示領域と近距離表示領域の両方に適宜表示する、或いは表示領域外で観察可能な領域、例えば表示領域の額縁部分に表示するようにするとよい。
位置合わせの印としては図8に例示するように遠距離表示領域もしくはその額縁部分に表示する十文字と、近距離表示領域もしくはその額縁部分であって、上記十文字が表示される位置に対応する位置に表示するL字を4つ組み合わせた図形を用いることができる。あるいは図9に例示するように遠距離表示領域もしくはその額縁部分に表示する円と、近距離表示領域もしくはその額縁部分であって、上記円が表示される位置に対応する位置に表示する上記円と同心の中空円を用いることができる。尚、位置合わせの印はこれらに限定されるものではなく、上下左右全方位に渡り位置合わせができる印であればよい。
尚、医療用や美術品の観察といった観察対象を正確に再現することが要求される用途ではなく、例えば、ゲーム機やパチンコなどの遊技機において表示装置の表現力を高める方法として奥行き感のある表示を実現する場合には以下の方法で各表示領域の映像を作成すると多少視点が変わっても奥行き感のある表示を維持することができるようになる。
(1)観察者からみて奥行きが異なる位置にある表示領域には同時に同一の表示対象を表示しない。つまり、遠くにあるもの(表示対象)は遠距離表示領域に表示し、近くにあるものは近距離表示領域に表示する。この際、遠くにあるものは小さく表示し、近くにあるものは大きく表示するとより大きな遠近感が得られる。
(2)観察者からみて異なる奥行きに渡り連続的に存在する表示対象は観察者から遠い奥行きにある部分は遠距離表示領域のみに表示し、観察者から近い奥行きにある部分は近距離表示領域のみに表示する。また、異なる奥行きの中間位置に相当する部分は各表示領域において、それ以外の部分よりも暗く表示する。この際、異なる奥行きの中間位置に相当する部分は異なる奥行きの中間に近づくに従い連続的に表示を暗くする、つまり連続的に輝度が下がるように表示することが不自然さを感じさせないために望ましい。
(3)奥行きの異なる位置にある表示対象が重なる場合、遠くにある表示対象のうち、近くにある表示対象によって遮蔽される部分は、遠距離表示領域において、近くにある表示対象によって遮蔽される領域に相当する部分の少なくとも一部を暗く表示する。この際、遮蔽される部分はその遮蔽部分の周辺部から中央部に向かい連続的に表示を暗くする、つまり連続的に輝度が下がるように表示することが不自然さを感じさせないために望ましい。さらに、各表示領域に表示する映像は奥行き知覚の心理的要因を積極的に利用するとよい。例えば、近いものははっきりと表示し、遠いものはぼんやりと表示する大気遠近法や、遠くに向かう道の幅が徐々に狭くなっていくように見えることを利用する線遠近法、あるいは、きめを構成する要素の密度が遠くにいくほど高くなることを利用するきめの勾配や、陰影をつけることで奥行き感を表現する方法を利用するとよい。
図10は液晶表示素子1の表示面における表示例を示す図である。このように近距離表示領域1nには近くに存在する表示対象(ここでは木および道)をより明るく、より大きく表示し、表示対象が遠ざかるにつれて徐々に暗く表示するようにする。また、道は遠ざかるにつれてその幅が連続的に狭くなるように表示する。
一方、遠距離表示領域1fには遠くに存在する表示対象をより明るく、より小さく表示し、表示対象が近づくにつれて徐々に暗く表示するようにする。また、遠距離表示領域
1fと近距離表示領域1nには同じ表示対象を同時に表示しないようにする。
図11は液晶表示素子1に図10に例示する映像を表示した場合に観察者に観察される映像を模擬的に示す図である。このように観察者には2つの異なる奥行きの中間に位置する対象がやや暗く表示されるが、視点が多少ずれても奥行き感のある映像が損なわれることを抑制できる。
図12から図14は第1の表示対象がまっすぐ伸びる道であり、第1の表示対象の上方であって、なおかつ遠方にある第2の表示対象が、徐々に近づいてくる場合の液晶表示素子1の表示例である。
図12に例示する通り、第2の表示対象1oはこれが遠くにある場合は遠距離表示領域1fのみに小さく表示し、近づくにつれて第2の表示対象1oをだんだん大きく表示するようにする。
また、図13に例示する通り、第2の表示対象1oがさらに近づくと、第2の表示対象1oを表示する領域を遠距離表示領域1fから近距離表示領域1nに切り替える。
このとき、移動する表示対象に対しては2つの異なる奥行きの中間に相当する位置に存在する場合に暗く表示しなくても奥行き感はあまり損なわれないようである。
ここで、視点が多少ずれても奥行き感や遠近感を損なわないために重要なのはひとつの表示対象を同時に2つの異なる奥行きに位置に相当する表示領域に表示しないことである。つまり、ひとつの表示対象を遠距離表示領域と近距離表示領域の両方に同時に表示しないことである。
また、図14に例示する通り、近距離表示領域1nに表示する第2の表示対象1oと遠距離表示領域1fに表示する第1の表示対象が重なるときには、遠くにある第1の表示対象のうち、近くにある第2の表示対象1oにより遮蔽される部分(以下、遮蔽部1sとよぶ)は表示を暗くする。この際、観察者から見た遮蔽部1sの大きさは多少視点がずれても違和感が生じないようにするために、第2の表示対象1oに遮蔽される部分の大きさよりも小さくする、或いはその遮蔽部1sの周辺部から遮蔽部1sの中央部に向かい連続的に表示を暗くする、つまり連続的に輝度を低くしていくことが望ましい。
これらの方法を用いることで本表示装置は視点が多少変化しても奥行き感のある表示を維持することができる。また、本表示装置は、観察者からみて実際に奥行きが異なる位置にある観察対象を重ねて表示するため、奥行き知覚の生理的要因である眼のピント調節,輻輳,両眼視差などにより奥行きを感知できる表示装置が実現できる。
次に本発明の表示装置の他の実施例について図15を参照して説明する。図15は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。
本実施例は(実施例1)で図1から図3を参照して説明した表示装置において、偏光変換素子の構造とその配置位置を変えてたこと以外は基本的に同じであるため同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
本実施例では偏光変換素子4bを全反射ミラー3の反射面を覆うように配置する。また、全反射ミラー3としてはガラスやプラスチックなどの平坦で、なおかつ光学的に等方な透明基板に銀やアルミニウムなどの反射率の高い金属膜を形成したものを用いる。
本発明における偏光変換素子4bは遠距離表示領域1fから放射され、ハーフミラー
(偏光分離素子)2に入射する遠距離映像光12をハーフミラー(偏光分離素子)2において高い反射率で反射する光に変換するものである。つまり、偏光変換素子4bは遠距離表示領域1fから放射する遠距離映像光12を、その偏光軸が90°回転した直線偏光に変換するものである。
このような偏光変換素子4bとしては1/4波長板を用いることができる。1/4波長板としては、可視波長域において高い透過率を有する、延伸した高分子のフィルム、例えばポリビニルアルコール,ポリカーボネート,ポリサルフォン,ポリスチレン,ポリアリレート、或いはノルボルネン系の樹脂等からなる位相差フィルムを用いることができる。
尚、一般的に1/4波長板を構成する材質の屈折率の波長依存性(波長分散)により、一種類の位相差フィルムで可視波長の広い波長範囲に渡って1/4波長板として機能する位相差フィルムを構成することは困難である。
そこで、波長分散の異なる少なくとも2種類の位相差フィルムをその光学軸が交差するように貼り合わせることで広い波長域で1/4波長板として機能するよう構成したもの、あるいは、1/4波長板として機能する位相差フィルムと1/2波長板として機能する位相差フィルムをその光学軸が交差するように貼り合わせることで広い波長域で1/4波長板として機能するよう構成したものを使用するとよい。
或いは、波長が短くなるほど複屈折が大きくなる、いわゆる逆分散と呼ばれる性質を有する高分子フィルムからなる位相差フィルムを用いてもよい。
尚、遠距離表示領域1fから放射する遠距離映像光12は偏光変換素子4bに対して観察角度θと同じ角度で入射する。このため観察角度θを大きく設定すると、偏光変換素子1bとして一軸異方性の位相差フィルムで実現する1/4波長板を用いる場合にはその機能が低下して、遠距離映像光12のハーフミラー2での反射率が低下して表示が暗くなってしまう。
従って、観察角度θを大きく設定する場合には光が斜めに入射しても有効に機能する偏光変換素子を用いるようにすることが望ましい。このような偏光変換素子は2軸異方性の位相差フィルムを用いることで実現できる。
尚、偏光変換素子4bは全反射ミラー3に直接、透明な粘着材などにより接着固定すれば余分な保持部材が不要になり部品点数を減らすことができる。
本実施例においても、(実施例1)と同様に観察対象が同一平面に配置されるため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の長さが小さく薄型の表示装置が実現できる。さらに観察対象を単一の2次元表示素子とすることで部品点数を少なくすることができる。また、遠距離映像光12と近距離映像光11はほとんど損失することなくハーフミラー(偏光分離素子)2において合成され観察者に観察されるため明るい映像を得ることができる。
次に本発明の表示装置の他の実施例について図16から図18を参照して説明する。本実施例は(実施例1)或いは(実施例2)において、偏光変換素子を無くし、液晶表示素子1の偏光板に一部変更を加えたこと以外は基本的に上記実施例と同じ構成であるため同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
図16は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。図示の通り、この表示装置では遠距離映像光12の偏光状態を変える偏光変換素子を配置しない。その代わりに、液晶表示素子1を構成する偏光板の直線偏光の透過軸を遠距離表示領域1fと近距離表示領域1nとで異ならせている。
図17はこの表示装置を構成する液晶表示素子1の概略断面図である。液晶表示素子1は液晶表示パネル200とその背面に配置したバックライト100とから構成される。液晶表示パネル200を構成する透明基板201の前面と透明基板202の背面にはそれぞれ偏光板を配置するが、ここでは近距離表示領域1n及び遠距離表示領域1fに対応する領域でそれぞれ直線偏光の透過軸が異なる偏光板を配置する。
透明基板201の前面であって遠距離表示領域1fに相当する領域には偏光板204Aを配置し、近距離表示領域1nに相当する領域には偏光板204Bを配置する。また、透明基板202の背面であって遠距離表示領域1fに相当する領域には偏光板205Aを配置し、近距離表示領域1nに相当する領域には偏光板205Bを配置する。
図18は偏光板204A,204B及び偏光板205A,205Bの直線偏光の透過軸と液晶層203の液晶分子長軸の配向方向の一例を示す図である。図示の通り、液晶層
203の配向方向203aは表示領域分割方向と平行にする。また、偏光板204Aの直線偏光の透過軸204Aaは液晶層203の配向方向203aと直交させ、偏光板204Bの直線偏光の透過軸204Baは液晶層203の配向方向203aと平行とする。また、偏光板205Aの直線偏光の透過軸205Aaは液晶層203の配向方向203aと平行とし、偏光板205Bの直線偏光の透過軸205Baは液晶層203の配向方向203aと直交させる。
上記構成とすることで遠距離表示領域1fから放射される遠距離映像光12と近距離表示領域1nから放射される近距離映像光11は互い偏光軸が直交した直線偏光となる。
この場合、近距離表示領域1nから放射する近距離映像光11はハーフミラー(偏光分離素子)2でほとんど損失することなく透過して観察者20に観察される。また、遠距離表示領域1fから放射する遠距離映像光12は全反射ミラー3に対して斜めに入射するが、遠距離映像光12は全反射ミラー3の反射面に対してs偏光となる直線偏光であるため、全反射ミラー3での反射の際、偏光状態を維持したままハーフミラー(偏光分離素子)2に至る。
このため遠距離映像光12はハーフミラー(偏光分離素子)2でほとんど損失なく反射されて観察者20に観察される。
つまり、本表示装置では偏光変換素子を備えなくても、近距離映像光11と遠距離映像光12はハーフミラー(偏光分離素子)2においてほとんど損失なく合成され、観察者
20に観察されるため明るい映像を表示することができる。
尚、全反射ミラー3に入射する遠距離映像光は全反射ミラー3の反射面に対して、s偏光またはp偏光であれば全反射ミラーでの反射の際、その偏光状態は維持される。このため、偏光板の直線偏光の透過軸は図18に例示する方向に対して全ての偏光板の透過軸を90度回転させて配置してもよい。
ただし、一般にs偏光はp偏光よりも反射率が高くしやすいのでより、図18に例示する構成にすることで反射率がより高い全反射ミラー3が実現できることになる。
尚、本実施例では液晶表示素子1の表面に偏光軸が異なる2枚の偏光板を配置するため、偏光板を高い精度で配置しなければ2枚の偏光板の間に隙間ができてしまう。もし、2枚の偏光板の間に隙間ができると、バックライト100からの光がこの隙間を通して漏れてしまい画質を劣化させる場合がある。
このため、偏光板204Aと204Bの間、或いは偏光板205Aと205Bの間に相当する位置には光漏れを防ぐための遮光部材を配置することが望ましい。
遮光部材は2枚の偏光板の間の光漏れを防ぐものであれば良い。従って、偏光板204Aと204Bの間、或いは偏光板205Aと205Bの間に、遮光性のある部材、例えば金属箔や黒色の顔料や染料を含有する樹脂フィルムを遮光部材として配置することで光漏れを防止するようにしても良い。尚、遮光部材として金属箔を用いる場合は少なくとも観察者側の表面を不要な光を反射をしないように黒色にするとよい。
或いは、図17に例示する通り、透明基板201もしくは透明基板202において、偏光板204Aと204Bの間、或いは偏光板205Aと205Bの間に相当する位置にクロムなどの金属膜や黒い顔料や染料を混入した樹脂膜を設けることで遮光部材210を実現するようにしてもよい。
本実施例においても、(実施例1)と同様に観察対象が同一平面に配置されるため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の長さが小さく薄型の表示装置が実現できる。さらに観察対象を単一の2次元表示素子とすることで部品点数を少なくすることができる。
本実施例では特に上記実施例のように偏光分離素子を設ける必要がないので部品点数をより少なくすることができる。
尚、(実施例1)から(実施例3)で説明した表示装置はいずれも液晶表示素子1の表示面に対して垂直な方向から所定の角度(観察角度θ)傾いた状態で観察するものである。このため液晶表示素子1としては、斜め方向から観察してもコントラスト比の低下が少ない液晶表示素子1を用いることが望ましい。このような液晶表示素子としては上記実施例で説明したIPS方式、或いはVA方式が望ましく、OCB方式や視野角を拡大するための位相差フィルムを備えるTN方式を用いてもよい。
また、観察者は液晶表示素子1を斜め方向から観察することになるため、遠距離表示領域1fおよび近距離表示領域1nの実際の形状が長方形の場合には、観察者には表示領域が台形にみえることになる。
表示装置の用途によっては、観察者にみえる表示領域が長方形であることが望ましい場合がある。この場合は、遠距離表示領域1fおよび近距離表示領域1nの実際の形状を観察者からみて遠い方の辺が長い台形にするなどして、観察者には長方形に見えるように補正するとよい。
また、より少ない消費電力で、より明るい表示を実現するために、液晶表示素子1を構成するバックライト100から放射する光を観察者の方向、すなわち観察角度θだけ傾いた方向へより多く放射するように指向性を持たせることが望ましい。
バックライト100から放射される光の指向性は導光体103の裏面に形成する微細な凹凸形状やレンズ形状等の光の進行方向を変える微細な構造の形状、或いは導光体103上に配置する光学フィルム105、例えばプリズムシートのプリズムの頂角を変えることで制御することができる。
次に本発明の表示装置の他の実施例について図19を参照して説明する。本実施例は
(実施例3)で説明した表示装置において、ハーフミラー2と全反射ミラー3の配置方法等を変更したものである。このため、(実施例3)で説明した表示装置と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
図19は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。本実施例の表示装置ではハーフミラー(偏光分離素子)2と全反射ミラー3を液晶表示素子1の表示面に対して45°傾けた状態で配置する。
この場合、観察者20からみて近距離表示領域1nが全てハーフミラー2で覆われるようにするには液晶表示素子1の表示領域分割方向と直交する方向(図では紙面に垂直な方向)でのハーフミラー2の幅は、同じ方向における近距離表示領域1nの幅と同じ、あるいは組み立て時の位置ずれ等を考慮して近距離表示領域1nの幅よりもやや大きくする。また、これと直交する方向におけるハーフミラー2の幅は近距離表示領域1nの表示領域分割方向における幅の√2倍、あるい組み立て時の位置ずれ等を考慮して近距離表示領域1nの表示領域分割方向における幅の√2倍よりもやや大きくする。
全反射ミラー3は遠距離表示領域1fから放射される遠距離映像光12をその領域が欠けることなくハーフミラー2に向けて反射できる大きさにする。このため、液晶表示素子1の表示領域分割方向と直交する方向(図では紙面に垂直な方向)における全反射ミラー3の幅は、同じ方向における遠距離表示領域1fの幅と同じ、あるいは組み立て時の位置ずれ等を考慮して遠距離表示領域1fの幅よりもやや大きくする。また、これと直交する方向における全反射ミラー3の幅は遠距離表示領域1fの表示領域分割方向における幅の√2倍、あるいは位置ずれ等を考慮して遠距離表示領域1fの表示領域分割方向における幅の√2倍よりもやや大きくする。
ハーフミラー2としては上記実施例と同様、偏光分離素子を用いる。偏光分離素子として例えば特許文献3に開示されている異なる複屈折性を有する高分子フィルムを複数層積層した複屈折反射型偏光フィルム、コレステリック液晶フィルムの表と裏に位相差フィルムを配置したもの、屈折率の異なる誘電体を積層した誘電体多層膜、或いは金属ワイヤーグリッドによる偏光フィルターを用いることができる。
尚、偏光分離素子として、複屈折反射型偏光フィルムや、コレステリック液晶フィルムのように、フィルム状の部材を用いる場合は以下の点に注意することが望ましい。
フィルム状の偏光分離素子はそのままでは平坦性を保つことが難しく歪みにより映像を乱す場合がある。このため、偏光分離素子としてフィルム状の素子を使用する場合は、透明な粘着剤を介して、ガラス板あるいはプラスチック板等の平坦で、なおかつ光学的に等方な透明基材に接着固定し、歪まないようにすることが望ましい。
偏光分離素子として誘電体多層膜を用いる場合は平板タイプだけでなく、プリズムタイプを用いることができる。プリズムタイプの偏光分離素子は断面形状が直角2等辺三角形である三角柱状のプリズムの斜面に誘電体多層膜による偏光分離面を形成し、別の3角柱状のプリズムを貼り合わせたものである。プリズムタイプの偏光分離素子は高価であるが、高い光学性能が得られるため、映像光の損失が極めて少なく、明るい映像を実現できる。本表示装置では上記実施例と同様に、液晶表示素子1の近距離表示領域1nから放射する近距離映像光11はハーフミラー(偏光分離素子)2でほとんど反射されることなく透過して観察者20に観察される。一方、液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから放射する遠距離映像光12は全反射ミラー3で反射した後、ハーフミラー2でそのほとんどが反射して観察者20に観察される。つまり、近距離映像光11と遠距離映像光12は共にほとんど損失することなく観察者20に観察されるため明るい表示が得られる。
また、遠距離表示領域1fは近距離表示領域1nと比べると、全反射ミラー3からハーフミラー2までの距離の分だけ観察者20からの距離が遠くなる。このため、観察者20からみて奥行きの異なる位置にある2つの表示領域の2次元像(映像)を重ねた状態で表示することができる。
この際、観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象(表示領域)は、実際には同一平面上に配置されているため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の長さが小さい、薄型の表示装置が実現できる。
尚、(実施例3)と(実施例4)を比べた場合、(実施例3)の表示装置では観察者は液晶表示素子の表示面を所定の観察角度θだけ傾いた状態で観察することになるが、(実施例4)の表示装置では液晶表示素子1の表示面を垂直方向、つまり、真正面から観察することになる。このため(実施例4)の表示装置では液晶表示素子の表示領域の形状は何ら補正しなくてもそのままの形状で観察者に観察される。また、液晶表示素子としてIPS方式やVA方式などの広視野角な方式ではなく、TN方式などの比較的視野角の狭い方式を用いてもよい。
ところで、本発明の表示装置において、表示素子の表示面を正面方向から観察する構成にするには(実施例4)で説明した表示装置のようにハーフミラーと全反射ミラーの反射面を液晶表示素子の表示面に対して傾けて配置するとよい。このとき、ハーフミラーと全反射ミラーの液晶表示素子の表示面に対する傾きの角度は45°に限定されるものではない。図20は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。この表示装置は(実施例4)で説明した表示装置において、全反射ミラー3とハーフミラー(偏光分離素子)2の配置を変更したものである。
ハーフミラー2の反射面は液晶表示素子1の表示面に対して、角度βだけ傾けて配置する。また、全反射ミラー3は観察者が近距離表示領域を観察する際に妨げとならず、その反射面がハーフミラー2の反射面に対して平行で、さらに遠距離表示領域1fから放射する遠距離映像光12をハーフミラー2に向けて反射できる位置に配置する。
この場合、ハーフミラー2の傾斜角度βが0°よりも大きければ、原理的には表示素子の表示面を正面方向から観察する表示装置を実現できる。ただし、角度βがちいさすぎる、または大きすぎる場合には表示装置の光学系の厚みの大部分を占める液晶表示素子の表示面から、ハーフミラーもしくは全反射ミラーの観察者側の端部までの距離が長くなり装置は大型化してしまう。
このため、表示素子の表示面を正面方向から観察する表示装置を実現する場合には角度βの大きさは20°〜45°とすることが望ましい。
尚、表示素子の表示面を正面方向から観察するという制限をなくせば、(実施例1)から(実施例3)で説明した表示装置のようにハーフミラーを表示素子の表示面と平行、つまり、角度βが0°となるように配置しても薄型の表示装置を実現することができる。
表示装置の光学系の厚さの大部分を占める液晶表示素子の表示面からハーフミラーもしくは全反射ミラーの観察者側の端部までの距離は、(実施例4)の表示装置のようにハーフミラーの傾き角度βが45°の場合には、遠距離表示領域の表示領域分割方向における幅以上の距離が必要となる。
これに対し、(実施例3)の表示装置では観察角度θを30°よりも大きくすれば、液晶表示素子の表示面から全反射ミラー3までの距離が遠距離表示領域の表示領域分割方向における幅よりも短くできる。
つまり、(実施例1)から(実施例3)の表示装置ようにハーフミラーと全反射ミラーを液晶表示素子の表示面と平行に配置する、即ち、ハーフミラーの傾き角度βを0°すると、観察角度θを30°以上にすればより薄型の表示装置が実現できることになる。
従って、本発明の表示装置ではハーフミラーの傾き角度βを0°〜45°の範囲から選択することが望ましい。
このように本発明の表示装置ではハーフミラーと全反射ミラーの液晶表示素子の表示面に対する傾き角度を変えることで、それぞれ特徴の異なる表示装置が実現できる。このため、ハーフミラーと全反射ミラーの液晶表示素子の表示面に対する傾き角度は、表示装置の用途に合わせ、適当な構成を選択するようにすればよい。
次に本発明の表示装置の他の実施例について図21を参照して説明する。本実施例は
(実施例1)で図1を参照して説明した表示装置において、ハーフミラー2と全反射ミラー3の配置方法などを変えたものである。このため(実施例1)と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
図21は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。本表示装置ではハーフミラー(偏光分離素子)2と全反射ミラー3を液晶表示素子1の表示面に対して45°傾けた状態で配置する。つまり、ハーフミラー(偏光分離素子)2と全反射ミラー3に関しては(実施例4)で説明した表示装置と同じである。
本実施例の表示装置が(実施例1)の表示装置と異なる特徴は観察者20に観察される遠距離映像光12は偏光変換素子4に対して垂直に入射していることである。
ここで、偏光変換素子4は遠距離表示領域1fから放射する遠距離映像光12を、その偏光軸が90°回転した直線偏光に変換するものである。偏光変換素子4としては上記と同様、配向処理された2枚の透明基板の間に液晶層を封入し、液晶の分子長軸を2枚の透明基板間で90°捩じった液晶セルを用いることができる。或いは1/2波長板として機能する位相差フィルム、または位相差フィルムの積層による捩じれ構造体を用いることができる。これらの偏光変換素子はいずれも光が垂直に入射する際に最も有効に機能するものである。本実施例の表示装置では遠距離表示領域1fから放射する遠距離映像光12は偏光変換素子4に垂直に入射するので、偏光変換素子4を通過する遠距離映像光12は高い効率で偏光軸が90度回転した直線偏光に変換される。このためハーフミラー(偏光分離素子)2に入射する遠距離映像光12は高い反射率で反射されて観察者20に向かうため、より明るい映像を得ることができる。
図22は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。この表示装置は図21を参照して説明した表示装置において、偏光変換素子4の位置を液晶表示素子1と全反射ミラー3との間から、全反射ミラー3とハーフミラー(偏光分離素子)2の間に変更したものである。
この場合は偏光変換素子4を液晶表示素子1の表示面に対して垂直に配置することで、遠距離表示領域1fから放射する遠距離映像光12は全反射ミラー3で反射した後、偏光変換素子4に垂直に入射することになる。このため偏光変換素子4を通過する遠距離映像光12は高い効率で偏光軸が90度回転した直線偏光に変換される。従って、ハーフミラー(偏光分離素子)2に入射する遠距離映像光12は高い反射率で反射され、観察者20に向かうためより明るい映像を得ることができる。
次に本発明の表示装置の他の実施例について図23を参照して説明する。本実施例は
(実施例2)で図15を参照して説明した表示装置において、ハーフミラー(偏光分離素子)2を液晶表示素子1の表示面の全面に配置し、2つの方向から観察するように構成したものである。このため、(実施例2)で説明した表示装置と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
図23は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。この表示装置は二人の観察者20A,20Bがそれぞれ異なる方向から表示装置を観察するように構成したもので、観察者20Aからみて奥行きが近い位置、つまり距離が短い位置にある表示領域が、観察者20Bに対しては奥行きが遠い位置、つまり距離が長い位置にある表示領域となるものである。このため、液晶表示素子1の2つの表示領域をここでは表示領域1A、及び表示領域1Bと呼ぶ。
ハーフミラー(偏光分離素子)2は表示領域1Aおよび表示領域1Bを完全に覆うように配置する。
表示領域1Aと表示領域1Bの形状は同じ形状とすることで、観察者20Aと観察者
20Bに同じ条件で映像が観察されるようになる。
全反射ミラー3は表示領域1Aから放射される映像光のうち、観察者20Aの方向へ向かう映像光13をハーフミラー(偏光分離素子)2の表示領域1Bの前面に相当する領域に向けて反射し、表示領域1Bから放射される映像光のうち、観察者20Bの方向へ向かう映像光15をハーフミラー(偏光分離素子)2の表示領域1Aの前面に相当する領域に向けて反射するものである。
さらに、全反射ミラー3の形状と位置は観察者20Aから観察した際には表示領域1Bを遮ることがなく、観察者20Bから観察した際には表示領域1Aを遮ることがないものとする。
偏光変換素子4bは全反射ミラー3の反射面と同じ形状とすれば良く、透明な接着剤などにより全反射ミラー3に貼り付ければよい。
例えば、表示領域1Aおよび表示領域1Bが表示領域分割方向に平行な方向の幅がW1、これと直交する方向の幅がW3の長方形であれば、全反射ミラー3及び偏光変換素子
4bは表示領域分割方向に平行な方向の幅がW1、これと直交する方向の幅がW3の長方形とすればよい。ただし、位置ずれなどを考慮して、全反射ミラー3及び偏光変換素子4の大きさは観察者20Aから観察した際には表示領域1Bを遮ることがなく、観察者20Bから観察した際には表示領域1Aを遮ることがない程度にやや大きくすることが現実的である。このとき全反射ミラー3の中心位置は表示領域1Aと表示領域1Bとの間の中心位置1cの直上部と一致させるとよい。
観察者20Aは液晶表示素子1の表示面を液晶表示素子1の表示面に垂直な方向に対し、表示領域分割方向と平行で、なおかつ表示領域1B側の方位(図では右側方向)へ、所定の角度(観察角度)θだけ傾いた方向から観察する。この場合、観察者20Bは液晶表示素子1の表示面に垂直な方向に対し、表示領域分割方向と平行で、なおかつ表示領域
1A側の方位(図では左側方向)へ、所定の角度(観察角度)θだけ傾いた方向から観察することになる。観察者20Aに対する観察角度と観察者20Bに対する観察角度は方位が異なるため、ここでは便宜上、観察者20Bに対する観察角度はマイナスの符号をつけて−θと表記する。
ここで、ハーフミラー(偏光分離素子)2の反射面と液晶表示素子1の表示面とが同じ平面に存在すると仮定し、ハーフミラー(偏光分離素子)2の反射面から全反射ミラー3の反射面までの最短距離をH、観察者20Aに対する観察角度をθ、表示領域1Aと表示領域1Bのすき間の距離をW0とすると距離Hが上記数式(数1)を満足すれば、観察者20Aは表示領域1Aの映像をハーフミラー(偏光分離素子)2を介して観察することができるようになる。また、観察者20Bは表示領域1Bの映像をハーフミラー(偏光分離素子)2を介して観察することができるようになる。
例えば、W0+W1=100mm,θ=35°とすると、H=約71.4mm となるが、実際にはハーフミラー(偏光分離素子)2の反射面と液晶表示素子1の表示面は完全に同じ平面に存在するわけではないので、この位置のずれの分だけ距離Hはやや大きめにするとよい。
本表示装置では表示領域1Bから放射する映像光のうち、観察角度θと平行な方向に放射する映像光14はハーフミラー(偏光分離素子)2でほとんど反射されることなく透過して観察者20Aに観察される。一方、表示領域1Aから放射する映像光のうち、観察角度θと平行な方向に放射する映像光13は全反射ミラー3で反射してハーフミラー(偏光分離素子)2の表示領域1Bの前面に相当する領域に向かう。
映像光13は全反射ミラー3で反射してハーフミラー(偏光分離素子)2に向かう際、偏光変換素子4bを通過する。偏光変換素子4bは液晶表示素子1から放射し、全反射ミラー3で反射してハーフミラー(偏光分離素子)2に向かう映像光を、その偏光軸が90°回転した直線偏光に変換するものである。従って、表示領域1Aから放射する映像光13は全反射ミラー3で反射して、ハーフミラー(偏光分離素子)2に向かう際、偏光変換素子4bの作用により偏光軸が90°回転した直線偏光に変換される。このため映像光13はハーフミラー(偏光変換素子)2でその大部分が反射して観察者20Aに観察される。
この際、表示領域1Aは表示領域1Bと比べると、おおよそ表示領域1Aから全反射ミラー3までの距離と全反射ミラー3からハーフミラー2までの距離の分だけ観察者20Aからの距離が遠くなる。このため、この表示装置では観察者20Aからみて奥行きの異なる位置にある2つの表示領域の2次元像(映像)を重ねた状態で表示することができる。
一方、表示領域1Aから放射する映像光のうち、観察角度―θと平行な方向に放射する映像光16はハーフミラー(偏光分離素子)2でほとんど反射されることなく透過して観察者20Bに観察される。また、表示領域1Bから放射する映像光のうち、観察角度−θと平行な方向に放射する映像光15は全反射ミラー3で反射してハーフミラー(偏光分離素子)2の表示領域1Aの前面に相当する領域に向かう。
映像光15は全反射ミラー3で反射してハーフミラー(偏光分離素子)2に向かう際、偏光変換素子4bの作用により偏光軸が90°回転した直線偏光に変換される。このためハーフミラー(偏光分離素子)2に向かう映像光15はその大部分が反射して観察者20Bに観察される。
この際、表示領域1Bは表示領域1Aと比べると、おおよそ表示領域1Bから全反射ミラー3までの距離と全反射ミラー3からハーフミラー(偏光分離素子)2までの距離の分だけ観察者20Bからの距離が遠くなる。このため、この表示装置では観察者20Bからみて奥行きの異なる位置にある2つの表示領域の2次元像(映像)を重ねた状態で表示することができる。
本表示装置では観察者20Aに対しては、表示領域1Aが距離の遠い位置に配置された観察対象となり、表示領域1Bが距離の近い位置に配置された観察対象となる。一方、観察者20Bに対しては、表示領域1Bが距離の遠い位置に配置された観察対象となり、表示領域1Aが距離の近い位置に配置された観察対象となる。
つまり、液晶表示素子の一つの表示領域の映像が、この表示領域から近い位置の観察者に対しては、奥行きが近い位置、つまり距離が短い位置にある映像となり、この表示領域から遠い位置の観察者に対しては奥行きの遠い位置、つまり距離の長い位置にある映像となる。
この表示装置は二人の異なる位置にいる観察者に対して、奥行きが異なる2つの2次元像(映像)を観察者の位置に応じた順序で重ねた状態で同時に表示することができる。このため、より臨場感の高い対戦型のゲーム機などの表示装置として好適な表示装置が実現できる。
また、この表示装置では二人の異なる位置にいる観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象は、実際には単一の表示素子の表示面である。このため、部品点数が少なく、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さい薄型の表示装置が実現できる。
尚、偏光分離素子からなるハーフミラー2を用いることで表示領域1Aおよび表示領域1Bから放射される映像光は共にほとんど損失することなく観察者20Aと観察者20Bに観察されるため明るい表示が得られる。
ここでは偏光変換素子4bを全反射ミラー3に貼り付ける場合を説明したが、偏光変換素子4bはハーフミラー(偏光分離素子)2に貼り付けても機能する。ただし、この場合は偏光変換素子を、表示領域1Aおよび表示領域1Bを覆うハーフミラー(偏光変換素子)2と同じ大きさにする必要があるため、その面積は偏光変換素子を全反射ミラーに貼り付ける場合の倍以上となってしまう。
あるいは偏光変換素子として(実施例1)で説明した1/2波長板や、旋光子を用いることができる。この場合、偏光変換素子はハーフミラー(偏光分離素子)2の表面のうち、液晶表示素子1の表示領域1A、あるいは表示領域1Bのいずれか一方の前面に相当する領域に配置すればよい。
次に本発明の表示装置の他の実施例について図24を参照して説明する。この表示装置は(実施例3)で図16を参照して説明した表示装置において、遠距離表示領域1fの前面に新たにハーフミラーを配置して、2つの異なる方向から表示装置を観察するように構成したものである。このため(実施例3)で説明した表示装置と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
図24は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。この表示装置は二人の観察者20A,20Bがそれぞれ異なる方向から表示装置を観察するように構成したもので、観察者20Aからみて奥行きが近い位置、つまり距離が短い位置にある表示領域が、観察者20Bに対しては奥行きが遠い位置、つまり距離が長い位置にある表示領域となるものである。このため、液晶表示素子1の2つの表示領域をここでは表示領域1A、及び表示領域1Bと呼ぶ。
表示領域1Aと表示領域1Bの前面にはそれぞれ偏光分離素子からなるハーフミラー
2Aとハーフミラー2Bが配置される。
図25はハーフミラー2A及びハーフミラー2Bと、液晶表示素子1を構成する偏光板の直線偏光の透過軸と、液晶層における液晶分子長軸の配向方向の一例を示す説明図である。図示の通り、液晶層203の配向方向203aは表示領域分割方向と平行とする。また、偏光板204Aの直線偏光の透過軸204Aaは液晶層203の配向方向203aと直交させ、偏光板204Bの直線偏光の透過軸204Baは液晶層203の配向方向203aと平行とする。また、偏光板205Aの直線偏光の透過軸205Aaは液晶層203の配向方向203aと平行とし、偏光板205Bの直線偏光の透過軸205Baは液晶層203の配向方向203aと直交させる。
また、ハーフミラー2Aの直線偏光の透過軸2Aaは偏光板204Aの直線偏光の透過軸204Aaと平行とし、ハーフミラー2Bの直線偏光の透過軸2Baは偏光板204Bの直線偏光の透過軸204Baと平行とする。
上記構成とすることで表示領域1Aから放射される映像光と表示領域1Bから放射される映像光は互い偏光軸が直交した直線偏光となる。また、表示領域1A及び表示領域1Bから放射される映像光はそれぞれハーフミラー2A及びハーフミラー2Bをほとんど損失することなく透過する。
全反射ミラー3や表示領域1Aと表示領域1Bの形状については(実施例6)で説明した表示装置と同じ思想を適用する。つまり、全反射ミラー3は表示領域1Aから放射する映像光のうち、観察者20Aの方向へ向けて放射する映像光13をハーフミラー2Bに向けて反射し、表示領域1Bから放射される映像光のうち、観察者20Bの方向へ向けて放射する映像光15をハーフミラー2Aに向けて反射するものである。さらに、全反射ミラー3の形状と位置は観察者20Aから観察した際には表示領域1Bを遮ることがなく、観察者20Bから観察した際には表示領域1Aを遮ることがないものとする。また、表示領域1Aと表示領域1Bの形状は同一の形状とすることで、観察者20Aと観察者20Bには同じ条件で映像が観察されるようになる。
尚、ハーフミラー2Aおよびハーフミラー2Bの形状はそれぞれ表示領域1Aと表示領域1Bを欠くことなく覆うことができる形状とする。つまり、ハーフミラー2Aおよびハーフミラー2Bの形状はそれぞれ表示領域1Aと表示領域1Bと同じ形状、或いは位置ずれなどを考慮して表示領域1A及び表示領域1Bよりもやや大きな形状とする。
ここで、(実施例6)で説明した表示装置と同様に、観察者20Aは液晶表示素子1をその表示面に垂直な方向に対して観察角度θだけ傾いた方向から観察し、観察者20Bは液晶表示素子1をその表示面に垂直な方向に対して観察角度−θだけ傾いた方向から観察する場合を想定する。
この場合、表示領域1Bから放射する映像光のうち、観察角度θと平行な方向に放射する映像光14はハーフミラー(偏光分離素子)2Bを透過して観察者20Aに観察される。一方、表示領域1Aから放射する映像光のうち、観察角度θと平行な方向に放射する映像光13はハーフミラー(偏光分離素子)2Aを透過して、全反射ミラー3で反射してハーフミラー(偏光分離素子)2Bに向かう。映像光13は全反射ミラー3での反射の際、その偏光状態が維持されるため、ハーフミラー(偏光分離素子)2Bでその大部分が反射されて観察者20Aに観察される。
この際、表示領域1Aは表示領域1Bに対して、おおよそ表示領域1Aから全反射ミラー3までの距離と全反射ミラー3からハーフミラー(偏光分離素子)2Bまでの距離の分だけ観察者20Aからの距離が遠くなる。このため、観察者20Aには奥行きの異なる位置にある2つの表示領域に表示される2次元像(映像)が重った状態で観察される。
一方、表示領域1Aから放射する映像光のうち、観察角度―θと平行な方向に放射する映像光16はハーフミラー(偏光分離素子)2Aを透過して観察者20Bに観察される。また、表示領域1Bから放射する映像光のうち、観察角度−θと平行な方向に放射する映像光15はハーフミラー(偏光分離素子)2Bを透過して、全反射ミラー3で反射してハーフミラー(偏光分離素子)2Aに向かう。映像光15は全反射ミラー3での反射の際、その偏光状態が維持されるため、ハーフミラー(偏光分離素子)2Aでその大部分が反射されて観察者20Bに観察される。
この際、表示領域1Bは表示領域1Aと比べると、おおよそ表示領域1Bから全反射ミラー3までの距離と全反射ミラー3からハーフミラー(偏光分離素子)2Aまでの距離の分だけ観察者20Bからの距離が遠くなる。このため、観察者20Aには奥行きの異なる位置にある2つの表示領域に表示される2次元像(映像)が重った状態で観察される。
つまり、この表示装置では観察者20Aに対しては、表示領域1Aが距離の遠い位置にある観察対象となり、表示領域1Bが距離の近い位置にある観察対象となる。一方、観察者20Bに対しては、表示領域1Bが距離の遠い位置にある観察対象となり、表示領域
1Aが距離の近い位置にある観察対象となる。
この表示装置は二人の異なる位置にいる観察者に対して、奥行きが異なる2つの2次元像(映像)を観察者の位置に応じた順序で重ねた状態で同時に表示することができる。このため、より臨場感の高い対戦型のゲーム機などの表示装置として好適な表示装置が実現できる。
また、この表示装置では二人の異なる位置にいる観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象は、実際には単一の表示素子の表示面である。このため、部品点数が少なく、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さい薄型の表示装置が実現できる。
尚、ハーフミラー2Aおよびハーフミラー2Bとして偏光分離素子を用いることで表示領域1Aおよび表示領域1Bから放射される映像光は共にほとんど損失することなく観察者20Aと観察者20Bに観察されるため明るい表示が得られる。
本表示装置では特に(実施例6)で説明した表示装置と異なり、偏光変換素子を必要としないため部材を減らすことができる。また、偏光変換素子の性能に起因する映像の明るさ低下の懸念がない。
次に本発明の表示装置の他の実施例について説明する。ここで説明する表示装置は(実施例3)で図16を参照して説明した表示装置において、液晶表示素子1を小型化し、液晶表示素子1の遠距離表示領域1fに相当する部分に別の表示素子を配置したものである。このため上記実施例で説明した表示装置と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
図26は本発明の表示装置の一例を示す概略斜視図である。この表示装置は観察対象として液晶表示素子1のほかにスロットマシンなどで使用される外周面に複数の絵柄を配置したリールを回転させることで絵柄を切り替える表示素子(以下、リール表示素子とよぶ)5を配置したものである。
リール表示素子5は図示しない照明装置によって照明されるリールの外周面に配置した絵柄が表示面となる。リール表示素子5の表示面は観察者20からみて奥行きが遠い位置、つまり距離が長い位置に配置する観察対象であり、液晶表示素子1の表示面は観察者
20からみて奥行きが近い位置、つまり、距離が短い位置に配置する観察対象となる。
この場合、液晶表示素子1から放射する映像光17はハーフミラー(偏光分離素子)2をほとんど損失することなく透過して観察者20に観察される。また、リール表示素子5から放射する映像光18は全反射ミラー3で反射してハーフミラー(偏光分離素子)2に至る。リール表示素子5から放射する映像光は一般に無偏光であるため、ハーフミラー
(偏光分離素子)2に入射する映像光18はその約半分がハーフミラー(偏光分離素子)2で反射して観察者20に観察される。
つまり、本表示装置ではリール表示素子5からの映像光18はハーフミラー2においてその約半分が損失するが、液晶表示素子1からの映像光17はハーフミラーとして偏光分離素子を用いることでほとんど損失することなく観察者20に観察されるため明るい映像を表示することができる。
この場合、リール表示素子5の表示面は液晶表示素子1の表示面と比べると、おおよそリール表示素子5の表示面から全反射ミラー3までの距離と全反射ミラー3からハーフミラー(偏光分離素子)2までの距離の分だけ観察者20からの距離が遠くなる。このため、観察者20には奥行きの異なる位置にある2つの表示面が重なった状態で観察される。
つまり、本表示装置では、リール表示素子5の表示面の手前に液晶表示素子1の表示面の映像が浮かんでみえることになる。
このような表示はパチンコやスロットマシンなどの遊技機において、演出効果を高めるために極めて有効である。
なお、このような表示はリール表示素子の前面に液晶表示パネルを配置することで実現することが可能である。この場合、リール表示素子の表示面からの光は液晶表示パネルを透過する必要があるが、液晶表示パネルの透過率は通常10%に満たないため、90%以上の光が損失することになる。
これに対し、本実施例の表示装置ではリール表示素子の表示面からの光はハーフミラーで約50%損失するが、液晶表示パネルを透過する必要がないのでより明るい映像を得ることができる。
さらに本発明の表示装置では観察者からみて2つの異なる奥行き(距離)にある観察対象がほぼ同一平面上に配置されるため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の長さが小さく、薄型の表示装置が実現できる。
次に本発明の表示装置の他の実施例について説明する。ここで説明する表示装置は(実施例3)で図16を参照して説明した表示装置において、液晶表示素子1を小型化し、液晶表示素子1の近距離表示領域1nに相当する部分に別の表示素子を配置したものである。このため上記実施例で説明した表示装置と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
図27は本発明の表示装置の一例を示す概略斜視図である。この表示装置は観察対象として液晶表示素子1のほかにスロットマシンなどで使用されるリール表示素子5を配置したものである。
リール表示素子5の表示面は観察者20からみて奥行きが近い位置、つまり距離が短い位置に配置する観察対象であり、液晶表示素子1の表示面は観察者20からみて奥行きが遠い位置、つまり、距離が長い位置に配置する観察対象となる。
また、リール表示素子5の観察者20側の表示面上には偏光分離素子からなるハーフミラー2を配置する。
この場合、リール表示素子5の表示面から放射する映像光17は非偏光であるため、その約50%がハーフミラー(偏光分離素子)2を透過して観察者20に観察される。また、液晶表示素子1から放射する映像光18は全反射ミラー3で反射してハーフミラー(偏光分離素子)2に至る。
液晶表示素子1から放射される映像光は直線偏光であり、ハーフミラー(偏光分離素子)2に入射する映像光18はほとんど損失することなく、その大部分が反射して観察者20に観察される。
つまり、本表示装置ではリール表示素子5からの映像光17はハーフミラー(偏光分離素子)2においてその約半分が損失するが、液晶表示素子1からの映像光18はハーフミラーとして偏光分離素子を用いることでほとんど損失することなく観察者20に観察されるため明るい映像を表示することができる。
この際、液晶表示素子1の表示面はリール表示素子5の表示面と比べると、液晶表示素子1の表示面から全反射ミラー3までの距離と全反射ミラー3からハーフミラー(偏光分離素子)2までの距離の分だけ観察者20からの距離が遠くなる。このため、観察者20には奥行きの異なる位置にある2つの表示面が重なった状態で観察される。
つまり、本表示装置では、リール表示素子5の表示面の背面に液晶表示素子1の表示面の映像がみえることになる。
このような表示はパチンコやスロットマシンなどの遊技機において、演出効果を高めるのに有効である。
次に本発明の表示装置の他の実施例について説明する。ここで説明する表示装置は(実施例4)で図19を参照して説明した表示装置において、液晶表示素子1を小型化し、液晶表示素子1の遠距離表示領域1fに相当する部分に別の表示素子を配置したものである。このため上記実施例で説明した表示装置と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
図28は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。この表示装置は観察対象として液晶表示素子1のほかにスロットマシンなどで使用される外周面に複数の絵柄を配置したリールを回転させることで絵柄を切り替える表示素子(以下、リール表示素子とよぶ)5を配置したものである。
リール表示素子5は図示しない照明装置によって照明されるリールの外周面に配置した絵柄が表示面となる。リール表示素子5の表示面は観察者20からみて奥行きが遠い位置、つまり距離が長い位置に配置する観察対象であり、液晶表示素子1の表示面は観察者
20からみて奥行きが近い位置、つまり、距離が短い位置に配置する観察対象となる。
この場合、液晶表示素子1から放射する映像光17はハーフミラー(偏光分離素子)2をほとんど損失することなく透過して観察者20に観察される。また、リール表示素子5から放射する映像光18は全反射ミラー3で反射してハーフミラー(偏光分離素子)2に至る。
リール表示素子5から放射する映像光は一般に無偏光であるため、ハーフミラー(偏光分離素子)2に入射する映像光18はその約半分がハーフミラー(偏光分離素子)2で反射して観察者20に観察される。
つまり、本表示装置ではリール表示素子5からの映像光18はハーフミラー2においてその約半分が損失するが、液晶表示素子1からの映像光17はハーフミラーとして偏光分離素子を用いることでほとんど損失することなく観察者20に観察されるため明るい映像を表示することができる。
この場合、リール表示素子5の表示面は液晶表示素子1の表示面と比べると、おおよそ全反射ミラー3からハーフミラー2までの距離の分だけ観察者20からの距離が遠くなる。このため、観察者20には奥行きの異なる位置にある2つの表示面が重なった状態で観察される。
つまり、本表示装置では、リール表示素子5の表示面の手前に液晶表示素子1の表示面の映像が浮かんでみえることになる。
このような表示はパチンコやスロットマシンなどの遊技機において、演出効果を高めるために極めて有効である。
なお、このような表示はリール表示素子の前面に液晶表示パネルを配置することで実現することが可能である。この場合、リール表示素子の表示面からの光は液晶表示パネルを透過する必要があるが、液晶表示パネルの透過率は通常10%に満たないため、90%以上の光が損失することになる。
これに対し、本実施例の表示装置ではリール表示素子の表示面からの光はハーフミラーで約50%損失するが、液晶表示パネルを透過する必要がないのでより明るい映像を得ることができる。
さらに本発明の表示装置では観察者からみて2つの異なる奥行き(距離)にある観察対象がほぼ同一平面上に配置されるため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の長さが小さく、薄型の表示装置が実現できる。
次に本発明の表示装置の他の実施例について説明する。ここで説明する表示装置は(実施例1)で図1から図3を参照して説明した表示装置において、液晶表示素子1の表示領域を3つの表示領域に分割し、新たに別のハーフミラーを配置したものである。このため上記実施例で説明した表示装置と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
図29は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。この表示装置は液晶表示素子1の表示面を3つの表示領域に分割したもので、これらの表示領域は観察者20からみて3つの奥行き(距離)が異なる位置にある観察対象に相当するものである。このため、ここでは観察者からの奥行きが最も遠い位置、つまり、観察者からみて最も距離が長い位置にある観察対象に相当する表示領域を遠距離表示領域1fと呼び、観察者からの奥行きが最も近い位置、つまり、観察者からみて最も距離が短い位置にある観察対象に相当する表示領域を近距離表示領域1nと呼び、観察者からの奥行きが中間の位置、つまり、観察者からみた距離が中間となる位置にある観察対象に相当する表示領域を中距離表示領域
1mと呼ぶ。
また、液晶表示素子1の遠距離表示領域1fの前面には偏光変換素子4を配置し、中距離表示領域1mの前面には偏光分離素子からなるハーフミラー2を配置し、近距離表示領域1nの前面にはハーフミラー6を配置する。
液晶表示素子1の3つの表示領域1f,1m,1nは観察者20からみて3つの異なる奥行き(距離)にある観察対象に相当するものである。このため本表示装置では観察者からみて奥行きが異なる位置にある観察対象と同じ数の3つの反射鏡、すなわち全反射ミラー3,ハーフミラー(偏光分離素子)2,ハーフミラー6の3つの反射鏡を備える。
全反射ミラー3は液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから放射する映像光19fをハーフミラー(偏光分離素子)2に向けて反射する機能を有するものであり、さらに中距離表示領域1mから放射する映像光19mをハーフミラー6に向けて反射する機能を有するものである。
全反射ミラー3としてはガラスやプラスチックなどからなる平坦で、光学的に等方な透明基板に銀やアルミニウムなどの反射率の高い金属膜により反射面を形成したものや、誘電体多層膜により反射面を形成したものを用いる。ここでは全反射ミラー3はこれに入射する映像光19f及び映像光19mに対して反射率が高いものを用いることが明るい映像を得るために望ましい。
全反射ミラー3は観察者20からみて近距離表示領域1nを遮らず、なおかつ遠距離表示領域1fと中距離映像表示領域1mと近距離表示領域1nとがハーフミラー6を介して重なって見える位置に配置する。
また、全反射ミラー3はその反射面の大きさが少なくとも液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから中距離映像表示領域1mまでの領域の大きさ以上の大きさであればよく、高い合わせ精度で組み立てられる場合には遠距離表示領域1fから中距離映像表示領域1mまでの領域と同じ大きさにすれば部材面積を小さくできる。ただし、全反射ミラー3の反射面の大きさは合わせずれの大きさを考慮して、遠距離表示領域1fから中距離映像表示領域1mまでの領域よりもやや大きくすることが現実的である。
本表示装置では、ハーフミラー(偏光分離素子)2は液晶表示素子1の中距離表示領域1mからの映像光19m(以下、中距離映像光19mと呼ぶ)と遠距離表示領域1fからの映像光19f(以下、遠距離映像光19fとよぶ)を合成する機能を有するものである。また、ハーフミラー6は中距離映像光19m及び遠距離映像光19fを、近距離表示領域1nからの映像光19n(以下、近距離映像光19nとよぶ)と合成する機能を有するものである。
液晶表示素子1は映像光として直線偏光を放射することから、ハーフミラー(偏光分離素子)2は液晶表示素子1から放射する直線偏光は透過し、これと偏光軸が直交する直線偏光は反射する偏光分離素子を用いることが明るい映像を得るために望ましい。
一方、ハーフミラー6としては、異なる2方向から入射する光をその偏光状態によらず透過、あるいは反射することで一方向に合成する機能を有するものを用いる。このようなハーフミラーとしてはガラスやプラスチックなどの透明で平坦な基板に銀やアルミニウムなどの反射率の高い金属薄膜により、入射する光の一部が透過し、一部が反射するような反射面を形成したものや、誘電体多層膜によって入射する光の半分程度が透過し、半分程度が反射する反射面を形成したものを用いることができる。
遠距離表示領域1fの前面には偏光変換素子4を配置する。偏光変換素子は遠距離表示領域1fから放射される映像光19fを、その偏光軸が90°回転した直線偏光に変換するものである。つまり、偏光変換素子4としてはこれに入射する光の直線偏光の偏光軸を90°回転させる旋光子や1/2波長板を用いればよい。
この場合、偏光変換素子4の大きさは観察者20からみて遠距離表示領域1fが覆われるのに必要最低限の大きさであれば良い。偏光変換素子4が液晶表示素子1の表示面と平行に配置され、高い位置精度で組み立てられる場合には遠距離表示領域1fと同じ大きさにすれば部材面積が必要最小限となり低コスト化につながる。ただし、偏光変換素子4の大きさは合わせずれを考慮して、遠距離表示領域1fの大きさよりもやや大きくすることが現実的である。
偏光変換素子4としては上記実施例と同様、配向処理された2枚の透明基板の間に液晶層を封入し、液晶の分子長軸を2枚の透明基板間で90°捩じった液晶セルや位相差フィルムからなる1/2波長板や、位相差フィルムを積層することで実現する捩じれ構造体を用いることができる。尚、これらの偏光変換素子は光が垂直に入射する際に最も有効に機能するものである。従って、偏光変換素子4は遠距離映像光19fが垂直に入射するように液晶表示素子1の表示面に対して傾けて配置するようにしてもよい。
本表示装置では液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから放射する映像光19fは偏光変換素子4を通過する際、偏光軸が90度回転した直線偏光となり、全反射ミラー3で反射した後、ハーフミラー(偏光分離素子)2でほとんど損失することなく反射して、再び全反射ミラー3に向かう。
また、中距離表示領域1mから放射する映像光19mはハーフミラー(偏光分離素子)2でほとんど反射することなく透過して全反射ミラー3へ向かう。
つまり、遠距離表示領域1fの前面に偏光変換素子4を配置し、ハーフミラー2として偏光分離素子を用いることで遠距離映像光19fと中距離映像光19mは共にほとんど損失することなく合成されて全反射ミラー3へ向かう。
全反射ミラー3へ向かった遠距離映像光19fと中距離映像光19mは全反射ミラー3で反射して、ハーフミラー6へ向かい、さらにハーフミラー6でその一部が反射して観察者20に観察される。
一方、近距離表示領域1nから放射する映像光19nはその一部がハーフミラー6を透過して観察者20に観察される。
この際、中距離表示領域1mは近距離表示領域1nと比べると、おおよそ中距離表示領域1から全反射ミラー3までの距離と全反射ミラー3からハーフミラー6までの距離の分だけ観察者20からみた距離が遠くなる。また、遠距離表示領域1fは中距離表示領域
1mと比べると、おおよそ遠距離表示領域1fから全反射ミラー3までの距離と全反射ミラー3からハーフミラー(偏光分離素子)2までの距離の分だけ観察者20からみた距離が遠くなる。
このため、観察者20からみて奥行きの異なる3つの位置にある表示領域に表示される2次元像(映像)が重なった状態で観察される。つまり、本表示装置は観察者からみて奥行きが異なる位置にある3つの観察対象を重ねた状態で表示することができる。従って、観察者により深い奥行き感を感知させることができる表示装置を実現できる。
また、本表示装置は観察者からみて奥行きの異なる位置にある複数の観察対象が、実際には同一平面上に配置しているため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さく、薄型の表示装置が実現できる。
特に本実施例では3つの観察対象を単一の表示素子の表示面で実現しているので部品点数を少なくすることができる。
また、ハーフミラー2として偏光分離素子を用いることで遠距離映像光19fと中距離映像光19mはほとんど損失なく合成されるためハーフミラーに偏光分離素子を用いない場合に比べて、映像光の損失が少なく、より明るい表示装置を実現することができる。
尚、本発明の表示装置は奥行きの異なる位置にある観察対象が4つ以上であってもよい。この場合、液晶表示素子1の表示領域を4つ以上に分割し、観察対象、つまり分割した表示領域と同じ数の反射鏡を配置する。この際、反射鏡の1つは全反射ミラーとし、液晶表示素子の前面であって、その表示面から一定の距離だけ離れた位置に表示面と平行に配置する。
また、残りの反射鏡はハーフミラーとし、観察者からみて最も奥行きの遠い位置、つまり、観察者からみて最も距離が長い位置に配置する観察対象に相当する表示領域を除く表示領域の前面に表示面と平行となるように配置する。
より明るい映像を得たい場合には、観察者からみて最も距離が長い位置に配置する観察対象に相当する表示領域とは別の表示領域の前面に配置するハーフミラーのひとつを偏光分離素子とする。
偏光分離素子は液晶表示素子から放射する直線偏光は反射し、これと偏光軸が直交する直線偏光は透過するものとし、この偏光分離素子が前面に配置される表示領域とこの偏光分離素子の間には偏光変換素子を配置する。
この場合、偏光分離素子が前面に配置された表示領域から放射する映像光と、この表示領域よりも観察者からみて奥行きが遠い位置にある観察対象に相当する表示領域からの映像光は偏光分離素子でほとんど損失することなく合成される。このため、ハーフミラーに偏光分離素子を用いない場合に比べて、映像光の損失が少なく、より明るい表示装置を実現することができる。
この他の構成でより明るい映像を得るには観察者からみて最も奥行きの遠い位置、つまり、観察者からみて最も距離が長い位置にある観察対象に相当する表示領域の前面に偏光変換素子を配置する。さらに、観察者からみて2番目に奥行きの遠い位置、つまり、観察者からみて2番目に距離が長い位置にある観察対象に相当する表示領域の前面に配置するハーフミラーを偏光分離素子とする。この偏光分離素子は液晶表示素子から放射する直線偏光は透過し、これと偏光軸が直交する直線偏光は反射するものとする。
この場合、観察者からみて最も奥行きの遠い位置にある観察対象に相当する表示領域から放射される映像光と、観察者からみて2番目に奥行きの遠い位置にある観察対象に相当する表示領域から放射される映像光は共に偏光分離素子においてほとんど損失することなく合成される。このため、ハーフミラーに偏光分離素子を用いない場合に比べて、映像光の損失が少なく、より明るい表示装置を実現することができる。
尚、液晶表示素子の各表示領域に配置するハーフミラーは、ハーフミラーとして偏光分離素子を用いないものに関しては隣り合う表示領域の前面に配置するハーフミラーどうしを一体化してもよい。この場合、ハーフミラー一つの面積は大きくなるが数は少なくなる。つまり、本発明の表示装置では観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象と同じ数の反射鏡を配置するが、複数のハーフミラーを一体化することで見かけ上、反射鏡の数は減らすことができる。このため、反射鏡の数は部品点数を少なくするという観点からは観察対象の数と同じ数以下で、なおかつ2枚以上とすることが現実的である。
次に本発明の表示装置の他の実施例について説明する。ここで説明する表示装置は(実施例5)で図21を参照して説明した表示装置において、液晶表示素子1の表示領域を3つの表示領域に分割し、新たに別のハーフミラーを配置したものである。このため上記実施例で説明した表示装置と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
図30は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。この表示装置は液晶表示素子1の表示面を便宜上3つの表示領域に分割したもので、これらの表示領域は観察者20からみて奥行き(距離)の異なる3つの位置にある観察対象に相当するものである。このため、ここでは観察者からの奥行きが最も遠い位置、つまり、観察者からみて最も距離が長い位置にある観察対象に相当する表示領域を遠距離表示領域1fと呼び、観察者からの奥行きが最も近い位置、つまり、観察者からみて最も距離が短い位置にある観察対象に相当する表示領域を近距離表示領域1nと呼び、観察者からの奥行きが中間の位置、つまり、観察者からみた距離が中間となる位置にある観察対象に相当する表示領域を中距離表示領域1mと呼ぶ。
液晶表示素子1の遠距離表示領域1fの前面には全反射ミラー3を液晶表示素子1の表示面に対して45°傾けた状態で配置する。また、中距離表示領域1mの前面にはハーフミラー(偏光分離素子)2を、近距離表示領域1nの前面にはハーフミラー6を液晶表示素子1の表示面に対して45°傾けた状態で配置する。さらに、液晶表示素子1の遠距離表示領域1fの前面にはこれを覆うように偏光変換素子4を配置する。
液晶表示素子1の3つの表示領域1f,1m,1nは観察者20からみて奥行き(距離)の異なる3つの位置にある観察対象に相当するものである。このため本表示装置では奥行きの異なる観察対象と同数の3つの反射鏡、すなわち全反射ミラー3,ハーフミラー(偏光分離素子)2,ハーフミラー6の3つの反射鏡を備える。
全反射ミラー3は液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから放射する映像光19fをハーフミラー(偏光分離素子)2に向けて反射する機能を有するものである。全反射ミラー3としてはガラスやプラスチックなどの平坦で光学的に等方な透明基板に銀やアルミニウムなどの反射率の高い金属膜により反射面を形成したものや、誘電体多層膜により反射面を形成したものを用いる。ここでは全反射ミラー3はこれに入射する映像光19fに対して反射率が高いものを用いることが明るい映像を得るために望ましい。
ハーフミラー2は液晶表示素子1の中距離表示領域1mからの映像光19m(以下、中距離映像光19mと呼ぶ)と遠距離表示領域1fからの映像光19f(以下、遠距離映像光19fとよぶ)を合成する機能を有するものである。また、ハーフミラー6は中距離映像光19m及び遠距離映像光19fを、近距離表示領域1nからの映像光19n(以下、近距離映像光19nとよぶ)と合成する機能を有するものである。
液晶表示素子1は映像光として直線偏光を放射する。ここでは液晶表示素子1の遠距離表示領域1fの前面にこれを覆うように偏光変換素子4を配置する。また、ハーフミラー2としては液晶表示素子1から放射する直線偏光は反射し、これと偏光軸が直交する直線偏光は透過する偏光分離素子を用いる。
ハーフミラー6としては、異なる2方向から入射する光をその偏光状態によらず透過、あるいは反射することで一方向に合成する機能を有するものを用いる。このようなハーフミラーとしてはガラスやプラスチックなどの透明で平坦な基板に銀やアルミニウムなどの反射率の高い金属薄膜によって入射する光の一部が透過し、一部が反射するような反射面を形成したものや、誘電体多層膜によって入射する光の半分程度が透過し、半分程度が反射する反射面を形成したものを用いることができる。
偏光変換素子4は液晶表示素子1の表示面から放射される映像光をその偏光軸が90°回転した直線偏光に変換するものである。
偏光変換素子4としては配向処理された2枚の透明基板の間に液晶層を封入し、液晶の分子長軸を2枚の透明基板間で90°捩じった液晶セルや位相差フィルムからなる1/2波長板や、位相差フィルムを積層することで実現する捩じれ構造体を用いることができる。尚、これらの偏光変換素子は光が垂直に入射する際に最も有効に機能するものである。このため、偏光変換素子4は液晶表示素子1の表示面に対して平行に配置して、液晶表示素子1から放射する遠距離映像光19fが垂直に入射するようにする。
偏光変換素子4の大きさは遠距離表示領域1fが覆われるのに必要最低限の大きさであれば良く、高い位置精度で組み立てられる場合には遠距離表示領域1fと同じ大きさにすれば部材面積が必要最小限となる。ただし、偏光変換素子の大きさは合わせずれを考慮して、遠距離表示領域1fの大きさよりもやや大きくすることが現実的である。
本実施例の表示装置では液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから放射する遠距離映像光19fは偏光変換素子4を通過する際、偏光軸が90度回転した直線偏光となり、全反射ミラー3で反射した後、ハーフミラー(偏光分離素子)2でほとんど反射することなく大部分が透過して、ハーフミラー6に向かう。
また、中距離表示領域1mから放射する中距離映像光19mはハーフミラー(偏光分離素子)2をほとんど透過することなく、その大部分が反射してハーフミラー6へ向かう。
つまり、遠距離表示領域1fの前面に偏光変換素子を配置し、ハーフミラー2として偏光分離素子を用いることで遠距離映像光19fと中距離映像光19mは共にほとんど損失することなく合成されてハーフミラー6へ向かう。
ハーフミラー6へ向かった遠距離映像光19fと中距離映像光19mはハーフミラー6でその一部が反射して観察者20に観察される。
一方、近距離表示領域1nから放射する近距離映像光19nはその一部がハーフミラー6を透過して観察者20に観察される。
この際、中距離表示領域1mは近距離表示領域1nと比べると、ハーフミラー(偏光分離素子)2からハーフミラー6までの距離の分だけ観察者20からみた距離が遠くなる。また、遠距離表示領域1fは中距離表示領域1mと比べると、全反射ミラー3からハーフミラー(偏光分離素子)2までの距離の分だけ観察者20からみた距離が遠くなる。
このため、観察者20からみて奥行きの異なる3つの位置にある表示領域に表示される2次元像(映像)が重なった状態で観察される。つまり、本表示装置は観察者からみて奥行きが異なる位置にある3つの観察対象を重ねた状態で表示することができる。従って、観察者により深い奥行き感を感知させることができる表示装置を実現できる。
尚、本実施例の表示装置では特に液晶表示素子の表示面を垂直方向から、つまり正面方向から観察できる。このため観察者は液晶表示素子の表示面に表示される映像をそのままの形状で観察することができる。
また、本表示装置は観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象は、実際には同一平面上に配置しているため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さく、薄型の表示装置が実現できる。
特に本実施例では3つの観察対象を単一の表示素子の表示面で実現しているので部品点数を少なくすることができる。
また、ハーフミラー2として偏光分離素子を用いることで遠距離映像光19fと中距離映像光19mはほとんど損失なく合成されるためハーフミラーに偏光分離素子を用いない場合に比べて、映像光の損失が少なく、より明るい表示装置を実現することができる。
尚、もしも、液晶表示素子1の中距離表示領域1mの前面にこれを覆うように偏光変換素子4を配置する場合には、ハーフミラー2としては液晶表示素子1から放射する直線偏光は透過し、これと偏光軸が直交する直線偏光は反射する偏光分離素子を用いることが明るい映像を得るために望ましいことは本発明のこれまでの説明から明らかだろう。
尚、本発明の表示装置ではハーフミラー等の反射鏡を液晶表示素子の表示面に対して傾けて配置する場合にも、観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象を4つ以上としてもよい。
ここでは以下、液晶表示素子1の表示領域を4つ以上に分割し、表示領域の分割数と同じ数の反射鏡を各表示領域の前面に液晶表示素子の表示面に対して45°傾けた状態で配置する場合について説明する。
この場合、反射鏡は観察者からみて最も奥行きの遠い位置、つまり、観察者からみて最も距離が長い位置にある観察対象に相当する表示領域の前面に配置するものを除きハーフミラーとする。また、観察者からみて最も奥行きの遠い位置にある観察対象に相当する表示領域の前面に配置する反射鏡は全反射ミラーもしくは少なくともこれに入射する映像光の反射率が高いミラーとする。
より明るい映像を得たい場合には、観察者からみて最も距離が長い位置にある観察対象に相当する表示領域とは別の表示領域の前面に配置するハーフミラーのひとつを偏光分離素子とする。
偏光分離素子は液晶表示素子から放射する直線偏光は透過し、これと偏光軸が直交する直線偏光は反射するものとし、この偏光分離素子が前面に配置される表示領域とこの偏光分離素子の間に偏光変換素子を配置する。
この場合、偏光分離素子が前面に配置された表示領域からの映像光と、この表示領域よりも観察者からみた距離が長い位置にある観察対象に相当する表示領域からの映像光は偏光分離素子ではほとんど損失することなく合成される。このため、ハーフミラーに偏光分離素子を用いない場合に比べて、映像光の損失が少なく、より明るい表示装置を実現することができる。
この他の構成でより明るい映像を得るには、観察者からみて最も奥行きの遠い位置、つまり、観察者からみて最も距離が長い位置にある観察対象に相当する表示領域の前面に偏光変換素子を配置する。さらに、観察者からみて2番目に奥行きの遠い位置、つまり、観察者からみて2番目に距離が長い位置にある観察対象に相当する表示領域の前面に配置するハーフミラーを液晶表示素子から放射する直線偏光は反射し、これと偏光軸が直交する直線偏光は透過する偏光分離素子とする。
この場合、観察者からみて最も奥行きの遠い位置にある観察対象に相当する表示領域から放射される映像光と、観察者からみて2番目に奥行きの遠い位置にある観察対象に相当する表示領域から放射される映像光は共にほとんど損失することなく合成される。このため、ハーフミラーに偏光分離素子を用いない場合に比べて、映像光の損失が少なく、より明るい表示装置を実現することができる。
次に本発明の表示装置を備える機器の実施例について図面を参照して説明する。ここでは以下、代表的な遊技機であるパチンコ遊技機を例にあげて説明する。
図31は本発明の表示装置を備えるパチンコ遊戯機の概略正面図である。このパチンコ遊技機300は筐体に額縁状の前面枠370が開閉可能に取り付けられており、前面枠
370の開口部には板状の遊戯板320が取り付けられている。また、前面枠370の前面には遊戯板320の前面を覆うように透明なガラス板や樹脂板で構成される透明板360が開閉可能に取り付けられる。
前面枠370の下方には遊戯用の球(以下、パチンコ玉とよぶ)を受ける受け皿340や、パチンコ玉の発射操作を制御する操作ハンドル350などが取り付けられている。
遊戯板320の前面にはパチンコ玉の入賞口330や、ガイドレール,釘などが取り付けられる。また、遊戯板320はパチンコ玉が入賞口に入った場合などに変動表示が観察できる表示部310を備える。
次に本発明の主体である表示部310およびその近傍の構成について説明する。図32は本発明の表示装置を備える遊戯機の表示部310およびその近傍の概略断面図である。
このパチンコ遊技機は遊戯板320に対して(実施例1)で説明した表示装置を適用したものであり、上記実施例と同じ部分については同じ符号を付け、詳細な説明は省略する。遊戯板320は表示部310に対応する位置に開口部311を有する。遊戯板320の背面側であって、開口部311を通して観察できる位置にはハーフミラー2と偏光変換素子4を備える液晶表示素子1を配置する。また、開口部311よりも上側の遊戯板320の背面には全反射ミラー3を備える。
観察者20は開口部311を通して、液晶表示素子1からの放射する映像光を観察することになる。このため、開口部311の大きさと近距離表示領域1nの大きさはほぼ同じ大きさとし、観察者20が開口部311を介して、液晶表示素子1の近距離表示領域1nを観察できるように構成する。
また、遊戯板320の背面側であって、開口部311を通して観察者が観察できる部分には少なくともその表面を黒色化した遮光部材321を適宜配置することが外部からの光によって、表示に悪影響がでないようにするために望ましい。
この場合、観察者20は表示部310をやや下方から見上げるように観察することになるため、表示部310、つまり、開口部311は遊戯板の上の方に設けることが望ましい。また、必要に応じて遊戯板320の開口部311には透明なガラス板や樹脂板からなる保護板を備えてもよい。
本遊技機では表示部310に観察者20からみて奥行きの異なる位置にある2つの2次元像(映像)を重ねた映像を表示できる。つまり、奥行き感がある映像や、立体感のある映像など、通常の2次元映像では表現できない、極めて表現力の高い映像を表示することができる。
このため本遊技機では他の遊技機に対して差別化された斬新な演出ができる遊技機を実現できる。
また、本遊技機では観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象は、実際には単一の表示素子の表示面であるため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さい薄型の遊技機を実現できる。
次に本発明の表示装置を備える機器の他の実施例について図面を参照して説明する。ここで説明する機器は(実施例13)で図31を参照して説明したパチンコ遊戯機において、遊技機に備える表示装置の構成を変えたものである。このため、上記実施例と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。また、ここでは特に本発明の主体である表示部310およびその近傍の構成について説明する。
図33は本発明の表示装置を備える遊戯機の表示部310およびその近傍の概略断面図である。
このパチンコ遊技機は遊戯板320に対して(実施例8)で説明した表示装置を適用したものであり、上記実施例と同じ部分については同じ符号を付け、詳細な説明は省略する。遊戯板320は表示部310に対応する位置に開口部311を有する。遊戯板320の背面側であって、開口部311を通して観察できる位置にはハーフミラー2を備える液晶表示素子1を配置する。また、開口部311よりも上側の遊戯板320の背面には全反射ミラー3を備える。
観察者20は開口部311を通して、リール表示素子5及び液晶表示素子1から放射する映像光を観察することになる。このため、開口部311の大きさと液晶表示素子1の表示面の大きさはほぼ同じ大きさとし、観察者20が開口部311を介して、液晶表示素子1の表示面を直接、観察できるように構成する。
また、遊戯板320の背面側であって、開口部311を通して観察者が観察できる部分には少なくともその表面を黒色化した遮光部材321を適宜配置することが外部からの光によって、表示に悪影響がでないようにするために望ましい。
この場合、観察者20は表示部310をやや下方から見上げるように観察することになるため、表示部310、つまり、開口部311は遊戯板の上の方に設けることが望ましい。また、必要に応じて遊戯板320の開口部311には透明なガラス板や樹脂板からなる保護板を備えてもよい。
本遊技機では表示部310に観察者20からみて奥行きの異なる位置にある2つの2次元像を重ねた映像を表示できる。つまり、観察者20にはリール表示素子5の絵柄の手前に液晶表示素子1の映像が浮かんでみえることになる。このような映像表示は遊技機において、演出効果を高めるために極めて有効である。
このため本遊技機では他の遊技機に対して差別化された斬新な演出ができる遊技機を実現できる。
また、本遊技機では観察者からみて奥行き(距離)の異なる2つの位置にある観察対象は実際には同一平面に配置しているため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の長さが小さく、薄型の表示装置が実現できる。
次に本発明の表示装置を備える機器の他の実施例について図面を参照して説明する。ここで説明する機器は(実施例13)で図31を参照して説明したパチンコ遊戯機において、遊技機に備える表示装置の構成を変えたものである。このため、上記実施例と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。また、ここでは特に本発明の主体である表示部310およびその近傍の構成について説明する。
図34は本発明の表示装置を備える遊戯機の表示部310およびその近傍の概略断面図である。このパチンコ遊技機は遊戯板320に対して(実施例5)で図21を参照して説明した表示装置を適用したものであり、上記実施例と同じ部分については同じ符号を付け、詳細な説明は省略する。
遊戯板320は表示部310に対応する位置に開口部311を有する。遊戯板320の背面側であって、開口部311を通して観察できる位置には遊戯板320に対して45°傾けて配置されたハーフミラー2と、液晶表示素子1を配置する。また、開口部311よりも上側の遊戯板320の背面側にはその反射面がハーフミラー2と平行になるように配置した全反射ミラー3を備える。
観察者20は開口部311を通して、液晶表示素子1から放射する映像光を観察することになる。このため、開口部311の大きさと液晶表示素子1の近距離表示領域1nの大きさはほぼ同じ大きさとし、観察者20が開口部311を介して、液晶表示素子1の近距離表示領域1nを直接、観察できるように構成する。
また、遊戯板320の背面側であって、開口部311を通して観察者が観察できる部分には少なくともその表面を黒色化した遮光部材321を適宜配置することが外部からの光によって、表示に悪影響がでないようにするために望ましい。
この場合、観察者20は表示部310を垂直方向から、つまり、真正面から観察することになるので、表示部310、つまり、遊戯板の開口部311は遊戯板320の中央部に設けることが望ましい。また、必要に応じて遊戯板320の開口部311には透明なガラス板や樹脂板からなる保護板を備えてもよい。
本遊技機では表示部310に観察者20からみて奥行きの異なる位置にある2つの2次元像(映像)を重ねた映像を表示できる。つまり、奥行き感がある映像や、立体感のある映像など、通常の2次元映像では表現できない、極めて表現力の高い映像を表示することができる。
このため本遊技機では他の遊技機に対して差別化された斬新な演出ができる遊技機を実現できる。
また、本遊技機では観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象は、実際には単一の表示素子の表示面であるため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さい薄型の遊技機を実現できる。
次に本発明の表示装置を備える機器の他の実施例について図面を参照して説明する。ここで説明する機器は(実施例13)で図31を参照して説明した遊戯機において、遊技機に備える表示装置の構成を変えたものであるため、上記実施例と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。また、ここでは特に本発明の主体である表示部310およびその近傍の構成について説明する。
図35は本発明の表示装置を備える遊戯機の表示部310およびその近傍の概略断面図である。
このパチンコ遊技機は遊戯板320に対して(実施例10)で図28を参照して説明した表示装置を適用したものであり、上記実施例と同じ部分に関しては同じ符号を付け、詳細な説明は省略する。
遊戯板320は表示部310に対応する位置に開口部311を有する。遊戯板320の背面側であって、開口部311を通して観察できる位置には遊戯板320に対して45°傾けて配置するハーフミラー2を備え、さらにその奥に液晶表示素子1を配置する。また、開口部311よりも上側の遊戯板320の背面側にはその反射面がハーフミラー2と平行になるように全反射ミラー3を備え、さらにその奥にその表示面が液晶表示素子1の表示面と略平行となる位置にリール表示素子5を配置する。
観察者20は開口部311を通して、リール表示素子5及び液晶表示素子1から放射する映像光を観察することになる。このため、開口部311の大きさと液晶表示素子1の表示領域の大きさはほぼ同じ大きさとし、観察者20が開口部311を介して、液晶表示素子1の表示面を直接、観察できるように構成する。
また、遊戯板320の背面側であって、開口部311を通して観察者が観察できる部分には少なくともその表面を黒色化した遮光部材321を適宜配置することが外部からの光によって、表示に悪影響がでないようにするために望ましい。
特に本実施例ではリール表示素子5からの光の一部はハーフミラー2を透過する為、このハーフミラー2を透過した光が迷光となって画質劣化の原因にならないように遮光部材によって吸収するようにすると良い。
この場合、観察者20は表示部310を垂直方向から、つまり、真正面から観察することになるので、表示部310、つまり、開口部311は遊戯板320の中央部に設けることが望ましい。また、必要に応じて遊戯板320の開口部311には透明なガラス板や樹脂板からなる保護板を備えてもよい。
本遊技機では表示部310に、リール表示素子5の表示面と、その手前に浮かんでみえる液晶表示素子1の映像が観察できる。このような表示はパチンコやスロットマシンなどの遊技機において、演出効果を高めるために極めて有効である。
このため本遊技機では他の遊技機に対して差別化された斬新な演出ができる遊技機を実現できる。
また、本遊技機では観察者からみて奥行き(距離)の異なる位置にある2つの観察対象は、実際には略同一平面上に配置しているため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の長さが小さく、薄型の遊技機が実現できる。
次に本発明の表示装置を備える機器の他の実施例について図面を参照して説明する。ここでは以下、代表的な遊技機であるパチンコ遊技機を例にあげて説明する。
図36は本発明の表示装置を備えるパチンコ遊戯機の概略正面図である。このパチンコ遊技機300は筐体に額縁状の前面枠370が開閉可能に取り付けられており、前面枠
370の開口部には板状の遊戯板320が取り付けられている。また、前面枠370の前面には遊戯板320の前面を覆うように透明なガラス板や樹脂板で構成される透明板360が開閉可能に取り付けられる。この際、透明板360と遊戯板320の間には遊戯板320の上に取り付けられる構造物が透明板360と接触しないように一定の間隔が設けられる。
また、前面枠370の下方にはパチンコ玉を受ける受け皿340や、パチンコ玉の発射操作を制御する操作ハンドル350などが取り付けられている。
遊戯板320の前面にはパチンコ玉の入賞口330や、ガイドレール,釘などが取り付けられる。また、遊戯板320はパチンコ玉が入賞口に入った場合などに変動表示が観察できる表示部310を備える。また、表示部310の上部に相当する位置には、遮光手段365が配置され、その表面側には必要に応じて装飾絵柄やロゴなどが印字される。
次に本発明の主体である表示部310およびその近傍の構成について説明する。図37は本発明の表示装置を備える遊戯機の表示部310およびその近傍の概略断面図である。
このパチンコ遊技機は遊戯板320に対して(実施例1)で説明した表示装置を適用したものであり、上記実施例と同じ部分に関しては同じ符号を付け、詳細な説明は省略する。この遊技機は遊戯板320に液晶表示素子1の表示面と同じ、もしくはそれよりもやや大きな開口部311を有し、ハーフミラー2と偏光変換素子4を備える液晶表示素子1をその開口部311、或いはそれよりもやや奥に配置する。透明板360の背面には、液晶表示素子1から所定の距離、つまり本発明の表示装置を実現できる距離だけ離れた位置に全反射ミラー3を備える。
また、透明板360には観察者20が液晶表示素子1の近距離表示領域1nを観察するのに妨げとならず、なおかつ、観察者20から全反射ミラー3や遠距離表示領域1fを見えないようにする位置に遮光手段365を備える。
遮光手段365は観察者から見て透明板360の表側、もしくは裏側、あるいは透明板の内部に配置すれば良い。遮光手段365は顔料や染料を含む樹脂板や金属板、あるいは、遮光性の塗料を透明板360に塗布することで実現すれば良い。この際、遊技機のデザインを損なわないようにするために遮光手段365の観察者側の面には装飾絵柄やロゴなどを配置するとよい。
観察者20は遮光手段365より下の部分で液晶表示素子1からの放射する映像光を観察することになる。このため、遮光手段365の下の部分が表示部310に相当することになる。
この場合、観察者20は表示部310をやや下方から見上げるように観察することになるため、表示部310、つまり、開口部311は遊戯板320の上の方に設けることが望ましい。また、必要に応じて遊戯板320の開口部311には透明なガラス板や樹脂板からなる保護板を備えてもよい。保護板を備える場合は、保護板での光の反射で表示部310から観察される映像が悪影響を受けないために、表面反射を抑える反射防止処理を施すことが望ましい。
本遊技機では表示部310に観察者20からみて奥行きの異なる位置にある2つの2次元像を重ねた映像を表示できる。つまり、奥行き感がある映像や、立体感のある映像など、通常の2次元映像では表現できない、極めて表現力の高い映像を表示することができる。このような表示は遊技機の演出効果を高めるのに極めて有効である。
尚、本実施例ではパチンコ玉が全反射ミラー3と液晶表示素子1の間を通過できるように構成することができる。この場合、全反射ミラー3と液晶表示素子1の間を通過するパチンコ玉は表示部310において観察されることになる。例えば、パチンコ玉が液晶表示素子1の遠距離表示領域1fの前面から近距離表示領域1nの前面に移動すると、観察者には表示部310において、パチンコ玉が遠くから近くに移動するように見える。このため、本遊技機では従来の遊技機ではできなかった斬新な演出ができる遊技機を実現できる。また、本遊技機では観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象が、実際には単一の表示素子の表示面であるため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さい薄型の遊技機を実現できる。
特に本実施例では全反射ミラー3を遊技機の透明板360に配置することで、遊戯板
320と透明板360の間にある空間を効率よく利用できるためより薄型の遊技機を実現できる。
次に本発明の表示装置を備える機器の他の実施例について図面を参照して説明する。ここで説明する機器は(実施例17)で図36を参照して説明したパチンコ遊戯機において、遊技機に備える表示装置の構成を変えたものである。このため、上記実施例と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。また、ここでは特に本発明の主体である表示部310およびその近傍の構成について説明する。
図38は本発明の表示装置を備える遊戯機の表示部310およびその近傍の概略断面図である。
このパチンコ遊技機は遊戯板320に対して(実施例5)で図21を参照して説明した表示装置を適用したものであり、上記実施例と同じ部分については同じ符号を付け、詳細な説明は省略する。
この遊技機は遊戯板320に液晶表示素子1の表示領域と同じ、もしくはそれよりもやや大きな開口部を有し、偏光変換素子4を備える液晶表示素子1をその開口部の奥に配置する。
液晶表示素子1と透明板360の間にはハーフミラー2と、全反射ミラー3を液晶表示素子1の表示面に対して45°傾けて配置する。また、液晶表示素子1の表示面は遊戯板320に対してほぼ平行に配置する。
また、透明板360には観察者20が液晶表示素子1の近距離表示領域1nを観察するのに妨げとならず、観察者20から全反射ミラー3が見えないようにする位置に遮光手段365を備える。
遮光手段365は観察者から見て透明板360の表側、もしくは裏側、あるいは透明板の内部に配置すれば良い。遮光手段365は顔料や染料を含む樹脂板や金属板、あるいは、遮光性の塗料を透明板360に塗布することで実現すれば良い。この際、遊技機のデザインを損なわないようにするために遮光手段365の観察者側の面には装飾絵柄やロゴなどを配置するとよい。
観察者20は遮光手段365より下の部分で液晶表示素子1からの放射する映像光を観察することになる。このため、遮光手段365の下の部分が表示部310に相当することになる。
この場合、観察者20は表示部310を垂直方向から、つまり、真正面から観察することになるので、表示部310は遊戯板の中央部に設けることが望ましい。
また、遊戯板320の開口部の周りには外部から液晶表示素子1に不要な光が入射して表示に悪影響が生じないようにするために、遮光部材321を設けると良い。この遮光部材321はパチンコ玉が表示部310に進入しないようにするための隔壁と兼用しても良い。本遊技機では表示部310に観察者20からみて奥行きの異なる位置にある2つの2次元像を重ねた映像を表示できる。つまり、奥行き感がある映像や、立体感のある映像など、通常の2次元映像では表現できない、極めて表現力の高い映像を表示することができる。このため、本遊技機では従来の遊技機ではできなかった斬新な演出ができる遊技機を実現できる。
また、本遊技機では観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象は、実際には単一の表示素子の表示面であるため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さい薄型の遊技機を実現できる。特に本実施例では全反射ミラー3やハーフミラー(偏光分離素子)2を遊技機の透明板360と遊戯板320の間にある空間も利用して配置するため、より薄型の遊技機を実現できる。
次に本発明の表示装置を備える機器の他の実施例について図面を参照して説明する。ここで説明する機器は(実施例17)で図36を参照して説明したパチンコ遊戯機において、遊技機に備える表示装置の構成を変えたものである。このため、上記実施例と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。また、ここでは特に本発明の主体である表示部310およびその近傍の構成について説明する。
図39は本発明の表示装置を備える遊戯機の表示部310およびその近傍の概略断面図である。
このパチンコ遊技機は遊戯板320に対して(実施例10)で図28を参照して説明した表示装置を適用したものであり、上記実施例と同じ部分については同じ符号を付け、詳細な説明は省略する。
この遊技機は遊戯板320に液晶表示素子1の表示面とリール表示素子5の表示面を足した大きさと同程度の開口部を有し、液晶表示素子1とリール表示素子5をその開口部の奥に配置する。
液晶表示素子1と透明板360の間にはハーフミラー(偏光分離素子)2を液晶表示素子1の表示面に対して45°傾けて配置する。また、リール表示素子5と透明板360の間には全反射ミラー3をハーフミラー2と平行に配置する。また、液晶表示素子1の表示面は遊戯板320に対してほぼ平行となるように配置する。
透明板360には観察者20が液晶表示素子1の表示領域を観察するのに妨げとならず、全反射ミラー3が観察者20に見えないようにする位置に遮光手段365を備える。
遮光手段365は観察者から見て透明板360の表側、もしくは裏側、あるいは透明板の内部に配置すれば良い。遮光手段365は顔料や染料を含む樹脂板や金属板、あるいは、遮光性の塗料を透明板360に塗布することで実現すれば良い。この際、遊技機のデザインを損なわないようにするために遮光手段365の観察者側の面には装飾絵柄やロゴなどを配置するとよい。
観察者20は遮光手段365より下の部分で液晶表示素子1とリール表示素子5から放射する映像光を観察することになる。このため、遮光手段365の下の部分が表示部310に相当することになる。
この場合、観察者20は表示部310を垂直方向から、つまり、真正面から観察することになるので、表示部310は遊戯板の中央部に設けることが望ましい。また、遊戯板
320の開口部の周りには外部から液晶表示素子1に不要な光が入射して表示に悪影響が生じないようにするために遮光部材321を設けると良い。この遮光部材321はパチンコ玉が表示部310に進入しないようにするための隔壁と兼用しても良い。
本遊技機では表示部310に観察者20からみて奥行きの異なる位置にある2つの2次元像を重ねた映像を表示できる。つまり、観察者20にはリール表示素子5の絵柄の手前に液晶表示素子1の映像が浮かんでみえることになる。このような表示はパチンコやスロットマシンなどの遊技機において、演出効果を高めるために極めて有効である。
このため本遊技機では他の遊技機に対して差別化された斬新な演出ができる遊技機を実現できる。
また、本遊技機では観察者からみて奥行き(距離)の異なる位置にある観察対象が略同一平面上に配置されるため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の長さが小さく、薄型の表示装置が実現できる。特に本遊技機では全反射ミラー3やハーフミラー(偏光分離素子)2を遊技機の透明板360と遊戯板320の間にある空間も利用して配置するため、より薄型の遊技機を実現できる。
次に本発明の表示装置を備える機器の他の実施例について図面を参照して説明する。ここでは以下、テーブル状のゲーム機を例にあげて説明する。
図40は本発明の表示装置を備えるゲーム機の概略斜視図である。このゲーム機500は筐体530内に本発明の表示装置510を備え、側面にはゲームの動作を操作するための操作部520が取り付けられている。筐体530の上面部には開口部531が設けられ、観察者20はこの開口部531を通して表示装置の映像を観察する。
このゲーム機500に備えられる表示装置510は(実施例1)で図1から図3を参照して説明した表示装置であり、観察者20は表示装置を構成する液晶表示素子1を斜め方向から観察することになる。
本ゲーム機のようなテーブル状のゲーム機では観察者20は斜め方向から表示装置を観察することになる。このため、(実施例1)で説明した表示装置は本ゲーム機の表示装置510として好適である。
尚、筐体530の内部には少なくともその表面を黒色化した遮光部材を適宜配置することが外部からの光によって、表示に悪影響がでないようにするために望ましい。
また、筐体内部に埃などが進入することを防ぐために筐体の開口部531には透明なガラス板や樹脂板からなる保護板を備えるとよい。
本ゲーム機では観察者20からみて奥行きの異なる位置にある2つの2次元像を重ねた映像を表示できる。つまり、奥行き感がある映像や、立体感のある映像など、通常の2次元映像では表現できない、極めて表現力の高い映像を表示することができる。このため本ゲーム機では斬新な演出ができるゲーム機を実現することができる。
また、本ゲーム機では観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象は、実際には単一の表示素子の表示面であるため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さい薄型のゲーム機を実現できる。
次に本発明の表示装置を備える他の機器の実施例について図面を参照して説明する。ここでは以下、テーブル状の対面型のゲーム機を例にあげて説明する。
図41は本発明の表示装置を備えるゲーム機の概略斜視図である。このゲーム機600は筐体630内に本発明の表示装置610を備え、筐体の対向する側面の外側にはそれぞれゲームの動作を操作するための操作部620A,620Bが取り付けられている。筐体630の上面部には2つの開口部631A,631Bが設けられ、観察者20Aと観察者20Bはそれぞれ開口部631Aと開口部631Bを通して表示装置610の映像を観察する。
ゲーム機600に備えられる表示装置610は(実施例6)で図23を参照して説明した表示装置、或いは(実施例7)で図24を参照して説明した表示装置であり、表示装置610は二つの異なる方向、つまり二人の対面する観察者に対して、奥行きが異なる位置にある2つの2次元像を重ねた映像を同時に表示することができる。また、このとき、2人の観察者は表示装置を構成する液晶表示素子1を斜め方向から観察することになる。
本ゲーム機のようなテーブル状のゲーム機では観察者20Aと観察者20Bはともに斜め方向から表示装置を観察することになる。このため、(実施例6)と(実施例7)で説明した表示装置は本ゲーム機の表示装置610として好適である。
尚、筐体630の内部には少なくともその表面を黒色化した遮光部材を適宜配置することが外部からの光によって、表示に悪影響がでないようにするために望ましい。
また、筐体内部に埃などが進入することを防ぐために筐体の開口部631A及び開口部631Bには透明なガラス板や樹脂板からなる保護板を備えるとよい。
本ゲーム機では観察者20Aと観察者20Bは共に観察者からみて奥行きの異なる位置にある2つの2次元像を重ねた映像を表示できる。つまり、奥行き感がある映像や、立体感のある映像など、通常の2次元映像では表現できない、極めて表現力の高い映像を表示することができる。このため本ゲーム機では斬新な演出ができるゲーム機を実現することができる。
特に本ゲーム機では、液晶表示素子の同じ表示領域の映像が、この表示領域から近い位置の観察者に対しては、奥行きが近い位置、つまり距離が短い位置にある映像となり、この表示領域から遠い位置の観察者に対しては奥行きの遠い位置、つまり距離が長い位置にある映像となる。
つまり、本ゲーム機では二人の異なる位置にいる観察者に対して、同じ2つの2次元像を観察者の位置に応じた順序で重ねた状態で表示することができる。このため、より臨場感の高い表示ができるゲーム機を実現できる。このようなゲーム機は対戦型のゲーム機に好適である。
また、本ゲームでは観察者からみて奥行きの異なる位置にある観察対象は、実際には単一の表示素子の表示面であるため、観察者に感知される奥行きよりも実際の奥行き方向の厚みが小さい薄型のゲーム機を実現できる。
次に本発明の表示装置の他の実施例について説明する。ここで説明する表示装置は(実施例12)で図30を参照して説明した表示装置において、液晶表示素子1の3つの表示領域のうち近距離表示領域に相当する部分をなくし、その部分に観察者から表示装置の外部を観察できる開口部7を設けたものである。
このため上記実施例で説明した表示装置と同じ部分には同じ符号を付け詳細な説明は省略する。
図42は本発明の表示装置の一例を示す概略断面図である。この表示装置は液晶表示素子1の2つの表示領域と、表示装置の外部を観察対象とするものである。液晶表示素子1の2つの表示領域は観察者20からみて奥行き(距離)の異なる位置にある2つの観察対象に相当するものである。ここでは液晶表示素子1の表示領域のうち、観察者20からみて奥行きが遠い位置、つまり、観察者20からみて距離が長い位置にある観察対象に相当する表示領域を遠距離表示領域1fと呼び、観察者からみて奥行きが近い位置、つまり、観察者からみて距離が短い位置にある観察対象に相当する表示領域を中距離表示領域1mと呼ぶ。
また、表示装置の外部の観察対象8(以下、外部観察対象と呼ぶ)は表示装置の用途に応じた任意の位置に存在し、観察者20からみた奥行き、つまり観察者20からの距離は任意に定めることができる。
例えば、外部観察対象8が液晶表示素子1の表示面と略同一平面、あるいはこれに近い位置にあれば、外部観察対象8は観察者からの奥行きが最も近い位置、つまり、観察者からみて最も距離が短い位置にある観察対象となる。
また、外部観察対象8が外部観察対象8からハーフミラー6までの距離が、液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから全反射ミラー3までの距離と、全反射ミラー3からハーフミラー6までの距離との合計の距離よりも長くなる位置にあれば、外部観察対象8は観察者20からの奥行きが最も遠い位置、つまり、観察者からみて最も距離が長い位置にある観察対象となる。
つまり、外部観察対象8は観察者20からみた奥行き方向の位置が、最も近い位置から最も遠い位置まで任意の位置とすることができる。
本実施例の表示装置では液晶表示素子1の遠距離表示領域1fから放射する映像光19fは偏光変換素子4を通過する際、偏光軸が90度回転した直線偏光となり、全反射ミラー3で反射した後、ハーフミラー(偏光分離素子)2をほとんど反射することなく大部分が透過して、ハーフミラー6に向かう。
また、中距離表示領域1mから放射する映像光19mはハーフミラー(偏光分離素子)2をほとんど透過することなく、その大部分が反射してハーフミラー6へ向かう。
つまり、遠距離表示領域1fの前面に偏光変換素子4を配置し、ハーフミラー2として偏光分離素子を用いることで遠距離映像光19fと中距離映像光19mは共にほとんど損失することなく合成されてハーフミラー6へ向かうため明るい映像光が得られる。
ハーフミラー6へ向かった遠距離映像光19fと中距離映像光19mはハーフミラー6でその一部が反射して観察者20に観察される。
一方、外部観察対象8から放射する映像光19eは開口部7を通過して、その一部がハーフミラー6を透過して観察者20に観察される。
このため、観察者20からみて奥行きの異なる位置にある2つの表示領域に表示される2次元像(映像)と、外部観察対象8が重なった状態で観察者20に観察される。
つまり、本表示装置は観察者からみて奥行きが異なる位置にある2つの観察対象と、任意の奥行き位置にある外部観察対象を重ねた状態で表示することができる。
このため様々な用途への展開が考えられる。例えば、外部観察対象を遠方の物体や風景とすれいば、表示装置の大きさに制限されない大きな奥行き感を感知させる表示装置が実現できる。
あるいは、外部観察対象8と、液晶表示素子1に表示される電子化された映像情報を照合することで真贋判定を行うといった用途に使用することができる。
あるいは、外部観察対象8を自動車の外部の風景とし、車外の風景と、液晶表示素子1の映像を重ねて表示することで自動車のさまざまな情報を表示する装置としても使用することができる。
本発明の表示装置では観察者からみて奥行き(距離)の異なる位置にある複数の観察対象を光学的に重ねた状態で観察できるので、観察者に奥行き感、あるいは3次元立体像が感知される表示装置を実現できる。
このため、臨場感や高い表現力が望まれるゲーム機やパチンコなどの遊技機の表示装置として好適である。
或いは、医療用や美術品の観察といった観察対象をより正確に再現することが要求される表示装置にも適用できる。
また、本発明の表示装置では観察者からみて奥行き(距離)の異なる位置にある観察対象を交互に切り替えて表示することができるため、観察者の目の焦点調節機能を訓練するといった用途にも適用できる。
また、本発明の表示装置では観察対象の少なくともひとつを表示装置外部の物体や風景とすることができる。この場合、表示装置外部の観察対象と、表示素子に表示される電子化された映像情報を照合することで真贋判定を行うといった用途にも適用できる。
あるいは、外部の観察対象を自動車の外部の風景とし、車外の風景と、表示素子の映像を重ねて表示することで自動車のさまざまな情報を表示する装置としても使用することができる。
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例1)
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例1)
本発明の表示装置を説明するための概略斜視図である。(実施例1)
本発明の表示装置に係る液晶表示素子の概略断面図である。(実施例1)
本発明の表示装置に係る液晶表示パネルの画素の構成を示す正面図である。(実施例1)
本発明の表示装置に係る部材の直線偏光の透過軸と液晶層の配向方向の一例を示す説明図である。(実施例1)
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。
本発明の表示装置に係る視点の位置合わせの印の一例を示す説明図である。
本発明の表示装置に係る視点の位置合わせの印の一例を示す説明図である。
本発明の表示装置に係る表示素子の表示面における表示の一例を示す説明図である。
本発明の表示装置において観察者に観察される映像を模擬的に示す説明図である。
本発明の表示装置に係る表示素子の表示面における表示の一例を示す説明図である。
本発明の表示装置に係る表示素子の表示面における表示の一例を示す説明図である。
本発明の表示装置に係る表示素子の表示面における表示の一例を示す説明図である。
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例2)
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例3)
本発明の表示装置に係る液晶表示素子の概略断面図である。(実施例3)
本発明の表示装置に係る部材の直線偏光の透過軸と液晶層の配向方向の一例を示す説明図である。(実施例3)
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例4)
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例5)
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例6)
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例7)
本発明の表示装置に係る部材の直線偏光の透過軸と液晶層の配向方向の一例を示す説明図である。(実施例7)
本発明の表示装置を説明するための概略斜視図である。(実施例8)
本発明の表示装置を説明するための概略斜視図である。(実施例9)
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例10)
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例11)
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例12)
本発明の表示装置を備える遊技機を説明するための概略正面図である。(実施例13)
本発明の表示装置を備える遊技機の表示部とその近傍の概略断面図である。(実施例13)
本発明の表示装置を備える遊技機の表示部とその近傍の概略断面図である。(実施例14)
本発明の表示装置を備える遊技機の表示部とその近傍の概略断面図である。(実施例15)
本発明の表示装置を備える遊技機の表示部とその近傍の概略断面図である。(実施例16)
本発明の表示装置を備える遊技機を説明するための概略正面図である。(実施例17)
本発明の表示装置を備える遊技機の表示部とその近傍の概略断面図である。(実施例17)
本発明の表示装置を備える遊技機の表示部とその近傍の概略断面図である。(実施例18)
本発明の表示装置を備える遊技機の表示部とその近傍の概略断面図である。(実施例19)
本発明の表示装置を備えるゲーム機を説明するための概略斜視図である。(実施例20)
本発明の表示装置を備えるゲーム機を説明するための概略斜視図である。(実施例21)
本発明の表示装置を説明するための概略断面図である。(実施例22)
従来の表示装置を説明するための概略断面図である。
符号の説明
1…液晶表示素子、2…ハーフミラー(偏光分離素子)、3…全反射ミラー、4…偏光変換素子、5…リール表示素子、6…ハーフミラー、300…パチンコ遊技機、310…表示部、311,531,631A,631B…開口部、320…遊戯板、500…ゲーム機、510,610…表示装置、530,630…筐体、600…ゲーム機。